コジマ汚染レベルで脳が駄目な男のインフィニット・ストラトス   作:刃狐(旧アーマードこれ)

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暗いです、重いです。
やりたかった過激な事をひとまとめにした感じです。
サブタイに外傷とついていますが外傷無いです。
この話はかなり好みと好みじゃないのが分かれると思いますのでグロイの駄目! とか女の子が酷い目(暴力的)にあってるのが嫌! とか言う方は見ないで下さい。
見ないほうがいいですではなく見ないで下さい。
主人公がこの話では畜生にも劣る極悪人です。

見なくても分かるように分かりやすく簡単に、且つ適当に纏めた結果を後書きに書きますので駄目な人はそれを見てください。


原作からの剥離開始編
Posttraumatic stress disorder心的外傷後ストレス障害


生徒会室で扇子を持った青い髪の女生徒と筋骨隆々とした義手義足の男が地図を広げた机の周りに立つ。

部屋に二人以外の人間は居ない、部屋の外では誰も入らないよう一人の生徒が見張っている。

男はコーヒーの缶を傾け中身を全て飲み干した。

 

「……奴等の潜伏場所が分かったわ、組織の名前は――」

「そんな物はどうでもいい、何処にいる」

 

青い髪の女生徒、更識楯無の言葉を遮って男、信一郎信一郎は低く、冷めた声を出す。

 

「…腸が煮えくり返ってるのは貴方だけじゃないのよ」

「何処だ」

 

右手で掴んだスチール缶がベキリと音を立てる、傍から見たとしてもイライラしているのが見て取れた。

楯無が細く短く息を吐き地図の一点を扇子で指し、拡大させ、位置をマーキングする。

 

「………中東の…ここよ」

「間違いは無いか」

「ええ、一人一人別の部屋で尋問したわ、それぞれの証言は一致、指を圧し折って再度聞いても同じだと言ったわ、うちの尋問のプロがやった、信用できる情報よ。でも奴等、ISも複数持っているらしいわ、テロリストが持っているなんて随分ISも安くなったものね」

 

信一郎がギリギリと歯を食い縛りスチール缶を生身の右手でグシャリと握り潰す。

 

「俺達が行く」

「……私も行くわ、大事な妹だもの」

「好きにしろ」

 

ゆっくりと窓まで移動し一つ溜息を吐き、通信機を起動させた。

 

「IBIS、フリーの私兵部隊全員に繋いでくれ」

『ですが…』

「もう一度言う、フリーの私兵部隊全員に繋げ」

『…はい…………全員の接続を確認しました』

「信一郎だ、簪に俺達に手を出したマヌケ共が中東にいる」

 

右手を壁に叩きつけ壁を破壊しながら叫ぶ。

 

「皆殺しだッ!! 一切容赦するな、全員殺せぇッ!!! 女も子供も関係ない! ただの一人も逃がすなッ!! 生かすなッ!!」

 

凄まじい剣幕に楯無は一歩、足を引いた、彼にはしたないと叱られた事は幾度かあった、怒る様子も何度か見た、だが根は優しい人物だと知っていた。

故に彼をからかったしワザと彼を怒らせようともした、しかし今の彼は憎悪と憤怒に塗れ叫び散らしている。

 

「今すぐに出る、出撃する者全員に最新装備を配備ッ!! 命乞いをしようが許すなッ!! 男を突き刺せ! 女を切り倒せ! 赤子を焼き殺せ! 老人を撃ち殺せ!! 一人として……ッ! 生かして返すなァァッ!!!!」

 

壁を破壊した時手に持つ潰れた缶が手を刺したのかポタリポタリと血が地面に落ち、色をつける。

 

『…信一郎様、ACの使用は止めて置いた方がよろしいかと、足が付きます』

「はぁ、はぁ、はぁーっ………わかっている……部隊編成は7つに分ける、それぞれリーダーはオールドキング、ポール・オブライエン、オメガ、アンシール、イルビス・オーンスタイン、リム・ファイアー、俺だ、思うように指揮しろ。使用コードはR.I.P、この作戦は女子供も容赦なく殺す、ジェラルドやリリウム、他信条に反すると言う者は降りろ、責めはせん」

「アール…アイピー…?」

 

楯無が一つの単語に反応し、信一郎の顔を見る、先程以上に苛立ち殺意を振りまいている。

 

