NARUTO 狐狸忍法帖   作:黒羆屋

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第81話 ブンブク

 ブンブク 自来也殺蛙地獄

 

 自来也はふっと意識を取り戻した、ような気がする。

 周囲には特に別嬪の天女。

 どうやらここは極楽の様じゃのォ。

 自来也はもうろうとする頭でそう考えた。

 ふと目を凝らすと泣きそうな顔をした茶釜ブンブク。

 そうかあ、お前も死んでしもうたか、守ってやれずに済まんのォ。

 そんな事を口に出したような気がする。

 そして。

 極楽にいるにしてはあまりにも似合わないモノがそこに。

「なんで、極楽に、お前が居るんかのォ、なあ」

 

 大蛇丸よぉ。

 

 そこまで考えて、自来也の意識はまた沈んでいった。

 次に見る夢は、大蛇丸だけでなく、ダンや死んでいった連中とも会えるのだろうか。

 それなら死という奴もなかなか悪くない。

 あの世で術比べというのもこれまた乙だのォ。

 

 自来也はすべらかなモノを枕にして寝ていたようだ。

「んん…、綱手よォ…」

 でへらでへらと緩みっぱなしの自来也。

 誰かが呼んでいる。

 …自来也。

 ……自来也。

「とっとと起きなさい、自来也」

 ん?

 この声には聞き覚えがある。

 この地獄の底から響いてくるようなハスキーボイス。

 はっと意識が浮上した時、いきなり頭が下から跳ね上げられた。

「うぉっ、ここは、どこかのォ!?」

「やれやれ、相も変わらず寝坊助だ事。

 若いころと全く進歩が無い」

「くっそ、誰が進歩なしのエロガキじゃい!!」

「誰もそこまで言ってないっすよ」

 自来也が目を見開くと、そこには茶釜ブンブクの顔があった。

「良かったあ、施術は何とか成功したみたいだ」

 その「なんとか」という言葉にそこはかとなく不安をかきたてられる自来也であった。

「あ、自来也様、目を覚ましたの?」

 そう声をかけてくるのは、

「おお、アンコか。

 お前がワシらを助けてくれたんかのォ」

 アンコならば、あの状況から自来也とブンブクを連れ出すのも可能かもしれない、自来也はそう考えたのだ。

 しかし、

「いや、自来也さまをあそこから連れ出したのは、先生、でして…」

 アンコが先生という、それは…。

「そう、ワタシだ」

 そこには。

 人面の蛇が居た。

 かなり大きい。

 頭部が人間大のその白蛇、その顔はまさしく人のモノであり、

 大蛇丸の顔をしていた。

「…ずいぶんキッショイみてくれになったのォ、大蛇丸」

「開口一番、失礼な言い方だな、元同僚

 人の胴体を枕にしていたくせに」

 不機嫌そうにそういう大蛇丸の顔をした大蛇。

「なっ!」

 仙女の細腕だと思ったら大蛇の胴体だったでござるの巻。

 夢の中ではてっきり綱手だと思っていたのに…。

「カマ蛇の胴枕とかどんな拷問だのォ…」 

「勘違いしたお前が間抜けだ」

 うむ、この物言いはどうやら大蛇丸本人か。

「…自来也さま、調子はどうですか?

 かなりの大手術でしたし、いろいろ変わってしまいましたから」

 よりによって大蛇丸を枕にしていたと愕然とする自来也に、ブンブクがなにやら申し訳なさそうにそういう。

 大分変わった!?

 何の話か?

 アンコが鏡を持ちながら近付いて来る。

 ん!?

 自来也はやっと違和感を持った。

 ブンブクとアンコが妙にでっかい。

 これはどう言う事だ!?

