『ウーサギ√αシリーズ、チョコ○ッグ全二十五種類プラスシークレット五種類、合わせて三十種類で発売!!全国のコンビニ、スーパーにてお買い求めください』
テレビからそんなCM音が聞こえてくる。
そして、それを聞き終わるとガバっと杏が立ち上がる。
「杏どうした?」
「なん……だと。メーデ、メーデ!!」
杏が震えながら叫ぶ。
兄の脳裏に嫌な予感が過る。
「杏、買うのか?」
「買う」
「でも、お前。これ、三十種類って……」
兄はテレビを指しながら呟く。
しかし、杏は首を横にふる。
「おにぃ、いつやるか、今でしょ」
「それは貯金を使うということか?」
「やらなくちゃ、やられる」
「何にだよ」
兄は呆れながら、杏を宥める。
「いくらかかると思う?三十だぞ、三十。全部集める気か?」
「もち」
杏はそういうと自室へと行く。兄はその後を追う。
杏が部屋へ入ると、タンスの裏から通帳を取り出す。
「今までのお年玉十万……。いける」
「いや、やめとけって。それは無駄使いって言うんだぞ?」
しかし、杏には聞こえてないのか、必死に頭で計算している。
一つ二百円だが、それが三十種類となると、果たしてどれだけの確立になるのか。
◆
そして、杏の戦いが始まった。
初めに、近くのコンビニで箱買いする。
「よし、十種類コンプリート」
本当に買ってきた杏に、兄は大きくため息をつく。
そして、兄の影での戦いが始まる。
◆
ついに近所のチョコ○ッグを買い占めた杏は最後の駄菓子屋に行く。
品揃えが完璧と評判の店だ。
残り一種類となった杏はこの店で終わらせる気だ。
一個ずつ購入していき、その場で中を確かめる。
とそこに一人の女の子がやって来る。
その子は杏が買い占め残り一個となっていたチョコ○ッグを購入する。
絶望する杏は、その子にものだけ確認したいと申し出る。
「えーと、あ、これシークレットのウサエモンだ!!やったぁ!!」
その場で倒れる杏。
何を隠そう杏が欲しかった最後の一個はウサエモンだったのだ。
喜んで帰っていく女の子とは反対の道を肩を落としながら帰っていく杏。
「ケチらなければよかった……」
◆
「杏~ご飯だぞー。まだいじけてるのかー?」
「いらない」
布団にこもって、出てこない杏。
兄はタンスの上に並んだウーサギを見て、何かを考える。そのまま自室へと行き、何かを取ってくる。
「杏。残り一個ってこれか?」
杏は布団から顔を出す。
「…………。な、なななな!????それ、どうしたの!?」
杏は飛び起きると残り一つだったウサエモンを兄から奪い取る。
「ちょうだい!!ちょうだい!!」
「いや、もう取ってるじゃん。まぁ、あげるよ」
「きゃっほーい」
喜んでいる杏に、兄は早く来いよと言い残し、部屋を去る。
兄は一階に行く前に自室へ寄る。
「これ、どうすっかな」
プラスチックの箱を開けるとウーサギシリーズのフィギュアがひしめき合っていた。
苦笑し、空っぽになった財布で涙を流し、バイトのシフトをもっと入れようと思う兄であった。