ランスIF 二人の英雄   作:散々

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第5話 ここより変わるリーザスの物語

 

-リーザス城 王女の間-

 

「はじめまして。冒険者の方なのでご存じないかもしれませんが、私はこの国の王女、リア・パラパラ・リーザスと言います」

 

 王女の間へと案内された二人の前に現れたのは、美しい容姿に流れるような青い髪、清純そうな白いドレスが良く似合っている優しそうな女性。彼女がこの国の王女、リア・パラパラ・リーザスだ。とてもユキを冤罪で投獄したり、誘拐に関わっていたりするような人物には見えない。

 

「お初にお目に掛かる。私はギルドに所属している冒険者で、名をルークと申します」

「そして、俺様が英雄ランス様だ! 王女様は可憐だな、100点だ!」

 

 王女様相手にとんでもない挨拶をかますランスだったが、リア王女はそれを笑顔で流し、侍女のマリスは無表情で王女の後ろに控えている。

 

「今日ここに呼んだのは、貴方たちの強さを見込んで一つ頼み事があったからです」

「頼み事ですか……?」

「はい。実は先日、私が大事にしていた魅力の指輪が妃円屋敷の悪霊に奪われてしまったのです。貴女たちにはその屋敷に行って悪霊を退治し、指輪を取り返して貰いたいのです」

「こちらが魅了の指輪になります」

 

 王女がそう語り終えるのと同時に、マリスがスッと一歩前に出てきて、二人に魅了の指輪が写った写真を手渡し、すぐにまた王女の後ろへと戻る。ルークは手渡された写真に軽く視線を落とし、すぐにリア王女に向き直って質問を投げる。

 

「王宮の兵士ではなく、なぜ私たちに?」

「それは、この頼みが私の個人的なものだからです。王である父ならまだしも、王女である私には王宮の兵士を動かす権限はありません」

「なるほど。そこで、超強くて超格好良いこの俺様アーンド下僕一名に頼みに来たわけだな?」

「下僕……ですか?」

「ああ、気にしないでください」

 

 ランスの物言いにリアが首を傾げるが、それをルークが軽く流す。そんなやりとりを見ても、マリスは表情一つ変えずにリアの後ろで控えていた。

 

「妃円屋敷というのは?」

「城下町にある大きな建物の事です。以前はちゃんとした持ち主がいたのですが、悪霊が取り憑いた際に逃げ出してしまい、今は廃館となっております」

「ああ、あの建物か……」

 

 城下町にある寂れた洋館はルークも知っている。軽く建物の場所を聞いたところ、ルークの考えた建物と一致している。どうやらそこが妃円屋敷で間違いないようだ。

 

「見返りは? こちらとしては王女様の処女を……」

「何をいただけるのでしょうか?」

 

 不敬罪で首が飛んでもおかしく無いような発言を平然とするランス。なんとか言い切る前にルークが言葉を被せ、事なきを得る。だが、ルークの問いに対してマリスが静かに息を吐き、リアがニヤリと妖しげな笑みを浮かべる。瞬間、場の空気が変わり、緊迫感が増した。

 

「……貴方たちは、ヒカリという娘を捜しているのでしょう? 指輪を持ってきてくれたら、その娘に関する情報を提供しましょう」

「……どうして私たちがヒカリという娘を捜していると知っているのでしょうか?」

 

 当然のようにヒカリの名前を出してきたリア王女。マリスの主であるリアからこの話が切り出されるのは当然の事と予想していたルークは、動揺を見せることなく冷静に質問を投げる。その問いに答えたのはリア王女ではなく、後ろで控えていた侍女のマリス。それまで閉じられていた瞳を薄く開き、静かに口にする。

 

「……我が国の情報網は完璧です」

「なるほど、大した情報網だ。忍者でも雇っているのでしょうかね?」

「さて……そのような存在が大陸にいるのでしょうかね……?」

 

 牽制しあうルークとマリス。一瞬の静寂が訪れるが、ランスがそれをすぐに破る。

 

「判った、引き受けてやろう。その代わり、ヒカリの情報は頼んだぞ」

「ありがとうございます。妃円屋敷の鍵は情報屋の娘が持っていますので、屋敷に行く前に受け取っていってください」

「了解しました。それではこれで失礼させていただきます」

 

 ルークが一礼をしている間にランスは先に部屋を後にしてしまう。それに続くようにルークも部屋から出ようとするが、その背中に向かって王女が問いかけてくる。

 

「……それと、ユキという娘の居所をご存じありませんか?」

「……はて、そんな事は冒険者風情ではなく、後ろの侍女に聞いた方がよいのではないでしょうか? この国の情報網は完璧のようですからね……」

「ふふっ……そうね、そうするわ……」

 

 ルークの挑発にマリスは表情一つ変えず、リアは妖しく微笑む。その妖艶な表情を見て、ルークは先程抱いた印象を撤回する。誘拐に関わっていないなんてとんでもない。間違いなく、こいつらが犯人だと確信を得ていた。

 

 

 

-リーザス城下町 城門前-

 

「さて、とりあえず情報屋に向かうぞ。屋敷の鍵を貰わなければいかんからな」

「……ランス、情報屋の方は俺に任せて武器屋に行ってくれないか? 俺の折れた剣の代わりを買ってきて欲しいんだ」

「ああ? なんで俺様がそんなパシリのような事をしなければならんのだ!?」

 

 ギロリとランスに睨まれるルークだったが、懐から小袋を取り出してランスに手渡す。

 

「中に600GOLD入っている。余った金で好きな物を買って良い」

「お、中々に気が利くではないか。仕方ない、行ってきてやろう」

「剣はそれなりの物を頼むぞ!」

 

 奪い取るようにルークから小袋を受け取ったランスは、そのまま武器屋へと駆けていく。ルークが一応まともな剣を買うように念を押すが、ランスからの返事は無かった。

 

「さて、それじゃあ俺は情報屋に向かうか……」

 

 武器を自分が買いに行き、ランスに鍵を取りに向かわせるのが本来望ましい行動だっただろう。だが、ルークが情報屋に向かったのには訳があった。情報屋を営んでいる女性とは以前からの知り合いであり、彼女をランスと会わせるのは気が引けたのだ。彼女の容姿が美しいというのもあるが、もう一つ決定的な理由がある。情報屋の前まで歩いてきたルークはそのまま扉を開ける。少し暗い雰囲気の店内に、その女性はいた。

 

「いらっしゃ……あ、ルークさん……」

 

 ギコギコという車輪の音と機械の音が混ざったものが店内に響く。それは、彼女の車椅子から発せられているものだ。彼女の名前は朝狗羅由真。まだ若いが、この情報屋の店主である。

 

「試合……準決勝だけですけど見ました……」

「ああ、わざわざ来てくれたのか。ありがとう」

「いえ……」

 

 俯く由真。あまり会話は弾んでいるように見えないが、これでも彼女はルークにかなり心を開いているのである。かつて初めてこの情報屋を訪れた際、車椅子で動きが不自由である彼女は心ない冒険者に暴行される寸前であった。ルークはすぐさまその冒険者を斬り捨て、彼女の窮地を救っていたのだ。今でも男性恐怖症な節はあるが、それでもルーク相手には普通に話しかけてきてくれる。美人、気弱、車椅子。こんな彼女をランスと会わせるのは、ライオンの檻に野ウサギを入れるようなものだ。

 

「事情は判っています。こちらが妃円屋敷の鍵です」

「流石は優秀な情報屋、耳が早いな」

「いえ……」

 

 由真が鍵を机の上に置く。先程リア王女から依頼を受けたばかりだというのに、一体どこから情報を仕入れたというのか。この能力の高さが、ルークが彼女を信頼している所以であった。

 

「ルークさん……お気づきかもしれませんが、事件の犯人は……」

「待った、それ以上はいけない。どこで聞かれているか判らないからな」

 

