NARUTO 狐狸忍法帖   作:黒羆屋

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さて、今回ですが謎のキーワードがちょこっと入っております。
世界観の独自解釈が後々入ってまりますがそこと関連しております。

ジジィ回終了。


第10話

 スタジアムでは、砂隠れと音隠れの忍対木の葉隠れの忍の忍術合戦が行われていた。

 はたけカカシ、マイト・ガイといった木の葉隠れの里を代表する上忍と、砂隠れの上忍バキ、音隠れの薬師カブトなど、当代を代表する猛者達により、スタジアム内は破壊されていった。

 とはいえ驚くべき事に、一般人の死者は全く出ていなかった。

 木の葉隠れの者は当然として、砂隠れ、音隠れの忍達も里の上層部より不必要な殺人は厳禁との命を受けていたためである。

 戦闘は、当初こそ戦力が拮抗していたものの時間が経つにつれ、ホームグラウンドである木の葉隠れの里の戦力が増強されていた。

 また、本来ならば苦戦する事もなく三代目火影・猿飛ヒルゼンを惨殺しているはずだった大蛇丸が、1時間以上たった今でもヒルゼンを仕留めきれていない、という事実。

 さらに、

「ええいっ、何処からこの絵を見せている!」

 砂隠れの上忍・バキは苛立っていた。

 砂隠れの里の忍びたちの周りに浮かぶ銀食器の皿。

 そこには先ほどの火影と、風影に変装していた大蛇丸とのやり取りがテレビの画面でもあるかのように映っていた。

 鏡のように景色が映りこむその皿は風影の顔がべろりと剥がれてそこから大蛇丸の顔がのぞいた所、側近であった上忍達に大蛇丸の配下が変装していた所を映し出し、砂隠れの里の忍達に疑念を吹き込もうとしていた。

 本来であれば火影の命を取る、それは忍にとって大きな名誉であろう。

 いくら音隠れの里の主導とはいえ、火影と対峙するのに風影に化けた大蛇丸とその配下、つまり音隠れの里のみで構成された戦力をぶつけることはないはずだ。

 少なくても砂隠れの上忍を交えることでこの同盟が対等である事、火影と木の葉の里を潰したのは音隠れと砂隠れの忍である事をアピールしなければ、軍縮に向かっている風の国から何らかの譲歩を引き出すのは難しいだろう。

 このままでは音隠れの里の名声のみが高くなり、下手を打てば砂隠れが音隠れに吸収されかねない。

 言ってしまうと、この作戦において、砂隠れの里には()()()がないのだ。

 もちろんすぐには見えてこない水面下の交渉結果、ということもあり得るが、疑念は募る。

 政治にも聡くなければならない上忍ほど、今の状況、そして見せられている映像に動揺を誘われる。

 そして、その動揺は配下の指揮にも影響する。

 上忍の指揮が鈍るならば、配下の中忍達にもその動揺は伝わり、士気が下がる。

 中には映像からバキの考えている事が理解できる者もいるだろう。

 そういう者は当然上忍よりは情報を持っていない。

 結果としてより少ない判断材料で判断を求められ、疑念は増す、という訳だ。

 この場での勝利の天秤は木の葉側に大きく傾こうとしていた。

 その時である。

 とてつもない衝撃と共に、VIP席の屋根を覆っていた結界がはじけ飛んだ。

「くっ!」

 バキはこれを好機ととらえた。

 もうすでに音隠れの里の忍達は全滅状態だ。

 風影様もここにはいない。

 なれば、

「ここが好機! 各自撤退せよ! これ以上長居は無用!」

 部下たちに下達し、自身も撤退を始めた。

 

 

 

 音の四人集は焦っていた。

「クッソ、大蛇丸様無茶だろう!」

「おい! 背後のチャクラ、シャレにならんぜよ!」

 彼らは外に対して決壊を維持しており、結界内部の戦いを見る事が出来なかった。

「っち! ウチが動けりゃあんなくそゴミジジイさっさとブッチラバシてやんのに!」

「多由也、だから女がそんな…」

「うっせーデブ! だからくせーんだって!」

 いつもの会話をすることで、少しでも精神を落ちつけ、結界の維持に努める彼ら。

 しかし、その努力もむなしく、

 大蛇丸の生み出した術、それから掛かったとてつもない圧力は、彼ら四人ごと結界を吹き飛ばした。

 

