NARUTO 狐狸忍法帖   作:黒羆屋

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今回は若干文章量が少なめです。


第77話 ペイン戦その1

 やっぱりばれていたようです。

 いきなり「紙」の様なものにぐるぐると巻きつかれ、折角の侵入用の変装が無駄になっちゃいました。

 自来也さまは下忍の「影」に変装してた訳ですが、そこから出ざるを得ず、出てみると、

 なんか紙、というか本みたいに紙の重なったものが人型をしてました。

 あ、これサソリさんに近いものに「変化」してるんだな。

 人間であり、紙である、そんな存在になっているんだろう、そんな女性が居ました。

「ペインという奴をおびき出そうと餌を撒いたが、まさか食いついたのはお前だったとはのォ」

 自来也さまは一拍置いて、

「術の切れも良くなったが、良い女にもなったのォ、…小南」

 そう言いました。

 小南。

 確か自来也さまが助けた3人の内の1人だったはず。

 紙を媒体とした忍術を習得している人のはずだったけど、本人が「紙」になっちゃってるのか。

 多分自分自身を媒体にして紙に染み込ませることで一種の「人傀儡」に自分自身を加工しちゃったのかな?

 自来也さまの話ならもう30代後半にはなってるはずだけど、そうは見えないし。

 そんな事を考えている間にも、小南さんは僕たちに攻撃を仕掛けてくる。

 紙の礫をマシンガンでも打ち出すようにだかだかと飛ばしてくる。

 一撃でも喰らえば冗談抜きで穴だらけになりかねない。

 とは言えそこは自来也さま、器用に捌いて逃げ回り、隙をついて髪の毛を長く伸ばして小南さんを捕まえた。

「他の2人はどうした」

 と自来也さまが尋ねていますが、小南さんは答えない。

 …というよりも、答えたくない、なのかな?

 私たちはもう貴方に何も感じない、って言う感じの。

 とか考えている内に、自来也さまが残りの2人に付いて聞いている。

 小南さんは顔色が変わらない、でも。

「今更ワタシ達の前に現れて何のつもりだ!?」

 と言っています。

 別に「暁」として木の葉隠れの里に危害を加えなければ自来也さまとてここまで来なかったでしょうに。

 皆さんに関しては自来也さまは死んだと聞かされてたみたいですし。

 小南さんが、

「先生はあれからの私達を知らない」

 と言っています。

「確かに知らないがのォ、『暁』のやっとる事は間違っとる!」

 そう自来也さまが断言します。

 僕もそう思います。

 少なくとも、今の雨隠れの状況は、かつての「山椒魚の半蔵」さんのおこなっていた方法と全く同じであり、ペインさんの力で抑え込んでいるのは変わらないのですから。

 ならば、半蔵さんに助力してその状態を維持して居ても変わりません。

 その方が人死には少なかったはずですしね。

 状況を変えたくて結局変わっていないのが雨隠れの現状な訳ですから。

 しかし、

「それが自分で考えた結論ですよ。

 自来也先生」

 頭上より声がしました。

 長髪に雨隠れの紋章に傷をつけた額当て、奇妙な、黒い鉄製の装飾? の様なものをたくさん埋め込んで、同心円状の瞳を持った男性。

 彼がペイン、さんなんですかね。

 前に見たシルエットみたいのとはちょっと違う気がしますが。

「外見はだいぶ変わったが、その瞳…。

 やはりお前がペインだったか、

 長門。

 正しい成長はしていない様だのォ、なにがあった?」

 そう問いかける自来也さま、それに、

「貴方は知らなくていい、しょせん外の人間だ」

 そう切り捨てたペインさん。

 …奇妙だ。

 やはりどこかで大きく変節したんだろうけど、それでここまで変わるのか。

 そもそも初期の「暁」の理念は長門さんの股肱である弥彦さんの提唱した解放・対話路線だったはず。

 それをこんな180度違う形に持っていっているのにかつての雨隠れは完全否定。

 どっかアンバランスな匂いがするんですよねえ。

 何ぞと考えてたらば。

 

 唐突に怪獣大戦争がはじまりました。

 

 ペインさんが呼び出す多種多様な口寄せの怪物に対し、自来也さまはその身に付けた多種多様な術を以って対抗していきます。

 やはり自来也さまは凄い!

