NARUTO 狐狸忍法帖   作:黒羆屋

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どんどん文章が増えます。
ほんとならこの話はこの回でまとめるつもりだったんですが。
あと1話か2話かかる予定です。

ご指摘をいただきまして読み返してみた所、飛段の術、「呪術・死司憑血」の破り方についての説明が非常に足りないことに気付きました。
そのため、本文に修正を加えております。


第37話

 異様な隈取、というか、全身ペイントですかね、手とかも白と黒のカラーリングになっていますし、な飛段さんが何やら厳かな雰囲気で言いました。

 どうやら本格的にまずいようです。

 今までとは飛段さんの存在感が段違いです。

 今の僕が持つ手札でなんとかなるのかどうか…。

 きついですね。

 それとは別に問題があるのですよ、今の僕には。

 自己暗示術の使用耐久時間が近付いているのです。

 あの手の術はあまり多用すると元々の人格に影響が出るのですが、僕の場合それが顕著に来る可能性があります。

 分かりやすく言うと、今表に付けている仮の人格が主人格になってしまう可能性があるのです。

 まあ焦っても仕方ないですし、目の前の問題を何とかしないと、そもそも生きていけなさそうですから。

 

 さて、これが飛段さんの切り札、ですかね。

 まるで髑髏のような、そして死化粧のようなペイントです。

 そして飛段さんの血で書かれた足元の法陣。

 どういう効果を表すかは不明ですが、効果を確認するまで僕が生きていられる保証はありません。

 故に、先手必勝!

 狙うのは飛段さん…ではなく、足元の法陣!

 僕は飛段さんに切りかかるふりをして、足払いの要領で大きく地面を擦り、法陣を乱しに… !!

 払った足がはじかれます!

 何が起きた! そう悩む間もなく、更に大きくしゃがみ込んで掃腿(そうたい)の要領で地面をひっかきながら飛段さんの足を… !!

 地面を削りながら払った僕の足は、法陣を構成している塗料、つまり飛段さんの血にがっしりと受け止められていたのです。

 地面から盛り上がった飛段さんの血液が、僕の足をがっちりガードしていました。

「…無駄だ。 この陣はすなわちオレ自身、オレを倒すくらいの術でなければ壊すことはできない」

 飛段さんはいっそ神秘的ともいえる気配を纏いながら僕にそう言います。

 そして、

「ブンブクよぉ、むっちゃくちゃ痛ってえからな、覚悟しろよぉ」

 胸元から引き出した黒い槍のようなもので、

 飛段さん自身の右の腿、そこを貫いたのです。

 その瞬間、

「かっ、くあっ!」

 僕の右の大腿から血が吹き出ました。

 丁度、飛段さんがが貫いた右の太腿、その寸分たがわぬ位置から。

 これは、とてつもなく痛い!

 ただの痛みじゃない、痛みが増幅されているのか!

 痛みに転げ回りたくなる衝動を抑え、自己暗示の要領で痛覚の一部を麻痺させて見ますがそれですら痛みが完全に収まりません。

「どおーだぁ、痛てえだろお…、オレも、おめぇも、2人分の痛みを味わってんだからよお…」

 それは、今何とか抑え込んでいる強烈な痛みを、飛段さんも感じている、ということでしょうか?

 痛みに思考回路がフラットになりそうなのを抑えて、僕は何とか思考と思索を行います。

 足元の法陣、死化粧のようなペイント、そして、僕の血を舐めるという行為。

 それがこの結果を生んでいる、という事なのでしょう。

 つまり…、

「オレの痛みはおめぇの痛み、おめぇの死はオレの死って訳だ」

 …全く厄介な。

 そうなると、後は擒拿(きんな)による制圧くらいしか僕には…。

 そう思っていた僕の左腕に激痛が走り、血が噴き出します!?

 今度は左腕ですか…!

「ブンブク、おめぇを侮る事はしねえ、おめぇはオレの『隣人』だからなああ…。

 足を封じ、今ので術を封じた。

 そして、これで…!」

 飛段さんは黒い槍をくるりと反転させ、自分の心臓に定めます。

 さて、どうしたものか…、 ん!

