いろいろ派手にしてみたつもりですがどうでしょうか。
なお、戦闘シーンはDOG DAYSの合戦シーンをイメージしながら書いてみました。
ドゥン! ドゥン! ドドゥン!
空気を震わせる音が森に響き渡る。
「陣太鼓」である。
リズミカルに繰り返されるその音に合わせて、巨大な鳥居をくぐり抜け、何かがやってくる。
それは、
「やあやぁ 我こそはぁ 死国にぃ 名高きぃ 禁軍八百八狸がぁ 将軍んん
隠神ぃ刑部ぅなりぃ!
始祖さまにぃ お手向かい致すためにぃ まかりぃこしたぁ!!」
ひと際豪奢な鎧、大鎧と呼ばれる金銀錦をふんだんに使った胴鎧と、顔の横の大きな返し、巨大な三日月をかたどった鍬形の付いた兜、具足と小手を備えた古代の上級武将が身に着けていたものを模している。
守鶴に大きさは劣るものの、それでも森の木々を睥睨する巨体を持ち、これまた巨大な4人担ぎの
それだけではない。
その後ろからは、やはり巨大な体躯をし、時代遅れと言っていい武者鎧を着込んだ化け狸がぞろりぞろりと列をなしてやって来た。
その脇には若干小柄な体格の化け狸が旗指物を持ち、または主君の槍を担ぎ、追従している。
最後尾には軍楽隊であろうか、陣太鼓を打ち鳴らすもの、銅鑼を持ちならすもの、三味線やえれきぎたーなどを構えているものもいる。
その数、百余名。
巨大なものだけでも十五を数える大戦力、口寄せでここまでの規模を呼んだ者はいないであろう巨大な軍隊であった。
うわ、うわぁ……。
どうも、動揺が収まらない茶釜ブンブクです。
なんかとんでもない事になってしまいました。
目の前には冗談抜きの「軍隊」が陣を張っております。
もうなんていうかね、みなさんやる気ありすぎでしょ。
そもそもさ、この化け狸さんの里の長って刑部さんでしょ?
そんな
これってうちの里なら火影さまが先陣を切るようなもんでしょ!
それを許しちゃだめでしょ!
僕が間違えてるの?
「大丈夫、兄貴はなんも間違っていやしませんて…」
その声の方へ顔を向けると、そこにはカモくんが。
…ねえ、なんか疲れきってない?
体毛にも艶がないし、動きにも切れがない。
「そりゃあ、まあ…」
口を濁すカモくん。
…ああ、キミも苦労したんだね。
ごめんよ、無茶を頼んだね、休んでもいいんだよ…。
これが終わったら。
「さて、と…」
僕は刑部さんとガマブン太さんに話しかけた。
「それじゃあ刑部さんは鳥居が破壊されないように気をつけつつ一尾さんと戦ってください。
親分さんはこちらで隙を作るんで、我愛羅さんがどこにいるかわかったら、兄ちゃんと一緒に我愛羅さんを叩き起こしてあげて下さい」
「ぅわっはっはぁ! 任せよ!」
「ちぃっ! しょうがないのうぅ、ガキぃ! お前もそれでええのぅ!?」
「分かったってばよ!
