コメントやメッセージ等で応援してくれた方々、返信はしてませんがすべて読ませてもらってます、ありがとうございます。
「いいかお前らー。アカデミア生の座席はここだからなー、見にくいからって他の席に行くなよー。見つけた奴から全員ハイトマンの隣または傍に座らせるからな」
「えぇ!?」
こいつら驚きすぎだろ……ったく、移動する気満々だったな。しかも超嫌がってるし、教頭嫌われすぎだろ。
さて、現在の場所はスタジアム。今日はフォーチュンカップの日だ。そして俺はアカデミアの教師として、生徒を引き連れ観客席にいる。
あの黒薔薇の魔女との次の日、見事に教師として採用。ゆまの言ってた通り、デュエル実技の担当になり、非常勤教師として週3でアカデミアで働くこととなった。そして担任のいなくなったというゆまや雪乃にツァンのクラスに、今日だけは担任としてなっている。
デュエルアカデミアはさすがデュエルの学校なだけあって、こんな大きな大会の日には校外学習の感覚で観戦しにくるらしい。強者のデュエルを見ることは自分の実力を上げることに繋がるとか何やらで。
その結果、俺はこのクラスを引きつれアカデミア生用の座席に彼らを座らせている。彼らが好き勝手しないようにの監視役だ。
「まずは一回戦。龍可って女の子とボマーって人ですよっ!」
「龍可? なんかそれっぽい名前聞いた気が……」
全員を見渡せるように生徒たちの一番上の席に座っている俺の横には、ゆま。教師なり立ての俺に色々とアドバイスをしてくれている。
しかし龍可ねぇ……龍亜によく似た名前だな。
「コナミ先生」
「ん? お前は確か……委員長の原麗華だっけ?」
「はい。先ほどから、藤原雪乃さんの姿が見えていません」
「雪乃が?」
ったく、あの無駄にフェロモン放出女生徒め。こんな時にまで男漁りか?
『あっ、雪乃ちゃんならさっきあっちに行ってるのを見たよー』
マナがひょっこり現れて雪乃が行ったという方向を指差している。あっちの階段を登ったら表にでるしか行くとこないはずなんだが。
「……わかった。じゃあ原、こいつらのこと見ててくれ。その辺を探してくるよ」
「分かりました」
マナの指差すほうへと、俺は向かった。生徒たちが何かしでかすかもだが……さっきの脅しがあるから大丈夫だろう。
ったく、あいつどこに行きやがったんだ?
「うーん……原さん、コナミさんが心配なので私もついていってきますね!」
「えっ、ちょっとゆまさん!」
「こっちか?」
『うん。雪乃ちゃんの気配はこっちの方かなぁ』
「おいおい、何だよその頼りない言い方は」
結局スタジアムを出て辺りをプラプラして5分ほど。雪乃の姿は見当たらず、マナの力を借りて雪乃のことを探している。
ってかこっちの方にあるのは公園ぐらいじゃないのか?
『あっ、いたよー』
「お? 確かにあの後ろ姿は雪乃だな。ゆきのー」
「……」
俺が呼ぶと、雪乃はゆっくりと俺のほうを向いた。
「っ!?」
だが、どう見てもいつもとは違う。頬のとこに濃い紫色のマーカーのようなものが入っていて、目の白目の部分が黒くなり、瞳が黄色くなっている。
それにオーラもいつもと違う……これは、どういうことだ?
