彩花/恋と魔法の物語   作:khiro

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4話 それぞれの大輔への思い

小学校4年生のとき

 

僕は荒川大輔。それまで何もかもがクラス最下位、学年最下位だった。

 

帰り道

 

彩花「大輔君やけに嬉しそうだね。今までこんな笑顔見たことないよ。」

 

彩花「テストが5点や10点だったのがそんなに嬉しかったの?いつもと変わらないのに。」

 

大輔「だってあの転校生に勝ったんだぜ。あいつは全教科0点。」

 

大輔「僕は5回に1回の割合で0点取るだろ?」

 

大輔「ところがどっこい、あの葛西って奴は2~3回に1回の割合で0点だってよ。アハハハハ。」

 

大輔「かけっこも僕より遅いし、それでいてなわとびは二重跳びはおろか後ろ跳びできない。」

 

大輔「ああ、なんてすばらしいことだろう。この世に僕よりダメな子がいたなんて。」

 

 

大輔「葛西君がきた」

 

大輔「おーい、いらっしゃい。」

 

その日は一緒に宿題する約束をしていた。

 

大輔「さあ始めよう」

 

圭一「うーん」

 

大輔「えー、お前はまだ宿題できないの?」

 

圭一「母さん、僕のと葛西君のどっちがあってる?」

 

母「大輔の・・・」

 

 

彩花の家の前

 

大輔「今から僕と葛西君の2人で走るから審判やってよ」

 

彩花「わかった」

 

大輔「よっしゃー、勝った勝った」

 

 

大輔「それからサッカーやバスケでも対戦したんだけど、どうしてもぼくが勝っちゃうんだ。アハアハアハ・・・」

 

彩花「へえ(呆れ気味)」

 

大輔「あいついいやつだよ。ずっと友達でいよう。」

 

 

先生「忘れ物するなんてやる気があるのか!ふたりとも立ってなさい!」

 

大輔「お前もか。だから好きさ。」

 

大輔「な、これからは協定をむすぼうじゃないか」

 

大輔「そろって0点をとったり忘れ物したり、かけっこも2人ともビリで。なかよくしていこうよ。」

 

圭一「いやだ。ぼくはできれば100点取りたいし、かけっこは1番になりたいし、忘れ物もしたくない。」

 

大輔(生意気だ。格上の僕に逆らうなんて。)

 

 

ガキ大将「なあ、特別にお前を野球に誘ってやるよ。どうせ暇なんだろう。」

 

大輔(いやだなあ。エラーしたり三振したら殴られるし。)

 

大輔「僕、今日は調子悪いし、用事もあるんだ。」

 

大輔「そうだ。かわりに葛西君を誘ったらどうだ?」

 

ガキ大将「お前がそう言うなら・・・」

 

 

大輔「是非こっそり見に行こう。どんな試合になるやら。想像するだけで笑っちゃうよ。アハハハ。」

 

試合は予想通り葛西の度重なるエラーで次々失点

 

大輔「ウハハハハハwwww 笑いがとめんねえwwwww 腹痛えwwwwww」

 

大輔「ハハハ・・・・」

 

自分の中で静まり返った。

確かに下手だ。僕より下手だ。しかしなんだろう。この必死さは。

いつも途中でやる気をなくして捨て身になり、試合を投げている僕と比べて、純粋に野球を楽しんでるように見える葛西が何倍も立派に見えた。

 

 

ガキ大将「お前がエラーと三振ばっかりのせいで負けた。」

 

男子「せっかく敵のエラーで出塁できてもルンバ、もとい走塁ミスで台無しだし。」

 

ガキ大将「かくごしろっ」

 

圭一「やだー、ゆるしてえ」

 

大輔(あれはいつもの僕・・・。葛西君が僕みたいに・・・)

 

大輔「やめろ!」

 

ガキ大将「なんだよ荒川。」

 

大輔「葛西君ならいい選手になると思ったんだけどな。僕の見る目がなかったよ。」

 

ガキ大将「お前は何が言いたいんだ」

 

大輔「だから、葛西君を推薦した僕の責任だ。殴るんなら僕を殴れ。」

 

ガキ大将「そうか、そういうんなら・・・」

 

ボカボカボカ

 

圭一「荒川君・・・」

 

圭一「僕をかばってここまで・・・」

 

大輔「僕が間違っていたよ。2人で0点取って、忘れ物して、いじめられてばっかりじゃいけない。」

 

大輔「一緒に頑張って、テストでは100点を取ろう。野球も練習して、あいつらを見返してやろう。」

 

