NARUTO 狐狸忍法帖   作:黒羆屋

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ここから忍界大戦篇です。



第3部 忍界大戦篇
第111話


 第3部 プロローグ

 

 Access Request(アクセス要求)…… Access Denied(アクセス拒否)

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  ・

  ・

  ・

 我にはチャクラさえあれば良い。

 切り捨てた記憶など、不要也(ふようなり)

 

 

 

 本編

 

「第2部隊123(イチニーサン)班から152(イチゴーニー)班被害甚大!

 これより救援に向かいます!」

「おうっ!

 行くぞリー、テンテン!」

「はいっ、先生っ!」

「さっすがにぃ、いっそがしいよねえっ!」

 僕たち、茶釜ブンブクとマイト・ガイ師匠、ロック・リーさんとテンテンさんは戦線の端っこに補給物資を届け、そのまま大きな被害を受けた部隊へと救援に行く所です。

 ガイ師匠たちは身体能力が高く、それに伴って移動も早いので僕のお目付け役として4人1班(フォーマンセル)を組むことになったんです。

 ちなみに、元々ここの班だった日向ネジさんは、上忍になって自分の班を受け持っています。

 ちなみに元・音隠れの人たちと僕が入れ替わる形でその下に付いてます。

 皆さん、戦いと支援に命賭けの一日が始まりました。

 

 

 

 第4忍界大戦が開戦しました。

 始まりは何とも忍らしくない名乗り合いからです。

 これは、お互いに「正義はこちらに有り」と宣言する、というのもありまして。

 うちはマダラさん(仮)は己の力の誇示と、今の忍界、及び人界の在り様を嘆く事で、いい加減縄張り争いに疲れて来ている忍たちへの恭順を促す。

 んで、五影さま方はマダラさん(仮)のやり方は現実から逃げるだけだ、本当に大切なものがあるなら夢に逃げ込むのではなく戦い、勝ちとらねばならん、と言ってます。

 まあ、僕はその後ろでいろいろ準備をしている訳ですが。

「…では、お前に『奇壊虫』を一部預ける。

 上手く頼む」

 そういうのは油女シノさん。

 僕は油女一族の至宝である「奇壊虫」を少しだけ、皮の袋に入れてシノさんから預かっています。

 向こうの主戦力になっている「ゼツ」って呼ばれる連中は色々多芸なようです。

 五影会談の時も、チャクラを吸収したり、形を変化させることが出来るようでした。

 下手に擬態されると非常に厄介ですので、前線に出る人達のうち、幾ばくかにこうして虫を渡し、この子達に「ゼツの味」を覚えさせておこう、という作戦なんですね。

 彼らのチャクラの波形を「味」として奇壊虫たちに覚え込ませておけば、後々有利だろうという事なんですよ。

 …連中、その生まれに木遁が関わってそうだったんで、ヤマト上忍が居てくれると助かったんですけど。

 いないのは仕方ないです、何とか助けたいとは思うんですけどね。

 さて、僕は、

「金遁・部分什器変化!」

 を使って、肩口を茶釜に変形しました。

 そうして茶釜の蓋を取ると、そこに封印術の巻物をしまっていきます。

 封印術の巻物には主に消費型の忍具や応急治療キット、食糧なんかを大量に封じておいて、必要に応じてそれを取り出すことが出来るようにしておきました。

 それを更に僕の茶釜に放り込んでおくことで、多量の物資を持ち運ぶ事が出来るようになった訳です。

 で、そうなると、一人輜重部隊な訳で、僕をやっつける事で兵站を大きく損なう事が出来る訳ですよ。

 なんで、僕に護衛が付く事になった訳ですが。

「うむ! 弟子を守るのも師匠の務め、という訳だ!