 そういえば、1つだけ使えそうなものがありました!

 飛段さんは苦痛、痛みに慣れています。

 しかし、普段体験した事の無い痛みに対してはどうでしょうか。

 僕は懐にあった忍具に条件付けのチャクラを送りました。

(セット、持続時間30秒、ロック)

 細工は流々仕上げを御覧(ごろ)じろ、と。

 

 

 

 飛段は一見冷静に、実のところ高揚しきった精神状態で、己の心臓に槍をつきいれようとしていた。

 飛段はジャシン教徒となって以来、信じられないほどの多幸感に包まれていた。

 ジャシン教徒としての洗礼を受け、己が体をジャシン教徒として最高のものへと作り替えた。

 ジャシン教の秘儀である、「呪術・死司憑血」を身につけ、以来さまざまな「死」を体感してきた。

 そして今、ジャシン教徒が一生を掛けて探し、見つける事の出来たものがほぼいない「隣人」を見つけ、そしてその死を分かち合う事が出来るのだから。

 飛段はジャシン様に今までにないほどの感謝を捧げていた。

 その時である。

「獣遁・四足の術!」

 ブンブクが片足が使えないとは思えないほどのスピードで突進してくる。

 確かに、獣遁には通常では考えられないほどの速度で移動する術が存在する。

 しかし、四足の術は文字通り「四足」つまり両手と両足が必要。

 右足、左腕の機能を失ったブンブクには不可能なはず。

 恍惚から目覚めた飛段の目に、異様な光景が映っていた。

 1本の腕と、3本の足で疾駆するブンブクの姿。

 本来の右足の付け根にもう1本の右足、そして左肩に左足が付いている。

 さしもの飛段も一瞬呆然としてしまった。

 種を明かすならば、余計に増えた足は、先ほど飛段が切り飛ばした傀儡の手足である。

 ブンブクは残っていたその傀儡を左手から出したチャクラ糸で操作、八畳風呂敷の糸で体にくくりつけて使用しているのだ。

 そしてブンブクは飛段の隙を見逃さなかった。

 無防備になった飛段の顔、その口元に、右手に持っていた錠剤を投げつける。

(毒か!? 喰らえばおめぇもダメージを受けるってのに?)

 飛段はそれを避けようともしない。

 意に介さず自身の心臓に、その手に持った黒い凶器を突き込もうとし、

 ぐい、とその槍が引っ張られた。

 ブンブクは先ほど投げた錠剤に、非常に細い糸を付けていた。

 それは八畳風呂敷をほどいて作った丈夫なもので、ブンブクがチャクラ糸を扱っているように見えるのはこの糸を通して、同じく八畳風呂敷を使って作った偽の四肢を操っているからであった。

 その糸が今は飛段の黒い槍に絡みついている。

 そしてその糸は急速に太くなっていた。

 絡みついた、立った一本の糸を起点に、八畳風呂敷の糸がまるで藤の蔓が大樹に巻きつくかのように延び、糸は紐と呼べるほどに太くなっていた。

 ブンブクはそれを引き、飛段の槍がその心臓を突くのを妨げると共に、飛段へのダッシュを加速させていた。

 さらに、

「! ぃよっし!!」

 彼の最後の仕掛け、先ほど投げた錠剤が、飛段の大きく開いた口の中に飛び込んだ、いや、ブンブクは飛段の体勢を崩すことで、口の中に入るよう調整した。

 ブンブクは地をはうような姿勢で飛段の懐に飛び込み、

「せいっ!」

 右手と左肩について偽の左足で飛段の槍を抑え込み、

「だあっ!」

 左足で飛段の膝を、まるで階段を駆け上がるように蹴り上り、

「これでっ!」

 右の腰にくくりつけた偽の右足で飛段のあごに蹴りかかった。

 ここまでほんの一瞬。

 しかし飛段も只者ではない。

「甘めええっ!!」

 その剛力でブンブクを弾き飛ばしにかかる。

 ブンブクは小柄だ。

 飛段の力ならばそれはそれこそ振ってきた木の葉を手首で弾くよりも容易かろう。

 飛段はブンブクの顔を見た。

 そこには、

「金遁・什器変化!」

 にやりと笑ったブンブクの顔、そして次の瞬間、

 ぼうん!