圭一「うん」

 

 

こうして僕たちの進撃が始まった。

しばらくの間、僕と葛西君でビリとブービー、下位2人を入れ替わりで分け合うときが続く。

 

小4の学年末テスト、ついに僕たちは下位2つを脱出した。

 

圭一「やっと指定席を抜け出せたね。」

 

大輔「よし、これからだ。」

 

小5に上がってからは僕たちは中の下のラインにまで上がった。

 

大輔「やった、65点!こんな点数初めて。」

 

大輔「葛西は何点?」

 

圭一「70点」

 

大輔「負けた!」

 

大輔「でも算数は60対55で俺の勝ちだからな。」

 

圭一「そうだね。やっぱり荒川君はすごい。」

 

大輔「そうでもないよ。お前がいたから俺もビリから脱出できたし。」

 

彩花「なんていうか、2人の点差っていつも15点以上開かないよね。」

 

彩花「大輔君の成績が上がり出したら、それについてくるように葛西君の点数も上がったし。」

 

彩花「1回くらい片方がいい点取って、片方が沈むって展開もありそうなんだけど。」

 

大輔「そう考えると確かに不思議だな。」

 

 

運動会

 

圭一「徒競走、僕は3位だった。」

 

大輔「俺は2位。あとちょっとで1位だったのにな。」

 

大輔「でも初めてビリにならなかった。すごいうれしい。」

 

圭一「僕もいつもビリだったから、この順位は満足してる。」

 

 

そしてついに

 

大輔「ひゃ、100点・・・」

 

大輔「先生、これ。」

 

先生「いや私も目を疑ったがね、何度調べても100点なんだ。荒川君、よくやったね。」

 

大輔「葛西、やった、100点取ったよ。」

 

圭一「おめでとう。実は僕も100点なんだよ。」

 

大輔「葛西もだったのか。」

 

大輔「おめでとう。お前前からずっと言ってたもんな。100点取りたいって。」

 

大輔「俺も100点だったけど、なんかどうでもよくなった。葛西が100点取れたことが自分のことより嬉しい。」

 

 

そして葛西と出会って2年が経った小学校5年生の終わり

 

圭一「せっかく友達になれたのに、また転校することになったんだ。」

 

圭一「今まで君ほど仲良くしてくれた友達はいなかった。」

 

圭一「勉強やスポーツを一緒にやってくれたり時にはいじめっ子からかばってくれたり」

 

圭一「君のこと忘れない。」

 

大輔「なあ、手紙書いてよ。俺も手紙書くからさ。」

 

圭一「わかった。」

 

大輔「いつかまた、きっと会えるよね。」

 

・・・

そして中学校に進学し、2年生になった春。

 

先生「転校生を紹介する。葛西圭一君だ。」

 

大輔「葛西・・・」

 

先生「ん?知ってる奴いるのか? そういえばこの街に来るのは2度目とか言ってたかな。」

 

 

大輔「葛西、また会えたね。」

 

圭一「うん」

 

 

・・・

中沢祐樹。彼は5歳のとき父親が浮気をし、浮気相手に子供ができたためそのまま離婚して家を出て行ってしまった。

 

祐樹「お父さんが別の女のものになっちゃったんだ。」

 

大輔「それは悲しいことだったね。」

 

大輔「なんだったら僕の父さんを貸してやってもいい。僕たちは兄弟ってことにして。」

 

祐樹「荒川君・・・。」

 

・・・

2年生からこの学校に転校してきた中沢祐樹。幼稚園と小学校1・2年生のクラスメートと再会した。

 

大輔「久々に会えてよかった。元気そうで。」

 

祐樹「うん。」

 

祐樹「ねえ、荒川は好きな子いるの?」

 

大輔「好きな子、というか気になる子はいる。」

 

祐樹「高梨さんか」

 

大輔「いや、あいつとは別になんとも思ってないし・・・」

 

祐樹「毎日一緒に登校してるのに? 気になる子がいるとしたらその子以外いるの?」

 

大輔「まあ、好きか嫌いかで言ったら、好きだ。」

 

祐樹「そうか。正直でよかった。」

 

祐樹「実は俺にも好きな子がいるんだ。相手は言えないけど。」

 

大輔「へえ、もしかして俺に恋愛相談。悪いけど俺恋愛には詳しくないんだ。」

 

祐樹「だよな。荒川君に恋愛相談するわけにはいかないしな・・・。」

 

 

俺はその数週間前から中沢の視線が気になっていた。

さらに中沢は彩花のこともよく見るようになっていた。

 

それとさっきの会話から察するにつまり・・・

 

大輔「そういうことか。」

 

中沢は彩花のことが好きなんだと悟った。

 

 

・・・

ある日、この街に怪物のようなものが現れた。

いわゆる妖怪である。

 

ここ数日、私ばかりを狙ってくるようになった。

 

彩花「うわっ!」

 

私は魔法少女なので防御もできるけど、これほどの敵は初めてだった。

 

彩花(なんなのこの妖怪?)