 口にしてはいけない事を言いかけた由真をルークは制する。彼女を巻き込むわけにはいかない。

 

「……お気遣いありがとうございます。すいません、私がもっと早く気が付いていれば……」

「この段階で気が付けただけでも凄い事だ。気にしなくて良い」

「ルークさん、お気をつけて……」

「ああ、ありがとう。事件が終わったら、また寄らせて貰うよ」

 

 そう言って情報屋を後にするルーク。思ったよりも早く用事が済んでしまった。妃円屋敷はここから近く、武器屋に向かったランスはまだまだ到着しないだろう。今から向かった所で待ち惚けるのは確実であったため、ルークは時間つぶしに情報屋の正面にあるレベル屋へと足を運んだ。

 

「ようこそレベル屋へ。ルークさん、お仕事は順調ですか?」

「それなりだな」

 

 レベル屋とは、冒険者が戦闘や鍛錬で得た経験値を計り、レベルアップの儀式を行ってくれる店である。彼女の名はウィリス。このリーザスのレベル屋で働いている女性で、非常に優秀な実力の持ち主であり、極僅かな者しかチャンスを貰えないレベル神への昇進試験を近々控えていた。由真同様、ルークは彼女とも面識がある。椅子に腰掛け、ウィリスにレベルアップの儀式を頼む。

 

「それでは儀式を行わせて貰います」

「ああ、よろしく頼む」

 

 ウィリスが一度目を瞑り、カッと見開く。すると、目の前の水晶玉に電流が走り、不思議な光を発した。が、それはすぐに収まってしまう。

 

「……駄目ですね、経験値が不足しています」

「そうか、手間を掛けた」

「ルークさんは既にかなりのレベルですからね。これだけ高い人は滅多にいないですよ」

「ありがとうな」

 

 盗賊団やアレキサンダーとの戦闘でレベルが上がっているかと期待したが、既にかなりの高レベルであるルークにはまだ経験値が足りていなかったようだ。椅子から立ち上がり、レベル屋を後にしようとする。

 

「それではこれで」

「あ、ルークさん。今って外は晴れていますか?」

「ん? 快晴だが、どうかしたのか?」

「今日、この後彼とデートなんですー」

 

 両頬に手を当てながら嬉しそうに語るウィリス、彼氏持ち。職務中だが、この後のデートが気になって仕方ない様子であった。

 

 

 

-リーザス城下町 妃円屋敷-

 

「遅かったな」

 

 情報屋の後にレベル屋まで寄ったというのに、ルークは相当待たされる羽目になった。距離があるとはいえ、武器屋方面には特にこれといって足止めを食いそうな施設はないというのに、一体何故ランスはこんなに時間が掛かったというのか。そんなルークの疑問に、ランスは平然と答える。

 

「がはは、武器屋のミリーちゃんと一発ヤってきたからな」

「人を待たせて置いて……まあ予想通りだが……無理矢理じゃないだろうな?」

「当然だ。俺様は合意でしかヤらん」

「信用していいものか……?」

 

 やはり情報屋に向かわせなくて良かったと胸を撫で下ろすルーク。万が一襲われでもしたら、由真がますます人間不信に陥ってしまう。

 

「とりあえず、買ってきた剣を渡してくれ。流石に丸腰では、悪霊がいるらしいこの屋敷では危ないんでな」

「ほれ」

 

 ランスが買ってきた剣をルークに向かってポイと投げる。それを受け取ったルークだったが、即座に眉をひそめる。刀身を眺めてみると、刃がぷるぷると震えている。こんなもので敵が斬れるのだろうか、そもそもこれは剣なのかとルークが疑問に思う。

 

「ランス……俺の記憶が正しければ、これはあの店で一番安い剣じゃないか?」

 

 そう口にしたルークは、ようやくランスの装備が大きく変わっていることに気がついた。どれも一流の冒険者が身につけるような良質の装備である。

 

「さすがリーザス、中々に良い装備を売っているな。その剣とこの一式でぴったり600GOLDだったぞ。がはは」

「お前な……金は後で返して貰うぞ」

「馬鹿言うな! 貴様の物は俺様の物、俺様の物も当然俺様の物だ!!」

 

 流石に身の危険が伴っているためルークも苦言を呈すが、ランスはさも当然の出来事であるかのようにふんぞり返る。傍若無人とは正にこの事。軽く口喧嘩をしながら屋敷へと入っていく二人だったが、直後に今入って来たばかりの扉が勝手に閉まり、どこからともなく悲しげな少女の声が屋敷中に響き渡った。

 

「……ようこそ妃円屋敷へ。貴方もあの王女の部下かしら……?」

「なるほど、これが悪霊の声か」

「声から察するに美人だな! 姿を見せろ!!」

「そんな理由か!?」

「王女の部下は許さない……絶対に……」

 

 スッと少女の声が消え、屋敷に静寂が戻る。だが、何か気配を感じる。人ならざる者の気配を。

 

「今の悪霊以外にも、低級モンスターが住み着いているな」

「ふん、雑魚モンスターなぞ俺様の相手にならんわ」

「とりあえず二手に分かれて探索しよう。広い屋敷だからな」

 

 そうランスに提案するルーク。本来なら危険を回避するために共に行動するのが定石だが、屋敷はかなり広く、また、あまり強いモンスターの気配は感じないからだ。ならば、わざわざ男二人肩を寄せ合って一緒に探索する理由はない。

 

「うむ、しっかり働けよ」

「何をいきなりロビーの椅子に腰掛けているんだ。お前も探すんだよ」

「ちっ……」

 

 渋るランスを無理矢理立たせて西にある広間や倉庫の探索に向かわせる。ルークは東にある食堂や厨房、応接間に向かい探索を始める。食堂からは特にめぼしい物は見つけられなかったが、厨房を調べていると一つのメモ帳を見つける。それを手にとってパラパラと中身を確認していったところ、どうやらこれは悪霊が住み着く前にここに勤めていた料理人が書いた物のようであった。

 

「献立……嫌いな従業員……大した情報は書かれて……ん?」

 

 ルークがそのメモ帳を閉じる直前、気になる一文を発見して手が止まる。

 

「王女様のお食事の注意……どういう事だ……?」

 

 マリスの口ぶりでは、この洋館の主というのはリア王女とは関係無かったはず。いや、よくよく考えてみるとマリスはそう思わせるような言い回しをしただけで、一言もリア王女が関係していないとは言っていない。更にメモ帳を詳しく見ていくと、この妃円屋敷がリア王女の私邸である事が判った。

 

「この屋敷には王女が住んでいた……」

 

 そのとき、後ろからガタッ、という物音がする。即座に剣を抜きながら振り返ると、そこには四つの赤い靄がふよふよと浮いている。良く見れば、その靄の中心には人の顔が浮かび上がっている。霊体系モンスター、さけび男だ。

 

「物理攻撃の効きにくい霊体モンスターか。ただでさえ剣が不安な状態だというのに……」

「ウワァァァァ!!」

 

 ルークに気が付いたさけび男が一気に迫ってくる。超音波のようなものを飛ばしてくるが、ルークはそれを横飛びで躱し、目の前まで迫っていた一匹を斬りつける。が、ボヨンという弾力のある音が響き、さけび男は多少のダメージを負っていたが、未だ健在。

 

「この程度のモンスターを一撃で倒せないとはな……ある意味凄い剣だ」

 

 ぷるぷると震える剣を見ながらルークは苦笑する。いくら霊体系モンスターとはいえ、さけび男は雑魚モンスターの部類に入る。それをルークのレベルを以てして一撃で倒せないのは、軽い奇跡である。

 

「ウワァァァァ!!」

「ちっ……」

 

