コジマ汚染レベルで脳が駄目な男のインフィニット・ストラトス   作:刃狐(旧アーマードこれ)

30 / 42
負けるわけねぇだろ! いくぞぉぉぉああ!!
今回挿絵ありでございますがいつもの如くあまり上手ではありませぬ、ご容赦下さい。


扱い辛いパーツとかって話だが、最新型がなお話【挿絵追加】

さて、いっちーが怪訝な顔をしているな、まぁ外見だけで言えば今まで見たことのないパーツだらけだからだろう、それも複数のバリエーションからなるUCR-10シリーズと違い完全新規だ。

 

「おいシン、それ腕離れすぎじゃねぇ? 千切れてんじゃねぇの」

「あぁ、前にも似たような説明しただろ、量子変換してるって」

「そう言えば、じゃあ始めるか」

「おうよ、さてカウント起動」

 

どうやら腕パーツの接合部だけに目が行ってたらしい、もっと見るべき所があるだろうに。

残りカウント5、4、3……

 

「行くぞッ!」

「くんな」

 

開始と同時に腰だめに刀を構えて姿勢を低くしたいっちーに背を向けず全速で後方へグライドブースト、あっズリィ、と言いたげないっちーに構わずスナイパーライフルを撃ち始める、こちとら狭めのFCSだから高速機に寄られる訳にはいかんのだよ、サブコンも積んでねぇし。

 

「あっズリィぞ!」

「本当に言いやがったよこいつ、遠距離機が近接機に寄るわけねぇだろバカか」

「そりゃそうか!」

 

距離を詰めようと飛び廻るいっちーから逃げるようにGBにHBを織り交ぜながら、エリア端の壁(チャチなワイヤーCG)でブーストドライブを使用して消費ENを節約して逃げ回る、一次ロック警告と同時に横へとHBをして荷電粒子砲を回避、機体制御や近接戦闘に関しては凄まじい練度を見せ付けてくるが遠距離装備に関しては素人もいい所だ、殆ど何も考えず二次ロック完了と同時に撃ってくる為HBの最高速度時に発射されHB終了時に着弾する頃には着弾点は10メートル以上向こうだ。

 

対照的にこっちはこういうピーキーな戦いに離れている、全弾着弾はもういっちーには無理だが確実にHITを奪える。

まぁ尤も、いっちーが被弾も考えず一直線に突っ込んでくればこの機体の最高速度では逃げ切れんのだがな。

 

「ふむ、このままじゃ新装備のお披露目も出来んじゃないか、もっと粘れ」

「クソ、的確に避けやがって!」

「じゃあまずはそのトリガーハッピーに近い癖を治せ、確実に相手に当たる時に引き金を引け、お前のソレが当たった例など数える程しかないじゃろうて」

「老人みたいな喋り方になってるぞ!」

「すまんな癖になった」

 

いかんいかん、だがまぁこれで問題が出るような癖ではないし治さんでもいいだろう。

 

「さぁて簪、いま観客はどんなもんだ?」

「へぁ? 観客?」

「えーと……、15人ぐらい……かな……?」

「上々だ、さぁいっちー気張れ、俺に一撃も当てれず落ちれば大恥をかくことになるぞ」

 

まぁこちらは戦法を改めるつもりはないがね。

 

「リスクなくやるのが、俺の主義でね。つまらん戦いになると思うが、勘弁してくれ。負けるのは嫌なんでね、悪いが、いっちーが負けてくれると助かる。キヒャハハハッ」

「ええい、この際プライドは抜きだ!」

「馬鹿正直に突っ込んでくるとは、正解だ、だが……」

 

変形機構作動、ライフルを持った腕をそのまま折りたたみ後部へとスライドさせる。

武器を収納した今がチャンスと踏んだのか瞬時加速を作動させて両手で刀を持ち向かってきた。

こちらも後ろへハイブーストを噴かせつつ畳んだアームをロック、肩パーツから起動したアームマニピュレーターで肩上後部の「持ち手」を掴み深く差し込むように接続、即座にロックし固定パーツを解放。

展開時に自分のパーツと接触しないように角度を調整し。

 

「オォォォォォォォッ!!」

 

逆袈裟斬りで振り上げてきた刀に叩きつけるように展開、いっちーの手から刀を弾き落とし即座にブーストチャージ、距離を取る。

自動で刃が砥がれ、火花を散らした。

 

