NARUTO 狐狸忍法帖   作:黒羆屋

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やっと完成です。
前回に続き、アンコと呪印に関しての独自解釈、
及び、自来也に関する独自解釈が入っております。


第64話 ブンブク/木の葉

 ブンブク

 

「アンコよお、おぬし、ワシの修行を受けてみる気はないかのォ?」

「え!?」

 自来也さまの提案に、アンコさんは感動の表情…ではなく、胸元を両手で覆って半歩下がりました。

 こう、両の腕で胸が何ともエッチっぽいたわみ方をしています。

「ぐへへ…、ってそのリアクションは何なんだのォ?」

 ある意味何とも眼福な光景に自来也さまの顔が脂下(やにさ)がり、あわてて取り繕っています。

 ちなみに僕は顔が赤くなる前に視線をはずしてます。

「ええっとですね、自来也さま、多分アンコさんは自来也さまの『えっちな』修行と取り違えてるんじゃないでしょうか」

「なんじゃと!!」

 自来也さまは愕然としています。

 …これはまあ、うずまき兄ちゃんとの修行中、僕が緊急の連絡役として自来也さまの所に行き来していた時に、兄ちゃんから愚痴を聞かされてたのをそのまま6代目さまに伝えていたのが問題だったようです。

 綱手さまって特に自来也さまへのあたりが強いんだよなあ。

 なにかあるとシズネさん連れて夜の飲み屋、特に赤提灯系の屋台みたいな所、をはしごしては自来也さまのエロっぷりを大声で愚痴るもんだから、自来也さまの素行って里の中に鳴り響いちゃってるんだよね。

 まあ大人のみんなの話を総合すると何をいまさら、という感じらしいんだけど。

 ある一定以上の年齢の人にとっては自来也さまのエロ仙人っぷりは有名らしい。

 ここ何10年も自来也さまは任務でろくに里に戻る事がなかったので僕らは知らなかったんだけど。

 まあそう言う訳で、自来也さまとの修行はくノ一の皆さんにとっては「修行という名のセクハラ」と同義になっちゃってるんですよ。

 そこまで自来也さまに説明すると、自来也さまはがっくりと膝をつき、

「ワ、ワシの威厳が…」

 と嘆いてらっしゃった。

 しばらくすると自来也さまは立ち直り、真面目な顔でアンコさんと話し始めた。

 

 

 

「アンコよ、今回の事でワシはおぬしに刻まれた呪印に関して分かった事がある。

 おぬしの呪印はワシの使う『仙人モード』に非常に近い特性を持っておる」

 自来也は常日頃のスケベ満載の雰囲気を完全に脱ぎ棄て、真面目な表情でアンコに語りかけていた。

 脇の方では茶釜ブンブクが普段は眠そうなたれ目をまんまるに見開いている。

 どうやら「仙人モード」、つまりは仙術についてある程度の知識があるようだ。

 化け狸との交流があるだけあって、自然のチャクラに関する話は聞いた事がある様子であった。

 自来也は話を続けた。

「どうも大蛇丸の奴は擬似的に仙術を使用する方法を編み出しておったようだ。

 あいつ自身はその才能がなかったようだが、やはり諦めとらんかったんだのォ…」

 大蛇丸はかつて蛇仙の元で仙術を使いこなす者、つまりは仙人としての修行を行っていた事がある。

 自来也が蝦蟇の里・妙木山にて修行をし、仙人モードを習得した時、大蛇丸は己も仙人モードを習得するために化け蛇であるマンダと契約し、それを足がかりに蛇の里・龍地洞へと至り、仙人としての修行をしている。

 しかし、仙人モードの習得はできなかった。

 なぜ自来也が習得でき、大蛇丸が習得できなかったのか、それは不明のままである。

 しかし、少なくとも術関係における大蛇丸や綱手の才能にコンプレックスのあった自来也にとっては、仙術の習得は自信につながった。

 同時に、術ならば負けない、負けられないと思っていた大蛇丸にとっては、自来也との差をつけられるような気がしたであろう。

 仙術というものが、大蛇丸が狂気に走り、木の葉隠れの里を出奔する事になった遠因の1つであった可能性は、呪印という擬似仙術を研究していたことを考えるのであれば無かったとは言えぬのかもしれない。