 飛段にかかるブンブクの体重が消え去り、目の前にあったのは手のひらサイズの茶釜、そして、

「がっ!!」

 傀儡の偽の右足が、違うことなく飛段のあごを撃ち抜いた。

 その瞬間。

 飛段は今まで感じた事の無い激痛を体験することとなった。

 

 飛段が最初に感じたのは口腔内の違和感。

 じりじりと口の仲が焼けるような感覚の後、

「う…!! フォギャアァアァアアアァアアアアアッー!!!」

 口腔、そして咽頭に爆発するような激痛。

 これは、

(口が! 舌が!! 喉が!!! 死に続けやがる!!!)

 次の瞬間には鼻。

 鼻腔内に激痛が浸食してくる。

 余りの痛みに咆哮を上げた飛段。

 その吐息が顔に上った時、

「イギャアあギャアァアァアアァアアアアッッ!!!」

 その痛みは眼球を襲った。

 今まで飛段が体感してきた痛み、死はほとんどが戦闘による刺突、切断、圧潰、熱傷などである。

 毒殺も経験したものの、飛段の体は毒素の排出も速やかだ。

 こんなに激痛が持続する体験をしたのは初めてだった。

 飛段は激痛によって飛段の脳内で生み出される恍惚感と共に、地面をのたうちまわっていた。

 

 

 

