彩花/恋と魔法の物語   作:khiro

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3話 女性アレルギー

第3話

 

別の日の夜

 

彩花「なんとしてもこの本だけは絶対に手放さない。」

 

私はこっそりある本を買いに行った帰りだった。

それと同じころ、クラスメートの葛西君も本を買いに行っていた。

 

店員「ありがとうございました。」

 

圭一「早くこれをTKに届けるだけだ」

 

そして曲がり角でうっかりぶつかってしまう。そのとき

 

葛西君が私の胸にタッチした

 

彩花「うにゃあ・・・」

 

圭一「あ、ごめんなさい。」

 

彩花「いいの。こちらこそごめんなさい。別にわざとじゃないから・・・」

 

彩花(男の子におっぱい触られた・・・。)

 

圭一「女の子だったの?本当にすいません。よりにもよってこんなところ揉んじゃって」

 

彩花(不幸だ。男の子だと思ったのかな?)

 

彩花(どうせわたしのぺったんこな胸なんか触りたくもないだろうね。)

 

手元の袋を取り、家に帰った。

 

 

葛西の家

 

TK「ご苦労だった。」

 

TK「お前もこういう本見て少しは訓練しないとな。」

 

・・・

TK「なあ、俺のこと好き?」

 

TK「ああ」

 

TK「お前とキスしたい。」

 

TK「キスどころか、今夜はセクロスしたい。」

 

TK「お前の精子が欲しいんだ!」

 

TK「ってなんじゃこりゃー!」

 

圭一「そんなバカな・・・」

 

TK「誰がこんな漫画を買ってこいと言った!」

 

圭一「すまん。確かにメモに書かれた通りのエロ本を買ってきたつもりなんだが・・・」

 

圭一「あ!」

 

圭一「あそこでぶつかった人・・・」

 

・・・

彩花(なんてこと・・・)

 

彩花(わたしはこんなもののために・・・)

 

・・・

TK「あの娘たちはどこで・・・」

 

圭一「必ず取り返します。」

 

彩花「葛西君、ちょっと来て。」

 

体育倉庫近く

 

彩花「昨日ぶつかったの、あなただよね?」

 

圭一「はい。ごめんなさい。」

 

彩花「もういいの。それより・・・」

 

彩花「あの本を返してほしいの。」

 

圭一「わ、わかりました。」

 

 

圭一「どうするんだよ。あの本TKがビリビリに破いちゃったじゃないか。」

 

TK「仕方ないだろ。ついかっとなって。」

 

圭一「このままじゃエロ本も返してもらえないぞ。」

 

TK「それは、こうすればいい・・・」

 

 

夜、路上

 

男子「葛西とTK、またエロ本交換会か?」

 

男子「いや、相手女の子だぞ。」

 

男子「あれ高梨さんじゃないか?」

 

 

葛西「実はあのエロ本、もう必要ないんだ。僕が他の奴に頼んで入手した。」

 

TK「で君の本なんだけど、ついかっとなってビリビリに破いてしまったんだ。まあ俺のエロ本も返す必要ないし、水に流してくれないかな。」

 

彩花「・・・」

 

彩花「何軒も、何軒もはしごしてやっと見つけた最後の一冊だったのに・・・」

 

彩花「今月号はついにタカヤと純一の絡みが見られるはずだったのに・・・。」

 

彩花「それを、どうしてくれるの・・・」

 

彩花「あなたはそれでいいかもしれないけど、わたしの楽しみは帰ってこないのよ・・・」

 

TK「別にいいじゃねえか。」

 

圭一「本当にごめん。僕が探してくる。」

 

TK「は?お前何言ってんだ。こいつのことなんかどうでもいいだろ。」

 

圭一「だって可哀想だろ。TKもなんか言えよ。ぶつかって取り違えたのは俺だけど、破いたのお前なんだし。」

 

彩花「いいよ。気持ちだけ受け取っておく。」

 

彩花「TKとやら、あなたのことは絶対に許さないけど。」

 

 

彩花「不幸だ。」

 

唯「あやちゃん、これ・・・」

 

唯「私が買っておいた。親友なんだし。」

 

彩花「唯ちゃん・・・」

 

彩花「ありがとう。心の友よ」

 

唯「なにそれ。」

 

 

彩花「あの本はわたしの友達のおかげで無事入手できた。」

 

