さて、本日は栄あるうずまき兄ちゃんが中忍になれるかどうか、という「中忍試験・本選」の開催日です。
数年に1回のイベントですんで、里全体が浮ついております。
あ、確かに中忍試験そのものは年に2回行われる訳なんだけど、ほかの忍里との合同で行われるので、うちの里でやるのはやはり数年に1回程度になってしまう訳ですね。
各国のお殿様とその側近、政治をつかさどる偉い人なんかも見に来る一大イベントです。
それだけに、警備とかにはものすごく力を入れているわけですよ。
なにせ、貴賓に何かあったらそれだけで里をつぶされかねない失態なわけで。
だったらそういった人たちだけを守れば、ってわけにもいかず。
なにせ、周辺の商人や、言っちゃなんだけど露店を出す的屋さんたちにとっても書き入れ時なわけで。
このイベントのために、周囲から大量の人が流入してくるわけです。
この数日で、里の人口が倍くらいにはなるんじゃないでしょうか。
それだけ人が来ている時に、警備を出さないのは里の名折れでしょうしね。
真面目な話、忍って各国の国防の要とも言える代物ですし。
通常の軍隊と違って、少数精鋭、戦闘暗殺護衛諜報防諜となんでもござれのスーパーマン集団。
少なくとも世間一般にはそういうことになってますし。
「超忍戦隊ホノレンジャー」とか、テレビでやってるくらいには忍及びその忍術って世間に認知されてますしね。
ヒーローものにおいて、忍者はメインを張る代物ですから。
…おかしいな、忍ぶってどういう意味だっけ。
ま、考えないようにしよう。
そんな忍を輩出する忍里において警備もろくにできないのか、というイメージは対外的に非常に都合が悪い。
ついでに言えば、イベントで里に入ってくる税金や経済活動で動くお金は木の葉隠れの里にとってもバカにならない金額なのだそうです。
警備を請け負う部署にいるおっとうとかは「しんどい、勘弁」とかいってるけど、事務方で仕事をするおっかあからすると「毎年開催してほしい」くらいなんだそうです。
さて、朝も早よから街に繰り出すと、もうすでにメインストリートは人で埋め尽くされていました。
ホント、どこにこんな大勢の人がいたのやら。
まあ、この時期だと、そんなに冷え込む事もないし、里の郊外にテントを張って泊る人もいるくらいですから。
あとは仮設の急造ホテルとか、いろいろと対策は講じていますしね。
土遁を使うと本当に簡単にできちゃいますからね。
おかげで土遁を使える忍は、上忍からアカデミー生までかき集められて作業してました。
え、僕ですか?
特に声をかけられたりはしていませんが、なにか?
どーせ遁術に関しては落ちこぼれですから、ええ。
…すねてる場合ではありません。
この日のためにお小遣いをため込んでいたのですから。
レッツ買い食いです!
いや、朝からしっかり食べてきたので、そんなに入んないんですけどね。
ここしばらく、おっとおもおっかあも、うちの一族の人たちは総出で中忍試験・本選というイベントの下準備をしてきたのですから。
一家の団欒というやつは朝食時くらいなのですよ。
なので、今日という買い食いし放題の日にも関わらず、しっかりご飯と御身御付けまでお代わりしてきてしまったのですね。
ちなみに、おかずはおっかあが朝忙しかったためか、納豆に卵焼き、ハムときゅうりの浅漬けでした。
若干見た目はちぐはぐですがこれはこれでおいしゅうございました。
しかし、なあんか人の流れが奇妙というか。
ところどころ人の流れに逆らって動く人たちが。
別におかしいってほどじゃないんだけどね。
でも、今の時間ならスタジアムへの流れ一択なはずなんだけど。
1人2人ならおかしくはないが、それが
前世の記憶から集団というものの動き方を学んでいるからこそ分かるのかも知れない。
何か起こるのかも。
カブトさんの件もあるし、今日は何か起きるのかもしれない。
いったん家に帰って、いろいろ用意してきた方がいいかもしれない。
僕はもぐもぐと食べていたリンゴ飴の串をゴミ箱に捨てると、一旦家に戻り始めた。
その頃。
「おかしいですね、茶釜ブンブクは既に家を出て、B地点を通り過ぎたはず。
とっくにここに差し掛かっていておかしくないのですが」
中忍試験・本選の行われる競技会場、その道すがら。
