NARUTO 狐狸忍法帖   作:黒羆屋

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今回は他作品のキャラクターをひとり(?)だけ混ぜ込んでみました。


第3話

 どもです、茶釜ブンブクです。

 ただいま僕はうちから結構離れた森の中にきております。

 なんでかっていうと、ちょっと大変な忍術の習得をしようか、と。

 うちだとまだ早い、とかいわれるかも、しかあし! 僕の中の忍魂がこの術を習得しろ、と猛け吠えるのさっ!!

 …まあ高等忍術の割にはチャクラがかからないらしいし、面白そうなので是非とも習得してみたいもんで。

 どんな術かって、それはですね…。

 

 「口寄せの術」

 

 なんですよ!! 盛り上がるでしょ! ね! ね!

 …アホみたいなハイテンションが落ち着いてきたんで冷静に話しますとですね。

 ついこの間のことです。

 僕は今日とおんなじようにこの森に遊びに来ていたんです。

 最近、僕の学級の男の子たちの間で珍しい昆虫を捕まえるのがブームでして、でも、さすがに死の森とかは危険で入るのも禁止されてますし。

 実際、死の森に入っちゃった同級生が大きな蛇とかに追いかけられて寸での所で木の葉の忍に助けられたということもありましたし。

 なんか最近あそこは警備が厳しくなっていたらしく、それで救助が間に合ったらしいんですけどね。

 それはともかく。

 そしたら丁度虫がいそうな木の(うろ)からなんか音がしまして。

 のぞいてみたら手のひらサイズの子狸が洞の隙間に引っ掛かっていたんです。

 かわいそうだったんでクナイを使って掘りだいてあげたんですけどね。

 どうやら、彼、(あやかし)の血族だったようでして、召喚に使う巻物を貸してくれたんですよ、これが。

 そういうわけで、ちょっと契約をしてみたい、と思いまして、まずその彼を口寄せしたいとおもうわけです。

 本来、口寄せの術ってそうそうできるもんではありませんし、お家によっては秘伝になっているところもあるくらいですから。

 こういう機会でもない限り、うちみたいなショボイ一族にはなかなか口寄せ、なんて出来るもんじゃないですしね。

 

 ※ブンブクが知らないだけで、茶釜家歴代の中には口寄せを得意としたものがいる。

 

 なんか、誰かから叱られそうな気がするけど… ま、それは置いといて。

 この時のために用意しました、チャクラ切れ予防の兵糧丸、しかも効果はお墨付きの秋道印! チョウジさんから分けてもらったんだ、おやつと引き換えに。

 秋道チョウジさんは奈良シカマルさんのいわゆるツレというやつである。

 シカマルさんはただの腐れ縁と言っているが、2人の間には確とした信頼関係がある。

 いいよね、信頼できる「仲間」って言える人がいるのって。

 僕にもいつかできるだろうか。

 ま、それはさておき、3日分のおっかあ特製のおはぎという今の僕にとっては唯一ともいえる交渉材料で大当たりを引いた感じである。

 うちのおっかあの作るおはぎは店で売ってるのと比べてもそん色ないし、チョウジさんも大満足だった。

 これぞWIN-WINの関係ってやつだよね。

 3日間おやつを食べられなかったけど、僕のお小遣いじゃとても兵糧丸は買えないし、うちで作ってるのは持ち出せないしね。

 結構我慢が必要だったけどしょうがない、それで最高級の兵糧丸が手に入ったんだし。

 

 さてと、んじゃまずは準備をしましょう。

 まず手に入れた巻物を開いて、左手の親指をクナイでちょっと切る。

 ちょっと痛いけど我慢、我慢、僕は男の子。

 んで右手の親指から順に血を付け、巻物に自分の名前と五指の型を印字する。

 これで契約そのものは終了。

 ここからが口寄せの術の実践である。

 まずは虎の子の秋道印の兵糧丸を口にくわえてから、さっき切った左手の親指の血を右手の掌になすりつける。

 そして事前に教えてもらった印を結び、口寄せを発動する…。

 印を結んだてのひらから口寄せをする動物を呼ぶための忍び文字による陣が血文字として展開されていく。

 くうっ、これきつい!

 チャクラの消費が半端じゃない!

 忍び文字が展開するたび、ごそりごそりとチャクラがもっていかれるのが分かるくらいだ!

