コジマ汚染レベルで脳が駄目な男のインフィニット・ストラトス   作:刃狐(旧アーマードこれ)

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思ったより早くできたので投稿。
今回(からではない)はキャノンボールファストです。
このあたりから世界は加速します、一巡する勢いで。
特に書くことも無いですね、スパンが今回短かったので。


The Beginning of the End 終わりの始まり
しぇいきんしぇいきんぶれいくだんしんで青いイレギュラーが開眼するお話


「さぁ皆様大変長らくお待たせいたしました!! 白熱した量産機での1・2を争うトップの奪い合いを制したのは………イギリス代表候補生サラ・ウェルキンさんです!!」

 

ほう、流石は部長だ、画面に映る姿は汗一つ掻かずいつも通りニコニコとしている。

それを見て横でうるさいレベルで大騒ぎしているせっしー、自分が凄いわけじゃないんだぞ、落ち着け。

 

「インタビューを行いましょう、サラ・ウェルキンさん、今のご気持ちを聞かせて下さい!」

『うふふ、みなさま、とても……あら、恥ずかしい、今少し息が……すぅー、はぁー、うんっ、皆様とてもお強くて、最後は少し優雅ではありませんが賭けに出させて頂きました、あと一撃受けていればゴールさえ出来ませんでした。ほら、見て下さい、残りエネルギー……まぁ! 一桁です! 本当に危なかったですね』

 

どうやら表面に出ないだけで相当疲れているらしい、まぁ後続も相当無茶苦茶な動きをしていたから仕方ないと言えば仕方ないんだが。

 

「ありがとうございました! では続いて10位まで紹介させて頂きます!」

 

画面に現れる10人分の表示、順位、名前、国籍、使用機体、小数点5桁まで表示したタイム、そして学生証の顔写真。

 

「2位のフィンランドの代表候補生メルヤ=リサ・ヴィルタネンさん! 惜しくもトップを逃してしまいましたが今大会トップの選手撃破数を誇るスナイパーです! 一言感想をお願いいたします!」

『ふふ、うふふふふ、いやあ、楽しかったですねえ、一位はサラに持って行かれましたが、まぁ8人も落としたので良しとしましょうかあ、またやりたいですねえ! それでは、さようならー! さようならー!』

 

バケモンや、しかもあのライフルって命中精度がいい代わりに威力が低めのライフルだぞ、それで8人落としたってんだからやべぇよ、やべぇよ…

 

「なぁシン、なぁシン……どうしよう、なんか俺スゲェ緊張してきた…」

 

選手控室のような場所で横に座るいっちーがやたらビクビクしながら俺のバトルスーツを引っ張ってくる。

 

「なんで今さらビビってんだ、あまり緊張するなよ、普段どおりにやれば、それでいいぜ」

「お、おう……な、なあ俺、勝てるかな」

「無理だ」

「えぇっ?!」

 

驚いた表情をするいっちーに向かってニィ、と哂う。

 

「俺がいるからな、それにいつものいっちーなら兎角今のいっちーみたいなビビりに負ける可能性は微塵も無い」

「なぁっ…! く、くくっ、そりゃそうだ、そうだよな、人が多い程度でビビってちゃ勝てるものも勝てないな、ありがとなシン、吹っ切れたよ。もう一度聞くけど、俺勝てるかな」

「無理」

 

「無理を通して道理を蹴っ飛ばす、なんかのアニメで見たセリフだ、この勝負、俺が貰う」

 

「お次は8位に食い込んだ一年生の……代表候補じゃない?! フランシス・バッティ・カーチスさんです! お手本のような基礎、基本を守る堅実な戦い方でトップ10に食い込みました!! 何か一言お願いします!」

「お、おぉ! おい見ろいっちー! フランだ! フランが8位だぞ!!」

「え? ふ、フラ…え? 誰?」

 

『えと、そ、その…に、兄さん! お父さん! レイ! が、頑張りました!』

「何か気の利いた事を一言!」

『そ、そんな…むり、無理です…』

 

いやぁ初々しい、何だかんだアガリ症で恥ずかしがり屋なのによく頑張ったと褒めてやりたい、頭を撫でたりはしないが。

 

「なぁシン、知り合いか?」

「俺の妹だよ、妹」

 

よぉし、よし、よっしゃぁ! んじゃまぁ、俺も気張るとしますかねぇ!