『コナミ、雪乃ちゃんから不吉な力を感じるよ』
「ああ、いつもの雪乃とはまったく違うぜ」
「あっ! コナミさーん! そんなとこにいたんですねぇ!」
「ゆ、ゆま!?」
向かい合う俺と雪乃。その雪乃の背後、俺の視線の先からとことこと歩いてくるゆま。
まずい、こんな何か危険な香りがする雪乃に、あいつを近づけるわけにはいかねぇ。
「……!」
「なにっ!?」
突然、俺たち三人を包むように青い炎が起こる。
さらにゆまには黒い霧のようなのが襲い掛かりその体を拘束している。
なんだこの炎は……しかも雪乃にも変化がおきてやがる。
「おいおい雪乃。いつからお前は腕に光るタトゥーを入れるようになったんだ?」
「デュエルしましょうボウヤ」
「デュエル?」
ずっと無言だから話さないのかと思いきやいつものように話してくる。だが、その声音にはいつもの妖艶さがない。
「悪いが、こんな変なとこでデュエルをするつもりはないね」
「ボウヤに拒否権はないのよ?」
「えっ……!?」
ゆまの体がいきなり動かされ、その体が炎の真上にと持っていかれている。下から器用にさっきの霧が支えている。
「受けなきゃ、ゆまを焼き殺すってことか?」
「物分りがよくて助かるわ。さあ、どうするのかしら?」
「……チッ、仕方ないか。待ってろよゆま、すぐに助けてやる!」
「は、はい……」
雪乃から少し離れて、デュエルをするのに十分なスペースをとる。
あの雪乃がこんなことをするとは思えない。あの目とこの炎から考えると、何か別の力に操られていると考えていいだろう。
デュエルで倒せば元に戻るはず……デュエルの力ならそれができるはずだ。
「さあやろうぜ雪乃。その気味悪いマーカーと腕の光、取り除いてやるぜ!」
「うふふ、デュエルよ」
雪乃がデュエルディスクを展開させていく。
それを見ながら、俺も自分の意識を沈めていく……。
「お前に取り付くその闇、オレが消し去るぜ! デュエル!」
デュエルは任せたぞアテム。雪乃とゆまを助けてくれ……!
「オレの先攻、ドロー! 手札から《磁石の戦士α》を守備表示で召喚!」
《磁石の戦士α》DEF:1700
「オレはこれで、ターンを終了する」
藤原雪乃。どんなデュエルをするかは知らないが、その実力はアカデミアでも常に上位に入っているらしい。そんな女のデュエルだ。いくら操られていようと油断はできないぜ。・
「それだけなのねボウヤ、私のターン」
雪乃がデッキからカードを一枚引く。さあ、お前のデッキはどういうのだ?
「いい手札だわ……手札から《高等儀式術》を発動。このカードは、儀式召喚に必要なリリースに、デッキの通常モンスターを使えるわ。デッキから《ネオバグ》2体を墓地へ」
「レベルの合計は8か……なにがくる」
「出番よ、《終焉の王 デミス》!」
『デミスとかマジかよおい……』
雪乃のフィールドに巨大な男の姿が現れる。
《終焉の王 デミス》……確かあのカードの効果は、かなりの恐ろしさのはずだ。
「デミスの効果を発動。ライフを2000ポイント支払い、このカード以外の場のカードを全て破壊するわ」
「クッ、ライフ2000を必要とするとはいえ、フィールドをリセットする効果だったな……」
「あわわ、これは雪乃さんの必勝パターンですよぉ!」
雪乃LP:4000→2000
「ふふっ、さらに《甲虫装甲騎士(インセクトナイト)》を攻撃表示で召喚するわ」
《甲虫装甲騎士》ATK:1900
攻撃力2400のデミスに1900のインセクトナイトか。
なるほどな、雪乃のデッキはデミスによるフィールド一掃からもう一体のモンスターによるワンターンキルか。
この時代には昔に比べて儀式召喚に必要なカードを集めるのは容易いようだしな。
「これであなたは負け……だけど、ボウヤには《冥府の使者ゴーズ》がいたわね。もう一枚出しておこうかしら」