 

 

「ガイ! あれはまずい!」

 はたけカカシは大蛇丸の使おうとしている忍術を辛うじてだが見る事が出来た。

 あれは下手をすればこの一帯が消し飛ぶほどの威力を持つ術ではないか。

「くっ! 土遁・土流壁!」

 せめて、観客とVIPは守らねば、その思いでカカシは巨大な土の壁を作り、衝撃に備えた。

 マイト・ガイはというと、

「八門遁甲・第六景門、解!」

 己の体術奥義である八門遁甲を使い、来るであろう衝撃を叩き返すつもりのようだ。

「あいかわらす、とんでもないよねぇ」

 自分の事は棚に上げ、カカシは緊張感のない、いつもの口調でつぶやいた。

 その時。

 結界がはじけ飛び、

 ガイの「朝孔雀!」連打の衝撃で燃え上がる空気の壁と、カカシのつくった土の壁が、一瞬だけ大蛇丸の忍術を押しとどめ。

 巨大なチャクラの水流はスタジアムにその破壊の力を広げていった。

 

 カカシ達が忍術により自身の死を覚悟した次の瞬間。

 天は巨大な影によって埋め尽くされていた。

 スタジアムのあちこちから湧き上がる、という表現が間違っていない、樹木の枝がスタジアムと人々の命を繋いでいた。

 

 

 

 巨大な樹木がスタジアムの上を覆っていた。

 初代火影・千手柱間の秘術、木遁・樹海降臨の影響である。

 柱間は木を楯として大蛇丸へのダメージを軽減しようとしたのだ。

 それと同時に、大蛇丸の命令でもある、出来るだけ一般人の死者を減らすための術でもあった。

 衝撃は基本的に上にあがっていく傾向にある。

 結界が吹き飛んだ瞬間、柱間は樹木が屋根に対して横に成長するように術を発動した。

 結果としてスタジアムは樹木のドームに覆われることとなったのである。

 また、2代目火影・千手扉間は口寄せ・三重羅生門を召喚、大蛇丸を術の衝撃より守らせていた。

 そのため、大蛇丸は辛うじて、という状態ではあったが、無事であった。

「げほっ、な、何とかなったようね。

 さすがに3代目の遺体は回収出来そうもないわね。

 でもこれで『木の葉崩し』は成っ…」

 がっ!

 一瞬の油断か、目の前にはもはや生きているのも不思議なくらいの三代目火影・猿飛ヒルゼンがいた。

 その姿の後ろには、異形が浮かんでいた。

 鬼。

 そうとしか言いようのない何か。

 着物をまとい、角の生えた悪鬼のごとき表情のそれは、ヒルゼンから伸びた何かを捕えていた。

「バカな! 何故死んでいない!」

 ヒステリックに叫ぶ大蛇丸に、ヒルゼンは悠々と答えた。

「分からんか、猿魔とサテツじい様がワシを守ってくれたんじゃよ。

 おかげでこの術を結印する時間がもらえたわい」

 かつて4代目火影の使った最悪の封印術、屍鬼封尽。

 大蛇丸は他者の体を乗っ取り、永遠を生きる術を手に入れている。

 ならば、自身ごと大蛇丸の魂を封じてしまえばもう生き返る事もなく、完全に大蛇丸を倒すことができよう。

「ふざけるな、この私が!」

「そうじゃの、一緒に死んでやるのが師としてのせめてもの手向けじゃ、一緒に死神の腹の中に行ってもらうぞ、大蛇丸!」

 その時、二つの影がヒルゼンに迫った。

 柱間、扉間の兄弟である。

 大蛇丸の術のダメージにより依り代となった素体の損傷が激しくその体は既に限界に達しようとしていたが、それでも術に組み込まれた「大蛇丸を守る」という命に従い、2人はヒルゼンに襲いかかった。

(! ()った!)

 大蛇丸は勝ちを確信した。

 しかし、

 

 どすっ!

 

 2人の手刀が突き立ったのは1人の老婆。

 茶釜タマユラにであった。

「ごめんねえ、大蛇丸ちゃん。

 これもお仕事だからねえ」

 口から血を吐きながら、老婆は大蛇丸に話しかけた。

「な、なぜ邪魔をする!

 ここから忍の新時代が来るというのに!