 

「っしゃぁ! 次は専用機持ちの俺らの番だ、行くぞぉぉぁああ!!」

 

意気揚々とステータスチェックを行って起動準備画面でそれぞれの稼働部位を調整する。

 

「……シン、あいつ妹いたのか…」

 

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 

『さぁ皆様!! お待たせいたしましたぁッ!! 今大会の目玉イベント! 各国、各企業からの専用機持ちによるレースです!! なんとなんと! 今年は一年生からも出場とされ、なおかつ! 専用機持ちのほとんどが1年生であるため1年生のレースと2・3年生のレースで分けられています!! 毎年見物に来ていただいている皆様方は少し例年と違うのがわかると思います!! そうですッ!!! 今年のキャノンボールファスト!! なんとその距離が倍以上に増えています!!! 元々街全体を使った大規模なレースが海を、トンネルを、大空を!! 縦横無尽に飛び回ります!!』

 

現在スタート地点にて全員ISを展開せずに待機している。

ドヤ顔で一位宣言をするかの如く人差し指を立て、腕を上へと掲げる鈴音。

周りの観客に愛想よく手を振って笑顔のシャルりん。

まるで精神統一しているかのように難しい顔で目を伏せ佇むモッピー、多分これ恥ずかしいからなるたけ注目されないようにしようとかそんな思惑だろう。

周囲へと優雅に礼をしいつもからは想像できない柔らかい笑顔で周りに微笑みを向けるせっしー。

とてつもなく恥ずかしいのか自分を抱きしめるように体を小さくして俯きながらチラチラと俺の方を見てくる簪。

フンスフンスと気合を入れて今か今かと待ちわびる様子のいっちー。

 

「トーマス! トーマス!! からの…エアートラックス!!!」

 

PAと義手義足、ACの重力操作にモノを言わせてひたすらブレイクダンスし続ける俺。

ヘッドスピンはしない、頭が痛いから。

 

そして何やら頭が痛そうに目頭を押さえ深く溜息を吐くらうりー、原因は多分応援席最前列にいるらうりーと同じ眼帯をした黒い軍服の女性。

 

「フレーッ! フレーッ!! た・い・ちょ・う!! 頑張れ! 頑張れ! た・い・ちょ・う!! エル! オー! ブイ! イー! LOVE! LOVE! 隊長!!」

 

すかさずその女性にゆっくりと近づき肩をつかむちっふー。

 

「隊長! たいちょ…何をするキサッ…!! きょ、教官?! ちょっ、待って、待って下さい教官! やめ、な、何をッ!! あぁっ、あーっ! アッ―!! なっ! 何をするだァーッ!!」

 

「…クラリッサ……」

「キヒヒ、キハハハ、なんだ、随分と、楽しそうな、部下じゃないか」

「スマン、見苦しいところを見せた……」

 

どうやら彼女が件のクラリッサらしい。苦笑いしながら俺を見るらうりー、この様子をみると仲がいいのがわかる、がしかし、お前には(らうりーへの間違った入れ知恵について)山ほど説教がある、楽しみにしていろよ。

 

『では選手の紹介です! 第1グリッド、中国、中華人民共和国の代表候補生、凰鈴音!! 専用機は第3世代機『甲龍』です!!』

 

紹介が済むと同時に鈴音がISを展開、特殊なユニットを外付けしたような姿で衝撃砲も前方ではなく横を向いている、完全に今大会に特化させた姿だ。

 

『続いて第2グリッド、イギリス、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国の代表候補生、セシリア・オルコット!! 専用機は第3世代機『ブルー・ティアーズ』!!』

 

同じようにISを展開しクルリと回転しドレスの裾を上げて優雅に挨拶するようにスラスターを動かす、その姿はついぞ俺が見る事の出来なかった高速戦闘用の外付けパッケージだ。

 

『第3グリッド、フランス共和国の代表候補生、シャルロット・デュノア!! 専用機は第2世代……え? ちょ、ちょっと待って下さいね……え、嘘?!』

 

全員がどうしたどうしたとザワザワしている、しかし当の本人、シャルりんは涼しい顔だ、否、どちらかと言うと誇らしげな顔。

 

『す、すいません、お待たせ致しました!! えー…シャルロット・デュノア、専用機は……『第3』世代機『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅢ』です!!』

 

その直後全員がウソだろオイ、みたいな顔をしてシャルりんを見る、するとシャルりんがテヘぺロしながらゴメンネ、と全員に謝った。

まぁどんな機体かはカラードも携わったから知ってるんだけどな。

 

ISを展開したシャルりんがフフンと周りを見る、その姿は特注のスラスターを外付けした姿で特にこれと言って外見が凄まじく変わったわけでもなければカラーリングに変更があるわけでもない、強いて言うなれば紫のラインデカールが端に追加されたぐらいだ。

 

