昨日言ったろ、テンション上がって書きすぎたって。
書きすぎたんだよォ、こんな風になァ!!
100万UA嬉しかったんだよォ!!
前からリクエスト結構来てた戦慄のゲシュペンスト編の続きだオラァ!
チートオブチートだから気をつけて下さいィ!
※昨日の定期更新分がまだの人はそちらも是非!
深い深い霧の奥。
艦娘も深海棲艦も、そのどちらもを等しく惑わす霧の奥。
そこに、ひとつ。
真っ白な幽霊船が、今でも彷徨っているという――
「ふんふんふーん……ふふんふんふんーん……」
「アアアアッ、グガッ、ギアッ、ギャアア、ッヅ!!?!?」
「カエレ、キエロ、キエロヨォ……コノ、バケモノッ!!」
雨霰と降り注ぐ大小無数の砲弾に、雲霞のごとく押し寄せる艦載機の数々。それらを見て、そう言えばもうたこ焼きなんて長いこと食べてないなあと思い出した。思い出したから、それを掴んで、
「……あまり、強くないな……」
握り潰す。途端、そのたこ焼きのような艦載機の目に宿っていた黄金の炎が消失し、朱金の焔に掻き消された。その粉々になった残骸を、無造作に投げ返す。
「――ナ、ンダトッ」
それだけで、砲弾の全てを相殺した。相殺して、それでも残った大半の残骸が深海棲艦どもに降り注ぐ。肌が裂け、真っ白なそこからどす黒いオイルが漏れ出す。足元の青い海が濃く濁ってゆく。
「……む、いかんな。
「キサマ、ナニヲイッテ――」
跳躍。接近。そして粉砕。他愛もない。彼奴等のなかで最も脆い部位のひとつに向かって右手を横薙ぎに――骨から削り出した、血と錆のこびり付いた黒刃は邪魔だから置いてきた――振るう、手は指先までぴんと伸ばし手刀の構え。脱力し振り抜く、それだけで奴の頭は胴から離れ、母なる海へ落ちる。
その頭を潰すようなことはしない。死人に鞭打つのは好みでは無いし、何より彼女も力を尽くして戦った相手だ。理性の無い、あるいは薄い、ただの雑魚ならばともかく、彼女のような存在を辱めるようなことはしたくない。
だから、
「
重巡棲姫と潜水棲姫と南方棲戦姫と、あと何だかカチューシャのような物を付けていた名前の知らない深海棲艦――それらの首無し死体の襟首を左手に引っ掴んだまま、
――彼女らは、戦うことなく撤退を選択した。
―――――――――――――――――――――――
艦娘達の前で深海棲艦の群れを撃滅してから早半年……ぐらい。季節はすっかり巡り、冬から夏に移り変わった。それに倣って霧の出る日も少なくなり、深海棲艦と交戦することも増えた。
しかし
「……忌避されるのなら、仕方ない……」
そう、あの時艦娘の集団から感じた畏怖、恐怖、不信そして隔意。無論、
それは避けるべきであるし――何より、現状一人で問題ないのに誰かとつるむ必要がないのだ。だから、むしろこのままで良いのだ。
――余談だが、あの日菊月の姿を見て恐怖を感じた姉妹の全てがそのことに罪悪感と贖罪の意志を持ち、菊月を救出しようと動いているのだが、そのことを菊月は知らないでいる。
「……しかし、最近、雑魚が増えた。絡まれることも。……面倒だ」
思考を巡らせつつ、手を動かしながら独りごちる。深海棲艦の首無し死体から剥ぎ取った白い布をいくつも繋ぎ合わせ、あるいは補修し、一つの大きな布へと加工する。手の中にあるのは、その経過にあるものだ。これを作る為だけに、最近は積極的に上級の深海棲艦を狩っていた。昔――
あれは良くある狩猟ゲーだったか、敵がレアな素材を落とした時にはとても嬉しく思ったものだ。その点、こいつら深海棲艦はどれだけ鬼や姫を殺そうとレア素材など落とさないのは少し不満である。
やり込み甲斐がない。
「数日潰した……が、これで完成だ」