1人の商人がそうつぶやいていた。
いや、商人風の服装をした男、と言おうか。
男は音隠れの里の中忍であった。
彼は里長の命を受け、茶釜ブンブクの誘拐をその任務としていた。
目標は順調にこちらに近づいているはずだった、その筈なのに。
「目標喪失? ち、何をしてやがる!?」
里長の大目標である「木の葉崩し」のために、人員を割けなかったのが災いしていた。
一旦目標を見失った場合、人出が少ないため、発見するのが難しいのだ。
さらに、目標は小柄であり、人ごみに紛れやすいのも発見を困難にする要因であった。
とはいえ、この任務は重要なものではない。
「総員撤収、本隊に合流する」
本来の目的のため、彼は人員を撤収させ、里の中にいる攻撃部隊との合流を図ることにした。
偽装のための商人としての荷物の中に、見慣れない徳利が1つ入っている事に気づかすに。
「失礼いたします」
部下からの声がかかった。
風影、少なくともその姿をした者は、そちらを見もせずに、
「何があった?」
そう問いかけた。
部下は耳元で、
「良い食器を買うことはできなかったとのことです」
茶釜ブンブクの誘拐に失敗した、と伝えてきた。
「そう、分かった」
そうか、誘拐には失敗したのね。
偶然なのか、気が付いていたのか。
気が付かれていたと考えるのが妥当かしらね。
面白いわ。
本人が聞いていたら悶死しそうな事を、風影の姿をした大蛇丸は、覆面の下で舌なめずりをしながら考えていた。
「おや、風影殿、どうかなさいましたかの?」
風影の様子を横目で見ていた三代目火影・猿飛ヒルゼンから声を掛けられ、大蛇丸は内心の動揺を表面には微塵も出さずに答えた。
「いやなに、火の国は豊かだ。
この国では扱う食器なども砂の国とは違うものでね。
良い出物があれば、買っていくつもりだったのだよ」
「なるほど、それはありがたい
風影殿の愛用なれば、食器の価値も上がろうというものですからな」
本心から言っているのか、韜晦しているのか、こと腹芸となると、大蛇丸はヒルゼンに1歩も2歩も及ばない。
判断のつきにくい事柄ではあるが、木の葉崩しさえ成功させればよいと、大蛇丸はこの場は流してしまうことにした。
さて、棒手裏剣に寸鉄、忍び装束を身につけてその上から八畳風呂敷をまとい、チャクラを流して風呂敷くんを普通の服に変化させる。
少しでも偽装を施しておくことで、何かあった時の状況打破能力を上げておくに越したことはないだろうし。
さらに、念話でカモくんと会話をする。
“兄貴ぃ、どうしたんすか、いっつもはこの時間学校じゃありやせんでしたっけ?”
「うん、今日は前に言ってたイベントの日でさ」
“ああ、中忍試験とか言う”
「そ、それ。
んでさ、うちの里にたくさん人が来てるんだけど、その中で変な動きをする人たちがいるんだよね。
もしかしたら大騒動になる可能性を考えてさ」
「なるへそ、
「無きゃないで越したことはないんだけどさ、まあ、万一の時の保険って事で。
そういうことなんで、太郎坊さんやみんなの予定を聞いておいてほしいんだけど」
“いいっすよ。
確認取れたら兄貴に連絡するっすよ”
「お願いね、カモくん」
さて、スタジアムに行こうかなっ。
僕は少し遅くスタジアムに着いた。
スタジアム前には既に忍術学校の生徒たちと先生方が集まっていた。
僕たちアカデミー生は先輩方の試合を見るのも勉強になるため、学校としてスタジアムの席を抑えてくれているのである。
「遅いぞ、ブンブク、後から学校のトイレ掃除な」
イルカ先生からきついお達し。
しょうがないんだけどさ。
さて、気分を切り替えて、試合を観戦しましょう。
楽しみです。
さて始まりました、中忍試験の本選。
お約束通り、三代目火影さまの挨拶とか、国主である火の国のお殿様とか、いろいろ融資してくれている企業のCEOとかの挨拶が入り、本日の試合予定が発表された。
うちの里でやる場合、大体がトーナメント方式である。
さて、どういう組み合わせなのかな…。
お、1番最初にうずまき兄ちゃん発見。
お相手は…、うわ、天才日向ネジさんだよ。
これ拙いんじゃないかしらん。
兄ちゃんはある意味進歩の天才でもある。
なんといってもたった1回巻物を見ただけの影分身の術が、今では戦いの主力になっているくらいだ。
