まさか大台の50を突破できるとは思わなかったので夢のようです。
この皆様の温かなご声援を胸に、これからも執筆に励んでいきたいと思います!
どうぞ、これからもよろしくお願い致します!
何とか水の中で足が立つ内にオレは船着き場までたどり着き、小舟に乗る。固定のロープを折れたカタナで切断し、オールを漕いで移動する。
クラディールの想像通り、オレ達が見た時よりも巨大になった滝が勢いよく多量の水をこの地下空間に注ぎ込んでいた。オレは手頃な陸で下り、あの岩の橋の迷路を逆走して地上を目指す。燭台の火を辿れば楽勝だったが、シャドウ・イーターの死に呼応してか、火は随分と小さくなっていた。
バランドマ侯爵のトカゲ試薬で失った左腕の再生を行う。これから8時間もかけて、あの苦しみを味わいながらであるがダンジョンを再生しながら脱出を行うと思うと憂鬱だった。
不思議と、あれ程取り乱していたのが嘘のように、オレの心は一歩踏み締める度に落ち着きを取り戻す。
ボス戦が終わって、気が緩んで、少しセンチメンタルになってしまっただけの話だ。それ以外の何物でもない。それ以外にあってはならない。
幸いにもアルフェリアの死と共に徘徊していた泥人間達も元の屍に戻ったらしく、特に何かに邪魔されることもなく、オレは幽霊の少女が待つ礼拝堂に到着する。この辺りは地下でも随分と地上に近い場所だ。水が到着するには、まだ1日近くかかるだろう。
『お兄ちゃん。あのお姉ちゃんを鎮めてくれたんだね』
「もちろんだ。オレを誰だと思ってるんだ?」
よくよく見れば可愛い子だ。ストライクゾーンの範囲外だが、あと数年もすれば……って、死人だから成長も何もないか。
微笑んでオレを受け入れてくれた幽霊の少女だが、まるで何かを探すようにオレの背後を見回す。
『あれ? おじさんとお姉ちゃんは? 一緒に帰って来なかったの?』
「…………」
オレの沈黙で悟ってくれたのだろう。幽霊の少女は申し訳なさそうに顔をうつむかせる。
何を責任感じているんだ。幽霊のお前に何もできる事なんてないだろう? オレは彼女の肩を叩こうとするが、その手はすり抜ける。
「もしも……もしもの話だ。アイツらの死を悼んでくれるなら、教えてほしい」
『何を? 何でも教えてあげるよ、お兄ちゃん!』
「お前らは……一体何なんだ?」
AIの範疇を超えたAI。仮想世界で電脳によって思考する命。この幽霊の少女もまた、オレの仲間を悼む気持ちがある。そこに嘘偽りはないし、誰かによって作られた反応とも思えないとオレは感じる。ならばアルフェリアやシャドウ・イーターと同じ……幽霊ではあるが、命ある存在のはずだ。
だが、オレの問いに幽霊少女は首を横に振る。
『分からない。分からないよ、お兄ちゃん。何を聞きたいのかは何となく分かるけど……私にはどんな風に言ったら良いのか分からない。だって、私はお父さんとお母さんの間に生まれて、攫われて、私を攫った悪い人たちがもっと地下で何か引き起こして、真っ黒な物が溢れて、そして私もそれに呑まれて死んだの』
「つまり、明確な記憶があるんだな? 自分が育って、どんな風に死んだのか、その記憶が」
『……うん』
思い出すのも心苦しいのだろう。幽霊の少女は小さく頷いた。
それだけで十分だ。オレは額に手をやり、オレが考えていたよりも事態が複雑怪奇だと頭を悩ませる。
『でも、何となくだけど、私はこの日の為に生まれてきた。存在していたって思うの。お兄ちゃんに出会って、あのお姉ちゃんを鎮めてもらう事をお願いする為だけに』
「……そんな事ないさ」
嘘だ。きっとこの幽霊の少女はイベントの為だけに準備させられた『命』だ。その為だけに、両親との時間、攫われてからの拷問、死の恐怖、そして長い時間を幽霊として『誰か』を待ち続ける孤独を体験させられた。
だが、それも終わりだ。彼女の役目は終わった。ならば、彼女もまた終わるべき命なのだろう。
『優しいね、お兄ちゃん。嘘がとても下手なんだね』
「そんな事ねーよ。オレ程嘘つきな捻くれ者もいねーと思うぞ?」