 兄弟子もそうだぞ、リー!」

「はい師匠!」

「…あー暑っ苦しい」

 ガイ師匠とリーさん、そしてテンテンさんがその任務についてくれる、という訳ですね。

 師匠やリーさんは僕の事をよく知ってるし、テンテンさんもそう。

 だから、まあ、護衛兼お目付け役、という事で。

 下手をするとあのイリヤとやらいう奴が僕と入れ替わってたりするかもしれない、という訳ですよ。

 …なかなかきっつい冗談ですけどね。

 何が悲しゅうてあの分身に「イリヤ」何ぞという名を付けたんだか。

 ぶすくれる僕に、テンテンさんが言う。

「その『イリヤ』ってなんなの?

 アンタの分身を使って作った『穢土転生』みたいなもんだって聞いたんだけど?」

 敵が穢土転生を使ってくるのはほぼ確実なので、術についての情報は周知されている。

 おかげで大分士気が下がっちゃったけどね。

 まあそれはそうだろう。

 かつてその腕前を恐れられた忍が敵として襲ってくる可能性が高いんだ。

 先代の雷影さまなんて「ハイスピード&ハイパワー&無敵の防御」だそうなんですよ、どこが忍だと僕は言いたい、羨ま妬ましい。

 まあそれはともかく。

「なんかね、どうも僕の頭ん中の知識の中に、それっぽい『創作物の登場人物(キャラクター)』があるんだけどねえ。

 僕とは全然似ても似つかないんですよ。

 何と言っても向こうは物語の『ヒロイン』ですからして」

 僕がそういうと、ガイ師匠、リーさん、テンテンさんが固まった。

 そして。

「ぶふっ!?」

 3人同時に噴き出しやがったのです。

「いやすまん!」

「ごめん、ブンブク君、でも…、くくっ」

「いやあ、かわいいわよブンブクちゃん、あはははっ!」

 そんなに面白いですかね。

 まあ確かに、僕が女装した所で絶対きれいとは言われないでしょうが。

 どっか間抜けな子狸風のおかめちゃんでしょうし。

 さすがに向こうさんも僕そのものの外見は使わなかったようでして、骨格的に無理の無い様に僕を女の子にアレンジしてました。

 …なんというんでしょうか、体がむずむずすると言うんでしょうか。

 分身という概念がある以上、自分とそっくりなのは別にかまわないんですけどねえ。

 なんか落ち着かない。

 …そろそろ笑い終わりません?

「いやすまん!

 大丈夫だ! きっとお前なら女装も似合うから!」

 ばちこーん! と音がしそうなくらいのウィンクにサムアップをしてくる師匠。

 もういい加減勘弁して下さい。

 これで僕を「いじってる」訳じゃないのが師匠の怖いとこなんだよなあ。

 リーさんもそこいら辺は同じでして、

「大丈夫! 十分にかわいい、と思いますよ、多分!」

 更に傷口を抉ってくれまする。

 僕はかわいいとか言われたい訳じゃなくて、ねえ…。

 はいそこ!

 テンテンさんもニヤニヤしながら砂隠れ謹製の「タレ茶釜ストラップ」出さないの!

 正直それ僕のトラウマなんだから…。

 

 

 

 さて、戦場です。

 人数的には劣る忍連合軍ですが、善戦していると言って良いでしょう。

 相手の主力となる「白ゼツ」の方々は戦力としては中忍レベル。

 チャクラ吸収が厄介なのですが、その吸収能力も次郎坊さん当たりと比べると断然遅いです。

 ですので、戦力としてはまあ大したことがない、筈だったのですが。

「火遁・豪火球!」

 うぉたたぁっ!