『では第4グリッド、ドイツ連邦共和国の代表候補生、ラウラ・ボーデヴィッヒ!! 専用機は第3世代機『シュヴァルツェア・レーゲン』!!』

 

シャルりんと似たような、と言えば失礼だが本当に大きく姿が変わったわけでもない、スラスターを増設した物となっている。

 

『お次は第5グリッド、日本の代表候補生、更識簪!! 専用機は第3世代機『打鉄弐式』!!』

 

我らが簪がISを展開するもなんとパッケージを追加しているわけでもスラスターを増設しているわけでもなくいつもの姿そのまんまである、まぁ辺に機体を弄ってしまったのでそういう追加がし辛いという所為だが。

 

『第6グリッド、日本の専用機持ち、篠ノ之箒!! 専用機は…なぁんとっ!! 第4世代機『紅椿』!!』

 

しかしこれもいつもと変わらないお姿、凛々しい表情が眩しい。

 

『第7グリッド、世界でただ二人の男性操縦者、イケてるマスクが高い女性人気の秘訣!! 織斑一夏ァ!! 専用機は第4世代機『白式・雪羅』!!』

 

やっぱり案の定いつもと変わらない姿、でもって凛々しいお顔がすべての女性(簪除く)を魅了するもげろ。

 

『第8グリッド、トリを飾るのは日本……あえてこう言いましょう、世界最大の軍事機業カラード所属!! 籐ヶ崎信一郎!! 専用機は……これなんて読んだらいいの、え? そのまま英数字? あ、はーい。 専用機は……』

 

瞬間的にACを展開、眼前にプログラムコードが並びシステムの状況を知らせる、結果はオールグリーン。

黒い巨大な機体を更に巨大なユニットで覆い、PAを起動、周囲に緑に輝く粒子を散らせ、さながら季節外れの雪のようにも見える光景を作り出す。

各々のパーツが展開し、赤く発光した内部機関が姿を見せた。

 

『『アーマードコア・N-WGIX/v』!!!』

 

全員が固まっていれば簡単に覆い尽くせそうなほど巨大なACを展開しゆっくりと宙に浮かぶ。

 

『なにあれ…でっか………あっ! し、失礼しました、それでは皆様、用意はいいですか? ルールは単純、一番早くコースを3周した人の勝利です!! 勿論攻撃しても構いません、むしろガンガンやっちゃいましょう!! スピードに自信がない? 火力特化? 大いに結構!! なら全員叩き落とせば必然的にトップです!! それでは行きましょう! レディィィィ……』

 

 

 

『スタートォッ!!!!』

 

 

それと同時に俺以外の全員が一気にトップスピードへと加速し飛び去っていく、あいにく俺の機体はゆっくりと加速していくタイプな上デカいので一々この最後尾を貰ったわけだ。

 

『まずはトップ、オルコット選手のブルー・ティアーズ! 続いて織斑選手、凰選手、ぴったりくっつく様にラウラ選手と続いています。最後尾は大きく離れて籐ヶ崎選手、超巨大だからかやはり速度に難があるのでしょうか?!』

 

いい具合に機体も温まった、加速シークエンスも良好、ハイブーストグリーン、さぁて、そろそろ刺しに行きましょうかねェ!

 

『お、おぉ?! い、今のは何でしょうか!! 籐ヶ崎選手が一瞬消えて凄まじい加速を発揮、尋常では無い速度で追い上げます!!』

 

最後尾のモッピーを遥か向こうにロック、レールキャノンで叩き落とすとするか。

 

「なっ、籐ヶ崎か?! もう追ってきたのか!! クッ!!」

 

しかし遠すぎたのか掠ることもなく団体の中心をぶち抜いていき地面に刺さり地面が捲り上がるレベルで炸裂した。

 

「ばっ、バ火力め!!」

「今のシン?! あんなの食らったらボクも一たまりないよ!」

「あと少しで直撃するところだったぞ! シンめ! イカレてるよ、お前!」

「それの何が悪い」

 

続いて後方3人、モッピー、簪、シャルりんがミサイルのロック範囲に入ったのでマルチロックしてVTFミサイルを放つ。

 

「やっぱり……! マルチロックなんて、ズルいよ……!!」

「クッ、籐ヶ崎の前だと死ねるな、これは! 雨月ッ!」

「もっと後に取っておきたかったんだけど…ッ! ヴィッセモート!!」

 

簪が人かどうかを疑う動きでミサイルのキルゾーンからXY軸の移動だけで回避、モッピーが雨月でミサイルを迎撃し、シャルりんへのミサイルがターゲットロックをズラされる。

 