兄ちゃんがこういった場で経験を積めば積むほど強くなっていく。
1試合目で適当な人と戦った後にネジさんと戦うのならば、試合前と試合後で兄ちゃんの強さはガラッと変わっているはずで、ネジさんをして読み違い、ってのはあったんじゃないかと思うんだけど。
さすがに、兄ちゃんでも試合中にネジさんの予想を上回るスピードでの進歩ってのは、いくらなんでも期待するのは無茶だろうし。
しかし、万一ネジさんを倒したとして、次は我愛羅さんかサスケさんかあ。
兄ちゃんトーナメント運ないなあ。
もっとも、一等相性の悪いシカマルさんとは最後の最後だし、多分シカマルさん途中でギブアップとかしそうだから、まあ、1番に当たらなかったのは幸いなのかな。
とか考えていた僕は甘かったね。
うずまき兄ちゃんの成長スピードは半端じゃない。
試合の最初こそ兄ちゃんを圧倒していたネジさんだけれど、終盤には五分五分以上の戦いとなっていた。
途中で日向の秘伝「柔拳」を受けていたはずだけど、チャクラを分断されてなお兄ちゃんは有り余る力をもっていた。
確かに兄ちゃんのチャクラ量は半端じゃない。
しかし、兄ちゃんの凄いところはそれだけじゃなかった。
ネジさんは兄ちゃんのチャクラを封じただけで自分の勝ちだと思い込み、隙を見せてそこから試合の流れをひっくり返されていた。
さすがはうずまき兄ちゃん。
弟分として誇らしかったりする。
時に、さっき観戦席から出て行った人たちは、キバさんと日向ヒナタさんかな?
ヒナタさん体調悪そうだったし大丈夫かしら。
キバさんは多分付き添いだよね。
キバさん口は悪いけど人は良いから。
それに、さっき一通り席を見回したけど、リーさんとガイさんが見当たらない。
テンテンさんらしい人はいたので、その近辺にいないということはまだ着いていないのだろうか。
迎えに行った方がいいかもしれない。
なんか次の試合が始まる様子もないし、ちょっと見に行ってこようかな。
席を離れて、スタジアムの出入り口のあたりに来た。
出入り口のあたりには護衛の忍の人たちがいた。
「すいません」
僕はその人たちに声をかけた。
「あん?」
「すいませんが、上忍のマイト・ガイさんとお弟子のロック・リーさん見ませんでしたか?」
あの2人はいろいろ有名なので、この人たちも知ってるだろう、そう思って聞いてみた。
「ああ、そう言えば見てないな、お前はどうよ?」
「いや、俺も見ていない。
ガイさんたちがどうかしたのかい、坊や」
いや、一応僕11歳ですからね、年齢一桁とちゃいますよ!
「え!」「ええ!」
いや、だからなんでそんなに驚くんですか!?
まったく誰もかれも!
「…ま、良いですけど。
ガイさんとリーさんにはちょっとした縁がありまして」
そう言って足についている「根性パワーアンクル」を見せると、
「ほう! ガイさんの新しく弟子になったてのはキミの事か!」
って… はい?! 誰がいつ弟子になったんです?
「いや、ガイさんよく言ってるよ、リーと一緒に鍛えるのが楽しみだって」
むう、もうちょっと体が大きくなったら頼んでみよーかなーとか思ってたんだけど。
ちょっとワクワクしたりして。
んでも、ここにいる人たちでも見てないとなると、迎えに行った方がいいのかなあ。
そんなことを考えていると、
「ほら、ガイさんたちが来たら教えてやるから、ちゃんと試合を見てきなさい。
見るのもまた修行のひとつでしょ」
と言われた。
この人たちもやっぱり忍なんだなあ、見ることの重要性を僕に説いてくれた。
「分かりました、じゃあ戻りますね」
「あ、そうだ。
さっきの試合、どっちが勝ったか分かるかい?」
「あ、はい、うずまき兄ちゃん…うずまきナルトさんが、日向ネジさんに勝ちました」
「ほう、それは番狂わせだな」
「たしかに、そうか、
まだ、兄ちゃんにはいろんな偏見が付きまとっている。
兄ちゃんはそれに1つ1つ打ち勝っていかなきゃなんない。
だから、
「はい、僕のさいっこうの兄貴分です!」
僕は兄ちゃんを思いきり誇るのだ。
戻ってみると、周りは騒然としていた。
? 何があったのだろうか。
答え。 何もなかった、です。
というか、本来なら既に始まっているべき第2試合がまだ行われていていなかったのだ。
選手が来ていないとか。
普通なら失格になるんじゃないの?
