ランスIF 二人の英雄   作:散々

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第120話 二人の仮面、遂に出会う!

 

-ハピネス製薬 地下迷宮 地下二階 最深部-

 

「新しい部屋に出たのれす。地図描き描き……」

「むっ、あてな。ちょっとその地図を見せろ」

 

 フェリスのおかげで迷宮の魔法扉を通過できたランスたち。そのまま薄暗い通路を進むと、これまでで一番広い部屋に出た。ランスとフェリスが辺りを見回している横で、あてなが地図を描く。これは、迷宮に入ってからランスに命じられてずっと行っていた行為だ。自動マッピング機能を内蔵するあてなは歩いた距離などから部屋の位置を正確に割り出しており、その地図の信頼性はかなりのものである。地図を描き終えたあてなは紙を仕舞おうとするが、それをランスが止める。

 

「……なるほど。地図が正確なら、あの通路から召喚ちゃんの後ろの通路に出られそうだな」

「ぶー、地図は正確なのれすよ」

「ふむ、ならば突撃だ。前ばかり気にしている召喚ちゃんは、後ろからの奇襲には無防備なはずだ!」

「ランスさん!」

「ん?」

 

 ランスが部屋の奥にある通路を指差しながらそう断言する。あてなの地図を見る限り、あの通路の先が召喚ちゃんの後方にあった通路と繋がっているからだ。上機嫌に笑いながら通路に走って行こうとするランスだったが、突如部屋の中からそれを引き留める声がする。声のした方向を振り返ると、岩陰から誰かが出てきた。

 

「ランスさん、無事だったんですね?」

「アーニィか……」

「ランス、気をつけろ。奴は怪しい……」

 

 岩陰から出てきたのはアーニィ。にこやかな笑顔でこちらに近づいてくるが、フェリスがスッと真剣な表情になりランスに忠告する。

 

「ふん、言われんでも判っている。というか、なんでお前がそれを知っている?」

「えっ!? あ、悪魔の勘だ!」

「デビル凄いのれす!」

 

 ランスの疑問は当然の事だ。フェリスは先程呼び出したばかりであり、アーニィとの面識はおろか今回の依頼内容すら把握していないはずなのだ。それを指摘され、慌てて取り繕うフェリス。あてなが感心したように声を漏らし、ランスも特に気にした様子もなくアーニィに向き直る。なんとか誤魔化せたようで、ホッと息をつくフェリス。

 

「ランスさん、そちらの悪魔は一体? それに、他の皆さんは……」

「ふん、もう演技はいいぞ。お前が敵のスパイだという事はとっくに判っているんだからな」

「…………」

 

 ランスの言葉を受け、ピタリとその歩みを止めるアーニィ。

 

「天才の俺様はずっと前から気が付いていたが、名前は忘れたが冒険者を毒殺したのもお前だな?」

「……なるほど、どうやら見た目通りのバカって訳じゃないみたいね」

 

 アーニィの声色が変わる。それまでのランスにすり寄るようなぶりっこ風の声ではなく、どこか影を帯びた風の真剣な物言いだ。

 

「さっき俺様たちを生き埋めにしようとしたのもお前だな?」

「そうよ。召喚ちゃんを倒す武器なんてないのに、簡単に引っかかってバカみたいだったわ」

「あてなも生き埋めになりそうだったのれす! めっ!」

「それから、あのワイヤーの罠もお前の仕業だな?」

「……ええ。まさか、そのあてなって娘がロボットだとは思わなかったけどね」

「ロボットじゃないのれすよ!」

 

 ランスの問いにペラペラと答え始めるアーニィ。それはどこか、不穏な展開だ。悪役がこのように全てを打ち明ける展開の先に待つのは、概ね二通りだ。一つはそのまま悪役が自殺する展開。そして、もう一つは冥土の土産に聞かせてやろうという展開だ。

 

「(ま、後者だろうな……)」

 

 フェリスが心の中でそう呟き、静かに鎌を握りしめた。

 

「どうしてこんな事をする。ハピネス製薬に恨みでもあるのか?」

「……貴方には関係無いわ。とにかく、この事件から手を引きなさい。今なら命だけは助けてあげるわ」

「信用できないね。冒険者のフロックはこの事件から手を引くところだったんだろう?」

「……なんでお前がそれを知っている?」

「えっ!? あ、悪魔の勘だ!」

「デビル格好いいのれす!!」

 

 ランスとアーニィのやりとりにフェリスが割って入る。ルークたちから聞いた話によると、冒険者のフロックはこの事件から手を引いた後に毒殺されている。だが、それは本来フェリスが知り得ない情報。またもランスに突っ込みを入れられるが、あてなの純粋さもあり難を乗りきるフェリス。

 

「……知らなかったのよ。彼が手を引いていたなんて」

 

 少しだけ唇を噛みしめながらそう漏らすアーニィ。その瞳からは、若干の後悔が窺える。どうやら本当に知らずに殺してしまったようだ。

 

