NARUTO 狐狸忍法帖   作:黒羆屋

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今回は、ネタ回です。
実験的にほとんどを会話で進めてみました。


第46話 閑話

 閑話 ハンディキャップマッチ

 

「はいどうも!

 こちらは研究施設特設アリーナからのお届けとなっております!!

 アナウンサーの茶釜ブンブク! と」

「解説の薬師カブトです」

「ええ、今回のメーンイベントはこの施設に囚われていた8血族の方々の代表9人と、大蛇丸さまの9対1ハンディキャップマッチとなっております。

 これに勝つ事が出来たなら、一族郎党は大蛇丸様の虜囚から解放される、しかあし! 負ければ一族もろとも大蛇丸様に忠誠を誓わなければならない!!

 皆さん背水の陣となっております!!」

「…ところで」

「何でしょうか解説のカブトさん!」

「前座とかあるのかい」

「ないです」

「…まあ良いんだけど」

「時にカブトさん」

「なんだい?」

「僕の頭に巻きついてる蛇さんはなんなんですかね?」

「ああ、それね。

 あんまり変な事を言うようなら大蛇丸様の命令一つで頭が締めあげられるようになっているそうだよ」

「…ありがたくないですねえ。

 ま、それはさておき、挑戦者の入場です!

 まずは由緒正しき風魔一族の精鋭、剣コタロウゥ~!

 必殺の鉄鞭が空を切り裂く!!」

「剣の家は元々風魔の一族でもそれなりの規模だったんですけどね、田の国の国内での抗争に負けて、大分規模を縮小してしまったんです。

 今回の事は一族の名誉を取り戻すためにも重要ですね」

「次に入場してきたのは妙齢の女性!

 魔界の悪鬼羅刹と禁断の契約を交わした不知火一族のアザミさんだあ~っ!」

「彼女は口寄せ使いですね。

 強力な魔人と契約してますから、戦い方次第では大蛇丸様も油断はできませんよ」

「さて3番手ですが、これまたごっつい!

 いまどき全身大鎧の忍者って初めて見ました!

 金襴緞子のきらびやかな鎧に身を包み、手には伝家の妖刀を引っ提げて、狙うは最強、大蛇丸さまの首!

 卍一族の頭領、よーしーみーつぅ~っ(吉光)!」

「非常にトリッキーな剣術を使う一族だね。

 元々はこの近辺の国を荒らしまわる剽盗(ひょうとう)の一族で、大蛇丸様が田の国に食い込むことが出来たのも、彼らを捕まえる事が出来たからなんだ」

「なるほど、かなりの因縁ですね。

 4番手は名張一族の四貫目…って、僕でも知ってる手練れじゃないですか!

 ここしばらく噂を聞かないと思ったら…」

「そうだよ、身体操作に長けた一族でね、木の葉隠れだと秋道がそうだね。

 変化や忍術、幻術に体術と全てが優秀でね、潜入工作から暗殺、正面切っての戦闘や情報操作、なんでもござれの万能忍者だね」

「さてお次は、何かゴッツイ人が出てきました!

 あれ!? この人って忍というより侍じゃなかったですかね?

 たしか、『梁山泊』って言う結社の人じゃ?」

「そうだよ、『外さず』の蒼傑殿。

 忍ではなく武人だね。

 今回は縁のあった忍の一族を救うために参戦してるんだ」

「は~、とんでもないことになってきました。

 梁山泊なんてほとんど伝説じゃないですか…。

 さあ、気を取り直していきましょう。

 次なるは…? あの、どう見ても僕より年下の女の子なんですが?