我愛羅を見つけたら一気に突撃だってば!」
さて、もうこれで通達事項もないし、と。
「んじゃ、後はお願いします、刑部さん!」
そして戦争が始まった。
先陣を切ったのは小型の、とはいえこの場においては、という意味合いで、身の丈は3mを優に超える足軽の格好をしたものたちによる術法の一斉射撃からであった。
その一撃一撃が中忍の放つ遁術に匹敵する、それが数十のさまざまな色合いの光の雨となって守鶴に飛来する。
「シャヒッヒャアアァァァァァァァ!!」
奇声を上げ、口からそれらと同等の数の風弾を放つ守鶴。
ほとんどのものはその連弾に相殺され、いや、それどころか化け狸軍へ数発の風弾が弾幕を貫いて飛翔してくる。
それを切り落とすのは武者姿の狸たち。
一刀両断、二刀流、三刀流、短槍、長槍、斬馬刀にチャクラ刀とそれぞれさまざまな得物で風弾をはじく。
そのまま一直線に守鶴へと迫り、斬りかかる。
「一番槍、この鷹ヶ森の権太がいただいたぁ!」
ひと際ごつい化け狸が巨大な朱槍を手に一尾の守鶴へと突きかかる。
守鶴は自由を取り戻した事を全身で喜ぶかの如く、
「ジャシッシャッァァァ!! 甘めぇえわ!!」
その剛腕を振り回し、権太を迎撃、スパーンと大空に打ち上げる。
「どわあぁああぁっ!」
権太はそのまますっ飛ばされ、ポフンという間抜けな音と共に里に強制送還された。
「皆の集! 権太の弔い合戦じゃあ!!」
「「「うおおおぉ!!」」」
ちなみに権太は死んでない。
次々に豪華絢爛の武者姿の化け狸たちが、守鶴に襲いかかった。
その数は既に1000を超える。
狐七化け、狸八化けとも言うが、こと変化・幻術に関して、化け狸に優るものはいないというプライドがある。
それを示すかのように、サムライ狸たちは分身を使って数の暴力で押し切ろうというのだ。
さすがに千を超える侍どもの攻撃、守鶴とて全てをさばき切れる訳ではない。
「そりりゃあ、一気に押し込めい!!」
そう激を飛ばすのは先ほどすっ飛ばされた権太のライバル、鷹ヶ森の青佐衛門である。
ここで権太に差をつけるべく、果敢に攻めかかった、が。
「お前えらぁ、なぁめてんじゃねえぞぉお!! シャッハァー!!」
守鶴の体がもぞりと胎動した、次の瞬間!
「なんじゃとお!」
守鶴が6体に分裂した。
砂遁・砂分身である。
本来は砂を人型にするだけの忍術だが、砂の怪物である守鶴が行えば、それは影分身と同じく、十分な強さを備えたもう1人の自分となるのである。
6体に分かれた守鶴は縦横無尽に跳ねまわり、次々にサムライ狸たちを空に打ち上げていく。
「だーっ!」「うわーっ!」「たーまやーっ!」「かあーぎやぁっー!」
またたく間に第一陣を粉砕してのけた守鶴は、
「たあぁのしぃなぁおい! シャーヒャハハーッハハァ!!」
それはそれは楽しそうにげらげらと笑いながら化け狸軍の本陣に突貫してきた。
「それではぁ、第2陣んん、まぁいりまぁーす!」
そう言って構えるのは2陣目を取りまとめるのは名門・下鴨家の頭領にして長男坊矢一郎である。
昨今他家に押され気味の下鴨の一族の頭領としてここいらで良いところを見せる事が出来るなら、里での一族の評価もうなぎ上りであろうことは間違いない、若干の下心と生来の真面目さで配下を取りまとめ、
「始祖さまに我ら下鴨一族の意地を見せよ! 総員変化!」
いっせいに変化の煙が上がった。
ゴゴゴン! という鈍い音と共に、そこに現れたのは10基の破城鎚。
手押し車に釣鐘式の丸太が固定され、まるで鐘を突くように城の石垣や城門を破壊する工場兵器である。
その大きさ尋常ではない。
数人がかりで変化したその威力はまともに食らえばただでは済まない。
しかも手押し車には足が生えており、そのまま突貫していく代物だ。
「行けい! 皆のものぉ! 我らの力を見せるのだぁ!」
恐ろしい勢いで迫る破城鎚に、にやりと笑みを浮かべる守鶴。
「ジャハハァハァハァァァ!! わぁるくないぞぅ! だぁがなああ!!」
守鶴が
「食らってみろやぁ!
既に砂は「大量の」の域ではなかった。
雪崩、もしくは津波の勢いで押し寄せた流砂は10基の破城鎚に迫る。
「ええい、構わん! そのままぶち抜けえい!」
一瞬怯んだ矢一郎であるが、気合を入れなおし、さらに印を結んだ。
「砂ならこれで吹き飛ばしてくれる! 木の葉分身さらに風遁・大突破ぁ!」
木の葉を頭に乗せ、10人に分身する化け狸の分身の術、さらにその10体からそれぞれ強烈な暴風が守鶴の作り出した砂の雪崩に迫る。
そして、突風と破城鎚が砂の雪崩に激突、一瞬の間拮抗し、
ぼぼぼぼぼぼんっ!
