私が菊月(偽)だ。   作:ディム

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タイトルの通り三日月視点です。


閑話『三日月』

―――『菊月』お姉ちゃんが沈んで、第二十三駆逐隊が解体されて、卯月お姉ちゃんが戻ってきた時。私は、すごく後悔したんです。一介の駆逐艦ですから、操り手も無しに動くことなんて出来ませんでしたし、空母さんの護衛も大切な任務。けれど、ずっと一緒に居たんですよ?やっぱり、私は『菊月』お姉ちゃんを守りたかった、って。

 

―――――――――――――――――――――――

 

「ショッピングに行きましょうっ!!」

 

意識して、大声を出します。ほんとは前からみんなに伝えておこうと思っていたのですけれど、いざ言おうと思うと言い出せなくて結局こうなっちゃいました。

 

一番に起き出すのは、やっぱり菊月お姉ちゃん。白い髪が綺麗な、私の好きなお姉ちゃん。―――きっと、彼女が早く起きるのは一番戦っているせい。訓練に任務、そのどちらもをずっと一人でこなすから。そのお姉ちゃんよりも早く起きれたことに、訳もなく嬉しくなる。

もぞもぞと時計を見て何か考えているみたいです、やっぱり少し早すぎたかな?

 

「ほら、卯月お姉ちゃんっ!布団にくるまってないで、ショッピングに行きましょうよぉっ!」

 

多分、放っておいたら起きて来ない卯月お姉ちゃんを起こしにかかる。騒がしいタイプのお姉ちゃんだけど、それを嫌だと思ったことは一度もない。けれど、駄々を捏ねるお姉ちゃんにつられて私も声が大きくなる。

 

「んぅー。三日月ちゃん、ちょっと声が大きいわよ。関係無い人まで起こしちゃうじゃない。でも、お買い物に行くのは良いと思うわ」

 

ぎゃーぎゃーと言い合っていると、如月お姉ちゃんに窘められる。すごく大人っぽくて、尊敬できるお姉ちゃん。けれど、あんな透けている寝間着を着せようとしてくるのはやめて欲しいかな。

 

全く起きようとしない卯月お姉ちゃん。仕方ありません、耳元で『菊月お姉ちゃんをみんなで買い物に連れて行きますよ』と耳打ちする。着せ替え人形にするということも言い添えて。すると予測通り、私に頭をぶつけそうな勢いで跳ね起きてくれました。

 

「なんだ、朝から騒々しいぞ三日月。―――なに、買い物だと。ほう、そいつは良いなっ!」

 

ちょうど、同じように菊月お姉ちゃんが長月お姉ちゃんを起こしてくれたみたいです。長月お姉ちゃん、私達の中で一番艦娘っぽい人。最近は、似たような性格の菊月お姉ちゃんが増えて嬉しそうです。

 

そんなことをしていると、卯月お姉ちゃんの準備が出来たみたいです。二人で部屋を出て食堂に向かえば、後ろから長月お姉ちゃんが走ってきます。如月お姉ちゃんと菊月お姉ちゃんも後から来るみたいです。今日は絶対に、楽しんで貰わないと!

 

 

 

「……別に、私はこのままでも良いのだがな」

 

「駄目です、絶対っ!菊月お姉ちゃんにも、ちゃんとお洒落して貰うんですから!」

 

食堂から帰ってきて、お出かけ用の服に着替えます。でも、やっぱりと言うかなんと言うか菊月お姉ちゃんは服を持っていないみたいです。食堂での話ぶりからきっとそうなんじゃないかと思っていましたけれど、女の子としてこれでは駄目。―――だって、菊月お姉ちゃんは戦うだけの存在じゃないのだから。私は、お姉ちゃんにこそ楽しんでほしいのだから。今日はちゃんと、菊月お姉ちゃんの服を揃えましょう。

 

「―――そして、菊月は三日月に服を選んでもらうこと。それでいいな、二人とも?」

 

長月お姉ちゃんの言葉に渋々頷く。ほんとは、菊月お姉ちゃんには私が服を貸してあげようと思っていたのですけれど。それでも、菊月お姉ちゃんに服を選べるというのなら我慢も出来ます。お姉ちゃんも了承してくれたみたいですし、考えていた以上に頑張らないと、ですね!

 

―――――――――――――――――――――――

 

ショッピングに出て、真っ先に向かうのは洋服屋さん。勿論、菊月お姉ちゃんの服を買うためです。こんなお店に入った事がない菊月お姉ちゃんは終始きょろきょろしていましたが、そのお姉ちゃんの手を引き無理やり試着室に押し込みます。あんなに強い菊月お姉ちゃんなのに、手を引けば簡単に動かすことが出来るぐらい軽い。

―――うん、やっぱり菊月お姉ちゃんだって一人の女の子です。

 

如月お姉ちゃんと卯月お姉ちゃんに協力して貰って、色んな服を取っ替え引っ替えお姉ちゃんに合わせて見る。菊月お姉ちゃんは不思議な雰囲気ですから、色んな服が似合って楽しい。特に、今試着して貰っている純白のワンピースなんかお姉ちゃんの髪色とお揃いでとっても似合っています。

 

「よーっし、次はこっちの服ね!」

 

その前に来て貰っていた服を購入用のカゴに入れて、今度渡すのはパーカーとミニスカート。本人は独り言のつもりだろうけど、試着室の中で喋っていることは私たちに筒抜け。そんなところも可愛いお姉ちゃんです。

 

催促の言葉に観念して出てきたお姉ちゃんに抱き着く。卯月お姉ちゃんでもない私には普段は恥ずかしいことだけれど、こんな機会になら誤魔化してくっ付ける。そのまま菊月お姉ちゃんのお腹に頭を擦り付ける、私と同じような身体の筈なのに少しかたく感じるのは気のせいでしょうか。そう言えば、さっき握った手もかたかったように感じます。

 

少し心配になって、こっそり菊月お姉ちゃんの顔を覗き見る。如月お姉ちゃんと卯月お姉ちゃん、長月お姉ちゃんに囲まれて困ってはいるみたいですけれど嫌な顔はしていません、少しホッとします。―――お姉ちゃんには、楽しいことを知って貰わないと。訓練よりも、戦うことよりも楽しいことを。

菊月お姉ちゃんはゴスロリのドレスを選び、試着室に消える。その隙に私達も同じ物をカゴに入れて、こっそりと話し合います。みんなで、お揃いのお洋服で出掛けられたらいいね、と。

 

お姉ちゃんの試着した服全てを、如月お姉ちゃんが司令官から借りてきたカードでお支払いする。如月お姉ちゃん曰く『お願いしたら司令官は快く貸してくれた』らしいので、気兼ねなく使う。

 

さあ、次はご飯の時間。菊月お姉ちゃんには、もっともっと楽しんで貰わないと。それまでは、絶対に今日の日を終わらせません!

 




あまり描写し過ぎるとヤンデレってしまいそうなので、そのギリギリを見極めるのが厳しい。

やっぱり三日月のそれは姉妹愛だということを証明してしまいましたね。

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