赤帽子と王の行く遊戯王5D's   作:ヒキヘッド

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少し間が空きましたが、今回はゆまとのデュエル直後の話からとなります。



デュエルは楽しむもの

さて、今現在の状況だが。

知っての通りゆまを見事アテムが倒した。のだが、ゆまはと言うと負けたことがショックなのか落ち込んでる。

 

「あうぅ……また負けてしまいましたぁ」

「ゆま」

「……コナミさん?」

 

落ち込むゆまの傍に歩み寄り、その頭にポンと手を置く。

 

「デュエルに負けてショックを受けるのは分かるが、負けたことを糧にして次に活かす努力をするべきだぞ」

「それは分かってますけど……でも、私これで6連敗なんです。ツァンさんやナオミさんや他の皆さんとやってもここ最近いいとこまでいっても、やられちゃうんです」

「6連敗がなんだよ」

「えっ……?」

 

誰にどうやられて6連敗したのかを思い出したのかゆまの顔色がどんどん曇っていく。

ゆまのデュエルの腕はかなり高い方と思うんだが、それなのに連敗となると、他の奴らがゆまよりさらに上手ということだろうか。

っと、それよりもだ。6連敗ぐらいじゃ落ち込んでたらダメだって教えないと。

 

「昔俺の仲間に、それはそれはデュエルが雑魚い奴がいてな。最初は攻撃力が高いからとかいって適当に組んだフルモンデッキだったんだ」

「そんな人が……」

 

あれはまだ俺が本当の高校生だったころ。その頃のことを思い出しながら、ゆまにその男のエピソードを話していく。

 

「でもな、そいつはとある人にデュエルとは何かを教えてもらい、そこから何度も何度も色んな人とデュエルをしたんだ。その間何回、何十回と負け続けた。だがそいつは、決して諦めずにひたすらデュエルをし続けたんだ」

「……」

「負けて落ち込んでも、凡骨とまで呼ばれるほどの腕なのに、またすぐに前を向いてデュエルをして、ついにはとある大きな大会でベスト4に食い込むほどの実力者となった。確か俺の記憶が確かなら、そいつは最大26連敗してる」

「26回も連続で負けたんですか!?」

 

そうなんだよなぁ。まさかそんなに負けるとは思わなかった。

まあその内15敗をつけさしたのが俺なんだが。

 

「でもな、そいつが何でそこまでの実力者になれたか分かるか?」

「……諦めなかった、からですか?」

「そうだ、負けた悔しさを糧にして次に進んだんだ。でも何よりも、そいつはデュエルを楽しんでたんだ」

「楽しむ?」

 

そう、まるで十代のようにデュエルを楽しんでた。むしろ、あいつの方が楽しんでたな。どんな苦境に立たされようとも自分のデッキと運を信じて突き進んでたな。……今の俺と大違いだな。

 

「デュエルを楽しめ、ゆま。勝つことも時には必要だ。だが、何よりも楽しむこと、これが大事なんだ。勝つためにデュエルをする、そんなデュエリストにはなってほしくないんだ」

「……はい」

「負けて落ち込むのもいい、それで悩むのもいい。それを乗り切ってデュエリストはまた強くなるんだ。あのデュエルキングと呼ばれたデュエリストだって、負けを乗り越えて強くなっていったんだぞ? だから、6連敗なんか気にするな。そんなの気にせず、自分のデッキを信じて、デュエルを楽しめ。それで突き進め、そうすればデッキが勝利という結果で応えてくれる」

「……コナミさん」

 

ゆまが雷にでも打たれたかのような衝撃を受けた顔をして俺を見てくる。

アテムとデュエルしている時は自分のヒーローが出る度に喜んでたから楽しむということはできてるようだけど、言ってやった方がさらにいい結果に繋がると思って言ったけど……大成功かな。

 

「私、もっとデュエルを楽しみます! 最近勝ち負けにばっかり囚われてました……もっと自分のヒーローさんを信じます!」

「おう、その意気だ。……さて、俺はおさらばするかな、デュエルは終わったし」

 

