彩花/恋と魔法の物語   作:khiro

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5話 決闘

・・・

唯「今回の解決策は2つある。1つは、彩花ちゃんがインディアンに殺されること。」

 

唯「2つ目は、彩花ちゃんが葛西君を殺すこと。」

 

彩花「え?」

 

唯「人間1人死ぬくらいで解決するなら、買い物としては安かろうってことさ。」

 

圭一「君は人間1人をなんだと思ってるんだ。」

 

彩花「わたしだって、死にたくない。」

 

唯「自分の恋のためだよ。命を懸けるくらい、当然のことだろう?」

 

圭一「そんな・・・」

 

彩花「葛西君はわたしを殺したいわけじゃない。ただ荒川君と一緒にいたいだけ。」

 

唯「一緒にいたいだけ?笑えるね。あやちゃんは本当に優しいよね。」

 

唯「本当に一緒にいたいだけなのかな。」

 

彩花「違うっていうの?唯ちゃん」

 

唯「どうしてインディアンはあやちゃんを殺そうとしたのかしら。」

 

彩花「それはインディアンは相手の本当の意に沿わない形で叶えたからだよ。」

 

唯「契約は契約。本当はそのまま荒川君と両思いになるように動くはずだよ。」

 

唯「おそらく、葛西君もあやちゃんを殺したいと思ってたんでしょうね。」

 

彩花「え?」

 

圭一「そんなわけない。僕は人を殺したりなんか・・・」

 

唯「そんなことを願ったのは無意識のうちでしょうね。」

 

唯「加害者の男の言い訳を信じるなんて、あやちゃんは人がいいわね。」

 

唯「大好きな男の子と仲の良い女の子を、殺したいくらいに嫉妬したとしてもおかしくないでしょう。」

 

唯「高梨彩花を殺害することが葛西圭一の願いだったってこと。」

 

 

唯「ここまで来たらやるしかないわね。」

 

彩花「やる?」

 

圭一「やるって何をだ?」

 

唯「決闘。」

 

彩花「決闘?」

 

唯「2人で戦うの。どちらの愛情が上か、2人で戦って決めたらいいわ。彩花ちゃんと葛西君で。」

 

圭一「えー!」

 

彩花「何言ってるの?中学生の男子と女子が決闘って。」

 

唯「仕方ないじゃない。彩花ちゃんはともかく、葛西君は彩花ちゃんを殺したいとまで嫉妬しちゃったんだから。」

 

唯「それにもし葛西君と荒川君が付き合うことになったら、今度は彩花ちゃんが嫉妬しちゃうんじゃないかと思うわ。」

 

唯「その前にケリをつけるべきよ。」

 

圭一「そんな無茶苦茶だ」

 

結局その日は決着がつかないまま家に帰った。

 

 

・・・

しかも翌日、大輔君から思わぬ相談を受けた。

 

大輔「相談があるんだ。」

 

大輔「俺、告られた。男に・・・。」

 

彩花「えー?」

 

大輔「モテる男は辛いって言うけど、男にモテる男はもっと辛いわ。」

 

大輔「なんで俺、男にモテるのかな?別に嬉しくないのに。」

 

大輔「彩花にとってはこういう展開が好きなのかな。」

 

彩花「うん・・・ちょっと・・・」

 

彩花「誰に告白されたの?」

 

彩花(まさか葛西君?いや、葛西君の他にも・・・)

 

大輔「中沢」

 

彩花「そう。」

 

大輔「俺、中沢のことただの旧友とか、幼馴染にしか思ってなかった。ましてや男同士なんだし。」

 

大輔「だからどう答えていいのだか・・・」

 

彩花「大輔君って他に好きな人いるの?」

 

大輔「うん。」

 

彩花「ならば正直にそう伝えればいいと思うよ。」

 

大輔「そうか。」

 

 

・・・

その夜、私は決意した。

 

翌日

 

彩花「葛西君、あなたにこれを渡す。」

 

圭一「これは何だ。果たし状?」

 

彩花「今日の夕方、わたしは葛西君に決闘を申し込む。」

 

彩花「唯ちゃんの言うとおり、葛西君はわたしを恋敵として憎み、殺そうとした。ならばもう戦うしかないじゃない。」

 

圭一「・・・」

 

圭一「わかった。この果たし状、受けるよ。」

 

 

圭一「本当はどうして友達と決闘しなきゃいけないのかと思ってるけど・・・」

 

唯「青春ってそういうものじゃないかしら?」

 

彩花「でも男女で1人の男の子を争って決闘だなんて」

 

唯「別にいいじゃない。BLモノの次回作になりそうね。」

 