「な、なんだよ…それ…!!」

 

すると周囲かららうりーを筆頭に大歓声が上がる、どうにも皆様方は男臭い趣味をお持ちのようだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「扱いづらいパーツとかって話だが、最新型が負けるわけねぇだろ! いくぞおおぉぁあ!!!」

 

いっちーが体勢を立て直すよりも先に突っ込んで斧のような形状の巨大なブレードを叩きつける。

だがまぁ流石とは言うもんで左手の爪が装着された装甲で根元を押さえられ威力を削られた。

荷電粒子砲が俺のほうを向くのを確認すると同時右腕のブレードで砲口を全力で弾き上げると砲口が破片を撒き散らし飛んで行く、バカみたいな威力だな。

 

まぁ相応に重いため両手を使った攻撃の後はブレードを即座に再度扱えないんだがな、砥いでる隙を狙われないように脚部出力のみの蹴りで横へとずらし、砥ぎ終えたブレードを両手連続で左へと切り込む。

 

曲芸の如く刃の間を通り抜け回避される、突き出された爪が俺のコアに食い込む、咄嗟の物だろうが到底ダメージは無視できる物ではない、どうやらあの爪はTE属性らしい、そう何度も喰らうわけにもいかん。

不要と断じたスナイパーライフルをパージ、左側にAMAGOROMO mdl.1 右側にAM/SHA-109を展開、左に振り切ったブレードを×印を描く軌道で右へと全力で振る。

再度曲芸染みた起動で回避される、が、この程度想定の範囲内だよ!!

 

即座に振り切った力を殺さず背面をいっちーに向け突き出された爪を天衣で受け無力化、驚きの声を上げたいっちーを確認するよりも早くブースターの向きを調整しブレードをいっちーに全力で叩き落す。

防御の間に合わない白式の肩にブレードが食い込み隕石もかくやと言う速度で地面へと叩きつけられた。

 

一切合財何もかもを込めるようにブレードを砥ぎ白式が落ちた方向へGBとHBをエネルギー全て使い潰す勢いで突撃、地面で仰向けになった白式の右手が何かを掴んでいるかのような形状をしている、直感的にヤバイと感じぐるりと半回転、光の粒子が細長い形状に変化し俺を穿つかのごとく突き出された。

 

咄嗟の賭けは俺の勝ち、突き出された刀身の輝いた雪片弐型は背部のKEシールドに突き刺さり、俺へのダメージを0へと消す。

回転の勢いも乗せ右手を突き出された白式の身体へとブレードを叩きつけ装甲を砕き完全に破壊した。

 

「ク、キヒャハハッ! 残念だったな、俺の勝ちだ」

「だァーッ! 負けた! てかズリィぞ! 使うのはスナライだけって言ったじゃねぇか!」

「いや嫁よ、今のは文句無しに籐ヶ崎の勝ちだ、まずは遠距離からの攻撃に徹するのは対近接格闘機の鉄則であり、その後の武器使用も使ったのはブレードと盾のみ、籐ヶ崎の言った通り使用する「銃」はスナイパーライフルのみと言う条件から外れてもいない」

「違うんだラウラ! 何よりもズルイのはシンの使ったブレードが格好よすぎるんだよ!! 俺のだってそんなに格好よけりゃあいいのに!!」

 

あぁ、ズルイってそういう。

 

「うむ、まぁ格好良いと言うのは全力で肯定しよう、籐ヶ崎から聞いた話ではスナイパーキャノン、レーザーキャノン、そしてたった今使用したブレードの他にも幾つか種類があると聞く、今まで見た全てがなんともいえない高揚感を生んでな、是非とも全て見てみたいところだ!」

「まぁそれは機会があればな」

「機会って……今さ……!」

 

と簪が呟いて十数秒以内に打鉄弐式が電子空間内に出現、じょ冗談じゃ。

どうやらビジュアル設定も弄ったのかちゃんと中身もある、ふんすと意気込む簪がこわいい。

 

「面倒くっせぇのは嫌いだけどよー、こんな面白そうなもん見せられてまだあると言われたら、なぁ? フォルテ」

「そうっスね、見たくもなるっス」

「カラードの技術力がアタシら二人の代表候補生で専用機持ちに通用するかも気にはなるしよぉ」

「久々に楽しそうっス!」

 

との会話と共に出現する二つの専用機、俺の記憶が正しければコールドブラッドとヘルハウンドver…何かだろう。

冷血動物と地獄の番犬とは、勘弁していただけませんか。

カラードの情報では二人ともスティンガーみたいな人間と聞いていたんだが、管制室ちゃんと情報を伝達しろよぉ!