 さて、そろそろ効果が切れる頃ですか。

 僕は金遁・什器変化を解きました。

 茶釜になっていると、全ての感覚が封じられてしまうんですよね。

 全ての感覚はデジタルに変換される感じなのです。

 おかげで時間を計るくらいしかできません。

 僕が変化を解いてみると、地面に倒れて息を荒げている飛段さんが目に入りました。

 先ほどまであった法陣も、飛段さんの肌にあった隈取模様も消えています。

 どうやら術の効果が消えたようですね。

 さて、今回僕が使ったのは、本来幻術破りのために作った辛味錠剤です。

 幻術にかかった時、この錠剤を服用することで味覚に強烈な刺激を与え、それによって幻術から覚める効果を期待して作ったものです。

 自分で作った時には雑身が入りすぎていたため、木の葉隠れの里の分析班に辛味成分の抽出をお願いしてみました。

 それでできたのがこの錠剤。

 試すどころか、偶然錠剤の中身がこぼれた時に「第二次木の葉バイオテロ」と呼ばれる事態になったと聞いております。

 実際はバイオじゃなくてケミカルなんですけどね。

 で、そんなん使ったら僕の味覚が永久死亡してしまいますので封印するつもりだったんですが。

「おい、ブンブク、今のは、一体…」

 息も絶え絶えに飛段さんがそう言います。

「唐辛子とか、辛い物に含まれる辛味成分を抽出、生成したものですよ。

 毒とかだと飛段さん、分解するか排出するかしそうでしたし。

 人体に毒と認識されないものなら効果あるかなって」

 そもそも、味の1つ、「辛味」って味覚じゃないんだそうで。

 味を感じる器官の「味蕾」ではなく、痛覚部分で感知するものだそうです。

 で、それを忍具作製業者に頼んで辛味物質の増幅とか、を一定時間で分解するような効果をカプセルに付加して使用した、という訳です。

 さすがの飛段さんも未知の痛みに動揺してくれるかと思ったんですよ。

 で、飛段さんの意識が僕から外れるところで「金遁・什器変化」をしたわけです。

 什器変化の特性として、僕は外界のチャクラの流れから完全に切り離されます。

 これは大蛇丸さんですら僕たち茶釜一族のチャクラを感知する事が出来なくなるくらい完璧なものです。

 一方飛段さんは僕の血液を自身に取り込むことで術、呪いを発動させています。

 僕の血から僕固有のチャクラのパターンでも取り込んで、飛段さん自身の負傷と僕の負傷をリンクさせているのでしょうか。

 現代ではチャクラを介した相手への干渉を行う術も様々あります。

 飛段さんの術もその一種、と考えるなら、僕のチャクラが感知できなくなったらどうなるでしょう。

 術による感知の不能、そして視覚など、五感からの消失、これが同時に起こったら…。

 飛段さんが僕と言う存在の生存を確認できなくなる、つまりは死んだと認識させる事が出来たなら、飛段さんの秘術は解除させるはずです。

 まあ、術の解除までは成功したようです。

「まあ良い、オレの呪いが解除されるたあなあ。

 大したもんだ、茶釜ブンブク。

 さすがはオレの『隣人』だけはある」

 飛段さんは意外にさばさばしてますね。

「どうやらオレはちっと急ぎすぎたようだ。

 折角の『隣人』を殺戮するのに禊ぎすらしねえのはいけねえよなあ…。

 今日の所は引くことにするぜ。

 他の連中も、文句はねえよなあ、おい」

 飛段さんは他の「暁」の人たちにそう言います。

 なんというか、脅迫しているようにも見えますが…。

「構わん」

「いんじゃねえの、うん」

 ずんぐりした人と、金髪の人、確かデイダラさん、でしたか、はそう言います。

「角都、てめぇはどうだ、あん?」

「…元よりやる気なぞない。

 ただ…」

「ただ、なんだよ?」

「…金に、金にならん…」

 …角都さんってどうやら非常にお金に執着のあるタイプなんでしょうか。

「分かった分かった、禊ぎの準備が終わったら何人か狩りに行くの手伝ってやるからよ、機嫌直せって角都ちゃん」 

「うむ、なれば良かろう」

 ずいぶんとあっさり機嫌を直す角都さん。

 確か「暁」は合法非合法を問わず「賞金首」を狩るんでしたか。

 裏の方でははたけカカシさんとか、マイト・ガイ(おししょう)さんとかにもかなりの金額が掛かっていると聞きます。

 うちの里の有力者の人たちにも伝えておいた方が良い情報でしょうね。

 

 

 

 さて、()()()も色々騒がしくなってきているようですし、もうひと押しですかねえ。

 僕はダンマリさんことペインさんの方を向き、

「で、僕は生き残ったわけですよ。

 どうでしょうかね、1つ僕に少しご褒美を出してもらう訳にはいきませんかね」

 そう吹っかけてみました。

「どうでしょうねえ、()()()さん」

「! …良いだろう」

 あれ?

 意外なお答え。

 ここは、「ふざけるなよ、木っ端が!」とか言われる所じゃないんでしょうか?

 まさかここで我愛羅さんが確保できるとか…。

「ここにいる者達の内、飛段、角都、デイダラ、サソリのサインでどうだ」

 

 …!!! 「暁」の精鋭のサイン!!

「は、はい! ありがとうございます!!」

 僕の頭からはいろいろと吹っ飛んでいたのですよ、その時は。

 

 …やっちゃった。

 しまったあ!! 自己暗示を解くのをもうちょっと遅らせておくべきだったあ!!

 本来ならば、我愛羅さんを確保する交渉をもっと引き延ばすはずだったのにい!!

 …やられた。

 さすがは「暁」の頭目格。

 僕ごときでは交渉のテーブルに着く事も出来なかったというのかっ!

 周りでは飛段さんが馬鹿笑いをし、角都さんが鼻で笑い、デイダラさんが呆れ、ずんぐりさん、多分この人がサソリさんなんでしょう、が首をひねっていた。

「なんだブンブクちゃん、オレのサインがほしいってか!?」

 そりゃ欲しいですけどね、くっそう、すっかり読み切られていましたか。

 ま、言っちゃったものはしょうがない。

 とにかく貰えるものは貰っとかないと。

 僕は懐から「じゆうちょう」を引っ張り出したのです。

 

 さて、「じゆうちょう」に皆さんのサインを頂きました。

「…ほらよ」

 最後に書いてくれたのがサソリさんです。

 帳面には「赤砂のサソリ 茶釜ブンブク君へ」と几帳面な文字で書いてありました。

 …ん?