「PA…展開…!! 行くよ……!」

「もういい、この際省エネなど無しだ!!」

「ボクも、こんなに神経がすり減るのは御免だよ!」

 

三人が一気に加速し前方のトップ争いチームにターゲットを擦り付けるように団子状態となる。

 

『こ、これは凄まじい混戦状態です!! 凄まじい火力の籐ヶ崎選手から逃げ惑うように押し合いへしあいの大乱闘です!! ……あの、本当に大丈夫ですか? そのぉ、シールドが破れたりとかは……あ、大丈夫? カラード謹製で内側からはめっぽう強い、シールドレベル5相当? あぁ、じゃあ大丈夫ですね』

 

「そうらそうら、道を譲れェ! 撥ね飛ばされてぇか?!」

「あぁクソっ! ミサイル垂れ流しやがって!」

「前に出た瞬間バラバラにしてやる…!」

「あぁぁっ! 何これ?! 第三世代兵器ってこんなに頭が痛いの?! ぐぅぅっ!!」

 

「ふっ! お? はは、ハハハハ!! いいぞいいぞ! いい安全地帯だ! ハハハハ!!」

 

センサーを使ってぐるりと見渡すとミサイルサイロの丁度間にらうりーがワイヤーブレードでくっついている、そういうのもあるのか!

 

「そらそらどうした! もっと飛べ、駆けろ! これはいい気分だ、エネルギーの節約にもなる!」

 

ちくそう、と丁度目前に急カーブを発見、ロールでらうりーを外側に向けトップスピードのまま120°ほどもあるカーブを曲がる。

 

「なっ! ぐぅっ!!」

 

機体にしがみ付いていたらうりーが弾き飛ばされワイヤーブレードを伸ばした状態で宙ぶらりんになっている、まるで犬の散歩だ、俺が犬役で。

 

「振り落としてやる」

 

上部を外にした異常ともいえるバレルロールでらうりーを振り回しようやくらうりーを機体から外した、とんでもない事を思いつくもんだ。

 

「チィ! まぁいい、これでかなりのアドバンテージを手に入れたぞ、もうお前は用済みだ、籐ヶ崎!!」

 

生憎後ろへと攻撃する手段が皆無に近いのでらうりーや他の面々の攻撃、流れ弾などを防ぐ手立ても撃墜する手立てもない、だがこれでいい。

画面に現れるアラートと残りAP僅かという表示、後部に気をやると黒煙も吹き始めている、そろそろ『捨て時』だ。

 

「VOB、パージ」

 

コマンドと同時に画面がVOB視点からN-WGⅨ/vへと変わり前方のユニットが廃棄され後方へと飛ばされていく。

 

「うおっ! 何だ今のは?!」

「巨大な鉄塊に見えましたわ、そこっ!」

「くっ……やっぱり……戦うのは……苦手…!!」

 

続いて背部のブースターユニット、ミサイルサイロ、主要機関がバラバラになり次々と後方へと飛んでいく、ミサイルサイロに至っては残ったミサイルを撒き散らしながら飛んで行くため非常に鬱陶しい攻撃だ。

 

「このっ、はぁっ!! きゃあっ!!」

「ああもうっ! あっぶなっ! ちょ、大きい大きい!! うぎっ!!」

 

『と、籐ヶ崎選手! 次々とパーツを散らし……な、何あれ?! 姿が変わりました!!』

 

「さて、遊びは終わりだ……殺してやるよ([∩∩])」

 

後続を正面にし、後ろへと最高速度で下がりながらライフルとハイスピードミサイルを垂れ流して嫌がらせをする、多少の被弾は異常なまでに強化されたPAでほぼ無効化、何の事はない。

 

時折横へハイブーストしロックを外してやるとなおよし、さっきよりも確実に遅いためかなり近付かれるがハイブーストで加速しながらだとギリギリ追いつかれるか追いつかれないかの瀬戸際だ。

 

そうこうしている内にいつの間にか3週目へと入る。

 

そろそろ接近がシャレにならないのでコジマエネルギーを収縮、AAを準備。

 

「うおぉぉぉ?!」

「く、食らって堪るかぁ!」

「冗談じゃないよっ!!」

 

後続を一瞬だけ急停止させる事は出来たが発動時にはキルゾーンに誰もいなかった、これは再展開まできついぞ。

 

ここで俺に対するロック反応が増える、合計「8」個、疑問が頭を過った瞬間回避行動をとったせっしー以外の全員がスラスターやブースターを撃ち抜かれ錐揉みに落ちていく、俺も例外ではない、なんだこの火力は、競技用じゃないぞ。

 

『な、なんですか?! しゅ、襲撃?! ひ、あぁ!!』

 

