杏ちゃんのお兄ちゃんは今日も大変です   作:わか

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杏ちゃんのきっと、素敵な未来

一生着ることはないと思っていたドレス。

どれもこれもキラキラと輝いている。

それは宝石なようで。

 

とても杏には手が届くものではない。

 

でも、今。

 

杏は鏡に映った自分の姿を見つめる。

 

自分の背丈ではとても見窄らしい。

こういうのはモデル体型の人が着るべきだ、と思ったりするが──

 

コンコンとドアをノックされる。

 

慌てて顔を引き締める。

 

「はい、どうぞ」

 

そこに入ってきたのは、プロデューサーとかな子と智絵里。

かな子と智絵里もドレスに身を通し、杏なんかよりよっぽど花嫁らしかった。

 

「杏ちゃん、可愛い……」

 

智絵里がそう言うが、杏にとっては智絵里のが何倍も可愛いように思う。

 

「お兄さんには連絡した?」

 

「してない」

 

「え?してないんですか、その、せっかくの機会なんですから」

 

かな子と智絵里が残念そうにしているが、杏にとって構わない。

こんな姿恥ずかしくて見せられない。

 

だから、杏は今回の仕事は一切兄には伝えてない。

 

とプロデューサーが申し訳無さそうな声で申し訳ない事をした、と小声で呟いた。

 

杏は特に気にも止めなかったが……。

 

 

そして、聖堂へ赴く。

ステンドグラスから差し込む日差しが、神秘的に辺りを照らしている。

この光に祝福されながら、愛を誓い合うのだ、と考えたら杏の顔が少し赤くなる。

 

首を横に振り、撮影に入ろうとした、その時。

 

聖堂の扉が開く。

 

「杏!!俺は!!まだ結婚は許さんぞォ!!……あれ?」

 

辺りが静まり返り、次に笑い声が。

杏は持ってたブーケで顔を隠す。

かな子と智絵里は「いいお兄さんだね」なんて言ってくる。

 

慌ててプロデューサーが事情を説明している。

兄は必死に頭を下げ、プロデューサーに促され、端っこに座る。

 

どうやら見学していくみたいだ。

 

 

仕事も終わり、杏は兄の元に行く。

 

「バカおにぃ」

 

「うっ、すまん。プロデューサーさんから杏のウェディングドレスが見れますので、良かったら見学しに来ませんかって、連絡が来て……。早とちりした、ほんと申し訳ない……」

 

杏はため息をつき、顔を引き締め、意を決したように兄に尋ねる。

 

「に、似合ってる?」

 

兄は杏を見つめ、何か考える素振りを見せるが……。

 

「すまん、こう、かっこ良く褒めようと思ったけど、何も浮かばない」

 

「はぁ……。別にかっこ良く言う必要ないじゃん」

 

「そうだな。じゃあ、綺麗だ」

 

杏は、それを聞くと満面の笑みで──

 

「当たり前」

 

ピースしながらそう兄に言い返した。

 

兄は、杏のいつかの未来に思いを馳せ、少し寂しさを覚えながら、嬉しくもあった。

 




ジューン・ブライドです。
6月ぎりぎりセーフ。

月刊まるごと杏ちゃん。
次回7月更新…かな?

これだけ期間空いた割には短くて申し訳ないです。




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