NARUTO 狐狸忍法帖   作:黒羆屋

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第34話

 さて、今日くらいかな。

 おはようございます、茶釜ブンブクです。

 なにが、ですか。

 そろそろだと思うのですよ。

 そう!

 うずまきナルト修行を終えて帰還です!

 …何で知ってるかって?

 そりゃ、兄ちゃんたちへの急な連絡は僕が動いていたからですが?

 1月前に自来也さまからの呼び出しがありまして、そろそろ修行に一段落がつきそうだ、ということで木の葉隠れの里に帰省する、というお話を綱手さまに持って行きました。

 千手綱手さまは大喜びしてらっしゃいました。

 …というのもですね、6代目火影としてのお仕事が大変だそうで。

 で、是非とも自来也さまを行政に巻き込みたいのですと。

 まあ、木の葉隠れの上層部って、うたたねコハルさま、水戸門ホムラさま、それと3代目火影・猿飛ヒルゼンさまに5代目火影・志村ダンゾウさま、と、見事に綱手さまよりふた回り以上年上でらっしゃいますからね。

 忌憚なくものを言うのは難しいでしょうし。

 …まあ、それ言ったら僕もそのうちそうなる訳ですが。

 正直言ってきつい。

 年が近いのってサイさん位なんだよなあ。

 次が油女トルネさん。

 そういやトルネさんにはシノさんの事をよく聞かれるなあ。

 その割には自分の事をシノさんに言わないように言ったり。

「暗部」というか、「根」におけるトルネさんの地位は高い。

 というか、山中フーさんとともにダンゾウさまの両腕、って感じだし。

 2人とも真面目が服を着ているような人たちだ。

 僕はああはなれないのでついカッコイイと思ってしまう。

 …話が逸れました。

 そういう訳で、やっとうずまき兄ちゃんが木の葉隠れの里に戻ってくるのですよ。

 兄ちゃんは3年ほど前の「木の葉崩し」の時にずいぶんと活躍しましたし、そのおかげで兄ちゃんへの風当たりもだいぶ弱くなりました。

 兄ちゃんは結局、自分で自分の評価をマイナスからプラスに転じたわけです。

 僕も鼻が高いというものです。

 ほんとにねえ、長かったなあ。

 急の連絡を付けなきゃなんないとかで、僕が急いで行ってみると「この原稿を出版社に届けてくれ」と自来也さまに頼まれたり、とか。

 時空間忍術と封印術の訓練として、出来たての「一楽」のラーメンを巻物に封じて兄ちゃんの所に行って、それ以来なにかあると「ラーメン頼むってばよ!」と宅配の代わりをしたり。

 着いてみたらどっかの悪党との鉄火場で、巻き添えを食ったり。

 …まあ、兄ちゃんに会えるんで別にいいんですけどね。

 時々兄ちゃんに修行の進展具合を聞いたり、新しい忍術のネタを出したり、で、それに失敗したり。

 兄ちゃん基本的に不器用だからね。

 いざという時の集中力がないとなかなかうまくいかなかったりする。

 とはいえ、上手くいってコツをつかむと兄ちゃんは凄い。

 いろんな応用を考え付くのだ。

 さすがは「木の葉の意外性ナンバーワン」の2つ名は伊達じゃないよね。

 螺旋丸もいろんなバリエーションが出来てたみたい。

 さて、いつごろ帰ってくるかなッ。

 …とはいえ、里の入口でずうっと待ってる訳にもいかないし。

 やっとこさ今日は時間が取れたからねえ。

 いや、ほんとここしばらくは忙しかったし。

 自分自身の修行を疎かにするわけにもいかないしねえ。

 という訳で、僕は訓練場で実家の家伝である「金遁」の修行を始めたのです。

 

 

 