 

「では私も加勢するとしよう、先輩の胸を借りるつもりでな」

「らうりーは俺の仲間になってくれるのか!」

「そんなわけないだろう」

「何このHカーパルスより酷い状況、オールドキングをくれ」

 

眼前には白式、打鉄弐式、コールド・ブラッド、ヘル・ハウンド、シュヴァルツェア・レーゲンと見事に特化だの機体性能が異常に高かったりだの操縦技術がぶっ飛んでたりだのサポート機だのとヤヴァイメンツが勢ぞろい。

 

『ではせめて私だけは加勢致しましょう、姉の勤めです』

 

と空間に声が響き俺の横に一機の四脚が姿を現した、アルゼブラのコア、同皿頭、軽四脚、ローゼンタール腕部。

あら俺のお姉ちゃん、どうしてこんな所に。

 

「お、義姉様……?!」

『はい、そうです。簪様……いいえ、簪と呼ぶべきですね。改めまして皆様、始めまして信一郎の姉でございます』

「……IS学園の生徒…?」

「いや、これは……俺のパーツ通して接続してるな…」

『言葉など既に意味を成しません、見せて頂きましょう、皆様の力を』

 

勝ち確、やったぜ。

 

戦闘開始のブザーと共に我が姉が残光を残して消えた、ヤバイ。

 

「な、何だ?! っぐ! 後ろか?!」

『残念でしたね、側面です』

「くっ!」

『今は背後です、どうしました、織斑様? 私を捉えられませんか?』

 

いっちーがグルングルン周りを見ながら仰け反ったりしてる、えぐい事をする…。

 

「だ、駄目だ…速過ぎてAICで捕らえられん…!!」

「んじゃまあ織斑君が足止めしてくれてる間にアタシ等は籐ヶ崎君を狙うとすっかぁ」

「っスね、さぁて覚悟するっスよぉ!」

 

RDみたいな喋り方しおってからに!

 

「WAB-123! 換装Fs-L-E28!」

「なんなのかはよくわかんないっスけど取り合えず突っ込んでボコりゃイイって先輩が言ってたっスよ!!」

「オイ、アタシそんな事言った覚えねぇぞ」

 

手を腕部装甲に引き込みロック、さらに腕部を畳み込み後部のパーツを90度旋回させ垂直にし、前方へと迫り出させる、同時に前部にあった装甲を下部へとスライドしミサイルサイロを開く。

 

連装ミサイルを喰らえっ!

 

「うえぇッ?! それミサイルっスか?!」

「慌てんなよ、こう大した数でもねぇだろ」

「め、面食らっただけっスよ!」

 

ち、畜生、なんてこった…的確に打ち落とされてやがる、流石は先輩方で専用機持ち、代表候補とはかくも剛の者か!

セラフで余裕の粘り勝ちしたけどガチでやったらたてにゃんに技術で勝てるビジョンが浮かばねぇ。

この二人相手でも余裕なんだろ、IS学園は化け物だらけか!

 

「あらぶる俺のミサ腕! 全弾撃ち尽くすぞぉぉぁああ!!」

「何だこれ! おもしれぇ! バカスカ撃ってきやがる! だっははは! あたし等二人係でも迎撃で精一杯か! 最ッ高! 惚れるねェ!」

「うっひィ! 冗談じゃないっスよぉ! こういうの苦手なんスから! もっとグワーッと行ってズバーンのドッコーン! ってのが私等のやり方なんスよ!」

「うっひょぉ! 攻撃回避しながらミサイル垂れ流してるだけなのにアドレナリンどばどば出てきやがる!」

 

いっけー等と軽くラリっていると処理限界を超えてきたのか滞空しているミサイルが目に見えて増えてきた、たった今俺が空中に放り出したミサイルとは別に48機のミサイル。

あのねー、なんかねー、こっちに飛んできてるのー。

 