唯「彩花ちゃんと葛西君と荒川君の三角関係、女→男←男の奇妙な三角関係。」

 

彩花・圭一「・・・」

 

唯「1つだけいいかしら?」

 

彩花「何?」

 

唯「あやちゃんはどうして自分を殺そうとした相手まで助けようとするの?」

 

唯「葛西君はあやちゃんのことを憎むべき恋敵ととらえていたわけなのよ。」

 

彩花「葛西君が大輔君にあこがれていたこと、わたしは知ってたからね。なのにわたしは大輔君と小さいころから一緒にいるし、現に大輔君のこと好きだし。」

 

彩花「そりゃ誰だって嫉妬するでしょ。殺されるのはご免だけど、嫉妬するくらいは許せるかな。」

 

・・・

彩花「ねえ、中沢君。大輔君のことが好きって本当?」

 

祐樹「本当」

 

彩花「そうか。つまり私たちはライバルってことだね。私だけじゃなく、葛西君とも。」

 

祐樹「葛西?」

 

彩花「そう。だからあなたにこれを渡す。」

 

祐樹「これは、果たし状?」

 

彩花「そう、中沢君に決闘を申し込む。3人で決闘ってことにしようと思って。」

 

祐樹「わかった。俺も高梨さんが荒川君のことが好きなのをわかってたんだから、そのくらいの覚悟はできてた。」

 

祐樹「その決闘を受けよう。」

 

 

彩花「そういうわけで、決闘を3人で行うことになりました。」

 

唯「まさか三角関係どころか四角関係だったとはね。」

 

唯「これではあやちゃんが不利になりそうだけど、魔法を使えばなんとか。」

 

彩花「魔法か・・・」

 

・・・

由紀「さっき葛西君に渡していたのはラブレターかしら?」

 

彩花「いや、そんなんじゃないよ。」

 

由紀「そうよね。あやちゃんには他に好きな男の子がいるんだし。」

 

由紀「じゃあ宿題の答えを移したのかしら?」

 

由紀「いやそれもないね。葛西君は中の下くらいだけど宿題忘れはしないし。」

 

由紀「まあそんなことはどうでもいい」

 

由紀「それより私の出番が少ないのはなんで?これでもあやちゃんと同じ魔法少女なのに」

 

彩花「あれだけ死亡フラグを立ててたからでしょ。出番が少なくなったくらいで済んでよかったじゃない。」

 

由紀「はあ、あれは出番が少なくなるフラグだったのね。」

 

由紀「これじゃドラえもんでいう雪の精・・・」

 

由紀「どころか妖怪ウォッチでいうじんめん犬じゃない」

 

彩花「それだと出番増えてるけどね」

 

・・・

唯「荒川君、今日は1人で帰ることになると思うけど、気にしないで。」

 

大輔「え?彩花は?」

 

唯「ちょっと用事があるの。大丈夫、荒川君を仲間外れにするわけじゃないから。」

 

大輔「そ、そうなんだ。小原も?」

 

唯「うん。」

 

大輔「大丈夫だよ。大事な用があるんでしょ?彩花と小原、あと香苗は仲いいしね。」

 

 

・・・

夕方

 

唯「中沢君って魔法の能力とかはないの?」

 

祐樹「うん。」

 

唯「ならば公平にするために中沢君にも妖怪にとりついてもらいましょ。」

 

これで3人の戦力は互角に

 

 

唯「そうだ。決闘しなくても、3人で一緒に告白して、選んでもらうって手もあるわね。」

 

彩花「それは無理だよ。」

 

圭一「目の前で2人がくっついて、捨てられるほうのダメージがでかい。」

 

彩花「それより大輔君が一番辛い思いする。大輔君は誰かが自分を取り合ってるとこなんか見たくない、そういう人だから。」

 

祐樹「もしどちらか選んで付き合いだしても、絶対うまくいかないと思う。」

 

唯「そうだろうね。荒川君はそういう人だ。」

 

唯「ならば誰が告白するか、決闘して決めるしかないわね。」

 

彩花「そうだね。」

 

唯「今回の決闘、HPが切れたら負け。2人が脱落するまで続け、最後まで残った1人の勝ち。」

 

唯「いわばこれは聖杯戦争。」

 

圭一「3人じゃ聖杯戦争ってほどの規模じゃないけどな。」

 

 

彩花「わたしは大輔君のことが好きなの。幼稚園のころは大輔君のお嫁さんになるって約束したくらいだし。大輔君はそのこともう忘れてそうだけど。」

 

彩花「相手が男の子だろうと、大輔君だけは誰にも渡さない。」

 

圭一「そうだったのか。幼いころの可愛い婚約だな。」

 