 ブンブクはおもむろに、懐から奇妙なものを取り出した。

 金属製のお猪口。

 それを5つほど取りだし、軽くチャクラを送った後、手から離した。

 それらは重力にしたが…わず、ふわりと宙に浮き上がる。

 茶釜の家伝「金遁・念動操什(ねんどうそうじゅう)」である。

 食器、什器を意志の力で浮かせ、操る。

 それほど速い速度で動かせるわけではないが。

 これだけでこの術は完成する訳ではない。

「金遁・什器変わり身、百花」

 すいすいと印を結ぶブンブク。

 それと同時にブンブクの姿が消え、数歩先に現れる。

 次の瞬間、更に数歩先、戻って元の位置、と凄まじい勢いで位置が入れ替わる。

「…まだまだだなあ、もうちょっと早く動けないもんか…」

 そんな事を言いながら、位置が入れ替わっていく。

 これはブンブクの父、茶釜ナンブの得意とする什器変わり身を連続で行う秘儀、百花である。

 ブンブクは宙に浮かせたお猪口との位置の入れ替えを連続して行っているのである。

 しばらくそれを続け、疲労がたまって来た所で休息を入れる。

 しばらく休みを入れた後、次に行うのはお猪口を使った感覚拡大、「金遁・千里鏡(せんりきょう)」である。

 磨き上げた什器の鏡面を己の視覚、聴覚として利用する忍術である。

 ブンブクが印を組むと、こめかみから目じり、外耳にかけて血管の筋が浮かび上がる。

 感覚の拡大は人の脳に大きな負担を掛ける。

 広がった感覚は、脳にそれまでの数倍のデータを送る。

 それを処理するのはしょせん人である。

 膨大なデータを処理する訓練を積まなければならない。

 地道ではあるものの、必要な訓練をブンブクはひたすら続けた。

 

 

 

 ふう、さすがに疲れました。

 目がしぱしぱします。

 千里鏡の術は便利なんですけどねえ。

 あとは、八畳風呂敷の変化の修行と、あとは格闘技の擒拿術の型を練習して、と。

 とか考えていたなら。

 

 どぉん!!

 

 という音と共に、地面が揺れた。

 これは! …いつもの()()かあ。

 さて、と。

 ボクは修行を中断して、訓練場の管理事務所の方に行くことにした。

 …サクラ姉ちゃんめ、またやったな。

 サクラ姉ちゃんは医療忍術を極める際、チャクラの伝播をより効率的に伝える技術を磨いた。

 で、それを打撃に乗せると、地面の脆い部分に的確にダメージを与える事が出来る。

 それをチャクラで強化した拳骨の威力に相乗効果で乗せると、

 地面がぼっこぼこに壊れるわけだ。

 …無論、それを直すのは土遁に長けた事務方の忍さんたち。

 忍術の訓練をする以上、訓練場が壊れるのは仕方ないとしても、姉ちゃんは大破壊しすぎなのですよ。

 修理するのもただじゃないんだけどなあ。

 

 結局訓練場の修理は次の日になったそうです。

 なんでもまだ使用中だそうだし。

 やれやれ、そう思っていると、

「茶釜ブンブク、火影さまがお呼びだ」

 僕の後ろに黒い影。

 暗部の人だ。

「承知いたしました、ただ今まいります」

 さて、なにがあったのやら。

 

「茶釜ブンブク、推参いたします」

 ここは火影の執政室の目の前。

 僕は6代目火影・千手綱手さまの元へとやって来た。

「来たか。入れ」

 そう綱手さまに言われたので、扉を開け、中に…、

 ごっ!

 そして激痛!

「…お:dkgfぽdp!!!」

 脛が! 僕の脛がぁ!!

 ゴロゴロと転げまわる僕と、呆れた顔で見ている綱手さま。

 そして、「あ、ついやっちゃった」という顔の、トントンくん。

 一時期トントンくんは僕の顔を見る度に体当たりをかましてくる事があって、それが癖になったとかなんとかいってたけど、冗談だと思ってたのに。

 激痛で転げまわている僕に、綱手さまは

「ほれ、見せてみな、痛くない痛くない…」

 って僕は子どもじゃないんですが!

「ちっこいくせに何言ってんだい」

 だーかーらー!!

「のう、綱手よぉ、そろそろ話に入りたいんじゃがのォ…」

 ってあれ? 自来也さま!?

 なんで…って、あ、そうか、兄ちゃんもう帰ってきてたんだ。

 入れ違っちゃったかなあ…。

 そんな事を考えていると、

「ブンブク、お前に任務を与える。

 滝隠れの里に行き、彼の『守護神』の修復をするのだ」

 …何があったんですか?

