第12話
どうも、なんとか今回の騒動を生き延びる事が出来た茶釜ブンブクです。
あれから1週間、忍術学校も現在お休み中です。
当然ですね、あの事件で先生方にも多数のけが人が出たそうですから。
担任のうみのイルカ先生も音隠れの里の忍と戦って怪我をしたそうです。
そんなに重症じゃなかったのでいまはご自宅で静養中なのだとか。
今、木の葉隠れの里にある病院という病院は患者さんであふれているそうです。
一般の人にはあんまり重たい患者さんはいないとのことですが、忍の先輩方の中には未だに意識不明の重体という方もおられるそうで、お医者様や看護師さんがが足りないのだそうです。
そのため、火の国の殿さまが国中に呼び掛けて、お医者様を派遣して下さるとのこと。
ありがたいことです。
それだけではなく、大蛇丸さんと戦って重体の火影さまのためにお城の御典医である医療忍者を派遣して下さるそうです。
やっぱり火影さまは殿様に信頼されている素晴らしい方なんだなあ。
で、それに従い、いままで里に入ってこなかった人たちも続々と里入りしているわけで、それに混じって不審な人も紛れ込んでくるわけです。
おかげでおっとうやおっかあも詰所や事務所に缶詰め状態となってなかなか帰ってきません。
うずまき兄ちゃんもはたけカカシ上忍と共に里の外周で警備活動にいそしんでいます。
え? うちはサスケさんとサクラ姉ちゃんですか?
あの2人は、現在自宅にて静養中です。
あの我愛羅さんとやりあったのだからしょうがないのです、っていうか、あれだけの激戦を潜り抜けて2日ほどで戦線復帰できる兄ちゃんが規格外なのですけどね。
サクラ姉ちゃんとか、かなり痛い目を見たらしいです。
ちなみに僕はまだ全身が痛いです。
砂隠れの里では何やら大きな動きがあったようです。
さすがにちょっと前に大規模戦闘をやらかした相手ですし、国境とかには一見分からないようにですがもの凄い厳重な警戒態勢が敷かれているとか。
木の葉の腕利きの忍でもなかなか侵入が難しいようです。
それ以上に
正直言って、我愛羅さんたちが気になりますが、今の僕ではどうしようもない事でしょう。
ここから我愛羅さんたちの無事を祈るくらいしかできませんし。
3代目火影さまはやっぱり隠居なさる事になったようです。
非公式ですが忍の間でその事が伝達されました。
流石に一般の方にまでその事が広がるのはこの事件の後片付けが一通り終わってからでしょう。
で、5代目の火影さまに推薦されたのは志村のダンゾウおじいちゃん。
いつもムッスリしてるけど、挨拶をすればちゃんと返してくれるし、小さい頃には飴をくれたりしたいい人だ。
体の右側が不自由な感じで、左手でつえをついて歩いているのをよく見かける。
いわゆる独居老人で、僕が生まれる前に奥さんと息子さん夫婦を亡くしているらしい。
介護とか大丈夫なのかしら、お手伝いさんとか入ってないって聞くし。
周りの人からはあまり良く言われない人で、あからさまに嫌っている人もいる。
実際、家に来る人たちの中にはダンゾウおじいちゃんを「木の葉の闇」だという人もいた。
でもね、本当に悪い人なら3代目さまはおじいちゃんを5代目の火影さまに推薦することはないと思うんだ。
確かに悪く言う人たちのようにもしかしたらダンゾウおじいちゃんはいろいろと汚い事をしてきたのかもしれない。
じゃあなんで5代目火影さまになれるかっていうと、汚い事を自分がすることで3代目が輝いていられるように、って頑張ってたからかも。
里でもどぶ掃除や汲み取りの仕事はいやだけど、そういう事をする役目の人がいないと大変じゃない?