 明らかにペインさんのチャクラの量は自来也さまを凌駕しています。

 僕の見た所、この口寄せの乱発を見るに干柿鬼鮫さんすら、呪印状態2のアンコさんすら上回っているでしょう。

 到底人間の体では維持できない量と見ました。

 これなら確かに「神」と名乗っても、…どうもなんか納得できない。

 本当に「神」を名乗るなら、こんな程度のチャクラの量じゃ済まないと僕の中の()()が言うのです。

 でも、その力に対して自来也さまはピンポイントで術を使用し、チャクラを無駄にしていません。

 さらに言えば、ペインさんはそれを理解していない様子。

 自分達こそが成長した。

 自来也さまは成長していない。

 そう言っているのですよ。

 …どうも奇妙だ。

 まるで「僕たちは成長した、認めて」と言っている様にしか聞こえないのです。

 自来也さまを「人」の位置に居る、自分達は「神」の位置に居る、そうペインさんは言います。

 痛みを受け続けた自分達は「神」になったと。

 人の時には見えなかったものが、神になった自分には見える、と。

 いわゆる「高みを知る」という事でしょうか。

 その結果がこれですか。

 チャクラを以って人心を操作し、チャクラを以って敵対勢力を屠り、チャクラを以って尾獣というチャクラの貯蔵庫を捕え、チャクラを以って大量虐殺兵器を造って戦いの抑止力とする。

 なんか無駄っぽい。

 強力な兵器を作ることで恐怖心をあおり、抑止力とする、何故か知らないのですが、

「それって無駄なんじゃ…」

 あ、

「…先生、懐に誰かいますか。

 …なるほど、茶釜ブンブク、貴様か」

「あ! この馬鹿モンが…」

 ばれた。

 

 そうなるとここで自来也さまの懐に居ても意味無いよね。

 僕は自来也さまの懐から飛び出て、

 ぼうん!

