NARUTO 狐狸忍法帖   作:黒羆屋

32 / 121
間章 閑話集
第29話 閑話集


 閑話6 蜘蛛と蟲

 

「甘いぜよっ、めくり大キックソウルショット大アッパー!」

「! なんの、ブロッキングブロッキング当て身投げからの超必殺…!」

「なっ! だああっ、やられたぁ~っ!」

 うららかな午後の日。

 男の子の2人が畳部屋にて格闘ゲーム大会を開いていた。

 1人は油女シノ。

 言わずと知れた木の葉隠れの里に名だたる蟲使いの家系の長子である。

 もう1人は元・音の四人衆が1人、東門の鬼童丸。

 今では木の葉隠れの里に忍組織に取り込まれ、葛城鬼童丸を名乗っている。

 かつて6本あった腕はチャクラによって増設されていたものであり、現在は呪印封印の影響による総合チャクラの低下によって2本に戻っている。

 2人はここしばらくある条件を掛けて対戦型ゲームで勝負をしていた。

 今のところ実力は伯仲。

 技術的にはシノを上回っている鬼童丸であるが、ここ一番で熱が入りすぎて、冷静さを失わないシノを突き放す事が出来ないでいた。

 ゲームの内容は様々。

 定番の対戦格闘ゲームからレースゲーム、対戦型のボードゲームまで。

 大量のゲームソフトとハードを油女宅に持ち込んで、鬼童丸とのゲーム勝負は続いていた。

 

「対戦ゲームというのは奥が深い。なぜなら人間同士の駆け引きがより重要となるからだ」

「あぁ、それは分かるぜよ。

 死にゲーとかと違ってパターンが確定する訳じゃねえからなあ」

 2人は意外と気が合う。

 短気な鬼童丸と冷静なシノ。

 鬼童丸の場合は呪印の影響で人格の崩壊があったが、現在は森乃イビキら木の葉隠れの里の拷問・尋問部隊の奮闘により人格の再形成がなされ、また呪印に関しても封印術が施され、その上で暗示により封印の解除を禁忌とされており、暴走の危険はほぼないと言っていい状態だ。

 その上で、5代目火影・志村ダンゾウは元・音の四人衆に関して、同年代のシノらと積極的に関わる様に配した。

 この措置について、一番喜んだのは鬼童丸ではないだろうか。

 ゲーム好きの彼にとって、音隠れの里の生活は、忍としては大蛇丸の洗脳もあり、充実したものだっただろう。

 しかし、年頃の少年としての鬼童丸は同じ世代の子どもたちが自分を含めた音の五人衆だけであり、その中で趣味の話が合うものがいなかったというのは辛いものがあったのかもしれない。

 実際木の葉隠れの里の同年代の少年少女達にいの一番に馴染んだのは鬼童丸だった。

 ちなみに未だに馴染んでいないのは多由也。

 彼女の場合、あの口の汚さがほかの者達を遠ざけている原因の一番であり、さらにあの攻撃性は人見知りの要素が多く、人に馴染むのが難しいからでもあったのだが。

 彼ら元・音の四人衆は音隠れの里純粋培養の忍であり、大蛇丸の教育方針もあって戦闘技術以外の部分で下忍どころかアカデミー生にも劣る部分がある事が発覚した。

 そのため、現在最底辺の知識を習得するために忍術学校で特別講義を受けている。

 ちなみに講師はうみのイルカ先生。

 あのうずまきナルトを卒業させ、ある意味それ以上の問題児である茶釜ブンブクの担任であり、彼が卒業したら次は猿飛木の葉丸の担任になるであろうと言われている敏腕教師である。

 本人がどう思っているかは不明であるが、「問題児の矯正にかけてはうみのイルカに勝る者はいない」というのは昨今の忍術学校では常識となりつつある。

 合掌。

 それはさておき、鬼童丸と一番そりが合ったのはシノであった。

 そして、シノと同じ班の日向ヒナタ、そして、

「あれ、鬼童丸も来てたんかよ?」

 犬塚キバとも会えば挨拶をする程度の仲にはなっていた。

「なんだよ、格ゲーか!? オレも混ぜろって」

「へえ、なに、オレにギッタンギッタンにされたいって?