圭一「高梨さんは荒川君の幼馴染だからね。本来先に荒川君に告白する権利は高梨さんにあるだろう。」

 

圭一「でも僕も荒川君が好きだ。たとえ荒川君の幼馴染でも、絶対に渡したくない。」

 

祐樹「幼馴染って1人忘れてないか。俺も荒川君とは幼稚園からの仲で、たった1人の大切な親友。」

 

祐樹「負けたくはない。」

 

 

彩花「大輔君はわたしの物!」

 

祐樹「いや、僕のだ!」

 

圭一「いや、僕のだ!」

 

そして始まった高梨彩花vs葛西圭一vs中沢祐樹、魔法少女と妖怪の力をもつ魔法少年の戦闘。

 

しかし開始してまもなく、このままでは決着がつかないと思ったのか唯ちゃんが勝負を中断する。

 

唯「待った!」

 

圭一「待ったはなしだよ。」

 

唯「いや、一応審判はあたしだから。」

 

唯「やっぱり3人じゃ戦いにくそう。ここはリーグ戦にしよう。」

 

唯「3人で総当たり戦。それも想定してくじを用意したんだ」

 

圭一「くじ?」

 

唯「対戦順を決める抽選。1、2、3の番号が書いたくじがあるから、まず1番と2番が対決ね。」

 

唯「続いてその負けたほうが3番と対戦。」

 

抽選の結果、1番中沢祐樹、2番高梨彩花、3番葛西圭一となった。

 

唯「ということは1回戦は中沢君とあやちゃんのカードね。」

 

 

そして始まった私と中沢君の決闘。

これは喧嘩というより、心理戦だった。誰が一番大輔君への思いが強いか。

私は誰よりも大輔君を愛してる。その思いから、私はこの最初の戦いに勝利した。

 

唯「中沢君、このあとどうする?次の試合は明日にしてもいいんだけど。」

 

祐樹「いや、ちょっと休憩したらすぐ始める。」

 

祐樹「勝負はこれからだ。」

 

 

2回戦、葛西君と中沢君の決闘。

葛西君のターンが続いたが、その後は中沢君のターン。

 

祐樹「俺は負けたくない。負けるもんか!」

 

圭一「男にだって、女にだって、荒川君は渡したくない・・・」

 

だが葛西君の妖怪の力は予想以上だった。結果、葛西君が勝利した。

 

 

これで葛西君と私の一騎打ちに。

 

唯「最終戦、果たして大輔君はどっちのもとになるんでしょうか?」

 

彩花「妙な実況だね。」

 

運命の3回戦、私と葛西君の決闘。

 

葛西君はもはや自分の意志で私を攻撃していた。

 

圭一「憎い・・・、憎い・・・、憎い!」

 

妖怪の力は恐ろしかった。しかし私も魔法少女、簡単にはやられない。

 

圭一「いいんだ。高梨さんを殺すくらいなら、僕は荒川君を諦める・・・」

 

そう口で言っていても、葛西君は大輔君を諦める気はないことは明白。

 

唯「強い・・・。これはあやちゃん絶対勝てない・・・」

 

唯「でもあやちゃんも強い・・・。」

 

私は葛西君に必死で食らいつく

 

彩花「わたしの大輔君への想いは魔法や妖怪なんかより強いの。誰にも負けない!」

 

 

互角の戦いを続けてきたが、僅かに葛西君が上回った。

私のHPが切れた。

 

唯「勝者、葛西圭一。」

 

圭一「僕、勝ったのか?」

 

彩花「わたしの負けだね。葛西君強いな。」

 

圭一「勝った気がしねえよ。」

 

彩花「え?」

 

圭一「確かに決闘に勝ったのは僕だが、荒川君への想いは高梨さんのほうが強かった。」

 

・・・

「わたしは大輔君のことが好きなの。相手が男の子だろうと、大輔君だけは誰にも渡さない。」

 

「わたしの大輔君への想いは魔法や妖怪なんかより強いの。誰にも負けない!」

 

・・・

ましてや僕は一度は荒川君のことをあきらめると思ってしまった。僕の荒川君への想いなんてこんなもんだ。

 

彩花「ううん。葛西君の想いはわたしに十分伝わった。」

 

彩花「葛西君、大輔君に告白してきなよ。勝ったのは葛西君なんだから。」

 

圭一「そうだな。わかった。」

 

圭一「今回の決闘、勝ったのは僕だけど、まだ勝負はついてないよ。」

 

圭一「僕が荒川君に告白しても、荒川君が僕を選ぶとは限らない。」

 

圭一「それにこの時点でもまだ高梨さんのほうが有利だろうね。」

 

