今日はテンション上がっております、茶釜ブンブクです!
うずまき兄ちゃん、帰ってまいりました。
自来也さまと一緒に、千手綱手さままで連れ帰ったのです。
いやあ、火影邸に行く途中で会ったんだけど、凄いね。
ああいうのを女傑、というのでしょうか。
綱手さまの事なんですけどね。
見たところ、姿勢とかは自来也さまの方が良いんだけど、何というか、内包しているパワーが違う感じ。
力押しだけで大概のものを粉砕しそうな、とても人間とは思えない力を感じる方でした。
なんかこう、ね、ないはずの尻尾が股の間に入りこんできそうな、そんな野生を感じました。
あの人には逆らっちゃだめだろう、そんな気がするんです。
どうやら兄ちゃんもそれを感じ取っている様子でして。
絶対逆らわねえ、って気配が伝わってきます。
その方に普通に接することのできる自来也さま、尊敬します。
ちなみにしっかり「じゆうちょう」に綱手さまのサインもらいました。
むふふ、これで伝説の三忍のうち、お2人からサインをもらいましたよ。
さすがに大蛇丸さんからは無理だろうけど。
聞きたい。
兄ちゃんにどんなすっげえ忍術を体得したか聞きたい。
いや、何というのでしょうかね。
兄ちゃん、一段強くなったのが見て取れるんですよ。
多分だけれども、戦いの中核を成す、必殺技みたいなのを手に入れたんだと思います。
うちはサスケさんの「千鳥」みたいな、戦術の基盤になる技です。
実力に裏付けられた自信、みたいなのが兄ちゃんから感じられるんですよ。
そうなると、やっぱり聞いてみたいじゃないですか。
聞けないですけどね。
だって、忍の術って知られたら対策をとられちゃう事もあるじゃないですか。
だから普通はどんな術が使える、とかは担当上忍とかじゃない限り知らないのが普通ですからして。
問題は兄ちゃんの場合、聞かれたらぺらぺらと話してしまいかねない事なんですがね。
だから、下手に聞いて自来也さま、はともかく、綱手さまにお説教をくらうのは僕としてもちょっと避けたいところ。
なのだけど。
「へっへっへっ!
なあ、ブンブク、オレがどんなすっげえ術会得したか知りたくねぇ?
知りたいだろ、な!」
兄ちゃんから言ってきたなら良いよね。
自来也さまとか綱手さまはジト目でこっち見てるけど。
後から兄ちゃん説教フルコースだな、こりゃ。
とはいえ、僕も知りたいのですよ。
だから、
「知りたいに決まってんじゃん!
ねえどんなん!? どんなんだってばよ!?」
ワクワクが止まらない!
「おう、やっぱ知りたいかあ!
どっしよかなあ、教えちゃおっかなあ!?」
そこで煽りますか!
もう世間の眼なんて知らんもんね!
この好奇心に嘘は付けない!
「知りたいです!
おねがいします兄ちゃん!
いやさうずまきナルト大明神!
未来の火影、木の葉の救世主!」
頑張って持ちあげちゃうよ!
とかやってたら、
「なにやってんだい! このすっとこどっこいどもが!!」
という声ともの凄い衝撃と共に、
すっぱーん!
と僕たちは空に打ち上げられていた。
ああ、空が碧い。
綱手さまにぶったたかれて宙を舞った僕たちは、その後、正座をさせられて小一時間ほど綱手さまのお説教を受ける事になりました。
「まったく…、忍術をなんだと思ってるんだい、あんた達は!
見世物じゃないんだよ! まったく…」
そろそろ足がしびれてきました。
兄ちゃんもおんなじ様です。
「まだ反省が足りないかね…」
そんなことありません!
もう勘弁して下さい!
というかですね、砂利道に直で正座ははっきり言って児童虐待ではないかと!