 人型に戻りました。

「どもです、ペインさん、あと、小南さん、ですよね」

 僕の顔を見てもペインさんは特に反応なしです。

 自来也さまは、

「はあ、この馬鹿ものが、出てきてどうするんだのォ…。

 この場ではお前の力なんぞ塵芥だのォ」

 …まあ否定しませんけどね。

「まったく。

 で、なにが無駄なんかのォ。

 ワシにはそれなりに意味のあるもんじゃと思うんだがのォ」

 そう聞いてきた。

「いや、ペインさんはその兵器を使用するはず、と思ってますけど、使うように仕向けないと使いませんよ? そういうのって。

 で、いっぺん使っちゃうと弱点も見えちゃいますしね」

「弱点かのォ?」

「はい。

 範囲が広すぎて使えないんですよ」

 その手の大量破壊兵器って敵国に送りつけてどっかん、てやるのが基本でしょうが、それをどうやって輸送するのか、とか、管理している間に盗まれないか、とか。

 そういった護衛手段も含めて用意するのがペインさんの戦略なんでしょうが、それらがペインさんの思う通りに動くとは限らない訳で。

 例えばペインさんの持っていた「暁」の実働部隊ですが、彼らにその任務が務まるか、って言うと微妙だと思ってみたり。

 輸送時の防衛任務とか兵器の保管場所の護衛任務とか、どうしても忍を使うとなると守るより攻めるほうが有利。

 そうなると対忍用の護衛プログラムとか別途作んなきゃなんないと思うのですけど、それの準備が出来ているのか、とか。

 もちろん雨隠れの里を丸々監視できる力を持ったペインさんなら拠点の1つくらいは余裕でしょうけれど、それが複数となるとどうなのだろうか。

 ペインさんは神の視点を手に入れた、と言っていたけど、国を治める人達はしょせん人間なんですよ。

 神の思う通りに動く事はないです。

 彼らにとって何故に他国の侵略をするのか。

 一言でいえば「食いもん」でしょう。

 食べ物をはじめとした富を得るため、の外交手段の1つに過ぎないんですよ、兵器だろうと忍だろうと。

 それを大量破壊兵器でふっ飛ばしては後に残るのはただの平地。

 食べ物もなければ扱き使う農奴も居ない。

 貴族の持っていた富も消し飛んでる、と。

 ただ勝っただけ。

 ほいでもって残るのは兵器を買う時にした借金だけ、と。

 思うに、ペインさんは非常に戦術的な見方しかしていないんじゃないだろうか。

 多分だけど、1回誰かが使ったら国が1つ消えて、それで誰も使わなくなると思うよ。

 そして、また忍、つまりはゲリラ戦の出来る大火力の個人が持て囃されて忍が戦争の道具として使われ続ける、そんな未来が残るでしょう。

 また、色々な方策をとってばんばん兵器が使われたとしたら、今の世界の人口では「痛みによる成長」の前に文明が崩壊してこのあたり一帯の人間が死滅して終わりになっちゃいますよ。

 そして痛みを知った人類が又文明を立ち上げるまでにもの凄い時間がかかって、結局痛みを覚えている人間は残って無い、またやり直しって所になるかと。

 ペインさんは「忍界大戦」が異常事態であることを理解しておくべきだと僕は思うのです。

 本来文化圏の同じ集団の戦争なんて外交の1手段にすぎないんです。

 忍里同士のせん滅戦って普通の事じゃないですからね。

 多分ペインさんはあまりにも「忍」の世界を重く見過ぎている。

 少なくとも今現在、忍が1次生産者として有用である土地を僕は知りません。

 つまりはご飯を作る人として有用な忍ですね。

 忍って戦闘の手段でしかないんだもの。

 だから、戦闘がない場合って今の忍はただ飯喰らい。

 つまりは生産性が皆無なんですよ。

 ペインさんが今の戦略を続けたいのであれば、忍を全て抹殺して自分の手駒だけにするか、今の世界の人口を10倍以上にして、大量虐殺をした後も痛みを知っている人間が文明を維持できるようでないと無理じゃないかなあ。

 

「…という所かと思うんですが、いかがでしょうか」

 いやあ、やりきったやりきった。

 ペインさんの戦略の問題点をあげてみました。

 小南さんは唖然としてますね。

 ペインさんは…。

「ならば…。

 ペインは全ての忍びを屠ろう。

 神の力は『痛み』の力。

 ペインの計画に狂いはない」

 え?

 そっちに行っちゃいますか!?

 さすがに、

「その程度のチャクラだと無理だと思うんですけど」

 あ、いらん事言った。

 どうも僕の中の知識の中にはペインさん以上のチャクラを持った存在があるようなんです。

 ちなみに多分ですが僕のチャクラ量からしたらペインさんて1000倍はあるんじゃないですかね。

 とは言え、

「安心するが良い、茶釜ブンブク」

 どうやら僕はその知識を有用だと見てもらって殺されずには…

「その知識は他に与えるにはあまりに危険。

 確実にここで仕留める」

 なんで!?

 とにかく逃げる!!

 

 異様な速度の巨大鳥と、多頭の狼みたいなのが僕を追いかけてきます。

「うわたたたあぁっ!」

 ぎゅん! とでも音がしそうなくらいの速さで鳥が突っ込んできます!

 さすがにあれを喰らったら一撃必殺になりかねませんがまあ避けられなくは…!

 避けた先に狼みたいなのの前足の一撃が!

 何とか体を捻って避けますが、地面をごろごろと転がる羽目になります。

 それを利用して建物の中に…って更にそっちには鳥が待ち構えています!

 何ともしっかり連携が取れてやがります事ぉっ!

