四月某日。346プロ内の一室にて。
ここから下を覗くと、敷地内で咲いている桜が見える。
それを見ていた卯月はみんなとの親睦会を含め花見を提案する。
「みんなでお花見をしませんか?」
「いいね。花見しよ!!」
未央が賛同し、みんなも頷く。
しかし、ソファーで寝ている杏からは返事が聞こえない。
「杏ちゃんも来ますよね?」
「ん~私はパース」
卯月の言葉に杏は拒否の態度を示す。
その証拠に熟睡しようとアイマスクをポケットから取り出す。
「杏ちゃ~ん!!ダメだよー。こういうのはぁ~みんなで集まるのに意味があるんだからぁ!!」
きらりが杏を抱きかかえる。
「えー。うーん、じゃあ、行くよ」
折れた杏にみんなはホッとする。
「じゃあ、今度の日曜日に。場所は考えておきますね!!あとでメールします」
そうしてレッスンに戻っていく。
どさくさに紛れ逃げようとする杏を捕まえ、きらりはみんなの後についていく。
◆
「へー。花見かぁ、いいじゃないか。同期の人たちとの交友の場だ。楽しんでこい」
「おにぃも一緒に来てよ」
「なんでだよ……。俺が行ったら変な空気になるだろ?」
「だから彼女ができないんだよ……」
杏は兄に聞こえない声でボソッと呟くが、兄が聞き逃すはずもなく。
「悪かったな!!俺はこう、俺のすべてを許容してくれる懐の深い女の子がいいんだ」
「へっ。冗談きついぜ」
「杏!!」
怒鳴られた杏は脱兎のごとく自室へ逃げていく。
「はぁ……。でも、花見かぁ。俺も花見誘われてるんだよなぁ。杏たちはどこでするのかな?」
◆
当日。集合場所に集まったアイドル一同は予めプロデューサーが場所取りをしてくれていた場所までやって来る。
彼女たちの手には各々が持ってきたお菓子やジュースがある。
「こ、これは!?赤き煉獄から蘇った、イフリート!?」
蘭子がよくわからないお菓子の解説をしているが、持ってきた未央はみんなで試食してみようと言っている。
「これ、暴○ハバネロですよね。しかも、辛さ三十倍って、私食べたことないんですけど……。誰か食べたことありますか?」
卯月の言葉にみんなは首を横にふる。
とそこにドヤ顔で手をあげる人物が一人だけいた。
その子はいつもなら寝ているのに今日は普通に座り、お菓子をまだかなーと待っている。
もちろんその子の名は──
「杏ちゃん。食べたことあるんですか?」
「もち。杏が食べたことないお菓子なんてこの世界にないんじゃない?」
みんなは絶対あるよという顔をしているが、杏のドヤ顔が決まりすぎて、反論できない。
「じゃあ、はい。杏ちゃん」
「え?」
「食べたことある杏ちゃんからどうぞ」
未央からハバネロを受け取り、それを見つめる。
そして、そのまま流れるように隣にいた蘭子に渡す。
「ふえっ!?」
蘭子は隣にいた、李衣菜に渡す。
そして、一周し、杏の元に戻ってくる。
「なんでだよ!!」
杏から出たとは思えない大声でキレる。
杏は震える手で袋を開ける。
その時走馬灯が頭を駆け巡る。
(そう言えば、食べたって一枚しか食べてないんだよねぇ)
(あの時は、一枚で無理だったから、おにぃに無理やり食わしたんだった……)
「あれ?杏?」
「え?」
そこに偶然か兄が通りかかる。
「あ、どうも皆さん。杏の兄です。いつも妹がお世話になっています」
みんなが兄に挨拶する。
兄は杏に楽しめよと言い残し去っていこうとする。
しかし、杏がこんなチャンスを逃すはずがなく。
「あ、兄が全部食べるって」
「え?何が?」
「兄これ大好物でね。良かったらあげていい?」
「え、ちょ」
「そうなんですか?じゃあ、お兄さん、どうぞ」
持ってきた未央の許しが出て、めでたく兄の元に暴○ハバネロがやってきた。
「…………あ、じゃあ。これ貰っていきますね。そ、それじゃあ」
「待てよ、おにぃ」
「な、なんだ」
「食べていきな」
「まじ?」
悪い顔で迫ってくる杏の言葉を断れきれず、この後ヒーヒー言いながら食いきった兄がそこにはいた。
◆
「シンデレラプロジェクトを担当しているプロデューサーです」
「杏の兄です。いつもお世話になっています」
この後プロデューサーと二人で桜を見ながらお酒を飲みあったのは別の話。
遅れて申し訳ない。桜が咲くどころか散ってますね。
ここで今後についての説明を。
後二話で兄の交友関係を広げ、その伏線は放り投げ、杏を中心としたちょっと特殊な話に方向転換するかもしれません。
ご期待ください。
待っててくれた方いるのかな?おまたせしてすみませんでした。
次の話はいつになるかわかりませんが、気長にお待ちください。
アニメ9話が私得すぎて死んでました。特に幸子が輝いてました。
では、また次の話で。