 ええっと、雷遁使いの雷電姉妹ですね。

 戦力として2人1組での戦いが得意との事で、特例で姉妹での参加、ということになったようです。

「子どもだけど甘く見ることはできないね。

 彼女達はかなり強いよ」

「さて6番目は、まるで燃え上がるかのような赤毛、鍛えこまれたマッチョ、火遁使いとして有名な炎屋一族の燎原だああっ!!」

「二つ名が『爆炎の』っていうとにかく暑苦しい人だね、ボクは苦手だね」

「さて、最後に登場はかつて田の国においてその戦力の中核を担った名門、王仁丸一族の若き英雄、幻幽丸だあッ!」

「彼は年若いもののこと戦闘となればこの中でも最強、と言える存在だね。

 特に複数の瞬身を組み合わせた無音暗殺(サイレントリキング)を得手としているんだよ」

「なるほど、忍らしい奇襲戦に特化した戦い方なんですね」

「いや、それが得意なだけで、通常戦闘も圧倒的に強いよ」

「…才能が憎いっ!(血涙)

 さて、挑戦者側がすべて出そろいましたね、壮観な眺めです!

 これだけの手練れが一堂に会し、1人の敵に挑む!

 まさにヒロイックです!!」

「キミ、どう聞いてもそれって大蛇丸様を悪役にしたがってるよね?」

「え? ってか今回大蛇丸さまって悪の大魔王役じゃ…ってあ痛たたたた!!」

「だからいらない事言うと締まるって言ってるだろ…」

「うう…ひどい目に会った。

 さて、気を取り直して、と。

 それでは王者、大蛇丸さまの入場です!!

 BGMオン!」

「…ちょっとブンブク君!? この音楽なに!?」

「いや、大蛇丸様に合いそうだったんで、急きょ編集してみたんですけど?」

「確かに、パイプオルガンかな、この荘厳かつ威圧的な曲は大蛇丸様にぴったりだけどね?

 …これは」

「うわ怖っ!!

 やばい、似合いすぎてて怖い…。

 ええっと、まさにその貫禄は忍びの世界という魔界を統べる魔王にふさわしい貫禄と実力を兼ね備えた存在感!!

 実質1人で『木の葉崩し』を実行した怪物!!

 すでに生ける伝説とまで呼ばれしは、元木の葉隠れ、そして己が立ちあげた音隠れの里を統べる男、その名を!!」

 

「大蛇丸、降臨!!!」どぉん!!

 

「…君さ、花火までセッティングしてたの?」

「はい、派手にやるなら徹底的に、と思いまして。

 大丈夫です! ライティング調整して下からの明かりを増やしていますから、大蛇丸さまのおそろ…威厳がさらにアップです!」

「…キミそのうち、大蛇丸様に丸のみされるかもね」

「怖い!? それは怖いって!?」

 

「さて、試合開始の時間が迫ってまいりました。

 現在、この方法は監獄エリアの皆様にも術を通じて音声、映像がお届けされています!

 さて、この試合どう見ますか? 解説のカブトさん!」

「ホントにテンション高いよね、キミ。

 まともにいけば9人に勝ち目はない。

 大蛇丸様の隙をどう作るか、が勝負のカギになるとは思うんだけどね」

「そもそも隙が作れるかどうかが問題ですね、この場合。

 さて、個々の実力は大蛇丸さまに通じるのか、それもこの戦いで証明される訳ですね」

「そうですね、伝説の三忍と呼ばれる大蛇丸様を倒す事が出来れば、一族の名を上げることにもなるでしょうし」

「さあそれでは時間となりました。

 選手のみなさんが睨みあって…、それでは無制限1本勝負! ゴングです」

 

 カーン!!

 

「さて、試合開始です。

 しばしの間、にらみ合いが続いております」

「挑戦者側は誰が攻撃を仕掛けるか、で駆け引きが行われているようですね」

「なるほど、誰かが斬りかかればそこで大蛇丸さまに隙が出来る、と。

 上手くいけば他の里の奴を囮にして自分が手柄を、と考えている訳ですか。

 ちょっと大蛇丸さまを甘く見てますねえ」

「そうですね、お、試合が動きますよ」

「最初に斬りかかったのは吉光だぁ!

 とても大鎧を着ているとは思えない素早い動きで斬りかかる!

 なんと! 大蛇丸さまの名刀草薙の剣と互角に打ち合ってます!