 赤砂のサソリって、あの天才造形師の?

 たしかチヨおばあちゃんのお孫さんだとか聞いたけど。

「へえ、あなたがあの…」

 僕が呟くと、

「オレを知っているのか…」

 サソリさんがそう言いました。

「まあそりゃ、僕は砂隠れの里にもよくいきますし。

 機巧傀儡を少しでもかじった事のある人なら知らない人はいませんって。

 確か、『カラス』と『クロアリ』もサソリさんの作なんですよね」

「そうだ、あれはオレの初期の作品だ。

 今のオレの人形はあんなもんじゃない」

 まあそれはそうでしょうね。

 今僕の前にいるのも、本人ではなく傀儡でしょうし。

 しかしまあずいぶんと器用ですよね。

 生身と変わらないくらいスムーズに傀儡を使って文字を書いてらっしゃいます。

 天才傀儡使いと言うのも伊達ではないのですね。

「そう言えば、最近里に帰ってます?

 結構腕の立つ後輩が育ってますよ」

 そう話しかけてみると、

「ふん、確かにな。

 1人、なかなかに筋が良いのがいたが、オレの毒を喰らって生きているとも思えん。

 傀儡の操演はまずまずだったし、操演と同時に体術を使っての同時攻撃、なかなかに楽しめたんだがな」

 …もしかしてカンクロウさんかな。

「そうですか、そう簡単に死なないと思いますけどね」

 そうであってほしいんだけど。

 

 …さて、

「じゃあ、僕はこの辺でお暇しますね」

 僕はそう言った。

「…ここは結界の中だ。

 ペインが解除しない限り、出る事も、入る事もかなわん」

 ペインさんがそう言います。

 …?

 ペインさんの個性、なのかな?

 自分を「ペイン」って呼ぶのは…。

 覚えておこうか。

 ペインさんは「結界」が「解除」されない限り中からは出られない、と言っている。

「ですから、そろそろお暇を、と言っているんですけど」

「! そうだな、そろそろ、か…」

 ペインさんは今の状況を分かってらっしゃるようです。

 後は、イタチさんたちもそうかな?

 その時、

 

 ゴウン!!

 

 洞窟、というか結界が大きく揺れました。

 つまり、

「木の葉の精鋭、か」

 ペインさんがそうつぶやきました。

 木の葉隠れの里の忍が到着したようです。

 …なるほど。

 カカシ上忍にお師匠さま、意外なことにチヨお婆ちゃん、そして兄ちゃん、ですか。

 そろそろですね。

 ペインさんは、

「外の奴はサソリとデイダラで始末しておけ。

 ただし“人柱力”は生け捕りにしろ。

 他は解散だ」

 と指示をしている。

 さて、そううまくいくかな?

 サソリさんはイタチさんに、九尾の人柱力、つまりうずまき兄ちゃんの事を聞いているけど、

「一番最初に大声で怒鳴ってくる奴がそうだ」

「ぶふっ!!」

 イタチさんナイス!

 余りにもツボにはまってしまって、僕はつい噴き出してしまった。

 サソリさんもデイダラさんも、僕の様子を見てなんか納得してしまったようだ。

「連絡を待つ…」

 そう言ってペインさんは分身を解除しようとした。

「あ、そうだペインさん」

 僕はペインさんに話しかける。

「…」

 僕を見下ろすペインさん。

 僕はペインさんに指を突きつけ、

「『一尾』さんは必ず返していただきます。

 覚悟しておいてくださいね」

 そう、宣言した。

 

 

 

 ブンブクが宣言をし、ペインが外道魔像ごとその場から消えた時、封印の札が貼られた巨岩が春野サクラの一撃によって砕け散った。

 ナルトを筆頭に、カカシ、サクラ、チヨ婆が洞窟内に進入する。

 そこでナルトが見たモノは。

 倒れ伏し、動かなくなった我愛羅。

「てめーら! ぶっ潰す!!」

 ナルトは怒りの声を上げた。

 

 倒れたまま、立ち上がる事の無い我愛羅に、ナルトは必死の声をかける。

「そんなとこでなにのんきに寝てんだってばよ!