「ランスさん、最後の忠告よ。この事件から手を引きなさい」

「ふん、論外だな。裏切り者アーニィ、俺様がたっぷりとお仕置きしてやるぜ」

「……どうやら、死んで貰うしかないようね」

 

 ランスの返事を聞き、アーニィが素早くナイフを抜いて腰を落とす。と同時に、ランスたちの周りにあった岩陰から三人の男が一斉に姿を現す。屈強な肉体と武器のトンファー、そのうえランスたちに向かって殺気を放っている。アーニィがその男たちに向かって指示を飛ばす。

 

「殺しなさい!」

「「「はっ!!」」」

「四人か。アーニィは俺がやるから、男共は適当に殺しておけ」

「任しときな」

「よーし、頑張るれす!」

 

 ランスが剣を抜きながらアーニィに向かって走っていく。岩陰から出てきた男たちは慌ててランスを追おうとするが、フェリスとあてながその間に立ちふさがる。

 

「ふん、使い魔とロボットが。一瞬で片を付けてや……」

 

 先頭に立っていた男がトンファーを構え、自信満々に口を開いた瞬間、その首が刎ね飛ぶ。それはあまりにも一瞬の出来事。グラリと前のめりに倒れ込む首のない死体。その光景に隣にいた二人が目を見開き、フェリスを見る。強烈な殺気を放ち、鎌を振り抜いた体勢のままこちらを睨んでいるフェリス。その気迫に気圧され、二人の体から自然と汗が吹き出る。

 

「あまり悪魔を舐めるなよ」

「くっ……うぉぉぉぉ!!」

 

 恐怖を振り払うかのように無理矢理絶叫し、フェリスとあてなに向かって飛び掛かる二人の男。だが、低級の魔人と同等の力を持つフェリス相手には、あまりにも無謀な勝負であった。

 

「ふっふっふ。裏切り者のアーニィちゃんへはどんなお仕置きが似合うかなぁ? ぐふふ……」

「悪党が……」

 

 フェリスたちから少し離れた位置でランスとアーニィが対峙する。ランスがイヤらしい顔をしながら手をわきわきと動かすのを見て、アーニィが汚らわしいとばかりに吐き捨てる。

 

「ハピネス製薬に協力する悪しき冒険者は皆殺しよ! 死ね!!」

「ふん……むっ!?」

 

 間合いを計っていたアーニィが動く。一気にランスとの間合いを詰め、右手に持っていたナイフで素早くランスの首筋を斬りつけてきた。それを悠々と剣で受けるランスだったが、アーニィは即座にナイフを引き、今度は腰を狙う。その流れるような動作にランスが思わず声を漏らす。

 

「はぁっ! はぁっ!」

「ふん、ふん」

 

 首、肩、腰、足と、相手に阻まれるたびに即座に狙いを変える、流れるような連続攻撃。その攻撃を遠目に見ていたフェリスも驚く。これまでの罠に頼った攻撃や、女のナイフ使いという事でどこか漂うシャイラ臭。その事から、フェリスもアーニィの力を見誤っていた。罠に頼らずとも、彼女の実力は本物だ。だが、ランスはその全てを剣で捌いている。部屋に響き渡る金属音を聞きながら、アーニィは額に汗を掻く。ランスは明らかに自分よりも格上の相手だという事に気が付いてしまったのだ。

 

「だけど……負ける訳にはいかない! ふっ、てやぁぁぁぁ!!」

「がはははは。遅いな!」

 

 焦りから少しだけ大振りになったのをランスは見逃さず、強烈な一撃をアーニィのナイフ目がけてお見舞いする。アーニィの軽い攻撃とは違い、その一撃はアーニィの腕を痺れさせ、ナイフを叩き折った。

 

「ば、馬鹿な……」

「手加減アタック!」

 

 折れたナイフを信じられないというような顔で見るアーニィ。ランスはそのアーニィの腹部に剣の持ち手で軽く一撃をお見舞いする。手加減された一撃だが、アーニィはふらふらと後ずさりをしながらその場に蹲る。そのアーニィに向かって剣の切っ先を向けるランス。

 

「まあまあの実力だが、俺様の敵ではないな。がはははは!」

「くっ……」

 

 目の前で笑うランスに悔しそうな視線を向けるアーニィだが、剣を向けられているため動く事は出来ない。アーニィは確かに実力者であったが、一流の冒険者であるランスの相手にはならなかった。

 

「ご主人様。こっちも終わったのれす」

「ふん、遅いぞ」

 

 あてなとフェリスがこちらに駆けてくる。見れば三人の男たちは既に息が無く、地に伏していた。仲間の死を目の当たりにし、アーニィは拳を握りしめる。だが、抵抗など出来るはずもない。フェリスがランスに問いかけているのを耳にしながら、必死に現状打破の手段を考えていた。

 