 急いで兵糧丸をかみ砕き、チャクラの補給とする。

 さすがにブランド物の兵糧丸、苦いけれど効果は抜群、急速にチャクラが回復していくのがわかる、が、それでも回復量以上にチャクラを持っていかれている。

 展開しきるまでチャクラがもつか…。

 長いようで短い起動時間が終りに近づき、術の発動は成功したようだ。

 目の前に、ボフン! という煙が上がり、その中から…。

「へいへいへいっ! 禁軍八百八狸を統括する隠神刑部(いぬがみぎょうぶ)将軍が客分、安部見(あべみ)加茂之輔(かものすけ)ここに見参でぇい!!」

 と、茶色の胴の長い動物が、まるで歌舞伎役者のようなポーズを取りながら立っていた。

 はい、間違いなく後ろ脚で立っております、ええ。

 本人(人? 狸?)は気張ったのだろうが、サイズがサイズ、尻尾を合わせても80センチ程度の生き物が見栄を切ってもねえ、せいぜいフィギュアか剥製程度にしか思えないんだけど。

 少なくとも助けた豆狸くんとは明らかに違う存在だねえ…。

 それにさ…。

「ねえ、加茂之輔くんや、キミほんとに狸?」

 そう、どう見ても彼は狸に見えない。

 彼の口上を聞いても分かる通り、僕が契約したのは死国八百八狸の頭目、隠神刑部の眷属であるところの豆狸くんで、眷属ってことは化け狸なはずであるんだけど。

 胴が長くて、体毛はお腹側が白、尻尾もボリュームないし。

 顔はどっちかって言うとボディに比べて丸顔のプリチー。

 彼ってどう見てもイタチ科の動物にしか見えない。

 ぶっちゃけて言ってしまうとオコジョにしか見えない。

「え、あっしですかい? 見ての通り化けオコジョですが」

 …そっかあ、オコジョって化けるんだあ…。

「…じゃなくて!

 化け狸との契約でなんで化けオコジョがくるのさ!

 どう考えてもおかしいでしょ!

 化け狸との契約なんだから、化け狸に来てもらってよ!

 弁護士を呼べ! 契約不履行だ! 訴えるよ、そしてか「それ以上はまずいっすよ、ブンブクの兄貴」…そだね、ちょっと落ちつこうか」

 改めて加茂之輔君に尋ねてみると、

 なんでも郷里で大きな罪を犯してしまい、地元にいられなくなったとのこと。

 それを引き取ってくれたのが化け狸の中でも大きな勢力を持っている隠神刑部さんなのだそうだ。

 どんな罪なのかは「そいつは聞かねえで下せえ、こいつはおれだけの罪なんでさ、人様に言えるようなもんじゃありゃあせん」とのこと。

 つまり彼は誰かのためにどうしようもない状況になって罪を犯した、ということだよね。

 それならしょうがない。

 ラブリーな見てくれとは裏腹に、結構ハードボイルドな性格をしているのかも。

 ついでに正式な眷属でないがゆえに召喚にかかる力も少ないらしい、それと僕の私見だけど、大してチャクラの量もないような僕の口寄せに呼ばれる彼の力そのものもあまり強い方ではないのかも知れない。

「それじゃ当分はきみが僕の召喚動物ってことだね、よろしく加茂之輔君」

「あいよっ、よろしくたのむぜぃ! ブンブクの兄貴。

 それから俺っちの事はカモでじゅうぶんだぜい、兄貴!」

「そっか、んじゃよろしくね、カモくん」

 さてっと無事口寄せもできたしっと…。

 うわっ、くらっときた…。

 チャクラをだいぶ消費してしまったらしい。

 もしかして枯渇寸前?

 立っていることができず、僕は座り込んでしまった。

「ああ、悪いんだけどさ、カモくん、ちょっとばてたみたい。

 わるいんだけど小1時間ほど見張りお願いできない?