「聞き覚えがあるわ、いえ…見覚えかしら…どこかで」

「IBIS、いいだろう、全て教えてやれ」

『……刀奈様、私がお答え致します。R.I.P、Rest In Peaceはカラードの特殊部隊です、テロリスト等に対処する為設立された対抗部隊であり、カラードの関連性を隠す為旧式に偽装した最新装備を運用し、その特殊な作戦内容から世間では別名で呼ばれることが多い部隊です。尤も知られている通称では死神部隊と呼ばれています』

 

楯無が「刀奈」と呼ばれたことに一度大いに驚き、直ぐ落ち着かせたのか冷静になる、しかし話を最後まで聞いた瞬間一歩後ずさった。

 

「噂のみで映像も写真もない…皆殺しの死神部隊…?! ここ数年は一切目撃情報がなかったのに…!!」

『正確には敵対勢力の殲滅用です。作戦領域外の民間人には危害を加えておりません、データや物として残らないよう特殊なジャミングが施され、その証拠に遠距離からの目視情報は残しています。その為皆殺しの死神部隊、は適切ではありません』

「そんな、まさか……」

「IBIS、賛同した人員に通達、準備完了後座標137.021835,34.711627へキサラギの大型輸送艇で移動し浮上、俺がポイントで合流した後ミラージュの空中空母で飛び目的地付近20キロで降下、移送ユニット搭載型パワードスーツによる移動で目的地へと襲撃をかける、以降各部隊のリーダーに判断は任せる、命令は二つ、生き残れ、そして皆殺しだ。それと二つパワードスーツを多く用意しろ、防御特化型と高速近接型だ」

『了解しました…』

 

信一郎が通信を切断すると後ろにいた楯無が立つ気力をなくしたかのように椅子に倒れるように座り込む、震える声を発し、ゆっくりと信一郎を見た。

 

「まさか、あなた達が…カラードがあの死神部隊だっただなんて……」

「R.I.P部隊員は固定ではない、その都度人員を集め、指定された装備を装備し、出撃する。だが毎回固定で参加する人員もいる、先程の6人だ」

「あなたは、籐ヶ崎君は人を殺す事に抵抗はないの…?」

「…………」

「この数年目撃情報がなかったのは何故…?」

「単純に見られていなかっただけだ、だが……俺が学園に入学してから始めてだな」

 

手に持つ潰れた缶を部屋のゴミ箱に棄て、手の平を眺める、楯無が思っていたよりも深く刺していたのか少なくない血が流れる。

だが信一郎が手を握りもう一度開くとそれ以降血が流れる事はなかった。

 

『信一郎様、部隊の準備、及び指定地点への転送終了しました、総部隊長のオールドキングに変わります』

『坊ちゃん、上部展開及び指定地点をヘリポートに合わせた、いつでもOKだ』

「わかった、直ぐ移動する」

 

通信を切断し楯無をちらりと見ながら口を開いた。

 

「本当に来るのか? 皆殺しだぞ」

「……行くわ」

「ならこっちに寄れ」

 

楯無が近くに来たのを確認し投影ディスプレイを起動しパスワードを入れ特殊システムを起動した。

 

「転移装置起動、範囲指定+0-0、1.5座標LPNX-137.021835・OBSL-34.711627確定、経由INF-PHIRA、転移、やれ」

「ッ…!! ………ッ?!」

 

一瞬無重力になった直後身体が重くなった感覚に咄嗟に踏ん張り目を瞑る、唐突に聞こえる風の音にゆっくりと目を開けると驚愕した、空には太陽が照り遠くを見るとかすかに海が見える、何よりもいつの間にか有り得ないほど巨大な船の上に立っていた。

周囲には100に近い数の人間が列を作り、一斉に右腕を前に伸ばしそのまま横へ90度曲げ敬礼へと移った。

 

「お待ちしておりました、信一郎様、簪様のことは聞いております。我々R.I.P特別編成部隊はカラードに、信一郎様に逆らう愚か者どもを抹殺する為集まりました、ご指示を、我々に皆殺しのご命令を!!」

「肥溜めにぶち込むなどと生ぬるい事はいいません、粛清を! 我等に仇なすゲスどもを追い詰め大粛清を!!」

 

「戦闘要員我等総勢98名ッ!! 敵軍予測人数四桁!! されど我ら意気軒昂!! ご命令を! 籐ヶ崎信一郎様ッ!!」

「……充分だ、奴等を鏖殺しにするには充分だ!! 殺す、全員殺す!! 命令を下す! 見敵必殺(サーチアンドデストロイ)見敵必殺(サーチアンドデストロイ)だ!!」

 

全員が同時に雄叫びを、否、大歓声を上げる、日本語で、英語で、イタリア語で、ドイツ語で、ロシア語で、中国語で、フランス語で、あらゆる言語で。

 