「簪の山嵐だこれぇぇ!」

「騙して悪いけど……これも仕事だから……落ちてもらうね…?」

「あぁぁぁァァァ! 俺の嫁本当に可愛いなオイィィ!!」

 

必死でミサイルから逃げるもかなり的確に俺を追ってきやがる、これ絶対簪がサポートしてるわ。

 

「Wa-V-S11!」

 

リボルバーマガジンのような円柱のパーツと周辺の幾つかのパーツが腕のジョイント部を支点にするように下部へぐるりと回り残されたパーツの砲口が90度回転し、固定用のニードルが一度反対へと突き抜けるようにスライド、続いてそれを纏めるパーツがスライドし前方へと移動。

その後そのパーツ群自体を纏めるパーツが武器を保持する用途の腕部と共に上へと大きく伸び、最初に下部へと回ったパーツ自体も伸ばされるように上部へと移行する。

砲口が180度回転、それに付いて行くようにニードルも前方を向く、リボルバーマガジンと砲口が接続されニードルが固定の為そのパーツを突き刺し固定。

纏まって完全な形となった武装とコンパクトに折りたたまれた腕部と交差するように前後へと移動、ジョイントごと固定された。

 

「ヤバイヤバイおもしれぇ! 最高におもしれぇよ! なぁフォルテ! 見たよな! よなぁ!」

「えぇ見たっスよ! あはぁ…! なんだか興奮してきたっス! 下腹部がアツくなってクるのが堪んないっスよぉ…!! 欲しい、あれ…欲しぃっスぅ……」

 

ギラッギラ目を光らせて俺を指差しながらヤバそうな笑みを浮かべる三年生と内股になって片手で下腹部を押さえながら目をトロンと蕩けさせさっきとは違うヤバイ笑みを浮かべる二年生、アクアビットのリーダーことフレデリカを思い出す。紹介したら意気投合しそうだ。

 

「応! 撃ってやる、撃つとも、撃つともよう!! ヒート! ショットォォォォッッ!!!」

 

詰まる所HEAT弾のショットガンだ、弾自体が糞デカイ上に滞空時間が長いからミサイルの迎撃には持って来いだったり……しない、一応当たったらいいな気分で撃つに限る。敵自体に当たってもダメージは期待できない、瞬間火力も総火力も心もとない、相手がビビルだけ。

 

「駄目だ、ドク…ミサイルに当たらん」

「んくぅぅっ♡ んぁあ? 全然痛くないっス、んあっ♡ でも、小さな刺激が…ひぃん♡ これはこれでイイっス……」

「よろしくない! 股間に対して非常によろしくない!!」

 

ミサイルに当たらずその向こうに居た二年生の先輩に直撃、案の定痛くはないらしい、人に優しい兵器、弾薬を競技用に制限しているからと言うのもあるが。

かわりにこっちの股間が痛い、若くなるってのはいい事ばかりじゃない、意識させねば起動状態とならなかったエーレンベルグ掃射砲がもはや懐かしい。

 

これは何よりも優先して落ちて貰わねば俺のアレに係わる、尊厳とか、名誉とか。

 

「やっぱKEシールドって、侘び寂よねぇ~、っつーことで防御増し行こうか! AM/SHA-207!」

「シールド増設か、それからどうなると言うのだ籐ヶ崎!」

「俺の記憶どおりだと確か簪のミサイルって破片を撒き散らすタイプだと記憶してるんだよな、ならKEゴリラで何とかなるだろ!」

「残念……どっかーん……」

 

と俺の周囲でミサイルが次々と炸裂、VTFミサイル…いや、遠隔爆破か?!

 

「なぁっ?! シールドが融解した?! しかも…何だコイツ!!」

「ふふ……信一郎以外には飛んでいないでしょ……? クレイモア地雷を参考に……指向性を持たせているの……ミサイルの内部8方向と前後にC4が設置されてて……ターゲットと反対方向のC4が炸裂……内部のIS用の特殊スパイクベアリングがターゲットに飛んで行くの……、そして物理耐性と熱エネルギー耐性を両方とも高水準で保つのは難しいって……MSACの主任さんが教えてくれたから……プラズマミサイル……積んじゃった、てへ」

「ぐ、うお、俺の嫁が可愛くてこの戦闘が辛い…!! クソ、APがヤバイ…! ええい、この際プライドは抜きだ!! ブルーマグノリア!!」

 

「あっ……ズルイ……!」

「かーらーのー、MINORI mdl.2! パルスキャノンだッ!」

「機体の頭部とカラーリングが変わっただけか、まぁいい、あと少しなんだったっけ?」

「違います……! また最初からやり直し……全回復しました……!」

「ハァッ?!」

「ンハァッ♡」

 

さて、戦いはこれからだ、どれだけダメージを与えても落とす事の出来ない理不尽な戦いを教えてやる。

まだだ、まだ俺は戦える…!