『嘘つき。お兄ちゃんはきっと優しい人。優し過ぎて、自分が傷だらけなのが分からない人。じゃないと、そんな顔できないよ』
幽霊の少女が青い光の粒子となって消えていく。
ふわりと幽霊の少女の唇がオレに触れた。その触感はオレに伝わらなかったが、彼女の感謝の意思は確かに受け取る。
『救いはそれを求める人の心の中にいつもある。救われるべき者は手を伸ばさないと救われない。忘れないで、お兄ちゃん』
小さな女の子でも聖職者らしく、迷える子羊には助言を与える、か。
残念だが、オレは迷える子羊でもなければ、迷子の子犬でもない。
オレは狩人だ。生き残る為ならば容赦しない。敵対する者にも慈悲はない。
システムウインドウが表示され、オレは新たなアイテムを入手する。恐らくはあの幽霊少女の遺品だろう。
アイテムは2つ。【無垢なる祝福の指輪】と【無垢なる聖女ステラのソウル】だ。ステラとはあの幽霊少女の名前だろう。
無垢なる祝福の指輪の説明によれば、どうやら彼女は神に啓示物を持って生まれた先天性の聖女であるようだ。そして、この指輪はその神の啓示物らしい。なるほど。これのおかげで幽霊少女の亡骸は泥人間にならなかったわけか。
これでオレがこのダンジョンで得たソウルは4つ。明らかにソウル系のアイテムは極めて希少性の高いレアアイテムだ。オレが図らずも、他のプレイヤーより優位に立てるアイテムを複数得た事になる。
「救いはそれを求める人の心の中にいつもある、か」
クラディール。オレが殺した男。オレが殺した仲間。オレに死の救いを求めた者。
彼は何かに蝕まれ、狂い、キャッティを殺してしまった。そして、その罪を贖う為に自害しようとしたが叶わず、オレに殺してもらった。
オレが殺した。右手を見つめ、クラディールの首を刈り取った瞬間の感触を思い出す。
『お前はただ殺しただけだ。救ったわけじゃない』
違う。オレは頭の奥底から響く声を否定する。
殺すしかなかった。殺す以外に、クラディールがクラディールのままで死ねる方法など無かった。
『キャッティにしてもそうだ。お前は彼女の心を分かっていたはずだ。迷いを知っていた。導けたはずだ。あの時、彼女にあの3人を追いかけさせていれば、クラディールは彼女を殺す必要が無かった。お前が代わりに殺されるだけで済んだ』
それは結果論と推測だ。それに、あのボス戦の最中に明らかにキャッティは変化した。あの時に何かが無ければ、キャッティは仲間を求める選択肢を選ぶことなどなかったはずだ。
『それこそお前の願望だ』
そうかもしれない。だが、誰にも答えなど分からない。死者の胸の内など、オレが死んでから訊けば良いだけの話だ。
踏みにじる。頭の中で響いた声を踏み潰し、オレは深呼吸する。
「大丈夫。落ち着け。大丈夫。落ち着け」
少し疲れただけだ。あんな死闘は久しぶりだったのだ。気が弱くなるのも仕方ない。
早く帰って休もう。そうすれば、いつものオレに戻る。気づけば既に左腕の再生も終わっている。これならば、もう外でも十分に戦えるだろう。
その後、オレはどうやって帰ったのか憶えていない。ぼんやりと記憶に残っているのは、立ちはだかったモンスターは全て折れたカタナで殺し続けた事だけだ。
土砂降りの大雨の中、オレは泥に足を取られながら、何とか拠点であるガルム族の都に到着する。
さすがにこの雨ではプレイヤーも野外には出ていないのだろう。街を歩くのはガルム族ばかりである。
刃毀れした折れたカタナを握りしめ、オレは左右にフラつきながら、安全圏がある公衆浴場を目指す。密林を抜ける間に随分とダメージを受けてHPはイエローゾーン、回復アイテムもボス戦からの連戦で尽き、まともに使える武器は温存してある低火力の鉤爪くらいだ。それに比べれば、まだキャッティの遺品である折れた赤蛇刀の方が刃毀れしていても幾分か威力が高い。
「疲れた……本当に、疲れた」
ふと、オレは窓が開いているお陰で店内が覗ける状態になっている酒場へと視線を運ぶ。