 あっぶな…、丸焼きになるところだった。

 所々、こういった強力な術を使う個体がいるんです。

 白ゼツさんたちの強み、それは、

 

 画一的な外見と個体差のある戦闘能力

 

 の様です。

 僕たちは白ゼツさんたちの外見が同じである、という事でその能力も同じだろう、と思ってしまっているんですね。

 だから、いきなり高レベルの攻撃を受けた場合対処できない可能性が高い。

 救援要請を出した班も、それで油断したんだと思う。

 だけど。

「ダイレクトォ!」

「エントリィーッ!!」

 ごぅうん、という音と共に今まで一方的に攻め立てていたゼツさんたちの集団が、ガイ師匠とリーさんの突撃で吹き飛びました。

 …なんて言うかね、

「ホント、リーも非常識になったわよね…」

 同感です、テンテンさん。

 なんて会話をしながら、ゼツさんたちの集団と僕たちも戦っています。

「ほいっ!」

 僕が八畳風呂敷くんを変化させた鞭で相手に足払いを掛け、

「でいやっ!」

 テンテンさんが大鉄球を口寄せして相手を押しつぶします。

 僕やテンテンさんは大集団に取り囲まれたら対処のしようが無くなりますんで、とにかく近寄らせない方針で。

 それに、戦いはまだまだ序盤戦ですから、忍具を大量に消費する訳にもいきません。

 そういう訳で、戦いは主に師匠とリーさんにお任せして、僕は負傷者の応急処置に、テンテンさんは僕の護衛をして貰います。

「はい! 出来るだけ動かさないで!」

 火遁や雷遁による火傷に膏薬を塗り、裂傷には持って来た封印術の巻物から水を出して洗浄、チャクラ糸の要領で動物の腸線を加工した糸で縫い合わせます。

 骨折にはやっぱり腸線を傷口から送り込んで骨をある程度固定してから添え木と包帯で固定します。

 いやあ、チャクラ糸の使い方を覚えておくと、添え木を両手で固定しつつ、包帯をチャクラを使って巻けるんで便利ですよね。

「はい、応急処置終了! 後方に下がって治療を受けて下さい!

 はい次! ってなんとおぉっ!?」

 戦線をすり抜けてきたゼツの1人がこちらに向けて突撃を掛けてきましたが、

「八畳風呂敷ガード!」

 ばさりと八畳風呂敷くんを広げ、チャクラを流すことでその攻撃を受け止め、即座にそれを棍に変えて、

「せあっ!」

 その眉間に突き込みました。

「!?」

 さすがにふらつくゼツさん。

 そして、

「このっ!」

 テンテンさんの一撃を受け、そのゼツさんは叩きのめされました。

 

 さて、ガイ師匠とリーさんの「大」活躍により、戦線を押し返す事に成功しました。

 所詮、一部のゼツさんの奇襲により勢いを増しただけの話、一旦食い止められれば戦線の維持は可能な訳です。

 しかし、班によって形質変化を偏らせるのは危険かもしれませんね。

 向こうさんがどういった方法で互いの連絡をとっているかは分かりませんが、ゼツさんたちに基本能力として相互の連絡が取れる可能性はあると思うんです。

 そうなって来ると、こちらの術の相克を狙って、使える形質変化を調整してくる可能性は高いでしょう。

 なにせ、外見でどういった術を使ってくるか、それが分からないのが相手の強みですから。

 こっちだと、額当ては統一してますが、さすがに戦闘服は自前の里のものを使ってます。

 それなもんで、里ごとに得意とする術がある訳で、その辺りから大体推測されてしまう訳ですね。

 火遁が得意な木の葉隠れの里の忍には水遁が得意なゼツを、って感じです。

 向こうさんはどうもマダラさん(仮)に完全に指揮が一本化、というよりは彼しかいない、という事なんですかね。

 言ってしまうとこの戦いは、僕たち忍連合軍対うちはマダラさん(仮)の扱う「道具」との戦いって事になるのかもしれません。

 …それだけの準備をするのに、どれだけの準備が必要だったのでしょうか。

 よほど才能があったのでしょう、とても1人で出来る事とは思えません。

 またはよっぽど優秀な参謀がついて、様々な采配をしてくれたのか。

 