「あん? なんか言いたそうだねえ…」
いえ、なんでもないですぅ(涙)。
「おい綱手、そろそろええんじゃなかろうかのォ?
このアホどもも反省したんじゃろうしのォ」
「おう、反省したってばよ!」
「はい、反省いたしました!」
「お前らなあ、なんでまたこんなに息ぴったりなんじゃろうかのォ…」
まあ、ほぼ兄弟みたいなもんですし。
綱手さまはため息をひとつついて、
「いいかいあんた達、
忍術ってのは己が頼ることのできる必殺の武器だと思いな。
それだけにむやみやたらと人の話して良いもんじゃないんだ。
こと、こんな往来で話す事でもないの。
誰が聞いてるとも知れないとこで話して良いもんだじゃないんだからね。
分かったかい?」
そういうと、僕達をひょいと持ち上げて、立たせてくれた。
…のは良いんだけど。
「はうっ! あ、足があぁ!!」
しびびびとしびれるこの足の感触があ、何とも気持ち悪い!
兄ちゃんも何とも言えない表情で悶絶してる。
ちょ、ちょっと自来也さま! その「にやあ~っ」とした顔は何故に?
その手に持ってる木の枝は何ですか!?
それやめましょうって! ね!?
はうっ、突っつかないで! なんかもにょもにょする!!
うにょらぁ~~~!!
兄ちゃんと共に散々自来也さまにもてあそばれた僕たち。
すっかり息も絶え絶えで、綱手さまの従者のシズネさんに看護してもらってやっと動けるようになりました。
ああ、ひどい目に遭った。
やっぱり感情のままに動くとロクな事にならないねえ。
理性の重要さを再確認いたしましたよ。
兄ちゃんの必殺技はみたかったけど、まあそれはしょうがない。
兄ちゃんが無事に帰ってきたことで良しとしよう。
で、
「兄ちゃん兄ちゃん…」
「? なんだってばよ、ブンブク?」
ぼくはこっそりと兄ちゃんの耳元で言う。
「自来也さま、やっぱりエロに走ってたの?
兄ちゃんがエロに染まると後が大変だから、今の内に確認しときたいんだけど」
兄ちゃんは何とも言えない顔をして、
「まあ、エロ仙人はエロ仙人だからなあ…」
諦めた、もしくは呆れたように言っていた。
うん、この様子ならサクラ姉ちゃんたちに告げ口する必要はなさそうだね、よかったよかった。
「…なんかいま、命拾いしたような気がするってばよ」
「気にしない気にしない」
何ぞという会話を楽しんできたところ、
「…おい、チビ」
誰がチビですか!
「反応しとる時点でチビじゃわいのォ。
ま、それはさておきブンブクよ。
ナルトの習得した忍術、そんなにみたいかの?」
「はい、もちろん!」
あ。
即答した僕はまたも焼くるであろう正座の恐怖に怯え慄いた。
が、
「たしかに、忍にとって術は他者に早々見せて良いもんではない。
だがの、その術を見てもらって他者の発想を取り入れることでその術がより完成度を増す事もあるんでのォ。
ちょいと演習場によって、ナルトの修行の成果を見てもらうのも良いかも知れん、そう思っての。
どうじゃ、お前さえよければ、だが…」
「ぜひに!」
自来也さまはにやりと笑うと、
「綱手、ちょいと寄り道するでのォ」
そう言って近場の演習場の方へ足を向けたのである。
綱手は自来也がなにを考えているのか分からなかった。
ナルトの弟分だという少年、茶釜ブンブク。
千手綱手にとっては不気味な一族の少年である。
初代火影・千手柱間は綱手にとって祖父にあたる。
千手一族はうちは一族と並び、忍界最強を謳われた名家である。
子どもの頃の綱手はそれが誇らしかった。
千手とうちはが手を結び、火の国に里を起こしたのだから敵はいない、そう全国のだれもが考えただろう。
木の葉隠れの里と名付けられたそこに、さまざまな忍の一族が自分達もその同盟に参加しようと集まってきたものだ。