 並みのチャクラ刀なら5合とたたず打ち負けて砕けてしまうのに!」

「卍一族の妖刀は歴代の当主のチャクラを吸わせて強化されたチャクラ刀だよ。

 草薙の剣にすら匹敵する力を持っているようだね。

 それに…」

「何か変則的な剣さばきですね、刀身も結構な長さがあると思うんですけど、あんな奇妙な振り方してて自分の体を傷付けないんですか?」

「その通り、あの妖刀は吉光の体を通り抜けて敵を斬る事が出来るんだ。

 だから…」

「おおっと、後ろに回り込んだ大蛇丸様が刃を振り下ろすと同時に吉光が、せ、切腹!?

 ああっと! 大蛇丸さまに刃が突き刺さる!」

「そう、ああやって背面の敵にも切りつける事が出来たりするんだけどね、ほら…」

「え? ああっ! 蛇です、大蛇丸さまの懐から這い出てきた蛇が刃を文字通り食い止めています!」

「そして動きが一瞬止まる、それは」

「大きな隙が出来たあ!

 うわきもっ!!

 蛇がうじゃうじゃ湧いて出て…」

「『潜影多蛇手』の術だね。

 毒に耐性があったとしても、あの数に締めつけられてはどうにもならないだろうね」

「うわあ、何かボキボキいってます…。

 これはたてないか!?

 いや、動きの止まったところで動いたのは、不知火一族のアザミだあッ!

 あれは口寄せ!?

 なにあれ!!」

「ああ、不知火一族が口寄せする魔人だね。

 あの一族は魔人と契約して、その力を借りる代わりにその子を成し、育てるんだ。

 一般的な口寄せとは立場が逆なのかな。

 とにかく、魔人は力も強いし、戦いに長けている。

 更には毒のほとんどが効かない体質だしね。

 強敵だよ」

「魔人が空中に跳び上がったあ!!

 そのまま大蛇丸さま向けて大回転しながら爪付き籠手を振り回すぅ!!」

「まずい! 身動きが出来ない状態じゃ変わり身も…」

「ざっくりと袈裟がけに斬られた!

 これは勝負あったかぁ…うぇ!!

 な…なんですかあれは!!」

「え? 変わり身の術だよ。

 チャクラで自分の擬体を作って、それで攻撃を捌いてるんだよ」

「いやだって、今くちからにゅるって、にゅるって!!

 …落ちつこう、大蛇丸さま、有り余るチャクラを持って変わり身だあッ!

 魔人の体に絡みつき、コブラツイストの様に締めあげているうっ!!」

「勝負が付いたようだね、不知火の一族は戦闘能力が皆無と言っていい。

 強さの全てが魔人に依存してるからね」

「おっと、ここで1人突っかかってく!

 鉄線をあんだ鞭を振り回し、剣コタロウが大蛇丸さまに襲いかかるぅ!」

「彼の一族は軟体術を極めている。

 全身の関節を外したりはめ直すことで鞭を振り回すスピードを上げてるんだ。

 だから、鞭の切っ先は」

「!! いま、『どん!』って音しましたよ!! どんって!!!

 超音速入ったんでしょうか!?」

「超音速? なんだいそれ?

 ともかく、普通では認識できないくらいの速度になるんだよ」

「うわぁ、空気の壁叩いてるようなもんですからね、すでに点とか線じゃなく面への攻撃になってますよ、あれ」

「解説は僕の役目じゃなかったかね?

 ともあれ、それを捌いてる大蛇丸様の技量が凄いよね」

「ええ。

 大蛇丸さまは両手の袖から呼び出した蛇と草薙の剣を持って、致命の一撃をはじき返しております!

 流石は大蛇丸さま! ここから…って!! あれ!? いきなり腕を刺されてる!!」

「! あれは四貫目だね! さすがベテラン、大蛇丸様の意識が鞭にとられた瞬間に懐に飛び込んだんだね!」

「流石ですね、大蛇丸さまをすら欺くとは!

 一流中の一流です!

 しかしこれで大蛇丸さまはかなり不利な状況に…!?