せっしーは上空を睨みつけてその場で浮かんでいるが、俺たちはそれどころではない。

何とか残ったスラスターやブースターで地面に叩きつけられるのだけは回避しようと必死だ。

 

「ごっ、ぐっ、が、あだっ?!」

「シン!! 大丈夫か!!」

 

残念ながら姿勢を直しきれず地面に叩きつけられ無様に転がったのは俺だけのようだ、皆様運転がお上手なようで。

 

「あぁ、くそっ! 怪我はねぇ! 全員飛べるか?!」

「白式は……駄目だ、片側のスラスターが完全にイカレた、しかもエネルギーも心許無い、出たらただの荷物だ」

「こちらレーゲン、支援砲撃は可能だが同様に機動戦闘が行えない、しかも…あのシールド、外側からはそうでもないが内側からは尋常じゃない強度だ、とてもじゃないが抜けん」

「赤椿は、あぁっ! くそっ! エネルギーが殆どカラだ! なにも出来ん! くそっ!」

 

「こら、女の子がクソとか言うな! 他は!」

 

「打鉄弐式、相当いい腕だね……スラスターコアを抜かれたよ……飛ぼうとしてもウンともスンとも言わない…」

「甲龍! なんでこう中国って!! スラスターをやられた時に連動して妙なところが爆発した! 本体自身にダメージは無いけどこれ外すの一日作業なのよ?!」

「こちらラファール……よし! まだ動く! でも外すのに5分必要だよ! シンは?!」

 

「今再起動中だ、ひと月で作ったからな、行けるかどうか……行けそうだ、だが俺も5分いるぞ!」

 

『…こちら、ティアーズ、支援が到着するまでなんとか足止め致しますわ、ですが……いえ……こちらブルー・ティアーズ、青いイレギュラーを排除いたしますわ!』

 

そう言ってせっしーが襲撃者の開けた穴を潜る様に飛び高高度で戦闘を開始した。

 

『私だ、今そちらに援護を向かわせたが…面倒な事になった、襲撃者は複数人いるようだ、時間がかかる、何とか持ち堪えてくれ』

「こちら籐ヶ崎、セシリア・オルコットに変わり返答する、了解した、AC、ラファール、共に再起動完了後ティアーズの援護に加わる、オーバー」

 

「くそっ、見てる事しかできないのか…!!」

「エネルギーに余剰がある機体はラファールに受け渡しをしろ。簪は他機体のエネルギー受け渡し完了確認後PAを起動して全員の盾をこなしながら退避、いいな?」

「わかった……!」

「シン! 危険だぞ?! お前、簪は…!!」

「分かってる」

「分かってるってお前!」

 

「分かってるッ!!!」

「信一郎! ……信頼してくれてありがとう……」

 

「レーゲン、エネルギーの受け渡し完了だ、残量は最低限スタート地点に戻れる程度だ」

「同じく甲龍、受け渡し完了」

 

簪が俺を見て頷く、再起動完了まであとわずか。

 

「いっちー、モッピー、鈴音と簪を運んでくれ、俺の妻を、頼んだぞ」

「ッ……わかった、なんとしても守る」

 

「馬鹿が、逆だろ、守られろ、その為にエネルギーの受け渡しをさせなかったんだぞ」

 

 

 

 

俺もそうだがシャルりんも相当イライラしている、珍しいが、仕方がない。

 

「早く…早く……っ、早く!!」

「イライラするな、焦っても仕方がない」

「だって! だってセシリアが!! なんだでシンはそんなに冷静でいられるの?!」

「…人に言えた例じゃないがな、俺も相当イライラしてるんだ、生憎今ACにインストールしているのがN-WGⅨ/vだけだ、そうでなけりゃ今すぐ他のを展開して援護に出る」

 

残り30秒、早くしろよ、そろそろ本当にやばい。

 

「そっちはどうだ、こっちは残り20秒だ」

「15秒、御免だけどシンを待ってられないよ」

「構わん」

 

上空をみると青い巨大なレーザーが4つ輝いていた。

 

「こちら籐ヶ崎だ、オープンで繋ぐぞ、可能なら状況報告を頼む」

 

『なっ……!「死ね」あああっ!!』

 

繋いだ瞬間に聞こえる悲痛な叫び声、横を見るとシャルりんが珍しいなどと言えるものではない憎悪の表情を浮かべ、歯を食いしばっていた。

 

「再起動完了ラファール出るッッ!!!」

「オペレーションパターン1破棄、再起動準備、ジェネレーター出力再上昇、オペレーションパターン2、N-WGⅨ/v出るッ!!!」

 