そう思ったのだが、そっか、第2試合はうちはサスケさんと我愛羅さんだったっけ。
うちは一族の実質唯一の生き残りであるサスケさんは、火の国だけでなく、他国からも注目される人材だ。
うちはの天才、うちはイタチさんの弟でもあるし、その才能はイタチさんにも劣らないとの評価もあるくらいだし。
我愛羅さんの評価は分からないけれど、砂隠れの里がチームリーダーとして推してくる人材だ。
ちらりと上の方を見ると、火影さまと並んで風の国の忍長である風影様の姿も見える。
サスケさんと我愛羅さんの試合は国の上層部の意向で組まれたのかもしれないな。
そうなると、第2試合が我愛羅さんの不戦勝ってことはないのかも。
でもなあ、もうそろそろ始まらないと、なんか暴動とか起きそうなんだけど。
そうしてると、審判の方(確か不知火ゲンマさんだったかな?)が第2試合を1回戦の最後に回すことを告げ、第3試合から開始する旨を伝えていた。
サスケさん失格にはならなかったんだ。
でもなあ、中忍試験は、
見たところ、はたけカカシ上忍もいないみたいだし、大丈夫かなあ。
あ! そういうことか!
指導上忍も一緒にいないってことは、これは
なるほどなるほど。
国の上層部までが興味を持っているカードなんだから、こうやって焦らしたり、多分登場にも演出を加えたりして「うちはサスケ」ってブランドを作ることで、木の葉隠れの里の上層部はサスケさんを下手に国や他の忍里からの手出しをさせないように守るつもりなのかも。
なにせ「うちは」の名前は今の里の中では厄介事の代名詞みたいになって来てる気がする。
「九尾事件」の黒幕説から始まり、うちは一族の皆殺しなど、陰謀満載の周辺状況だし。
うずまき兄ちゃんの二の舞にはなってほしくないものです。
さて、次の試合は、って?
あれ、第3試合のシノさんの相手、砂隠れの里のカンクロウさん、棄権するって!?
なんでまた、ここまで来て…。
なんだろう、このもやもや感。
で、第4試合。
シカマルさんと、砂隠れの里のテマリさんの試合になったわけだけど。
! 凄いよ!
テマリさん、あのでっかい扇子で風を起こして、さらにその扇子の上に乗ってひらりって、ひらりって会場におりてったよ!
やっぱあれで空飛べるんだ!
いいな、あれ!
僕も八畳風呂敷で滑空はできるけど、自由に飛ぶためには五郎坊くんの力が必須だし、それですらまだまだ修行しないと自由に飛ぶ、って訳にはいかないしね。
あ、シカマルさんがフェンスからおっこってきた。
あんな演出する人だったかな、と思ったら、うずまき兄ちゃんが見えた。
兄ちゃん、シカマルさんを突き落としたね、後でお説教です。
さて、僕にとってはこの試合はここまでかな。
シカマルさんが気張るとも思えないし。
試合が始まったが、テマリさんの突風忍法から身を隠し、シカマルさんは策を練っているのだろう。
周りからはブーイングが飛んでいる。
席の下の方では、あれはイノさんかな「ボッコボコよー」「16連コンボよー」とか、激励を飛ばしてる。
とかなかなか動かない試合を見ていると、
“兄貴、兄貴ぃ!”
カモくんから念話が入った。
なんだろ、妙に焦ってる気がする。
僕は同級たちに「トイレに行ってくる」と席を立った。
「それで、化け狸の里のみんなはどうだって?」
“へい、さすがに禁軍八百八狸全員って訳にはいきませんが、団三郎様、金長様や六右ェ衛門様など、力の強い方を中心に百余名の方が参戦してくださるとの事っす”
「へ!? なんか凄いね、もしかしてみんな大きいの?」
僕としては岩室5兄弟に協力してもらえれば、程度のつもりだったんだけど。
“そうでやすね、小柄な方はいますが、でっけえ方になるとそれこそ家よりもでっかい方もいらっしゃいますね”
「へ、へえぇ」
怪獣大決戦みたいにならないかな、それ。
里が更地になったりして。
…シャレになんない。
裏技を使う時に場所に気をつけないと。
戻ってみると、結局シカマルさんは負けた、というか予想通り降参していた。
多分勝ち筋が見えなくなったんだろう。
ここで降参しても試合回数が減るだけで、中忍昇進へのアピールは十分にできた、って判断したんだろうし。
つか、シカマルさんだったらさっさと上忍に昇進して、人を使える立場になった方が里のためだと思う。
リーダーシップとか、作戦立案とか、そういった方向でこそシカマルさんの能力は生きると思うし。
僕もシカマルさんに使ってもらえるのを楽しみにしているのです。
さて、ここからとうとう今日のメインイベントだよね。
アリーナに飛び降りてシカマルさんに文句をつけているうずまき兄ちゃんも次の試合に興味しんしんなのが見て取れる。
とか言ってると、あれ、まだ待たせるの?