「なに、まだ手札に何かいるというのか!?」
「ふふふ。墓地の昆虫族である《ネオバグ》2体を除外して、《デビルドーザー》を特殊召喚!」
《デビルドーザー》というと……確か今雪乃がやったように墓地の昆虫族2体を除外して出せるカードだったな。さっきの《高等儀式術》と組み合わせれば、一気にモンスターを展開できるということか。
だが、ゴーズを警戒してのプレイングのようだが……今のオレの手札にはないな。
「バトルフェイズよ。まずはインセクトナイトで直接攻撃」
「その直接攻撃の時に、オレの手札のこのカードが効果を発動するぜ! 《バトルフェーダー》!」
「そのモンスターは……?」
「ナイスですコナミさん!」
オレのフィールドに現れたモンスターがインセクトナイトの攻撃を防いでくれる。
こいつがいなかったら、ワンターンキルされていたのか……フッ、アカデミア上位の実力は伊達じゃないってことだな。
「このカードは、相手からの直接攻撃を受けるときに手札から特殊召喚できる。そして、このターンの雪乃のバトルフェイズは終了する!」
「うふふ、焦らすんだから……私はターンエンドよ」
『あっぶねぇな……こんな詰め込みみたいな手札によくピン刺しのそいつがいたな』
「助かったぜ……オレのターン、ドロー!」
ふぅ、今の雪乃のターンは軽く凌げたが、次もそうとは限らない。
しかも今のあいつの場は攻撃力が高いモンスターが3体。次のターンをかわすカードは、今のオレの手札にはない。その代わり、コナミの言うように仕組んだんじゃないかと言うぐらいマハードやマナのサポートカードが豊富にある。
ならやることは1つ……。
「このターンで、お前を倒す!」
「あら、そんな強気なことを言って……うふふ、できるものならやってみなさい」
「ああ! まずは手札から《増援》を発動し、デッキからレベル4以下の戦士族、《E・HERO プリズマー》を手札に加えそのまま召喚する!」
《E・HERO プリズマー》ATK:1700
ゆまからもらったこのカード……また、ゆまを救うために力を借りるぜ!
「オレはエクストラデッキの《呪符竜(アミュレット・ドラゴン)》を選択し、このカードに記されてる融合素材モンスターの、《ブラック・マジシャン》を墓地へ送り、プリズマーの名前は《ブラック・マジシャン》となる!」
「《ブラック・マジシャン》を墓地へ送るのが目的ね……!」
「そうだ、さらに手札からマジックカード《思い出のブランコ》を発動! 墓地の通常モンスター1体を特殊召喚する! 蘇れ、《ブラック・マジシャン》!」
「コナミさんのエースですよ!」
《ブラック・マジシャン》ATK:2500
オレのフィールドに降り立つマハード。残念ながら、今は精霊のマハードが宿ってないから単なるカードだが。
雪乃の場に伏せカードはない、まだまだ好きにやらせてもらうぜ。
「師である魔術師がいるとき、弟子がその姿を現す……魔法カード《師弟の絆》を発動! オレの場に《ブラック・マジシャン》が存在するとき、デッキから《ブラック・マジシャン・ガール》を守備表示で特殊召喚する!」
《ブラック・マジシャン・ガール》DEF:1700
光の渦の中から、可愛らしいローブに身を包んだ魔術師、マナが現れる。
だが、まだデミスを倒せるカードは場にはない。
『王様ー、今の私たちじゃ雪乃ちゃんを倒せませんよー』
「ああ、だからこのカードを使うのさ。ドーマとの戦いを共に戦い、コナミとペガサスにより生まれ変わったこのカード――《ティマイオスの眼》を発動!」
「っぅ!? な、なにこの力は……!」
場に出たカードから、1体の巨大な竜が現れる。
その竜は、自らの存在を示すように大きな咆哮を轟かせる、その音に驚いたのか、雪乃に取り付いている何かが一瞬雪乃の体から出てきてその小さな姿を見せた。