 ルークが隣の応接間に続いている扉に向かって走る。厨房は狭く、真空斬を放つ間合いも碌に取れそうになかったからだ。扉を開けて中に入り、間合いを取るべく部屋の奥へと向かおうとしたルークの目に何かの光が飛び込んでくる。暖炉の奥に銀色に光る物、目を凝らして見ると、それは剣のようであった。

 

「丁度良い、使わせて貰う!」

「ウワァァァァ!!」

 

 ルークがその剣を取ると同時に、扉をぶち破ってさけび男が入ってくる。が、一閃。ルークが剣を横薙ぎに振るったところ、さけび男が真っ二つに斬れて消滅したのだ。

 

「軽い、良い剣だ! 真空斬!!」

「ウワァァ……」

 

 続けて扉から入って来た二体のさけび男に真空斬を放つ。闘気を放つ真空斬は、その剣の斬れ味にも多少威力を左右される。試し撃ちも兼ねて放ったそれは、一撃の下にさけび男を消滅させた。そのままルークは前に駆けていき、残っていた一体を袈裟斬りにする。これも一撃。モンスターを全滅させたルークは改めて手に入れた剣を見やる。

 

「火事場泥棒みたいで申し訳ないが、貰っていく事にしよう。廃館だしな」

 

 王女の私邸という事から恐らくリア王女の私物なのだろうが、幽霊屋敷で眠らせておくにはあまりにも惜しい業物。それに、手に入れたアイテムは持ち帰るのが冒険者の性である。暖炉の奥には先程まで使っていたぷるぷるの剣を代わりに供え、ルークは偶然手に入れた名剣、妃円の剣をこのまま持ち帰る事にした。

 

「何か手掛かりはあったか? む、なんだその高そうな剣は!? 俺様に寄越せ!」

「お前は俺の金で新しい剣を買ったばかりだろうが!」

 

 ルークがロビーに戻ると、そこには西の部屋の探索を終えたランスがいた。戻ってきて早々たかられるルーク。

 

「で、どうだったんだ?」

「そうだな……この屋敷が王女の私物で、王女自身もここに定期的にやってきていた可能性が高い、という事くらいだな」

「ふん、使えんな。俺様はこの屋敷の謎を完璧に解いたぞ! 悪霊退治の方法もな!」

「本当か!?」

 

 自身満々にそう口にするルーク。この広い屋敷を探索し始めてまだ一時間も経っていない。もし本当に悪霊退治の方法を見つけているとすれば、相当早い解決となる。

 

「倉庫の探索をしていたら急に突風が吹いてきてな。流石の俺様も思わず目を瞑って風が止むのを待った。で、風が止んで目を開けると、そこには三角木馬に乗せられて拷問を受けている女の子の姿があったのだ」

「拷問を受けている女の子……?」

「うむ。話しかけたらすぐに消えてしまったがな」

「となると、映像か霊体のようなものか。この屋敷の幽霊と関係がありそうだな」

「それと、こんなものも見つけたぞ」

 

 ランスが手に持っていたのは日記帳であった。ルークはそれを受け取り、ページを開く。それは、この屋敷で拷問を受けていたと思われる少女の日記。全てのページに痛々しい文字が躍っており、最後のページにはこう綴られていた。

 

-また今夜も地獄の時間が始まる。何度死のうと思ったかわからない。でも……夜9時から11時までの間、この時間が私の地獄の時間-

 

「日記はここで終わりか……」

「これを読んだ俺様はこの屋敷の謎に気がついたのだ! どうだ、判るか?」

「いや、特に目新しい情報は無かったと思うが……」

「ふっ……これが英雄と凡人の差だな。あれを見ろ!」

 

 ランスがババン、とポーズを決めながらロビーの奥を指さす。その先には、壊れた柱時計が置いてあった。かなり立派な装飾であり、かなり高価な代物だという事が見て取れる。

 

「時計……?」

「時間を見ろ!」

「10時25分で止まっているな……」

「そう、あの時計は10時25分で止まっている! そして、拷問を受けていた少女は9時から11時の間に拷問を受けていたと考えられる!」

「ん……それは確かにな」

 

 日記に書いてあった地獄の時間というのは、彼女が拷問を受けていた時間の事だろう。その事にルークが頷くと、ランスは自慢げに言葉を続ける。

 

「この時計が拷問の時間で止まっているせいで彼女は死んでも拷問から抜けられないに違いない! つまり、あの時計の時間をずらせば悪霊は綺麗さっぱり消えるという訳だ。がはは!」

「まさか……別にこの屋敷の時計があれ一つという訳でもあるまいに」

「言ったな! ではあの時計で解決したら報酬の分け前は9:1だぞ!」

「関係なかったら7:3な」

 

 確かに面白い着眼点ではあるが、時計は厨房にも食堂にも応接間にも置いてあった。となれば、この部屋の時計をどうこうしても何かが起こるとは考えがたい。ランスが時計の時間をずらしているのを黙って見守るルーク。ランスがずらし終えて一歩下がる。時計の針は12時25分を差しているが、やはり何も起こらない。

 

「ランス、だから言っただ……」

 

 ルークがそう言いかけた瞬間、奥の厨房から轟音が鳴り響いた。まるで何かの仕掛けが動いたかのような音。更には、屋敷を覆っていた邪悪な気配が綺麗さっぱり消えてしまう。どうやらさけび男などの霊体モンスターが消えたようだ。この事から導き出されるのは、ランスの予想が的中していたという事。

 

「なんという……」

「がはははは、18000GOLDゲットだ!」

 

 ランスは意気揚々と、ルークはショックを隠しきれない様子で音のした厨房に向かう。厨房には先程のさけび男との戦闘の跡がまざまざと残っており、物がそこら中に散らばっていた。だが、その中心には先程まで無かった地下室への階段が姿を現していた。

 

「おやおや、厨房を散策していながらこんなものも見つけられなかった冒険者がいるのだな。情けない奴だ、顔を見てみたい。これは分け前が10:0まで有り得るな」

「……」

 

 もはやぐうの音も出ない。正反対のテンションで二人は階段を下りていくと、真っ暗な小部屋に出た。上の階から光は射し込まないらしく、何も見えない。ルークはすぐに道具袋から魔法ライトを取り出して明かりをつけ、部屋の中を見回す。そこら中に拷問道具が散らばっており、部屋の隅には三角木馬も置いてあった。

 

「……拷問はこの部屋で行われていたみたいだな」

「エロい道具が大量に散らばっているな。いくつか持って帰ってシィルに試してみるか」

「お前な……」

 

 ランスが床に落ちていたバイブを拾い上げた瞬間、部屋の中央に青みがかった何かが浮かび上がる。ルークがすぐさまそちらにライトを向けると、それは悲しげな表情を浮かべた少女であった。青みがかったその身体は、若干透けている。

 

「おお、あの娘だ! さっき俺様が見た拷問を受けていた娘だ」

「彼女がこの屋敷の幽霊か……?」

「ありがとうございます……貴方たちのお陰で、私は地獄の時間から解放されました」

「聞いたか? やはり時間だ! がはは、それじゃあ魅力の指輪を返してくれるか?」

 

 ルークに勝ち誇りながら、ランスは少女に向かって右手を出す。が、少女の表情は更に曇り、青みがかったその身体を覆っている光が一瞬暗くなる。

 

「あの指輪だけは……お返しする事は出来ません」

「ん? なんでだ?」

「それは……」

「君を死に追いやったのが、その持ち主だからか?」

 

 ルークの問いに少女は静かに頷き、自分の身に起こった事を語り始めた。

 

「私の名前はラベンダー、パリス学園の生徒です。私がパリス学園に入学したのは、今から二年前。そのときの私は、あの学校の真の姿を知りませんでした」

 

 沈痛な面持ちで昔の事を思い出すラベンダー。周囲を覆っている光が淡く揺らめく。彼女の心情に反応しているのだろうか。

 