 え? 懐から腕をもう1本!?」

「もともと大蛇丸さまの腕は絡操傀儡だからね、付け替えてもおかしくはないんだよ」

「さて、腕を付け替えた大蛇丸さま、攻勢に転じます。

 お、四貫目さんは後退します、作戦ですかね?」

「先ほどから四貫目は残りの選手と何やら協議してたからね、そろそろ連携を考えてるんじゃないかな?」

「なるほど、さすがはベテランですね。

 一方剣と大蛇丸さまの戦いの佳境です。

 あれ、なんか剣の動きが鈍ってきたようですが…」

「ああ、先ほどから大蛇丸様は口から酒精(アルコール)を吐き出しているからね、そろそろ酔っぱらってきたんじゃないかね?

 あれだけ活発に動けば酔いも早く回るし、あのレベルの達人同士だと、ちょっとした事が致命傷になる事も多いんだ」

「あ! 鞭の軌道にずれが! そしてすかさず踏み込む大蛇丸さま!

 ああっ! 鞭が切断され、剣の鳩尾に大蛇丸さまの拳が付き込まれました! 勝負ありです!!」

「さすがに得物を破壊された時の一瞬の不意を突かれては耐えきれなかったね。

 それよりも、残りの5人が結託し始めたようだよ」

「さあ死合も佳境に入ってまいりました!

 前面に出てくるのは『爆炎の』炎屋燎原ん~っ!!

 忍具である籠手を前面に押し出してパワーで押し切る気かあぁ~っ!

 すごいっ、まるでラッセル車のように大蛇丸さまの無限の蛇攻撃を叩き落としながら前進するっ!

 ってか爆散しています!」

「火遁の瞬発力を利用した爆発だね。

『暁』のデイダラとはまた違った方法で爆発を武器にしているんだ」

「はあ~、秘伝忍術って凄いですよね。

 あ、大蛇丸さまの水遁・水乱波、って量がすごい!!

 まるでちょっとした川です!

 しかし! 燎原も負けていない! もの凄い水蒸気を上げながら突進突進突進!!」

「凄いね、本来なら大蛇丸様の水遁に火遁が勝てるはずはないんだけど、負けるどころか押し返してるね」

「お、更にその隙に雷電姉妹が動く!

 大蛇丸様を挟み撃ちにしようというのか、左右に走りだした!!」

「なるほど、燎原を囮にして本命は彼女らの『雷遁・電磁牢獄』か!」

「どんな術なんですか?」

「雷電姉妹が相手をはさんで立ち、同時に雷遁を使用することで雷遁の渦を作り出し、その中に相手を閉じ込める術だよ。

 相手の動きを封じつつ、継続的に雷遁のダメージを与える事が出来るんだ」

「ほほう。

 しかし大分チャクラを消費しそうな術ですねえ」

「そうだね。 君だと5数える間に干上がるんじゃないかな」

「…カブトさんもいじめっ子ですよね。

 さあ、気を取り直して!

 燎原の一撃がとうとう大蛇丸さまを捉えたぁ!

 轟音が周囲に轟くぅ!

 って! 大蛇丸さまが溶けた!?」

「水分身だね。

 大蛇丸様は水蒸気に紛れて分身を使っていたんだね」

「なるほど、では本体はどこに…! おっとお!? すでに大蛇丸さまは雷電姉妹の片割れ、電に大蛇丸さまが迫っている!

 怯える少女と愉悦の表情を浮かべる大蛇丸さまのセットはとても見てはいけない組合わせのようなってあ痛たたたたたた割れる割れる割れる!!」

「ホントキミ懲りないね、お! これは凄い!!」

「おおっとぉ!? 大蛇丸さまがぶっ飛ばされたっ!? もの凄い爆炎と共に燎原が大蛇丸さまに体当たり!!」

「へえ、火遁を使った瞬身だね、これは初めて見た」

「燎原が吼える! おお!! オレごとやれ!ですか!」

「暑苦しいねえ」

「いや、あれは熱いんですよ! ここでこんな言葉が聞けるなんて!!」

「盛り上がってるね、ボクはああいうの苦手なんだけど。

 そういえばキミってマイト・ガイの弟子だったんだっけ?」

「はい!

 おお!! 雷電姉妹の『雷遁・電磁牢獄』が決まったあ!!