ここが…! この戦場が、俺の魂の場所だ(こ     こ     た     ま)!!

 

「ふぉるるん先輩、まずは股間によろしくないアンタに落ちて貰う、逃がしはせん、逃がしはせんぞぉぉッ!」

 

恍惚とした表情で若干涎を垂らしつつ時折ビクンと痙攣するふぉるるん先輩へハイブとグラブを組み合わせつつ近付いて行くが信じられんことにその状態でも悠々と俺のキルゾーンから逃れるように回避し、銃弾を俺にぶち込んでくる。

しかもらうりーのレルキャやらもう一人の先輩が高速で突っ込んですれ違い様に攻撃しては去って行く、AIMさえ出来やしねぇ、何だこれ。

 

「信一郎……私だけ見てくれなきゃ、やぁ……」

「ぐ、ぉあ…!! メインブースターがイカれただと?! 荷電粒子砲! 出力を上げて単発にしたか! 2対6で簡単に勝ったあの頃が懐かしいぞ!」

「これは…貰った、籐ヶ崎!」

 

背部メインブースターを潰され速度が落ちたところにレールキャノンが直撃、パルスキャノンが破損、してやられた。

 

「WAB-219!」

 

腕部を伸ばし引き込み腕を固定、肩関節ごと背面へと移動させ後部のミサイルサイロを前方上部へとスライド、ロックと同時にそれぞれ外側45度傾き、それに連なってサイロが開き、全ての発射口が次々と開かれる、その姿はまるで。

 

「ピザ、お届けに参りましたーッ!」

「み、ミサイル?!」

「ずるい…! 凄く苦労したのに……!!」

 

片っ端から近くにあるISへと群がるASミサイル達、今週のビックリドッキリメカだ。

 

「あびゃぁぁぁぁ!」

「何だ今の声?!」

 

珍妙不可思議な叫びが聞こえてきたと思えば視界の上部に出てくる[ENEMY DESTROYED]の文字、俺は落とした覚えがないのでどうやらついぞいっちーが落とされたらしい。

 

『ただいま、シン』

「早い(確信)、被ダメは?」

『被斬撃回数0 被弾回数0 至近危険回数0 被ロック回数3 ダメージ0』

 

「最初から勝つとは思ってなかったけど……。腕の一本でも道連れにすればいいものを……!」

「散々な言われよう、俺心が折れそうだ」

 

HMDに映るバトルアリーナで全く見えないが筐体越しのいっちーがずぅんと重い声を出す。

 

『さて皆様、覚悟は出来ましたか?』

「くっ…! ならば…!」

 

すると直後、らうりーが反転、レールキャノンの砲口を姉さんへと向け射撃、音速を遥かに超える銃弾を射撃されてから回避した姉さんが銃口をらうりーへと向ける。

 

「私が相手をする! 更識! 先輩方は今のうちに籐ヶ崎を!」

「アッハ、アハハハハ!! 最高だぜドイツの! 格好いいねェ!」

「するゥ…♡ 私、あれの相手ぇ…♡ あっ、あ…ィ……、っくぅ…♡」

「まだ試作実験機だが……仕方あるまい…! 今ここでお見せしよう!! プロトタイプネクスト、00-ARETHA!!!」

 

と、同時にエラーが発生、試作段階だからと言うわけではなく純粋にコイツはデカイのだ。

俺がいつも使っている近IS型ACではなく通常型ACに近いがそれよりもデカイ、しかもコクピットタイプなのが災いしたのかアリーナ全体が赤く発光しエラーを全員に知らせる。

 

「な、何だコイツ…?! デケェ…!!」

「20メートルは……確実……!」

「んひィィィィィ♡♡♡ あっ! あぁっ♡!! らめぇぇぇぇぇ♡!!」

 

2年生の先輩が全力で仰け反って痙攣したかと思えばホログラムが消え[ENEMY DESTROYED]と表示される、何もしてないのに一機落ちた。

 

……いや、堕ちた?