「学園長のミンミン先生から特別生徒に任命されてから一週間後、眠り薬を飲まされて……気がつくと王女様の目の前にいました。王女様は私をペットにすると言って……それからこの屋敷に隔離されて、毎日、毎日……」

「やはり学園もグルか……」

「あの王女様は残忍です。私の前にペットにしていたメイドの女性は、狂い死んでしまったから残念だったと、笑いながら話していました。私に残されたのは、自分から命を絶つ事だけでした……」

「それで、せめてもの復讐に指輪を奪ったという訳だな」

「はい……王女様が憎い……」

 

 唇を噛みしめ、その目に涙を浮かべながらそう口にするラベンダー。その無念が、痛みが、二人の胸に伝わってくる。

 

「こうしている間にも、また他の女の子が王女様の犠牲になっていると思います」

「それがヒカリちゃんか……」

「判った。俺様が王女を懲らしめてあげよう。それで、君は安心できるか?」

「!? ……ありがとう!!」

 

 ラベンダーがランスの胸に飛び込んでくる。幽霊である彼女には質量など無いはずなのに、ランスの腕にはしっかりと彼女の重みが伝わっていた。ランスは泣きじゃくる彼女の頭にそっと腕を回し、ルークはそれを静かに見守っていた。しばらく泣きじゃくった後、彼女はランスの胸から離れる。その顔には、先程までとは違う笑顔があった。

 

「絶対に王女様を止めてくださいね。そうしてくれなかったら、化けて出ちゃうから」

「任せろ。まあラベンダーちゃんみたいな可愛い子だったら、化けて出てくれて構わんがな。がはは!」

 

 悪戯っぽく言う彼女に対してランスが笑いながらそう返すと、彼女は微笑みながらその身体を少しずつ消していった。ランスにその心を救われ、成仏したようだ。すると、カランという音が地下室に響く。先程まで彼女がいた場所に、王女から盗んだ魅了の指輪が落ちている。

 

「……ふん」

 

 ランスはその指輪を拾い、懐へと仕舞う。幽霊であるためそんなはずはないのだが、まだ微かにラベンダーの温もりが感じられた。そのランスに、それまで静かにしていたルークが声を掛ける。

 

「随分と無茶な約束をしたな。王女を懲らしめるとは……大国リーザスを敵に回すつもりか?」

「ふん、関係ないな。悪い娘はお仕置きしてやるのが良い男の勤めだ」

「ただではすまんぞ?」

「ユキちゃんを牢から逃がした奴が何を言ってるんだかな」

 

 ランスがルークに振り返る。知らない者が見れば、ランスの顔つきはいつも通りであるという印象を抱いただろう。だが、ルークはその変貌を確かに感じ取っていた。ランスは今、戦士の顔つきになっている。

 

「ルーク、お前もリーザスを敵に回す覚悟はとっくに出来ているんだろう?」

「当然だ。あの王女、野放しには出来ん」

 

 ランスが初めてルークの名前を呼ぶ。それに気がついていたかは定かではないが、ルークもその表情を戦士のそれに変え、ランスに笑い返す。

 

「行くぞ」

「ああ」

 

 

 

-リーザス城下町 パリス学園-

 

「(ランス様の調査は順調に進んでいるでしょうか……?)」

 

 休み時間、シィルは学友から離れ、一人廊下に佇んでいた。窓の外に見えるリーザス城。今朝の情報共有でリーザスの王女が犯人である可能性があるというのはシィルも聞いていた。それゆえ、シィルの不安は増していたのだ。本当に王女が相手なのだとしたら、敵の力が強大すぎる。

 

「(どうか無理はなさらないで……)」

「シィルさん。先程から窓の外をジッと見つめていますけど、どうかしたんですか?」

「あ、セラさん。いいえ、何でもないんです」

 

 シィルに話しかけてきたのは、クラスメイトのセラ。大人びた雰囲気の彼女はとても同い年には見えず、クラスでも若干浮いていたのだが、その人当たりの良さからそれを口にする者はいなかった。そして、彼女こそが以前にランスに報告していた、思考をシールドの魔法でガードしている女生徒だ。

 

「あ、もうすぐ休み時間が終わってしまいますね。教室に戻りましょう」

「ええ……」

 

 シィルが窓際から離れて教室に向かって歩いて行く。シィルはセラのことを要注意人物としてマークしていたのだが、まるで怪しい素振りを見せなかったため、杞憂だったのかとシィルは考え直し始めていた。それゆえ、今のシィルはあまりにも無防備。

 

「シィルさん。教室に戻る前に少し話があるのだけど、いいかしら?」

「はい、なんでしょうか?」

 

 シィルが振り向いた瞬間、腹部に衝撃が走る。呆然としながら視線を落とすと、セラの拳がシィルの腹に叩き込まれていた。

 

「えっ……?」

「おやすみ、シィルさん」

「(ランスさ……ま……)」

 

 意識を失って崩れ落ちるシィルを抱き留めるセラ。すると、天井から女忍者が降りてきてシィルを代わりに抱きかかえる。

 

「マリス様。二人が妃円屋敷から出てきました。指輪を持っているのも確認しています」

「ご苦労様。それでは、すぐに城に戻らないとね」

「先に行って足止めをしておきます」

「頼みましたよ」

 

 パリス学園の女生徒、セラ。彼女の正体はリア王女の侍女、マリスであった。年齢的に若干無理のある変装ではあるが、それを口に出来る者はいない。

 

 

 

-リーザス城 城門前-

 

「ええい、通行手形は見せているだろうが! 何故入れんのだ!」

「通行手形の偽造品が出回っているという情報が先程流れてきましたので、城へ確認を取っているところです。少々お待ちください」

 

 城門前までやってきたランスは門番に通行手形を見せて中に入ろうとしたのだが、何故か足止めを食ってしまう。これは、女忍者の手引き。門番に偽造品が出回っているので入念にチェックするよう言いつけ、マリスが戻ってくる時間を稼いだのだ。そうこうしている内に、マリスがランスの後ろから歩いてくる。

 

「ランス様」

「ん、マリスか。外に出ていたのか?」

「ええ、少し野暮用がありまして……それよりも、指輪を手に入れられたようですね」

「耳が早いな。手に入れたのはついさっきだぞ」

「リーザスの情報網は完璧ですから。ああ、この方の通行手形は大丈夫です。私が保証します」

「はっ! 失礼しました」

 

 牢番がマリスに敬礼し、道を開ける。王女の侍女であるマリスは地位的にもかなりのもののようだ。

 

「さあ、どうぞこちらへ」

「うむ、案内を頼む」

 

 そう言って王女の間へと案内しようとするマリスだったが、すぐにその歩みを止める。

 

「ところで、ルーク様はどちらへ……?」

「指輪を手に入れたのは知っているのに、それは知らんのだな。少し寄るところがあるとか言っていなくなったから、先に俺様だけやってきたのだ」

 

 そう、今この場にいるのはランスのみでルークの姿はない。女忍者は屋敷を出るのを確認した後すぐにマリスに報告に来たため、その後のルークの行動までは見ていなかったのだ。

 

「そうでしたか」

 

 ランスの説明にマリスは軽く頷き、王女の間へと案内すべく再びランスの少し前を歩き始めた。城内に入り、絨毯の上を歩いて行くランスだったが、ふと違和感を覚える。

 

「おかしいな……来るのは二回目だが、こんな道だったか?」

「王女様の部屋までは特殊な結界が張ってあり、許可された者以外は侵入出来ないようにしているのです。結界を破壊出来るような高位の魔法使いでも無い限り、私の案内無しでは王女の間まで辿り着く事は出来ません」

「ふぅん……」

 

 自分で聞いておきながら興味なさげに鼻をほじるランス。その様子にもマリスは表情を変える事無く、王女の間へとランスを案内するのだった。

 

 

 

-リーザス城 王女の間-

 

「戦士ランス様、無事に悪霊から魅力の指輪を奪い返していただけましたか?」

 