 うちに帰るまでに少しチャクラ回復しておきたいんで仮眠取るから」

「おう、分かったぜ兄貴。この加茂之輔に任せておきなって」

 なんと心強いカモくんの言葉。

 んではありがたくっと… お休みなさい…。

 僕は森の木にもたれかかり、それと同時に意識が遠のいていった。

 

 目が覚めた。

 うん、太陽の角度からすると大体1時間くらいだよね。

 もう少しで日が山の影に沈もうとしてる。

 むっくりと起きると、布の塊が体の下に敷いてあった。

「ブンブクの兄貴、起きたんすね。ぴったり1時間でしたぜ」

 カモくんが声をかけてくる。

「ん、おはよ。これはカモくんが?」

 下に敷いてあるものを指差すと、「へい、そうです。そんな冷える時期じゃありやせんが、一応集めてきました。」

 カモくんは気配りのできるかっこいい男なんだね。

「そっか、ありがとね、んじゃ僕は帰るんで、カモくんも…」

「そうですかい、じゃ、あっしはここの片づけをしてから帰りやす」

「え、いいの? …んじゃよろしくね」

「へい、それじゃ! …(ギュピーン)」

 ? なんか変な気配がしたような… ま、いいか。

 僕はカモくんに後片付けをお願いして帰路に就いたのでした。

 ん? そう言いえばカモくんに僕って名乗りあげたっけ?。

 

 

 

 この日、大量の女性用下着が盗まれる事件が発生し、下忍のチームに捜索依頼が出た。

 しかし、結局犯人は捕まらず、迷宮入りとなったのである。

 

 

 

「しかして、加茂之輔よ、無事()(もの)との契約は完了したのであるな?」

 薄暗い空間、そこに巨大な何かが鎮座しましていた。

 その前に片膝をついてかしこまっているのは先ほどまで木の葉の里におり、ブンブクと口寄せの契約を行った化けオコジョの安部見加茂之輔である。

「はっ、全て滞りなく」

 加茂之輔はブンブクといた時が嘘のように、真摯な態度で巨大な影に報告を行っている。

「それで、いかがであったか、彼の者は。貴様の目にはどのように映った?」

()のお方は、確かに未熟ではあるようでした。

 しかしお歳の割には聡明であられるようですし、もしや前の生を覚えていらっしゃるかと、そのように感じました」

 影はいくばくかの思案の後、重々しく言い放った。

「なれば貴様は彼の者につき従い、その身を守れ。

 我らが大きく動けば彼の者の今生を妨げることになりかねん。

 汝の力を持って彼の者の望むままを生きさせよ。

 それこそが我ら禁軍八百八狸の罪を償う道なれば」

「はっ、里より放逐されしわが身を拾っていただいた恩、忘れておりませぬ。

 必ずやあの方のお役に立ってお見せしましょう!!」

 化けオコジョはきりりとした雰囲気を漂わせ、影に宣言した。

「うむ、頼りにしておるぞ。

 時に、

 

 貴様が先ほど巣に持ち帰った色とりどりの布切れの事なのだがのう…

 

 …どうやらその手癖の悪さは未だに治っておらんようだのう…」

「いや、それはですね、まあ… そのう…」

 さっきまでの精悍な態度もどこへやら、もごもごと誤魔化すように口を動かす加茂之輔。

 そして次の瞬間、

 ゴウッ!

 暴風とすら感じるような一陣の風と共に影の前から遁走した。

 が、

「甘いわ」

 影はそれ以上に素早かった。

 ひょいと加茂之輔の尻尾をつまむと、

「お仕置きじゃのう」

「ぃい~~~~やぁ~~~っ!!

 たぁすけてぇ~~~っ!!

 ヘルプッ!! ヘルプミィ~~~~~!!!」

 その空間にはしばしの間、びったんびったんという濡れた布切れを叩きつけるような音が響いていたという。

 合掌。

 

 

 

 無事に口寄せが成功したその日。

 眠りに就いた僕は不思議な夢を見た。

 

 暗いどこかで。

 

 甲冑を着た大きな狸さんと僕は向かい合っていた。

 今の時代、甲冑、しかも大鎧と呼ばれる金襴緞子(きんらんどんす)の鎧を着ている武者はいない。

 そもそも、戦闘の花形が忍になって以来、武士が正面切って戦うことはなくなった。

 基本的に武士は戦場における司令官の役割を担い、火力に関しては忍がそれを担うことになっている。

 例外は鉄の国の武芸者くらいじゃないかな。

 かといってこの鎧狸、ただのお飾りじゃなさそう。

 実戦を潜り抜けたもののふ(戦士)の風格を持っているひと()だ。

 彼と向き合いながら、僕は困惑していた。

「あのう、それは…?」

 その狸は右手に細長いぼろ雑巾のようなものを持っていた。

 ときおりひくんひくんと動くそれ、それはまさしく…

「か…カモくん?」

 本日めでたく口寄せに成功した、禁軍八百八狸の客分、我が召喚動物となった安部見加茂之輔くんであったからだ。

 大きな狸さんは、ぼろ雑巾というにもおこがましい、映像が映るなら確実にモザイクが入るであろうカモくんを持ちあげ、

「うむ、気にするな。

 ただのお仕置きじゃて。

 いつもの事じゃから、問題ないわい」

 と、言っていた。

 いや、いつもの事ってさ…。

 さすがに凄惨すぎない?