 立てよ!!」

 その声をカカシが遮る。

「分かってるはずだ…」

 そのカカシの声を継ぐように言うのは、元岩隠れの抜け忍、デイダラである。

「そうそう、分かってんだろ。

 とっくに死んでるってな、うん?」

 その言葉に激昂するナルト。

 高ぶった感情のままに突撃しようとするナルトをカカシが止める。

「落ちつけ、相手は4人、考えなしに突っ込めば全滅だ…」

 その言葉に更に重ねる者がいる。

「そだよ兄ちゃん、腹立った時こそ冷静にってね」

「!? お前、なんで…?」

 そこには、いるはずの無い弟分、茶釜ブンブクがいたのである。

 

「兄ちゃんおひさぁ」

 ブンブクはいつもの緩い顔でそう言う。

 しかし、その状態は満身創痍、と言っていい。

 左腕、右足は使い物にならない状態で、全身に擦り傷、打撲、裂傷など、ぼろ雑巾も書くや、という状態である。

「…誰がやった」

 ナルトの怒りが内なるチャクラを引き出そうとする。

 が、

「ああ、これって双方納得ずくだから、ね、飛段さん?」

「…まあ、なあ」

 ゆるーい返事を返され怒りのタイミングを外される。

「? んじゃいったいどういうことだってばよ?」

「単純な話でさ、僕が七尾の人柱力に化けてここに侵入、で、ここにいる飛段さんと納得ずくで決闘して、まあ、合格点を貰ったんでお目こぼし頂いた、とそんなとこなのさ。

 こっちは僕の自業自得なんだから、兄ちゃんは我愛羅さんを取り戻すことだけ考えてよ」

 その言葉に、

「いや、取り返してもなんの意味もないだろう、うん。

 一尾の人柱力は尾獣を引き剥がされて死んでんだからよ、うん」

 そう答えるのはデイダラだ。

 明らかにナルトを挑発にかかっている。

 デイダラはナルトから強い力の残滓を感じていた。

 こいつは感情的になればなるほど強くなる。

 芸術家であり、感性(パッション)を重視するデイダラはいつも刺激を求める。

 ひりつくほどの憎悪と力、それを前にすれば自分の芸術はまた一歩先に進める。

 そう感じての事だが。

「あ、兄ちゃん」

 またこの狸か。

 デイダラがナルトを挑発するたびに、こいつは最悪のタイミングでくちばしを突っ込んでくる。

 しかも、何故かは知らないが、デイダラの怒りに触れないのだ。

「何とかなるよ」

 しかも、「何とかなる」すなわち我愛羅の蘇生手段があると言っているのだ。

 我愛羅の死体の一部はペインが回収していった。

 何に使うかは分からないが、死体はあるに越したことはないようだ。

 故に、我愛羅が蘇生されるのは若干都合がよくない。

 出来る訳もないのだが。

 我愛羅と密接に繋がっていた一尾。

 それを引き剥がしている以上、我愛羅という人間の情報には大きな欠損がある。

 その欠損を埋めてやらなければ蘇生などできないし、そもそも一度死んだ人間を復活させるなど、絵物語の中の話であろう。

 それはナルトも分かっているのだろう。

 そう思っていたデイダラだが。

「ホントか! そっか、何とかなるか…」

 ナルトはそれをあっさり信じたようだ。

 明らかに欺瞞情報だろう、それ。

 デイダラは、どうやらナルトは単純馬鹿である、と理解したようだ。

 

 ブンブクの言葉を欺瞞と認識したのはカカシも一緒であった。

 カカシは、ブンブクがナルトを落ち着かせるために虚偽の情報を流したと考えた。

 これでナルトは冷静になり、かつ「我愛羅の遺体を奪還する」と言う任務に意識を集中させる事が出来る。

 さすがは「根」の後継者。

 そう考えてブンブクの方を見ると。

 アレ?