最後にゆまの髪の毛をくしゃくしゃと撫でる。これでゆまが、さらにワンランク上のデュエリストになったら俺としたら喜ばしいな。

と、俺は退散してもいいよな。面接は一通り終わったんだし。

 

「あー、武藤コナミさん。あなたの面接結果は明日電話で連絡するので、今日はお帰り頂いて結構です」

「おっ、分かりましたー」

 

俺の面接を担当してくれていた面接官が俺に言ってくる。

まあ、デュエルの内容も問題ないし、面接の方もちゃんと答えれたし多分受かるだろ。

 

「そいじゃゆま。こっからも授業やら頑張れよ」

「はいっ! ありがとうございました!」

 

ゆまが頭を下げながらお礼を言ってくるが……大したことはしてないよな。今の俺が言って良いものじゃないアドバイスだし。

さて、退散だ。あの教頭も何やら俺を睨んでるし。

 

『むぅ、今回は私の出番がなかった』

『仕方ないだろ、マナを引けなかったんだから』

『あーあー、ヒーローと戦うの十代君の時振りだから戦いたかったのに』

「我が儘言うなよなー。さすがのアテムもカードを好きには引けないぞ」

『……まあな』

 

え、なんだよアテムさん今の間は。まさか引けるのか!?

ま、まさかなぁ……戦いの儀でマハードを引くのを予想してたとかそんなの知らない忘れた。

アテムとマナとぐだぐだ話しながら、俺はアカデミアから出て行った……次に来るのは、教師としてかな。

 

「うふふ……あのボウヤ、面白いわね」

「っ!?」

『んー? コナミどうしたの?』

「いや……何か寒気が。気のせいかな」

 

いきなりどこかから妖しい視線を感じて体がブルッと震えた。

なんだこの嫌な予感は……何事もなければいいんだが。

 

『こういうときのコナミは必ずフラグ回収するけどね』

「やかましいわ!」

 

茶目っ気たっぷりにマナが横ピースのポーズつきで言ってくるのを一蹴する。

まったく、変なこと言いやがって。

けど昔からこういうときはいいことないからなぁ……いやいや、この考えがよくないことをもたらすんだ。

もっとポジティブにいかなくては。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふいー……あれ? このD・ホイールは」

『この赤い色……遊星のじゃないか?』

 

アカデミアから帰ってきてガレージに入ると、隅っこの方にひっそりと一台のホイールが止まってるのが見えた。

アテムの言うとおり、あれは遊星のだな。俺のいるとこは教えたから来たのか?

 

「とりあえず部屋に行くかな。鍵開けてるから中にいるだろ」

 

ホイールを止めて、俺の部屋へと向かう。遊星のホイールがあるのに肝心の人がいないとなると、部屋番まで教えといたから入ってる可能性もあるな。

 

「たでーまー」

「……帰ったか、コナミ」

「おう、やっぱりいたな」

 

ドアを開けると、奥から足音と共に一人の男が来る。まあ遊星なんだけど。

 

「昨日は大丈夫だったか?」

「俺はな、遊星こそデュエルは大丈夫だったか?」

「ああ、しっかり倒した。だが、あの後俺は軽く事故を起こして、とある双子の家に匿ってもらっていた」

「おいおい、事故なんて珍しいな。で、元気になったから俺のとこに来たってとこか」

 

遊星のライディングテクニックはお世辞抜きに巧い。多分チーム・サティスファクションの中では安定感は一番だった。その遊星が事故るなんてな。

まあ元気そうな様子を見るに、一日休んで体も問題ないからその双子のとこを抜け出してここに来たってとこか。あっ、抜け出したとは限らないけど。

 

「そうだ。それと、俺は今度行われる……この大会に出る」

 

遊星がジャケットの内ポケットをガサゴソと探り、一枚の紙を取り出した。招待状ってとこかな。

というか今度行われる大会って……。

 

「まさか遊星、フォーチュンカップか?」

「その大会だ。治安維持局の副長官、イェーガーという奴が今日の夜中に俺にこれと、この写真を渡してきた」

 