そう、向こうから参加させてくれ、と頼みに来た訳である。
それだけ千手とうちはの名は忍界に轟いていたのである。
さて、木の葉隠れの里を立ち上げる際、祖父である柱間は、うちはのほかにもある一族に声をかけていた。
それが茶釜の一族である。
茶釜の一族は古くから名は知られているものの、特に精強であるという話は聞かず、忍の間では話題に上がる方が珍しい、そんな凡庸な存在である。
確かに、火の国を治めている大名には大きな信を得ている。
そのために、木の葉隠れの里を創設する際、茶釜の一族が参加している事を知った他の忍の一族は、「大名に媚びるか。忍は己が術を持って立つべき存在ではないのか」と嘲笑われたという。
まあ茶釜の一族の者たちがその蔭口をものともせず、木の葉隠れの里を忍五大里の筆頭として守り立てた歴代の火影たちに影ながら尽くしたのもまた事実。
木の葉隠れという大樹、その日蔭にひっそりと存在し、光と影、その更に裏側で支えてきた一族。
綱手にとっては木の葉隠れの影を率いてきたダンゾウ、その後継者が木の葉の裏に潜んでいた茶釜のものであるというだけで胡散臭さが飛びぬけているように思えていた。
その茶釜の天才児、または問題児にナルトの習得した秘術を見せるという。
ただの忍術ではない。
4代目火影・波風ミナトの編み出した単体攻撃としては最強クラスの破壊力を持つ「螺旋丸」である。
そうそう人に見せて良いものではないと思うのだが。
まあ、忍の育成に関しては綱手を超える実績を持つ自来也の事だ、何か考えがあるのだろうが。
時々こいつはとてつもなく間抜けな事をするからなあ。
自来也が知ったら滝のような涙を見せる事請け合いであろうことを、綱手は考えていた。
まさか、この子どもに籠絡されているわけでもないだろうに。
自分の祖父が茶釜の一族のものをずいぶん信頼していた事を綱手は思い出した。
同時にあのうちはマダラですら敬意を払っていたとも聞く。
茶釜の一族には何かあるのやもしれない。
今代の火影・志村ダンゾウもそれを知っているのだろうか。
綱手が木の葉隠れの里に戻ってきたのはあくまで医療忍者として、のつもりであるが、実際のところ里の上層部としては時代の火影の育成のため、というつもりでもあるだろう。
もはや3代目火影・猿飛ヒルゼンの現役復帰はないだろう。
大蛇丸との戦いでその肉体は大きく損傷した。
それは身体に宿るチャクラの量が大幅に減少したことにもつながる。
元々高齢であり、チャクラの保有量が下がっていたところにこのダメージである。
若いころの回復力があるなればともかく、今の年齢では衰える一方であるからだ。
そして5代目火影・志村ダンゾウについても同じこと。
ヒルゼンと同年齢のダンゾウが火影になったのも、その後継がいないからだ。
そろそろ自分達も覚悟を決めねばならないのだろう。
綱手はそう決意して里に戻ってきたのである。
それなのに…
「おう! そうじゃのォ、確かに『ド根性忍伝』はワシの書いたものの中では最初期のシロモンだがのォ!」
「はい! だからこそ、熱いんじゃないですか!
自来也さまの思いのたけとか、実際に感じた事とか、僕らにとっては値千金なんですって!」
「え~っ、だってオレ漢字嫌いなんだってばよ」
男3人がばか丸出しな会話をしているのを白い目(白眼にあらじ)で見ながら綱手はため息をつくばかりだった。
さて、僕たちは手近な演習場に着きました。
丁度、訓練をしている人たちもいません。
「よしナルト、修行の成果を見せてみい!」
自来也さまがそういうと、印を結んで土壁を作りました。
これを的にするんでしょうが、ちょっと丈夫すぎません?