 おうおう、イージーぜよ」

 鬼童丸は挑発的に言う。

 とはいえ、別にキバに対して隔意がある訳ではない。

 むしろ、

「なんだてめぇ、こっちこそ鼻歌交じりにぶっちめてやるってえの!」

 こういうしょうもない少々子供じみたやり取りを鬼童丸もキバも楽しんでいるのである。

「ならば少し待つといい。なぜなら今から飲み物と菓子を持ってくるからだ」

 気を利かせたのか、シノが立ち上がり、そう言った。

 そして鬼童丸に、

「キバはここしばらく赤丸が修行の旅に出ているためにさみしいらしい。

 少し話し相手になってくれ」

 ぼそりとそう言う。

「ラジャ、承知ぜよ」

 そんな会話がなされているとも知らず、

「よっし、んじゃ路上4か、それとも鉄拳骨の最新でいくか?」

 能天気に今から遊ぶゲームをあさっているのだった。

 

「な! なんだと…!?」

「へ、ちょろいぜ!」

 意外な事にストレート負けを喫した鬼童丸。

 いままで知らなかった裏技があったためである。

「こんな方法があったとは…知らんかったぜよ」

「まあな、これを見っけたのはオレじゃないけどな」

 勝てたキバはうれしそうである。

「ほれ、今までに見つけた裏技集。

 オレの子分がこういうのまとめんの得意でよ」

「へえ、って見つけた奴は別にいんのかよ、今度紹介しろよ」

「まあ、戻ってきたらな…」

 ちなみに裏技を見つけるのはうずまきナルトが非常に得意だった。

 それを見やすくまとめたのは茶釜ブンブクである。

「ほう、これをまとめたのは『風狸(ふうり)』かあ、あいつはやっぱ唯者じゃないぜよ」

 茶釜ブンブクは忍術学校を卒業せずして火影直轄の任務を受けるようになっていた。

 これは彼の使う術の特性である飛行能力を以って緊急の伝令役として5代目火影・志村ダンゾウにこき使われるようになったためであった。

 その才についた二つ名が「風狸」。

 風に乗る狸、という意味合いである。

 もうひとつのあだ名もありはするのだが、本人いわく「ものっ凄い厨二病」でいやなのだそうだ。

 ちゅうにびょうってなんだろう?

 そう思うことたびたびである。

「それはともかくよ、鬼童丸はなんでシノと勝負してんのよ?」

 キバが唐突にそう尋ねた。

「そりゃ簡単ぜよ。

 オレの知ってる『鬼子母蜘蛛』との契約法や、呼び出した蜘蛛との交渉法が知りたいんだと」

 シノの体に寄生させている「寄壊蟲」は様々な用途に使用できる万能の忍具といえる。

 しかし、一撃の重さはなく、搦め手に使用されることが多い。

 そのために、「うちはサスケ奪還任務」ではメンバーに選ばれる事がなかった。

 確かにあの任務では即効性が高い打撃力を持つ下忍が選ばれており、それは仕方がないと言えるかもしれない。

 しかし、今後、自分の班で少しでも火力が求められているとしたら…。

 シノはそう考え、「蟲術」を強化すべく、蜘蛛を口寄せする鬼童丸に接触したのである。

「お前それって秘伝忍術の類いじゃ…」

 秘伝忍術は忍の一族がその生涯を掛けて生み出すもので、普通は里の外に出すようなものではなく、ましてやゲームの景品になるようなものでもない。

 しかし、

「そんなこと言ったってなあ、

 音隠れからは見限られた身だし、そもそもうちの一族はとうの昔に滅んでるぜよ…」

 鬼童丸はかつて雨隠れにあった鬼子母一族の出身である。

 雨隠れの里の長である「山椒魚の半蔵」は非常に猜疑心の強い男であり、反逆の目があると見られた鬼子母の一族は、その全てを抹殺されたはずであった。

 鬼童丸はその多分最後の生き残り。

 その状況で秘伝もなにもないだろうと鬼童丸は考える。

 自分の持つ秘伝であろう忍術は全て木の葉隠れの里の上層部に提出済みであるし。

 後は自分がこの木の葉隠れの里でどれだけ出世できるかだろう。

 うまくいけば一族の再興も可能であろうし。

 そう鬼童丸は敢えて能天気に考えるようにしていた。

 

「どうもでーす!

