NARUTO 狐狸忍法帖   作:黒羆屋

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これにて珍道中編の終了です。
今回はちょっと少なめです。
次回からはしばらく閑話を書いていく予定。


第84話 ブンブク

 ブンブク

 

 なんか夢を見ていたような感じがした。

 あ、また「外道魔像」の中にすっ飛ばされたのかしらん。

 ペインさんの周囲にいましたし、外道魔像の中に僕の分身を残しているのでリンクが繋がりやすいのかしら。

 ぼんやりだけど、尾獣のみなさんが和気あいあいとやっているのを見たような気がします。

 …っていうか、忍界はこんなにドタバタしているというのに、その中心にいる(びじゅう)達は気楽なもんです。

 まあこれが「台風の目」と言うものなのかもしれませんが。

 

 気が付くと、僕はどでかいクレーターの淵にある木々の枝に引っかかってました。

 きしむ体に鞭打って、地面に降りてみると、どこか呆けたような顔のお姉さんが1人。

 紙で作った花のコサージュをつけた彼女。

「ども」

 僕は声をかけました。

 彼女、小南さんは僕を見るとふっと微笑みました。

「アナタの言った通りになったわね、茶釜ブンブク」

 小南さんはそう言いました。

 言った通り?

 …ああ、あれかあ。

「…自分の限界を決め、そこで落ち着いてしまったワタシ達に勝ちなどなかった、という事ね」

 そう言う意味合いもあったんですけど、ね。

「小南さん、ペインさんは『できる人』であるが故の落とし穴にはまったんだと僕は思うんですよ」

 僕はそう切り出した。

「…どう言う意味?」

「ことわざにあります、『三人寄れば文殊の知恵』と」

「…聞いた事がありませんね、どこの言葉ですか?」

 ありゃ?

 …ええっと、んじゃこっちだ。

「『二つの目は一つの目より多くものを見ることができる』ってのはどうです?」

「…その心は?」

「凡人といえども複数人集まって相談すれば、知恵者に劣らぬほどよい知恵が出るものだということ言う意味なんですけどね。

 前に大蛇丸さんにも言ったのですけど、視点の切り替えって大事なんですよ。

 1つの問題を複数の見方で見ることで、その問題の本質がどこにあるか、それが見えてくるんだと思います。

 小南さんたちは物事を決める時にはどうやって決めてました?

 ペインさん1人で決めていたんじゃないかと思うんですけど」

 そう言うと、小南さんの顔色が曇った。

 

 

 

 小南は、そう言うことか、と納得してしまった。

 かつて「天秤のイリヤ」に問われた言葉。

貴女(こなん)は貴女の思うように(ながと)の役に立っているか?」

 その言葉を思い出す。

 今考えるとどうだろうか。

 自分がしてきた事は、長門の為の行動だったか。

 考えることを止め、全てを力があるからと言って長門に任せっきりにしてはいなかったか。

 思えば弥彦とはずっとそうやって来た。

 最終的に決めるのは弥彦でも、彼は全部を自分で決める事はしなかった。

 皆で話し合い、少数の意見も無碍にする事はなかった。

 それがかつての「暁」だったはず。

 

 

 

 考え込んでしまった小南さん。

 それに僕としてはもうちょっと見えたような気がするんだよね。

「…小南さん、なんでペインさんは『全力で』来なかったんですかね」

「…どういう意味?」

 そりゃそうでしょう。

 木の葉隠れの里一つを丸々相手にするのに、実質戦力がペインさんだけっておかしくないですか?

「そうかしら、ペイン六道だけでも十分…」

 でも不十分とはいえペインさんの能力解析は終わってた訳です。

 自来也さまがそうした訳ですから。

 ならば、忍としてその術が暴かれているのがどれだけ不利かは分かっていた筈。

 そして雨隠れの里にはまだまだ十分な戦力が残されている。

 戦力の逐次投入って基本的には愚策なんです。

 それを分かっていないペインさんじゃなかったはず。

 なのに何故。

 そう考えたんだけれど。

「けど?」

 小南さんが聞き返します。

「ペインさん、この戦いを『ウケイ』として見ていたんじゃないでしょうか」

 小南さんが首を捻る。

「ブンブク、ウケイとは何?」

 誓約(うけい)

 まあ早い話が「占い」の事なんだけどね。

 とある物事がうまくいくか行かないかで今後の方針が決まる、と言った感じかな。

 たかが占い、というなかれ。

 その物事は大体においてその事件の象徴的なものだったりするしね。

 戯れで仕掛けた射的勝負、それがその場の戦いの趨勢を決めちゃったりする事もあるんだから。

「で、ペインさんがやった賭けは、多分自来也さまとです」

「先生と?」

「ええ。

 自来也さまはペインさんたちを止める気だったでしょう?