「狂ってる…」

 

大歓声の中小さく呟いた楯無の声は真横の信一郎にさえ届かずかき消された。侵攻であるこちら側は防衛の敵相手に挑まなければならない、侵攻側が防衛側を落とすには少なくとも3倍の戦力が必要だと言われている。にも拘らずこちらは僅か約100人、対してあちらは最低でも1000人、防衛側であることも含めれば戦力比は30対1にもなる。

その上で相手はISを複数機所持している、たいしてこちらは2機、その上それは使用しないことを前提としているのだ、どう考えても勝てるはずがない、正気の沙汰ではなかった。

 

重い機械の駆動音と共に巨大な航空機が3機せりあがってきた、それと共に全員がその付近へと移動を開始する、大多数が愉しそうに笑いながら、哂いながら。

 

「こんにちわ、あなたが楯無ちゃんよね?」

 

唖然としていた楯無の肩をそっと叩き、赤い髪の女性が顔を覗き込む。

 

「え、あっはい、そうです」

「私はシャミア、一応ロシア出身よ、妹さんの事は気の毒だったわね、でも心配しないで」

「ありがとうございます…」

 

ニコリと微笑んだシャミアがそのまま薄っすらと目を開き犬歯をむき出しにして哂った。

 

「私達が皆素敵な風穴だらけにしてブチ殺してあげるから、ね?」

 

ぞわり、と体の芯を冷やすような震えが頭からつま先まで走る、すると先程の笑みを再度浮かべて手を振りながら去って行った。

 

「怖いか、今回の作戦にいる殆どの者はカラードが拾い上げた人間だ、優れた能力を持つ人格破綻者だ、いつ死ぬとも知れない生き方をしていた人間達だ。……付いて来い」

 

信一郎が近付き呟くように言い、航空機へと歩いていく。

 

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 

「これを装着しろ、防御特化型パワードアーマーだ、シールドを省いた状態で実弾防御エネルギー防御に突出してこいつを削りきるよりも先にISの方が先に弾切れになる、対照的に攻撃力は殆ど無い、両手に持つことが出来る携行兵器までだ、最高時速は250キロ、重量220キロ、跳躍高度15メートル、カラード以外のMBT程度なら体当たりで撃破できるだろう」

「私は…」

「ロシアの代表だろう、万が一にでも見られたら問題になる、着ておけ」

「……分かったわ」

 

巨大な鉄塊に背中を預けるとそれに反応したパワードアーマーが楯無の身体を包み込み駆動部分の長さなどが調整され丁度いいサイズと変化する、最後にヘッドアーマーが楯無の頭を包むとHUDが眼前に投影され生身で得た視界と相違ない、否、それ以上の視界感度と反応になる。それはまるで。

 

「ハイパーセンサー?!」

「汎用性はそれ以上だ、俺のアーマーはどこだ?」

 

信一郎が整備士に声を掛けると整備士がコンソールを操作して一機の鉄塊が付近へと運ばれてくる。

 

「こちらは以前より作っていた次期社長専用の高速近接型パワードアーマーです、瞬間最高速度は音速の3倍近くにもなります、ACには及びませんが。高速型の弱点で薄い防御力、まぁISの攻撃数発程度で破壊されるほど低いわけではありませんが、それと積載量が少ないので基本はブレードの戦闘となります。遠距離射撃武器は対人ハンドガン一丁となります。それとアーマー自体の防御力とは別にPA発生装置を全てのアーマーに組み込んでありますので同数のISと戦っても勝利できます。

続いて搭載武器の説明です。対人ハンドガンは45口径装弾数15発、有効射程距離は250メートル、反動は特殊機構を組み込んだため社長でも扱える低反動となっております。以降は実際に展開してみましょう、装着の為まずは左腕を外して腰掛けてください」

 

左腕を迷う事無く外し鉄塊の臀部になる場所へ腰掛ける、すると自動的に上半身が包み込まれ左腕部がパワードアーマーに接続される。

 

「次に両足を外して下さい」

 

空気を抜くような音と共に両足が外され、足の付け根をアーマーに合わせる、残りの下半身が包まれ、続いて装甲が組み合わさって全身を包み込んだ。

 

「では説明に移ります、装備されている近接兵器はブレードが3種、ワイヤーアンカーが両腕です、まずは腰の二本を手に取ってください」

 

刀のように吊るしてある両腰の鞘から逆手持ちのように抜き手の平で弄ぶようにくるりと回して順手持ちへと持ち替えた。

 