 シノさんいます?」

 そんな風にやってきたのは我らがマスコット、茶釜ブンブクである。

「…なんかもんの凄い嫌な呼ばれ方した気がするけど」

「よく来たな、ブンブク。

 何か成果があったのか?」

 いつもよりほんの少し意気込んでいるように見えるシノ。

 彼はブンブクに、任務の合間に各忍里の昆虫、植物の図鑑や、珍しい標本などを入手してくれるよう頼み込んでいたのである。

 無論、任務に支障のない範囲で。

「今回の成果はこれですね」

 ブンブクが持ってきたのはかなり古い冊子。

 中にはステップ地方に住む吸血昆虫についての詳細な記録が乗っていた。

「…感謝する。なぜなら、こういった吸血昆虫には、血液の凝固を妨げる毒を持っている事が多く、その毒はそれこそ毒にも薬にもなりうるからだ」

 シノの顔が心なしか興奮で赤らんでいるようにも見えた。

 ブンブクはその様子を見ると、満足げににっこり笑った。

「時にみなさん、今日はどうしたんです?」

「今日は皆でゲーム大会ぜよ。

 任務の重ならない日はなかなかねえからな」

 そう鬼童丸が言う。

「そうだな、オレも赤丸がいない以上高難度の任務は難しいからなぁ…」

 キバは少しさみしそうだ。

「んじゃ僕も混じりたい!」

「お、いいぜ、インフェルノモードで相手してやるぜよ!」

「何故インフェルノ!? 年下なんだから少しは手加減してよ!」

「やなこった!

 お前ブロッキングとかガードブレイクとか高確率で決めてくるくせに何言ってるぜよ!」

 ブンブクと鬼童丸がぎゃーすかぎゃーすか言いあっているのを、シノとキバは呆れた顔で見守っていた。

 

 この後、シノ及び油女一族の依頼で鬼童丸とブンブクがとある森林地帯で大冒険をする事になるのはまた別の話。 

 

 

 

 閑話7 狸とラッパー

 

「『風狸』のブンブク良くやって来た♪

  オレは修行でようやっと来た♪」

「?

 僕は木の葉のお使い?

 空をふわふわやってスカイ?」

「!

 オレはキラービー! 雷影のブラザー♪

 ユーはブンブク! ファイナルアンサー?」

「yeah!

 アイムブンブク! ナルトズブラザー♪

 ユーはキラービー! ナイスなガイさ♪」

「hi!

 木の葉と雲は友好ユーコー♪」

「僕と君とはラップでゴーゴー♪」

「意見をぶつけてシャルウィーしゃるうぃー!」

「お互い意見をすり合わせてすばらすウィー!」

「オレと同盟♪」「僕と連盟♪」

「「yeah!!」」

 ごげんがつん!!

「…auch」

「…痛いぃ…。

 あの、雷影さま、一応僕、特使って形なんですけど。

 確かに実情はただの荷物運びですけどね…」

「…確かにな。

 本来であれば特使を殴るなぞ即開戦となってもおかしくはない。

 だがな…」

 雷影は1つの書状をブンブクに見せた。

「…特使・茶釜ブンブクはお調子者ゆえに、目に余るバカがあった場合、少々手荒い教育を貴殿の弟と共に施していただきたい。

 5代目火影・志村ダンゾウ」

「…うえぇ~」

「…oh」

 4代目雷影・エーから示された書状の内容にうめき声を上げるブンブクとキラー・ビー。

「なるほど、まだ足りんようだな…」

 ごきりごきりと指を鳴らし、腕をぶんぶんと振る雷影を見て、真っ青になる2人。

 彼らの謝罪の型、DO☆GE★ZAは見るものを恍惚とさせるほどのものであったが、雷影の鉄拳には全く曇りがなかったという。

 その日、正しい意味で、茶釜ブンブク(+1)に親父の雷が落ちたという。

 

「雷影さま、怖い…」

 

 

 

 閑話8 格ゲーとリアル格闘

 

「…てことがあったんですよ、ひどいと思いません?」

「…ブンブク君、君は将来大物になりますよ」

 訓練の合間に前回の任務であった(本人いわく)ひどい話をロック・リーに愚痴るブンブク。

 無論、してはいけない部分は話さない。

 その程度の倫理観は持っているブンブクだった。

「ちえぇ~っ、リーさんなら分かってくれると思ったのに…」

「分かってますとも、君が大物だってことくらい」

「なんか違う…」

 そんな会話を続けていると、

「いよぉーし! 休憩終わり!