 

「……フォルテ、後でちゃんと掃除しとけよ…」

「ひゃぁい…♡」

 

やっぱり股間によろしくない、だがそれもこれまでだ! ……どうかテントが張られていませんように…。

 

「あぁ~、負荷やべぇ…データ上の接続でこれかよ、これ実際乗ったら並の人間は廃人だぞ…」

「そ、そんなものを?!」

「まぁ、実験の為だ、仕方ない……行くぞ、簡単に折れてくれるなよ…!」

 

右腕の五連装ガトリング(バレルが5本ではなくガトリングが5つ)を持ち上げ射撃を開始、撃てば撃つほど照準が広がりまるでショットガンを撒き散らし続けているようだ。

ロック警告が発生した瞬間横へとクイックブーストで移動、それだけで頭を掻き回されたような痛みが走り視界がぐらつく。

 

「ご、お、あ…!!」

「き、消えやがった?!」

「信一郎…!!」

「大、丈夫だ!! これは…必要なんだ…!」

 

歯を食い縛りガトリングを撒き散らしながらレーザーライフルを射撃、俺を見失っていたらうりーに直撃し莫大なダメージを与えた。

 

「ならせめて……すぐ、すぐ…楽にしてあげるから……!!」

 

俺の「回避の癖」を熟知していた簪が移動した場所を予測し即座に俺をロック、それと同時にミサイルを一斉射出。

しかし搭載されているオートミサイルジャマーがミサイルのシステムを狂わせ全て見当違いの方向へと飛ぶ。

 

『ラウラ・ボーデヴィッヒ様、申し訳ありませんが遊んでいる暇は無くなりました、オペレートパターン変更、殲滅モード起動、行きます、逝って下さい』

「なっ…?!」

 

姉さんがモード変更をした瞬間動きが目に見えて…無い…、見えない!

ただ急にそこらじゅうロケットが爆発を始めたのでまぁ今相当やばいんだろう。

 

ゆっくりと先輩へとヘッドパーツのカメラを向け、手に持った巨大なコジマキャノンを構え、チャージ開始、脚部のバンカーで脚を固定、関節部を次々とロックし反動で吹き飛ばないよう自分を固定。

過剰に漏れ出したコジマエネルギーが砲身横の突起部から噴出し砲口自体にも莫大なエネルギーが充填され始める。

 

トリガーを引きコジマキャノンを発射すると本来反動の無いはずの射撃で左腕が後ろへと引っ張られる、全身の関節部をロックしたお陰で少し体を後ろに持っていかれるだけで済んだ。

 

全身の間接部ロックを解除し、バンカーを引き抜きコジマキャノンを回避した先輩のほぼ密着位置までクイックブースト、ジェネレータを瞬間的に自爆寸前まで稼動させエネルギーを一気に放出する。

 

「逃げて……ッ!!」

「な、んだコ―――」

 

本来AAはコジマエネルギーを周囲に放出させ、空間を作り、その内部でエネルギーを乱反射させてシールドを剥ぎ取り莫大なエネルギーによるダメージを与える物で、空間を作った濃い膜が緑色の球体に見えるのだ。

 

コレは試作の機能やテストの為に作られた戦闘用ではない物を無理やり戦闘用にした試作型実験機、コンセプトは「出力特化」この一言だと何もおかしくは無いが先程のAAの例で言うならば。

ただ通常では出し得ない莫大なエネルギーのコジマ粒子を膜も作らずにただ爆発させる、それだけだ。

だがそのエネルギーは尋常ではなく、最早緑の球体ではない、白い爆発にしか見えないのだ。

 

攻撃力はAAアンプを装着した、などと言うものは比べ物にならない。

 

証拠に今まで無傷だった先輩の姿はもう無く、ただ視界上部に[ENEMY DESTROYED]と表示されるだけだ。

 

「なんだよそれ! 馬鹿げてるじゃねぇか! ただのキチガイだぜそれ! く、クッハハハ! あー、負けた負けた! 面白ぇもん見せてもらったよ、サンキューな!!」

「……………………」

 