 なんかこう、ワンコと鶏に小突きまわされてるミミズの気分っす。

 横っ跳びに避けるとそっちには犬型が回り込んでるし。

 咄嗟に準省エネモードになってなかったら首が飛んでたね。

 ホントはアンコさんに救援を求めたいところなんだけど、あいにくかなり雲が低い。

 多分ペインさんの術なんでしょうね。

 ここで焙烙玉を打ち上げたとしても下手をしたら雲のせいで場所が特定できないかも。

 

 なんか奇妙です。

 相手が僕を追い詰める速度が速すぎます。

 さっきから見ていると、どうも連中の目が異様な同心円、つまりは輪廻眼になってるんですよね。

 輪廻眼は伝説レベルの代物。

 そんなのが口寄せとはいえ2匹も同時に持ってるなんておかしいです。

 ってことは、術者から輪廻眼を一時的に与えられてるか、それこそが輪廻眼の能力なのか。

 多分これは視覚の共有化でしょうかね。

 召喚した動物に輪廻眼を与え、その視覚を共有する、と。

 少なくともそれが輪廻眼の力の一端なんでしょう。

 そうしたらば、と。

 ちょっと細工をさせてもらいましょう。

 

 

 

 ペインの力で召喚された異形の獣、その内犬型のモノは飛行型のモノの視覚を利用してブンブクを追い詰めていった。

 地上を移動する犬型は、俯瞰的に上空から地上を見る事の出来る鳥型の視覚を利用することでその高い力を十二分に発揮できる。

 そう思い込んだために、上空からの視覚情報を鵜呑みにし、柱の影に隠れていたブンブクをなぎ払った。

 正確に言うなら、柱の影に書かれたブンブクの絵、にである。

 なぎ払った位置にブンブクは居なかった。

 上空からの死角、つまりはその近くの家の軒下にへばりついていたのである。

 ブンブクの目の前を犬型の前足が通り抜け、その近くに犬型の顔の1つがぬうっと現れた。

「ほい、プレゼント・フォーユーですよ!」

 ブンブクはその口の中に、自来也から譲り受けた封印術の巻物を解きながら放り込んだ。

 途端に犬型の口から()()()が立ち上る。

 ブンブクはこの犬型が攻撃を受ければ受けるほど頭部が増え、多数に分裂できる事を知っていた。

 故に、

「うちはイタチさんの『黒い炎』です!

 これは消えませんよ!!」

 かつて自来也が封じた「天照」の黒い炎。

 それが封じられた「封火法印」の巻物を犬型に対して使用したのである。

 どれだけもがいても決して消える事の無い黒い炎。

 犬型を焼き尽くすまで消える事はない。

 これで1匹。

 ほっとした表情を()()()ブンブク。

 それに対し、上空から鳥型が襲いかかる。

「そりゃ甘い!」

 ブンブクから細い紐の様なものが放たれ、鳥型に絡みつく。

 当然のことながら巨体の鳥型には戒めにすらならない。

 ブンブクの近くを掠めて上空に舞い上がり、そして、そのまま燃え上がった。

 黒い炎で。

 絡みついた糸、その端には「天照」の炎が灯されていた。

 その炎は消える事無く糸を燃やしつくし、そして鳥型へと燃え移った。

 空中で死の舞踏を踊る鳥型。

 やがて力尽き、墜落してくる頃には全身に炎が回り、地上に落ちる頃にはすっかり燃えつき炎ごと消滅していた。

「さて、自来也さまはどうなってるだろうか…」

 ブンブクは激戦が行われ、とてつもない音を繰りだして居る場所へと移動し始めた。

 

 

 

 その頃自来也は仙人モードになってすら、苦戦をしていた。

 巨大なカメレオン、巨大な牛の様な召喚動物は早々と仕留める事が出来た。

 犬と鳥がブンブクを追って行った為、余裕が出来たのである。

 問題はその後にペインが呼び出した2人だ。

 短めの顎髭と右目に掛かる髪型をした男、そして長髪を後ろに流した男。

 自来也は違和感を感じた。

 こいつらが居るのは本来ここではないのではないかと。

 明確な疑問を纏める暇はない。

 ペイン達3人の猛攻が始まった。

 

