NARUTO 狐狸忍法帖   作:黒羆屋

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今回はいつもより少なめです。


第91話

 …僕は今、鉄の国に来ています。

 一連の人柱力襲撃に関する会議をしておかねばならんとの事で、各忍里の長が終結して話し合いをする、「五影会談」のための準備をするためです。

 まあそうですよね、人柱力は各里の切り札といっても良い。

 それが「暁」という得体のしれない組織に、しかも複数渡り、何に使われるか分かったものではないという状況。

 下手をすればその強力無比な力がこちらに向くかもしれないとなれば、警戒するのも当然でしょうね。

 で、その五影会談を行う事になるのがこのやたらと寒い「鉄の国」になるのです。

 ここは北方からの風によって一年の半分近くが雪に閉ざされる極寒の国。

 侍という盛況な戦士集団が国を守っています。

 その戦い方は正統派。

 僕にとっては戦いやすく、また最も倒しにくい相手でもあります。

 え? どう言う事かって?

 確かに正統派の戦いをする人に対し、僕みたいに小細工をしてその真っ当な状態を崩す事で相手を陥れる戦い方をする者は優位に戦える場合が多いです。

 でも、逆に言えば正統派って言うのは戦い方を崩さない限り邪道に対して優位に立てることをも示しているんです。

 自分自身が修行で得たものは自分を裏切らない。

 半端な実力や気持ちで戦う者は僕みたいな邪道に勝てないです。

 でも突き詰めた正統派は絶対に崩れない、崩すことが出来なければ僕みたいな邪道は勝てないんですよ。

 更には、侍ってチャクラ刀と対忍術・幻術用甲冑に身を固めてるんで、生半可な術だと効果がないし、かなりの大技使っても一撃で仕留めるのは難しいんです。

 そんな大技は大体使った後の隙がそれなりにあるもんで、その隙を突かれて仕留められちゃう事も多いんです。

 正直言って、熟練の侍ほど忍にとって戦いたくない相手はないんですよね。

 そんな強力な戦闘集団を抱えている鉄の国ですが、ここがあるおかげでかつては忍び同士の抗争が抑えられていたんですよね。

 その名残りが5大忍里の長が集まって話し合いをする五影会談の会議場所としての鉄の国な訳です。

 でもって、僕たち使節団はその鉄の国の大名の側近、侍大将のミフネさまとお会いしています。

「ふむ、そなたが火影殿の名代か…」

 結構なお年なはずなのですが、ミフネさまは顎髭をしごきつつ、はりのある声で僕に話しかけました。

「はっ、木の葉隠れ、茶釜ブンブクです」

 僕がそう言うと、

「ほう、そなたが来たか…。

 そなたの活躍の噂はいろいろ聞いておるぞ」

 そう目元だけに笑いを含めてそう言いました。

 …どんな噂が立ってる事やら。

 

 

 