 何故お前らは私の事を理解しないの!」

「…それは違うわ、大蛇丸ちゃん。

 人は一方的に理解して終わり、じゃないのよ。

 あなたが理解してもらうにはあなたが理解する必要もあるの。

 あなたは1人。

 お互いに理解できる子がいなかったのがあなたの不幸なのねえ」

 ピシリピシリと老婆の体にひびが入る。

「初代さま、2代さま、そろそろお別れでございますね」

「そうか、黄泉路でまた拳を交えるか」

「さらばだ、婆さま」

 さらさらと体が崩れるタマユラ。

「じゃあ、あとはよろしくお願いしますよ、()()()()

「うむ」

 老婆が完全に崩れ落ちたその瞬間。

 千手兄弟の腹から拳が生えた。

 背後から茶釜サテツが二人を打ち抜いたのだ。

「お二方、さすがに油断ですわい」

「…確かにな、さすがに黄泉路で寝すぎたか」

「…初めて喰ろうたじい様の拳骨のようだ」

 千手兄弟は痛みのためか、若干歪んだ苦笑いを浮かべた。

 

「大蛇丸、もらったぞ!」

 ヒルゼンは気合を込め、大蛇丸の魂を引きずり出そうとする。

「バカな、こんなところでこの私が、私の野望が… こんなオイボレに!」

 大蛇丸の焦りは頂点に達しようとしていた。

 このままではヒルゼンと共にあの異形の腹の中に封印される。

 これは永遠に生き、忍術を極めんとする大蛇丸にとって、死よりもおぞましいものであった。

 なればここで封印が完成する前にヒルゼンを殺せばどうか。

 己の腹の中には「草薙の剣」がある。

 これを使えばあるいは… 不可能か。

 首をはねようが、真っ二つにされようがヒルゼンは封印を成し遂げる。

 大蛇丸は忍術の師であったヒルゼンを理解していた。

 この男はけっして諦めない、そうであるが故に火影なのだと。

 ならばどうする、既に時間はない。

 大蛇丸は苦渋の決断をした。

 すなわち、

「!」

「なに!」

「なんと!」

「信じらんねえ!」

 半ば体から引きずり出され、封印されかかっていた霊体、死神に掴まれていた霊体の腕の部分、それを。

「つぇい!!」

 口から吐き出し、舌でからめ取った伝家の霊剣・草薙の剣で斬り落としたのである。

「先生、この場は引かせていただきますよ、いずれその腕、返していただきます」

 大蛇丸は壮絶な笑みを浮かべ、ヒルゼンにそう言うと、脱兎のごとく逃げ出した。

「待っ! くっ、もう体が動かんか」

 追おうとしたヒルゼンであるが、その体はすでに限界を超えていた。

 膝をつくヒルゼン。

「…あれから全ての術を奪った、それでまんぞくしようかの…」

 そう言うヒルゼンの体からも魂が抜け出かかっていた。

 このままではヒルゼンも死ぬのだろう。

 

 このままなら。

 

「こりゃ、ヒルゼンの小僧っ子。

 何悠長に死ぬ気でおるんじゃ?

 まだまだお前さんには里のために働いてもらわにゃならんというに」

 茶釜サテツである。

「無理じゃ、死神との契約は絶対じゃからのう」

「ふん、絶対なんぞという忍術はないわい。

 どんな術にも抜け穴、というもんがあるでな」

 サテツはそういうと、

「初代さま、2代さま、申し訳ございません、ヒルゼンを生かすため、犠牲になって下せえ」

 千手兄弟にこうのたまった。

「構わん」

「世話を掛けた詫びだ」

 二人がそう言うとともに、サテツは印を組んだ。

 

「封印術・疑神封転(ぎしんふうてん)!」

 

 そうサテツが吠えるとともに、ヒルゼンに刻まれた封印がサテツの腹に移る。

「こいつぁ継続型の術をかっぱらうための忍術でな、本来3人で使う術なんじゃわ。

 んで、お前さんの術を俺達がかっぱらったんで、封印されるんは」

 そう言った瞬間、柱間、扉間の体から何かが吸い出され、それを死神が喰らい尽くしていく。

「…こういうこったな」

「じい様、すまんの」

 悲壮な顔のヒルゼンに、サテツはにやりと笑い、

「なに、家の置き物んなってる俺と、三代目火影じゃ価値が違いすぎらあ。

 これ知ったらあの子蛇、地団太踏んで悔しがるだろうよ」

「そうじゃの、見ものじゃろうのう」

 2人してにやりと笑うジジイズ。

「じゃ、後は任せるからの」

「わかっとるわい」

 そうしてサテツの魂は死神に食らい尽くされた。

 その体はタマユラと同じように、砕けて風に散っていった。

 