 アンコが自来也の前に鏡を置いた時、

 その違和感は形となった。

 あまりにも悲劇的(?)な方向に。

 

 自来也は、『蛙』になっていた。

 

 ぶっふぉ。

 誰かが噴き出した。

 自来也は上背はブンブクの三分の一程度の大きな蝦蟇蛙に変じていた。

 そう、自来也が最初に大蛇丸を見たとき、彼を巨大な蛇だと勘違いした。

 そうではない、大蛇丸が巨大な蛇なのではなく、自来也が縮んでいたのである。

 ご丁寧に白い長髪が生え、今のサイズに丁度良い陣羽織と和服も用意されている。

 蛙用の。

「こ、これは一体…」

 愕然とする自来也に、申し訳なさそうにブンブクが説明をした。

 

 曰く、自来也を救出したのはブンブクの体の中に隠れていた大蛇丸だったとの事。

「は? なんで大蛇丸がブンブクの中におったんだのォ?」

 自来也がそう疑問を投げかける。

 それに答えたのは大蛇丸。

 彼曰く、サスケとの決闘の際、大きなダメージを受け、その際に「大蛇丸という核」の部分とも言うべきこの白蛇が抜け落ちたと言う。

「どうも、核であるワタシと暴走していた知識欲のワタシ、そこに大きな解離が出来ていたらしい」

 そして核であってもチャクラの保有量の少ない白蛇としての大蛇丸は、暴走を始め、八岐大蛇に変化した本体から逃げる為に瓦礫の中に避難した。

 その際に丁度休眠状態であったブンブクの茶釜の中に避難して難を逃れたとの事。

「その後はブンブクから漏れてくるチャクラを少しづつ取り込んで、それを自分のチャクラに変換することで力を蓄えていたのだ」

 そして、ブンブクがチャクラを吸引された時に危険を感じて水中に逃走。

 そこで水底に沈んて行く自来也を見つけ、己の体に刻んだ封印術に自来也を閉じ込め、そしてアンコと本来合流する地点まで泳いでいった。

 合流地点でアンコと出会い、彼女に大蛇丸しか知らない雨隠れの里近郊の秘密の拠点へと連れて行ってもらった。

 そこで自来也の治療を始めたとの事。

「ワタシはお前の命の恩人、という事」

 大蛇丸はすましてそう言った。

「うぎぎぎ…」

 自来也としては作りたくなかった相手に借りを作った事に歯ぎしりをするばかり。

 さて、治療を始めたのは良いが、自来也の体はペインからの攻撃と、最後に使用した術の反動でボロボロだった。

「いや、体表の半分近くが炭化してましたし、内臓もかなり損傷してました。

 正直言って、頭部に損傷が無かったのが不幸中の幸い、という所でしたよ…」

 それを、白蛇状態の大蛇丸の指示に従ってブンブクが施術をする、というアクロバットの様な有様であったと言う。

「ホント、泣きそうでしたよ…」

 例えるなら、救急救命講座を受講した一般人が医師の指示に従って開腹手術をする様なものに近い。

 生命維持は施設の設備でなんとかなるにしても、このままだと自来也は大蛇丸謹製の生命維持タンクから一歩も出られないで一生を終えそうな、そんな状況だったと言う。

 そこで役に立ったのが脇に控えていた…。

「この狸かのォ?」

 

 

 

 さて、僕が目を覚ました後の事です。

 僕を確保してくれていたのは狸さんでした。

 チャクラの量もかなりのモノで、少し修行すればすぐに人語を解し、様々な変化が行えそうな感じの…ってこの狸おかしい!

 目が、白抜きです。

 つまり、「白眼」持ちの狸です!

 なんなんですか!?

 え、お名前は「日向ヒザシ」さんですか…ってそれ「ネジ」さんのお父さんのお名前でしょ!?

 え? 本人? ってか本人のチャクラを持った狸さん!?

 …なるほど、ペインさんの1体が僕の「狸の気」を吸って、で、狸になったと。

 …なんでしょうねこの理不尽感。

 なんで僕の気配が「狸」なんでしょ。

 まあ、それも理解できたけどさあ、理解するのと納得するのは違うしねえ。

 どうも話を聞いていくと、

「一度死んだ後、自分はどこかにいたようだ。

 暗いどこかで微睡(まどろ)んでいると、いきなりどこかに引っ張られた様な気がして、気が付いたらこの狸になっていた」

 とのこと。

 この世界でも死後の世界ってあるんだなあ…。

 いや、そもそもあれか、そうでもないと「穢土転生」での復活って無いんだもんなあ。

 そうなると、僕たちの世界における「魂」って精神のチャクラの事なのかもしれない、なんて思ってみたりして。

 で、ぼんやりとではあるけども自分の状況って言うのが記憶にあったそうで、目の前に落っこっていた茶釜が木の葉隠れの里の茶釜一族の者であるって分かったのでとりあえず近くにあった風呂敷で回収、逃げようと思ったならアンコさんに拉致されたっってことなんだそうで。