招待状の下にあるもう一枚の紙、それは写真だった。

写ってるのは――

 

「ラリーたちか。これはつまり、出なければこいつらがどうなっても知らんぞと」

「ああ、皆は治安維持局に人質にとられた。俺はラリーたちを救うために、この大会に出る」

 

先ほどから俺と遊星の言うラリーとは……あとはタカやナーブって奴らもいるんだけど。

とりあえずこいつらは、サテライトでの遊星の仲間だ。俺もそれなりに仲はいい……と思ってる。

その仲間たちが拉致られた……かはわからんが何かあるとなれば、仲間思いの遊星が見捨てれるわけはないか。

 

「そういや、決勝まで行けばジャックとデュエルか」

「……」

「あいつから、“あの”カードを取り返すチャンスだな」

 

現在のキングことジャック・アトラス。こいつは、昔はチーム・サティスファクションの仲間だ。

だが、ある日に遊星の持つエースカード―スターダスト・ドラゴン―を奪い、シティへと出た。

元々遊星がシティにきたのもあいつからそのカードを取り返すためだ。

 

「いや、ジャックからスターダストはもう返された」

「は?」

「今朝俺の所に来て、俺に返してきた。スターダストと共に、俺に決勝まで勝ちあがれということだろう」

「なるほどねぇ……」

 

ジャックからしたら、エースを持たない遊星を倒しても価値はないということか。

そして、エースを持つ遊星を倒したときこそ、真のキングになれるとでも思ってるのか。

まあジャックからしたら最大のライバルの遊星を倒してこそか。

 

「なら遊星、スターダストと一緒に決勝でジャックを倒して、治安維持局とジャックを後悔させてやれ」

「ああ! それでコナミ、お前はこれからどうするんだ?」

 

遊星が話を変えて、俺の予定を聞いてくる。

どうするかなぁ……俺、というかアテムはフォーチュンカップに出たいが、遊星が出るとなると話は別だな。どちらが勝つかはわからないがアテムが勝ったら何かヤバい気がする……これからのこの街の存続に関わるぐらいのヤバさを感じる、俺のこういう勘は当たるんだよなぁ。

なら俺がやることは今のところないか……。

 

「とりあえずは仕事先も決まりそうだし、働くかな。そいで、遊星のデュエルでも見に行くよ」

「そうか……俺は今から、ダイモンエリアというところへ、こっちで匿ってもらってる奴と一緒に行く」

「ダイモンエリアー? どこだそれ」

「サテライトとシティを繋ぐ船がでてる場所だ。俺の仲間の雑賀という奴が、そこにいる奴にその船に乗るアポを取りに行く。それに俺もついていくんだ」

 

ちょっと待てよ、雑賀っていうと……確か何でも屋って言われてる奴の名前じゃないか? サテライトにいる時にシティから来た奴が言ってたはずだ。

その何でも屋を味方にするなんて、さすがは遊星だな。

 

「よし、俺もそれについて行っていいか?」

「構わないが……なら、今すぐ出るぞ」

「問題なしだ、どうせ今日はやることなかったんだ」

 

「なら出発しよう」という遊星と共に、部屋を出てガレージへと向かう。

ダイモンエリアか……サテライトと繋ぐってことはマーカーつきのサテライトには行きたくないみたいな連中がうじゃうじゃいるんだろうな。

まあリアルファイトになれば負けることはないし、変な事態にはならないだろう。

 

「んじゃ、案内任せたぜ」

「ああ、だがまずは、雑賀のいるところに行く」

「了解」

 

ホイールを発進させた遊星に続いて、俺もホイールを発進させる。

ダイモンエリア……あれ? そういやなんたらの魔女が出るのって……。

 




ということで、次回は原作キャラ登場フラグ及びタッグフォースからもまた1人キャラがでます…というかこの話で喋りだけ登場しましたが。
途中のコナミのデュエルの話は中々上手く書けず少ししつこくなりましたが…コナミはデュエルは楽しんでやるのが信条だってということです。また途中の某凡人のデュエルについては作者の勝手な見解ですので。

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