今まで僕は知らなかったんだけど、火影さまに推薦されたってことはダンゾウおじいちゃん、忍だったんだね。
大体火影さま、じゃなくて3代目さまとおんなじくらいのお年だし、ずうっと日の当たらない仕事をしてきたんじゃないかなあ。
それってどれだけ辛いんだろう。
そしてそんな仕事をしてきた人を表に出さなければならないだけ、今回の事件は大きかったのだろうなあ、そう考えてしまう。
僕も来年度の終わりには学校を卒業して忍者になる。
どんな仕事をするのだとしても、里のために頑張っていかなければ。
そう思うのでした。
家にはいま、実質僕だけしかいない状態です。
なので、両親からは「すまないけど、外でご飯を食べてね」とお金を渡されています。
とはいえ、外食ばっかりというのもどうかと思いますし、病院にはいろいろお世話になった人たちが入院してますし、おうちでご飯を作って、余ったお金で御見舞いでもしようかな。
そう考えて、100両ほど手元に残しておいたお小遣い兼食費を握りしめて、僕はまだお店が無事で残っている里の入口付近、土産物屋や買い付けの商人の人たちが使う食堂などが並んでいる区画へと出かけた。
しかし、どうも体が完調ではないみたい。
ちょっとでも急ごうとするとふらっと来る。
まずいなあ、と思っていたところ、案の定人にぶつかってしまった。
「! す、すいません!」
頭を下げたところ、
「少年、気をつけなさい。
体調が悪いのですか?」
さらにふらついてしまい、その人に支えてもらってしまった。
「ありがとうございます、僕は忍術学校5年生の茶釜ブンブクといいます。
お世話を掛けました」
その人、このあたりでは珍しい、青味がかった肌のお兄さん(確か水の国の方にそういう外見の部族の人が住んでいる、とものの本にあった)はにっこりとほほ笑む(サメのようにぎざぎざの歯だった)と、
「うむ、気を付けるように」
そう言って、連れの人と共に去っていった。
うーむ、クール。
ガイさんとは違った方向でかっこいい人だ。
おっそろしく大きな得物を持っていたし、忍か武芸者なんだろうなあ。
連れの人も含みで正中線のピッと通った隙のない歩き方をしてたし、そこらそんじょらの人じゃ勝負にもならないくらい強いんだろうなあ。
ガイさんと戦ったらどっちが強いだろう。
ついつい「最強は誰だ!」みたいな事を考えてしまったけれど、そんな事を考えてしまうくらいさっきの人たちは強そうだった。
流石に僕では無理だろうが、うずまき兄ちゃんやサスケさんはそこまで行けるのだろうか。
その助けくらいにはなりたいもんだなあ、そんな事を考えながら、僕はお見舞いの団子を買いに行くのだった。
門前の団子屋について、暖簾をくぐると、あれ? さっきの人たちがいる。
さすがに素早いんだなあ。
僕は本調子ではないので歩くのもいつもよりゆっくりだった。
それでもよっぽど僕寄り動くのが早いようで、2人とも既にお団子を食べ始めている。
「あ、さっきは失礼しました」
僕がそう言うと、僕を支えてくれた大きいほうの人が「気にする必要はない」と言ってくれた。
せっかく団子を楽しんでいるんだろうから邪魔しちゃ悪いよね。
僕はぺこりと頭を下げて、それから団子屋さんにお願いしてお団子を包んでもらうと改めて頭を下げ…? あれ、もういない。
まあいいや、そう思って外に出ようとすると、目の前にはうちはサスケさんがいた。
「お前、ナルトの…」
「はい、弟分の茶釜ブンブクです!」
おお、サスケさんから始めて声を掛けられた。
お、その隣には兄ちゃんの担当上忍、はたけカカシさんがいる。
待ち合わせでしたか。
近くには大柄な男性と色っぽい女性の忍の方もいて、これから打ち合わせでもするのかしらん。
「おや、茶釜さんとこの坊やか、どしたのよ、こんなとこで」
何とも軽い口調でカカシ上忍が話しかけてくる。
「はい、この前の件でうちの一族の人もずいぶん怪我をしたもんで、そのお見舞いに行くのにお団子を買っていこうと思いまして。
で、中心街のお団子屋さんって、その、まだ再開できていないもんで、こっちまで買いに来たんです」
「ぁあぁ、なるほっど」
カカシ上忍はそういうと、
「んでさ、さっきの2人とはどういう関係?」
ん? さっきの2人って、今までお団子を食べていた人たちのこと?
「はい、さっき転びそうになって、で、それを助けてもらったんです」
「そっか、何か言ってなかった?」
「いえ、調子が悪いなら気をつけるように、って言われただけです」
何かしたのかな、もしかしてまた厄介事?