 うずまきナルトとうちはサスケの如く、自来也と大蛇丸は戦友であると同時にライバルでもあったのだから。

 自来也は話を続けた。

「この呪印と言う奴が擬似的に仙術を発動させるものだとすれば、仙術を修めることで呪印の制御が可能になるんではないか、ワシはそう見ておるからのォ」

 自来也のその言葉に眼の色が変わるアンコ。

 今まで己の枷でしかなかった呪印が己の力となるのであれば、修行の意味は大きいであろう。

 しかし、アンコは躊躇していた。

「…やはり、大蛇丸の事が気になるか」

 自来也の言葉にピクリとするアンコ。

 感受性の強い子ども時代から大蛇丸に師事していたアンコは、自来也に対する大蛇丸のこだわりを見ていた。

 それが「自来也に師事する」事への躊躇を生んでいた。

「別にワシはおぬしが大蛇丸から学んできたものを否定する気はないのォ。

 しかしのォ、すでにおぬしは大蛇丸から学んだものを自分自身のものとして取り込んでおる。

 次は己自身のもの、他者のまねのできないものへとそれを昇華するべき時だと思う。

 その為には今まで自分になかった視点、技術を取り込むのも悪くないと思うのォ」

 自来也のその言葉に反応したのはブンブクだった。

「ああ、『守・破・離』ってやつですね」

 その言葉に自来也は片眉をあげ、アンコは首を捻った。

「? なにその『しゅ・は・り』って?」

 ブンブクはそれにこたえて、

「木の葉流剣術で、修行始めてから一人前になるまでの流れをこう言うんだそうです。

 まずはお師匠さまに言われたことを『守る』ところから修行が始まって、その後、その教えを自分なりに研究するして、自分に合った、より良いと思われる形を創る事で既存の型を『破る』。

 で、最終的にはお師匠さまの教え、そして自分自身が創り出した形をものにした人は自分自身の能力と忍術なんかの技をよく知っているため、お師匠さんの作った形から自由になりそこから『離れ』て自分なりの形を作り上げるってことです。

 いまアンコさんの状態は『破』の状態なんでしょうね。

 んで、自来也さまの言っているのはアンコさんは大蛇丸さんから教えてもらったものを大事にし過ぎて大蛇丸さんの型にアンコさんをはめ込んでるのがアンコさんの成長を阻害してる可能性に触れてるんじゃないかと思うんですけど。

 こんな感じでしょうか、自来也さま」

「ブンブクよお、ワシの台詞をみんな持ってくんじゃないのォ!?