「拉致ってひどいじゃない? 折角助けてあげたのに…」

 アンコさんすいません。

 お詫びに今日の晩御飯にみたらし団子つけますから。

「あら、そう」

 そっけない言葉の割に顔の喜色が見えてますけどね。

 で、アンコさんから大蛇丸さんとぼろぼろになった自来也さまの状態を教えられました。

 …これ、僕が施術するの?

 正直言ってほぼ無理なんですけど。

 …とは言え、やんないと自来也さまの死亡が確定してしまう。

 何とかするしかないか!

 

 まずはカモくんに連絡を取って、化け狸の里に優秀な医療能力を持った(たぬき)が居ないかを聞いてみます。

 …だめですか、そうですか。

 僕とおんなじで、狸限定の医師ならいる、と。

 下手すると自来也様まで狸になりかねませんね。

 それはまずい。

 かと言って、化け狸と契約している人ってメイン砂隠れなんですよね。

 あっちの人に下手に頼む訳にもいかないし、そもそも化け狸の中に「逆口寄せ」のできる狸さんはほぼいなかったはず。

 力技での回復も無い事は無いんだけど、それには「口寄せ・狸穴大明神、狸灯籠」の術を使わざるを得ず、そんなん使ったら間違いなくペインさんがここに押し掛けてきますんでちょっと無理。

 そうなると、とにかく延命するために破損した肉体の大部分を切除して後々大蛇丸さんに組織を培養して貰って移植、かな。

 大蛇丸さんはしばらく前に僕から「生物の細胞のクローン技術」に関する話を聞き出していた。

 その情報と、「死体蘇生者(リメイカー)」と呼ばれる博士とで話し合いを続けて、より高度な細胞の培養技術を手に入れていたんだよね。

 その培養装置のプロトタイプをここに置いていたんだそうで、それならばなんとかなるんではないかなあ、と思ってたんですよ。

 で、施術に入って大苦戦。

 そりゃそうですよね。

 忍ってチャクラによって身体能力なんかを強化します。

 で、一般的にチャクラって何って言ったら、「身体のチャクラ」と「精神のチャクラ」に分かれる訳です。

 そして今、自来也さまの肉体は大きく損傷してます。

 つまりは「身体のチャクラ」が大幅に低下している状態なんです。

 まあ、忍って年をとる毎に身体能力は低下しますけど、同時に精神活動って上昇するんですよね。

 三代目火影・猿飛ヒルゼンさまを見てると分かるかと思いますけど。

 とは言え、自来也さまの体にメスを入れる、つまりはダメージを与えるとなると、この身体のチャクラが大きく減じる事になって、 今何とか自来也さまを活かしているチャクラの総量が減っちゃうんです。

 これが、綱手さまたち医療忍術のエキスパートだと、自分のチャクラを相手に馴染むように変換することで生命力を維持、強化出来たりするんですけど、僕には難点が1つ。

 僕、再生術に関しては狸にしか効果ないんですよ。

 つまり自来也さまに対して僕のチャクラで組織の強化とかできませんのです。

 さてどうしたもんか。

 

 とりあえず大蛇丸さん謹製の馬鹿でっかい「人工心臓」に自来也さまの心臓から出ている血管を接続してとりあえずの生命維持をしました。

 で、後は壊死している組織を切り離して保存、生きている体の組織を最小限度の状態にします。

 そうしてみると余りに(むご)い。

 両腕は完全につぶれ、下半身はちぎれかかり、ほとんど頭と胸の部分だけの状態です。

 涙が出てきます。

 呼吸は自立できず、人工呼吸器でなんとか肺を動かしている状態。

 壊れた組織から血液とかリンパ液とかそういったものが垂れ流しになっちゃってるんで常に人工血液を投入しないといけない。

 ホント、ここが大蛇丸さんの施設で良かった。

 木の葉隠れの本拠地ですらこの設備は無い。

 おかげで僕みたいな素人に毛の生えたような稚拙な技術でもなんとか自来也さまを延命させる事が出来ている。

「ブンブク、泣いていても自来也は助からない」

 分かってますって大蛇丸さん。

 僕は顔をタオルで拭うと、思考を続けます。

 とにかく施術の間、自来也さまの体力を持たせるだけのチャクラが足りない。

 とは言え、僕ではチャクラを送り込む技術も無ければその適性も無い、と。

 大蛇丸さんはどうなんだろうか?