「で、どうするつもり?」

「もちろん、ヤる! ぐふふ、無駄な抵抗は……」

「……ごめんなさい」

「ん?」

「私の負けです。本当にすみませんでした。謝って許して貰えるとは思えないけど、何でも言う事を聞かせていただきます」

「ほう。素直じゃないか。良い娘だ」

「おい、あまり簡単に信用するな」

「がはははは! 心配しすぎだ。俺様のあまりの強さに惚れてしまったんだろう」

 

 つい先程までランスを睨んでいたはずのアーニィが、突如従順になる。ウルウルとした瞳でランスを見上げ、好きにしてくれと自分から言ってきたのだ。あまりの変貌ぶりにフェリスは何か裏があるのではと疑うが、ランスはまるで気にしていない。

 

「では早速……」

「あん。ちょ、ちょっと待って……ここじゃ地面がごつごつしていて痛いわ。向こうに干し草が置いてある場所があるから、そこで……」

「俺様は別に気にしないぞ」

「お願します。折角素敵なランスさんに抱いて貰うのに、痛いのなんて嫌です。思い出は大切にしたいの……」

「ふむ……がはは、なら移動してやろう」

 

 ランスがアーニィの胸を揉みしだくが、アーニィは特に大きな抵抗を見せない。それに気をよくしたランスはそのままアーニィを押し倒すが、アーニィから奥へ行こうと提案されて眉をひそめる。今すぐにでも抱きたいランスは場所を変えるのに気乗りしなかったが、顔を赤らめながらウルウルとした瞳でこちらを見つめてくるアーニィをつい可愛いと思ってしまい、仕方ないと口にして移動を開始する。

 

「こっちです。あの岩陰に、干し草の置いてある場所があるんです」

 

 アーニィが部屋の奥へ向かってゆっくりと歩く。ランスはその横にピッタリとくっついて尻をなで回し、その少し後ろをあてなとフェリスが歩く。フェリスは警戒を解いていない。何かあればすぐに割って入るつもりだ。すると、アーニィが静かに口を開いた。

 

「ランスさん、少し質問をさせて欲しいの」

「質問? まあいいぞ。答えてやる」

「ええ。ランスさん、モンスターの事をどう思います?」

「モンスターの事?」

「はい。モンスターだって生き物だし、何も敵対視する必要は無いと私は思うんです」

「っ……!?」

 

 その質問に、ランスではなくフェリスが少しだけ驚き、真剣に耳を傾ける。

 

「俺様に歯向かわなかったら殺さんさ。だが、奴等は無謀にも向かってくるからな。だから殺す。経験値と金も手に入ってラッキーだ、がはは」

「それは、人間が彼らのテリトリーに侵入したからでしょ?」

「テリーとドリーってなんなのれすか?」

「テリトリーな。洞窟とかモンスターたちの生活する、まあ縄張りみたいなもんだ」

 

 あてなの質問でアーニィの話の腰を折るのが嫌だったため、フェリスが代わりに答える。アーニィはそのフェリスに軽くお辞儀をし、そのまま話を続ける。

 

「ランスさんだって、自分の家に誰か来たら追い返そうとするでしょ?」

「ふむ、安産型だな」

「……真面目に聞いて下さい」

 

 アーニィが真剣な表情でランスを見つめるが、ランスはアーニィの尻を揉む事に夢中になっている。アーニィが軽く苦言を呈すが、ランスは鼻を鳴らしてふんぞり返る。

 

「モンスターの事などどうでもいい。この世は人間様、特に俺様を中心に回っているんだからな」

「そんなの、人間の驕りよ。生き物は全て平等なの!」

「がはははは! アーニィちゃんの歳で、まだそんな乳臭いガキみたいな事を思っているのか? この世は弱肉強食だ。強い奴が生き残り、強い奴がいい女とヤれる。これが優秀な子孫を残すための生物の知恵だ」

「…………」

「醜男や弱い奴、まぁ弱いモンスターもそうだが、そんな奴等は全て滅びるのが自然の掟なのだ。おっと、きゃんきゃんやマジスコなんかの可愛い女の子モンスターは生かしてやってもいいがな」

「ランスさん……貴方は間違っている……」

 

 悲しさと悔しさを含んだ瞳でランスを見つめるアーニィ。だが、ランスにはその言葉は届かない。

 

「(こいつの考えは、まるで……)」

 

 フェリスがアーニィの背中にある人物を重ね合わせる。魔人との共存を目指し、悪魔である自分を仲間だと言ってくれた、もう一人の主人。思うところがあったフェリスは、これまでのアーニィの話を頭の中で整理し始める。

 

「ランスさん、着きました。あそこです」

「ん、どこだ?」

「ほら、あそこですよ、あそこ。干し草があるでしょう?」

「暗くてよく判らんな」

「もっと近づいてみてください」

 

 アーニィが歩みを止め、部屋の奥の暗がりを指差す。ランスには干し草が見えなかったが、アーニィにそう言われ、指差されている場所へと歩みを進める。

 

「うーん、見当たらんな。あてなも探せ」

「はいなのれす」

 