圭一「荒川君が好きなのは、多分高梨さんだろう。」

 

彩花「そんなことないと思うよ。大輔君はわたしのことを、ただの妹か、幼馴染にしか思ってないし。」

 

彩花「わたしは決闘に負けたし、大輔君と葛西君が付き合うようになっても、素直に応援するから。」

 

彩花「正直わたしは大輔君が誰と付き合うことになっても許せるくらい、大輔君のことが好きだし。」

 

彩花「大輔君と2人で切磋琢磨しあってきた葛西君なら全然OKだよ。もちろん中沢君でも。」

 

圭一「そう。ありがとう。」

 

圭一「じゃあ玉砕覚悟で行ってくる。」

 

・・・

圭一「実はさ・・・」

 

圭一「僕は荒川君にすごく感謝してるんだ。僕をいじめっ子からかばってくれたし、学年ビリから抜け出せたのも荒川君のおかげなんだ。」

 

大輔「前転校するときもそんなこと言ってたな。まさかまた転校しちゃうのか?」

 

圭一「そうじゃないんだけど。」

 

大輔「じゃあなんでいきなり。」

 

圭一「このままずっと荒川君といられるか不安になって。」

 

大輔「いられるさ。だって俺とお前は小学校のときかたずっと学力が同じくらい、テストの点もいつも僅差。」

 

大輔「ならば高校も同じとこに行けるんじゃないかな。」

 

圭一「そうだよね。」

 

大輔「俺も感謝してる。葛西が俺についてきてくれて。俺も葛西のおかげでビリから抜け出せたからね。」

 

圭一「僕はずっと前から、荒川君のことが好きだ。」

 

大輔「え?」

 

圭一「友達とかじゃなくて、恋愛的な意味で。」

 

大輔「あの、俺たち男同士だよね?」

 

圭一「男同士でもいい。僕は男が好きなんじゃなくて、君のことが好きなんだ。」

 

大輔「ありがとう。すっげー嬉しい。葛西がそんなこと言ってくれるなんて。」

 

大輔「でもごめん。俺、好きな子いるんだ。小さいころからずっと一緒だった。」

 

圭一「そうだよね。知ってた。」

 

圭一「その子のこと、幸せにしてあげて。」

 

大輔「わかった」

 

大輔「俺たち、友達以上恋人未満の関係でいよう。」

 

・・・

大輔「こないだの答えなんだけど、俺は他に好きな人がいる。だからごめん。」

 

祐樹「そうか。」

 

大輔「でもありがとう。俺のこと好きでいてくれて。俺もお前のこと、友達として好きだ。」

 

大輔「友達以上恋人未満の関係でいたいと思う。」

 

祐樹「それでいい。」

 

祐樹「高梨さんのこと、幸せにするんだぞ。」

 

・・・

圭一「というわけで、高梨さんの勝ちだ。やっぱり荒川君が好きなのは高梨さんだ。」

 

彩花「わたし、ずっと大輔君はわたしのこと女の子として見てくれてないと思ってた。わたしの片思いだった。」

 

彩花「今は想いが通じたのかな?」

 

圭一「そうだね。」

 

彩花「葛西君の大輔君への想いも伝えられたね。」

 

圭一「でも・・・、フラれちゃった。とても悲しい・・・」

 

圭一「でも高梨さんなら仕方ないよ。こんな僕にも優しくしてくれるくらいいい人だし。」

 

圭一「荒川君が高梨さんのこと好きな気持ちわかるな。僕も女の子のことが好きだったら、高梨さんを好きになってたかも。」

 

彩花「なんか照れるな。」

 

圭一「荒川君と高梨さんが幸せなら、僕は荒川君のことをあきらめる。」

 

祐樹「俺もだ。本当は荒川君が好きだけど、たとえ誰と付き合ったって、荒川君の幸せなところが好きだ。だから高梨さんと荒川君が幸せなら、俺も幸せ。」

 

彩花「ありがとう。」

 

圭一「それでも荒川君と1回くらいデートしてかったな」

 

彩花「そうだ」

 

 

私は大輔君を追いかける

 

彩花「ねえ大輔君」

 

大輔「彩花か、なんだ?」

 

彩花「中沢君と葛西君とデートしてあげてくれないかな?」

 

大輔「なんで男とデートしなきゃいけないんだ?」

 

彩花「中沢君と葛西君に1つ、思い出を作らせてあげたいなって思って。」

 

彩花「わたしのことは気にしなくていいから」

 

大輔「そうか」

 

彩花「ほら、たまには男の子同士でどこか遊びに行くのも楽しいんじゃない」

 

大輔「そうだな」


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