そこには泣きながら酒盛りをしている5人のプレイヤーがいる。見間違えでなければ、あの井戸のダンジョンで遭遇した、仲間を1人見捨てたプレイヤー達だ。
足を止め、オレは彼らの様子を窺う。
どうやら見捨てられたプレイヤーは、またあの4人と一緒に過ごす事を決めたらしい。複雑な表情を皆浮かべながらも、微かに笑みを浮かべ、ぼそりぼそりと何かを話している。
もしかしたら、互いの本音を語り合い、絆を深めているのかもしれない。
見捨ててしまった4人と見捨てられた1人。彼らが元のパーティに戻ることはできないだろうが、それでも再出発することはできる。何処かで折り合いをつけ、憎しみと怒りの矛先をこのデスゲームの攻略に向け、正しい活力を得られたならば。
仮に彼らが戦い続ける選択をしたのならば、キャッティは救うべき者を救い、自らの信念で新たな物を生み出せたことになる。
「頑張れよ」
オレは小声で応援し、歩を進める。
そして、オレは出会ってしまった。
初代族長の石像前、そこで傘を差す3人のプレイヤー達。キャッティに命を救われ、彼女を仲間として求めたプレイヤー達だ。
ああ、そうか。地下にいる間と帰るまでの間に、キャッティと彼らの約束の日が来てしまったのか。
このまま無視するわけにもいかない。覚束ない足取りで、何とかオレは彼らの元へと足を運ぶ。明らかに異常なオレに気づいた3人は警戒するが、3人の1人の少女はすぐに警戒を解いてオレに駆け寄って来る。
「大丈夫ですか!? ファム、回復アイテムを頂戴! この人ボロボロよ!」
「お、おう!」
肩幅の広いプレイヤー、ファムという名前らしい男がアイテムストレージから燐光草を取り出すが、オレはやんわりと手で制する。
ボロボロ……か。確かにオレの防具は全て傷だらけで穴だらけだ。HPも丸分かりなので、イエローゾーンでフラフラ雨の中を傘も差さないで歩いているプレイヤーを見れば、この人の良さそうな連中なら助けようとしてしまうかもしれない。
だが、それは大きな危険でもある。傷を負ったプレイヤーを装い、罠に嵌めるのはPKの常套手段だ。
「オレは、キャッティの仲間だ」
「キャッティさんの!?」
そう訊き返したのは背の高いプレイヤーだ。オレは頷いて、彼らを一瞥する。
「キャッティさんの仲間だってなんて露とも知らず申し訳ありませんでした。私はミリアです。こっちの背の高い人がラグニーで、こっちがファムです。あ、私達VRゲームサークルの仲間なんですよ!」
キャッティの仲間。たったそれだけで、彼らは警戒を解くだけではなく、信用に近いものまで見せ始める。
ベラベラと情報を話しやがって。本当に良い奴らだな。羨ましいよ。
「あの、それでキャッティさんは?」
「…………」
「もしかして、何かピンチな事があったんですか!? それを教える為に貴方が!?」
「…………」
「た、助けが必要なんですね!? そうなんですよね!?」
「…………」
オレが無言で返すたびに、ミリアは真実に近づき、顔を蒼褪めさせていく。
ファムが無念そうに目を伏せてミリアの肩に触れ、ラグニーはボロボロと涙を零す。
ぐらりと傾いたミリアをファムは受け止める。震える瞳で、彼女はオレを真っ直ぐと見つめた。
「死んだ……の?」
「……ああ。死んだよ。キャッティは……死んだ。オレの目の前で」
武器枠から赤蛇刀を外す。そして、それをラグニーに手渡す。彼は刃毀れして折れたカタナを手に取り、彼女の遺品だと理解し、決壊したように涙の量を増やした。
「彼女はお前たちの仲間になるつもりだった。楽しみにしてたみたいだよ。お前たちと一緒にいられる日々を」
泣き崩れるミリアを慰めるファムはオレを見上げる。その目には悲しみ中にも強い意思がある。それは真実を求める光だ。
「キャッティさんが簡単に死ぬとは思えない。一体何があったんだ? 何で死んだんだ?」
何と答えれば良いか、オレは言葉に詰まる。
真実は、発狂したクラディールに殺されたというものだ。仲間に殺されたなどという無残な話を聞かせるのか?