 ランスに言われてあてなもそちらに駆けていく。二人で辺りを見回すが、やはり干し草など見当たらない。

 

「おい。何もないぞ」

「ええ。何もないわ」

「ん?」

「バカね、何度も罠に引っかかるんだから!」

 

 アーニィがそう言いながら、岩に隠されていたボタンを押す。すると、ランスとあてなの真下の地面が突如陥没する。それは、落とし穴の罠。

 

「ぐおっ!?」

「のーーーー」

「しまった!?」

 

 間一髪のタイミングでランスは床を掴み、落とし穴に落ちるのを防いだが、ランスの体を支えているのは自身の両腕のみ。しかも、その両足にはあてながぶら下がっている。床を掴むのに失敗したあてなは、ランスの足を咄嗟に掴んだのだ。地面の崩れる音にフェリスが正気に戻る。それは、完全なる油断。アーニィの言葉を深く考えてしまっていたフェリスは警戒を怠ってしまっていたのだ。慌てて穴に駆け寄ろうとするフェリスだったが、アーニィが先に駆け寄り、床を掴んでいるランスの手に足を乗せる。

 

「動くな、悪魔! 少しでも近づけば、この足に力を入れてランスを落とす」

「くっ……」

 

 その言葉を受けてフェリスが止まる。止まらざるを得ない。アーニィがそれを見てニヤリと笑い、今度はランスを見下ろす。

 

「ふふふ、本当にバカね」

「貴様ぁ……こら、あてな、しがみつくな!」

「いやれす、落ちたら死ぬれす……」

「このままじゃ二人とも落ちる。とにかく、お前は落ちろ」

「いやいやれす!」

「何て醜い……」

 

 あてなを落として自分だけ助かろうとするランスを見て、アーニィが嫌悪感を露わにする。

 

「あてな、下はどうなっているか判るか? 俺様では暗くて見えん」

「あてな、視力が20.0だから何でも見えるれすよ。えっと、するどいクイが一杯なのれす」

「おわっ……とりあえず、お前は落ちろ。お前は死なん、大丈夫だ」

「いやれす、死ぬときは一緒れす」

「フェリス! こんなときの為のお前だろうが! さっさと飛んで助けろ!!」

「出来たらやっているよ!」

 

 ランスが見えない位置にいるフェリスに向かって叫ぶが、フェリスはランスたちを人質に取られているような状況であるため動けずにいる。

 

「そのまま下がりなさい、悪魔。そう、もっと、もっとよ……」

「周到だな……お前、何者だ?」

「ふっ……私はエンジェル組の幹部。くまさんチーム隊長のアーニィ!」

「エンジェル組だと?」

 

 アーニィがフェリスを少しずつ後ろに下がらせる。その距離、既に50メートル以上。これでは容易に飛び掛かれない。フェリスが悔しそうにしながらアーニィの正体を探ると、意外にもアーニィは自分の正体を簡単にばらした。

 

「正義の組織よ。そして、悪のハピネス製薬に荷担した貴方たちは死ぬのよ」

「貴様……」

「動くな、悪魔! それに、どうせアンタも汚い手段で無理矢理使い魔にさせられたんでしょう? なら、こいつが死ねば使い魔から解放されて、アンタにとっても万々歳なんじゃないの?」

「うっ……」

「おい、フェリス! 裏切ったらタダではおかんぞ!!」

 

 アーニィの提案にほんの少しだけ心が揺れてしまうフェリス。ランスはそれを察したのか、落とし穴に落ちそうな状態でこちらに向かって叫んでくる。

 

「生き物皆平等。悪魔は人間の魂を取るけど、それは死後の事だし、無理矢理奪っていく事も少ないわ。となれば、私にとっては平等に扱うべき存在よ。悪魔だからって酷い事をするのは間違っているわ」

「お前……本気か?」

「ええ、私は本気よ」

 

 アーニィの表情は崩れず、しっかりとフェリスを見据えている。今の言葉に嘘偽りはない。アーニィは悪魔と人間が平等な存在だと本気で言っているのだ。それはまるで、あの男と同じ考え。

 

「さあ、そろそろ死んで貰いましょうか!」

「なっ!? この状況で人質を殺すだと!?」

 

 アーニィが隠し持っていたナイフを手に取り、ランスの手に向かって振り下ろそうとする。人質に取っていたはずのランスを今すぐ殺すとはフェリスも思っていなかったため、目を見開いて驚く。即座に助けに入ろうとするが、アーニィによって距離を取らされていたため間に合わない。アーニィの手に持つナイフがランスの手を貫こうとした瞬間、アーニィの右後方と左後方が光る。

 

「ファイヤーレーザー!!」

「真空斬!!」

「えっ……きゃぁぁぁ!!」

 

 後方から襲来した閃光がアーニィを直撃し、アーニィは岩へと吹き飛ばされる。

 