 さて、僕の個人的な興味としては、今のところマダラさん(仮)の道具ばかりのこの戦場で、唯一であろう盟友? のうちは兄ちゃんがどこに現れるか、です。

 …多分なんですが、うちは兄ちゃんを説得できるとしたら、うずまき兄ちゃんだけではないかと思うんですよ。

 まあ説得といっても拳骨をぶつけ合うようなんだと思いますけどね。

 戦場は生き物です。

 どこで何が起きるか分かりません。

 今は人柱力のみなさんが来てませんから事態は動いてませんが、絶対に来ると思うんですよね、兄ちゃんにビーさん。

 方向性はフーさんも一緒だから、今戦争やってるって知ったら押し掛けてくるだろうなあ。

 その時に兄ちゃんと九尾さんの関係がどうなってるかでそっから先がどうなるか、変わって来る気がします。

 多分僕にはその間に介入する事はないんだろう、そう思うのです。 

 

 

 

 とうとう、相手方の本命が動き出したようです。

“戦闘特別部隊、『山椒魚の半蔵』と交戦中!!”

“奇襲部隊、『傀儡の』モンザエモンを名乗る敵と接触! 戦闘に入ります!”

“こちら遊撃隊、『かぐや一族』と接触! 戦闘を避け、情報収集を行う!”

“こちら第3部隊312班、『霞谷七人衆』と接触、救援を求む!”

 どれもこれも、五大忍里が出来た辺りから今までに消えていった優秀な忍、忍軍ばかりです。

 つまりは、穢土転生。

 死んだ者を引っ張り出してきた訳ですね、向こうさんは。

 個体戦力で言えば、忍連合軍の方に軍配が上がります。

 強力な実力者を前面に押し出し、それをサポートする形で忍連合軍は相手と戦っています。

 今の所、このやり方が最も効率的なんですよね。

 で、相手方も同じことを始めた訳です。

 それはまあ当然なんですよねえ。

 …が。

 どこかおかしい。

 僕はてっきり「大蛇丸さんが集めた死体」を掠めとってそれらを用意した、と思ってたんですよ。

 だから、山椒魚の半蔵さんとか、体術最強を謳われたかぐや一族はまあ分からなくもないんです。

 でもですよ、傀儡操演の開祖と言われるモンザエモンさまはおかしいでしょう?

 大蛇丸さんがそう言った触媒を手に入れ始めた頃、既にモンザエモンという人は伝説の中の人になっていた筈。

 それがなんで?

 どうやって触媒であるその人の一部を手に入れる事が出来たのか。

 それに、「霞谷七人衆」ってのもおかしい。

 これもまた昔に滅んだ人たちで、確か初代火影さまの昔語りに出てくるような人たちだった筈。

 こう考えてみると、うちはマダラを名乗る人は相当前から策を練っていたのだろうと予想できる。

 …こうなると、うちはマダラ(仮)の仮部分は取った方がいいのかな?

 この世界、年齢1ケタから超人的な活躍をする人が珍しくないから、そういった年齢の時から世界を取る為の陰謀を巡らせるヤな子どもがいてもおかしくはないと思う。

 僕が実際そうだったし。

 幼少時の僕は「周囲の人間の観察」っていう目的の為だけに存在した様なものだったから。

 むしろ今の方がおバカになっている気がする。

 誰の影響だろうか。

 まあそれはともかくね。

「救援に行きましょうか!」

 僕はみんなの方を振り向いて、そういうのでした。

 

 さて、移動していくと、木の葉隠れの里(うち)の方々が奮戦しているのが見えます。

 特に目につくのが、

「超倍化の術ぅぅっ!!」

 秋道の方々でしょうか。

 倍化の術によるあの巨体が質量のハンマーとなって相手を襲っています。

 あれだけで何100人と相手は潰れてるはず。

「ぅおおぉぉっ!」

 …時々潰れないで逆にあの体を押し返しているゼツさんもいるようですが、

「影首縛り…」

 あ、奈良シカマルさんの影縛りから、

「せっ!」

 山中いのさんの起爆札付きのクナイで仕留められたようです。

 相変わらずコンビネーションが凄いよねえ。

 よく見るとあっちにいるのは犬塚キバさんかな?