圭一「それはよかった。」

 

圭一「たかなしさんに相談があるんだけど」

 

彩花「相談?」

 

圭一「実は俺、好きな人がいるんだ。それが相手は男なんだ。」

 

彩花「えー?」

 

彩花(それ、わたしにとってはすごいおいしい展開。)

 

彩花「でも相談ってそれだけなのかな?」

 

圭一「それだけって?」

 

彩花「男の子が好きってことだけじゃなくて、もっと別の秘密があるんじゃないかと思うんだけど。」

 

彩花「実は何か特異体質があるんじゃないかと」

 

圭一「え?」

 

圭一「な、なんでわかったんですか?」

 

彩花「わたしの魔力。詳しくは言えないけど。」

 

彩花「その特異体質ってのは何かをみると吐き気を催すんだよね」

 

圭一「!? そこまで・・・」

 

圭一「実は女性アレルギーなんです。」

 

圭一「女の人の裸とか水着とか見ると吐き気がして、場合によってはゲロを吐く。」

 

圭一「高梨さんの転んでパンチラしたときとか、ブラが透けてたのを見たときも危なかった」

 

彩花「えー?」

 

圭一「ごめん。高梨さんにとっても恥ずかしいことなのに。」

 

彩花「別にいいよ」

 

彩花「わたしは不幸少女ですから。男子に下着姿を見られることにはもう慣れた。」

 

彩花「わたしならその女性アレルギーも克服できるかもしれない」

 

圭一「本当?それは助かる」

 

彩花「多分妖怪がとりついてるんだと思う。」

 

彩花「あと好きな男の子って誰のことなの?」

 

圭一「それが・・・」

 

彩花「・・・そうなんだ。」

 

 

・・・

圭一「TKとエロ本でも見て訓練してるんだけど、なかなかうまくいかないんだ。」

 

彩花「まあ、エロ本なんかじゃ無理だろうね。」

 

彩花「妖怪退治を専門としている魔法少女に相談に行こう。」

 

彩花「こんにちは、お邪魔します。」

 

唯「あやちゃん、いらっしゃい。お茶とケーキの準備をするわね。」

 

唯「あら、あやちゃんが男の子を連れてくるなんて珍しいわね。」

 

唯「荒川君と一緒に来たことはあったけど。」

 

彩花「彼、少し相談があって。」

 

唯「小原唯です。学校で会ったことあると思うけど。」

 

圭一「葛西圭一です。」

 

唯「それで相談っていうのは?」

 

彩花「実は葛西君には特異体質があって。」

 

圭一「僕、女性アレルギーなんです。」

 

唯「女性アレルギー?」

 

圭一「女の人の裸とか水着とか見ると吐き気がして、場合によってはゲロを吐く。」

 

彩花「わたしの魔力で、葛西君に妖怪がとりついてることがわかったんで。」

 

唯「そうね、確かに検出されるわね。」

 

唯「今回葛西君に取り付いているのは、牛の妖怪、ベコだね」

 

 

 

唯「あるものに嫌悪感を示す。」

 

唯「もともとはテレビもない、ラジオもない、電話もない、電車もない、バスは1日1本というような田舎が嫌な人の妖怪。」

 

唯「でもこれって妖怪というより、ただの特異体質なのよね。」

 

唯「葛西君にはいいところを紹介します。」

 

圭一「いいところ?」

 

唯「行けばわかる、行かないわからない、プールハウス♪」

 

彩花「それ2011年のクラブワールドカップの中継でよく見たCMじゃないですか。」

 

 

・・・

唯ちゃんによると水泳がなぜかこの体質改善にいいってことなので

これから市民プール、プールハウスに行きます。

今日は唯ちゃんは都合で来られなかったけど、代わりに大輔君と香苗ちゃんが一緒に。

 

大輔「彩花とプールって久しぶりだな。父さんや母さん抜きだと初めてだな。」

 

香苗「でもなんでぼくなの?」

 

彩花「わたしと葛西君だけじゃ心細くて。それに唯ちゃんがいないと妖怪に対する知識がわからないし。」

 

彩花「かなちゃんなら知ってると思ったから」

 

香苗「そうね、ぼくはあやちゃんの願いならかなえてあげられるわ。」

 

・・・

香苗「ぼくなんで胸が小さいのかな。ダブルAカップなんて。」

 