「今のワタシではチャクラが足りない」んだそうです。

 という事は次にアンコさんは…。

「う~ん、ワタシはそういう術は持ってないなあ…」

 実戦畑のアンコさんだとそうか…。

 やっぱり化け狸の人たちから誰か助っ人に…。

 そう考えていた僕の副の端を引っ張るモノが。

 …日向ヒザシさんの変じた狸さんです。

「きゅん!」

 って言われましてもねえ。

「ブンブク、その狸は何と言って?」

 あ、はい、チャクラの供給さえ何とかなるなら、医療忍術の心得くらいならある、ってことだそうで。

「…なんで狸が?」

 そこいらの話を大蛇丸さんにしたなら、

「…色々突っ込みどころがたくさんではあるけど、まずは自来也の手術が先だな。

 ブンブク、お前のチャクラを吸わせてやったらどうだ?」

 いや吸わせてって、そんなん出来たら…、って出来るの!?

 え? 餓鬼道の時の特殊能力が固定化されてるって!?

 元日向でネジさんのお父さんで、元暁のペインさんで額に卍マークの狸って、何ですかその、「ネコ耳眼鏡スク水巫女ナース」みたいな属性テンコ盛りは!?

 ほら、大蛇丸さんも呆れてるじゃないですか!?

「…いや、ワタシは『医療忍術』の派生で相手の体を復元する時のチャクラの転送をその狸に行えば良いのでは、って思っただけなんだが」

 あれ?

 …まあ良いでしょう!

「誤魔化した」

 うるさいです!!

 それはさておき、今の僕であれば!

 

 …すうっ。

 息を整えて、自来也さまから授かった「仙人モード」の呼吸法を行います。

 最初は大きく、じきに小さく、最終的には10分吸って10分吐く、そんな感じで自分を木石の如く感じていく。

「じゃあお願いします…」

 そうして、自然のチャクラを取り込みながら、それを狸さんに吸い出してもらいます。

 狸さんは吸収した僕の「狸の気」を更に自分のモノに変換しつつ蓄えていきます。

 大体30分くらいでしょうかね、狸さんから声が掛かりました。

「ブンブクさん、十分かと思います。

 良い感じでチャクラを蓄える事が出来ました」

 そうですか…。

 あれ?

「何故に人語を話してらっしゃる?」

「キミのチャクラから様々な情報が入手できたもので。

 それで妖物としての格が上がったようです」

 …ええっと。

 んじゃあ修行は?

「一応妖怪としての格も上がりましたし、これも元人間という利点なんですかねえ」

 …才能が憎い(血涙)。

「あ、そうだ。

 今後ワタシの事は卍丸、とでも呼んでください。

 日向ヒザシは既に死んでいるのですから…」

 ヒザシさん改め卍丸さんはちょっと寂しそうです。

 

 さて、それでは自来也さまの手術開始です。

 さすがにそろそろやばそうな感じ。

 自来也さまの命を繋ぐにはぎりぎりでしょうか。

 僕と卍丸さん、大蛇丸さんで分担をしていきます。

 切断と縫合は僕と大蛇丸さん、患部にチャクラを注ぐのは卍丸さん、という感じで。

 は? なんで大蛇丸さんが施術とかできるのかって?

 大蛇丸さん、元の自分の体で作った「人傀儡」の腕を所持してたんですよ。

 とは言え、蛇になった大蛇丸さんはどうしてもチャクラが足りない。

 その為、傀儡の操演にも影響が出るんだそうで、手術のような繊細な動きは完全にこなすのが無理なんだそうです。

 結局は僕のサポートくらいしかできないと、どこか悔しそうに言ってました。

 やっぱり親友の危機には自分が動きたいよね。

「親友じゃありません」

 またまた。

「狸の丸呑みは…」

 さあ始めましょう!!