 

 

 僕は守鶴さんのいる森へ()()()に向かっていた。

 八畳風呂敷を滑空用の翼として使い、まだ自由に飛ぶことはできないけれどガイさんからもらった根性重りのおかげで力の付いてきた脚力で木々の枝を蹴っていくことで森の上を滑るように移動出来ている。

 下忍になったうずまき兄ちゃんたちほどではないにしろ、森の中を走るよりかはだいぶ早い。

 森の奥の方では、まあ、なんというか、怪獣大決戦が始まっていた。

 巨大化した、というか、本体が出てきた砂狸の守鶴、まあこっちは多分我愛羅さんが呼びだしたんだろうなあ。

 で、それに負けないくらいのでっかいガマガエルが、刀、というかドス? を構えている。

 いや、でっかいカエルまでは良いだろう。

 里の方にもそんなん出てたし。

 ガマガエルの口寄せっていったら伝説の三忍の一人自来也さまが有名だけど、有名なだけにお弟子さんとかにも伝えてておかしくないと思うんだ。

 暗部の人たちとかなら素性とか使う忍術とかも秘密だしね。

 でもさ、ガマガエルでどてら羽織って、超巨大なキセル咥えて長ドスって。

 普段は畳部屋で火鉢に当たってんのかしら。

 どう見ても香具師、それも大侠客の類いにしか見えない。

 なんでまたそんなのがよりにもよって守鶴さんの前にいるんだろう。

 とか思っていたら、その頭のあたりに見慣れた人影が。

 …我らがうずまき兄ちゃんである。

 え、もしかして()()兄ちゃんが呼んだの!?

 すっげー!!

 僕も口寄せで化け狸の召喚ができるようになったけど、こんだけの大物を呼び出すなんて。

 あんなんまともに呼び出そうとしたら、僕なんて簡単に干上がっちゃうよ。

 さすがだなあ… なんて感心してる場合じゃない!

 守鶴さんと兄ちゃんのカエルが激突する!

 カエルさんはその跳躍力を生かして逆手に構えたドスを振りぬき、見事に守鶴の腕を切り落とした。

 …でもそれはあんまり意味がない。

 守鶴さんは砂の塊が形を取っている。

 確かに叩いた分ダメージは入ってはいるもののそれは斬り落とした断面にのみ。

 見る間に斬り落とされた腕は砂と化し、守鶴さんの体に戻ってきてしまう。

 

 僕が現場にやっとのことで着いてみると、いましも我愛羅さんが守鶴さんに体のコントロールを明け渡しているところだった。

「狸寝入りの術」って、それやったらどんどん精神が守鶴さんに圧迫されちゃうでしょうに。

 よっぽど兄ちゃんに負けたくないらしい。

 そして、一尾の守鶴が、その本体の力を発揮した。

 カエルさんに向かって特大の衝撃波が飛ぶ。

 蛙らしいこれ又特大の跳躍を見せ、空に逃げるカエルさん。

 のみならず、宙から数発の水弾を打ち出す。

 1発1発が人の身の丈よりよほど大きいんだけど。

 1発でもくらえばおおごとだろう。

 なにせ、守鶴さんは砂の塊、火遁や風遁では大したダメージがないかもしれないが、水の塊ならまた状況は変わるだろう。

 と、思ったんだけど、守鶴さんは守鶴さんで同数の風弾で迎撃する。

 その火力は五分以上。

 1発がカエルさんの攻撃をすり抜けて直撃、兄ちゃんごと吹っ飛ばされた!

 カエルさんはでっかいから問題ないだろうが、、兄ちゃんが!