「ランス様! ……じゃなくて、ランス!!」

「フェリス、何を呆けている。今すぐランスとあてなを助けろ」

「へ? あ、ああ……」

「くっ……新手ですって……一体何者だ!?」

「俺の名はブラック仮面。悪いが、その男を殺させはしない」

「私はピンク仮面。縁あってランス様……じゃなかった、ランスを援護します」

 

 右の岩の上には全体的にピンクな印象の仮面女。左の岩の上にも全体的にブラックな印象の仮面男。合わせて二人の仮面が、岩の上からアーニィを見下ろしていた。その姿を見た二人の反応は対照的。アーニィは突然の新手に驚き、フェリスは完全にドン引いた顔をしている。それを仮面の男に咎められ、フェリスは慌てて空を飛んでランスとあてなを救出する。落とし穴から這い上がったランスは疲れたように声を漏らした。

 

「ぜぇ……ぜぇ……あてな、俺様が放せといったら素直に放さんか!」

「ごめんなさいなのれす。あっ、ご主人様。岩の上に誰か立っているのれす!」

「むっ……」

 

 ポカリとあてなに拳骨するランスだったが、あてなが指差す岩の上につられるように視線を向ける。そこに立っているのは、ブラック仮面とピンク仮面の二人。

 

「あれはブラック仮面とピンク仮面! ちっ、またあいつらに助けられたのか……」

「ランス……お前、あの二人を見て何も思わないのか?」

「ん? ピンク仮面の方は良い乳をしている。だが、あの二人は一体何者なんだ……」

「……そうか」

 

 悲しげな瞳になるフェリス。彼女の中の常識はそろそろ限界であった。すると、隣にいたあてなが口を開く。

 

「ご主人様、あれシィルちゃんじゃないのれすか?」

「っ!?」

 

 フェリスの顔がパッと明るくなる。そう、それだよとでも言っているような満面の笑みだ。

 

「馬鹿言うな。あいつは家で内職をしているんだぞ。こんなところにいるはずがない」

「うーん……うーん……そうなのれすか? それじゃあ、ブラック仮面がルークに似ているのも勘違いなのれすか?」

「当然だ。あいつがあんな馬鹿な格好をするはずがない。ん、どうしたフェリス?」

 

 あてなの質問に答えていたランス。だが、突如床を転げ回り始めたフェリスに不思議そうな視線を向ける。

 

「(違うんだよ! あいつはあんな馬鹿な格好をノリノリでするんだよ!!)」

「フェリスが床を凄い勢いで転げ回っているのれす」

「うーむ……頭でも打ったのか?」

 

 フェリスの胃の痛みが加速している中、岩の上に立つ二人の仮面がお互いを見やる。

 

「(ピンク仮面……一体何者だ? ランス様とか言っていたが、シィルちゃんがこんな格好をするとは思えんし……)」

「(ブラック仮面……ランス様を助けてくれたって事は、敵ではなさそうです。でも、一体どうして……フェリスさんを知っているって事は、ルークさんのお友達か誰かでしょうか?)」

 

 互いの正体を図りかねる二人の仮面。その二人を見上げるランスとあてな。床を転げ回るフェリス。完全に隙だらけの状況であったため、アーニィが静かにナイフを抜こうとした瞬間、それまでピンク仮面を見ていたブラック仮面がジロリとこちらを睨んでくる。その視線に、思わずナイフを落としてしまう。隙だらけに見えて、その実周りがよく見えている。かなりの手練れだ。

 

「無駄な抵抗はするな」

「そのようね……まさか、こんな実力者がいただなんて……でも、まだこちらにも手はあるわ!」

 

 ブラック仮面の忠告にそう叫んで返したアーニィは、自身が吹き飛ばされた岩を叩く。そこには、先程の落とし穴とボタンと同様のものが隠されていた。まだ落とし穴の罠があるのかと緊張を走らせる一同だったが、アーニィがそのボタンを押すと穴は彼女の真下に開いた。

 

「なにっ!?」

「ここは撤退させて貰うわ! 今度はどんな手を使っても確実に殺すわ……死にたくなかったら、悪のハピネス製薬からは手を引きなさい!!」

「下はクイだらけなのれすよ?」

 

 アーニィの体が穴の中へ落ちていく。慌てて駆け寄り、穴の下を覗き込むあてな。次いでフェリスが即座に羽を広げて後を追う。重力に引きずられて下へと落ちていったアーニィだったが、服の中からかぎ爪のついたロープを出し、それを穴の壁に引っかける。速度がゆっくりと落ちていく中、アーニィはある一カ所に向かって跳んだ。床に無数にクイが立ち並ぶ中、そこだけは何故かクイが設置されていない。いわば、安全地帯である。

 

「ちっ……初めから脱出用も兼ねていたのかよ!」

「じゃあね、悪魔さん。それと、出来れば召喚ちゃんは見逃してあげて……お願い……」

 