 燎原もろとも強烈な電撃が大蛇丸さまを襲ううっ!!

 これは決まったかあ!?」

「流石の大蛇丸様も継続的な術を受け続けたらば変わり身も出来ない!

 …しかし」

「あ、電磁牢獄が解除されました。

 雷電姉妹もチャクラ切れでしょうか!?

 そして、イオン臭のする煙が晴れた時…。

 おおっと! 立っているのは燎原だあ!! その巨体はその足でまだ地面を踏みしめているうっ!!

 そしてえ」

「なんと!!」

「大蛇丸さまだあ!!!

 ダメージはあるものの、いや、全くのノーダメージ!?

 ダメージのように見えたのは体の表面がはがれているせい!?

 解説のカブトさん、これは?」

「驚きました。

 どうやら大蛇丸さまはチャクラの性質変化の強弱を利用したんです!」

「…でも、あの剥がれてるのって土ですよね?

 土遁は雷遁に弱いはずでは?」

「よく見てください、大蛇丸様の体から、もうもうと水蒸気が上がっているでしょう?」

「はあ? …あ!」

「そういうこと。

 大蛇丸様は水遁の防御壁を張り、その上に土遁の防御壁を張ったんです」

「なるほど、あえて雷遁に弱い土遁の防御壁を張ることで、雷遁の力がそちらに向くように仕向けた訳ですね。

 土遁に吸い寄せられた雷遁は、水遁の壁に当たることで力が流れやすい土遁の壁を伝って…」

「そう、力のほとんどは地面にでも流れてしまったんだろうね。

 そうでもなければ炎屋燎原はあとかたもなく消し飛んでるだろうね」

「なるほど、さすが大蛇丸さま、忍術に関しては超一流ですからね。

 これで炎屋燎原と雷電姉妹もリタイヤですか、後は…って!」

「ここで名張の四貫目か!」

「音も立てずに後ろに回り込んでいた四貫目が、大蛇丸さまの首に回し蹴りを叩きつける!

 これは、って丸太!? 変わり身です!!

 丸太の影に大蛇丸さま、下から突き上げるようなカンガルーキック!!

 四貫目が蹴り飛ばされて…、って! 変化!? 幻幽丸が四貫目に変化していたのかあっ!」

「なるほど、最初に四貫目が斬りかかったのは戦いのくせを大蛇丸さまに覚えさせるのは仕込みか!

 幽玄丸が四貫目に変化することで攻撃のタイミングを大蛇丸さまに間違わせるのが目的だったんだね」

「それも読み切られて、ってえ!? 既に蒼傑が弓を構えている!

 これが必殺かぁ! 蹴り飛ばしたタイミングで射ることで大蛇丸さまに回避をさせないつもりかあっ!!

 速射速射速射!!!

 連続の弓が大蛇丸さまを襲う!!

 しかあしっ!!

 その連続した矢ですら大蛇丸さまにかする事すらないっ!

 異常な柔軟性で矢を回避していくうっ!!」

「剣の一族に伝わる軟の改造だね。

 大蛇丸様は様々な一族の秘伝を解析しているから。

 しかしおかしいな、蒼傑と言えば『外さず』の異名の通り、百発百中の弓の腕が自慢だったはずなんだけど…、

 ! いけない!」

「なんですかって、大蛇丸さま矢を避けるために空中に!!

 これは蒼傑の罠かぁ!?

 しかぁし! 大蛇丸さまもさるもの、空中で影分身!! 分身同士で体を引っ張りあって矢を空中で回避ぃ!!

 流石で… げえっ!!」

「空に打ち出した矢が無数に分裂だって!?

 そうかこれが…」

「解説のカブトさん、この術は!?」

「これが蒼傑の絶技『追魂奪命圏』か!!

 分身手裏剣の一種だろうけど、その数がけた外れだ!!」

「大蛇丸さまの頭上に打ち出された矢が無数に分裂!!

 頭上から雨のように降り注ぐ無数の矢!

 これはいかに大蛇丸さまとて避け切れる筈がない!!