ライフルを投げ捨てブレードを展開、出力をオーバーロードさせ、無理やり軍用まで引っ張り上げる、この巨体を通すためシールドを切り裂きハイブーストで抉じ開け、砕き、部分的に破壊した。

 

視界に通り過ぎ去ったレーザーが湾曲し襲撃者の背に刺さる。

 

崩壊していくブルー・ティアーズ、落ちていくせっしーをシャルりんが抱きとめた。

俺も戦闘区域まで数百メートルのところまで到達する。

 

「セシリア、セシリアッ!!」

「あ、ら……一夏さんでは、ないん…ですのね……残、念……です、わ…」

「そうだ、残念ながら助けに来たのは愛するいっちーじゃなくシャルりんとムカつくあいつこと俺だ」

 

シャルりんと襲撃者の間を遮るように俺が位置して二人の盾になる、APは40万もあるんだ多少攻撃されたところで問題はない。

 

「シャルりん、せっしーを連れて退避してくれ、俺が片をつける、せっしーが文字通り必死こいてダメージを与えたんだ、ブッ潰さねぇと割に合わねぇ」

「ボクも戦うよ」

「馬鹿言え、じゃあ誰がせっしーを守る、それにシャルりんの第3世代兵器、デッドエイミングなら防御に最適だろ」

「ヴィッセモートだって……わかったじゃあ、後は頼んだよ」

 

「任せとけ」

「逃がすか」

 

俺の巨体を避けるようにレーザーが湾曲しシャルりんに殺到する、が、ただの一発として当たることなく弾が自然に逸れて、否、もともと狙っていなかったかのように照準がズレる。

 

「おい、相手は俺だぞ」

「その機体は情報に無い、貴様…貴様は何者だ……!!」

 

シャルりんが離脱したのを確認して正面に意識を向けた。

 

「学園祭の時か、俺があの女と対峙したのは」

 

この一言であの時の事を理解した襲撃者が口元を歪め、ギリ、と歯を食いしばる。

 

「お前?! お前が、オータムを!!!」

 

左腕のレーザーライフルが俺の方を向くのと同時にブレードでをそれを斬り飛ばし、返す刀でマニピュレータの先端を破壊した。

 

「ふむ、腕を斬り落とすつもりだったが、マニピュレーターのみか、存外、面白い相手だ、キヒヒハハ」

「なぜだ、なぜ貴様は……戦いを、殺し合いを楽しめるんだ、狂人の類か、それとも…」

 

「戦いの中にしか、俺の役立つ場は、存在する意味はない。好きに生き、理不尽に死ぬ。それが俺だ、チカラの有無ではない。戦いはいい…俺には、それが必要なんだ」

 

「…化け物が…!!」

 

大きく後退して残ったライフルを俺に突きつけ、ビットを周囲に展開した。

 

『シン君、聞こえる? 戦闘しながらでいいわ、今から言うとおりにやって頂戴』

 

レーザービットの攻撃を装甲で弾き、敵のライフルをブーストで回避、ミサイルを撒きながら戦闘を行っていると母さんから通信が入る。

 

『もうすぐIBISがシン君のACにセラフをインストールするから、インストールが完了したらセラフで無力化して彼女の第2頸椎、軸椎に埋め込まれている機械を能力で取り除いて頂戴』

 

…What?

 

「一体なんの事情かは知らんが、まぁ、いいだろう……来い襲撃者、遊んでやる」

「貴様ァッ!!」

 

 

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 

 

「舐めるな、舐めるなァッ!!!」

「舐めてなどいないさ、ただ純粋にスペックに差があるだけだ、まぁよく頑張った方だな」

 

残りAP33万、TEだけで7万も削ったんだ、十二分だ。

画面を見ていると右上にインストール完了の文字が現れる。

 

「さて、もう時間だ、遊びは終わりだ。ナインボール・セラフ」

「ふざける―――」

 

セラフを起動した瞬間にビットを全てミサイルロックし射出、右腕のライフルを光波で切断、一瞬で近寄ってマニピュレータを握り潰す。

 

「―――な……?!」

「言っただろう、遊びは終わりだ」

 

周囲にビットを配置しレーザー照射エネルギーをモニターしつつゆっくりと調整、残り1桁で止め細心の注意を払いながらエネルギー残量を0にした。

訳も分からないといった様子の襲撃者の首を解除して生身になった右腕で絞める。

 

「あっ…?! ぐ、がぁ…!!」

「……眠れ」

「かふっ、かふっ……か、ひゅ………――――――……」

 