「いや、それならいいんだ。
ナルトからも聞いてるだろ?
ここ2、3日変な連中が里に入って来てるって情報があってね。
こっちも気をつけてたとこだったんだよ」
なるほどねえ。
里の外周部分を受け持っていたカカシ上忍ならどうしても外から来る人は気になるんだね。
兄ちゃんとかも気をつけないと。
今回の活躍でだいぶ兄ちゃんの評価も上向いたらしいし。
とはいえ兄ちゃんの場合、火事場の馬鹿力的な強さだから安定しないんだよなあ。
それが怖いな。
調子が下向きの時に絡め手を使う忍者とかと戦ったりするとひどい目にあいそうだ。
「うちはサスケさん、兄ちゃんをよろしくお願いします」
「は?」
あ、しまった。
どうやら口に出してたみたい。
「あ、すいません、ちょっとうずまき兄ちゃんが気になったもので」
「なんであのウスラトンカチが気になるとオレにあいつの事を頼むのかが分からん」
…そうだよねえ。
ちゃんと説明しないと分かんないよね。
「ほら、うちの兄ちゃんって意外性はあるけど安定性はないじゃないですか」
「ぷっ」
あ、サスケさん笑った。
すぐにいつもの
ここは見てない事にするのが最善だよね。
「ここぞって時に爆発力はものすごいんだけど、それ以外、例えば絡め手の得意な人とかとぶつかった場合ってかなり不利なんですよ。
ですから、振れ幅の少ない、安定して強い人とかと組んでいるなら僕としては安心なんです」
「…言いたいことは分かったがな、オレにそんな暇はない」
チームを組んでるんだからお互いにかばい合わないと連携も何もないと思うんだけど。
何か事情があるのかな?
僕がそう考えていると、顔に出ていたのだろうか、サスケさんが、
「オレには時間がないんだ、少しでも早く強くならねえと…」
ああ、なんか切羽詰まってるなあ。
こういう時こそ担当上忍の出番じゃ…。
っていないし。
いつの間にかカカシ上忍はいなくなっていた。
一緒にいた男女2人の忍も同様。
お仕事かしら。
さっきの2人連れ関係かも。
まあ、だからと言って僕に何ができるわけでもないわけだけれど。
なんて考えていたら。
「おい、ちょっと来い」
サスケさんに腕を掴まれ、僕は訳が分からないうちに連行されてしまった。
いったいどしたの?
「ゥエヘヘ…」
屋上で望遠鏡片手に銭湯の女湯を除くバカが1人。
言わずと知れたエロ仙人こと伝説の三忍が1人、
「何かすっげえイヤな呼び方をされた気がするのォ、ナルトの奴かの?
それとも…」
自来也が背後を振り向くと、そこには二人の老人が。
水戸門ホムラとうたたねコハル。
3代目火影・猿飛ヒルゼンの側近にして里のご意見番である。
「で、里のご意見番がこのワシになんの用かのォ?」
自来也が嫌味を含めて彼らに言う。
彼らは「木ノ葉崩し」が終結した直後。自来也に5代目火影を就任するよう要請してきていた。
それは、3代目が志村ダンゾウに5代目火影になる事を要請する、と
自来也は自身のことが良く分かっている。
自分には組織をまとめ上げる能力はないと。
平時なれば、
しかし、大蛇丸が動いた。
このことは忍界を巻き込む大きな騒乱が近付いている事を示している。
そのような時に自分のようないい加減で優柔不断な者が木の葉隠れの里という大きな組織の長に収まる事は、組織にとっても不幸なことだろう。
志村ダンゾウにしても、自分とは反対の意味合い、深く考えすぎる性格、苛烈すぎ、小を切り捨てる方向で組織を維持する手腕をとるその性格は巨大組織のカリスマとしては問題があるだろうが、猿飛ヒルゼンが存命なれば、ダンゾウの行き過ぎを抑える事も出来ようし、ダンゾウがヒルゼンのカリスマを利用する事も出来るだろう。
自分の出番はないのだ、そう自来也は考えていた。
問題があるとすれば…、
「ダンゾウにしてもワシらと同い年じゃ、そうそう長く火影を務める事なぞ出来やせん」
コハルの言う通り、年齢だ。
ヒルゼン、ダンゾウ、コハル、ホムラの4人は同い年の顔見知り。
そもそもヒルゼンが3代目を未だ名乗っていたのは4代目火影・波風ミナトが若くして戦死したためである。
火影を継ぐべき人材が未だ育ち切っていなかった、ということだ。
そうなるとどうしても経験に勝る高齢の人物が火影を就任しなければならない。
とはいえ、そうするとどうしても政務をこなせる任期は短くならざるを得ない。
3代目があまりにも長すぎたのだ。
「ワシじゃ6代目は継げんぞ」
ゆえに、今からダンゾウの後を継ぐ6代目火影の事を考えなければならない。
5代目火影をダンゾウが引き継ぎ、数年の間に次の世代を育てることで木の葉隠れの里の上層組織を安定させるのが、ご意見番の考えであろう。
「これは昨日行われた日の国の大名との緊急会議で決定された事。
それに、伝説の三忍と謳われたお前ほどの忍が柄ではないというなら、他に誰がいるのだ!」
ホムラはそう自来也を問い詰める。
「三忍ならもう1人いるだろ」
「!!」
「それにじゃ、今は1人でも医療忍者が必要な時じゃろ?