 …アリーナの床で矢の突き立っていないとこがありません。

 これは…もしかして…」

「中にいた味方もろとも皆殺し、か。

 梁山泊にその人と讃えられた好漢と言われた蒼傑といえども、大蛇丸さまを倒すのに犠牲はやむを得ないと判断した…」

「待って下さいカブトさん!

 なんと!

 倒れたチャレンジャー側に犠牲者なし!!

 付き立った矢は綺麗にチャレンジャー側の7人を避けています!

 なんという絶技!!

 味方に当てる事無く、千とも万とも付かない数の矢を完全に制御したというのかぁ~っ!!」

「ただでさえ膨大なチャクラを必要とする分身系、いくら器物分身と言ってもこの量だ。

 しかもそれをすべて完全にコントロールできるとは、忍の中にすらどれくらいいるだろうね?」

「カブトさん、これはまさか…。

 いや、なんだ?

 炎屋燎原が立ちあがる!?

 まだ戦う力が残っているのか!?」

「違う! 見てごらん!」

「うわ! 燎原の体の下から巨大な蛇が!?

 大蛇が蒼傑に迫る!!

 そしてえ!? うわグロっ、てあ痛たたたたたた!!」

「だから君もうちょっと学習しようね? …分かるけど」

「大蛇の口からにゅるりと大蛇丸さまが飛び出る!!

 その口には伝家の宝刀『草薙の剣』だあっ!!」

「大蛇丸様も無事という訳にはいかなかってようだね。

 傀儡の両腕を持って行かれたようだよ」

「そして双方激突ぅっ!!

 勝ったのは…、大蛇丸さまだあッ!!

 蒼傑の弓は断ち切られ、ぶっすりと剣が突き立っているぅ!!

 いや、しかし、蒼傑倒れない!!

 その手でがっしりと草薙の剣を抱え込む!!」

「…そうか!!

 いけない!!」

「え? なにが?」

「分からないかい、これまでに蒼傑を含めて8人の挑戦者が倒れたんだ。

 なら…」

「あ! 名張の四貫目! あのベテランが…。

 ! ああっと! 大蛇丸様の後ろから四貫目が襲いかかるうっ!

 草薙の剣は封じられ、絶対絶命かあっ!!

 いやっ、なんと大蛇丸さま、得物である草薙の剣を捨てたあっ!!

 名張の四貫目むけてローリングソバットだっ!

 奇襲をしたつもりが逆に不意を突かれてしまった名張の四貫目、隙をつくってしまったぁっ!!」

「これはまずいよ、少し動きも悪いようですし」

「止めとばかりに四貫目に絡みつく大蛇丸さま!!

 めりめりという音が聞こえてきます!!

 ああっと名張の四貫目、地面に倒れ伏したあっ!!

 これで全員KO! 大蛇丸さまの勝利が決定しました。

 いやあ、見ごたえのある戦いでしたね、カブトさん」

「そうだね、確かに挑戦者側もかなりの腕利きだったけれど、終わってみれば大蛇丸様の強さが引き立つ結果と…、んん?」

「どうかしましたか、カブトさん?」

「挑戦者の数が足りない…」

「は? いや全員倒しましたよね、大蛇丸さま。

 ほらみんな倒れて…、あれ? 確か…!!

 大蛇丸さまの後ろに!!」

 

 どすりっ!!

 

「な、なんとぉっ!!

 大蛇丸さまの胸部から腕が生えたあっ!

 あ、あれは!? 幻幽丸です! 幻幽丸が大蛇丸さまの胴体を手刀で撃ち抜きました!!」

「そうか! さっき名張の四貫目の動きが悪かったのは!」

「え? はあっ!? んじゃさっき『四貫目に化けて倒された幻幽丸』って…」

「そう、『四貫目に化けた幻幽丸のふりをした四貫目』だったんだ!

 道理でさっきの戦いのとき切れがなかった訳だ…」

「ここで幻幽丸の無音暗殺(サイレントキリング)を活かすための布石だったんだ…。

 これがベテランの戦術…」

「呆けてる場合じゃないよ。

 死合が動いた」

「え? …ああすいません、実況を続けます。

 幻幽丸が押す押す押すう~~っ!!