土壁っていうか、石の壁なんですけど。
逆に言うと、兄ちゃんが手に入れた術ってのはこの強度を破壊できる代物ってことか。
そんな事を考えていると、
「よしナルトよ、やってみせい!」
そう自来也さまが言うのに合わせて、兄ちゃんが2人になる。
お得意の影分身だ。
影分身からの攻撃なら確かに火力は高くなりそうだな。
そう考えていたんだけど。
「いくってばよ!」
そう2人の兄ちゃんが叫んだかと思うと、
「うおおぉ!!」
2人分の両手を使って何かを包むように覆うと、その中に力の塊が生まれた!
これって術!?
力の塊はものすごい勢いで回転している。
なるほど、巨大な力を凝縮、乱回転させることでさらに凝縮を増してるのか!
ほどなく野球のボールサイズにまとまった濃厚な力、それを兄ちゃんは石の壁に叩きつける!
「これが『螺旋丸』だあぁっ!!」
石の壁は「ボグン!!」という音と共に一瞬で砕け…なかった!
螺旋丸が当たったところ、その部分がごっそりと削り取られ、腕が通り抜けそうな空洞が出来ている。
つまりこれは、衝撃がその一点にのみ集中した結果なのか。
次の瞬間に、石の壁にはその空洞を中心にピピッとひびが入り、ガラガラと崩れていく。
…これはシャレになんない。
僕はごくりと唾を飲み込んだ。
しかもこの「螺旋丸」印を組んでなかったよね。
ってことは、どっちかっていうと忍術というよりチャクラのコントロール技術ってのなのかもしれない。
そうなるといろいろいじれそうな予感がする。
「ブンブクよぅ、何か考えておるようじゃのォ…」
自来也さまが興味深そうにこっちを見ていた。
「あ、はい…」
僕がさっき考えていた推論を披露すると、
「ほう! よう分かったのう!
たいしたもんじゃ!」
自来也さまはそう褒めてくれた。
結構うれしい。
「? なあなあ、それってどういうことだってばよ?」
兄ちゃんにはやっぱり難しかったかあ。
つまりだね。
「忍術と幻術は基本的に両手で印を結ばないと使えないでしょ?」
「? まあそうだな」
「兄ちゃん螺旋丸を使う時印って結んでる?」
「そっか、印を結んでない!」
「で、普通チャクラってただ放出するならパアッとただ出て行くだけなんだけど、兄ちゃんの螺旋丸はチャクラをこう球状にまとめてグルグルと回してるんだよね」
「うんうん」
「そういう風に、本来ならただ出て行って散るだけのチャクラをまとめたり、形を作ったりする事をチャクラの形態変化っていうんだけど」
「あ、これが形態変化ってやつか! 授業でやった時ぜんっぜん分かんなかったてばよ!」
「分かってよかったね、兄ちゃん。
で、チャクラには性質変化っていうのもあるんだけど」
「ああ、せいしつへんかね、せいしつへんか」
「…なるほど、分かってないのが分かった。
で、性質変化ってのは、チャクラには “火”“水”“土”“雷”“風”の5つの性質があるってことだけど
ただチャクラを放出するんじゃなくて、そのチャクラに火の性質変化を与えることで、火遁・炎弾とかになる訳」
「な~る。
印を組むのもその性質変化ってのをするためなんだな!」
「そっそ。
んで、兄ちゃんの螺旋丸だけど、形態変化を極限までやった結果なのさ。
んだから、そこに性質変化とかくわえられたらすっごいことになるんじゃないか、と思ってさ」
「ん~、どうなんだ?」
「ナルトよう、お前もうちいっと頭を使うべきじゃのォ」
まあしょうがないよね、兄ちゃんだし。
綱手さまとシズネさんも呆れてるね。
しっかし、綱手さまってホントに人間なのかしら。
もの凄いチャクラをため込んでる可能性がある。
というのも、シズネさんのペット? なのかな、豚のトントンくんなんだけど、綱手さまに内在するチャクラの影響を受けているらしく、妖物化しつつあるようなんだよね。
いわゆる口寄せ動物とか、忍動物の類いに進化しつつあるという事。
よっぽどチャクラの保有量の多い妖魔の近辺にいないとそんなこと起きないはずなんだけど。
それに豚って人間に近い生き物だったかしら。
チャクラの保有量が多くても、比較的近しい生き物でないと影響を受けづらいはずなんだけどねえ。
“まあ、なにせ千手の一族の姫ですからねえ、内在するチャクラの量も怪物じみているはずですよ”
あ、やっぱりそうなんだ。
そんな事を考えていると、
「でよう、ブンブク、螺旋丸に性質変化を加えるとどうなるんだってばよ?」
兄ちゃんからそう聞かれた僕は、
「そうだねえ、例えば火の性質変化を与えたら、高熱を発して周囲を溶かし、その内側で螺旋丸のエネルギーが爆発するような感じ?