「「ぅあーれぇー」」
破城鎚が弾き飛ばされ、元の狸にどろんと戻り、
「ぬわーーっ! むねぇーん!!」
矢一郎ごと弾き飛ばされた。
ボフンという煙と共に矢一郎たちは化け狸の里に強制送還だ。
とうとう本陣まで攻めのぼってきた守鶴。
しかし、本陣に残るのは化け狸の里でも指折りの猛者である。
それらと戦える事が守鶴はうれしくてたまらなかった。
理不尽に捕えられ、人の中に封じられて身動きできない期間は10年、100年の単位ではない。
自身が封印された人間・人柱力どもも守鶴をその力でしか見ず、危険な怪物としてみているため、会話にすらならない事が多かった。
まっとうに話ができたのは先代の人柱力・老僧
彼は「いつか守鶴を守り導く者が現れる」事を予言しつつ死んでいったが、守鶴は信じていない。
人間なぞどれも同じ、分福のみが例外なだけ、と達観していた。
それが、未だ
しかも、相手をしてくれているのが自らの眷属、というべき化け狸の集団で、なかなかの歯ごたえである。
人間の里を襲うよりよほど楽しいというものだ。
守鶴は楽しくて笑いが止まらなかった。
「おおぅ! さすがは始祖さまよぉ、本陣まで攻められるとはぁ!
皆の集ぅ! ここがぁ踏ん張りどころじゃぞぉ!」
「「「「おおっ!」」」」
気合を入れる巨大な化け狸たち。
砂の雪崩に乗って押し寄せる守鶴に対し、まずは親子二人の武者狸がその行く手を阻む。
親と息子、同じ金平の名を持つ
「どおぉっせえええぇい!」
気合と共に雪崩を押し返そうとするが、流石に守鶴もそのままではいない。
変幻自在の砂の体を利用してその後ろに回り込もうとする。
砂の雪崩を抑えるためにふたりは背後を向く事が出来ない。
そこに割り込んできたのは何ともド派手な歌舞伎衣装を着た大狸。
「始祖さまあ、そいつぁ甘いってえもんでござんすぅ!」
やけに芝居がかった歌舞伎狸はその手からばあっとひも状のものを投げつける。
宙に飛んだそれはまたたくまに数百の糸の筋となり、守鶴に絡みついた。
驚くべき事に砂でできた守鶴の体を、その糸はまるで網のようにからみつき、拘束していく。
「やあるじゃねえかあぁ! だがよおぉ!!」
守鶴は一度体を縮こまらせ、そこから一気に力を開放する。
バチンという音と共にその体にまとわりついた蜘蛛の糸がはじけ飛ぶ。
しかしその頃には2匹の武者狸が砂崩れを捌ききっており、守鶴は3匹に挟まれることとなった。
化け狸の里でもその実力は10指に入る3匹に挟まれるなど本来ならば危機と言っていいだろう。
しかし守鶴は砂の怪物。
いっせいに斬りかかってきた3匹の太刀を左右の腕、そして尾で受け止める。
「なんっとお!」
「ぬうん、おやじ殿ぉ全く動きませぬう!」
「あ、流石はぁ始祖さまよぉ!」
そこへもう一匹、高々と宙に飛びあがると空中で一回転、巨大な岩に変化して頭上から守鶴に一撃を与えんと特攻してきた。
さすがにこれ以上は防御できまいと化け狸軍のだれもがそう思った時。
「ジャシャッシャアァァアアアァアアアァ!」
守鶴の周囲から砂交じりのチャクラが大量に放出された。
砂は守鶴の周囲を取り巻くように回転し始め、
「キェアァァァ!!」
同時に思いきり体ごと回転した守鶴の体の周りにまるでバリアーのように纏わりつき、
「「「どぅわあぁ!!」」」
三匹の大狸を弾き飛ばし、その上で守鶴よりもさらに大きな岩に変化した狸を、その回転を利した突き上げ気味のフックで大空へ打ち上げた!