 

 綱手さまのお話ではこうだった。

 滝隠れの里が「暁」と思わしき2人組に襲撃された。

 1人は指名手配中のS級犯罪者、元滝隠れの忍・角都(かくず)

 これは滝隠れの指名手配書より確認済み。

 もう1人は銀髪の男性、20歳程度の年齢。

 刃が3つある奇妙な鎌状の武器を使用する。

 この2人が滝隠れの里を襲撃したのだそうです。

 で、その際、傀儡の操演が辛うじて出来る下忍がいたため、フウさんと一緒に「蟲骸巨大傀儡・鋼」で迎撃に出た、と。

 どうやら相性が良かったらしい。

 鋼の装甲は暗黒洞(ブラックホール)の忍術すら食い止めるものだし、角都らしき忍は主として強力な忍術を主体として攻撃をしてきたらしいし。

 もう1人は対人戦闘がメインらしく、鋼とやりあうにはちょっと力不足だろう、と僕は思っていたのだが。

「それで、追い払った後なんだがな、その『守護神』はいま、まともに使用できなくなっているそうだ」

「は?」

 いやいや、あれってその大きさに比例して強いですからね、そんな…、

「外部の装甲は無事だが、中の操演用の筋肉部分がほぼ全壊、だそうだ。

 それで、その筋肉部分を作る事の出来るお前に、修復を頼みたい、とのことでね。

 行って来てはくれないかい?」

 もちろん、

「行きます!」

 フウさんや、シブキさんが難儀をしているのを見ているわけにはいきません!

「それでいつ発ちますか?」

「そうだね、明日の昼には出てもらうよ。

 それまでに準備をしておきな」

「は!

 …? それは僕1人でって事ですか?」

 確かにそっちの方が早く着くけどね。

 滝隠れの里とは確かに同盟は結んでいないはずだけど、普通忍はチームで動くもの。

 メイキョウ先生に話が通るのが普通かな、と思っていたんだけどなあ。

「今回は急を要する。

 本来ならば鬼童丸にも同行してもらいたいところだが、奴はすでに別件で動いているのでな」

 承知です。

 んでは明日にでも飛んで行きましょう。

 

 さて、いろいろ準備して次の日になりました。

 さてでかけようか、とした時です。

 ふっと目の前に忍が現れました。

 およ、はたけカカシ上忍です。

「あ、おはようございます、カカシ上忍」

「ん? おや、ブンブク君、おはよう。

 ふあぁぁ…」

 カカシ上忍は大あくびです。

「あ、そう言えば、兄ちゃん帰ってきたって聞いたんですけど。

 なんでもカカシ上忍に修行の成果を見せるって言ってたそうですけどどうでした?」

 自来也さまからそう聞いてたんだけど。

「ああ、見事にやられたよ、今朝までかかったけどね」

 うわぁ、それでも修行積んだ兄ちゃんと、綱手さま直伝のサクラ姉ちゃんを相手に一晩粘ったのかあ。

 さすがだなあ。

「で、朝ご飯でも一緒に食べてきたんですか?」

 僕がそう言うと、カカシ上忍は何やらもごもごと。

 …なるほど、奢るのが嫌で逃げてきたんですね。

「…それだと、尊敬をイルカ先生から取り戻せないですよ」

 いまひとつカカシ上忍ってうずまき兄ちゃんとか、春野サクラ姉ちゃんから尊敬されてないんだよね。

 ちゃらんぽらんというかそんなイメージが付いちゃってるのかしらん。

 面倒見は良いはずなんだけどなあ。

「いや…、そ、そんなことは…」

 あ、目が泳いでる。

「ご飯くらい奢ってあげたら良かったのに…」

「いや、ホントに今から仕事だから…」

 まるでワーカホリックパパのような事を言うカカシ上忍。

「少し多めにおかね渡して、『これで飯食って来い!』とか言えば良かったのに」

 そういうと、カカシ上忍は…、愕然としてらっしゃる。

 ああ、気が付かなかったんだあ。

 このひと、どっかつめが甘いよねえ。

 仕事は完ぺきにこなすくせに、家だとだらだら駄目父ちゃんなんだろうなあ。

 まだ独身らしいけど。

 うちのおっかあがやり手婆みたいにお見合いを勧めるのも分かる気がする。

「戻っていくらか置いてくればいいのに。

 それとも僕が預かって持っていきますか?

 それくらいの時間はあるし、僕も兄ちゃんに会っていきたいし」

「あ、そう? ま、んじゃお願いするよ」

 そういうと、カカシ上忍は明らかに朝ご飯には多い金額を僕に預けてきました。

 カカシ上忍もこういうとこ忘れなければねえ。

「あ、そだ。

 ブンブク君、今から仕事?」

「はい、滝隠れの方に」

 僕がそう言うと、カカシ上忍は急に真剣になって、

「あっちに行った『暁』の奴は、かなり危険な輩だから気を付けて。

 特に、若い男の方は、通称『死神』とか『不死身』なんて呼ばれてる奴だから」

 そう忠告してきた。

 そして、

「あ、でもそうなると…」

 あ、やな予感。

 僕が耳を塞ぐ前に、カカシ上忍は、

「『不死身』対決だねえ。

 ブンブク君、『不死身のブンブク』とか、『死なずの狸寝入り』なんて呼ばれてるしねえ…」

 言われたあ!