 

彩花「あれは・・・、葛西君?」

 

 

圭一「ごめんなさい。今回の件は僕のせいだ」

 

圭一「この妖怪が僕のせいで暴れるようになった」

 

彩花「この妖怪って一体なんの妖怪なの?」

 

圭一「魔法少女養成妖怪、インディアンだ。」

 

 

唯「インディアンね。」

 

唯「実は私もその妖怪の存在に何となく気づいてたの。女性アレルギーより、他の何かがあるんじゃないかって。」

 

彩花「じゃあなんで言わなかったの?」

 

唯「確信が持てなかった。知ったかぶりになっちゃうかもしれないから。」

 

圭一「高梨さん、小原さんは魔法少女なんだよね?」

 

圭一「僕はいわゆる魔法少年なんだ。」

 

彩花「魔法少年?」

 

圭一「これは1ヶ月ほど前」

 

・・・

インディアン「僕はインディアンだ」

 

インディアン「君の願いを叶える代わりに、僕と戦ってほしい。」

 

圭一「それってどういうこと?」

 

インディアン「魔法少年だよ。」

 

インディアン「オタク男子の憧れだよね?」

 

・・・

彩花「なんかそれ、いつしかの『僕と契約して、魔法(ピー)以下略』の生物に似てるよね。」

 

彩花「あの生き物と契約するとろくなことないんでしょ?1つの願いのために魂まで差し出さなきゃいけない。」

 

彩花「名前は、イン・・・、なんだっけ?インディアンじゃないし。」

 

圭一「インディアンは今僕と契約してる生き物だから」

 

彩花「そういえばどっちもインだね」

 

圭一「まあインディアンは某円環の理のアニメのインなんとかと違って、願いは変更可能、戦いでの実績に応じていくらでもできると言ったんだ。」

 

・・・

圭一「俺の体質、女性アレルギーを治してほしいんだ。」

 

インディアン「承知しました。契約は成立だ。」

 

・・・

第2話から

 

圭一「高梨さんに相談があるんだけど」

 

彩花「相談?」

 

圭一「実は俺、好きな人がいるんだ。それが相手は男なんだ。」

 

彩花「えー?」

 

彩花(それ、わたしにとってはすごいおいしい展開。)

 

彩花「好きな男の子って誰のことなの?」

 

圭一「それが・・・」

 

圭一「荒川君なんだ。」

 

彩花「・・・そうなんだ。」

 

圭一「高梨さん、荒川君のこと好きなんだよね?」

 

彩花「うん、大好きだよ。」

 

圭一「すまんな。これじゃ気まずい関係になってしまう。」

 

彩花「別にいいよ。葛西君が大輔君のことが好きなら、私たちはライバルってことにしとこうよ。」

 

彩花「大輔君もいろんな女の子と仲いいけど、その娘たちのことを憎んだりしないし。」

 

彩花「葛西君とは良きライバルで。」

 

彩花「もちろんたとえ相手が男の子だとしても、大輔君のことは誰にも渡さない。」

 

彩花「でもまだ付き合ってるわけじゃないし、公平にチャンスは与えないとね。わたしだけ抜け駆けしちゃずるいから。」

 

 

彩花「なんていうか、葛西君が大輔君のこと好きなの少し気づいてたかも。」

 

彩花「大輔君がいつも勉強も運動も学年でビリか、ビリから2番目をうろうろしてたのを、小4のとき葛西君が転校してから変わったんだよね。」

 

圭一「俺も昔はビリだったんだよな。荒川君がいたから今の自分がある。」

 

圭一「荒川君が俺の初めての友達だった。荒川君といるだけで楽しかった。」

 

圭一「いじめられたとき、荒川君がかばってくれて、2人でいじめっ子を見返してやろうって誓ったこともあった。」

 

圭一「俺が小5のころ転校して離れたあとも、荒川君と手紙のやり取りをしたこともあったな。」

 

圭一「中2になってまたこの街に転校してきて、真っ先に話しかけてくれたのも荒川君だったし。」

 