しかし反動も物凄い、意識が朦朧とするのとジェネレーター出力が通常に戻るまで一切の行動が出来ない。

 

「こんな、もんかねぇ……じゃあ、本気…出すか、ァ!!」

 

能力を使用し自分の処理能力を上昇させ、痛覚を排除する、データは取った、あとは十全にこの機体を扱うだけだ。

 

「信一郎…!!」

「『痛覚を遮断し、処理能力を上げた、もう問題ない、だから』心配するな、すぐに終わらせる」

「ッ!!」

 

クイックブーストを連続で使用しガトリングを撒き散らし続けながらクイックブーストを連続で行った後の一瞬のクールタイムでレーザーライフルを撃ち、再度クイックブーストでロックを外す。

 

しかし簪も流石更識、こと対個人に置いてはらうりー同様研ぎ澄まされたものを感じる、てかガト以外当たってねぇ。

不意を付けば行けるんだろうがどうも難しい、んでこの試作機ってクソ分厚いPAしてる割にAP自体は低めなんだよな、こっちも簪の攻撃は殆ど当たっていないがジリ貧だ。

 

「埒が明かない……ね…!」

「あぁ、そうだな、もう逃げるのは止めにする」

 

急停止し、ガトリングを簪に向かって投げ飛ばす、当たればいいな、だったので簡単に避けられても泣かない、泣かないったら泣かない。

 

「もうこれで…終わってもいい…」

「一体何を……!?」

 

コジマキャノンの砲口を簪に向けジェネレーター内のエネルギーの95%を全てキャノンに流し込む。

さっきのAAの使用エネルギーが60%だと言えばこの恐ろしさが分かるかな?

 

砲身が赤熱し、白い光があらゆる場所から煙のように漏れ出す、普通は噴出すはずのエネルギーを無理やり押し込み、充満させているのでいつ爆発してもおかしく無い。

 

「だから、ありったけを…」

 

砲身からリンリンと鈴を鳴らすような音がする、強度限界が来ているのだろう、じゃあ、行こうか。

クイックブーストで残った5%を使いきり簪の目の前で急停止。

 

「This way...」

「しま……ッ!」

一気にエネルギーを放出して擬似エネルギーブレードの刀身を叩きつ――――――

 

 

ぶつん、と言う音と共に視界が真っ暗になる、なんだ?

 

「なんだ? 目が逝ったか?」

「…私も……真っ暗で見えない……」

「む、私もだ、残りエネルギーが100を切った瞬間に真っ暗だぞ」

 

どうやら俺だけじゃなく接続してた全員がそうらしい。

HMDを取り外してみるとPCの電源が切れている。

 

「PCのスペック不足か」

「……一台一台がスパコンレベルで……6台連動させてるはずなのに…」

「やっちゃったぜ☆」

 

うっひっひ、と笑っていると鼻の下に違和感、右手で触れると指が真っ赤です。

 

「お、鼻血、脳を酷使したからかな?」

「え、あ! ど、どうしよう…!! 誰か、誰かこの中で医者の方は……!!」

「おい、落ち着けよ一年生、代表候補生なら応急処置ぐらいなんてこと無いだろう」

 

あたふたしている簪に先輩(変態じゃない方)が一言言うと、ハッとして真剣な顔で俺の前に立った。

 

「顔を上に向けて首元を軽く叩けば……!」

「民間療法じゃねぇよ、しかも完全にやったら駄目なやつだし、見てろ」

 

そう言った先輩(変態じゃない方)が俺の鼻をギュッと摘む。

 

「ほげっ」

「変な声出すな、まずは上体を起こして座らせた後顔をやや下に向ける、んでこうやって鼻を摘んでだな」

「何かシンが応急処置とか受けてるの見てたら違和感があるな」

 

自分で押さえてろ、と言われたので左手で鼻を摘む、なんだかとってもマヌケな見た目。

 

「おい、氷嚢か水で濡らしたりした冷たいタオル無いか」

あ、だいひょうふでひゅ(あ、大丈夫です)ひだでぃてちゅべたいぃで(左手冷たいんで)

「何言ってんのかわかんねぇよ」

 

でひゅよれー。

とよくよく考えてみれば俺別に応急処置とかいらねぇじゃん、ヒーリングファクター!