周りがかなり苛立ってきている。
そろそろ危険な兆候が、見えてきた…、と思ったら。
アリーナに一陣の風が吹いた。
木の葉が盛大に舞って、
そこに、
2人の忍が現れた。
さっすが、かっこいい!!
誰だろ、この演出考えたの!
サスケさんとカカシ上忍。
2人が背中あわせに登場し、スタジアムは熱狂の渦に包まれた。
この演出はこの分だとカカシ上忍かな。
なるほど、万能のコピー忍者は伊達ではないんだなあ。
こういう様々な才をもっているからガイさんとも張り合えるんだろうなあ。
そう言えば、リーさん、まだ来ないのかな。
この前お見舞いに行ったときは、外出許可が下りるって話だったんだけど。
この試合はどうせなら、リーさんの解説付きで見たかったんだけど。
どうせ、高度な技の応酬になるだろうし、僕じゃ理解できそうもないんだよね。
どうしたもんだか。
試合が始まると、すさまじい体術の嵐。
飛び道具や忍術では我愛羅さんの砂の防御を貫けないと考えたのか、サスケさんはリーさんを彷彿とさせるような体術で我愛羅さんを押しこんでいく。
そうしていると、我愛羅さんが完全防御態勢、というのだろうか、砂でできた卵のようなものを作り、中に入ってしまった。
これは、多分強力な術を組むまでの時間稼ぎ、なのだろうか。
これは絶対に破れない、そう言った防御術式なのだろう。
しかし、さすがはうちはサスケさん、一旦距離を取ったと思ったら、次の瞬間、距離がゼロになったんじゃないか、と思うくらいの加速力で我愛羅さんに突っ込んでいって、その防御陣を貫いていた。
す、凄い。
あのスピード、眼だけじゃ全然追えなかった。
アリーナと観客席は距離がかなりある。
それだけの距離があるのに、全然動作が見えなかった。
周りにいた忍(多分上忍か特別上忍の人たちだ)が「あれは、はたけカカシの『千鳥』!」って驚いてたけど、そっか、あのカカシ上忍の得意技をサスケさんは習得したんだね。
やっぱり天才なんだなあ。
なんてことを考えていた時。
目の前に、何かが、ひらり、ひらり、と。
それが何かを理解する前に、僕の意識は遠くなっていった。
“喝ッ!!”
!! 僕の意識は念話によって繋ぎ止められた。
“何があったね、ブンブク君!?”
これは…、隠神刑部さん!!
“助かりました、幻術のようです!”
“なるほど、お前さんの杞憂が的中してしもうたという事だの。
こちらは連絡さえあればすぐに動けるようにしとくわい。
久しぶりの戦じゃて、皆気張っておりでの”
うわ、うちの里大丈夫か?
怪獣大決戦で更地とか、勘弁してほしいところ。
なんて考えてると、体が誰かに掴まれているのが分かった。
どうやら外に運ばれているらしい。
寝た振りをしつつ、観察観察、と。
かなりゴッツイお兄ちゃんだ。
太極図をあしらった服を着ている。
あ、これVIP席の屋根の上だ。
よく見ると、屋根の四方に似たような服装の人たち、で、真ん中に…火影さま!?
火影さまと、風影さまがいる!
なんでこんなことに??
そんなことを考えていると、僕は屋根の真ん中の方に投げ捨てられた!
これはきつい!
さらに、その周りに紫がかった透明な壁のようなものが立ち上がる!
うあ、これ結界かよ! でらんないよ、これ!
目の前には、風影様からクナイをその手に突き刺された火影さま、そして…、
風影様の顔が、べろりと剥げて、
「こんにちわ坊や、初めて会うわね、私の名は…」
大蛇丸。
里の大罪人に僕は初めて会うことになった。
何とも最悪な状況だこと。
僕は三代目火影さまと、大蛇丸さんに挟まれるような形になった。
「大蛇丸、堕ちたのう、こんな子供を人質として取るとはの」
大蛇丸さんはひょいと肩をすくめ、
「別にそんなつもりはないわ、ただ私がほしかっただけよ」
…って何その言い方、ものすごく怖いんですけど。
2人が睨みあっている間をすり抜けるようにして、僕は火影さまのたちの邪魔にならないようにの壁付近まで下がると、
「ぐぁ!」
目の前に、うちの里の忍がぶつかって燃え上がってる!