 ペインさんは『木の葉隠れの里が落とせればオレたちが正しい、落とせなければ先生が正しい』としたんじゃないかなって」

 ペインさんはもしかしたらだけど、自来也さまに会って迷いが生じたんじゃないだろうか。

 その迷いを払しょくする為にこんな無謀、まあ実際にほぼ情報のない状態であったならホントに木の葉隠れの里が無くなっていたんじゃないかって気もするけど、を仕掛けたのではないかな、と思ったんだ。

「…ならば、世界は自来也さまの求める『平和』に向かって動くのかしらね。

 それは、弥彦も求めていた事だもの、長門も納得してくれるわ。

 それに…」

 小南さんは彼方に目を向けた。

 そちらからは歓声が聞こえる。

 …兄ちゃんだ。

 うずまきナルト兄ちゃんを英雄と讃える声がする。

 小南さんの唇にはほんのりと笑みが浮かんでいた。

 多分僕の顔には満面の笑みが浮かんでいるだろう。

「彼が…、弥彦と長門の弟弟子がまだいるのだから…」

 はい!

 

 僕は、そのうちに改めて雨隠れの里へと行くことを小南さんと約束した。

 弥彦さんが暗殺された経緯、そこから長門さんが引き継ぎ、今の「暁」の形になった事についていろいろ聞きたかったからです。

「ヒルゼン狸夜話」では故・猿飛ヒルゼンさまと文福狸さんの対話によって歴史が語られますけど、それって火の国の話しがメインになるんですよね。

 なので、そう言う話を聞きに行くついでに、雨隠れの里の周辺の歴史に関しても聞いておけるかなあって。

 そう言ったら、小南さんはクスリと微笑み。

「いいわ、アナタも先生の弟子なのでしょう?

 ならば私の弟だもの、いつでもいらっしゃい」

 そう言ってくれた。

 それから小南さんは紙で作った花飾り、僕は手持ちのお猪口を交換しました。

 そうして僕たちは別れたのでした。

 

 嘘ですけど。

 

 実の所、この後すぐに「根」から指令が来まして。

 小南さんが雨隠れの里に帰るまでは監視をつけなきゃならんそうなんです。

 まあ確かに。

 で、小南さんから髪飾りを貰った代わりにお猪口をお返ししたんですが、まあ、「金遁・千里鏡」のマーキングはしてある訳でして。

 その関係もあって、小南さんが無事に雨隠れに帰るまでは気を配っておいた方がいい、とのことで、それなら僕が行きますと名乗り出た訳です。

 本当は一緒に行ければ良いんだけど、まあそうもいかないしね。

 あくまで僕は木の葉の忍だからして、雨隠れの忍からしたら総大将を討ち取った憎っくき敵なんでしょうし。

 それが今や雨隠れの総大将となった小南さんと一緒にいたら、色々勘ぐられるでしょうしね。

 なので、他の数名の暗部のみなさんと付かず離れずで尾行中です。

 僕だけはばれてますけど。

 え? 当然でしょ。

 僕は小南さんの花飾り持ってるんだし、これにマーキングがしてあるのは当然かと。

 …なんてじゃれてる場合じゃない感じですね。

 どこからか攻撃を受けているようです。

 小南さんたち雨隠れ、じゃないですね。

 暗部(うち)の人たちですか。

 これは陽動、かな?

 とはいえ、僕がそこに参入しても大したことはできないだろう。

 僕ですら気が付いてるんだから、暗部の上忍なら更に気付いてるだろうし。

 ついでに言えば、その上忍ってみんな僕の上司だしねえ。

 僕は気配の掴まれにくい準省エネモードに変化して、小南さんを追跡する事にした。

 

「それでは『雨隠れの里』としては『暁』を脱退する、という事でよろしいでしょうか?」

 …なんか歴史の教科書から抜け出してきたみたいなイメージの人が小南さんの前に立っていました。

 襞襟、というんですかね、扇みたいな襟のついたきらびやかな服装をした、えらい肌の白い美形が、そう言いました。

「…ええ、ワタシ達雨隠れの里は今回の事で方針の転換を図る事に決定しました。

 今後は段階を経て外部への開放を行っていく事になるでしょう」

「そうですか。

 残念ではありますが、しょうがない事でしょう。

 では今までの御助力ありがとうございます。

 今後『暁』は皆さまとは無関係の組織として動く事になりますので。

 ああ、そうそう、『頭目』よりのお言葉があったのでした。

 こちらの情報は好きに流すと良い。

 どこまで信用されるかは分からないが、との事です」

 美形さんは小南さんにそう言うと、ふっと森の闇の中に消えて行った。

 