見るものが見たならまるで日向の「回天」のようだと思ったかもしれない。
砂という実体のあるものをチャクラと共に噴出するため、より物理的な力に強い防御壁となっていた。
「どうしたぁ! こんなもんかぁ!!」
咆哮を上げる守鶴。
「いやいや、まだまだでございまするぅ」
そう言って前に出たのは威厳のある大狸。
隠神刑部とも張り合えるような巨体が守鶴へと突進していく。
守鶴が構えるとともに、狸は手に持った徳利からぐいぐいと中のものを飲み干し、口からぷうっと酒を霧吹きのように噴出した。
またたく間に霧に包まれる周辺。
「ぬうぅぅぅぅ…」
警戒を強める守鶴。
すうっと霧の中へ言えていく大狸。
「それがし、幻術を得手としてございます故に、始祖さまへは我が最強の幻でお手向かい致しまする」
そう守鶴に語りかける大狸、その瞬間、
「なんとぉ!」
霧の中で10匹に分かれた大狸が巨大な槍を今にも投擲せんとしているではないか。
槍で刺されようと守鶴に大きなダメージはないが、身動きが大きく阻害されるのは間違いない。
あの中の一本だけが実態で、他のものは幻影だろうと見当をつけ、飛来する槍を見ながら「解ぃ!」幻術の解印を試みる守鶴。
しかし、
「なにぃ! ぜぇんぶ実体だとぉう!」
飛来する槍は幻術を解いてもなくならなかった。
それどころか、「ぼんっ!」という音と共に10本の槍は大狸となり、次の瞬間、そのうちの9本が鉄の棒に変化した。
いつの間にか後ろに控えていたはずの狸たちが紛れ込んでいたのだ。
それらは守鶴の周囲へと次々に突き立ち、
「太郎坊! 今じゃ」
変化しなかった狸、岩室太郎坊に指示が飛ぶ。
太郎坊は一瞬で10の結印を結び、
「雷遁・
雷でできた網で鉄の棒を繋ぎ、守鶴を完全に取り囲んだ。
「むうぅ! これしきのことでぇ!!」
鉄の棒に変化した大狸を吹き飛ばそうとする守鶴。
そこへ最後の
「始祖さまぁ、これで終わりですぞぉぉ!!」
刑部は大きく息を吸い込むと、その大きく張り出した腹を思いきり叩いた。
今までで最も大きな「どおぅぅぅん!!」という音が響き、その音が守鶴の周囲に何重にも響いた。
雷の檻で拘束された上に衝撃波で体をまるで鐘を突くように揺さぶられる。
守鶴の体を構成する砂が、ぼろぼろと崩れていく。
「ぬうぅ……がああああ!!」
これで勝ったか、そう思われた瞬間。
「ま まだ まだ …ギエェアアアァァ!!」
守鶴の体からおびただしい砂が、森全体を飲み込まんとする勢いではき出された!
いや飲み込まん、などという生易しい代物ではない、確実にこの一帯の森がなくなる量の砂である。
全方位への砂雪崩という強烈な物理攻撃に、鉄の棒に化けていた狸たち、太郎坊は吹き飛ばされ、
しかし、
隠神刑部と威厳のある大狸はまだその圧力に屈していなかった。
「団三郎よう、あれをやるぞうぅい!」
「刑部殿、承知!」
団三郎狸は印を組むと巨大な団扇に変化した。
刑部はそれを掴むと、
「むうん! 風遁・特・大突破ぁ!!」
とてつもない大風を守鶴へ叩きつけた。
流石の守鶴の砂でもその大風を防ぎきれず、津波のようなそれが割れ、守鶴の姿が垣間見えた。
そしてその額には霊媒である我愛羅の姿が!
「今じゃぁ! 大蝦蟇のぉ!」
隠神刑部の声が響いた。
目の前の戦いに僕は圧倒されていた。
今、僕の周りには岩室の二郎坊くんから五郎坊くんまでの4兄弟が護衛についてくれている。
「これブンブクよ、この光景が、自分がもたらしたものなぞと思うてはいかんぞ」
二郎坊くんがくぎを刺してくるが、こんなん想像の埒外ですって。
正直2度とやりたくない。
そもそも、こんな大掛かりな口寄せができたのも化け狸の里のみんなの協力(協力? なんか違う気がする)と、隠神刑部さんに貸していただいた特製の巻物、そして秋道印の兵糧丸のおかげだってば。
これだけの数の化け狸なんて呼んだらチャクラが干上がっちゃうよ。
それどころか、刑部さん呼ぶ真似しただけでからっ欠だと思うけど。
唖然としながら門の維持をしていたのだけれど、どうやら終幕らしい。
「今じゃぁ! 大蝦蟇のぉ!」
という刑部さんの声が響くと同時に、ガマブン太親分とうずまき兄ちゃんが動いた、ってえ!