 胴体部分に関してはかなり問題無くできたと思う。

 内臓のかなりの部分をチャクラによって再生しなければならなかったけど、神経の接合も思った以上にうまく行ったし、しっかりリハビリをすれば日常生活レベルなら問題ないんじゃないだろうか。

 後は本職の人に見てもらえば、ねえ。

「本職の人に『一生』みてもらえば、ねえ」

 はいそこ、アンコさん、そのにやにや笑いはやめましょう。

 下手をするとブーメランで自分に帰ってきかねませんよ。

「どう言う意味よ」

 …人の恋路よりまずは自分のお相手を探しましょう。

「あらやだ、アンコ、アナタまだ相手いないの!?」

「…誰のせいだと思ってるんですか、先生」

 アンコさんの自業自得です。

 それはさておき、

「置くんじゃないわよ!」

 さておき!

 胴体部分から腰の部分にかけての治療はほぼ成功です。

 後は、一度切り離した手足を修復、つなげる事が出来れば完治、という所です。

 ちなみにここまででペインさんとの戦いから1週間、僕が目を覚ましてから5日。

 僕らの誰1人としてまともに寝てません。

 一旦ここで休ませてもらいましょう。

 容体が変わったら教えて下さい。

 ではおやすみ…

 

 …あれ?

 どうやら気を失っていたようです。

 アンコさんが僕を起こしてくれたようですね。

 どうかしました?

「自来也様、身じろぎしたよ!

 ちゃんと生きてるって!」

 目が覚めましたっ!

 こけつまろびつ、という表現がぴったりな感じで僕は自来也さまの延命タンクの近くまで来ます。

 中には延命用の養液に使った自来也さま。

 その目が、うっすらと開いています。

 自来也さまが何か言ってます。

「…守…に…すまん…のォ…」

 良いです、良いんですよおっ!

 自来也さまがふっと眼を凝らすと、今度ははっきりと、

「なんで、極楽に、お前が居るんかのォ、なあ、大蛇丸よお…」

 そう言いました!

 間違いなく、自来也さまは意識を取り戻したんです!!

 良かった、良かったよお…。

 

 

 

 その後、自来也は眠りについた。

 ブンブク、大蛇丸、卍丸はその後、自来也の手足の復元に励んでいた。

 自来也が一時的に意識を取り戻してから更に4日後。

 自来也の手足の復元に成功した3人はぐったりとしていた。

 なにせ、自来也の腕と脚はひどい有様で、大部分をほぼ作り直し、と言っていい様な状態であった為だ。

 ことブンブクはチャクラを練っては吸い出されを繰り返し、疲労しきっていた。

 さて、ここで実は手違いが発生していた。

 1つは手足の損傷が予想以上に酷かった事。

 チャクラを使った復元は復元した肉体が組織に馴染むまでは半分物質、半分チャクラと言ったどっちか付かずの状態になっている。

 つまりは、狸のチャクラ、自然のチャクラ、である。

 次に、自来也の意識が一時的にせよ戻った事。

 自来也は人生のほとんどを忍としてすごしてきた。

 その為、ほとんど無意識の内にチャクラを練るのが当たり前の生活を過ごしてきた訳である。

 当然のことながら、自来也はその状態で「精神のチャクラ」を無意識のうちに練りあげていた。

 そして、一週間にも及ぶ自来也の蘇生処置のせいで、ブンブクのみならず、卍丸、大蛇丸、そしてアンコに至るまで疲労が蓄積されていた。

 その為自来也のチャクラバランスを見抜けるものが存在しなかった。

 最後に、自来也の体内に存在していた「自然のチャクラの残滓」が、卍丸の注いだ「狸の気」による「手足の再生を司っているチャクラ」と接触し、活性化させた。

 その結果。

「あれ? あれれれ!?」

 めきょ。

 ごきょり。

「うわぁっ! まずい、まずいって!?」

「む、これはチャクラの暴走!?」

 ばきききききっ!