 部屋に到着するや否や、王女がランスに向かってそう問いかけてくる。マリスはすぐに王女の後ろへと回り込み、以前と同じように黙って控えている。

 

「これの事か?」

「それです! それが私の魅了の指輪です! 本当に取り返してくれたのですね。ではその指輪をこちらに……」

「おっと、その前に聞いておきたい事がある」

 

 懐から取り出された魅了の指輪を見て歓喜する王女だったが、ランスは即座にその指輪を懐に仕舞い直して王女に問いを投げる。

 

「聞いておきたい事?」

「屋敷にいた幽霊はラベンダーという美少女だった。この名前に聞き覚えはないか?」

 

 ピクリ、と王女が固まる。その表情に困惑の色が浮かび、少しだけ黙り込んだ王女だったが、すぐに元の笑顔に戻って言い放つ。

 

「知りませんわ」

「ふん、まあいい。で、ヒカリちゃんの情報はどうなった?」

「そうでした……マリス、ヒカリをここに」

 

 王女が指示すると、マリスは一度カーテンの後ろに下がり、何かを運ぶような物音が聞こえてくる。十数秒の後、カーテンが勢いよく開かれると、そこにはマリスと両手を縛られた少女の姿があった。少女は気を失っているようであり、その容姿は写真で見ていたものと全く同じ。彼女がヒカリで間違いないだろう。

 

「ランス様、これが貴方たちお捜しのヒカリ嬢ね?」

「ふん、やはりそういう事か。ラベンダーちゃんの話は正しかったようだな。この変態レズ王女め!」

 

 ランスがそう言うと、静かに控えていたマリスがカッと目を開き声を荒げる。

 

「口を慎みなさい! リア王女に対しなんという事を!」

「残念だけど、ヒカリは私の可愛いペット。返すことはできないわ。知りすぎてしまった貴方たちもね……」

 

 リア王女がヒカリの横まで歩いて行き、愛おしそうにその頬を撫でる。そして、歪んだ笑みでランスに微笑みかけてくる。

 

「もう一人は今この場にはいないみたいだけど、どうせ後からのこのことやってくるでしょう。そのときはマリス、ここまで案内して差し上げなさい。目の前でゆっくりといたぶってあげるわ」

「畏まりました」

 

 平然と言い放つ王女。それに対し、素直に返答するマリス。国の上層部にいるものは、得てしてこのような歪みを持ち合わせているものである。それは、リーザスと並び立つ二つの大国、魔法大国ゼスと軍事大国ヘルマンにも該当する。その歪みがランスとルークの前に立ちはだかるのは、もう少し先の話。

 

「がはは、本性を見せたな。ならば力ずくで返して貰うまでだ。ついでに、レズ王女様にもお仕置きだ!」

 

 イヤらしい笑みを浮かべながらランスが王女に跳びかかろうとする。が、突如後ろに気配を感じ振り返る。天井裏から降り立ったその者は、ランスの首に細い紐を巻き付け、それを渾身の力で締め上げてくる。

 

「なに!? ぐえっ……」

 

 紐を締め上げているのは、黒装束を纏った娘。微かに見えるその顔に見覚えがある。

 

「お前は……あのときの公園の……」

「忠告はしたはずよ……」

 

 更に締め付けが増す。ランスは必死にもがくが、紐は外れない。ランスの頭に窒息死という言葉が過ぎる。

 

「(うぐっ……やばい、このままでは……)」

 

 食い込んでくる紐に流石のランスも焦る。その顔はだんだんと青ざめ、意識が朦朧としてくる。

 

「……」

「ごめんなさい……」

「マジックミサイル!!」

 

 ランスの意識が無くなりかけたそのとき、聞き慣れた声が王女の間に響き渡った。驚いてそちらに振り返った女忍者だったが、目前まで迫っていた炎の塊を回避することが出来ず、壁へと吹き飛ばされる。それによりランスの首に巻かれていた紐が緩み、間一髪で事なきを得る。

 

「げほっ、げほっ……」

「ランス様、大丈夫ですか!? いたいのいたいの、とんでけーっ!」

 

 シィルがすぐにランスに駆け寄り、ヒーリングの呪文を唱える。すると、ランスの首に出来ていた痣がみるみる内に消え、息苦しさがなくなっていく。

 

「げほっ、げほっ……助けに来るならもっと早く来い、バカ!」

「きゃん!? すみません……」

「何故この娘がここに!? 隣の部屋に縛っていたはず!?」

「理由は簡単。俺が助け出しただけだ」

 

 ランスから理不尽な拳骨を受けているシィルを見てマリスが困惑する。シィルは王女の次のペット候補兼、いざというときの人質として隣の部屋に捕らえられていたはずなのだ。その問いに答えたのは、部屋の入り口から現れた一人の男。この場にいなかったもう一人の戦士、ルーク。

 

「なぜ貴方がここに……?」

「以前にシィルちゃんが特別生徒になったと言っていたのを思い出してな。ラベンダーも任命された直後に誘拐されたと言っていたから気になって様子を見に行ってみれば、既に誘拐された後。流石に焦ったぞ」

「なにぃ? シィル、偉そうに助けに来ておきながらお前も捕まっていたのか! えぇい、こうしてやる!」

「ひんひん……痛いです、ランス様……」

 

 ぐりぐりとシィルの頭を両拳で締め上げるランスは無視し、ルークが言葉を続ける。

 

「まあ、ミンミン学園長を拷問したら、あんたが連れて行ったことをすぐに白状したがな」

「あの学園長……処刑ね」

 

 王女が冷たく言い放つのとほぼ同時に、これまで後ろに控えていたマリスが今度は王女を守るように前に出てくる。

 

「なるほど……ですが、一番聞きたいのはそこではありません。なぜ結界を突破できたのですか!? あなたは魔法使いではないでしょうに!?」

「なるほど、王女の間までの廊下に張られた結界の事か……」

 

 ルークはマリスの疑問に頷く。確かに普通の戦士であったなら、あの高度な結界を突破することは不可能だっただろう。だが、今この場にいる男は、結界を無効化する能力を持ち合わせた異質の存在。

 

「誤算だったな。あの程度の結界、俺には何の意味も持たんぞ」

「くっ……」

 

 結局なぜ結界が破れたのかは分からないマリスだが、現実問題としてルークが今ここにいる。こちらは自分と王女、そして女忍者の三人。対してあちらは、トーナメントを勝ち上がった二人とその従者である魔法使い。非はリア王女にある事から兵士を呼ぶ訳にもいかず、マリスの額に一筋の汗が流れる。その状況を察してか、女忍者が一歩前に出てルークとランスの前に立ちふさがる。

 

「リア様、マリス様、ここはお任せを」

「……頼みましたよ!」

 

 その言葉を受け、王女とマリスは部屋の奥へと下がって床を持ち上げる。そこには逃亡用の隠し階段があった。女忍者に一度だけ声を掛け、地下へと逃げていく二人。

 

「シィル、あそこで倒れているヒカリちゃんの治療をしておけ。ルーク、この場は任せた。俺様は王女を追う。あの性悪王女には説教してやらんとな!」

 

 真面目な顔つきで指示を出すランス。その表情はいつものイヤらしいお仕置きを考えている顔ではない。実に真剣な表情なのだ。その顔を見たルークは静かに剣を抜く。

 

「了解だ。あの王女に世間の厳しさを教えてやれ」

「簡単に行かせると思わないでよ!」

 

 自分を無視して王女の後を追おうとしているランスに腹が立ったのか、女忍者は数枚の手裏剣をランスに向かって投げてくる。だが、一瞬でランスと女忍者の間に割り込んだルークに全て叩き落とされる。

 

「行け! ランス!」

「がはは、俺様に任せておけ!」

 