 ものっそい厨二病チックだからその二つ名聞きたくなかったのに!!

 羞恥にのたうちまわる僕を尻目に、カカシ上忍は去っていったのでした、まる。

 

 さて、んじゃ兄ちゃんを見っけてお話ししてから出かけましょう。

 僕は電信柱の上から下界を見下ろしていた。

 多分繁華街のあたりに…って、居た。

 あれは…おんや、奈良シカマルさんにテマリさんも一緒かあ。

 僕はひょいとみんなに向かってジャンプした。

 

 

 

 ナルトはサクラと一緒に食事(でーと)でも、というところでシカマルとテマリに出会っていた。

 シカマル達は中忍試験の打ち合わせに奔走しているところである。

 シカマルがナルトに聞いた。

「で、お前どうすんだ、ナルト?」

「何が?」

「何がって…

 中忍試験だよ」

 ナルトはやっと合点がいったように頷いた。

「そっか、もうそんな時期だ。

 …ああっ、そういやお前らみんな中忍になったんだって!?」

「お、おお。

 よく知ってたな」

「そりゃ、ブンブクから定期的に聞いてたってばよ。

 サクラちゃんも中忍になったんだよな!」

「そうよ」

「あれ、確か、そっちのねえちゃんとあの黒いのは上忍になったって…」

「そうよ、だからあんたはどうすんのかって事」

 1人受験者が増えればそれだけ仕事が増える2人にとって、ナルトの動向は気になるものであった。

「ああ、オレも受ける!

 エロ仙人がそこんとこやっといてくれてるはずだ」

 ナルトがそう言うと、

 バサッ

 そういう音と共に、目の前に少年忍者が降ってきた。

 

 

 

 僕は兄ちゃんたちの目の前に降り立った。

「兄ちゃんおひさ!

 テマリさんもお久し振りです!」

「おお、ブンブク! 久しぶり!

 お前も朝飯食いに行くか!?

 奢ってやるってばよ!」

 兄ちゃん、それ今言うと、

「お、悪りいなナルト。ゴチになりまっす」

「悪いねぇ、ええっとナルトだっけ?」

 ほれ、こういうことになる。

 兄ちゃんはがま口を見ながら涙目である。

 さてと、

「あ、それに関してなんだけど、さっきカカシ上忍に会ってさ、これご飯代にしろってさ」

 カカシ上忍から預かったお金を兄ちゃんに渡す。

 これなら4人でご飯を食べても十分におつりがくる金額だ。

「おおっ、カカシ先生サンキュー!!」

 まあここんとこ兄ちゃんは正規の任務を受けていない。

 自来也さまからのお小遣いでなんとかやってたみたいだし。

 その状況ならちょっと懐具合は厳しいよなあ。

 ここから兄ちゃんたちとのご飯というのも魅力的なんだけど、

「ごめん兄ちゃん、これからお仕事なんだ。

 滝隠れまでさ」

 非常に残念ですね。

「そっか、んじゃまたな!」

 兄ちゃんはにっかり笑って僕を見送って…。

 あ、そだ。

「兄ちゃん、ちゃんと自来也さまに確認取っておいた方が良いよ。

 ここんとこ自来也さま忙しくしてらっしゃったから、忘れてるかも」

「あ! そうだな、エロ仙人に確認とっとくってばよ!

 ありがとな、ブンブク!」

 そして今度こそ僕は兄ちゃんを分かれて、任務に赴いたのでした。

 

 

 

「ナルト、お前も今回は気張んないとまずいぞ」

 朝食を食べながらシカマルが言う。

「? なんの事だってばよ?」

「そうか、お前聞いてないんだな…。

 ブンブクな、今回の中忍試験受けるんだわ」

「! な…、なんだってぇ!!」

 驚愕するナルト。

 それはそうだろう、弟分と自分が同じ会場で受験することになるのだから。

 が、

「…んでも、アイツだったらおかしくねえかあ…」

 ナルトは納得する。

「そうよねえ、ブンブク君ならさっさと上忍とかになっちゃった方が良いかもね。

 シカマル君もね」

 サクラも同意である。

「…メンドクセェ。

 まあ、ブンブクがさっさと上忍になってくれれば俺も楽が出来るんだがな」

 ぶつくさ言いながらもシカマルも同じ意見のようだ。

「さて、あの坊やが上忍になったら、木の葉隠れはどう変わるかな…」

「さてな、それはオレの考える事じゃねえ…」

 テマリの言葉に、心底面倒くさそうな顔をするシカマル。

 テマリはその様子を楽しそうに観察するのであった。

 

「そういや、ブンブクの班って誰なんだ?