 こと厄介だったのは長髪の男。

 彼は自来也の術を全て()()してしまっていた。

 仙人モードで発動する三位一体の術、仙法・五右衛門。

 自来也が油を吐き出し、それに自来也の右肩に融合した蝦蟇仙人のフカサクが突風、左肩に融合したフカサクの妻のシマが炎を吐き、とてつもない範囲を炎で焼く荒業である。

 その術が消失、自来也が仙人モードでしか使えない極大の大玉螺旋丸すら受け止められ、吸収された。

 さらには3人の視角共有により彼らの連携は自来也を圧倒するまでになっている。

 自来也は一旦坑道に逃げ込み、策を練り直した。

 

 自来也はフカサク、シマの知恵を借りて、ペイン達の謎を一部解き明かしていた。

 視覚の共有化、能力は1人につき1種類である事。

 自来也の忍としての利点、それは能力に比して他者を頼ることを厭わない事。

 優秀な忍であればある程己1人で物事を解決しようとする傾向がある。

 他者を信用せず、己の力が生死を分ける忍の世界としては当然の事。

 しかし、「3人寄れば文殊の知恵」という言葉もある通り、複数人でのディスカッションという者は有効だ。

 単純な知識の量のみならず、「視点の違い」は時に天才の発想を上回るものだ。

 体術で抑え込めず、忍術は吸収される、となれば、

「幻術ですのォ、しかし、ワシは幻術がからっきしですがの」

 自来也がそう言う。

 正確に言うなら「今の現状を打破できるだけの幻術の大技」が無い、という事だが。

 細かい幻術ならば自来也の十八番(おはこ)である。

 とは言え、そのレベルの幻術なれば、多分ペインにはほぼ効果がない。

 幻術は同レベル以上の相手には非常に効果を及ぼすのが難しい為である。

 故に。

 

 ペイン達は自来也達を追うべく行動の前に来ていた。

 最初から居るペイン、そして顎髭の男・ペイン人間道、そして長髪の男・ペイン餓鬼道は攻撃に移ろうか、という時に「歌」を聞いた。

 それは坑道からつながる排水用のパイプを伝って響いてきた。

 その歌を聞いた時、ペインの視界がくらり、と揺れた。

 …なるほど、幻術か。

 かなり高レベルの幻術を自来也は使用しているようだ。

 だが、ペインとて高ランクの上忍、効果が出るまでにはかなりの時間がかかるはず。

 今の内に速攻で仕留めてしまうのが最良。

 3人、もしくは3体は坑道へと入っていった。

 

 結果からすると自来也は3人を倒す事に成功した。

 3人の視覚を分断することで相手を追い詰め、その上で完全に幻術を仕掛ける事に成功したのだ。

 3人、もしくは3体に止めを刺し、一息ついた自来也。

 

「油断はするなとアンタから教わったハズだが、…自来也先生」

 

 背後からそう声が掛かった。

 

 

 

 僕は自来也さまを探しに最初の場所のあたりまで戻ってみた。

 途中から、なんというか蛙の輪唱みたいなのが聞こえてきたので多分こっちで良いはず。

 ん?

 なんか見たような色目の服装の人物が歩いていきました。

 ペインさん、更に口寄せをしていたのか。

 彼は瞬身を使い、ふっと姿を消しました。

 まずい!

 そう思った僕の視界に、壊れた浄水施設の隙間から自来也さまの姿が見えました。

 つまり…、まずい!!

 僕は全力で走り、自来也さまの背後に滑り込みました。

 そこには先ほどの召喚された男が!