 

 

 一方、「根」の精鋭である油女トルネは苦戦していた。

 すでに彼の足下には暗部の精鋭が2人、悶絶しながら倒れていた。

 死んではいないようだが、びくんびくんと痙攣している姿は死んだ方がましだったのではと思わせるほど。

 敵はたった1人。

 しかし、明らかに上忍である自分たち以上の忍術、幻術の使い手である事は明白だった。

 その人物、好々爺とした外見とは裏腹に、その目に邪悪な光をたたえた老爺、その名を「果心」と言った。

 果心はぬめりとした笑みを浮かべ、

「うむ、うむ、良いのお、ここの忍達は良いのお、競い甲斐ある者達じゃて…」

 そう呟いた。

「舐めるなぁ!」

 その言葉に激昂したのは「根」のものではない、暗部の精鋭。

 彼は一瞬で火遁・豪火球の術を結印し、息を吸い込み炎を放とうとして。

 更にその倍以上の速度で結印された水遁・水砲弾の術によって叩きのめされた。

 体内で火遁に変じた直後の己のチャクラに喉を焼かれ、悶絶する暗部の忍。

 それを見てトルネは辛うじて敵の戦術を理解した。

 間違いなく、敵はあの「教授(プロフェッサー)」猿飛ヒルゼンに匹敵する忍術への知識と技術を持つ怪物であると。

 同じような戦い方はトルネとてみた事がある。

 それは「コピー忍者」はたけカカシの戦術。

 彼は相手取った忍のチャクラの流れを左目の写輪眼で解析、それと同じ術をその卓越した結印技術で相手より早く繰り出すことで敵を圧倒する事が出来た。

 この老爺の取っている戦術はそれと同じ事。

 違うのは、相手が見切っているのは忍びの結印からである事。

 先ほど、トルネの同僚は結印を巳、未、申、亥、午、寅の順で高速結印し、豪火球の術を使おうとした。

 合わせて6つの印を組みかえることで豪火球の術は結印される。

 印は12種類の干支に対応した印であり、確かに最初のいくつかを視認することで術を特定する事は可能かもしれない。

 問題は、目の前の老爺は「結印を視認し、相手の使う術を特定した上で、相手よりも高速で印を結び、五大性質変化に対応した相手の術に対して有利な忍術を使用している」と言う事。

 相手の使う術を推測、特定した時点で結印はほとんど終了している。

 その、1つ2つの印を結ぶ間に相手の術に対応できる術を選択、結印、発動を相手より早く行っているなど。

 中忍程度の相手ならそれもあるかもしれない。

 中忍と上忍の間には大きな技量の差がある。

 しかし、上忍、それも暗部の者となれば、その技量は相当のものだ。

 この目の前にいる老爺はそれを軽く凌駕する技量をもっているという事か。

 トルネはここで討ち死にをしても、この怪物を倒さねばならない、こいつは危険すぎる、そう覚悟を決めようとしていた。

 その時だ。

「…なんじゃ、ワシの楽しみを奪うつもりか?