 オレよく知らねえんだけど?」

 ナルトの疑問に答えたのはシカマル。

「元・音隠れの奴らだ」

「はあっ!? それって、どういうことだってばよ?」

 ナルトの疑問も当然だろう。

 元々大蛇丸の配下だった連中をどうやって組み込んだのか。

「音の連中って大なり小なり大蛇丸の洗脳を受けてたみたいなの。

 それを解除してうち(木の葉隠れ)に勧誘したのよ」

 サクラがシカマルの言葉を次いで言う。

 サクラは医療忍者として彼らの洗脳解除を一部担当していた。

 また、音の四人衆に関しては、人格の再構成プログラムにも若干携わっていた。

 それを説明した後、ドス・キヌタと宿儺左近・右近に付いてナルトに説明をした。

「へえ、確かドスってチョウジとやりあった奴だろ、後、左近・右近ってキバと戦った奴だったよな、確か」

「そうよ、今じゃ2人とも友達だけどね」

 チョウジは特訓によって秋道家の中でも特に強い忍となっていた。

 それにもともとこだわらない性格であり、一度仲良くなってしまえば相手を受け入れる度量があった。

 キバに関しても、ブンブクの家や、シノの家で左近達とゲームをするようになってからは仲良くなるのは早かった。

 予想以上に元・音隠れの忍達は木の葉隠れの里に馴染んでいたのである。

「…まあ、多分あいつが動いたんだろうしな」

「そうね、ブンブク君、お節介焼きだしね」

 ナルトとサクラはそう言って笑い合った。

 

 

 

 僕は今、快適な空の旅を満喫…やっぱり寒い。

 高高度を飛ぶと時期によってはマイナス2ケタとか当たり前ですし。

 色々(ぬく)まる手段を持っていないと飛行なんてできないですからね。

 しかし、今回も聞けなかったなあ。

 兄ちゃんに。

 九尾さんとはどうなっているのか、って事。

 子どもの頃は九尾さんとは接触したくなかったんだよね。

 僕の前世である文福狸は九尾さんの事嫌いだったから。

 九尾さんって、基本的にえらくプライドが高いんだよね。

 それで、「尾獣の格は尻尾の数で決まる」って理屈をこねるもんだから、他の尾獣の人たちとよく喧嘩をしていた訳です。

 それ自体は別に悪いとは思わない。

 実際、九尾さんにとっても他の尾獣の人たちにとっても退屈しのぎのネタにすぎなかったようですし。

 とは言え、尾獣同士の激突は山を砕き、海を割るレベルの代物なんですよ。

 そんなもんが起こって御覧なさい、その後の後片づけがものすごく大変なんです。

 で、尾獣のみなさんでそういうのをやってくれるのはお淑やかな二尾さんか、礼儀正しい五尾さん位でしたね、確か。

 一尾の守鶴さんと九尾さんはなんと言うか、「仲良く喧嘩しな」の関係だったんですが、九尾さんって眷属を連れて喧嘩しに来るもんだから、まあ被害が大きくなる大きくなる。

 その後始末をするのが文福さんだったんですねえ。

 九尾さんの眷属はえらくなればなるほど尻尾が増えまして。

 で、一方狸はと言うと特に尻尾が枝分かれすることはないんですよね。

 その関係で、狐さんたちはプライドがえらく高くて、おかげで後片付け手伝ってくれないんですよ。

 騒いで壊してすっきりで終わり、と。

 そういう訳でなにかあると責任を押し付けてくる九尾さんサイドを文福さん嫌いだったみたいなんですよね。

 その関係で、今までずるずると九尾さんへの接触を避けてきたわけです。

 とはいえ、あのプライドの高い九尾さんが封印されている訳で。

 どんな状態になっているか、正直考えたくもないですね。

 比較的明るくて能天気な守鶴さんですらかなり荒んでましたし。

 かなり危険な状態になっているのは推測できるんですよねえ。

 後は兄ちゃんの影響をどれくらい受けているか、ってことですが。

 こんど戻ったら確認しておいた方が良いよねえ。

 

 さて、1日ほど飛行して、滝隠れの里にやってまいりました。

 僕は飛んで行っているので、滝隠れの里の正規の入口からは入んなくて良いんですよ。

 で、早速上から見てみると…。

 …なにあれ。

「暁」の2人組に襲撃されてんでなかったっけ?