先程仕留めた四体から剥ぎ取った衣のうち、上質な部分だけを繋ぎ合わせて完成した一枚の布。それの継ぎ目を彼奴等の甲殻や装甲で補強し、余った素材で細部を装飾する。華美なものにはならないが、ただの白い布よりはずっと映えるだろう。
なお、この為に狩った四体の遺体は別の布――下級の深海棲艦の皮だ――に包んで、
「……うむ、やはり、馴染む……」
完成した外套を纏い、フードを被る。この白い布は『なぜか』ひやりと――例えるならば海の底のように――冷たく、それでいて夏の日差しを遮ってくれる。以前手に入れた小さな切れ端が同じ性質を有していたために作ってみたが、どうやら成功のようだ。それを纏い、保存食を袋に詰めて腰のベルトに結ぶ。両腰には青黒い血の付着した、漆黒の骨刃二振り。それら全てが装備されていることを確認し、
「……よし。少し、姿を眩ますか……」
およそ一年住み慣れた島を飛び出し、遠く離れた海面に着地し駆け出した。行き先は不明、というよりも未定。どことも決めずに放浪し、そこらを嗅ぎまわる深海棲艦から遠ざかり、あわよくば艦娘達の感情が平静に戻ったところで帰還しようという魂胆。その為に暫く自由に海を征こうとしたその瞬間、
「……イマダッ、全艦カカレッ!!」
はるか遠く水平線の近くから、ほんの数十メートル先まで。ずらりと並びひしめき合う深海棲艦の大群が、海面下から一気に現れた。その数は優に百を越え、小さな基地なら簡単に押し潰し攻め落としてしまえる量。大半が異形の駆逐や軽巡だが、その中にいくつか上級の、指揮を執ることが出来るものもいるようだ。
「コノ数ダロウト楽ニハイカヌダロウガ、ココデ貴様ハ沈メル……! 消エロ、戦禍ノ化身ヨ! 貴様ハ、貴様ノ齎ス災禍ハ、我等ノ憎シミニカケテ消サネバナラナイ!」
向けられる殺気から声が聞こえる。憎い憎い憎い、怖い怖い怖い。濃密な憎悪と恐怖、そして殺意。それらは正しく嘗て別の何かとして死した彼奴等の断末魔であり、その際に覚えた感情だろう。
つまり、
気の狂いそうなほどの妄執と怨念。負の意思の塊。それらを一身に受け、それらの籠った砲撃雷撃艦載機を殺到させられ、
「……邪魔だ。面倒なのだから出てくるなよ……」
す、と一足。
満ち満ちた力を発現させ、朱金の気焔を噴き上げ、先頭に立つ空母ヲ級の真横を通り抜け、そのまま
「ナ……」
「だから、邪魔なのだ。一々こまめに軌道を変えねばならぬのは」
腰から引き抜いていた、両の黒刃。真横に大きく伸ばしたその二振りからどす黒い液体が滴り落ち、一雫溢れた後には刀身へ付着していた体液がだらだら、どろどろと染み出し墜ちる。錆と磯臭いそれが海面に波紋を残した瞬間、
「……ニ?」
静まり返った海に動く者もなく。
百余の深海棲艦に一切の漏れも無く。
ぷしゃり、という、何かが噴き出す音だけを響かせて――憎悪の艦隊は、ただ一つの例外無く真っ二つに両断された。
行ったことは単純明快、ただ両腰の刃を振り抜いたと同時に彼奴等の真ん中を突っ切っただけ。ただし、そこに込められている力は
結果として、彼奴等の真ん中を抜けるまでの一瞬で発生した斬撃とそれが巻き起こす剣風が海域全ての敵をスライスし、そこに生まれた隙間を潜り抜けた。
ただそれだけで、たったそれだけだった。
「全く……面倒くさい」
彼奴等は
ならば、多分。彼奴等は
だって彼女らが、嘗て戦いしモノらの怨念が恐れ憎むものなどそれ位しか存在しないのだから。
「が……せめてもうニ度と魘されぬよう、永遠に眠れ」
だが、それも――一刀のもとに全て斬り伏せた。無為に沈みゆくその亡骸にせめてもの祈りを捧げれば、
ゲシュペンスト菊月、レベル2500!
深海棲艦から概念的に恐れられるようになったよ!!