 ミフネは侍の国、鉄の国の実質的な指導者である。

 厳しい自然は鋭く尖った(かんな)の如く人を鍛え上げる。

 侍という特異な戦士集団は過酷な環境より練り上げられたものだ。

「和に忠義を尽くす」とは彼の言葉だ。

 和を重んじ武士道精神をその心得とする、忍全盛の時代において既に時代遅れと言われる思想を愚直に守る、そしてそうであるが故に忍からも一目置かれる人物である。

 そのミフネが気にかけていたのがこの男、茶釜ブンブク。

 実の所茶釜の一族は鉄の国にも存在している。

 忍でない茶釜の一族はその姓を変え、鍛冶や陶工で生計を立てている。

 ミフネの配下にもかの一族の鍛えたチャクラ刀を使っている者もいる。

 それとは別に、ミフネはブンブクについての調査を部下にさせていた。

 それは数年前、志村ダンゾウの配下としてブンブクが働き始めた時に遡る。

 ダンゾウという男をミフネは警戒しつつも敬意を持っていた。

 彼は侍の行いから最も離れている、しかし同時に侍の思想に最も近い忍でもあった。

 滅私奉公。

 全てを捨てて尽くす。

 それは侍の思想の根幹をなすものであった。

 そのダンゾウが後継者を選んだという。

 ミフネにも後継者は居ると言える。

 彼は己の剣術を己の「道」と共にその弟子達に教えてきた。

 彼にとって己が刀と己の思想を受け継ぐ者は全て後継者であった。

 この考えは木の葉隠れの里における「火の意志」に通じるものがあるだろう。

 ダンゾウの後継、それはどのようの者なのか、ミフネは興味を持った。

 そのものの情報を集めさせてみて、ミフネは驚いた。

 一見情報を統合してみると、実にダンゾウの弟子らしい人物が浮かび上がってくる。

 忍界に広まる茶釜ブンブクの噂、それらは幼少時より培われてきた、えげつない扇動者としてのイメージだ。

 木の葉隠れの里を有利にするために様々な人心掌握術を駆使して自身の意見を通していく。

 従来の忍の枠を超えて、殴り合いをしない戦い方を極めた外道であると。

 面白い、と感じた。

 ダンゾウの弟子なればよほどのが剛腕かと思いきや、「口」を武器にする奴とは。

 どこかダンゾウとはやり方が違う事を感じつつ、ブンブクとあったのはもう1年と少し前か。

 あった時は線の細い、能天気な少年としか見えなかったが、話をしてみるとこれが面白い。

 奇妙な発想とどこから持ち出したのか不明の知識を以って、「双方に利のある」交渉をしていく。

 忍びを含む武辺の者はどちらが勝つか、負けるか、の極端に話が行きがちだ。

 命のやり取りとはそういうものであるからだろう。

 彼は違う。

 常に物事の落とし所を探り、双方の納得のいく場所を探そうとする。

 ブンブク曰く、「僕は弱いので、限定的勝利を狙うしかない」からだと言っているが、それならば相手の利益を考える必要はあるまい。

 ブンブクにはダンゾウの冷徹さと、3代目火影・猿飛ヒルゼンの優しさを同時に感じる、そうミフネは思う。

 かの様な若者が育っているのであれば、「火の意志」は確実に引き継がれておろう、ミフネはそれを嬉しく思うのである。

 

 久し振りに会ったブンブクは、ミフネの目から見ても好ましく成長していた。

 五影会談を行う会場でもあるこの地の長であるミフネは、会談の大まかな所をブンブクを通じて木の葉隠れの里の要望を聞いていった。

 実際の所、会談における大まかな部分は既に話し合いが終わっている。

 そういった部分を司るのはミフネとブンブクではなく、政治を司る官僚同士との話し合いによってあらかじめ決まっており、最高責任者でるミフネの所に上がって来るまでにあらかた決まっているものだ。

 ブンブクとあっているのは儀礼的な部分、そして…。

「うむ、火影殿よりの提案は以上であるな、では下がって良い」

「はっ!」

 ブンブク達がそう言われて退出した後、

「今日の政務はこれで終わりじゃ、お主らも休むが良い」

 ミフネはお付きの侍たちも退出させた。

 そして。

「…おるな、ブンブク」

「はっ!」

 そこには、退出したはずのブンブクが残っていた。

 幻術により退出したように見せかけていたのだ。

 ブンブクはミフネの前に片膝を突き、ミフネの前に侍っていた。

「…それでは本当の意味での鉄と木の葉の会談を始めようか」

「はっ!」

 ブンブクはすうっと息を吸った。

 ブンブクが目を閉じる。

 そして目を開けた時…。

「ミフネ殿、御無沙汰をしておりますな…」

「ダンゾウ殿」

 そこにいるのはブンブクであってブンブクに非ず。

 その気配は「根」の長にして5代目火影、志村ダンゾウそのものであった。

 