 まったく、どうもワシの教える奴らはこんなんばっかなんかのォ…」

 自来也はぶつぶつと言っているが、すぐに持ち直し、

「アンコよ、おぬしにとって大蛇丸という存在が特別なのは分かっとる」

 自来也の言葉に、

「そんな事は…」

 否定をしきれないアンコ。

 アンコは大蛇丸に複雑な思いを抱えていた。

 尊敬する恩師であり、自身を切り捨てた里の裏切り者。

 大蛇丸より教えられた術の数々を以って大蛇丸を葬る、それが自身のすべきことであると裏切りを知った時より思ってきた。

 元よりこれは自身に課した使命。

 誰にも語った事はなかった。

 しかし、自来也には筒抜けだったらしい。

 ある意味、アンコと自来也は同士ともいえる。

 大蛇丸に対する思いは方向性さえ違えどその重さは変わらぬほど。

 自来也は三忍の内で最も内包するチャクラ量が少ない。

 仙人モードを使ってなお大蛇丸に勝てるか、と言えば自来也には自信がない。

 それだけの怪物なのだ、大蛇丸という男は。

 最も大蛇丸とて自来也に勝てるか、と考えるならば絶対とは思っていなかった。

 自来也には大蛇丸や綱手にはない「人の機微を見抜く能力」があった。

 人の心の動きを察知し、それに応じた対応を行う。

 忍術においてはこれを「人遁」と呼ぶ。

 人心をコントロールする「五車の術」などを含む人の心理に影響を与える術の総称である。

 自来也は人遁を以って伝説の三忍と称されるほどになっていったのだ。

 それだけに自来也は桁外れの才能を持った大蛇丸を羨み、彼をライバルとすることで己を鍛え、磨きぬいたのである。

 アンコは大蛇丸に裏切られた。

 それは彼女にとって大きな傷となった。

 その傷は身体的なものだけではない。

 心にも、そして彼女の社会的立場にもだ。

 彼女は将来を有望視された逸材であった。

 それ故に大蛇丸という忍術の大家に預けられたのである。

 上層部の目論見通り、アンコは順調に成長していった。

 そのままいけば歴代の怪物はさておき、かなり若い段階で上忍となっていたであろう。

 その出世を阻んだのは皮肉にも師である大蛇丸であった。

 彼が里を裏切った、その事はアンコにも暗い影を落とした。

 里を裏切った、それはすなわち大蛇丸を慕っていた者への裏切り。

 さらには大蛇丸への敬意を逆手に取られ、アンコは実験段階であった「天の呪印」を大蛇丸によって施術された。

 これらの事から里の内部では未だにみたらしアンコの排斥論すら存在している。

 それらのハンディキャップを正面からたたき潰し、アンコは特別上忍の地位まで上り詰めた。

 出世を望まなかった訳ではない。

 が、大蛇丸を殺す、その思いで己を磨いた結果、アンコは強くなった。

 特別上忍という地位はそれに結果が付いてきたにすぎない。

 アンコは今、大蛇丸の死、それに伴う己の存在意義の揺らぎと戦っていた。

 自来也はそれを感じ取っていた。

 大なり小なり自来也にもあるものだから。

 自来也も大蛇丸という生涯のライバルを失い、動揺していた。

 アンコと違うのは、その積み重ねてきた人生の量から他に自身を支えるものが多い、それだけに過ぎない。

 そして今のアンコが持つ持つ、呪印という強大な力。

 いつ暴走してもおかしくないそれを制御しなければ、アンコにとっても周囲にとっても不幸しか呼ぶまい。

 自来也は、アンコに呪印を制御する術を修行させるとともに、大蛇丸の死を受け入れるだけの時間を稼ぐことを目論んでいた。

「のォアンコよ、おぬしにはもう一段上に行く為の資質がある。

 ワシの見たところ、おぬしのチャクラ、その保有量という奴だのォ、それは皮肉だが大蛇丸の奴の施した呪印の影響よって抑え込まれてきた。

 しかしのォ、おぬしがそれを抑え込んできた事によって、おぬしの体は膨大なチャクラを受け入れる地力ができている。

 言ってしまえばいつも体に圧力をかけていた事によって、チャクラを体内に留めておく貯水槽(タンク)が膨大なものになったと思えばいいだろうのォ」

 そう、アンコは呪印を制御する副作用として己の保有チャクラの限界までチャクラを練る事が出来なかった。

 その副作用として、アンコの体は自身の練りだす事の出来るチャクラの量以上を体内に保有しても心身が壊れる事のない、異常に強靭な肉体を手に入れる事が出来たのである。

 強靭さに特化した身体、とでもいおうか。

 その為、彼女は修行で培われた上忍並みの身体能力とは別に、ナルト達人柱力に追従するほどのタフネスさを獲得していた。

 無論難点が無い訳ではない。

 その代償としてアンコの体は非常に燃費が悪い。

 通常の上忍の数倍のカロリーが必要となるのだ。

 アンコは常に何か食べている。

 特に甘味。

 こと団子や汁粉など、餡子を中心とした和風甘味は彼女の好みであり、1時間もしないうちに団子53本に汁粉を食べきるという気違いじみた食欲を発揮した事もある。

 カロリーにして7000Kcal以上を間食として摂取したのだ。

