私が菊月(偽)だ。   作:ディム

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>現在「艦これ」運営鎮守府では、久方ぶりの睦月型駆逐艦の新艦娘の実装準備も進めています。
>現在「艦これ」運営鎮守府では、久方ぶりの睦月型駆逐艦の新艦娘の実装準備も進めています。
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【追記】
久々の日刊更新なので前話(日曜分)見てない方はそちらも合わせて、ぜひ。


艦娘御一行様三泊四日温泉旅行、その九

あまりにも何もすることが無いと、逆に何をすればよいか迷う。現在『俺』と『菊月』が直面している悩みを率直かつ的確に表現するなら、この言葉がしっくりと来る。

 

「でもお姉ちゃん、たまにはゆっくりすることも必要ですよ」

 

「いや……うむ、分かってはいる。適度な休息を挟んでこそ、戦う際には最高のスペックを行使できるのだからな」

 

「もっと気楽に考えても良いと思いますけど」

 

唇を尖らせながらそう言う三日月は、若干着崩れた浴衣のまま枕に顎を乗せ、敷かれた布団の上にうつ伏せに寝て全身を弛緩させている。まごう事なく、どこからどう見ても、リラックスの極みといった風情だ。

 

「いや……そう、だな。お前の言う通りだ三日月。私もこの暇を有効に活用せねばな」

 

「その通りですよ。ところで、私は神通さん達と観光に行くんですけど、お姉ちゃんはどうします? 一緒に来ても、お姉ちゃんなら大歓迎だと思いますけど」

 

「……いや、今日は止しておこう。何をするかと悩んだ時に、ふとドイツで今も戦っているだろう仲間の顔が浮かんだのでな。彼女らに何か贈り物を買ってやろうと思うのだ。そこに、関係のない者を付き合わせられんよ」

 

「うーん、そうですか。残念です、お姉ちゃん。――でも、明日もみんなでお出かけするのでその時は一緒に行きましょうね!」

 

「……ああ、ならば予定を空けておこう。と言っても、そもそも何も無いがな」

 

そう言って、三日月の側に座り込んでいた身体を起こす。服装は朝着替えた通り、ノースリーブの白カッターに黒のノースリーブベストを合わせ、下は紅色の鮮やかなミニスカート。同じ色のハンチングを被り、ソックスはニーハイの黒。

実を言うと上から下まで全て如月の受け売りなのだが、『菊月』には似合っているので良しとする。ついでに無骨なウェストポーチ――かつては戦場に出る際に使っていたものだ――を装備し、そこに必要なものを詰め込めば準備は完了だ。

 

「行ってらっしゃい、お姉ちゃん。お気をつけて」

 

「ああ……行ってくる。お前も気をつけてな」

 

部屋の鍵は中にいる三日月に任せ、部屋を後にする。少し狭目のエレベーターで一階に降り、そこにいた数人の艦娘と挨拶を交わしてから旅館を出た。入り口に置いてあった観光マップを参照しながら、いくつも連なる下り坂を下りて行く。いかにもな雰囲気の古い家々の間を通り過ぎれば、いつの間にか温泉街の片隅に到着していた。

 

「……さて。彼女らへの贈り物を買うとは言ったが――うむ、む。正直なところ、そこまでセンスがある訳でもない……どうするか」

 

平日ながらも賑わいのある温泉街の商店通りを歩き、ショーウィンドウから店内を覗きつつ独りごちる。見るものすべてが物珍しいそれらに目移りしつつも、これという一つを決められない。

まあ――もともとそんなにイケていなかった『俺』は勿論、『菊月』自身もそこまで見る目に自信が無いと言っている。ならば何を贈るべきか、素直に誰か連れてくるべきか――などと、無意識のうちに辿り着いていた老舗こけし屋の前で悩んでいると、ふと見覚えのある姿を見つけた。

 

「……お前も一人か。何を買いに出たのだ?」

 

薄手の白いブラウスに青色の鮮やかなスキニーのジーンズ、シューズはミュール。シンプルなそれらを上品に着こなし、普段より少し顰め面でショーウィンドウを眺めるサイドテールの彼女――加賀に向けて、菊月()は声を掛ける。

 

「――あら。珍しいものね。こんにちは」

 

「ああ、こんにちは加賀。……その様子だと、お前も誰かに贈り物を買いに来たのか?」

 

ショーウィンドウを凝視する加賀に向けて問いかけを向ける。すると、彼女は此方を向きつつもどこか照れくさそうに視線を逸らした。

 

「いえ、その。今日は赤城さんが吹雪達と遊びに行ってしまって。なので部屋にいたら今度はルームサービスの人に『部屋の掃除をするから外出を』と言われてしまって」

 

「……つまり、何もすることがなく引き篭もりも出来ないから外出したは良いがそれでも何も思いつかずにショーウィンドウを眺めていた、と?」

 

「ええ、概ねその通りよ」

 

「……ちなみに、いつからここに居るのだ」

 

「マルハチマルマルからね」

 

左腕に嵌めた腕時計を見る。今の時刻は――十二時半、つまり加賀は四時間半もの間このショーウィンドウを睨み付けていたことになる。

 

「……流石、一航戦の精神力は伊達では無いということか」

 

「そうね、その通りよ」

 

「嘘をつけ! 私が声を掛けた際にあからさまにほっとした表情をしたのを見逃してはいないぞ……!」

 

いつもと変わらない表情のままうそぶく加賀を追求すれば、途端にしゅんと項垂れる彼女。まあ、傍目には表情の変化など殆ど見て取れないのだが『菊月』の感情の機微を見てきた『俺』には、その程度造作もない。

 

「別に怒っているつもりはないのだがな。そう落ち込まれても困る……というか、私にとってはお前が暇をしていたことは好ましい事実なのだかな」

 

「好ましい? 一体どういうことかしら」

 

「ああ、実は私も暇を持て余していてな。故にドイツの友人たちに贈り物でも買おうかと思ったのだが、如何せん自らの物を見る目に自信が無い。……だが、お前ならば私と違った視点を持っている上に彼女らのことをよく知っているだろう?」

 

「――成る程ね、それなら確かに好都合だわ。私も同行させて貰っても?」

 

「望むところだ、加賀」

 

ふん、と鼻を鳴らし胸を張る加賀。どことなく元気が出たように見えるのは気のせいではないだろう。

 

「そうね。ドイツのあの子達もだけれど、他所の鎮守府で良くやっているらしい二航戦や――あと、五航戦の子達にも何か贈ってあげましょうか」

 

「……後輩か。私はその彼女らと面識が無いのでな。道すがら、教えてくれぬか……?」

 

「いいわ、構わない。そうね、彼女達は――」

 

その横顔にはっきりと分かる微笑みを浮かべ、嬉しげに話し出す加賀。菊月()はその顔を見上げながら、とてとてとその横について行くのだった。




テンションが上がり過ぎて書いてしまった。
後悔はしていない。

あと私服加賀さん(パンツ系)と私服菊月(ミニスカ系)の組み合わせわりと良いと思うのです。もっと流行れ。

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