 むう、仕事は終わったかの…。

 なれば仕方無い」

 どこからか遠話でも入ったのか、老爺はため息をつくとトルネを見据えていった。

「すまんがのお、今日はこれで仕舞いじゃ。

 蟲使いの坊や、次に会った時は存分に死合おうとしようのお…」

 果心は実に残念そうに言うと、ふっと姿を消した。

 瞬身の術だ。

 しかし、トルネに気付かせないほどの瞬身。

 トルネは大きく息をついた。

 アレは危険だ。

 あまりにも自分達とは存在の意義が違う。

 トルネ達「根」の者は私心を消すことを求められる。

 アレは違う。

 アレは術を使うことそのものに耽溺している、と。

「根」に限らずトルネ達暗部は仮面をつける。

 これは私心を消し、術を使い己の強さに酔うような事が無い様に、忍術は己の力に非ず、何かを成し遂げる為の目的に過ぎない事を自覚する為である。

 術によって何かを成し遂げるのではない、己の意志と使命によって成し遂げる、術はその際の道具にすぎない。

 あの老爺は違う。

 術を使い、誰かを害する事自体を楽しんでいる。

 相手に力があればある程、それを破壊した時の享楽を楽しんでいるのだ。

 あれは忍にして忍に非ず。

 忍術使い、とでも呼ぶべき危険な怪物である。

 しかし、その実力、知識は本物であろう。

 今回トルネは切り札である蟲を使っていなかった。

 にもかかわらず、何らかの手段であの怪物爺はトルネの蟲に感づいていた。

 虫や蟲使いに対する知識がそれだけあるのか、はたまた白団のような独特の感知能力があるのか。

 いずれにしろ里に害をもたらすのは間違いない。

 トルネはダンゾウへの報告の必要を強く感じた。

 

「…つまらん事をしてくれたのお、時貞」

 表情こそはにこやかではあるが、その目にはよほど胆力のある者でも怯むであろう殺気を込めて、果心居士を名乗る老人は天草四郎時貞に話しかけた。

 時貞は常人であればとうの昔に心の臓が止まるか脳がやられるかしそうな殺気を受け流し、軽やかに答えた。

「仕方がないでしょう?

 それが任務です。

 僕たちは任務を遂行する為の存在、それを忘れた訳ではないでしょうに。

 ペイン達が木の葉隠れの里を壊滅出来なかった以上、しばらくあそこには手を出さない、そう言う決まりでしょう?」

「ふん。

 貴様こそちょっかいをかけおるくせに、何を言っておるのやら…」

「それこそ仕方がないでしょうに。

 ワタシはそう言った潜入工作、諜報戦の為に人の機微なんかを把握できるようになっているんですから。

 使わないのはもったいないでしょう?」

 肩をすくめ、笑みを浮かべる時貞。

 見る人が見るならば非常に絵になる仕草だろう。

 そんなものに全く興味を持たない果心の前でなければ。

「くだらん。

 (にんじゅつ)は振るってこそ力であろうに。

 このように腐らせておくなど理解の範疇を超えるわ。

 …興が削がれた。

 ワシは帰って寝るとしようかのお…」

 まるで子供のように不貞腐れ、果心は次の瞬間、「ふっ」と消え去った。

 忍としては上忍以上の実力を持つ時貞ですら消失したとしか思えぬ「瞬身の術」。

 時貞はため息をついた。

 果心は「聖杯八使徒」の中では実の所まだ扱いやすい部類だ。

 とにかく人として、様々な正常な心の機能を削除(オミット)して創造された使徒達はトビの思わぬ所で問題を起こしてくれている。

 本来トビが管理するべき口寄せ動物を(せいはいはっしと)を、同じく召喚された時貞に管理させているのである。

 確かに時貞は人の機微を読む能力があり、それによって彼らに何が欠けているのか、その為にどのように対応したら良いのかが分かる。

 …だからと言って、ああ言った暴力を積極的に肯定する輩とは、どうしても反りが合わない。

「…まったく、あの人(トビさん)は子どもの頃犬とか猫を拾っては『絶対に世話するから!』と言いながら全く世話をしないタイプの人ですね。

 その内にお母さんをボスだと思うようになったワンコに吠えられてへこむんですよ、きっと」

 ぶつくさ言いながら、時貞はと歩き始めた。

 その姿はいつの間にか、最初から来ていたきらびやかな物ではなく、その辺りの行商人がしている様な、地味な服装となっていた。

 とは言え、その顔立ちだけで非常に目立つのだが。

 彼はいつの間にか足許にあった、「薬」と書いた行李を担ぐと、木の葉隠れの里の方へと歩き出した。

 

 

 

「聞いていたかしら? 茶釜ブンブク」

 小南さんがそう言いました。

 僕が小南さんを渡したお猪口で把握しているように、小南さんは僕に渡した花飾りで僕の場所を把握しているのでしょう。

 僕はてこてこと木陰から小南さんの前に出てきました。

「!…」

 …なんでしょう?

 妙な緊張感のある空気。

 僕、何かやらかしましたかね。

 すると、

 ひょい。

 僕は持ち上げられ、

 撫でり。

 小南さんに頭をなでられました。

 ? なんぞ?

 しばらく撫で続けられました。

 

 一通り撫でまくって満足したのでしょうか、小南さんは僕を手のひらに乗せて話し始めた。

「火影との交渉の仲介に入ってほしい」との事。

 それはまあ、僕の得意分野、と言うか多分火影さまが命じてくるんじゃないかと。

「それは問題ないですけど、とりあえず持って帰れる案件ってあります?