 けいこを続けるぞぉ!」

 木ノ葉の気高き碧い猛獣、闘将マイト・ガイの一言で、2人は修行へと戻っていった。

 

「そう言えば先生」

 ブンブクがガイにこう切り出した。

「ん! なんだ!」 

「この前の事なんですけど…」

 

 

 

 数日前、友達と一緒にゲームをしてたんですけどね、その際に、

「なあ、このガードブレイクって体術で再現でないのか?」

「? なんの事ぜよ?」

「だからよお、ガードしてるところを攻撃することでガードをこじ開けて攻撃を充てられねえかって事」

「難しいだろう。

 なぜなら、オレ達忍はガード面に対してチャクラを使っての防御強化を行うからだ。

 チャクラを防御に回している以上、肉体を直接傷つけるのは難しい」

「むー、やっぱりそっか。

 無理かあ」

 ってみんな言ってたんですけど、僕はちょっと気になったんです。

 どっかでそんな事が出来るような話を聞いた事があったような気がしたもんで。

 で、何人かの体術の得意な人に聞いてみたところ、それらしい話が出てきたんですよ。

「ブンブク君、それホントですか!」

 やっぱりリーさんは食いついてきますよね。

 最近リーさんは火力不足を心配してましたから。

 

 

 

 その日、ブンブクが話を聞いた達人とは、猿飛ヒルゼンの盟友、口寄せ動物の「老猿・猿魔」であった。

 ヒルゼンの呼ばれたブンブクはいつものごとく化け狸の文福となってヒルゼンの好奇心を満たすため、古代の話をしていた。

 そこでヒルゼンが、己の口寄せ動物である猿魔を交えて話してみたらどうか、と言いだしたのである。

 猿魔は文福ほどではないにしても老齢で、それにふさわしい知識を持っていた。

 また、自身も化け猿であり、手先が器用で武術なども嗜んでいた。

 そのため、文福からブンブクに戻った際、友人連で話していた「ガードブレイク」について尋ねてみたのである。

 まあ無理だろう、話のネタにはなるだろうが、そんな気楽な気持ちで言ってみたのだが。

「ああ、そう言えばそんな話も聞いた事があったなあ」

 という、予想外の答え。

 なんでも昔聞いた話ではっきりしたことは言えんのだが、という注釈つきであったが。

 猿魔の祖父の祖父のそのまた祖父が始祖たる四尾から聞いた話だという。

 

 昔々のその昔、武術の才能のない少年が、怪物じみた師匠たちから鍛え(いぢめ)抜かれる話。

 その中で少年は努力に努力を重ねて、1つの技を習得します。

 それは観察と身体制御の賜物。

 人は攻撃を防御する際、防御しているからこそ意識から外れた個所が出来るとのこと。

 そこを見つけ、全身の力を結集して打ち抜く事で防御を抜き、その下の力の抜けている場所を打撃する事が出来る技。

 そんな技を身につける事が出来たのです。

 

「こんな感じだが。タイトルは、…ええっと忘れちまったのう。

 あの頃は、そっちの話よりも、七竜玉奇譚の方が面白くってなあ…」

 そんな話を猿魔がしていたのであった。

 

 

 

「…て事なんですけど、体術で再現できたりしますか?」

「…ふむ! 面白い!

 確かに、防御しているからこそ、その周辺には意識が行かんもんだ!

 ならば、それを突くのも忍としては正しかろう!

 数日時間をくれい!

 必ずや形にして見せようじゃないか!」

 ガイさんがそう言ってサムアップをしてくるのを、僕とリーさんは期待を込めてみていた。

 それが、あんな事になるなんて…。

 

「いよっし! 今日はこの『猛毒雀蜂』の群れと戦ってもらうぞう!

 大丈夫! 解毒薬はたっぷり持ってきたからただ死ぬほど痛いだけだ!」

「今日は『死の森』を全力疾走だ! 後ろからオレが追いかけるから追いつかれないようにしろ!

 なあに、追いついた瞬間にこの『でこピン』を打ち込むだけだ! 死ぬほど痛いだけだから安心しろ!」

「大丈夫だ!」

「問題ない!」

「死ぬな!」

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 地獄の猛特訓に次ぐ猛特訓。

 特訓の好きなリーさんですら、「特訓」の一言でがたがたと震えあがるようなとてつもないものでした。

 おかげで、

「ふんはっ!」

 リーさんはガイさんをして顔をしかめるような蹴り技を繰り出す事が出来るようになったのです。

「見事だ! リー!」

「ありがとうございます! 先生!」

 がっしりと抱き合う師弟。

 …正直羨ましい。

 結局僕は習得できませんでしたともさ、ええ。

 リーさんの習得した体術ですが、「木の葉颪(このはおろし)破城(はじょう)」という名前になったそうです。

 しかし、この技ってもしかして対写輪眼の対策に使えそう。

 これ自体は防御の厚い所に打ち込むただの強烈な蹴り技、というだけにすぎない。

 何処に蹴り込むかは技、というよりは戦術の概念に入る部分だろうし。

 チャクラの流れを見る白眼ならある程度は分かるかも。

 でも、初見でこの体術の本質を見抜くのは無理だろうなあ。

 これ、初見殺しとしてはもの凄い有効なのでは?