彩花「ダブルAカップはまだマシだよ。わたしはトリプルAカップ。最も小さいサイズ。」

 

彩花「かなちゃんってこの前からブラつけるようになったんだっけ?」

 

香苗「うん、でもこの胸じゃやっぱ必要なさそうだから普段はノーブラ。」

 

彩花「えー、それよくないよ。」

 

彩花「小さくても胸は揺れるし、わずかであれ(笑)その形を整えていないといけないって。」

 

彩花「あと第二次性徴期で胸が成長する時期は乳首が擦れて痛いし」

 

香苗「確かに」

 

・・・

大輔「お待たせ」

 

圭一「・・・」(口に手を抑える)

 

彩花「やっぱり女性アレルギーなんだ。水着姿見ると吐き気を催す。」

 

圭一「いや、そうでもなかった。」

 

彩花「なんだ。」

 

圭一「一応数年前よりはこの体質は克服してる。けどビキニとか見るとまだ吐き気はするんだけどな。」

 

圭一「なんでだろう?」

 

香苗「もしかしてボクたちの胸が小さいから・・・」

 

圭一「いや、そう決まったわけじゃないし。」

 

彩花「始めよう。」

 

彩花(ぺったんこで悪かったわね)

 

 

その日は大輔君の水泳教室のようなものだった。

もはや女性アレルギーのことはすっかり忘れたようなものだった。

 

圭一「ねえ、高梨さんと荒川君っていつごろから一緒にいるんだ?」

 

大輔「幼稚園に入る前からだったな。」

 

大輔「ほとんど生まれた頃から一緒だった」

 

圭一「そうなんだ。」

 

大輔「彩花って昔は泣き虫だったんだぜ。」

 

彩花「大輔君もよくクラスメートの男子にいじめられて、わたしが助けてあげてたでしょ。」

 

彩花「あとこれは葛西君も知ってると思うけど、小学校のころ勉強も運動も学年でビリだった。」

 

大輔「そうだったな」

 

彩花「でも大輔君のいいとこはわたしが一番よく知ってる。」

 

彩花「なんていうか兄妹みたいな関係なんだよね。大輔君が兄でわたしが妹。」

 

大輔「本当は彩花が姉で俺が弟だろ。誕生日は彩花のほうが早いんだから。」

 

彩花「1日違いなんだからあまり関係ないよ。」

 

圭一「やっぱ仲いいんだな」

 

彩花「葛西君、今日は少しは大輔君と仲良くなれたんじゃないかな。」

 

圭一「どうだろう。本当は荒川君と仲良くなるためではなく、女性アレルギーの体質改善のためだったんだが。」

 

 

数日後、再びプールハウスに来た。その日は唯ちゃんと。

 

彩花「お待たせ」

 

圭一「うわっ・・・」

 

圭一「これは無理・・・」

 

圭一「ゲーホッ」

 

彩花「葛西君、こないだは大丈夫だったのに・・・」

 

彩花「唯ちゃんのせいか。やっぱり巨乳だと女性アレルギーを発症するんだな。」

 

 

その後葛西君は病室に

 

圭一「僕はもう大丈夫だ。せっかくプールに来たのに泳いで帰っては意味ない。」

 

圭一「体質改善のためにも」

 

彩花「そうだね。でも無理しちゃダメだよ。」

 

 

こうしてこの日は葛西君と唯ちゃんの平泳ぎ

 

唯「巨乳のビキニ姿も見慣れてきたかな?」

 

圭一「そうだね」

 

唯「あ・・・」

 

そのとき、唯の水着が外れてしまう。お約束のポロリといったとこか。

 

唯「キャッ!」

 

普通の思春期の男子なら当然興奮して鼻血を出すところだが、女性アレルギーの葛西君にはそんなもんではなかった。

葛西君は失神してしまった。

 

 

圭一「ごめんな。恥ずかしいのは小原さんのはずなのに、俺のせいで二重に傷つかせてしまって。」

 

唯「別に気にしてないよ。むしろ葛西君も大変だなって思って。」

 

彩花「今回の水泳で、葛西君の体質を改善できてると思う。」

 

圭一「さすがにまだ生身の裸は無理みたいだけどね。」

 

彩花「そうか。」

 

それより私には葛西君に別の何か、別の妖怪が取り付いていることを感じていた。


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