 赤丸くんと分身を使って、チョウジさんの攻撃範囲内にうまく敵を追い込んでた訳だ。

 今、キバさんは本来の班とは別に、遊撃、つまりは個人で動いて他の人たちのフォローをして回っているのです。

「せあっ!」

 あちらでは日向ヒナタさんが奮戦中です。

 はて、柔拳というよりは剛拳に見えますね?

 ハッキリと形まで見えるまるで獅子の様な両手のチャクラ、本来ならばあんなんで白ゼツさんを叩いたりしたらそのチャクラは吸収される筈なんですが、

 ごっ!

 …吸収される前に相手を叩きのめせば関係ない、というところでしょうか。

 よく見ると倒れたゼツさんの周囲に黒い塊が。

 多分、油女シノさんの奇壊虫ですね。

 さすがに相手にはチャクラ吸収能力がありますから、そのまんま奇壊虫を消しかける訳にはいかないのでしょうから、倒れてチャクラ吸収能力を使えなくなった所で相手のチャクラを取り出してるんでしょう。

 それを使ってさらに奇壊虫とか、周囲の忍のチャクラを補充してるんですね。

 さすがだよなあ。

 なんて考えながら走っていると、

 

 どんっ!!

 

 もの凄い衝撃と共に体が浮き上がりました。

 はるか彼方の方で、キノコ雲みたいなのが上がってます!

 あれは…、ああ、アンコさんか。

 今やアンコさんは木の葉隠れの里でもトップクラスの破壊力を持つ人になってます。

 特に空に浮きあがり、相手の頭上から繰り出される「熱の吐息(ファイアブレス)」は洒落にならない威力を誇ります。

 何が強いって、その攻撃、チャクラを撃ち出す術じゃないのですよ。

 火遁のチャクラで熱を生成、それをチャクラの外殻で覆う事で途轍もない熱を持つ球体を吐き出してるんです。

 で、それが接触すると大爆発、と。

 この攻撃はチャクラを吸収するゼツさんたちにとっては鬼門です。

 なんせ、言ってしまえばこの攻撃は「体術」なんですから。

 吸収するチャクラは外殻のみ。

 それを吸収ちゃうと途轍もない熱という物理攻撃を浴びる羽目になる訳ですからして。

 とは言え、弱点がない訳じゃありません。

 この攻撃は「仙術チャクラ」を使ってますんで…。

 よっこいしょ。

 僕は頭上叩く飛んでいるアンコさんに、ブン! という音と共に、八畳風呂敷くんを棍状にして思いっきり繰り出しました。

 それはずぉっと伸び、

「あぁっはっはっはぁ! そーれ消し飛べ…ぶげっ!?」

 テンションが上がり過ぎ、チャクラの制御が甘くなって、だんだんと人外の見てくれになりつつあったアンコさんの顎を打ち抜きました。

「あにすんの豆狸ぃっ!」

 なんか言ってますが無視です無視。

 アンコさんてばあのまんまだと前回みたいに三首金色龍(キングギドラ)みたいになっちって暴走しちゃいますからね。

 自来也さまもその辺りで見てる、というか裏で動いてるでしょうから大丈夫だとは思いますが。

 ドス・キヌタさんたちもメイキョウ先生と一緒に遊撃に出ているようですし、今の木の葉隠れの里(うち)は充実してますよねえ。

 

 さて、ここで朗報が届きました。

「雲に二つの光あり」と謳われた雲隠れの英雄にして反逆者、金角銀角の金銀兄弟、彼らってどうやら穢土転生で復活して大暴れしてたんですが、それを雲隠れのダルイさんとうちの猪鹿蝶トリオが封印したとの事。

 やれやれです。

 確か、この2人ってよりにもよって九尾さんの体を噛み切って食べちゃったそうで、その影響で九尾のチャクラが使えるんだとか。

 下手をすると兄ちゃんの天敵になりかねないので、早々に封印して正解でしょう。

 そんな事が出来るとなれば、七尾さんや八尾さんの肉も狙うでしょうし。

 厄介なものですからね。

 とは言え、向こうもその金銀兄弟のせいでかなりの損害を受けた様子。

 僕とテンテンさんで先行して応急処置を、そう思った時です。

 

 どんっ!!