 …ほっ、無事みたい。

 とにかく兄ちゃんと合流しないと。

 

 

 

 ナルトは視界の端に奇妙なものを見つけた。

 凧のようなもの、と言えば良いか。

 伝統的な四角いものでなく、張り出しの長い三角形型、比較的最近どこかから持ち込まれたらしい、子供でも簡単に上げることのできるタイプのものだ。

 柄は唐草。

 はっきり言ってださい。

 どれくらいださいかというとゲジマユと激眉のおかっぱくらいださい。

 ブンブクが聞いたら頭から湯気を出して怒りそうな事をナルトは考えていた。

「おい、ガキィ! なんじゃかお前を呼んどるぞぉ!」

 そんな事を考えていると、自身が口寄せした大蝦蟇の「ガマブン太」親分がそうナルトに語りかけてきた。

「え、なに!」

 ナルトがそう返事をする間に、凧はナルトに近づいてくる。

 そこには、弟分の茶釜ブンブクがぶら下がっていた。

 

 凧がナルトのそばに来ると、ガマブン太の頭にブンブクが下りてきた。

「くぉらガキィ! ワシの頭に降りるたぁふてぇ野郎だぁ! どこのガキじゃぁ!」

「すいません、木の葉隠れの里の忍術学校5年生でうずまき兄ちゃんの弟分、茶釜ブンブクです、今緊急時なので許して下さい!」

 ガマブン太は礼儀を知る者にはそれなりに鷹揚である。

「おぅ、ガキィの弟分にしちゃあずいぶん礼儀正しいのぉ! ええじゃろぉ、許したらぁ!」

「ブンブク、なんでこんな危ないとこに来たんだってばよ!

 ホントに危ねえんだってば!」

 ナルトはブンブクを気遣う。

「僕だってここまでは来たくなかったんだけどねえ…」

 ブンブクは何か訳ありそうだった。

 

 

 

 僕も、ここまで怪獣大決戦の場に近づく気はなかったんだよ。

 出来れば守鶴さんを説得して、穏便にひきとって頂きたかったのですよ。

 でもねえ、

 

 …ああ、守鶴はやる気ですねえ…

 どうにもなんない感じですか?

 …そうですねえ、本当に久しぶりに外に出た、とう感じですからねえ… 説得が通じるかどうか…

 そうなると、直接説得が必要かな?

 …いや、無理でしょう… 

 無理ってそんな?

 守鶴さんが大暴れしたら、この森どころか木の葉隠れの里がなくなっちゃうよ!?

 …そうですねえ、説得できなければ、らじお体操代わりにこのあたり10里四方は更地でしょうねえ…

 そうなると、やっぱり…。

“祭りじゃな!”

 …やる気まんさいだあ。

 確かに頼んだのは僕なんだけどね。

“だっはっはっ! 始祖さまとやりあえるなんざサムライ冥利に尽きるってもんじゃからなあ!!”

 なんでそんなにテンション高いのさ!

“そりゃうちの里に被害はないでのう。

 人様の庭でせんそーごっこじゃて!”

 その後かたずけするのはこっちなんですが!

“安心せい! これは里の危機なんじゃ!

 この里の上もお主を褒めこそすれ、叱られる事はないじゃろ… 多分”

 多分、とか言いやがった!

 

 なんというか、()()の準備のために化け狸の里の皆さんの予定を聞いてもらったところ、なんというか、予定のない皆さんがやる気満々のようでして、早よせんか、とせっつかれてるんですよ。

 最後の抵抗として我愛羅さんを説得、と思ったのですが… 我愛羅さん、どこ?

「おぅ、あの霊媒かぁ。

 砂の一尾ん中に埋もれてったぞぉ」

 あれ、んじゃ話できない?

 まだだ、まだ諦めんよ!

「すいませえん! いちびさああん!

 こんかいはあ! おとなしくう! かえってもらえませんかあ!」

 頑張って、守鶴さんの頼んでみたところ、

「シャハハァ、前の時はあいつに免じてこの餓鬼を寝かせてやったぁ!

 だからよお…」

「はいぃ!」

「暴れさせろや」

 駄目ですか、はい。

 これはもう、やるしかない! …はあぁ。

 

 

 