 ブンブクを介してダンゾウがミフネの前に現れた。

 これはいくつかの術を併用しての裏技の様なものである。

 関わっているのは山中フー、そしてブンブクの口寄せ動物である安部見加茂之輔である。

 カモは遠話によってブンブクを繋がっている。

 それのラインを利用し、フーは自身とダンゾウ、ダンゾウとカモ、カモとブンブクを心転身の術で次々に入れ替え、ダンゾウの意識をブンブクの中に押し込んだのである。

 そして、

「ダンゾウ殿、こたびは…」

「さよう、()()件だ。

 もし例の輩が存在するのであれば、この会談に介入してくることは間違いなかろう」

 ミフネとダンゾウが話し合っているのは、この世界に存在するかもしれない、しないかもしれない不明の存在、「介入者」についてであった。

 ミフネはブンブクを介してダンゾウと接触した時にこの話を聞いた。

 そして、はたと思い浮かぶ事があったのである。

 ミフネは忍ではない。

 しかし同時に、忍界の大事に際して当事者としてではなく、その間に立ち調停をする役回りの侍集団の長として忍界を見てきた。

 そう、ミフネ達侍は第3者として外部から忍界を見る事の出来る存在であった。

 そして外部の冷静なものの見方をすると、忍界の騒動が1本に繋がっている様な、そんな奇妙な感覚を得ることがあったのである。

 更にそれを助長したのが「ヒルゼン狸夜話」である。

 ミフネはふとしたきっかけでその本を手に入れた。

 3代目火影・猿飛ヒルゼンの著書というそれは、何とも奇怪な代物だった。

 年経た化け狸とヒルゼンとの茶飲み話というそれは、歴史は繰り返すという言葉通り、昨今の忍界の状況と似通っていた。

 当事者である忍にはそう思えないだろう、しかし、調停役であった侍、こと、年経て様々な経験を積んだミフネにとっては見逃すことが出来るものではなかった。

 ミフネは秘密裏に6代目火影・千手綱手と連絡を取り、志村ダンゾウと謀議を繰り拡げる事になった。

 今回の会談もその1つ。

 話し合いは続いた。

 

「…この五影会談で仕掛けるつもりだ」

「正直気が進みませんな…」

 ダンゾウの言葉に、ミフネは渋い顔をする。

「何故だ?

 鉄の国の負担にはならん、どの里においても悪い事はおきんぞ」

 ダンゾウは平然とそう言う。

「それらは全てあなたが泥をかぶる事になりましょうに…」

 ミフネは眉を顰める。

 そう、居るか居ないかも分からない介入者へ対しての仕掛けは、ダンゾウ個人へと集約し、最悪の場合ダンゾウの身の破滅という事すらありうるものであった。

 しかし、

「ミフネ殿、貴殿なら分かるはずだ、誰かがやらねばならぬと。

 なれば忍の中で最も暗い部分を持つものが行うのが最適である。

 それゆえの事に過ぎぬ」

 ミフネは侍だ。

 その本質は武士道という言葉に集約される。

 様々な思想の入り混じったものではあるが、その中に「滅私奉公」がある。

 己を殺し、大義のために働く、という意味であろうか。

 無論「御恩と奉公」という言葉がある通り、自分が得るものなくして一方的な支出はあり得ない。

 金銭であったり、名誉であったり、何かしら得るものがない奉公は成り立たないことが多い。

 ミフネにとっては名誉。

 他者からしてみれば価値の無いものでも、ミフネにとっては値千金、それ以上の価値があるものだ。

 ならばダンゾウは何を得るのか。

「ダンゾウ殿、あなたはその結果、何を得るのだ…?」

 ミフネはダンゾウにどうしても聞いておきたかった事を尋ねる事にした。

 ブンブクの姿をしたダンゾウ、彼はすいと虚空を仰ぎ、

「そうさな…、ワシが得るものは…」

 彼は、彼を知る者が見れば信じがたい、そう思うような表情をして、

 