自来也の言うあいつ、とは初代火影・千手柱間の孫に当たる綱手姫のことである。
彼女は忍としては致命的な弱点を持つが、「病払いの蛞蝓綱手姫」とも呼ばれる医療忍術のスペシャリストである。
またその弟子も有龍な医療忍者だ。
彼女たちが戻ってくることで里にいる数多くの負傷者を快癒させる目途も立つというものだ。
「とはいえ、あの子の行方が皆目見当もつかん」
「ワシが見つけて連れてくる。
そうすりゃ問題はないだろ」
自来也はそういう、が。
「分かった、頼もう。
ただし、捜索隊として3人の暗部をお前に付ける…」
「いや、今の里は人手不足じゃろうに。
心配しなくても逃げやしねーっての。
ただ…、旅の供に一人連れてきたい奴がいる」
「面白い卵を見つけたんでのォ」
自来也はにやりと笑った。
木の葉隠れの里の総合病院。
その一角にVIP専用の入院棟がある。
さらにその奥、最も警備が厳重であるそこで、1人の男が幼馴染を見舞いに来ていた。
男の名は志村ダンゾウ。
もうしばらくすれば5代目火影として国の内外に発表される、木の葉隠れの里の顔となる人物である。
その男が見舞いに来ているのは3代目火影・猿飛ヒルゼン。
大蛇丸との激戦を制し、未だ面会謝絶の重傷ではあったが、なんとか命を取り留めていた。
「…しかし、まさかワシを5代目に推すとはな。
ワシはお前と同い年だぞ、ヒルゼン。」
「仕方なかろう、これが最善じゃよ、ダンゾウ」
2人は今まで木の葉隠れの忍組織を表と裏で支えてきた双極である。
ヒルゼンはそのカリスマで組織の表の顔、政治を司り、
ダンゾウはその冷徹な思考で裏の顔、諜報、防諜を司ってきた。
そうであるが故に、ダンゾウにはヒルゼンの考えが手に取るように分かった。
ヒルゼンが死んでいたなら、ダンゾウは火影の地位を自ら求めたであろう。
今の里において、火影を名乗る事が出来そうなのは三忍の名も高き自来也、そして里の開祖、千手家の綱手くらいであろう。
しかし足りない。
自来也はそもそもどう説得しようとも火影にはなるまい。
彼は自分の器量というものが良く分かっている。
自来也は忍としては超が付く一流である。
教育者としてもすぐれ、4代目火影・波風ミナトは彼の教え子だ。
しかし、指導者としての資質はないと言っていい。
彼は情が深すぎる。
ヒルゼンもそうであったが、自来也はそれ以上だ。
彼を火影に据えた場合、確実に情によって里が滅びる。
それは綱手も同じである。
全くせめてとっとと自来也あたりと結婚しておけば、まだ良かったものを、とダンゾウは思う。
未だに綱手の考え方は乙女のそれに近い。
情が
あの博打の弱さも、ここぞという時にふらりと心揺れて勝負時を見失うからに相違ない。
たしかに、彼女の心の不安定さ、というのも分からなくはない。
大事な弟を戦で失い、惚れた男も目の前で死なせてしまった、という罪悪感。
もう何十年も経っているというのに2人の死に縛られ、未だ血液恐怖症が克服できていない。
その彼女には火影を任せることはできない、いや任せるような非道はできない。
しかし、今、ヒルゼンをバックにダンゾウが火影となり、自来也か綱手、もしくは今の上忍の内誰かを火影候補として鍛える事が出来るなら、それは里の安定にもつながるだろう。
ダンゾウは里の後ろ暗い部分を司ってきた男である。
自分が火影を長く続けられるものではない事も理解している。
故に、
「ヒルゼン、3年だ。
3年の間だけワシは火影を引き受ける。
それ以上は無理だろう」
「じゃな。
それまでに誰か適当な候補を上げて、ワシらで鍛え上げるしかあるまい。
これからの3年間かの、かなり激動、もしくはその予兆の時期、であろうしの」
その言葉にダンゾウはうなずいた。
「しかし、ヒルゼンよ、暗部の育成はどうする?