あとは、土の性質変化なら、螺旋丸の表面に砂とかが高速移動する感じで、接触したところをやすりみたいに削っちゃうとか?
いずれにしても人間相手だとオーバーキル、過剰な破壊になりそうだよね」
「なんかすっげえな!」
「とはいえ、螺旋丸だけでももの凄い修行が必要でしょ?
そこに性質変化足すとか尋常じゃない修行が必要になりそうだし、それを指導できるひとってどれくらいいるのかしらん」
自来也さまならなんとかなるんじゃないかという気もするが。
「あとはあれかな」
「! なんかあるのか!」
なんでそんなに食いつきが良いんでしょうか。
ほぼいま僕が言ってる事なんて机上の空論以前の妄言にしか過ぎないんだけどね。
「兄ちゃんは思いっきりチャクラを放出して螺旋丸を作ってるでしょ?
それよりも、半分くらいのチャクラ量で螺旋丸を作ったらどうなるかと思ってさ」
「それって弱くなるだけじゃねえの?」
単純な力ならそうなるんだけどね。
「兄ちゃん、人ってハンマーでぶったたかれても死ぬけど、クナイが急所に刺さっても死ぬでしょ」
「物騒な事言うなあ、まあそうだけど」
ようは力を集中できるかどうかだ。
力そのものは抑えても、それをより集中、凝縮できれば貫通力という破壊力は上がる訳で。
「だからさ、力は半分でも、圧縮率を上げるとさっきの倍の厚さの石壁が撃ち抜ける事になる訳」
まあ、兄ちゃんと違ってチャクラの量が少ない僕だから、の発想なのかもしれないけどね。
「ふうん、面白いこと考えるねえ、ナルト、後で試してみな」
綱手さまがそういうのだから、きっと兄ちゃんにとっても有効だと思うんだよね。
「ああ、まだ螺旋丸を1人じゃうまく作れねえからな、それが出来るようになったらやってみるよ」
それが良いと思います。
兄ちゃん達が帰ってきた数日、僕は今日も今日とて病院通い。
学校は始まって別に病院でボランティアをしなくても良くはなっているものの、まだまだ人手不足は解消しておりません。
ですので放課後の時間は手馴れてきた病院でのお手伝いをする事にしているのですよ。
しかし、兄ちゃんの必殺技と言っても良いだろう、「螺旋丸」は燃えるね!
エネルギーの塊を相手にぶつける王道必殺技!