パクパクと口を動かす襲撃者がそれを最後に気絶した。

酸素を求めるように俺の腕を引っ掻きながら口を動かしていたが最後だけは意味あり気にこう口を動かした「おにいちゃん」と、ISを解除したその姿はちっふーをそのまま幼くしたようにしか見えない。

能力で言われた通りXレイでモニターしながら脊椎にある機械を引きずり出す。

 

仕方ないが所謂お姫様だっこをした状態で右手の中にある小さな機械を見つめる、解析した結果微弱な電気を流すのと石ころ一つ壊す事も出来ないが場所を考慮すれば十二分に人を殺せる爆弾だった。

 

「……あぁ、くそっ、若干殺す気だったのになぁ、こんなもんで無理やりやらされてたってか、胸糞悪ぃ」

『…終わった?』

「終わった……だが、計画済みだったって事? もしそうなら十分納得行く説明をして欲しい、こちとら友人が重傷を負ったんだ」

『うん、ごめんね……?』

「それに、こんな小さな子に無理やり殺しを強要するなんざ、到底許せるもんじゃねぇ、反吐が出る、胸糞悪ぃ、原因をぶっ殺してやりてぇ……ッ」

『うん、うん……その事でも、あとでちゃんと話をするから……その子は私達が拘束する事にするわ…』

 

ちゃんと呼吸していることを確認して能力で毛布を作り出し女の子を包んで移動を始めた、イライラしたせいか目の奥がズキズキと痛む。

小さな女の子の寝顔を見ると胸を貫かれた少女の顔がフラッシュバックする。

 

「ッ…!! 世界の経済は…安定したんじゃねぇのかよ……世界中の人間が、一端の暮らし出来るようになったんじゃねぇのかよ、クソッ……」

 

ガラでもなく、涙が出そうになった。

 

 

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 

「……どう言う事か、説明していただきましょう」

「今回の襲撃者は以前カラードへと襲撃を行い、物資等を強奪して行きました、ゆえに尋問する為、我々カラードが身柄を預かります」

 

椅子に座る学園長とその両隣りに佇むちっふーとたてにゃんこと義姉さん、そしてそれに相対するように正面の椅子に座る母さんとその両隣りに佇むベルリオーズとなぜか俺。

 

いや、おかしくない?

 

ベルリオーズは分かるよ? カラードのネクスト最高戦力であり対人格闘技も極めてるからね、でもなんで俺?

せめてさー、レイをさー、連れてこようよ―。

ほらあの義姉さんの顔! 裏切ったのねと言わんばかりのあの顔!!

 

どうしようもない気持ちになってもう最早どうにでもなーれ☆

 

「今回の襲撃で我が校の生徒が重傷を負いました、襲撃を受け、戦闘になった原因はそもそもがシールドの外部からの耐久性ではなかったのですか?」

「あれは内部からはレベル5相当、外部からもレベル3相当の強度で作ってあります。そうしろと仰ったのはあなたではありませんか?」

 

両者一歩も引きません、胃が痛い、そうして顔をしかめているとベルリオーズが顔をこっちに向けずに何かを渡してきた、受け取ってそれをみると胃薬だった、優しい。

水なしで飲める奴、嬉しい。

 

カプセルをごくりと飲み込んで同じように顔をしかめていた正面のちっふーに投げてパス、助かったと言った表情を作って同じように飲む。

更に回ってたてにゃんへ、これもまた飲んでベルリオーズへパス、涼しい顔で受け取って後ろで手を組むような自然な動作で直した。

 

 

 

この耐久戦を制したのはカラードだった、中々手に汗握る戦いで周囲4人の胃袋に多大なダメージを与えて行った。

 

「お疲れさまでした、信一郎様」

「いや、ありがとうベルリオーズ、助かったよ」

「私共も、助かりました、ありがとうございます」

「えぇ、本当に、ありがとうございます」

 

「なんであなたたちは、そんなに仲がいいんですかねぇ……」

「いいではありませんか、では、約束通り彼女の身柄は我々が、勿論約束通りそちらの監視もお受けいたします」

 

さて、やることが多いわ、と言いながらベルリオーズを引き連れて歩いて行く母さん、近日俺が社に戻った時説明すると言っていたが、はたして……。

気になるのは隣にいるちっふーだ、本当に瓜二つだったが一体……?