 

「おk」

「おい、鼻摘んでろ」

 

ポッケからポケットティッシュを取り出して二枚ほど手に取る。

 

「ちーん!」

「鼻かむ時口で言う奴始めて見た」

「おい、そんな事したらもっと血が出るぞ」

「あー、治った!」

「はぁ?!」

 

クシャクシャのティッシュを左手で握りリパルサーレイで処理、フゥー、スッとしたぜ。

 

「あー、そうだそうだ、違和感はこれか、シンは腕が捥げても生えてくるもんな」

「バケモンかお前」

「な、NASAに送っても懸賞金は貰えんよ…?!」

「送らねぇよ、まぁ大丈夫なら大丈夫で別にいい、おーいフォルテ、満足したし帰る……何で泣きながら椅子拭いてんのお前」

 

と、目を向けると地べたに座りつつグスグスと鼻を啜り椅子を拭いている先輩が一人。

 

「こんな、惨めな気分、始めてッス……あんな醜態晒して、撒き散らすなんて、うぅぅ…死にたいッス……」

 

これはフレドリカに比べて突き抜けてない分人生苦労するタイプだ、せめて世界が彼女に優しくありますように。

 

「あー、ワリィな…アタシはコイツを何とかしなきゃなんねぇから何処かに行ってくれねぇか? 見られてると流石にこいつも……な?」

 

苦笑いする先輩に俺たちはただ頷いて去ることしか出来なかった。

 

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 

「なぁ、結局スピードテストしてなかったな」

「もういいんじゃね? 文字数が足りん時の埋め合わせを予定してただけだし」

「何言ってんのお前」

 

「あ、いた!」

 

自販機で購入したクッソ甘いコーヒーを飲みつつ簪やらうりーいっちーと食堂へ移動していると前方で4人の生徒がこちらへと向かってきた。

 

「お、どうした?」

「どうした、ではありませんわ!」

「どこへ行っていたんだ!」

「僕達が探しても見つからなかったし」

「部屋には居なかったし」

 

いつもの如くいっちーを探していたらしい、もうすぐキャノンボールファストがあると言うのによくもまぁ一日無駄な事に潰せたな、生き易いものだな、ふらやましいよ。

 

「ラウラも一緒に居たならメールを返してくれても良かったじゃないか、もう!」

「ん、メール? おぉ、すまんな、気付かなかった、今日は面白い物が沢山見れてな! 皆に自慢してやりたいぐらいだが……」

「ん? どうしたらうりー」

「ふふ、秘密だ。私の胸だけに今はしまっておこう」

 

チラリと俺を見たらうりーが勝ち誇ったような笑みを浮かべて眼前の4人を見る。

 

「な、何よそれ、気になるじゃない」

「ラウラ、ボクにも秘密にするの…?」

「ず、ズルイ言い方をする…」

「どうでもいいことでも気になってしまいますわ…!」

 

多分これはアレだな、いっちーへの尋問を回避させる為に言い出したんだろう、こんなにいい子に慕われて無反応とかいっちーは腹を切って詫びるべき。

 

「いっちーは腹を切って詫びるべき」

「いや、なんだよいきなり」

「おーい、何かいっちーがジャパニースハラキリ見せてくれるってよ」

「しねぇよ?!」

 

高周波日本刀を取り出し上段に構える。

 

「ハイクを詠め、カイシャクしてやる」

「アイエエエ?!」

「はいはい……ストップ…集まってないで、解散……切腹はしないよ……信一郎も下ろして…?」

「はぁ~い」

 

「なーんだ、しないのかー」

「Oh ハラキリ見れないデスカー to feel very regretful…」

「籐ヶ崎君ももうちょっとだけ頑張って欲しかったですねえ、ああ残念です、ええ残念です!」

 

ナチュラルに混ざってたリサ先輩、やっぱりカッ開いた目がちょっと怖い。

 

「うぅ、ありがとうございます簪さん、ありがとうございます…!」

 

と言いながら簪にすがり付こうとしたいっちーの首根っこを掴んで逆の方向へ向かせる。

 

「俺の女に手を出すな、いいね?」

「アッハイ」




以上になります。
あとわたくしツイッターをやってます、小説関係は殆ど全くと言っていいほど呟きませんがご興味のある方はユーザーページからお探し下さい。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。