私が菊月(偽)だ。   作:ディム

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羞恥シーンはエラーで回線落ちでした。


ショッピング・アゲイン、その四

「ほら、菊月ちゃん。ごめんなさい、やり過ぎたのは謝るから許してちょうだい。ね?」

 

「……許すも何も、怒ってなどいない……」

 

下着を買う……もとい、如月に好き放題弄ばれて下着屋から出ると、時刻は十四時を過ぎたところだった。菊月()と如月は姉妹達と合流し、小洒落た喫茶店で遅めのランチを食べている。ちなみに今身に付けているものは、如月が選んだフリルの意匠が可愛らしい(フリッフリでキュートな)もの。思い出す度に『俺』が昂り『菊月』が悶え赤面する為、努めて意識の外へ置いている。

 

「で、菊月はどんなのを買わされたぴょん?うーちゃんはいっつも買わせる側だから分からないぴょん」

 

「卯月の被害に遭うのは決まって私だろうが、少しは反省してくれ。まあ、それはそれとして気になるところではあるな」

 

「ふふ、菊月ちゃんの下着はね――」

 

「……如月っ!」

 

慌てて席から立ち上がり、如月の口を両手で塞ぐ。『菊月』が少しずつ羞恥を感じつつある中で上手く阻止できたと思った瞬間、思わぬところから声が聞こえる。

 

「うーん、如月お姉ちゃんのチョイスなら基本的にレースやシルクのものになると思いますよ。あとは、実は可愛いものが好きなのでフリル系ですね。菊月お姉ちゃんにならそういうものを合わせてくると思います」

 

他でもない、三日月である。あまりのことにうっかり如月の口を塞いだ手を離してしまうものの、如月の方も少しぽかんとしているようだ。

 

「三日月?ああ、成る程な」

 

「まあ、菊月が来るまで如月に弄ばれてたのは三日月だから理解できるぴょん。それより、実は可愛い下着が好きっていう方がうーちゃん的には――もがっ」

 

「は、はい終了!もう、三日月ちゃん!」

 

「ふふ、いつも好き放題されていたお返しです!ずばり、渋々菊月お姉ちゃんに合わせた風に装って買ったであろう大人しめのデザインの下着が一番の好みだと見ました!」

 

「――しかもほとんど正解ですって?うぅ〜、三日月ちゃんもう止めてぇ〜」

 

普段はあまり見る事のない、三日月が如月を圧倒するという光景。しかし、如月への攻撃がそのまま菊月()への被害へと繋がっているのも事実である。現に、買わされた下着は全て三日月の口から出たものだ。その上卯月が此方へ意味深な笑顔を向けていることも見落としてはいけない。

 

「……もう止めておけ、三日月。……で、如月?この後も、何処か行くところがあるのだろう……」

 

「こほん。ええ、そう。行くところが残っているのよ。遊びに行く為、というのにはちょっと外れるけれど」

 

「うん?そう言えばそうだったな。私や卯月にも相談が無いから気になってはいたが。何処へ行くんだ、そろそろ勿体つけずに教えてくれても良いんじゃ無いか?」

 

「うふふ、そうね。じゃあ発表します!私達が向かうのは――」

 

散々溜めに溜めて披露された目的地。それを聞いた際の皆の反応は様々だったが、思うことは一つ。『俺』も『菊月』も、恐らく他の皆も……来る夏への思いを強めるのだった。

 

―――――――――――――――――――――――

 

「いやはや、如月にも驚かされる。『あんなもの』を買うなら事前に説明しておけと言うのに」

 

「まあまあ、長月お姉ちゃん。確かに急でしたけど、楽しい買い物になったじゃないですか」

 

「まあ、な。楽しいことは楽しかった。腹を立てている訳でもない。ただ少し驚いただけだ」

 

「まー、うーちゃん的には気に入ったものを買えて大満足ぴょん。如月が見繕った店だけはあったぴょんね」

 

つらつらと話をしながら、陽の傾いた街を歩く。橙ではなく赤色に近づいている光が、夏が迫ってきていることを実感させる。両腕に抱えるのは午前中に買った服と下着。午後に買った『あるもの』は鎮守府へと郵送して貰った。

 

「……しかし、良いものだな……」

 

「菊月お姉ちゃん、楽しかったですか?」

 

「……ああ、勿論楽しかった。羽を伸ばすのも気を抜くのも久し振りだ、やはり此方の方が良い……」

 

「なら、良かったわ。出来る限り菊月ちゃんに楽しんで貰おうって、お姉ちゃん頑張ってたんだから」

 

「三日月、それに如月も。その、感謝している……」

 

『菊月』の感情のままに照れながらもそう告げれば、二人は嬉しそうに破顔する。先を行く二人にも声をかけ、ありがとうと告げる。時刻は六時半、そろそろ陽も沈み切ろうかという道を――六時半(・・・)

 

「……まずいな」

 

さあっ、と顔から血の気が引く。ここから駐車場まではおよそ十分。走って……走っても、睦月型(こども)である我々にはそう変化が無いだろう。

 

「どうしたの、菊月ちゃん?」

 

「……明石」

 

ぽつりと呟いた菊月()の言葉に、全員の顔が一気に青く染まる。嫌な汗が流れ出す、それを拭うこともなく俺達は一目散に駆け出した。




途中で切った買い物について、また後で活動報告上げます。

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