 ルークの言葉を受け、ランスは王女たちを追って地下への階段を下りていく。すぐさまそれを追おうとする女忍者だが、その間にルークが割って入る。先程までと立場が逆転した形になり、女忍者は唇を噛みしめる。

 

「さて……ランスが王女の説教係なら、俺はあんたの説教係という事になるのかな」

「説教ですって!? ふざけたことを……死んで貰うわ!」

 

 女忍者はすぐさま懐から手裏剣を取りだし、ルークに向かって放ってくる。

 

「ルークさん!?」

「問題ない! ヒカリちゃんの治療を続けてくれ」

 

 シィルが魔法で援護しようとするが、それを制しながらルークは全ての手裏剣を叩き落とす。

 

「くっ……はっ! はっ!」

「無駄だ!」

 

 再度手裏剣を放ってくる女忍者に向かってそう言い放つルーク。彼女の放つ手裏剣の軌道はあまりにも素直であるため、簡単に叩き落とす事が出来るのだ。

 

「くそっ……はぁっ!」

 

 痺れを切らした女忍者は手裏剣を放った後に空中へと跳び上がる。即座に両手にくないを持ち直し、手裏剣を叩き落とす事に気を取られているルークに迫る。

 

「死ね!」

「そんな簡単に空中に跳び上がるとはな……」

 

 ルークはそう言いながら腰を沈め構える。妃円の剣に闘気が集まり、それを素早く横へと振り切る。剣から発生した闘気の斬撃が、跳び上がっていた女忍者へと直撃した。

 

「真空斬、手加減版」

「ぐぇっ!」

 

 女の子が出してはいけないような声を出しながら女忍者が吹き飛ぶ。背中から壁に激突し一瞬意識が飛びかけるが、すぐさま頭を振って立ち上がろうとする。が、それを阻むように首に剣の切っ先が突きつけられる。

 

「戦い慣れていないな? 隠密が主であって、あまり場数を踏んでいないようだな」

「くっ……バカにして……」

 

 女忍者は懐から手裏剣を取り出そうとするが、直後にルークから強烈な殺気が発せられる。

 

「ひっ……!?」

「ふむ……やはり場数は踏んでいないか」

 

 恐怖のあまり声を漏らして手裏剣を落としてしまう女忍者。それを確認したルークは殺気を抑え、目の前の女忍者を見下ろす。ラベンダーやヒカリへの行いを考えれば、ここで斬ってしまって構わない相手と言えるだろう。だが、ルークにはどうしても彼女に聞きたい事があった。

 

「少し聞きたいことがある」

「何よ……拷問されたって、リア様のことは話したりしないわ」

 

 先程の恐怖がまだ残っているのか、足を少しだけ震わせながらキッとルークを睨み付けてくる女忍者。だが、その目がすぐに見開かれる。首に突きつけていた剣を、ルークはスッと下に下げたのだ。何故そのような行動を取ったのか判らない女忍者は困惑する。

 

「王女の事が聞きたいわけではない。君の意見を聞きたい」

「私の……?」

「ああ……君は、王女が行っていた今回の犯罪を本当に正しいと思っていたのか?」

「……っ!?」

 

 ルークが尋ねた内容に驚愕し、絶句する女忍者。しばし言い淀んでいたが、一度息を呑んで返答をする。

 

「私の意見などないわ。忠臣として、命じられた事に応えるのは当ぜ……」

「それは真の忠臣ではない!!」

 

 言いかけた女忍者の声をルークが遮る。先程までの話し方と違い、その一言一言に威圧感が込められている。その迫力に、女忍者は言おうとしていた言葉を続けられなくなってしまう。

 

「忠臣としてなどと逃げるのではなく、君自身がどう思っているのかを教えてくれ」

「……リア様の仰る事に……間違いなどは……」

「罪もない民を自分の快楽だけのために死なせる事がか? それが本当に上に立つ者の行動だとでも?」

「……」

 

 ルークの問いかけに女忍者は答えることが出来ない。その拳が強く握られたのは、何に対しての悔しさからだったのであろうか。

 

「真の忠臣であるのならば、主がその道を違えたら横っ面を引っ叩いてでも道を正すものじゃないのか?」

「それでも……自分の意志を殺してでも主の命に従うのが……忍としての役目です……」

 

 自分の意志を殺してでも、と言ったのを聞き逃すルークではない。言葉に混じらせていた威圧感を解き、一転して穏やかな喋り方になる。

 

「確かに、忍としてはそれが正しいのかもしれない。だが、忠臣として……人間として……そして、一人の女の子として、その考えは絶対に間違っている……」

 

 その瞬間、女忍者の瞳からは自然と涙が零れていた。敵の前で涙を流す情けなさと恥ずかしさを感じながら、それでも涙を止めることが出来ない。

 

「私だって……あんなことしたくなかった! でも、恩義に報いるために……」

 

 嗚咽混じりにそう言葉にする女忍者。やはり彼女の行動は本意ではなかったらしい。ルークがそれを感じたのは、公園での出来事。あのように姿を現し、手を引けと忠告する事がそもそもおかしいのだ。殺すつもりならば、忠告などせずにさっさと殺せばいい。わざわざ自分の存在を教えるメリットなど、どこにもない。

 

「忠告に来たのは、君自身の意思だったんだな……」

「……」

 

 無言で頷く女忍者。彼女は王女を止める事が出来なかった。だからこそ、巻き込まれて犠牲になる人を少しでも減らしたかったのだ。それ故、自分の身を危険に晒してでも事件から身を引けと忠告していたのだ。彼女もまた、足掻いていた。

 

「君がしていた事は間違っている。だが、自分の身を危険に晒してでも忠告に来たその行動だけは……間違っていない」

「うぅ……あぁっ……」

 

 ルークの足に縋るようにしながら泣きじゃくる女忍者。それを見たルークはスッと腰を落とし、泣きじゃくる彼女の頭に手を置く。シィルも気絶しているヒカリを介抱しながらその様子を静かに見守っていた。しばらくの後、泣き止んだ彼女は恥ずかしそうに頬を赤らめる。

 

「すいません……恥ずかしいところを……」

「いや、気にしてないさ。それよりも、君がリア王女から受けた恩義というのを聞いてもいいかな?」

 

 今のやりとりからも、この少女が決して悪人で無い事が見て取れる。そんな彼女が意思を押し殺してまで悪行に手を貸すなど、一体どれ程の恩義なのか。

 

「命の恩人なんです。祖国のJAPANに帰れず、大陸を行くところもなく彷徨っていた私を、リア様が拾ってくださったんです」

「そうか……」

 

 それは、ただの気まぐれだったのかもしれないし、大陸には珍しい忍者を貴重に思ったのかもしれない。リアの真意は判らないが、あの王女が彼女の命を救ったという事に変わりはない。なればこそ、彼女は王女に仕えたのだ。たとえ自分の意志を殺してでも、その恩義に報いるために。

 

「とりあえずランスの後を追うか。道案内を頼んでもいいかな?」

「……はい。それと、出来ればリア様を許してはいただけないでしょうか? 罰は私が代わりに受けます……」

「俺に王女を裁く権利なんてないさ。事がでかすぎる。まあ、ランス次第だな。シィルちゃんは……?」

「ここでヒカリさんの治療を続けています。命に別状はありませんから、直に目を覚ますと思います」

「それは良かった」

 

 ルークが剣を腰に差し、女忍者は道案内をすべく立ち上がる。と、ルークが先程の会話で引っかかっていた疑問を口にする。

 

 

「因みに、祖国にはどうして戻れないんだ? 捨て駒扱いで切り捨てられたとか、何かの秘密を握ってしまって命を狙われているとかか?」

 

 ぴくっ、と女忍者の動きが止まる。何か言いにくい事を聞いてしまっただろうかとルークが首を捻っていると、彼女が言いにくそうにしながらゆっくりと口を開く。

 

