私が菊月(偽)だ。   作:ディム

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天龍と菊月が艦これしてない。

懐かしいです。


菊月(偽)と接近戦、その二

「……ヒトヨンマルマル、ドック前出撃港集合。時間通り、だな……」

 

近接戦闘での教導を申し込んだ時、天龍は何故か言葉を濁していた。見かねたのだろうか、龍田が耳元で何か囁いてから有難いことに了承を返してくれたが、日時の指定をされた。そうして俺は、相談を持ち掛けてから二日後のこの時間に港に立っているのだ。

 

「お、早いじゃねーか。待たせちまったか?」

 

声に振り返ると、天龍・龍田姉妹が此方へ歩いてくる。天龍は艤装付き、龍田の方は無手だ。察するに、龍田は監督役かただの見物だろう。

 

「……いや、構わない。それで、何をするのだ……?」

 

「あー、そのことなんだがな。悪ぃ、オレに『教える』なんてのはあまり出来そうに無ぇ。済まねえな」

 

「……なに?」

 

天龍の言葉に、思わず怪訝な顔をしてしまう。疑問を口にしようとするが、それよりも早く天龍が言葉を続けた。

 

「オレや龍田は確かに刀とか薙刀を持ってるが、だからってちゃんと道場で練習した訳じゃねえ。お前は確かナイフで戦ってたんだったか、オレ達もお前と同じように我流で敵を只管沈めてただけだ。ただ一つお前と違うのは、経験だろう」

 

こほんと咳払いをし、越しに片手を当てて天龍は続ける。

 

「そもそも、近接戦闘なんざ懐に潜り込まれた時だけにしか使わねえもんだ。砲撃で沈めれるんならそっちの方がよっぽど良い。けど、それでもヤりたいってんなら―――数を熟すしかねぇだろう、ってな」

 

「……ふむ。それは、つまり」

 

俺の言葉にニヤリと笑い、大きく頷いて天龍は言い放つ。

 

「オレも最近ナマッてたとこだからな。峰にしてやらぁ、さあ得物を抜けよ」

 

「……む、しかしな……」

 

「あ?どうしたんだよ。抜けって言ってるんだぜ?それとも何か、この天龍サマの剣捌きが―――フフ、怖いか?」

 

何やら、とても嬉しそうに台詞を言う天龍。その顔は愉悦と言うよりは、キラキラと純粋に喜んでいるように見える。ちらりと龍田の方を見れば、此方は此方でとても楽しそうにしている。

 

「……いや、済まない。実は私はまだ自分の武器を持っていないのだ。今、明石に頼んでいるところでな……、その間に、稽古を頼もうと思ったのだ」

 

「――――――えっ」

 

「あら〜?天龍ちゃん、とっても嬉しそうだったわね〜?駆逐艦の子に怖い〜って思われたのが、そんなに嬉しかったのかしら〜。とぉ〜っても、嬉しそうだったわよぉ?」

 

見る間に顔を真っ赤にし、身体を震わせる天龍。何故か安心した『俺』だが、悪くはない筈だ。二人を刺激しないように、俺は稽古用の木刀を探しに出かけた。

 

 

数本の木刀を抱えて戻ると、少し天龍が膨れてはいるもののどうやら二人は落ち着いたようだった。木刀を一本渡し、此方は少し離れて短いものを構え更に一本腰に差す。流石は天龍と言ったところか、木刀を構えれば一瞬で顔を引き締める。

 

「ったく、さっきはみっともねえ所を見せたな。だが、経験積まなきゃならねえのは変わらねえぜ。―――さ、来いよ」

 

「……ああ。いざ……っ!」

 

答えれば、一足で思い切り前に踏み出し懐に踏み入る。目線は天龍の片目から外していない、僅かに見開くそれがよく見える。

 

「……くうっ!!」

 

横薙ぎに一閃。しかしそれは、くるりと回した天龍の木刀に受け止められる。次いで木刀を引き、突きを繰り出す。首元を狙ったそれは、天龍の体捌きによって回避される。

 

「へ、意外とやるじゃねえかよ―――っ!!」

 

お返しとばかりに、袈裟斬りに繰り出された天龍の攻撃をを引き戻した木刀でいなす。自分から踏み込んだのだが一度距離を取るべきだ、天龍の腹を蹴り後ろへ跳び、同時に(天龍)の木刀を躱す。

 

「っチ、意外と足癖が悪いなぁ、駆逐艦っ!」

 

「生憎、行儀良くは作られておらぬ……っ!!」

 

さっきとは対称的に、今度は踏み込んでくる天龍。ただでさえ上背の差があるのだ、体重を乗せられては此方が不利。咄嗟にバックステップすれば初撃の唐竹は空を切り、石造りの地面をほんの少し砕く。

 

「……隙を……ちいっ!」

 

下がった天龍の木刀を踏みつけてやろうと前進しかけた身体を止め、下がりながら繰り出される猛攻を受け止め、打ち返す。そのまま暫く後退しながら、互いの木刀で何度も斬り結ぶ。確かに我流だろう、不確実な軌道で繰り出される剣戟は雅さこそ無いが幾多の実戦に裏打ちされた頑強さだ。

 

「……だが、このまま押されている訳にもいかぬ……っ!」

 

ずっと受け止め受け流していた何度目かの袈裟斬りを思い切り屈んで躱せば、天龍の剣は大きく空を切る。好機とばかりに、しゃがんだ足で思い切り跳べば渾身の突きを繰り出す。

 

「へっ、お前は突きが好きだよなぁっ!読んでたぜっ!!」

 

繰り出した突きに沿うように、天龍の右手が菊月()の腕に伸ばされる。見れば、天龍は片手を木刀から離している。―――誘われたか。

 

「そ、らよぉっ!!」

 

そのまま、強引に掴みあげられ投げられる。肩口を掴まれたまま空を一回転し、地面に強く叩きつけられる感覚。あまりの衝撃に息を吐いてしまい、一瞬目を回してしまう。それが命取りだった。

 

「―――よぉし、今回は俺の勝ちだな」

 

一瞬ののち意識を覚醒させれば、喉元に突きつけられる木刀が嫌でも眼に入る。ここまでされては言い訳も出来ない。

 

「……ああ、悔しいが私の負けだな……。しかし、思い切り投げてくれるのはどうなんだ?」

 

「よく言うぜ。最初に思い切り蹴ってきたのは何処のどいつだってな」

 

退けられた木刀の代わりに差し伸べられる手を掴んで、身体を起こす。さっきの衝撃は予想以上に強かったようで、まだ少しフラフラしている。

 

「ま、今までほとんど頭の悪い深海棲艦(人型じゃないの)としか戦って無いんだろ?人型はこうして殴ってきたりするからな、そういうのも含めて砲で決着付けられれば良いって訳だ。まあ、お前の筋は良いし駆逐艦なら必要にもなるか。お前が望むんなら、また『遊んでやっても』良いぜ?」

 

「……望むところだ。次は一撃、入れてやろう……!」

 

ニヤリと楽しげに言い放つ天龍に、売り言葉に買い言葉で返す菊月()。無論、お互いに軽口の範疇にも入らないことは分かっている。

 

「あらあら〜、ちょっと大変なことになりそうね〜?」

 

―――しかし、結局お互いに白熱した挙句両者中破にまで追い込まれ、仲良く入渠する羽目になったことを併記しておく。




適当な画像まとめスレを暇つぶしに見ても、睦月型はたった一人望月の絵が一枚あるだけでした。

くそう。

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