 出入口のあたりは大規模に破壊され、シンボルの大樹にも被害が及んでいる。

 極めつけは「守護神」蟲骸巨大傀儡・鋼の状態。

 左腕がもげ、なんとなく装甲が歪んでいる気がする。

 …あれ、おっかしいなあ、あの装甲って怒鬼の攻撃喰らっても壊れなかった代物なんだけどなあ。

 それをたった2人でですか。

「暁」ってどんな怪獣の集団なんでしょうか。

 …怪獣の集団でしたね。

 干柿鬼鮫さんとか、「尾の無い尾獣」なんて呼ばれるくらいチャクラが有り余ってる人らしいし。

 その相方のうちはイタチさんも記録に残ってる任務の量と質を考えるとシャレになんない強さだしなあ。

 よくもまあ、鋼はまだ人型を取ってるもんだ。

 切り身みたいにパーツごとにばらされていてもおかしくは無かったろうに。

 あれを修理すんのかあ…。

 カンクロウさんいないのに何とかなるかしらん。

 かなりの不安を抱えつつ、僕は滝隠れの里に下りて行った。

 

「何者だ! …ってなんだブンブク君か、脅かさないでくれよ…」

 滝隠れの中忍さんたちにそう言われてしまいました。

 まあしょうがないよね、上から来る敵って滝隠れにとっては鬼門みたいなものだし。

「どうもです、依頼を受けて、『守護神』修理しに来ました」

 とは言え、これを直しきるのにはだいぶ時間が掛かりそうだ。

 すぐにでも始めないとまずいなあ。

 さて、と、

「で、『守護神』直すには僕1人だと限界がありまして、フウさんいます?」

 と言ったところで、

「ブンブク君、久し振りっす~!!」

 という声と共に目の前が真っ暗になって、

 くきっ!!

 という音と共に僕の首が間横に曲がった。

 ブラックアウト。

 

「いやあ、悪かったっす。この通り!」

 ってフウさんは謝ってきた。

 なにがあったって?

 大体予想つくでしょ、フウさんにダイビングアタック喰らって首が変な方向にひんまがったのです。

 いやあ、死ぬかと思いました。

 まあ良いんですけどね。

 まずはお仕事をしないと。

「フウさん、前回と同じように、うちの八畳風呂敷にチャクラを分けてもらいますね」

「任せるっすよ!」

 本当に、ここまでやられてるとなると、次の襲撃の時に持たない可能性があるしねえ。

 さて頑張りましょうか。

 

 

 

 蟲骸巨大傀儡・鋼の修復は、作成時ほどすんなりとはいかなかった。

 今回は「暁」によって滝隠れの里が襲撃され、大きな被害が出ている。

 その復興に人材を割かなければならない状況であり、一言で言えば「人手が足りない」というのがひとつ。

 また、滝隠れには傀儡操演の出来る者はいるものの、機巧傀儡の作成に長けた者はいなかった。

 カンクロウは傀儡の造形に詳しい訳ではなかったが、人型の傀儡の構造に関しては操演に長けるだけあって十分な知識があった。

 その為、的確な指示が出来たのである。

 それが今回はない。

 滝隠れの里の長、シブキは砂隠れにも要請を入れていたのだが、カンクロウは長である我愛羅の身内であり、テマリが外交特使として里の外で動いている以上、おいそれと里を離れる訳にはいかなかったのである。

 それでも3日を掛けて、「守護神・鋼」はなんとか元の力を取り戻しつつあった。

 鋼はいま、滝隠れの里のシンボルともいえる存在になっていた。

 それが復活しつつあり、滝隠れの里には復興の槌の音が力強く響いていた。

 その時である。

「暁」の精鋭、角都(かくず)飛段(ひだん)が再襲撃を掛けてきたのは。

 

 そして同時刻、

 砂隠れの里の長にして一尾の守鶴・その人柱力である砂瀑の我愛羅。

 彼は「封印術・幻龍九封尽」によってその身から守鶴をはがされようとしていた。




さて、時系列に狂いが生じ始めております。
本来であれば、一尾の回収は七尾の後であります。
次回、滝隠れのフウの死亡フラグがおれるかどうか。

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