「……ゅう……でまい……って……」

「ん、何か言いにくい事だったか? それだったら無理しなくても……」

「……研修旅行で迷子になって……勘違いで抜け忍扱いされて……帰れなくて……」

 

 屋内なのに冷たい風が吹く。女忍者の顔は、先ほどよりも更に赤みを増していた。

 

「んっ……それは……災難っ……だったな……くっ……」

「笑った!? 今笑いましたよね!?」

「いや……全然笑ってなんかいないぞ……ぷっ……くくっ……」

「隠せてない! 全然隠せてないですから! だから言いたくなかったのにぃ!!」

 

 今にも泣き出しそうな顔をしてルークに詰め寄る女忍者。ルークは必死に堪えるが、どうしても笑いが抑えられない。それを見かねたシィルがフォローに入る。

 

「ルークさん、笑っちゃかわいそうですよ……ふふっ……あははっ!!」

「うわぁぁぁぁぁん!!!!」

 

 全くもってフォローになっていなかった。

 

 

 

-リーザス城 地下通路-

 

 ルークと女忍者の二人はリア王女が逃げていった通路を歩いていた。多少入り組んではいたが、道を全て知っている女忍者の案内のお陰で迷うことはなかった。道中、気絶していたマリスを見つける。ランスの前に立ちふさがり、返り討ちにあったのだろう。

 

「マリス様……マリス様!」

「んっ……んっ!? どうして貴方がその男と!?」

「それは今からご説明します……」

 

 目覚めたマリスはルークと女忍者は一緒に行動している事に困惑するが、先程あった出来事を女忍者が説明すると申し訳無さそうに俯いてしまう。

 

「……横っ面を引っ叩いてでも、ですか……返す言葉がありませんね。リア様のためと思って叱らずにいた事が、リア様を間違った方向に進めてしまったのかもしれません……だとすれば、一番の元凶は私です」

「両親は何も言わなかったのか?」

「リア様は……ご両親から遠ざけられていましたから……」

 

 マリスがリアの過去を語る。幼い頃から非凡な才能の持ち主であったリアは、国の政策などに口を出してきたのだ。それはリアの父である現国王の政策を凌駕するものであり、王はその才能に恐怖した。リアはあまりにも優秀すぎたのだ。

 

「私が叱らなければならなかった……一番リア王女と近い存在であった私が……」

 

 そう後悔するマリスであったが、彼女にその役目を託すのは酷であったかもしれない。リア王女とマリスの年の差は7つしかなく、王女が幼い頃から仕えていたマリスにとっては妹のような愛しい存在。それ故、どうしてもリア王女に強く言いきれなかったのだ。マリス自身も若かった事を考えれば、一概にマリスが悪いとも言いきれない。誰からも叱られずに歪んでしまったリア王女。彼女の行いは決して許されることではないが、彼女もまた被害者なのかもしれない。

 

「まあ、今頃ランスがしっかりと叱っていてくれているだろう」

「大丈夫なんですか? 正直、あの男と二人きりにするのは危ない気が……」

 

 訝しげに問いかけてくる女忍者。ルークたちの周りを探っていた彼女は、ランスの女性に対する行為も何度か目撃している。だが、ルークは笑いながらそれに答える。

 

「まあ、大丈夫だろう。別れ際にかなりまじめな顔をしていたからな。ランスも王女の非道な行いを許せなかったんだろう。まだ出会ってから一月も経ってないが、これだけは判る。あいつは、決めるときは決める男だ」

「それでは行きましょう。リア王女はこの先の泉のほとりに隠れているはずです」

 

 マリスが先頭に立ち、通路を進んでいく。数分の後、目の前に光が射し込んでくる。長い地下通路の先には、マリスの言うように泉があった。

 

「……して……」

「リア様の声です!」

「あっちか!」

 

 ほとりの方からリア王女の声が聞こえてきたため、三人はそちらに向かって走り出す。茂みの先、そこにランスとリアはいた。

 

「ああっ……もっと、もっと気持ちよくして!」

「がははは、ではもっとお仕置きしてやろう!」

 

 そこには、お仕置きと称してリア王女とヤっているランスの姿。

 

「はふぅ……」

「マリス様ぁぁぁ!!」

 

 マリスが倒れる。目の前の現実に打ちひしがれたのだろう。女忍者がそれを抱きかかえ、ルークに向き直る。

 

「って、やっぱり全然駄目じゃないですか! 何があいつは決めるときは決める、ですか!!」

「キめていたじゃないか……それはもう、バッチリと……」

「何、上手いこといった風な顔しているんですか!」

 

 流石に王女に手を出すとは思っていなかったルークは困惑し、訳の判らない事を口走ってしまう。ランスにとっては、王女とHをする事は大まじめな顔をするに値する出来事だったという事だろう。

 

「ランスの事を理解しきるにはまだまだ時間がいるという事だな……」

「そんなもの理解したくないですよ! 早くリア王女を助けてください!!」

「がはははは! どうだ、もう悪いことはしないな?」

「もう悪いことしません! 庶民もいじめません! だからもっとぉぉ!!」

「まあ……あれはあれで改心したって事でいいんじゃないか?」

「よくなぁぁぁぁぁい!!」

 

 泉のほとりにリアの嬌声と女忍者の絶叫がこだました。

 

 

 

数日後

-アイスの町 ランス宅-

 

 あの後、リア王女が納得していたためなんやかんやで依頼は無事解決となった。怒り心頭のマリスと女忍者を尻目にランスはアイスの町へと戻り、キースから報酬を受け取る。ルークとの分け前は宣言通り9:1にし、計28000GOLDを手にしたランスはご満悦の状態であった。ルークとは今朝別れ、貸家である自分の家へと戻ってきたランスはGOLDで敷き詰めた風呂に浸かっていた。

 

「がはははは、大もうけだ! だがGOLD風呂は痛いだけだな、これっきりにしておこう」

「よかったですね、ランス様! それにしても、こんなに分け前をくれるなんて良い人でしたね」

「ふん、ルークか……」

 

 ランスはGOLDを一枚手に取りながらそう呟く。俺様が女を抱く邪魔をしないし、色目も使わない。俺様程じゃないまでもそこそこの腕はあるし、武器を奢ってくれるなど金払いも良い。まあ、いても邪魔にはならん男だ、というのがランスのルークに対する評価であった。

 

「そうだ、一応奴隷として少しは活躍したからな。お前にも服を買ってやろう」

「本当ですか? 私、外出用のお洋服が欲しいです!」

「そうだな、すけすけのネグリジェか超ミニスカートを買ってやろう」

「……はい、ありがとうございます」

 

 どちらを選んでもランスとのH用にしか使われないであろう服に悲しげに頷くシィル。外出用の洋服は当分お預けのようだ。と、今朝届いていた手紙の事を思い出して机から持ってくる。

 

「そういえば、ランス様宛に手紙が届いていましたよ」

「ん? 俺様宛のファンレターかラブレターか?」

「お城からの手紙みたいですね」

「城だと?」

 

 ランスはシィルから受け取った封筒を開き、中の手紙を読む。

 

-親愛なるランス様。我が王家には、初めて交渉した者と結婚しなくてはならないという代々伝わる伝統があります。それに従ってあなたは責任をとって私と結婚して頂きます。ではこれより、すぐにあなたの所に嫁がせて頂きます 王女リア・パラパラ・リーザス-

 

「……シィル、逃げるぞ」

「へ?」

 

 ランスの顔から血の気が引く。まだまだ結婚などする気はない。慌てて逃げ出そうとするランスだったが、時既に遅し。家の扉からドンドンとけたたましいノック音が聞こえてくる。

 

「ダーーーリン!! 開けてーーー!! リアが参りました!!」

 

 その声が聞こえた瞬間、ランスはシィルを連れて窓から一目散に逃げ出していた。

 

「シィル! ついてこい!」

「はい! ランス様、どこへでも!」

 

 

 

-アイスの町近辺 街道-

 