??? 狐!?
兄ちゃんと親分が巨大な狐に変化して守鶴さんに噛みついていった。
その大きさは、刑部さんを超え、守鶴さんと五分を張るような威容だ。
その狐さんががっちりと守鶴さんを捕えると同時に、兄ちゃんがダッシュ、狐さんの頭から守鶴さんの頭を駆け上がり、我愛羅さんに渾身の拳骨!
「シャアハッハッァァァ!! たあのしかったぜぇ!! まぁたなあぁ!!」
なんて事を言いながら、どうやら守鶴さんはまた眠りに就いた様子。
これで一段ら…あれ?
まだ守鶴さんの体が崩れない!?
このままだと兄ちゃんがつぶされちゃう! もう兄ちゃんチャクラなんてろくに残ってないのに!?
僕はそう思った。
でも、砂が兄ちゃんを覆い尽くすかと思われたその時、兄ちゃんから赤黒いチャクラが噴出し、砂を弾き飛ばした!
すごい、でもどうやって!?
そんな事を一瞬考えたが、このまま兄ちゃんにまかせっきりで良いのか、僕!?
あそこまで行く手段は…八畳風呂敷で飛ぶには僕にそこまでの技量はないし、岩室兄弟に頼むのも無理っぽい。
なんかないか… !
そうだ!
僕は八畳風呂敷にチャクラを込め、風呂敷くんを変化させた。
ロック・リーさんに。
それと同時に印を組まなくても可能な僕の血継限界、什器変化を使って手のひらサイズの茶釜に化ける。
僕自身を風呂敷くんが変身したリーさんに持たせ。
それを投げ飛ばすことで向こうまで行けるはず。
流石にマイト・ガイさんの動きはあまりに速くて見えなかったが、いつも見ていたリーさんの動き、そのスピードとパワーは再現可能なはずだ。
特に、あの美しい木の葉旋風の見事さったら…。
その時、
ボクはまたしてもやらかした。
木の葉旋風。
リーさんの代表的な技と言っていい。
ガイさん直伝のすさまじい勢いで突貫する高速の回し蹴り。
ぼくは、その素晴らしい回し蹴りを1ミリの狂いもなく今想像した。
その結果、
風呂敷くんが化けたリーさんはそのイメージをしっかりと受け取って、
ぱっかーん!!
見事な旋風脚で僕を守鶴さんめがけて「蹴り飛ばした」。
ナルトは我愛羅に向かって突進していた。
何故かは知らないが体にチャクラがみなぎっている。
これならば。
いける。
「こんのお!」
そしてあと一歩という時。
我愛羅の砂がナルトを捕えた。
あとたった半歩。
その距離が無限にも感じられる。
ナルトが両手を使って砂をはじき、我愛羅に突貫したその時。
目の前に何かが現れた。
ナルトはなんというか頭が悪い。
察しも悪ければ理詰めの学業は最悪と言っていい。
しかし、彼の直感はすさまじく優れている。
獣的といってもいい。
その野生の直感がここだ! と咆哮した。
ナルトは全身を一個の砲弾として、我愛羅に突っ込んでいった。
そして次の瞬間。
ガックヮ-ン!!