「金遁・部分什器変化の術!」

 両腕を茶釜に変え、さらにチャクラでの強化を入れて、

 そして、

 僕の体にとてつもない衝撃が走りました。

 

 

 

 かつて浄水施設であったと思わしきコンクリートの建物の外壁が吹き飛び、自来也とブンブクが弾き出された。

 まるで水切りの石の如く水面を何度も弾け、そして自来也は水面に立ち上がった。

 左手ではブンブクを掴んでいる。

 ブンブクは男の一撃をもろに食らい、血痰を吐きだしながら悶えていた。

 自来也の様に長年チャクラを使い続け、息をするようにチャクラのコントロールが出来るなればともかく、この状況ではブンブクにはチャクラのコントロールによる水面歩行は難しいだろう。

「ブンブクに救われたの、自来也。

 しかし、さっきの3人とはまた顔が違う奴か。

 どういう事じゃ!?」

 フカサクがそう言う。

 自来也は答えて、

「おそらく前もって口寄せしておったんでしょうのォ」

「そうか! ワシらの幻覚に掛かりきる前に…、む!!」

 そう話す自来也達の前に、6人の男達が現れた。

 そう、

 

「ペイン六道…、ここに見参…」

 

 最初に居た総髪に髪を纏めた男・ペイン畜生道、短めの顎髭と右目に掛かる髪型をした男・ペイン人間道、長髪を後ろに流した男・ペイン餓鬼道に加え、髪がまり藻のようにもっさりとした男・ペイン地獄道、奇妙に作り物じみた外見の禿頭(くとう)の男・ペイン修羅道、そしてペイン天道。

「6人もおるんか!」

「おい!? よー見てみい! さっきやっつけた3人もおるがな!!」

 フカサクとシマが驚愕する。

「完全に死んだ奴を3人も息返せる術やこうあるかいな!?

 こいつらホンマに人間かいな!?」

 そのシマの言葉に答えたのは、

「違うんじゃ、無いですかね…げほっ!

 多分、本体、は、後から来た3人の内、どれか、で、他は、多分、口寄せ動物です、げほっ。

 カラクリの一種か、人間に擬態する能力、を持った口寄せ動物、じゃ、無いですかね。

 連中の、目が、輪廻眼なのは、多分、輪廻眼の、能力が、『自分の口寄せ動物に輪廻眼を与えて視角を共有する』、から、じゃないかと」

 絡操傀儡を操演し、サソリの人傀儡とも戦い、先ほど輪廻眼を持った召喚獣と戦った経験が、ブンブクにそう言わせていた。

 一方自来也はその6人のうちの1人に視線を釘付けにされていた。

 

 先ほど自来也は長門、ペイン畜生道に、

「弥彦はどうした」

 と問うていた。

「とっくに死んだよ、そんな奴は」

 そうペインは返していた、はずなのに。

 

「ペイン…、お前はいったい何者なんだ?」

 そう呟く自来也にペインの1人が答えて曰く。

「ペイン、それはオレ達全員を指し示す名だ」

 その声に、自来也は聞き覚えがあった。

「!! お前は…、その顔は…、弥彦、なのか?」

 確かにその顔にはかつての弟子である弥彦の面影があった。

 しかし、そのペインは周りの者と同様に輪廻眼を持っていた。

「何故お前が輪廻眼を持っている!?」

 それを指し示すのは「本来の持ち主である長門から弥彦が輪廻眼を奪った、または譲られた」という事なのか。

 自来也には判断できなかった。

 少なくとも自来也と共に暮らしていた彼らならばそのような事はないはずだが。

「弥彦なのか、長門なのか…。

 お前は一体何なんだ!?」

 自来也の悲鳴の如き問いに、ペイン天道はこう答えた。

 

「我々はペイン…、『神』だ!」

 そして、ペイン六道と自来也達の戦いは始まった。




ペイン餓鬼道、人間道、地獄道は指し変わっております。
ちなみにオリジナルではありません。

原作と違い、自来也は腕を失いませんでした。
代わりにブンブクが大ダメージを受けてます。

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