「兄ちゃん!」

 ナルトにその弟分が声をかける。

 いつになく気合の入ったその声に、

「どうした、なんか手があるってのか!?」

 つい期待してしまう。

 この弟分はシカマルほどではないが頭が回る。

 どうしても自分では考え付かない事を思いついてくれるのだ。

 今の状況はどうしようもない。

 霊媒である我愛羅を起こせば、あの一尾とかいう化け物は力を大きく減ずるらしい。

 しかし、砂の怪物の中に我愛羅は潜り込んでおり、何処にいるかは分からない。

 我愛羅を引きずり出す必要があるが、さすがに今の自分はチャクラを使い果たしている状態だし、ガマブン太とていつまであれを抑えておけるか。

 先ほどの一撃をくらっている以上、あまり無理をさせるわけにもいかない。

 もしかしたらブンブクが何か起死回生の案を出してくれるかも。

 ナルトはそう期待した。

「まず、我愛羅さんが起きれば、一尾さんは表に出てこれなくなる、らしい」

「うんうん、それで?」

「何とかして我愛羅を起こす、そのためには我愛羅さんを表に引っ張り出さなきゃなんない」

「なるほど、それで?」

「我愛羅さんのいる位置を調べる時間が必要だね」

「じゃあ、どうするってばよ?」

「兄ちゃんどうにかなんない?」

 さすがにチャクラ切れだ。

 少々の時間ならともかく、戦いながら我愛羅の位置を調べるような器用なまねはナルトにはできない。

 サスケならば可能かもしれないが、あの巨体と対峙する術がサスケにあるだろうか。

「さすがに無理、か。

 はあ、しょうがないなあ…」

 ブンブクはため息をついた。

 その言葉、「しょうがない」がナルトは気になった。

 それではまるで、なんとかできる術を持っているような…。

「なあ、ブンブク、もしかして…」

 ナルトがそう言いかけた時、咆哮が周囲の空気を震わせた。

「もおぉ我慢できねえぇぇ! ぜえぇんぶ、ぶっこわぁすぅ!! シャ、シャ、シャヒャハハッハハァ!!」

「うわぁい! もうちょっとまってえ!!」

 必死に守鶴をなだめようとするブンブク。

「いま! いま準備しますからって!!」

 必死に言いつのるブンブクに、問いかけるナルト。

「なあってばよ!

 お前、なんとかできんのか? ブンブク」

「うん、まあ、時間稼ぎなら」

 彼はそう言って、懐から巻物を一本取り出した。

「? それはなんだってばよ?」

「ま、見ててよ」

 ブンブクは、口にチョウジからもらった最後の兵糧丸を放り込むと、巻物をばっと開き、左手の親指を噛み切り、その血を巻物になすりつけた。

 そして、印を結ぶと、高らかに告げた。

 

「口寄せ・狸穴(まみあな)大明神(だいみょうじん)(たぬき)燈篭(どうろう)!!」

 

 その瞬間、ガマブン太の前の地面がぼこりと隆起した。

 そこから、守鶴も通り抜けられそうな巨大な鳥居が出現する。

 さらにその前にはやはり巨大な燈篭が2列、4対8基湧き上がってきた。

「ブ、ブンブク、こりゃ一体…」

 さすがのナルトも驚愕している。

 一方ガマブン太は、

「おうぅ、『門』の口寄せかぁ、なるほどぉ、考えたもんじゃのおぉ…」

「? オヤブン、これはいったい?」

「つまりのぉ、お前はワシを口寄せしたじゃろぉ?

 この坊主は口寄せをする()()が通ってこれる門を呼んだんじゃぁ」

「? つまりどういうことだってばよ?」

「つまりね、兄ちゃん。

 僕は強い化け狸さんたちが『通ってここに来る事が出来る』門を口寄せしたんだよ。

 門を口寄せしただけだから、ここを通って化け狸さんたちがたくさん来る事が出来るわけ」

「! それってもっのすげえ強いんじゃね!?

 もの凄え強い奴呼び放題じゃん!」

「あほぅ! 口寄せは呼んだ奴にある程度言う事を聞かせられるが、これじゃあ、来てほしくねえ奴とかもやって来よるし、来たからちゅうて言う事聞いてくれるとは限らんじゃろうがぁ!?」

「それはオヤブンも一緒じゃ…」

「何ぞ言うたかのぅ? んん?」

「いえ、なんでもないっす」

 ナルトとガマブン太が漫才じみた会話をしている間に、ブンブクはガマブン太の元から巨大な鳥居の上にとび乗り、胡坐をかいて手を合わせると、

「おいでませ、死国禁軍八百八狸!!」

 そう告げた。




という訳でヒルゼンさん生存イベントでした。
それから、大蛇丸さんがちょっと原作を逸脱しました。
これが今後どう原作を捻じ曲げていくのかは今後のお楽しみ、ということで。

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