これ触っちゃまずいやつだ!
「坊や、おとなしくしてなさい。
まだ死にたくないでしょ?」
でしょ、じゃないよ全く!
僕はアカデミー生で一般人なんだけどなあ。
何とか巻き添えになんないようにしないと。
いきなり、火影さまと大蛇丸さんの戦いは始まった。
さすがに介入なんて難しい、と思ったら、大蛇丸さんが長めの印を結び始めた。
ラッキー!
大蛇丸さんは術で棺桶のようなものを呼び出していた。
大蛇丸さんと僕の距離は約8メートル。
おあつらえ向きにその棺桶のおかげで大蛇丸さんの視界は僕に届いていない!
僕はまといつかせていた八畳風呂敷くんを解除し、
「せいやっ!」
今のところ、最も射程のある布槍術で大蛇丸さんの印を結ぶ手を狙って撃ちだした!
「! くっ、3体目が!」
僕の攻撃は辛うじて術を不完全な形で発動させることができたようだ。
「やってくれたわね、ガキの分際で!」
「ふん、子どもにしてやられるとは、大蛇丸よ、わしより
はい、火影さま、僕をダシに大蛇丸さん挑発しないでください、怖いから。
しかしあの棺桶って…。
そう思っていた僕に絶望的な現実が付きつけられた。
その中から現れたのは2人の人物。
「まさか、このようなことで御兄弟お2人に再びお会いしようとは…」
3代目火影、ヒルゼンさまがこういうってことは、つまり。
黒いストレートヘアの初代火影・千手柱間さま、白髪ザンバラヘアーの2代目火影・千手扉間さまだ。
火影の顔岩でしか知らない、伝説の二忍と敵対するという絶望。
経験を積んだ大人でもきついのに、僕はあくまでも前世の記憶があるだけの子どもだ。
よく気絶しないですんでるもんだ。
ただの傀儡、という訳でもない様子。
なんか普通に3代目と会話してるし、穢土転生? なんかおっそろしい術があったものだよ。
死者を愚弄しおって、とか、3代目が言ってるけど、こんなおっかない術をよくもまあこしらえられたもんだなあ、大蛇丸さんは。
「どう、坊や、2代目の創造した『穢土転生』は? 上忍すら拝めない特上の術よ」
って作ったのは2代目ですか!
「こういうのは、鍵かけて門外不出にするもんじゃないんですかね、2代目!」
ついそう突っ込むと、「死んだあとまで責任はとれぬ、それは生きている者の務めだろう」と正論で返されました。
「どうです、3代目、ここで師を超えてみせるのはどうです?」
大蛇丸さん、サドっ気満載の上から目線で3代目を挑発している。
「…すまんの、少年。
これではお前さんを守って戦う余裕がないわい。
せめて名を聞いておきたいんじゃが」
「はい3代目さま。
茶釜ブンブク、と申します」
「なんと、お前がか!」
「ほう、茶釜の一族の子どもか」
「なるほど、まだ息災であるか、彼の一族は」
意外だ、うちの一族は歴代の火影さまにも気にしてもらえるんだ。
「…おい、大蛇丸よ。
一服するくらいの時間は寄こさんかい」
3代目、余裕だなあ、もしくは自棄になってんのかしら。
分からなくもない、僕なんて正直言ってさっきから膝が笑ってるし。
「よろしいですよ、どうぞ」
大蛇丸さんは鼻で笑うようにそう言った。
ホント余裕だよね。
穢土転生、だっけ? 時間制限とかないのかしら。
そんなことを考えていると、
「? おい、大蛇丸、わしのキセル入れ知らんかの?」
…3代目、なんかそのセリフ、「ばあさん、わしゃ昼飯食ったかの」みたいな感じに聞こえます。
さっき装束を脱いだ時に落としたんじゃ…。
そう言おうとした時、大蛇丸さんが茫然としているのが見えた。
その視線は3代目… の右側、僕がいるのと反対側を見ており、そっちに視線を向けるとそこには…。
1人の老人の姿があった。
「超忍戦隊ホノレンジャー」は私のねつ造、なはずです。