 人質であるランスを殺した後どうやってフェリスから逃げるつもりだったのか疑問に思っていたが、これがその答えである。ランスたちを落とした後、自分も穴に落ちるつもりだったのだろう。こちらに向かって飛んでくるフェリスに手を振り、アーニィは安全地帯のすぐ側にあった壁を触る。すると、壁がゆっくりと開いていき、通路が現れる。その向こうにアーニィが消えたと思うと、壁はまたゆっくりと閉じてしまい、通路は完全に隠れてしまった。最後に少しだけ真剣な眼差しで残したお願いは、モンスターを愛する彼女の本心から出たものだろう。

 

「逃げられたか……」

 

 フェリスが悔しそうに吐き捨てる。フェリスがいくら壁を触っても、通路が現れる事は二度と無かった。

 

 

 

-ハピネス製薬 地下迷宮 地下三階 隠し通路-

 

「くっ……危ない所だった」

 

 アーニィが隠し通路を歩きながら自身の右手を見る。まだランスから受けた一撃の痺れが残っており、先程ロープを伝う際には危うく手を放しそうになってしまった程だ。それに、腹部にもジワジワとした痛みが走り続ける。先程のランスの手加減攻撃は、今もその痛みをアーニィに残していたのだ。

 

「無様ね、アーニィ!」

「……!?」

 

 そのとき、通路に声が響き渡る。ランスたちが追ってきたのかと慌てるアーニィだったが、そこに立っていたのは同僚の女性。ピンク色の髪に特徴的なうさぎの髪留めをした美女。それは、司令室でランスがモニター越しに会話した相手であった。

 

「パーティ……」

「くまさんチームも地に落ちたものね。アーチボルト様からの命令よ。後は私たちうさぎさんチームが引き継ぐから、くまさんチームはアジトに撤退する事」

「なんですって!?」

 

 彼女はうさぎさんチーム隊長のパーティ。アーニィと同等の地位を与えられた女性であり、二人は常日頃からライバル関係であった。だが、基本的にはアーニィの方が若干高い評価を受けており、今回のハピネス製薬襲撃において彼女が率いるくまさんチームが主体で動いていたのはそういう理由だ。だが、状況は一変。パーティが勝ち誇ったように口にした言葉は、アーニィに絶望感を与えるのに十分なものだった。

 

「正体のばれたスパイなんて、これ以上いても醜態を晒すだけでしょう? いいから帰って休んでなさい。後はこの私が全て片付けてあげるから」

「くっ……」

「ふふふ。アーチボルト様に褒めて貰うのは私よ。アンタじゃないわ」

 

 唇を噛みしめてこちらを睨むアーニィに、パーティは更に追い打ちをかける。だが、彼女たちの主人であるアーチボルトの命令では逆らうわけにはいかない。渋々それに従うアーニィ。

 

「判ったわ、アジトに戻る。でも、あまりあいつらを舐めない方が良いわ。あんたは嫌いだけど、流石に殺されるのは寝覚めが悪いから忠告しておいてあげる」

 

 最後にそれだけ言い残し、パーティの横を通って通路を歩いて行くアーニィ。その後ろ姿を見ながら、パーティは静かに口を開いた。

 

「ふん、負け惜しみを……」

 

 アーニィの忠告は、パーティには届いていない。それどころか、ただの負け惜しみであるとアーニィを見下している。

 

「ふっふっふ、三流冒険者たちと悪しきハピネス製薬め。私は無能なアーニィとは一味違うわよ!」

 

 

 

-ハピネス製薬 地下迷宮 地下二階 召喚ちゃんの間-

 

「がはははは! 悪い女の子モンスターにはお仕置きだ!」

「うぇぇぇん。アーニィちゃんが前からしか敵は来ないって言っていたのにぃ……」

 

 ランスが召喚ちゃんに襲いかかる。アーニィが逃げた後、いつの間にかブラック仮面とピンク仮面の二人もいなくなっていたのだ。あの二人の行動には色々と謎が残るが、とりあえずさしあたってやるべき事は召喚ちゃんの退治だ。ランスは通路を進み、後ろから召喚ちゃんに襲いかかった。まさか後ろから冒険者がやってくると思っていなかった召喚ちゃんは、モンスターを召喚する間もなくあっという間に捕まってしまったのだ。

 

「えーん、放してよぉ」

「放したらどうする?」

「えっと……モンスターを召喚する」

「なら駄目だ。とにかく、人間様に二度と手出しが出来ないよう、たっぷりとお仕置きしてやる」

「いやー、須藤くん助けてぇぇぇ!!」

 

 想いゴリラであるパワーゴリラの須藤くんに助けを求める召喚ちゃんだったが、当然それに応える者はいない。

 

「ランス、その……ちょっとだけ抑えめにしてやれないか?」

「えぇい、さっきから五月蠅い。戻れ、フェリス!」

「あっ……」

 

 何故か先程から召喚ちゃんへのお仕置きを軽くして欲しいと言ってくるフェリスにいい加減腹が立ち、ランスはフェリスを悪魔界へと戻してしまう。少しだけ悲しそうな表情を見せながら、フェリスは宙に出来た穴に吸い込まれて悪魔界へと戻っていった。