「得る事の出来なかった、『継ぐ者』か、の」

 

 そう呟いた。

 ミフネには家族がいる。

 妻があり、子があり、孫がある。

 ダンゾウにはそれがなかった。

 続く戦乱の中、全ては失われた。

 ダンゾウが「根」という組織を維持できたのは妻や子、血族などが失われている故の無理が出来た、という部分は少なくなかろう。

 しかし、己を継ぐ者、油女トルネ、山中フー、そして茶釜ブンブク。

 ダンゾウの後に続くと「己の意志で決めた者」がいる。

 それがあるが故に、ダンゾウは彼らの先に道を欲する。

 もしかしたら、これこそがダンゾウの「火の意志」なのやもしれなかった。

 

 

 

 会談が終わったようです。

 僕の体に「僕」が戻ってきています。

 目の前には疲れたようなミフネさま。

 大分お疲れだなあ。

 ミフネさまは、

「見つからぬように帰るのだぞ」

 と、疲労の滲む声で言いました。

 僕は一礼をすると窓に近付きその桟に手を掛けて、

 ぼん!

 という煙と共にいつもの準省エネモードへと変化しました。

「それではミフネさま、失礼いたします」

 そう僕は言い、窓からダイブ!

 八畳風呂敷くんで皮膜を作り、山からの寒風を受けてふわりと飛び立ちました。

 

 これからは他の里の忍たちとの話しあいです。

 ミフネさまのとこともやりましたけど、党首会談って言うのはどっちかっていうとパフォーマンスに近いんですよね。

 取り決めとかそういうのは当主が顔を合わせる前にまとまっているものでして、そこいらを纏めるのが一段下っ端にいる僕らの様な立ち位置の連中なんです。

 その中でも僕は新参のペーペーなんですけどね。

 さて、他の五大国の方々とも話し合いをしなければ。

 僕が(よしみ)を結んでいるのは、まず第一に砂隠れ。

 こことは自慢じゃないけど上層部の人たちのほぼ全部と仲が良い。

 これは木の葉と砂の関係がうまくいっているせいもあるんだけど。

 逆に、岩隠れとはなかなか上手く行ってない。

 こと、第三次の忍界大戦において岩隠れと木の葉隠れはかなりがっちり敵対していた為でもある。

 砂隠れと拗れていたのはその一世代前という話だから、やはり恨みは近い時代の方が強いものみたい。

 何度か岩隠れの里に入っているものの、最初に行った時なんてけんもほろろに追っ払われかけたしね。

 必至こいて逃げ回っていたら、「やる気が削がれた」って入れてくれたけど。

 土影さまにはお会いできず、書状を置いてとっとと帰還する羽目になった。

 そのあと何回も行ったから、最終的には土影さまに会う事も出来たけどね。

 正直言ってうまくいっているとは思い難い。

 雲隠れと霧隠れはまあ半々くらいだろうか。

 雲に関しては戦後にかなり木の葉が譲歩した事もあってかなりの改善が見られていたんだけど、今回のうちは兄ちゃんのビーさん襲撃で一気に態度が硬化したらしい。

 らしいて言うのは、ここしばらく僕が雲隠れの里に行けてないからってのもあったりする。

 自慢じゃないけど長距離移動と情報伝達に関しては僕は忍の中でもトップクラスといって良い。

 その僕が暫く飛脚任務から外れていたもんだから、情報のやり取りが遅くなっていたという話。

 で、霧隠れに関しては、どうやら第三次忍界大戦の折り、木の葉隠れは同盟国を霧に潰されたというのがあるらしく、未だにそれを恨んでる人が多いのでは、と疑われているんだそうだ。