 ルークは一人その道を歩いていた。約束の報酬をランスに渡した後、次のギルド仕事を受けたルークは、休む間もなくアイスの町から旅立っていたのだ。街道を歩きながら、ルークは今回の依頼を思い返す。

 

「(面白い奴だったな。またどこかで巡り会いたいもんだ……)」

 

 ルークがそんな事を考えていると、遠くの方から声が聞こえてくる。ルークがそちらに視線を向けると、街道の向こうに良く知った顔が見える。

 

「待ってーーー! ダーーーリン!!」

「俺様は結婚などせんぞぉぉぉぉ!!」

 

 丁度今考えていた男がパートナーを引き連れ、王女と侍女から全力で逃げているところであった。最後まで退屈させない奴だと、ルークの顔に自然と笑みが零れる。

 

「やれやれ……また会いたいとは思ったが、早すぎるだろう……」

 

 そう思うルークに向かってくる人影がある。木の上から王女たちの護衛をしていた女忍者だ。すぐに女忍者が近寄ってきている事に気がついたルークはそちらに向き直る。

 

「どうした? 王女様から離れていいのか?」

「すぐに戻りますから。ルークさんに、どうしても一言お礼が言いたくて……」

「礼などいらんさ。今後、リーザスがどのような道程を辿るか楽しみにしている。道を違えそうになったら……」

「私が戻します。今はまだ無理だけど……いつか、真の忠臣と呼ばれるように……」

 

 女忍者が真剣な顔でそう口にする。先日までの顔つきとまるで違う、清々しい表情である。

 

「上出来だ」

「ありがとうございます……っと、それでは!」

 

 ふと二人が笑いあうと、ランスたちの声がかなり遠くなってきていた。流石に離れすぎるのはマズイと思った女忍者はルークに一礼し、王女を追いかけようとする。

 

「ああ、ちょっと待ってくれ」

「はい?」

 

 ルークはその彼女を呼び止め、振り返る彼女にもっと早く聞いておくべきだった事を問いかける。

 

「名前、まだ聞いてなかったな」

「かなみ、見当かなみです!」

 

 満開の笑顔を向けてくるかなみ。これは良い気分で次の仕事に移れそうだ。青天の下、ルークはそんなことを考えていた。

 

 




[人物]
見当かなみ
LV 14/40
技能 忍者LV1
 リーザス王女リア直属の忍者。不本意にも抜け忍になってしまっていたところをリアに拾われ、恩義に報いるため諜報から暗殺まで忠実にこなす。ルークの言葉を受け、少しずつだがリアに自分の意見を言うようになる。意外なことに、関係は以前よりも良好だとか。原作では一応1のラスボス。一応とか言うな。

リア・パラパラ・リーザス
LV 3/20
技能 政治LV2
 リーザス国王女。美しい容姿の裏に影を持ち、少女たちを誘拐して自分の快楽のために拷問死させていた。政治家としても非常に優秀な面を持ち、既に実の両親である現国王と女王を隠居させる計画も密かに進めている。生まれてこの方人に怒られたことがない温室育ちであったが、ランスに思いっきり叱られて完全に惚れてしまう。

マリス・アマリリス
LV 25/67
技能 神魔法LV2 剣戦闘LV1
 リーザス国筆頭侍女。事実上リーザスの政治を司っているとさえ言われる影の実力者。戦闘能力も非常に高く、その才能はリーザス最強剣士リックに次ぐが、自ら前線に立つことは殆どなく、常にリアの側を離れないようにしている。リアを溺愛しているが、今回の一件は深く反省している。

ウィリス
 リーザス城下町のレベル屋で働く女性。年下の彼氏とはラブラブ。原作では1の時点では名無しの女性であった。その後、現在までに6作品に登場。大出世である。

ミリー・リンクル
 リーザス城下町の武器屋「PONN」の女性店員。自殺願望あり。

朝狗羅由真 (半オリ)
 リーザス城下町の情報屋「NET」のオペレーター。コンピューターを使う優秀な情報屋であり、原作では名無しの女性。名前はアリスソフト作品の「大番長」より。情報戦といえば彼女。

ラベンダー
 妃円屋敷に出没する幽霊。かつてリア王女に度重なる拷問を受け、自ら命を絶ったが死にきれずに幽霊となる。ランスの腕の中で成仏する。

ラベンダーの前任のメイド
 ラベンダーの前に拷問を受けて死んだ少女。彼女もこれより数年後、リーザス城に悪霊として出没するようになる。自分の拷問の姿を見せて兵士を怖がらせようとするが、Hな映像であるため男性兵士を喜ばせているだけとかなんとか。出番はランスクエスト本編で。地下で拷問を受けていたと書いてあったから、おそらく妃円屋敷の被害者。

セラ
 パリス学園に通う生徒。その正体はマリス・アマリリス23才。色々な意味で恐ろしい変装である。学園の生徒はきっと見て見ぬふりをしてくれていたのだろう。

ヒカリ・ミ・ブラン
LV 2/35
技能 神魔法LV0
 ブラン家の次女。リアに誘拐されていたが、実はそのときに色々と目覚めてしまい、リアのことが大好きになってしまう。そのため、今回の事件を訴える気もないとか。救出してくれたランスを王子様のように思っており、ルークはランスの言葉を信じて従者だと勘違い。今は親元に戻って平穏に暮らしている。ランス1のサブタイトル「光を求めて」が、誘拐された彼女の名前と掛かっているのは有名な話である。

ウェンズディング・リーザス
 リーザス国国王にしてリアの父。実権は娘に握られている。婿養子であり、少し頭がおかしくなり始めている。

カルピス・パラパラ・リーザス
 リーザス国女王にしてリアの母。頭の良すぎた娘をあまり良く思っておらず、国王同様知らず知らずの内に遠ざけてしまっていた。

ミンミン
 パリス学園の学園長。裏でリアと繋がっており、美少女を定期的に提供していた。事件解決後、全て自分一人で犯行を行ったという遺書と共に遺体で発見される。見事なまでのトカゲの尻尾切り。


[モンスター]
さけび男
 アンデッド系モンスター。赤い靄が集まって出来たような顔だけの存在であり、物理攻撃が効きづらく、EXPを奪うというような嫌らしい攻撃も仕掛けてくる。


[技能]
忍者
 忍者としての才能。隠密としての素質や、強力な忍術の使用に関わる。

政治
 政治家としての才能。良王とされる者やその側近はこの技能を持つ者が多いとされている。


[技]
シールド
 リーダーから思考を守る初級魔法。ある程度の魔法使いなら用心のために普段から掛けっぱなしにしている。

ヒーリング
 傷を癒す初級神魔法。暖かい光で包み込み、傷だけでなく体力も回復させる。

マジックミサイル
 炎の塊をぶつける初級魔法。炎の矢よりも威力は低いが、塊であるため敵に命中しやすい。原作では炎の矢の旧名であり同一魔法。後にダイジェスト版が出た際、名前が炎の矢に統一され、その存在が抹消されてしまう。本作では別魔法扱い。


[装備品]
えくすかりば
 ランスが購入。伝説の聖なる剣の量産品。200GOLD。

ごっずアーマ
 ランスが購入。特殊な金属で作られた高級な鎧。200GOLD。

めでうさの盾
 ランスが購入。鏡で出来た優秀な盾。180GOLD。

ぷるぷるの剣
 ランスが購入しルークに譲渡。本人は不本意。ぷるぷる震えて敵に打撃ダメージを与える剣。20GOLD。これでピッタリ600GOLD。因みに原作でも本当にこの値段である。

妃円の剣
 妃円屋敷に隠されていた業物の剣。ルークの愛剣となる。盾と鎧も存在するが、二人は発見できなかった。


[アイテム]
魅力の指輪
 リアの私物。魅力を上げる指輪と言われているが、どれ程の効果があるのかは不明。

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