 

 衝撃が周囲を包みました。

 そして、

「なんだありゃあ…」

 呆然としたガイ師匠の声。

 師匠の視線の先をたどり、僕は唖然としました。

 

 外道魔像。

 

 十尾のチャクラを奪われた抜け殻とも言われる代物。

 それが、超倍化の術でおっそろ強い大きさになっているチョウジさんとお父さんのチョウザさんの前に立ちはだかっていました。

 それは、僕たちが現場に着く前に消えてしまいましたが。

 そして僕は「途轍もなく悪い情報」を聞く事になったのです。

 

「…ああ、金銀兄弟を持っていかれた」

 シカマルさんがそう言います。

 僕は周囲の忍たちへ応急手当てをしつつ、封印術の巻物から大量の食糧を取り出しています。

 まあ、大体予想をしてるでしょうが、

「うん! 相変わらずナカゴさんのおはぎは美味しいよねえ!!」

「チョウジ! おはぎばっかり食っとらんと、肉も食わんかい!」

 秋道の方々がとんでもない食欲を発揮してるからです。

 超倍化なんて、どんだけカロリーが必要になるんだか。

 しっかし、回収されちゃったかあ。

 あの兄弟は、雲隠れの人たちから聞く限り、二人セットだと前雷影さまを上回るだけの力を持っている様子ですし、それを取り逃がしたのは痛いかなあ、と思う。

 …なんか引っ掛かるんだけどね。

「ねえ、シカマルさん、なんかこう引っ掛かるんだけど、なんなんだろうね」

 僕がそうシカマルさんに言うと、

「確かにな。

 あの『ぐるぐる仮面』野郎は六道仙人の宝具の方じゃなく、それに封印された金銀兄弟の方が重要だっつってたんだよなあ。

 それも騙り(ブラフ)ってことも考えられるが、どうも引っかかりやが……」

 シカマルさんが唖然としている。

 なんか気がついたんだ、しかも特厄に。

「どうしましたか?」

 聞きたくない、でも聞かざるを得ない。

 そう恐る恐るシカマルさんに聞いてみると、です。

「なあ、あの金銀兄弟は、生前と同じ力で穢土転生で復活してんだよな」

 まあそうですよね、それが「穢土転生」の恐ろしい所ですからして。

「つまりは、あいつらは取りこんだ『九尾のチャクラ』ごと復活した訳だ、な」

 まあそうなりますね。

 …それをあのうちはマダラさん(仮)は回収していった、と。

 それにどういう意味があるか、というと。

「限定的ながらも、あいつらは『九尾のチャクラ』を保有してんだよな」

 …そして、確かビーさんも、う、ちはサスケさんに八尾さんの脚1本持っていかれてる、と。

「だな。

 そして八尾のチャクラの一部はさっきの『外道魔像』に取りこまれてるんだろうな」

 …そうですね、一部とはいえ、八尾さんのチャクラが取り込まれてる、と。

 僕は参謀本部に連絡を入れて、奇襲部隊に参加している滝隠れの忍びの様子を確認してもらいました。

 そして、

「…シカマルさん、遅かったようです」

「そっか、ちっ、めんどくせえ…」

 滝隠れの忍の使う「蟲骸巨大傀儡・鋼」が穢土転生によって復活した「干柿鬼鮫」に襲撃を受け、その体内に蓄積していた膨大な量の「七尾のチャクラ」を奪われた、という連絡を、僕たちは受けたのです。


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