 故に、下手に木の葉の提案に乗って後からしっぺ返しを食らうのは勘弁、という上層部の方々の意見が根強く、未だに有効な提案が出来ていないのが現状。

 距離もあるし、何より海という天然の要害があるのが大きい。

 僕も水影さまに会ったのは一度きりだ。

 えらく綺麗な人だったけど、周囲から「年」「結婚」は禁句と言われた。

 …綱手さまもそうだけど、やっぱり「影」の肩書が邪魔してるのかしらん。

 血継限界である溶遁と沸遁を使いこなす優秀な忍でもあるし、里でも旦那さんになる人は引く手数多のようにも思うんだけどなあ。

 水影さまからの評価はそれなりだったんだけど、それ以外の人たちから睨まれるようで、僕はあの里ではあまり好かれてない感じなんですよ。

 まあ、それはともかく、他の里に人たちとも色々話さないと。

 例えば宿。

 同じ宿に五影さまが複数泊ると警備の面とかいろいろ面倒なんです。

 元々は敵対していたというのがある以上、ね。

 かと言って宿を適当に取ると泊まった宿の格によって喧嘩が起きかねません。

 そこいらを話し合って、影の皆さまが止まる宿を調整しないといけません。

 随員の数とかもしっかり決めとかないといけません。

 忍の場合は1人の違いが圧倒的な強さに繋がる事も多いですからね。

 そう言う訳で、いろいろ忙しいのです。

 僕以外が。

 いや、一応僕は今回の調整役のトップという事になってますけど、実際にこう言った交渉事は経験豊かな方が生き残ってますから。

 戦闘は苦手であったり、そもそも忍ではない方々ですけど、それだけに3度の忍界大戦で矢面に立つ必要がなかった為にその経験を生かすことが出来る方々がたくさんいらっしゃいますので。

 僕のお仕事はそのフットワークを生かした伝令ですね。

 はいそこ、使いっぱしりとか言わない!

 …否定できないけど。

 今はそう言った雑務を含む事務仕事をする人が各里からやってきているので僕の出番はほとんどないんですね。

 

 数日経って、とうとう各里の長である「影」の皆さまが随時到着なされるようになってきました。

 まず到着なさったのが水影さま。

 側近の青さんと、長十郎さんを随員としていらっしゃった。

 こちらを向く前に膝を突き、礼の姿勢を取ります。

 失礼があってはいけませんからね。

 水影さまがこちらを見たようです。

 長十郎さんは顔なじみである僕がすぐに分かったのでしょう、

「あ、お久し振りです、木の葉の」

「は、長十郎さまにおかれましてもお変わりなくご活躍されている様子!」

 ちょっと硬いかもしれないですけど、立場的には「忍刀七人衆」である長十郎さんは「水影の側近」という立ち位置です。

 今回の様な正式な場では暗部の下っ端である僕がへりくだるのは当然の事。

「え! ちょっとブンブク君!? やめて下さい、そんな…」

 いやいや、これがこの場合普通ですから。

「長十郎!

 この場合はブンブク殿が正しいのだ。

 今、我らは水影さまの随員として来ておる!

 一方ブンブク殿は先ぶれの事前交渉員として来ておる、そう言う事でしょう?」

 左様です。

 長十郎さんはまだ若いし、現場でバリバリと働く人でしょうけど、経験を積んで裏方としても働いている青さんなら分かるんでしょう。

 こういう場は権威とか無視して動くと駄目です。

 権威というのは暴力を想起するものではありますが、暴力を振るわなくても良い力でもある訳で、もめごとが実際に起きる前に食い止める防波堤の役割もしてくれるものです。

 権威を守る為の暴力というのもおきますが、権威がある故に暴力まで行かないで止める事も可能な訳です。

 故に、僕は()()()()権威を守るのはいいことだと思います。

「良いか長十郎、我々の時代は権威を作り上げていった時代だ!