 交渉材料にできそうな奴。

 もちろん情報そのものじゃなくて、『暁』にどんな奴がいるからそいつの情報、とかそんな書き方でも良いんで」

 そう言うと、小南さんは手元から紙を「出して」、で、それにさらさらと書きつけていきます。

 それを僕に渡すと、

「これは貴方への駄賃。

『聖杯のイリヤ』を名乗るものに気をつけなさい…」

 そう言って僕を送り出した。

 …なるほど、それが僕の「相手」ですか。

 僕はお礼代わりに尻尾を一振りすると、木の葉隠れの里へと戻るのでした。

 

 

 

 久し振り、本当に久し振りの木の葉隠れの里です。

 破壊されずに何とか残っていた木の葉隠れの里の正門、「あ」と「ん」の書かれた正門前で兄ちゃんは里の皆に胴上げをされていました。

 …ここまで来たんだなあ。

 あの日、公園で兄ちゃんを見かけ、なんの気なしについていったのが事の始まり。

 我が兄貴分はついに木の葉隠れの里の英雄だと皆に認められてのだ。

 僕はうれしくなった。

 兄ちゃんと里の人たちをもっと良く見ていたい。

 だから僕はゆっくりと兄ちゃんの方へと歩いていった。

 たった1つ欠けたピース。

 それ(うちはにいちゃん)だけを心の引っ掛かりとしながら。

 

 さて、うずまき兄ちゃんに会って開口一番。

 ごすっ!

「な~にやってんだってばよ、お前はよ!」

「っ~っ!!」

 拳骨を貰いました。

 理不尽だ!

「なんでさ! 兄ちゃん来るまでの時間稼ぎはどうしても必要だったじゃん!?」

「だからってあんなつえー奴に無策で突っ込むなんてダメだろ!」

「無策じゃないもん!

 きっちり考えて突っ込んだってばよ!」

「ウソ付けぇー!」

 だから嘘なんて…。

「嘘はいけませんよ、ブンブク君」

 な! リーさん!?

「そうだな…、お前もそう思うだろう、テンテン?」

 ネジさんまで!?

「全くね」

 ちょ、テンテンさん!?

「嘘だってばればれだっての、これ」

 そんな、木の葉丸くんまで…。

「ブヒッ!」

 ひどくない、トントンくん?

 …何故にみなさんそう言われるんでしょうかね?

「…嘘だな、なぜなら、お前はナルトの弟分だからだ」

 シノさんひどい!?

「ちょっと待てシノ!

 オレが考えなしの特攻野郎みてえな言い方だぞ、それ」

「…違うのか? なぜならみんなそう把握しているぞ」

「そうそう、違わねー」

「わん!」

 キバさんと赤丸くんは息ぴったりに首肯。

「え、えと、その、な、ナルト君は一生懸命で良いと思う、よ?」

 ヒナタさんはほんといい子だよねえ。

「ヒナタ、それフォローになってないよ?

 ちょっと、チョウジもなんとか言ったら?」

 いのさんは最近気遣いが繊細になりました。

 女性としてはこの人が一番だと思うんだよねえ。

「そうだね、違わないなあ」

 せめてポテチを食べるのを止めて上げて下さい、チョウジさん。

「否定すんのもめんどくせ―」

 シカマルさんはいつも通りですね。

「え、今まで気付いてなかったの!?

 それにびっくりだわ」

「僕もそう思いますよ、サクラ姉ちゃん…」

「てめえらオレを褒めてんのか貶してんのかあぁッ!?」

 まあ褒めてます、どっちかっていうと弄ってるとも言えますが。

 そこからいつものグダグダとしたぬるめの日常が戻って来る訳です。

 でも…、なんかまたひと波乱ありそうだなあ。

 でもまあ! これでとにかくひと段落。

 家に帰って、おっかあの飯を食べて、フクちゃんと遊んで、おっとうと語り合うのだ!

 そして久し振りに自分の布団でぐっすりと寝るぞ!

 僕にとっての「第二次木の葉崩し」はこれで一応の終結を見るのです。

 とは言え、まだまだトラブルの匂いが散々するんですよね。

 できるだけ僕は裏方でありたいんですけれど。

 主役は兄ちゃんですからして。

 …はいそこ、フラグとか言わない。




次回は若干時間をいただきます。
できるだけ早く上げて、「五影会談編」を書かねば。

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