それにクラディールの名誉は? 彼が自ら望んでキャッティを殺したならばいざ知らず、彼は『別の何か』と意識が混濁し、彼女を殺してしまった。殺害したのは、明らかに『別の何か』の方だ。
だが、それでは彼らに対しての誠実さは? キャッティの死を悲しんでくれている彼らを蔑ろにするわけにはいかない。
「話せないような事なのか?」
オレの迷いを読んだのか、ファムが鋭く切り込んでくる。
どうする? やはり真実を述べるべきか? だが、オレはクラディールの名誉をせめて守ってあげたい。善人として死のうとした彼の意思を守りたい。だが、一方でキャッティを殺したのはクラディールという不動の事実がある。これを否定するわけにもいかないし、『別の何か』など、居合わせたオレはともかく、第三者からすれば加害者側の自己弁護の常套文句だ。
「アンタ……名前は?」
そして、ファムがよりにもよって、オレが1番訊かれた無いことを訊いてくる。
もはや神の胸中と采配に任せるしかないか。オレは天を仰ぐ。嘘を吐いて、下手にバレた方が後々厄介だ。正直答えるのが吉だと思う他ない。
「……クゥリだ」
「クゥリ!? まさか【渡り鳥】の!?」
明らかに3人の顔色が変わる。VRゲームサークルのメンバーだ。SAO事件についても知識が豊富である確率は高いと思っていたが、よりにもよって3人ともオレの事をご存じとは思いもよらなかった。
「白髪で女顔のソロプレイヤー。多くのパーティやギルドを渡り歩いた傭兵。200人以上殺した悪魔。DBOにいるって噂は聞いてたけど、まさかアンタが!?」
ミリアは腰を抜かし、ファムは武器を構え、ラグニーは小さな悲鳴を上げる。
たった今、カタナを渡してしまったせいでオレは武器を1つも装備していない。しかも回復アイテム切れで、疲れ切ってコンディションは最悪。
十中八九負けるな。この場は逃げるのが最善の手か。
だが、オレは彼らに伝えねばならない。せめて、これだけは必ず伝えておかなければならない。
「オレを殺したいならかかってこいよ。確かに、オレはキャッティの死に関係している。でも、彼女を殺していない」
「信じられるか、そんな事! 人殺しの分際で!」
ミリアを引き摺って距離を取り、ファムは戦斧を片手で構える。アイアンアックスか。かなりの重量武器だが、それを片手で持つという事は見た目通りのSTR重視か。
何とか立ち上がったミリアが構えるのは1.2メートルほどの杖だ。捻じれた2本の枝から絡まって1本の杖となり、その先端には花飾りが付いている。そして、彼女がそれを構えると、苦痛のアルフェリアが放ったのと同じ光弾が1つ浮遊し始める。
「へぇ、魔法か。プレイヤーが扱うのは初めて見たな」
「う、撃たせないでください! これは【ソウルの矢】と言って、初歩の魔法ですが威力は馬鹿になりません! 今の貴方なら当たり所が悪ければ……!」
「だから、オレは戦う気がねーんだよ。勘違いも甚だしいぞ」
今にも泣きだしそうなミリアに、オレは思わず嘆息する。どうやら【渡り鳥】とはかなり恐れられているらしい。軽く見ていたわけではないが、本格的に自分がどんな風に世間で認知されているか調査する必要があるな。
……まぁ、連続殺人鬼って認識なんだろうけどさ。
震えながら弓矢を構えているラグニーは見てて危なっかしいので、さっさと話を切り上げるとしよう。