兄ちゃんにぴったりだと思う。
そういえば、うちはサスケさんの使う「千鳥」は雷遁を手に纏わせた突撃だったっけ。
こっちは言うならば性質変化を極めた技なのかな。
なんというか、ほんとに兄ちゃんとサスケさんって対照的なんだよねえ。
その割にどっかに通ってる所があるような気がしてしょうがない。
こんなこと言ったら2人に怒られるような気もするけど。
そういえば、サスケさんは今日か明日あたり退院なはず。
綱手さまが見てくれたおかげでサスケさんも状態に問題がない事が分かり、念のための検査で今日まで入院という事になっていた様子。
一方リーさんの方は余りよろしくない状況らしい。
手術をすれば回復の見込みはあるものの、命がけの危険な手術になるとの事で、僕としても心配なのです。
リーさんはかなり落ち込んでいて、慰めの言葉もありません。
ひとつ、前にも言いましたけど、チャクラを分断された神経の代わりにして体の中を通る信号をバイパスしてやる方法ですが、さすがに傀儡使いとかでうちの里で有名な人たちってのもいないですし、情報が足りないんですよねえ。
どうも、問題の解決に時間がかかってしまうのが今の僕の限界。
対幻術対策もいま一つぱっとするものがないのが残念。
もうこれはうずまき兄ちゃんにサスケさんやリーさんを元気づけてもらうのが良いのかもしれません。
…一抹の不安をぬぐい去れないのがどうかとも思いますが。
兄ちゃんたま~に大外れやらかす事がありますから。
…とか考えていたところなんですが、……?
なんか屋上の方がうるさい感じ。
なんだろ… そう思って窓から上をのぞいてみると!
…病院であのひとたち何やってんの!
向かいの棟の屋上で無数のうずまき兄ちゃんとどうやらサスケさんらしい人が殴り合いの喧嘩をしておりました。
まったくもう!
僕は窓から雨どいを伝い、屋上の兄ちゃんたちにお説教をするために彼らのとこへ向かったのです。
病院の屋上にて、うずまきナルトとうちはサスケの一騎打ちが行われていた。
見守るのは春野サクラ。
戦いは佳境。
ナルトの影分身の連弾により空中に弾き飛ばされたサスケ、しかしナルト達の頭上をとった利を生かし、うちは得意の火遁・豪火球の術で影分身たちをなぎ払う。
しかしナルトもさるもの、この攻撃を予測していたか、炎を目くらましに残り1人の影分身と共に「螺旋丸」を練り切っていた。
空中にて足場のないサスケ。
だからと言ってむざむざやられてやるつもりはない。
ナルトが螺旋丸を叩きつけようとするタイミングを見計らい、自らも「千鳥」にて迎撃を試みていた。
今にも激突せんとする「螺旋丸」と「千鳥」。
その瞬間。
はたけカカシが割って入り、2人を弾き飛ばした。
サスケはいら立っていた。
カカシに弾き飛ばされ、ナルトとサスケは双方反対側の貯水タンクに技をぶつける事になった。
サスケの「千鳥」の激突したタンクには大穴があいていた。
なぞの忍術にて自分を打ちのめそうとしたナルトの技の当たったタンクは小さなくぼみが付いただけ。
まだナルトと自分の差は大きい。
無意識にそう安著したその後。
ナルトの打ちこんだ貯水タンクのその裏。
巨大な穴が開いていた。
まるで中からはじけ飛んだようなその痕。
螺旋丸はタンクの表面を削り取り、その内部で巨大な力を炸裂させた。
その力はタンク内の水を伝わり、突きぬけ、タンクを内側から爆発させたのである。
サスケは自分とナルトとの差が逆転した事を理解してしまった。
ナルト、お前はいったいどこまで…。
サスケが自身の思いを持て余しているその時だった。
「2人とも、病院の屋上で何やってるんですか!」
重苦しい場に、道化師がなだれ込んできたのである。
全く何やってんだか!
僕の目の前にはサスケさんがいる。
病院は建て増しに建て増しを繰り返し、かなり無茶な作りになっている。
屋上部分のさくを乗り越えると、丁度下の階のひさし部分が増築によって付けられているのです。
で、サスケさんはそのひさし部分に立っています。
兄ちゃんはサスケさんをフェンス越しに見降ろしていますが、何とも言い難い表情をしています。
「2人とも、屋上でドンガラドンガラうるさいです!