 とかは思うものの、これは化け狸側の事情なのだろう。

 カモくんも甘んじて受けているのだろうし。

 僕の口を出していいところじゃないのだろう。

「…まあ、分かりました。 じゃあ置いときます」

 なんかカモくんから「そんなっ! 兄貴助けてぇっ! ヘルプッ!! ヘルプミィ~~~~~!!!」という視線が飛んだような気もしないけど、よく見たらそんな余裕もなさそうだよね、カモくん。

 とにかく、まずは挨拶からだね。

 挨拶はコミュニケーションの基本、とおっとうにも言われてるし。

「こんにちは、僕は木の葉の里の忍術学校5年生、茶釜ブンブクです」

「うむ、元気で大変よろしい。

 儂は化け狸の里、禁軍八百八狸を統括する征異大将軍、『隠神(いぬがみ)刑部(ぎょうぶ)』じゃ。

 よろしくの」

 なんか、えらい大物が挨拶に来てくれちゃったのかな?

 僕みたいなのがえっけん(漢字でどう描くんだっけ)しちゃっていいのかな?

「今日お前さんを呼んだのはの、我が眷属にお主を紹介したいと思ったからなんじゃ。

 お主は我ら化け狸と口寄せの契約を結んだ。

 我ら妖魔はけっして契約を違えぬ。

 今後お主は我らを口寄せることになるでの。

 呼ばれる相手の事をいろいろ知っておきたいと思うのは当然じゃろ?」

 うん、そうだよね。

 お互いを知ろうとすることが仲良くするための大い歩だと思うし。

 うん、いいなこのひと()

 あ、でも…。

「八百八にん()もいるんじゃ一度に覚えきれるかなあ…」

「なに、長い付き合いになるんじゃ、ゆるりと覚えていけばよいわい」

 ああ、このひと()いいひとだなあ、ほんとに。

「はい、それじゃあみんなに会ってみたいです!」

 こうして僕はたくさんの狸さんたちと一晩中会話することになった。

 

 朝起きてみると、しっかり昨日の夢は頭に残っていた。

 夢の中で特に仲良くなったのは八百八狸の中でも若手といわれる岩室5兄弟。

 なんでも仏門に入って修行してるんだそうで、肉類が食べられないのが大変なんだそうだ。

 狸って雑食でしょ。

 なかなか大変なんじゃないの、と聞いたら、「昆虫食はオッケイだから大丈夫」と長男の太郎坊さんが教えてくれた。

 う~ん、なんか違わない、それ?。

 今後はカモくんと岩室兄弟の口寄せで経験を積んでいこう。

 今はカモくんを呼ぶのが精いっぱいだし。

 それでも僕の保有チャクラからすると、本来は口寄せなんて無理だしねえ。

 里の忍でも生き物の口寄せができるのは数えるほどだと聞いている。

 三代目火影のヒルゼンさまや伝説の三忍のお歴々とか、そうそうたる面子が巨大な妖魔を呼び出して戦うのだそうだ。

 ま、僕じゃ刑部さんとか呼ぶのはどれだけ頑張っても無理だとは思うんだけど。

 そんなことを夢の中でいったらば、いろいろ抜け道、というか裏技があるんだそうで、岩室兄弟が今度教えてくれる、と言っていた。

 正直言ってうれしい。

 そんなことができるなら、もうショボイとは言わせない! って言えそうだし。

 うちの一族は木の葉隠れの里が形成される前から火の国のお殿様に仕えた由緒ある一族だけれど、忍としての力は日向、うちは、猿飛などの有力氏族に比べてぱっとしない気がする。

 有名な人は1人もいないしね。

 まあ、忍らしいっちゃらしいんだけど。

 でもさ、僕としてもカッコつけたい訳よ。

 スゴイって言われたいじゃん!

 もう夢は広がるね、本当に。

 さあ、今日も1日がんばるぞっ。

 

 

 この日僕は、運命の出会いをする。

 

 そっち系じゃないよっ。


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