 ここから先は一切攻勢に転じさせないとばかりに押し込んでいく!!

 ここまで体力を温存していた幻幽丸と、死合開始後一切のインターバルを取っていない大蛇丸さま、その有利不利は歴然!

 これで敗北するのか、伝説が打ち壊されるのかあぁ~~っ!!」

「…それはどうだろうね」

「カブトさん、それはどういう意味ですか?」

「幻幽丸をよく見てごらん?」

「はあ…! なるほど」

「分かるかい?」

「はい。

 先ほどの奇襲でカタを付けるつもりだったでしょう。

 その後の攻撃に落ち着きがない。

 あれではスタミナを浪費してしまう」

「そう、普通の相手なら、あれで勝負はついていた。

 でも己の体を改造することに大蛇丸さまは嫌悪がない。

 あの程度の負傷ならまだまだ戦っていられる。

 一方、幻幽丸は確かに強い。 チャクラの量も、その精度も今回の相手の中じゃ一番だ。

 だけど、年が若く経験が少ない。

 そこをうまく突かれているんだ」

「なるほど、さっきからの怒涛の攻めは、大蛇丸さまのフェイントをはね退けるためのごり押しですか。

 さあ分からなくなってまいりました、この勝負!

 この怒涛の攻勢で押し切れれば幻幽丸の勝利、凌ぎ切れれば大蛇丸さまの勝利ですが、…うわ、えげつねえ…、視線とか、呼気とか、ちょっとしたしぐさ全部にフェイント入れてるよ、どれがホントの攻撃か分かんないだろうなあ」

「そうだね、殺気や視線での誘導で、今幻幽丸は受けてもいない攻撃にさらされているように感じてるだろうねえ。

 対して大蛇丸様はほとんど消耗していない」

「あ! 攻撃のテンポが崩れました! すかさず大蛇丸さまの蹴りが幻幽丸の体を撃ち貫抜くうっ!

 ふらつく幻幽丸を尻目に、うげっ!! 怖っ怖っ!!! お、大蛇丸さまの口から蛇がっ、蛇がだばだばってぇ~っ!!」

「あれは大蛇丸様の口寄せ奥義『万蛇羅ノ陣』だ!

 無数の蛇による飽和攻撃!

 ここで使ってくるのか!!」

「うわあ… 完全に蛇の群れにのまれちゃいました。

 ああ、そうか。

 蒼傑さんがいる間は使えなかったんですね。」

「そう言うこと。

 蒼傑の絶技にかかるとあの蛇が一掃されてしまうからね。

 …まあそれに見た目も派手だしね」

「インパクトありすぎです。

 あ、蛇たちが還っていきます。

 完全に押し潰されてますね、幻幽丸さん」

「これで本当に死合終了だ」

「それでは研究施設特設アリーナからお別れいたします。

 それではまた来週」

「やるの!?」

「もちろんやりませんが何か?」

 

 

 

 ゲートが開く。

 牢獄から実験施設の闘技場へと続く門。

 そこから三々五々囚われていた忍の一族の者たちが出てくる。

 そこにいるのは彼らを捉えていた当の本忍、大蛇丸。

 しかし、彼らの目にあるのは憎しみではない。

 畏怖だ。

 彼らの目にも挑戦者たちの実力ははっきり見えていた。

 捕えられている者達の中から選び抜かれた最強の者達。

 それですら大蛇丸に届かなかった。

 彼らは認めざるを得なかった。

 ここにいる男は最強であると。

 おそらく、いや確実に、ここにいる全員で掛かったとしても彼に傷一つ付けられまい。

 彼らは大蛇丸が口を開くのを待った。

 

「我は汝らの代表たる忍に勝った」

 大蛇丸は抑揚を付けた声で聴衆たる忍の血族たちに話しかけた。

「汝らには2つの選択肢がある。

 我に下るか、我の前に屍をさらすか、だ。

 選べ」

 その威容たるやどうか。

 忍を務め、人心掌握に長けている事は事実だろう。

 しかし、それだけではない、強者の威風が彼らを跪かせた。

 1人、また1人。

 気がつけばいつしか、全ての血族の者が大蛇丸に膝をついていた。

 大蛇丸が言う。

「我を崇めよ」と。

 

 ここより新生「音隠れの里」が動き出すこととなる。

 

 

 

 閑話 勧誘

 

 どうかしら、セイ博士、ワタシ達と手を組む気にはならない?