圭一「だが何年か会ってない間に、荒川君との距離は自然と離れていた。」

 

圭一「荒川君と一緒にいる時間はどんどん減っていった。」

 

圭一「それでも荒川君のことを見てるだけで幸せだった。今の彼は最高にかっこよかったからね。」

 

圭一「でも荒川君には仲のいい女の子がいた。高梨さんだった。」

 

圭一「荒川君は小学校のときも俺に見せたこともないような笑顔でいつも高梨さんと一緒にいる。」

 

圭一「俺は高梨さんに嫉妬したんだ。荒川君と一緒にいるのはなんで俺じゃないんだって」

 

圭一「俺が男だからダメなのか。女だったらよかったのか。」

 

圭一「荒川君にとって男友達はどうでもいい存在なのかって。」

 

彩花「そうだったんだ。」

 

圭一「どうして男の子同士で愛し合っちゃいけないんだろう」

 

圭一「それならなんで俺は男に生まれてしまったんだって。」

 

圭一「俺って情けないな。高梨さんは俺のことを良きライバルだって言ってくれたのに、俺は高梨さんのことを嫉妬することしかできなかった。」

 

・・・

圭一「高梨さん、俺にも荒川君と付き合えるチャンスを与えてくれたんだよね。」

 

圭一「それでも僕は気づいてた。荒川君にとって、僕のことはただのクラスメートにしか思ってないってこと。」

 

圭一「そりゃそうだろうな。男同士なんだし。男に恋愛感情抱くほうがどうかしてる。」

 

彩花「わたしは男の子同士もいいと思うよ。」

 

圭一「そりゃ高梨さんはああいう本を読んでるんだからそう思うだろうな。荒川君がわかってくれるわけがない。」

 

・・・

インディアン「君の願いって、女性アレルギーを治すことじゃないよね?」

 

圭一「え?何言ってるんだよ。僕は女性アレルギーを治すために」

 

インディアン「違うね。君はもう女性アレルギーなんかどうでもいいと思ってる。」

 

インディアン「君の本当の願いは、荒川大輔と恋人になること。」

 

インディアン「そのくらいの願いお安いご用だよ。」

 

男同士で恋人になれるわけない。そう思ってた。もうあきらめかけていた。

でもインディアンに頼めば・・・

 

そうして僕は願ってしまった。

 

圭一「荒川君と付き合いたい。荒川君の恋人になりたい。」

 

インディアン「承知しました。契約は成立だ。」

 

 

その願いがどんな形で叶えられたかは、想像もできなかった。

 

翌日、インディアンは・・・

 

圭一「な、何やってるんだ。」

 

インディアンは高梨さんに次々と魔力で襲いかかる。

 

インディアン「君は荒川の恋人になりたいんだろ?」

 

圭一「ああ」

 

インディアン「なら決まってるじゃないか。あの邪魔な女を殺してしまおう。」

 

インディアン「そうすれば晴れて君は荒川大輔とカップルだ。」

 

圭一「やめろ!その人は荒川君の大切な友達なんだ。高梨さんが死んだら、きっと荒川君は悲しむ。」

 

圭一「そしたら荒川君は僕を一生恨み続けることになるんだぞ。」

 

インディアン「そんなわけない。高梨彩花を殺すのは僕だ。君は関係ない。それに僕は人間じゃないし、証拠も残すことなく綺麗に殺せる。」

 

インディアン「安心して荒川と結婚すればいいよ。」

 

圭一「やめろ!僕は人を殺してまで荒川君と付き合いたくなんかない。」

 

インディアン「へえ。じゃあ君は荒川をあきらめるのかい?」

 

圭一「もっと他に方法がある・・・」

 

インディアン「ないね。高梨彩花は荒川大輔にベタ惚れだ。そして荒川も高梨のことを女の子として意識し始めている。」

 

インディアン「残念ながら高梨彩花を殺さない限り、君に勝ち目はない。」

 

圭一「そんな・・・」

 

インディアン「君自身、高梨彩花に嫉妬してるではないか。」

 

インディアン「ならば殺すしかないだろう。」

 

インディアン「それが嫌なら願いを取り消すかい?」

 

圭一「・・・」

 

僕はそのままインディアンの暴走を見ることしかできなかった。

 

確かに人を殺したくはないけど、でも荒川君と一緒にいたい・・・

 

救いは高梨さんが魔法少女だったということだ。インディアンの攻撃なんかでは簡単に死ななかった。


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