 

「ちっふー、差し支えなければ一つだけ聞きたい、ちっふーの兄弟姉妹は本当にいっちーだけなのか?」

「なんだいきなり不躾に、そうだ…間違いなく私の家族も、弟も、一夏しかいない」

「……さよか」

 

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 

「いやぁ隊長! ヤーパンはいいですね、素晴らしいですね! 敬愛する我らが隊長にお会いできるし、可愛いにゃんこぱじゃまも見れたし!! アキハバラなんてもう最高です!!」

「……そうか」

「むっすーとしないで、ほぉらニッコリして下さいよ、にっこにっこにー☆」

「最近な、知ったのだ、お前の入れ知恵は間違っている物が多いと」

「えっ?! そ、そんな馬鹿なぁー、ねぇ隊長、そんな事ありませんよー、だって私達黒兎隊は隊長の事を心から敬愛していますからっ!」

「うむ、それは分かっている、だがな、教えられたのだ、少し遊ばれているぞと」

 

「だっ、誰がそんな事を?!」

 

「私だ」

「お前だったのか」

「あ、そう言うのいらないです」

「アッハイ」

 

そこまで全力でボケられても、その、なんだ、困る。

 

「なんですかぁ? あぁなぁたぁはぁ? 何我らの可愛い隊長に警戒心与えちゃってくれちゃってるんスかぁ?」

 

お? お? とか最近見ないヤンキーみたいな事をしてくる残念美人。

 

「カラードの籐ヶ崎信一郎、私の友人でドイツに多大な利益を与えてくれている人間だ」

「…たぁいちょぉ、もうちびぃっとマシな嘘付いて下さいよ、籐ヶ崎信一郎て隊長と同い年ですよ? 高校1年生ですよ? こぉんなオッサンなわけwwwww」

「………………ハルフォーフ大尉」

「……マジすか?」

 

たっぷり10秒俺を指さして形容しがたいギャグ漫画みたいな顔をしてダラダラと汗を流し始める。

 

「しっ、失礼いたしましたァッ!!! 籐ヶ崎信一郎様ご本人とは露知らずとんでもない御無礼をッッ!!!」

 

びしりと敬礼をするがもう何もかもが遅い、ヒ○コーの描くギャグシーンみたいな顔をしている。

らうりーは全身全霊で溜息を吐きゆっくりと首を横に振る。

 

「すまない、籐ヶ崎、クラリッサは、いい奴なんだが……こう、少し……残念でな」

「いいよ、慣れた、まぁそれとは別に少々お説教と行こうか、らうりーここで待っててね、お菓子食べてていいから」

「うむ、お手柔らかに頼む」

 

 

 

 

 

らうりーに女性としての羞恥心がなかった事について説教したり変な入れ知恵のせいでちぃとばかし危ない目に遭いかけたりした事に対して説教をしたりすると俺の評価が「怒らせたら教官とは別ベクトルで凄く怖い人」になった。

 

「―――でだ、それによってらうりーが裸で男のベッドに潜り込むなどと言う恐ろしい事が…聞いているのか?」

「はひ、はひぃ…!!」

「―――それに、この前なぞ―――」

「は、ぁん、は、ひぃん……」

「――――真顔で何も知らず下ネタでも特にヤバいのを――――」

「んぅ、んぅぅぅ………」

 

「あし、いたくて気持ちいいのぉ…」とか言いだしたあたりで流石に説教を終えたが立った時に全力で足が痺れて痛かったらしく虚しくも「開眼」してしまった事は完全に余談である。




ピコンと可愛らしい電子音とともにディスプレイの右下にデフォルメされた篠ノ之束が電話の受話器を掲げる。
クスリと笑みを浮かべた女性がその受話器をタッチ、通信画面を開いた。

「はろはろ! れーらさん! 束さんだよ!」
「えぇ、こんにちわ、束ちゃん、なんの御用かしら?」
「れーらさんに相談っ!」

にっこりと微笑んだ麗羅がどうぞ、と促す。

「あのねっ、れーらさんなら知ってるかな、ISが何のためのものか」
「えぇ、宇宙開発用のパワードスーツ、そうでしょ?」
「せいかーい! でもね、束さんはあの子たちを紹介する術を間違えちゃったんだ」
「束ちゃん、じつはね、私達カラードのACはね? 宇宙空間で活動できないようにしてあるの、それにACは元から兵器として作ってるわ」
「え? てことは、もしかして、最初から?」
「そう、最初からISを兵器じゃなくて宇宙開発用パワードスーツにする為」
「あ、あぁ! れーらさんありがとう!! 大好きっ!」

いまいち要点を得ない会話、相談であったがコミュ症の彼女はこれが精いっぱいだったのだろう。
あの子も頑張っているんだ、そう思うと少し、嬉しく感じた。
だから望むようにしてあげよう、社に置いてある福音以外のISは全て武装を解除し宇宙開発の為だけに使おう、そう決心した。



などと言うどうでもいいチョットした、いいお話。
みんなみんな幸せになぁ~れ☆

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