 …そう、凡人ごときと組んだ所で意味はない、と。

 でもね、アナタという人物にワタシが声をかけた、それがワタシが凡人ではない証拠にはならないかしら?

 チャクラを練る事が出来ないあなた。

 確かにそんな人物に声を掛ける忍里などないわ。

 彼らは術が使えなければ忍術の研究が出来ないと思っている愚か者だもの。

 ワタシは違うわ。

 ワタシが欲しいアナタのその発想。

 忍でもないのにチャクラ操作技術とその結果をその目と直感で理解し得る異常者ともいえるその発想よ。

 …そうね、ワタシもあなたと同じくはみ出し者。

 アナタは遠つ国の錬金術たちから追われ、ワタシは忍の社会からはみ出した。

 …どうでもいいけど、アナタそのけったいな楽器を掻きならさないと会話できないのかしら。

 …そう、好きにすると良いわ。

 別にワタシは否定する気はないから。

 理解はできないけどね。

 …当り前でしょう?

 ワタシはアナタを理解できないけれど、アナタはワタシを理解できない。

 天才とはそういうものでしょう?

 いえ、人とはそういうものでしょう?

 全てを理解できないからこそ、人はその知性と創造力を発達させるのだから。

 …そう、理解してくれてうれしいわ。

 それでどうなのかしら、アナタの発想は私にとって貴重だけれど、ワタシの組織と知識はアナタの助けになると思うわ。

 …そう、じゃあよろしくね。

死体蘇生者(リメイカー)」セイ博士。

 

 

 

 …ええ、キョウジ博士、そのまま逃亡生活を続けるのは無理があると思わない?

 ワタシなら、あなたに危険の無い隠れ家を提供できるわ。

 …確かにワタシは悪なのでしょうね。

 ワタシに一般的な倫理観はすでにないわ。

 アナタの考えているようなことにも手を染めているしね。

 でも、アナタを誘ったという事を考えて頂戴。

 私があなたの能力を必要としている事は理解してもらえると思うのだけど。

 …そういうこと。

 アナタの意向を無視してまで私が非道な実験をするとは思っていないでしょう?

 それがアナタと同盟を結ぶということ。

 …ええ、そう考えてもらって構わないわ。

 アナタの敵はワタシの敵でもあるという事よね。

 …なるほど、正体は隠しておきたい、と。

 それは構わないわ。

 じゃあ、普段アナタを何と呼べばいいのかしら?

 …わかったわ。

 じゃあよろしくね。

「逃亡者」黒の道化。

 

 

 

 この数日後、音隠れの里に2人の忍術学者が招聘される。

 1人を「死体蘇生者」セイ。

 忍五大国の外からやって来たと言われる奇人。

 忍術について異常なまでの興味を示すものの、チャクラを練る事が出来ず、忍里からは半ば無視、半ば忌避される存在である。

 しかし、独学でチャクラの運用を学び、理解したその頭脳は異常なまでに優秀。

 忍術使いでないにもかかわらず、忍術についていくつかの画期的な理論を発表した天才でもある。

 1人を「黒の道化」卿。

 コートを羽織り、覆面で顔を隠した胡散臭い人物。

 しかし、基礎科学から忍術学まで幅広い知識を持ち、その知識の幅は大蛇丸をすら上回る。

 セイ博士が「深化」した学者ならば、彼は知識の「幅」での天才と言えよう。

 この2人の参入を以って、音隠れの里は「総合的忍術研究機関」として動き始めた。

 後の世において元・田の国が「学園国家」と呼ばれる基礎を作った大学、通称「大蛇機関」の原型がこの時期形造られたのである。




今回スポット参戦した方々は今後話の重要なところに出てくることはほとんどありません。

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