このままワシが暗部に深く食い込んだまま、というのも都合が悪かろう。
かといって、それを任せられる人材は未だにおらん」
正確に言うならば、ダンゾウはかつて暗部においても特に汚れ仕事を行う集団でる「根」の新たなる長として大蛇丸を育成していた。
これは別にヒルゼンに対して翻意があったわけではない。
上から下まで一本の柱でまとめられた組織は強いようでいて脆い。
木の葉隠れの里ほどの巨大組織を維持するにはそれを支えるものは複数あることが望ましい。
2代目火影・千手扉間の薫陶を受けていたダンゾウはその考えにのっとり暗部養成部門「根」を創設し、自らその長を務めた。
既に表向きは解体されているが、その根は深く里に食い込み、対間諜や組織内の不穏分子の粛清などの追い忍としての性格を持つ組織であり、その存在無くして木の葉忍軍は維持できない、そういう組織であった。
とはいえその性格上、火影となるダンゾウがそのまま兼任して良い部署でもない。
「根」は中央から一歩引いた立ち位置でなければ、あっさりと中央集権に組み込まれかねない危険な部署なのである。
なんといっても様々な後ろ暗い情報、大蛇丸や「暁」などとの繋がりも火影となるダンゾウにとっては致命的になりえるものである。
いざという時にトカゲのしっぽとして切り捨てられる情報や人材はあるものの、いま火影の名に傷を付けるわけにはいかない。
出来るだけ早いうちにダンゾウは引退し、新しく若い火影を擁立する必要があった。
「やれやれ、後5年ほどでわしも引退するつもりだったが…」
「ほう、『根』の長官殿が、暗部を任せられる人材を手に入れとったか」
ヒルゼンはダンゾウが目を掛けるほどの人材が今の「根」にあるのかと驚いた。
ダンゾウのやり方は配下を作るには最適なれど、次世代の人材育成にはとても向いているとは思えなかったからだ。
人材の育成という点において、これもダンゾウの弱点といえよう。
「うむ、まだまだ幼い子どもだが、見込みのあるのがいてな」
「…それはもしや!?」
「ん? なんだ?」
「その者の名は『茶釜ブンブク』か?」
「おお、よく知っておったな。
そうだ。
出来ればあれが忍術学校を卒業したら、ワシに預けてほしいものだが」
「…またか」
「? どうした、茶釜家のボウズがどうかしたのか?」
「いや、ここしばらくその名を聞く事が多くての。
まったく、一度会っておかねばと思っていたんだがの。
まさかあんなところで会う羽目になるとは…」
「まったくな。
ワシに大蛇丸、マイト・ガイに
よくよくあのボウズもとんでもない者に目をつけられるものだ」
「ふん、自分で言っといてどうするんじゃ。
とにかくもう少し体調が良くなったら一度ここへ呼ばんとの」
「分かった、手配しておこう。
それと、くれぐれも無理はするなよ。
今の里はワシ1人では支えきれんからな」
その後、老人2人は夜遅くまで語り合っていた。
木の葉の里の特別上忍・月光ハヤテは人手不足の折、生き残った音隠れの里の忍たちの尋問を担当していた。
「木の葉崩し」において負傷は負ったものの、それほどひどい傷という訳でもなく、かといって外周部の警備に回れるほど軽くもない、そういった状況で、ハヤテは木の葉崩し以前に重傷を負っていた音隠れの下忍、ドス・キヌタを担当することとなった。
「…キミねえ、そろそろ話してほしいんだけど、ゴホッ」
「……」
キヌタは黙秘を続けている。
まあ、彼から得られる情報はほぼあるまい、とハヤテは考えていた。
彼の置かれた状況からするに、彼及びそのチームメイトは大蛇丸にとってただの捨て駒。