「いや、大蛇丸さん! 冷静に評価してる場合じゃないってばよおっ!?」

 自来也の体を構成するチャクラのバランスが大きく崩れ。

 手足を接合する施術中、自来也の体に異変が起きた。

 めりめりと音を立て、ひしゃげていく自来也の体。

 そしていくばくかの時が経ち、

「なんといっていいのやら…」

「ワタシに振らないで…」

「ワタシに言われましても…」

「なにこの冗談みたいな…」

「くか~っ…すぴ~っ…」

 鼻ちょうちんを膨らませながら轟音とも言える(いびき)をかいている蛙一匹。

 ブンブク達は何も言う事が出来なかった。

 

 

 

 というのが今までの事。

 鏡を見て呆然としている自来也。

 事情を説明した後に完璧なる土下座をしているブンブクと卍丸。

 笑いをこらえているアンコと爆笑する大蛇丸。

「なんてえこった…。

 ど根性忍者が、どこんじょ「それまずいです」…そうかのォ」

「意外と余裕ですよね、自来也さま」

「余裕な訳なかろぉ!

 ワシの、あの凛々しい姿が、こんなちっこく…」

「元々凛々しさなんて無いじゃない」

「そうです! ちっこいのはかっこ悪くありません!」

「論点ずれてます、ブンブク君」

「老いてなお色男っぷりを示していた顔が…」

「…まあそれは否定しませんが」

「あらアンコ、自来也の嫁候補に立つつもり?

 綱手は強敵だぞ」

「んなっ!? 先生! 冗談じゃないですよ!?

 なんでワタシがこんな蛙と…!?」

「うわああぁん!? やっぱり嫌だのォォォっ!」

「いや、自来也さま! 蛙になってもいい男ですってば!

 もう道を歩けば女の子達がみんな振り返る、水も滴るいい男ですって!!」

「…そうかの?」

「ええ間違いないですって!」

「蛙だから、油の滴る旨そうな蛙、の間違いじゃない?」

「だあっ! 大蛇丸!? おっそろしい事を言うでないのォ!?」

「…むう、確かにあのむっちりした太ももなんて」

「卍丸さん! 何よだれ垂らしながら見てんですか!?」

「…はっ! いかんいかん、雑食である狸の本能に引っ張られていたようです、危ない危ない」

「お前らワシを慰めんかのォォォォォッ!?」

 

 ※お見苦しい所がございました。しばらくお待ちください※

 

 一通りの騒ぎが収まった後に。

 自来也は意外とすっきりとした顔をしていた。

「まあのォ、どうせあの時に死んどると思えば、まあ儲けもんだからのォ。

 気にするでない。

 後はこっから人間に戻るだけだからのォ」

 そう自来也は鷹揚に言い切った。

「え? 人間に戻る方法ってあるんですか!?」

 ブンブクが驚く。

「これでも本質は人間だからのォ。

 ワシは妙木山じゃあ仙人になりかけの石像を元に戻す研究も進めておったしのォ。

 それを自分の体で試すとなれば丁度良い」

 そして自来也は口寄せの印を結ぼうとして、

「自来也、アナタ印を結べるの?

 手の指はどう数えても『4本』しかないのだけれど」

 自来也の前足の指の数は4本、後ろ足の指の数は6本。

 自来也は霊力のある蛙とされる「四六の蝦蟇」となっていたのである。

 つまり、

 印を結べない。

 …

 静まり返る周囲。

「…ブンブクよ」

「はい」

「妙木山まで送ってくれい」

「はい」

 

 この後、自来也はブンブクに運ばれて妙木山へと行く事になる。

 大蛇丸は蛇仙人のいる白蛇洞へ。

 卍丸はブンブクがカモを召喚、それについていく形で化け狸の里へ行き、化け狸として生きる事となった。

 アンコは一旦状況を報告しに木の葉隠れの里へと戻る事となった。

 

 

 小話。

「なあ、大蛇丸よ、何か口調が昔に戻っとりゃせんかのォ?」

「ああ、『不屍転生』において乗っ取った体が2代続けて女性でな。

 その影響を受けたみたいなの」

「カマっ気は抜けきっとらんのだのォ…」




大蛇丸さんはカマッ気がだいぶ抜けました。
ペイン餓鬼道さん改め狸の卍丸さんはたくさんの属性を得ました。

次回は大体7日程度で。

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