ここは重病人もいるんですからね! まったくもう…」
兄ちゃんは気まずそうな顔をしています。
サスケさんは、
「うるせえよ! どけ…」
睨みつけてますが、ここでビビる訳にはいきません。
「サスケさん、それで『倒すべきものがいる』ですか?
笑わせないでください」
挑発をしてみると見事に引っ掛かります。
「なんだと!」
「だってそうでしょ!
兄ちゃんと喧嘩とか、してる暇あるんですか!?
ただでさえ長期入院して体力落ちてるってのに、そんな状態で戦うとか、体を壊そうとしてるとしか思えません!
それじゃあいざ本命との戦いになった時に十全で戦えるんですか!?
相手は強いんでしょう!?
そんな相手に弱った体じゃ何にもできないです。
ぼろ負けするのがおちじゃないですか…」
それではだめだから敵の分析、自分の分析をしていたんじゃないですか。
体を壊したらそれが全部無駄になっちゃうっていうのに。
…なんかサスケさん単純暴走説がにわかに色彩を帯びてきてしまったなあ。
「…うるせえよ」
サスケさんは最初の勢いを失って、僕を押しのけるようにしていってしまった。
…行かせてよかったのだろうか。
でもここで頭を冷やしておかないとまずいだろうしなあ。
少し時間を置いてからまた話してみよう。
この時の判断を、僕は後々まで後悔する事になる。
さて、と。
何話しこんでいる大人2人と子ども2人。
そこに僕は割り込んだ。
「ではナルトはお任せします。
ま、私も任務があるし…。
千鳥の事もあるので」
自来也さまにそう言ったカカシ上忍はサクラ姉ちゃんの前に降り立つと、
「大ジョーブ!
また昔みたいになれるさ!」
そう言って去ろうとする。
「はいちょっと待ったー!」
僕はそういうと去ろうとするカカシ上忍を呼びとめた。
「…オレ、今いそがしいんだけど」
「それは分かります、はい! 自来也さまも逃げないでね! 綱手さまに言いつけますよ!」
僕は自来也さまも呼びとめた。
「みなさん、ここはどこだと思います」
「ま、病院だよね」
そう、病院なのだ。
そして、病院ではもの凄い量の水を消費するのである。
その貯水タンクが2つも破壊された訳で、下手をすると病院の働きがマヒしかねない状態になっているのですよ、今。
それを説明するとさすがに大人2名は青くなった。
なにせ「木の葉崩し」の際の負傷者は1000人を優に超えるものだったのです。
未だに気を抜けない患者さんも結構いらっしゃいます。
そんな状況で水が使えなくなったなら…。
おおごとなんです!
なので、
「口寄せ・器具召喚!」
我が家に伝わる口寄せで100を超えるブリキのバケツを召喚。
で、
「大人の人たちはタンクの応急修理をお願いします。
終わったらタンクに水入れるの手伝ってください。
僕とサクラ姉ちゃんはこのバケツで川まで水を汲みに行きます。
ごめんね、姉ちゃん。
どうしても手伝ってもらわないとまずいんだ…」
あとから姉ちゃんには穴埋めしますから。
「で、兄ちゃんは影分身でバケツリレー。
極力早めにタンクを水でいっぱいにしないと!」
「えー、めんどくさいってばよ」
「いやだからオレは任務が」
「伝説の三忍と言われたワシがだのォ…」
「いやというなら…、ここで今必死になって患者さんを介抱している綱手さまにある事無い事吹き込みます、オーケー?」
「……」
おかげで貯水タンク復旧は30分ほどで済みました。
ちなみに、豚という生き物は遺伝子的にも人間に近い部分があったりします。
少なくても八尾さんのようにタコと牛とかよりは近いと思います。