 なお、現代における軍人の摂取カロリーは一説によると3500から寒冷地で7000Kcalと言われている。

 たかだか間食で体力の消耗の激しい軍人の一日の摂取カロリーを超える熱力を取り込み、あのだいなまいとばでぃを維持しているのだ。

 どれだけ呪印のもたらす負担が大きいか分かるであろう。

 アンコは呪印の適合者ではなかった。

 それを彼女は力づくでねじ伏せたと言えるだろう。

 その為の代償であった。

「その制御方法ならばワシが伝授できるかもしれん。

 確かに大蛇丸はここで、死んだ、のかもしれん。

 だがのォ、おぬしは生きておる。

 大蛇丸の直弟子であるおぬしは。

 ならばおぬしは大蛇丸を、ワシら『伝説の三忍』を超えて見せえ。

 あ奴は里を裏切ったが、忍としては大きな名をあげた男だからのォ。

 弟子として師匠を超える、それが今お主が出来る事、ではないかのォ?」

 自来也は抑揚を付けた声でアンコを誘う。

 自来也はアンコに修行させることを決定事項としていた。

 このまま放置しておくにはアンコとその力は危険すぎる。

 確実に使いこなしてもらう必要があった。

 …正直に言うなら、相手の弱みに付け込んで、動揺させ、心が揺らいでいるところを狙いこちらの言い分を通す、人遁を使った弟子の勧誘などは自来也とてしたくはない。

 しかし、大蛇丸の残したものをここで潰される訳にも行くまい。

 大蛇丸という希代の忍であり忍術研究家の遺産を少しでも形として残しておきたい。

 自来也の本音はそこにあった。

 が。

「…? なんで自来也さまもアンコさんも大蛇丸さんが死んだって決めつけてるのかなあ?」

 茶釜ブンブクのその一言が場の雰囲気をスコンと破壊した。

 

 

 

 自来也さまとアンコさん、2人が僕を見ます。

 なんか信じられないものを見るような目で。

 いや、あなたたちいくらなんでも大蛇丸さんを甘く見過ぎてはいませんか?

 あの人が「殺したくらいで死ぬ」訳がないでしょ。

 と思うのは、最近の大蛇丸さんを知っている僕だからでしょうかね。

 僕は解説を入れていきます。

「まず、『木の葉崩し』の時の大蛇丸さんって体は別人だったんでしたよね? アンコさん」

 僕はそうアンコさんに問いただします。

「ええ、『暗部』の連中からそう報告を受けてるわ」

 そう、大蛇丸さんは「木の葉崩し」の最終局面、四紫炎陣に囚われた3代目火影・猿飛ヒルゼンさまの前に、誰とも知れない女性の顔を晒している。

 つまりは「不屍転生」の術のヒントをこの時点で見せている訳。

 故に、

「どうやら大蛇丸さんは何らかの手段で他者の体を乗っ取って、それを以って自分自身を『不死』の存在であると言ってる訳ですよね。

 で、う…うちはサスケさんは『不死を打ち破り、大蛇丸を完全に滅ぼした』なんて事は言ってない訳です。

 ってことは…」

 あ、やっと自来也さまが動き出した。

「なるほどのォ、大蛇丸の奴がまだ生きとる可能性を示唆しとるっと言う訳かのォ」

 そゆことです。

「じゃ、じゃあよ、あそこにあった大きな死骸ってなんなのよ!?

 あれこそ大蛇丸の死んだ証じゃないの!?」

 アンコさんが上ずりながらそう言います。

 まあ普通の忍ならそうなんですけどね。

「大蛇丸さんって『実体を残した』変わり身が得意じゃないですか。

 相応にチャクラを使うとしても、肉体を残したまま、自身を保存した『器』を脱出させることは可能だったんじゃないかなあ、と。

 どうでしょうか、自来也さま?」

「…確かに、可能、かもしれんのォ、大蛇丸なら」

 自来也さまは眉間にしわを寄せて深く考えんだ後に、そう言った。

 その言葉に反応したのはアンコさんだ。

「本当に、あの、大蛇丸が生きている、と?」

「それは断言できません。

 ただ、この施設の破壊具合からして、10メートル程度のものが暴れたとは思えない。

 それこそ100メートル級の怪獣が暴走したように見える訳です。

 で、アンコさんが見つけた残骸って、規模をみると精々20メートルかそんな程度の代物。

 多分ほとんどは音隠れの人たちが回収していっちゃったんだと思うんです。

 後々回収に来るつもりで隠しておいたんでしょう。

 んで、回収していった部分にもたんまりと大蛇丸さんのチャクラが含まれてる訳です。

 それを何に使うか、と考えると…」

「なるほど、大蛇丸の『体』の再生、ってことね」

 実際は大蛇丸さんの体ってもの凄い研究成果の塊ですから、それ目当てに回収していった可能性もありますけどね。

 でもあながち間違いじゃない気もするんですよね。

 アンコさんが変じたドラゴンとの戦いの真っ最中、ドラゴンの動きがいきなり鈍くなりましたし。

 どっかにいる「大蛇丸さんの本体」の影響ってあったんではなかろうか、なんて。

 …というのが表の理由で大体半分くらい。

 もう半分はアンコさんの心が落ち着くまでの時間稼ぎだったりします。

 