 

「ふん、なんだあいつ? 変にアーニィの肩を持ちやがって……」

「ブラック仮面とピンク仮面にも謎が残るのれす」

「あいつらか。似たような仮面を付けているという事は、仲間か何かなのか?」

「恋人かもしれないのれすよ……痛っ!? なんで殴るのれすか?」

「……なんとなく腹が立った」

 

 召喚ちゃんに悪戯を続けながら、ランスとあてなは突如現れて突如消えた二人の仮面の事を考える。だが、あてながあの二人は恋人かも知れないと口にした瞬間にランスの拳骨が飛んだ。ランスの本能が、あの二人が恋人であることを否定したのだ。その理由は、ランス自身にも判らない。

 

 

 

-ハピネス製薬 地下迷宮 地下二階 三叉路-

 

「……それで、私に話とは何ですか?」

「ピンク仮面、単刀直入に聞こう。君は何者だ?」

 

 ランスたちから少し離れた場所で、ブラック仮面とピンク仮面が正面から対峙する。メガネの下に少しだけ見える目は、二人とも真剣そのもの。

 

「私はランス様……じゃなかった、ランスを陰から見守る者です」

「なるほど……という事は、俺と似たような感じか」

「やはりブラック仮面さんは、ランスの味方なのですね?」

「一応な。それと、さっきのファイヤーレーザーを見る限り、中々の腕前のようだ」

「ブラック仮面さんの斬撃も凄かったです。知り合いの必殺技によく似ていました」

「ほう……その知り合いに会ってみたいな」

 

 ブラック仮面が静かに笑い、それに答えるようにピンク仮面も微笑み返す。

 

「それでは」

「ああ、この案件がこれで片付けばいいが、まだまだ裏がありそうだ。となれば、また会う事もあるかもしれんな」

「その時は、ぜひともまた肩を並べて戦いたいものですね」

「そうだな」

 

 互いに別れを告げ、別方向へと駆けていくブラック仮面とピンク仮面。いずれ再会した際には、また肩を並べて戦う事を誓い合う。通路を駆けていくブラック仮面とピンク仮面は、互いの事を考えていた。

 

「ブラック仮面さん……どなたかは判りませんが、信じても大丈夫そうな方ですね。ランス様を陰で支える方がいたなんて……お知り合いになれて良かったです」

「ピンク仮面……何者かは判らないが、かなりの実力者だ。後々の事を考えれば、ここで彼女と知り合えたのはラッキーだったな」

 

 互いに既に知り合いだという事に気が付かないまま、ブラック仮面とピンク仮面は洞窟を駆けていった。ピンク仮面はランスの監視に戻り、ブラック仮面はランスの事を一時的にピンク仮面に任せてハピネス製薬へ戻る事にする。その途中、地下一階の通路で何故か大穴からよじ登ってくるバードとキサラを発見した。

 

「キサラさん、一体どうしたんだ?」

「いや、来ないで! ずっと……ずっと私を騙していたなんて!! もう顔も見たくない!!」

「キサラ!!」

 

 何故か揉めているバードとキサラ。必死に引き留めようとするバードだったが、キサラはその手を振り払って泣きながらどこかへ行ってしまう。それを追いかけようとするバードだったが、キサラの足は思ったよりも速く、すぐに見失ってしまった。

 

「キサラ……」

「脳天チョップ!!」

「ぐあっ!?」

 

 呆然としているバードの脳天に向かって、ブラック仮面が強烈な脳天チョップをお見舞いする。激痛にバードが蹲り、涙目で後ろを振り返ったときには、既にブラック仮面は遠くへと駆けて行ってしまっていた。微かに見えるのは、黒ずくめの後ろ姿のみ。

 

「や、闇討ち……?」

 

 何故キサラに嫌われ、何故脳天チョップをされたのか判っていないバードは、ただただ呆然とするしかなかった。

 

 

 

-ハピネス製薬 地下迷宮 地下二階 召喚ちゃんの間-

 

「ふぅ……キサラともヤったばかりだし、これくらいにしておくか」

「三回ヤれば十分なのれすよ。うぅ……あてなも混ぜて欲しかったのれす」

「うぅ……もう須藤くんのお嫁さんになれない……」

 

 ふらふらとどこかへ去っていく召喚ちゃんを見送るランス。これだけたっぷりとお仕置きしてやれば、もう彼女はこの一件から手を引くだろう。すると、部屋の入り口から一人の男の声が聞こえてくる。

 

「おや、ランス殿! それに今微かに見えた後ろ姿は……まさか召喚ちゃんでは?」

「その通りだ。事件は既に俺様が解決したぞ。貴様は無駄骨決定だ、がはは!」

 

 やってきたのは言裏。部屋の状況を一目見て全てを察した言裏は驚いたような表情をしていたが、ランスの返事を聞いてすぐに豪快に笑い出した。

 