 ちなみに後日日向ネジさんとテンテンさんもこの地獄の特訓を受けたそうですが、テンテンさんはともかく、ネジさんも習得は不可能だったそうです。

 なまじ「白眼」というチャクラの流れを見切る血継限界があるために、どうしてもそっちに頼ってしまうのだそうで。

 でも、リーさんの剛拳に対してネジさんの柔拳かあ。

 なんかこう、思いつきそうな気が…。

 

「…勘弁しろ…」

 

 

 

 閑話9 狸と猫ととんでも忍具

 

 ここは空区。

 数度の「忍界大戦」による戦災の爪跡が未だに残り、かつてあった大都市は廃墟と化している、そんなことろです。。

 ほとんどの建物は倒壊寸前で使い物になんなくなってますし、廃墟の間にバラックが立ち、またそれが廃棄されることで、まるで迷路のように入り組んだ道がその奥に人が来るのを拒んでいる、そんなところ。

 そんな中に僕は来ています。

 木の葉隠れの里の中にいると、戦争ってもの凄く遠い事のように思えるけど、ちょっと里や都を離れるとこういった廃墟が火の国のあちこちにある。

 これは全て3度の「忍界大戦」の影響。

 これを起こさないようにしたい、それはどこの里でもおんなじだろう。

 とはいえ自分の里の利益は維持しておきたいし、その思惑が戦争に人を駆り立てる。

 本当に因果なものです。

 人の本質は相争うものなんでしょうか。

 まだ、誰かがこの世界を混乱させたがっている、とか言う物語であればねえ。

「ホノレンジャー」とかみたいに、悪の大魔王がいる世界ではないですから。

 …ちょっと気が滅入ってきました。

 まあ、とにかく、こういったところはかなりの割合、ゴロツキや抜け忍、脛に傷持つ方々の隠れ家になっているわけですが、同時にそう言った方々との非合法の商売を行う商人さんの居城ともなる訳です。

 そして、こういう所でないと手に入らない情報や物もある訳でして。

 そう言った非合法の商人さんと今回僕は会う事になっておりまして。

 まあ、顔つなぎを兼ねた忍具の購入なんですけどね。

 一見おんなじ所をぐるぐると回ってる感じですが、最近嗅覚が発達してきた僕にはごまかしは通用しません。

 路地を抜け、倒壊した壁を乗り越え、ぽっかりと日のあたる場所につきますと。

「ここまで来るやつは珍しいな」

「ここに何の用だフニィ?」

 猫さん2匹の登場です。

 もちろん話のできる、という事は妖魔化した忍猫でしょう。

 特にこの一帯を支配している「猫バア」さまは商才のある方だそうで、主に忍具を取り扱っている方と聞いてます。

「失礼いたします、御二方。

 僕は木の葉隠れの里の忍、茶釜ブンブクと言います。

 今日は皆さまに面通しを兼ねましてご挨拶に来ました。

 まずはこちらを収めてください」

 僕が差し出したのはまたたびエキスが詰まったボトル。

 化け狸の里から様々な方向を経由して手に入れたそこそこ質の良いものだ。

「ふん、礼儀は分かってるようじゃないか」

「あら、なかなかの質フニィ」

 好評なようでなによりです。

 まあ、実際はこのまたたびボトルを入手できる事がここでの買い物をするためのパスポートだったりするわけですが。

 なんで、このボトルを偽造したりするとここから生きて帰れない、ということらしいです。

 おっかないです。

 で、どうやら通してもらえる事になりまして。

 彼らの後を付いていきますと、バラックの廃墟の中、1つだけ火の灯ったところがありました。

 中に入りますと、猫だまりの中、「猫耳」を付けた老婆がキセルをくゆらせて座っていました。

 

「ふん、でウチとどんな取引がしたいんかね?」

 猫耳老婆の「猫バア」さまは開口一番、そう言ってきました。

「ええっとですね、実はちょっと物騒な忍具を作ってもらいたいと思いまして…」

 僕は胸元からいつもの「じゆうちょう」をひっぱり出すと、その概念図を猫バアさまに見せた。

 猫バアさまはしばらくじっとその図を見ていたのだが、

「あんた、馬鹿だろ」

 ひどい!