 

 

 こいつはホントに性質(たち)悪いのォ、師匠(ダンゾウ)の影響かのォ…。

 自来也はため息と共にそう考えた。

 自来也はブンブクが音隠れの里への潜入任務を行っていた事は知っているものの、彼が大蛇丸とどう関わっていたのか、のかは認識していない。

 故に、ブンブクがしようとしている事をアンコの精神状態が落ち着くまでの時間を稼ぎ、大蛇丸の死を納得させる為であろうと推測していた。

 しかし、自身もどうやら大蛇丸の死にかなり動揺していたらしい、その事に自来也は呆れた。

 自来也は人の機微を戦術に組み込む人遁の使い手だ。

 それが、自分の心情を把握できずその為に焦りを生み、アンコを策に嵌めてまで己の弟子として修行させようとした。

 これは己が結局大蛇丸に勝てなんだ、その事を払しょくするための手段にしようとはしていなかったか。

 情けない。

 これでは己がくたばった時に、大蛇丸になんと言われるか。

 自来也は内心で己に喝を入れつつ、

「で、どうするかのォ、アンコよ」

 そう尋ねた。

 アンコの目は挑戦的にギラリ、と輝いていた。

「もちろん、お受けします。

 いえ、ぜひともお願いいたします」

 そうして、アンコの呪印を制御する修行は始まったのである。

 

 

 

 

「喝ぁつ!!」

「あ痛たあっ!?」

 お隣でベしんという音と同時にアンコさんの悲鳴が聞こえました。

 自来也さまの言う事には、

「アンコには十分な素養が育っておるからのォ、まず、修行が『うまく』いけばものになるだろうのぉ」

 って事だそうで。

 …妙に「うまく」の所で引っ掛かる部分があったんだけど。

 自来也さまに、「うまく行かなかったらどうなるのか」って聞いてみたところ、

「…まあアンコだからのォ、多分、『蛇』になるんじゃないかのォ…」

 って言っていた。

 …って蛇になるんですか!?

 自来也さまの話だと、自然のチャクラって人間のチャクラとは違う性質を持ってるんだそうで、それを取り込むことで人間から動植物、最終的に無機物に体が変化してしまうんだそうです。

 で、自分の持つチャクラと自然のチャクラをバランスよく取り込むのが今やってる座禅だそうです。

 本来だとなんとやらいう秘薬を使うのだそうですが、どうやら「蛇」の性質をもつアンコさんにはとことん相性が悪いんだそうで、その役目は首筋の「呪印」がするんだそうです。

 正確に言うと、呪印の紋章部分から自然のチャクラを取り込むのだそうですが。

 そもそも呪印って何かというと、どうやら血液中に存在する()()()、前世の知識からすると血液もしくは造血細胞内に寄生、共生するバクテリアとかの微小生命体あたりじゃないかと思うんですけど、それが共生している忍の邪気、たぶん強い感情という意味だと思うんですけど、に反応してチャクラを強制的に練らせるとともに自然のチャクラを血中に一旦取り込み、共生者に使えるよう変換しているのではないかと。

 だから、呪印から取り込んだチャクラを直接使う事が出来るようになれば暴走の確率も下がるであろう、との事。

 そこまでいけば、呪印の力をねじ伏せたアンコさんだ、十分に制御できるようになるだろうなあ。

 ってことで座禅を組んで、自然のチャクラを感じ取る練習をしている訳です。

 ちなみに僕もその横で座禅を組んでますが。

 万が一、もし自然のチャクラを感じ取る事が出来るようであれば、僕だって仙人モードが使えるようになるかもしれませんし。

 そしたらチャクラ不足の解消になるかもしれません!

 これはやるしか! ってことで自来也さまにお願いして、一緒にやらせてもらってます。

 ちなみにどうやら僕は碌に感じ取れていないようで、全く叩かれることはありません。

 ちなみに自来也さまが持ってるのは自然のチャクラを体から追い出すハタキ棒だそうで、蝦蟇の里である妙木山の偉い蝦蟇仙人様から借りだしたものだそうです。

 忍具ならぬ仙具なんですね。

 …かなり重要なものなんじゃないでしょうか。

 まあいいや。

 僕は一息つくと、瞑想に入っていくのでした。

 

 

 