「はっはっは、そうですか……流石はランス殿。拙僧、ますます敬服いたしますぞ」

「ん、やけに素直だな」

「この世は弱肉強食。拙僧よりランス殿の方が強かったのですから、この結果は当然でござるよ。では、この仕事はもう終わりですから、拙僧も帰るとしますかな。っと、そうだ。ランス殿、キサラ殿に何かあったのでござるか?」

 

 特に悔しがりもしていない言裏。中々に豪快な性格である。悔しがるとばかり思っていたランスが反応に困るが、言裏からキサラの事を聞かれて少しだけ言い淀む。

 

「知らんが、どうかしたのか?」

「ここに来る途中でキサラ殿とすれ違ったのですが、何やら悲しげな顔をしておりました。目には涙を浮かべておりましたし……拙僧の勘では、あのバードという優男に何かされたのではと……」

「……バードが変態行為に及んだんだろうな。許せん奴だ」

「なんと!? やはりそうでござったか……うぅむ、同じ男として許せん行為でござるな」

「……で、キサラちゃんはどこにいた?」

「拙僧が見たのは、水たまりが広がっている場所で……っと、ランス殿!?」

 

 自分の淫の念力の事は棚に上げて怒り出す言裏。だが、ランスは少しだけ抱えていた罪悪感からか、言裏の言葉を聞いてすぐに立ち上がり、洞窟を駆けていった。

 

 

 

-ハピネス製薬 地下迷宮 地下二階 YY地点-

 

 泣きそうな顔で洞窟を歩くキサラ。気が付けば、バードと一緒にテントを張って休憩した場所までやってきていた。まだ焚き火の跡が微かに残っており、その前に蹲るキサラ。

 

「どうして私はあんな男に……どうしてみんな人を騙すことしか……そのせいで、父も母も……」

 

 自然と涙が零れる。思い出されるのは、家族での温かい日々。だが、その幸せな日々は長くは続かなかった。キサラの両親は悪い人たちに騙されて事業に失敗し、莫大な借金を抱えて首を吊ってしまったのだ。残された借金を返すためにキサラはこうして冒険者をやっているのだが、今では利子すらまともに払えない状況である。一発逆転とばかりに報酬の高いハピネス製薬からの依頼を受けたが、待っていたのは信じていたパートナーからの裏切り。

 

「レベッカ……ごめん……」

 

 そう呟くのは、妹の名前。するとそのとき、キサラの背後の通路から人の気配がする。振り返れば、そこに立っていたのはランス。

 

「っ!?」

「あ、おい!」

 

 ランスに泣き顔を見られた事がショックだったのか、キサラは即座に立ち上がって走り去ってしまう。それを引き留めようとするランスだったが、キサラは聞く耳を持たず、すぐにその姿が見えなくなる。

 

「行っちゃったのれす。ご主人様、キサラが心配れすか?」

「……うーむ、やはりやり過ぎてしまったかもしれんな。美女に涙は似合わん。何とかせねば……」

 

 そう腕組みをして悩むランスのすぐ後方にある岩陰には、一人の男が潜んでいた。

 

「(……珍しくランスが真剣に悩んでいるな。キサラとの交流は俺には殆ど無いし、ここは任せるか。あれだけ真剣に悩んでいるならば、酷い事もするまい)」

 

 そこにいたのは、ブラック仮面。丁度ブラック仮面もキサラに話し掛けようと思い、出て行こうとしていたところにランスがやってきたため、すぐに岩陰に隠れたのだ。目の前で真剣に悩むランスの表情を見て、キサラの件はランスに任せる事にする。その真剣さから酷い事はしないだろうと確信を持つが、既に酷い事をした後だからこその真剣な表情だとは知る由もなかった。

 

 

 

-ハピネス製薬 地下迷宮 地下三階 隠し通路-

 

「覚えていろ、ランス……私は必ず戻ってくる……悪しきハピネス製薬からウェンリーナー様を助け出すのは、この私だ……」

 

 前線から下げられる屈辱に歯噛みしながらも、アーニィは左拳を握りしめて通路を歩いていく。その瞳には、確かな決意があった。

 

 




[人物]
アーニィ
LV 22/27
技能 剣戦闘LV1
 エンジェル組アイス支部、くまさんチーム隊長。生き物は全て平等だという考えを持ち、その考えは男の子モンスターや悪魔にまで至っているため、女の子モンスター保護団体のエンジェル組でもかなり珍しい人物。一見すれば狂人とも思える思想だが、部下からは慕われている。狡猾な罠や華麗なナイフ捌きなど、戦闘能力も一級品。


[その他]
エンジェル組
 大陸中に支部を持つ女の子モンスター保護団体。支部によっては過激派に近い活動をしている所もあるため、一般受けはあまり良くない。支部の中でくまさんチームとうさぎさんチームに分かれて活動を行うのが特徴で、基本的にくまさんチームの方が優秀とされている。

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