「さっきも言ったように、彼女はオレの目の前で死んだ。その死にもオレは関わっている。でも、彼女の名誉の為に言うが、断じてキャッティは戦いに負けたとか、罠にはまって死んだとか、そういう訳じゃない。死者の碑石で彼女の名前を探せ。そうすれば死因も分かる。お前らが本当に真実を知りたいならば、その時は全てを話してやるよ。今ここで話しても、きっと何一つとして信じてもらえないだろうからな」
死者の碑石は単に名前に線が引かれるだけではなく、死因も記載される。彼女が他殺されたのは調べればすぐに分かる事だ。
だから、オレにできる事はせいぜいこれくらいだ。もしも、コイツらがオレを探し出してでも真実を知りたいならば、文字通り全てを話す。嘘偽り一つ無く。
クラディール、済まないな。これがオレにできる精一杯のお前の名誉の守り方だ。
「……キャッティさんは、本当に死んだんですね?」
「何度も同じことを言わせるなって言いたいけど、何度でも言ってやるよ。死んだよ」
「ありがとうございます」
思わずオレは目を見張った。あろうことか、ミリアはオレに深く頭を下げたのだ。
ファムもラグニーも彼女の姿に驚いてあたふたしているが、堂々とミリアは頭を上げて、明らかに無理しているのが分かるような笑顔を向けてくれる。
「そんなにボロボロなのに、見ず知らずの私たちの為に教えに来てくださったんですね。しかもキャッティさんの遺品までくれて……本当にありがとうございます。これで命の恩人を、ちゃんと私達は弔ってあげることができます」
「…………」
「ファム、ラグニー、武器を下ろそうよ。礼を尽くしてくれた人に失礼だよ。キャッティさんも、自分の仲間の人に武器を向けたら悲しむよ」
ミリアの言葉に渋々といった具合でファムはアイアンアックスを下げる。ラグニーは完全に体が固まってしまっているのか、不動のままだ。
「強いな。スゲーよ、お前」
呆れて笑うしかない。人を信じ過ぎだと忠告しようと思ったが、これ程の美点ならば損なうのも勿体ない。
そのまま生き抜いてみろ。そうすれば、このデスゲームにも……この世界にも、大きな希望となって、プレイヤー達の光となるはずだ。
そのまま背を向けてオレは彼らから去っていく。緊張が解けたのか、脱力したラグニーが矢が放ってしまい、オレに命中しそうになったそれを振り返ってつかむ。完全に凍ったラグニーだが、オレは笑って矢を放り返した。
「人に武器を向ける時は殺し合いをする時だ。次は容赦しねーからな? あと、何か依頼したいことがある時はオレに頼め。特別に安くしてやるよ」
彼らと話ができて良かった。少しだけ気分が晴れたオレは空を見上げる。
見ろよ、キャッティ。お前が救った奴らは……お前が一緒に歩もうとしていた奴らは、こんなにも良い奴らだ。
オレはお前みたいな救済者にはなれないが、救える奴がいれば救うとするさ。どんな形でも良い。オレは英雄ではないのだから。万能とは程遠いのだから。自分にできる範囲で……たとえ、それが死を与えることであったとしても。
「救われるべき者は手を伸ばさないと救われない、か」
今も分厚い雲に空は遮られ、大雨が降り注いでいる。だが、その冷たさが今は心地良かった。
オレは生きている。この仮想世界で生きている。アイツらの死を実感して、今もここで生きている。
これにて長かったエピソード6も終わりです。
まさか2桁に到達するとは思いもよりませんでした。
次回からは新エピソードとなります。
それでは37話でお会いできることを楽しみにして、
Let's MORE DEBAN!