 ブンブクの視線、ゼスチャーを見ると、『大丈夫、欺瞞じゃないっす』って、え、本当!?

 どうやってか知らないが、カカシに対してブンブクは、蘇生の手段があると伝えてきていた。

 ふむ、ならば、全力をもってナルトをサポートしなくちゃなー、カカシはそう思考を切り替えていた。

 

 デイダラとサソリはどちらがナルトを仕留めるかで言いあいを続けていた。

 最終的に、デイダラが我愛羅を連れ去ることによって強引にナルトとの戦いを獲得したのであるが。

 デイダラは己が作品である粘土でできた鳥に乗り、洞窟を出ていった。

 ナルトがそれを追いかける。

 本来なればカカシはそれを追うつもりであった。

 しかし、この場にはサソリ、飛段、角都の3人がいる。

 どれもこれも一筋縄ではいかない猛者だ。

 ここにチヨ、サクラを置き去りにしていいものか…。

 そう考えている時である。

「おいサソリちゃんよ、手助けが必要でちゅかあ?」

 あおるようにサソリに声を掛けるのは飛段だ。

 サソリはいかにも嫌そうに、

「いらん」

 そう一言だけ告げた。

 普段なら怒りだすであろう飛段は、

「あっそうかい。

 んじゃ、オレは帰るぜ。

 角都はどうすんだ?」

 あっさりとそう返し、相方である角都に尋ねる。

「…はたけカカシはその功績の割に金額が安いのだが…」

 角都はぶつぶつと損得勘定をしているようだ。

 しばし悩んだ後に、

「…帰る。

 はたけカカシは敵対したとしても金額が安くて割に合わん。

 砂隠れのチヨは細胞年齢が行き過ぎていて買い取り価格が安い。

 せめてカカシの左の眼球が手に入れば話は別だがな」

 ため息をつきつつ今回手を出すのは控える事を飛段に告げた。

「はいよ。

 んじゃあよお、てめえらよ、そこ退きな…」

 飛段はカカシ達を睥睨すると、カカシ達がいる洞窟の入口へと歩いてくる。

 カカシは一瞬判断に迷うが、

「カカシ上忍、はやく兄ちゃんを追わないと」

 というブンブクの言葉に我に返り、

「ナルトとオレは外の奴をやる!

 サクラ、チヨバア様、後ブンブク君、後は頼みます。

 ガイ班が戻るまでくれぐれも無茶はしないようにね」

 そう言い残すと、ナルトを追って洞窟の外へと飛び出していった。

 

 飛段はその様子を興味なさげに見ていた。

 彼にとって重要なのは、これから一度自身の拠点に戻り、ジャシン教の教義に則った儀式を入念に行い、「隣人」たるブンブクを「きちんと」殺戮することだけであった。

 飛段はサクラやチヨ婆に目をくれる事もなく、洞窟を出ようとし、

「おう、そうだブンブク、ぜってえに他の誰かに殺されんじゃねえぞ。

 おめぇを殺すのはこの飛段さまなんだからよ」

 そう上機嫌に言い残すと、相方の角都と共に去っていったのである。




さて、飛段に関してですが、
飛段の不死性は
・頭部への攻撃は一応防御する
・刺傷、打撲などは回復。
・切断されると増殖復元はしない。
・欠損に関しては不明
で、原作中において
・アスマの火遁・灰積焼で法陣が消し飛んでいない
・角都の、地面をえぐるほどの風遁・圧害でも無事
というところを踏まえて、上記のような表現にしてあります。
これ以上の部分は活動報告のほうに書きますので、興味のある方はそちらを見ていただけると嬉しいです。

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