あれは――
『蜘蛛、ですよ王様』
「蜘蛛? そいつが雪乃を操っているのか……《ティマイオスの眼》の効果! 俺の場の《ブラック・マジシャン》と名のついたモンスターを墓地へ送り、そのカード名が記されたモンスターを融合素材として使用されている融合モンスターを、エクストラデッキから特殊召喚する! 《ブラック・マジシャン・ガール》を墓地へ!」
光の粒子と化したマナ。その光が、ティマイオスの胴部分の所へと飛んでいく。
段々とその光は形を成していき、その姿を現す。
ティマイオスに跨って姿を見せたのは、《ブラック・マジシャン・ガール》。だがその着ているものが、いつもと違う。
「現れよ、《竜騎士ブラック・マジシャン・ガール》!」
竜騎士。その名に相応しく、マナの着ているものは鎧となっている。手に持っていた杖は剣となり、ティマイオスに跨り鋭い眼光で雪乃の場を睨み付けている。
《竜騎士ブラック・マジシャン・ガール》ATK:2600
「竜騎士の……ブラックマジシャンガール……!?」
「このカードが、お前を倒す切り札だ!」
「ふふっ、お姉さんの《デビルドーザー》は攻撃力2800……ボウヤのカードたちじゃ敵わない、わ」
蜘蛛による力が弱まっているようだが、まだ力尽くで操ろうとしているのか、雪乃の息が乱れている。
待っていろ、もうすぐその洗脳は解いてやる。
さて、雪乃の言うとおり攻撃力では《デビルドーザー》には及ばない……だが。
「それはどうかな?」
「うふふ……何かしらその挑発的な言い方は」
「《竜騎士ブラック・マジシャン・ガール》は、オレの手札を一枚捨てることで、フィールドの表側表示のカード1枚を破壊する! 《デビルドーザー》は消え去るぜ!」
「そんな!?」
ティマイオスが《デビルドーザー》に向けて吼える。そして怯んだところへすかさずマナが斬りかかり、《デビルドーザー》をいとも簡単に切り裂いた。
これで、雪乃の場のモンスターたちは簡単に倒せるデミスとインセクトナイトのみ。
「さあ、これでオレのカードが総攻撃をすればお前の負けだ……バトル!」
オレの宣言に、マハード、マナ、プリズマーが戦闘に入る姿勢をとる。
「まずは《ブラック・マジシャン》でデミスを攻撃! ブラック・マジック!」
マハードが手を振りかざし念力のようなものを使ったのか、急にデミスが苦しみだし、場から姿を消した。
雪乃LP:2000→1900
「さらに《竜騎士 ブラック・マジシャン・ガール》でインセクトナイトを攻撃だ!」
「うぅっ!」
雪乃LP:1900→1200
ダメージを受けるにつれて、段々と雪乃の苦しみが強くなってきている。黒い光、恐らくはあいつに取り付く闇らしきものが体から溢れてきている。
「雪乃に取り付く闇よ、消え去れ! プリズマーでトドメのダイレクトアタック!」
「あああぁぁぁあっ!!」
雪乃LP:1200→0
『出たぞアテム!』
「ああ! 頼んだぜマナ!」
『はい! ブラック……バーニング!』
雪乃のライフが0になると共に、辺りを覆っていた炎は消えゆまも解放される。
さらに雪乃の腕の痣が消えてそこからさっき一瞬見えた蜘蛛が姿を現す。
精霊状態になったマナがその蜘蛛を、杖の先で潰した。
『そこは魔力でドーンとかじゃないんだな』
『そんなのしたらお師匠様に怒られるからね……うん、もうさっきの蜘蛛の力も消えたよ』
「ありがとうマナ……コナミ、バトンタッチだ」
『おう、サンキューアテム』
オレの意識を沈めて、コナミが表へと出る。
しかし、さっきの蜘蛛は一体……人を操る闇の力、まるでマリクの持っていた千年アイテムの力のようだ。
もしかしたら、オレたちの知らない所で強大な何かが動いてるのかもしれないな。
ということで、今回はアテムVS雪乃でした。
一体雪乃に何があったんだー(棒