中忍試験において、他の里の戦力の確認のために投入され、同時に大蛇丸の考案した忍具の有効性を確かめるための
正直もったいないとハヤテは思う。
忍は促成栽培のできるもやしなどとは違い、10年以上の時間をかけて育て上げられるものだ。
どんな忍具よりも下忍1人の方がよほど希少性が高い。
それを湯水のごとく使いつぶすとは。
結局のところ教育者であるかどうかが大蛇丸と3代目との違いなのだろう。
大蛇丸は忍術の研究者で、3代目は「
「あのね…、重傷を負ったキミを助けたのはワタシなのだけれど、それについての意見はないのかな?」
「…何故助けたのですか…」
「? あの時はまだ君たちが木の葉と敵対する、と決まっていた訳ではないですからね…ゴホッ」
「あの時、ボクは死んでいるべきだったのです」
キヌタは今までのだんまりが嘘のように話し始めていた。
「ボクは大蛇丸様の役に立てなかった!
あの人だけがボクを分かってくれた!
あの人だけがボクの救いだったのです!
それなのに、ボクは、ボクはぁっ!」
まるで懺悔でもするようにキヌタは話し続けた。
「ドス・キヌタ、本名不詳、本人も覚えていないとのこと。
名前は大蛇丸により命名。
年齢・14歳、 性別・男。
生まれは火の国、一般の家庭出身、いわゆる突然変異として生まれたようです。
どうやら物の怪憑きとして扱われていたようで幼少時に虐待を受けていたようですね。
…ゴホッ、失礼。
今から3年ほど前に大蛇丸に拾われ、忍としての訓練を受けてきたようです。
ちょうど大蛇丸が音隠れの里を設立した時期と重なりますね。
訓練の内容は我々からすると促成栽培的なものに加えて薬物やカラクリを使った身体能力の強化なども行われていたようです。
これは初代さま、2代さまの依り代となっていた2人とも同じでした。
音隠れの里にて戦闘、隠密用の修行を積み、他里の戦力の確認と、どうやらうちはサスケくんですかね、彼の能力を試すために中忍試験に送り込まれた、と。
こちらの掴んでいる情報とほぼ一致しました。
で、彼をどうします?
正直言って戦い以外に使いものになるとも思えませんし、
…始末、しますか?
…そうですか、分かりました。
では洗脳解除と再洗脳を施した上で里の戦力とする、という事ですね。
分かりました。
それではこちらで下準備はしておきますよ、これでいいですかね、イビキさん」
ハヤテは木の葉隠れの暗部における諜報部門に所属する森乃イビキにキヌタから聞き出した情報を渡していた。
「まあ、仕掛けに関しては心配はいらんだろうさ、あれは本当に末端にすぎん。
使える駒ならもっとましな訓練を積ませている。
ほとんど特殊能力じゃねえか、あいつの術は。
応用も効かんし、その知識もない。
鍛えこめばそれなりに使えそうなのにもったいねえ」
「まったくですね。
まあそれだけ時間がなかったんでしょう。
チームメイトなんて術の依り代のうえ使い捨てですからね。
大蛇丸もかなり無理をして木の葉に攻め込んできたんでしょうね」
「まあ、それが事実ならば、しばらく静かになるはずなんだがなあ…」
彼らのその願いはむなしく消えて、ここから又時を置かずして激動の時が到来するのであった。
はい、今回はダンゾウさん5代目就任、月光ハヤテさんとドス・キヌタさんの生存ネタでした。
中忍試験前日の流れ
1 ドスさん我愛羅さんに喧嘩を売るも、我愛羅さん睡眠とってちょっと機嫌がよかったので半殺しで済ませる。
2 ドスさんの救助に意識が行って、ハヤテさんカブトさんから目をそらす。
3 そのためバキさんに気付かず
こんな感じです。