 確かにこの考えは時代()()なのかもしれん!」

「…遅れ!?」

「それを()()良く、粘り強く積み重ねていったが故に今の霧隠れの里があるのだ!」

「…婚期!?」

「確かに、悔()()()労もあった、条約を()()された事もあった、だがな、それらを糧にして我らは『血霧の里』という汚名をすすごうとして来た、この過程が研いなのだ! それをだな…」

「婚約、破棄…、 おい…」

「は?」

「黙れ、殺すぞ…」

「…えー!?」

 …相変わらずです。

 青さんの台詞はどこか癇に障ることがあるらしく、水影さまはときどきこうなるんですよねえ。

 なぜでしょ?

 

 次にいらっしゃったのは土影さま。

 目に付いた時には同じく片膝をついて頭を垂れます。

「む、なんだダンゾウんとこの餓鬼か。

 けっ、着いた早々つまんねえモンを見たんじゃぜ」

 相変わらず嫌われてます。

 まあ、土影さまとしては、こと陰謀を企んで岩隠れに大きな被害を出したダンゾウさまを嫌ってますからね、仕方ない。

「なんだ狸じゃないか。

 いつもの格好じゃないのか?

 ん…? そういやその面はどうしたんだい?

 あ、そうかい、アンタ上忍になったのかい、おめでとさん」

 そう言うのは土影さまのお孫さんに当たる黒ツチさん。

「おお、狸は偉くなったんダニ。

 これからも頑張るんダニ」

 そう言うのは巨漢の赤ツチさん。

「けっ、いちいち木の葉の奴になんぞ構っとらんと行くんじゃぜ!

 先を急ぐんじゃ…」

 グキッ!!

 うぁやな音が…。

「こっ…腰があっ!?」

 あ、やっぱり。

 土影さま、持病のぎっくり腰が良い音立てちゃいました。

 ひょいと赤ツチさんが土影さまを担き上げます。

 土影さまは色々喚いてらっしゃったけど、結局は赤ツチさんに運んでもらうようです。

「じゃね、狸、また後で」

 黒ツチさんはそう言って、僕の前から立ち去りました。

 …一言言いたい。

 僕は狸じゃな~いっ!

 

 雷影さまと風影さまもいらして、後は火影代行の5代目火影、我らが長たる志村ダンゾウさまを残すのみとなりました。

 あ、いらっしゃったようです。

「…」

 ダンゾウさまと側近のフーさん、油女トルネさんです。

 む、血の匂い。

「…林の国の般若衆の残党よ」

 なるほど。

 ダンゾウさまが里を出るのは珍しい事。

 その機を狙って復讐を果たそうとしましたか。

 復讐そのものを否定する気はありませんが、やるなら必勝を期さないと。

 とは言え、ダンゾウさまの情報を入手するのは至難の業。

 さすがに恨まれることの多い「根」の情報は秘中の秘ですよね。

 しかし、般若衆といえば、音隠れの里にいる「卍党」の人たちの大元になった忍者集団。

 かなりの実力の忍軍と聞いていましたが、いくら残党とは言え3人とも無傷なのはさすがです。

 フーさんとトルネさんお疲れ様です。

「…何を考えてるか知らんが、それは間違いだ、ブンブク」

 トルネさんがそう言います。

「我らは何もしていない。

 般若衆17人はダンゾウさまお1人で」

 …さすが火影さま。

 しかし、どうも目立ち過ぎている気がしますが。

 僕がそう考えていると。

 ダンゾウさまがにやりと笑った。

 …そう言う事ですか。

 今回、ダンゾウさまは何か大きな手を打つつもりのようだ。

 僕はすっと頭を下げた。

 その間にフーさんとトルネさんに目配せをする。

 -ダンゾウさまを守りましょう-

 -無論-

 -うむ-

 ダンゾウさまには悪いけどまだまだ僕らは影働きを仕切るには未熟と思ってる。

 まだダンゾウさまには居てもらわないと。

 そう考えるのは本当は酷な事なのだけど。

 

 そして、五影会談が始まる。




次回は、サスケ側の話となります。

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