本来なら届かない拳一個分。
その間に手のひらサイズの
その衝撃で我愛羅の周辺には大きな陥没ができ、眠りに就いた守鶴の体がぼろぼろと崩れていく。
どうやら僕は気絶していたようだ。
立ち上がろうとするとくらくらする。
昔兄ちゃんとけんかした時に食らった
ふらりと倒れそうになったところで誰かに支えられている事が分かった。
リーさん、じゃなくて多分風呂敷くんだねえ。
手放しても僕の近くに来てくれるんだ、ありがたいなあ。
それはさておき。
僕は風呂敷くんを元に戻し、いつものように体に纏いつかせると、兄ちゃんを探すことにした。
足元ちょっとふらつくけど。
兄ちゃんと我愛羅さんはほどなく見つかった。
二人ともぼろぼろだ。
兄ちゃんは這いずって我愛羅さんの所まで行ったのだろうか、しばらく地面にずるずるとした跡がある。
倒れている我愛羅さんが、同じく倒れている兄ちゃんに言っていた。
「なんで… なんでお前は他人のためにそこまで…」
その声は、兄ちゃんのしてきた事が理解できない、そんな驚きに彩られていた。
そっか、やっぱり我愛羅さんは…。
兄ちゃん…。
「ひとりぼっちの
あの地獄から
救ってくれた…
オレの存在を
認めてくれた…
大切なみんなだから…」
兄ちゃんの声。
大事なものがみっしりと詰まったその声に。
僕は何だか泣きたくなったんだ。
兄ちゃんはうちはサスケさんが助けに来ていた。
我愛羅さんはテマリさんとカンクロウさんが抱えていった。
帰っていく際に、我愛羅さんは僕の方を見ていた。
あ、やっぱり気づいてたんだ。
というかテマリさん、カンクロウさんも気づいてるね、うん。
だから僕は、
「我愛羅さん、一尾さんと話をしてみてください。
一尾さんは確かにものすごい力を持ってます。
でも、お話ができない相手じゃないんです。
一尾さんは我愛羅さんときっと話が合いますよ。
そういってます」
我愛羅さんは、誰が、とかは聞かなかった。
ただ、
「そうか」
そう言っただけだった。
砂の3人はそうして帰っていった。
ちなみに、家に帰った後、おっとうとおっかあにこっぴどく怒られたのはまた別の話。
これにて「中忍試験」から「木の葉崩し」へとつながった一連の事件は一応の終息を見る。
音隠れの里はこの事件より姿を消し、里があったとされる場所には全てが破壊された焼け野原があるのみであった。
音隠れの実質的指導者であった大蛇丸は全ての忍里から最優先捕獲対象として手配されることになったが、その行方はいまだに
砂隠れの里では、長である「4代目風影」がその側近と共に大蛇丸によって暗殺されているのが発見された。
この事より砂隠れの里では混乱を避けるため、木の葉隠れの里に対し、全面降伏を申し出た。
木の葉隠れの里でもこれを受諾、戦争は避けられる形となったのである。
しかし、3代目火影は再起不能であろうといわれる重体となり、火影を退くこととなった。
里も少なからぬ被害を受けた。
里の繁華街を中心に、忍術合戦の影響を受け、多くの建物が倒壊。
また、守鶴との戦争のため、貴重な動植物の宝庫であった死の森も大きな損失を受けた。
スタジアムはほぼ壊滅、再建には莫大な費用が必要であるとされた。
一般人の犠牲者はゼロ。
これは敵対した双方の都合があっていたためと考えられている。
なお、木の葉隠れの里の人的損失は実質なかった。
確かに負傷し、再起不能となった忍は一定数いたものの、死者は呆れた事に
これは忍すら気付かないところで暗躍していたものがあったためだと暗部ではまことしやかに言われている。
もっとも、このために入院施設が全く足りず、大手の病院から小さな個人経営の診療所まで、負傷した忍が廊下にまで寝かされ呻いている、という医者にとっての地獄がここからスタートする。
医療忍者たち及び近隣の医療従事者は数ヶ月の間まともに休みすら取れない状態で治療を行うこととなり、その後倒れるものが続出。
木の葉崩し後のこの数ヶ月を「木の葉医療忍軍デスマーチ」と呼び、医療に携わるものたちにとっておぞましい記憶として、語るのもはばかられる恐怖として語り継がれることとなった。
ここまで大蛇丸が読み切って木の葉崩しを実行していたならすさまじい策士であるといえよう。
ともかく、これより忍界はさらなる混沌の時代へと動いていくのであった。
今回、化け狸の名前は
第1陣:平成狸合戦ぽんぽこ より
第2陣:有頂天家族 より
本陣:各地の化け狸伝承 より
拝借しております。
で、がんばって守鶴さん強くかっこよく演出したつもり。
どうでしたでしょうか。