 自来也はアンコの中に溜まりすぎた自然のチャクラをハタキ棒で叩きだしていた。

 アンコが恨めしい目で見ているが仕方がない。

 またその顔が何とも色っぽく…ゲフンゲフン、まあそれはともかく、まだまだ修行に時間はかかるようである。

 油断していると首元から鱗が生えてきたり、舌がふたつに割れたりと蛇への変化が起きてしまうのである。

 まあこれは仕方あるまい。

 しかし、予想以上にアンコはうまくやっているようだ。

 呪印の力を抑え込むために自然と行っていたチャクラのコントロールがいい方向に働いている様子。

 これならば果ては冗談抜きで大蛇丸や自分を追い越していくのではないだろうか、自来也はそう内心うれしく思った。

 決して呪印のある首筋のラインが色っぽ…ゲフンゲフン。

 自来也はアンコに集中している訳ではない。

 同時に一応なりともブンブクにも修行を付けているのだから。

 

 そして数日後。

「ブンブク、おぬしには仙術の才が無い様だのォ、続けても無駄だのォ」

 ブンブクはそう自来也に告げられて盛大に落ち込むのであった。

 

 

 

 木の葉 「根」の一幕

 

「む…」

 木の葉隠れの里の上忍にして志村ダンゾウの抱える「根」の一員である上忍、メイキョウは簡素ながら清潔な施術用のベッドから起き上がった。

 周囲は暗く、うっすらと入って来る星明かりのみが光源だ。

 その側に影の如く立つ男。

 志村ダンゾウ。

 木の葉隠れの里の裏側を取り仕切る組織、「根」の長官である。

「メイキョウ、どうか」

 ダンゾウはメイキョウに体調の状態を尋ねた。

 メイキョウは右目のあたりを手の平で抑えてしばし、

「…ああ、問題ないようだ。

 感謝しますよ、ダンゾウ様」

 そう気安くダンゾウに声をかけた。

 ここに山中フーか油女トルネがいたなら、声を荒げて非礼を追求したであろう。

 しかしここには彼ら2人。

「ダンゾウ様、で、状況はどうなっているので?」

「うむ。

 大蛇丸を仕留めたサスケは、イタチの捜索に動いておる。

 こちらでもサスケの確保には動いているものの、奴も優秀な参謀を手に入れたようだ」

 ダンゾウの声に感情の色を見ることはできない。

「ふむ…、薬師カブトですか」

 それ以外には考え付かない人選をメイキョウは告げた。

「いや、『名張の四貫目』よ」

「な!」

 ダンゾウから告げられた名はメイキョウをも驚愕させた。

「あの伝説の忍ですか!?

 事実ならなんと厄介な…」

 名張の四貫目は名前のみが忍界に轟く忍であった。

 その本質は無音暗殺。

 誰にも気づかれず忍びより、誰にも気取られず任務を遂行する。

 こと追跡に対する察知、回避能力は「忍の神」と言われた初代火影・千手柱間やうちはマダラをすら出しぬいたと言われるもので、今のサスケにとっては最も頼りになる相方と言えよう。

 それは裏を返せば木の葉隠れの里の追跡班達にとっては最悪の手合いという事になる。

「で、オレはそれを追えば良い、ということでしょうか?」

「いや、お前には別方向から『イタチ』を追ってもらう」

「! …了解いたしました。

 で、オレ1人でですか?」

「いや、お前には次郎坊、鬼童丸、右近左近を付ける。

 任せるぞ」

「…承知」

「…これを持っていけ」

 即座に立ち去ろうとしたメイキョウに、ダンゾウは一握りほどの直系の瓶を渡した。

「これは…!」

 瓶は薬瓶と呼ばれる紫外線を遮断し、内部のものを日光で劣化させないようになっているものだ。

 周囲は暗い。

 しかしメイキョウも上忍、星明かりさえあればその瓶に張ってあるラベルくらいは余裕を持って読む事が出来る。

 そこに書いてある文字を呼んで、メイキョウは明らかに驚愕していた。

「…確かに必要なものだ。

 ありがたく貰っていく」

 どこか硬質的な雰囲気を纏い、今度こそメイキョウは闇に溶けて、消えた。

 ダンゾウをしても追跡しきれない「瞬身」により、彼は姿を消した。

 ダンゾウはしばし佇み、同様に闇に溶けて、その場には誰もいなくなった。

 知るのは星明かりのみ。




次回温泉回。

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