 開口一番がそれってどうかと思うんですけど。

「もしくはいい感じに狂ってるねえ」

 うれしくないってばよ…。

 馬鹿か物狂いの二択ですか。

「あんた、なんかに憑かれてやしないか、ってことさね」

 なんですかそれは、今度は憑き物筋ですか?

 大概の場合、それって突然変異的に発生した血継限界だったりするんですけどね。

 僕は自分のチャクラ不足を、なんとか忍具とかで補おうとしているだけなのですが。

「まあいい、こんな馬鹿げたもんでも、うちの連中なら作ってのけるさね。

 御代は出来上がった時で良いよ。

 10日ほどしたらまた来な。

 とりあえず問題があればそんときに直すとしようかね」

 あい、了解です。

 

 他の任務とかをこなしているうちに10日が経ち、今日は猫バアさまの店へ僕考案の忍具が出来上がっているかどうかの確認をする日です。

 うまくいってるならテンテンさんあたりにも自慢するつもりです。

 前回のように、またたびボトルをパスポートに猫バアさまの所へ伺います。

「ほれ、出来たよ。

 なんでも職人たちも似たようなもんを考えたんだそうだけど、発射時の反動を抑える方法が見つからなかったってんでね。

 あんたのくれた概念図のおかげで反動を逃がす方法が見つかったらしいよ。

 まあ、元々あった失敗作を成功に持って行ってくれたんだからというんで今回はロハにしといたげるよ」

 え! ラッキー!

 それはありがたいなあ。

 ぼくの懐具合は潤沢、というわけじゃないから。

「で、坊やはこの忍具に何て名前を付けるんだね。

 職人どもも、あんたに名前を付けてほしいって言ってたよ」

 なるほど。

 それじゃあ…。

「十方飛丸。

 殲滅戦用忍具、『十方飛丸』でお願いします」

 

 

 

「十方飛丸」と名付けられた忍具を見て、猫バアはため息をついた。

 これは下手な連中には売れない。

 猫バアはこの簡易型殲滅用兵器、とでも言うべき代物が金にならないことを嘆きつつ、また、これからもブンブクによってこのような奇体(けったい)な忍具の製造が持ち込まれるであろう事を考えて、内心頭を抱えていた。

 職人どもは、是非ともブンブクに会わせろ、などと言っていたが、こんな危険物をあんな危険物どもに会わせたりしたら、どんな凶悪な化学反応を起こすかしれない。

 絶対に拒否、である。

 ブンブクが知ったなら、「僕は潔白だよ! ピュアだよ!」と地団太を踏むであろう事を考えながら、このひと癖どころでない少年とどう付き合っていこうか、そんな事を猫バアは考えているのだった。

 

 

 

 閑話10 暗躍とその副作用

 

 とある廃墟にて。

 カシャリ、カシャリと何か、金物を打ち壊すような音が聞こえる。

「フム、コレデコノ廃村ニアルモノハスベテカ…。

 マッタク、チノカマノ一族ニハ面倒ヲ掛ケサセラレル…」

 昼なお薄暗い倒壊しかけの家屋の中、家の中にあった全ての食器をいかにも面倒くさそうに破壊している黒い影があった。

 男なのか、女なのかも分からない、その黒い影は、ぶちぶちと愚痴のようなもの、というか愚痴そのものをこぼしながら、食器を破壊していく。

「生キテイル者達二無用ノ情報ヲ渡スワケニハイカナイカラナ、什器化シタ末端ノ処分二終始シナケレバナラナイ」

 いかにもうっとうしそうな態度で作業を進める影。

 しばしの後、影は全ての食器を破壊し、廃墟より去っていった。

 

 No.26EE、100E、9CF、14D、32Bヨリノ信号途絶。

 アクセス権限ヲ301C二移行。

 繰リ返ス。

 No.26EE、100E、9CF、14D、32Bヨリノ信号途絶。

 アクセス権限ヲ301C二移行。

 繰リ返ス……




いろいろ突っ込みどころ満載の閑話集でした。
いちおうここのネタは伏線でもあります。

naruto疾風伝において「土蜘蛛」に関しての記述があるようですので、鬼童丸の使役する口寄せ動物の名前を「土蜘蛛」から「鬼子母蜘蛛」に変更いたします。
コモリクモと鬼子母神さまの関わりで設定しなおしました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。