「それは大型のマチェットで名称は開発コードブラッドラスト、今は語呂が良いのでブラッドスライサーと呼んでます、人斬り鋏と言って頂いても構いませんね、それ自体に高周波機能が備え付けられており戦車の装甲であろうが家屋であろうがトーチカであろうがぶった切れます。そのまま両手持ちの剣として使って頂いても構いませんが人斬り鋏の名の通り巨大な鋏としても扱えます、左手首に専用のマニピュレーターがありますので装備して下さい。」

「…………」

「では鋏を思い浮かべて動かしてください………そうです! この状態ですと切断力が増しますので斬れない物はそう無いでしょう、そしてなんと言っても握った時に親指周辺にツマミがありますのでそれを押し込むとコジマエネルギーを刃の表面に発生させます、この状態は対IS状態ですのでシールドエネルギーも何も関係ありません、そのままぶった切ってください」

 

左腕の巨大な刃をまるで肉体の延長上であるかのように滑らかに動かし両腰の鞘へと納めた。

 

「続いてもう一種の遠距離武器です、射撃武器ではなく射出武器です。ミサイル機構では無くISの偏光射撃に似たようなものです、脚に2箇所づつと肩に1箇所づつ、そして両脇腹に3箇所づつ、計12箇所から射出できるスペツナズナイフの様な物で射程は100メートル、HUDからアイサイトでロックし射出可能です。回避はまず不可能で個別にロックされたナイフがエネルギーを纏って敵を追尾します、ヒット後PICにより戻ってきて射出前の状態へと収まります」

 

ナイフの射出口を操作しあらゆる方向へと向けた後一本取り出し再度戻した。

 

「お気に召して頂けたようですね、続いてウィングブレードです、その名の通り刃で出来た翼です、展開はブースター起動時にロックが解除されます、それ以降は任意に展開可能となります、レンジは片側2メートル、切れ味もさることながら凄まじい強度ですので通った後に生存者はいないでしょう、ソニックブームも含めてね。

最後の装備です、ワイヤーアンカーは両腕の…まぁ見て頂ければ分かりますね、前腕のニードルがそうです。基本的には移動ではなく武器と認識していただくのがベストです。移動自体はブーストシステムがACと殆ど同様の物ですので移動に使うことはまず無いでしょう、パワードアーマーですが基本平均筋力値は戦車を振り回す程度なんでもありません、またワイヤー自体も最新のものを使用しておりますのでそれが既に高周波処理を施されたワイヤーブレードとして扱えます、トラップにでも周囲の殲滅にでも好きに使ってください、レンジは両方とも20メートルです、ISを一撃で葬れる物ではありませんのでお気をつけ下さい」

「分かった、目的地は」

「残り20分で降下となります、お気をつけて」

「あぁ」

 

付いて来いと楯無にジェスチャーをしてひとり先へと進む、作戦開始まで残り20分。

 

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 

「目標地点まで残り30秒! 目標地点まで残り30秒!! 総員降下準備!! 後部ハッチ開け!!」

「鏖殺しの時間だ!! 捕虜は要らんぞ同士!! Ураааааааааааааааа!!!」

 

一つの分隊のリーダーがマシンガンを振り上げて雄叫びを上げる、それに続いて分隊員も雄叫びを上げる、遂にその時がやってきた。

 

「部隊降下! 行け行け行け!! 夕飯までには終わらせろよ!!」

「降下! 降下!!」

「行くぞ、遅れて一人だけ敵地のど真ん中は嫌だろう」

「わ、わかったわ…」

 

三機の航空機から100の人が飛び降りる、かなり高高度からの降下、中東と言えどバイザーシールドの隅が凍結する。

 

「まって、パラシュート! パラシュートが無いわよ!?」

「オートブーストはオンになってるか」

「え、ええ」

「なら問題ない、そろそろ起動するぞ」

 

言葉通りバランサーが起動し、体勢を立て直し、ブーストが起動、徐々に減速を開始する。

十数秒後、全員が地面へと降り立った、与えられた任務は一つ、皆殺し。

 

「2キロ地点まで移動する、遅れるな、時速200キロで固定行け」

 

死神が列を成し歩く、黒が紅の光を携え鎌を持ち、首を命を刈り取らんと。

 

「全員武器の最終チェックを移動しながら済ませておけ、支援型は迫撃榴弾を用意しろ」

「了解」

 

信一郎がブラッドスライサーを抜き刃で刃を研ぐように打ち鳴らす、皆が銃を構え刃を抜き、巨大な砲を上へと向ける、即席の部隊が、たった100人の部隊が10倍以上の戦力を相手に戦争の時を今か今かと待ちわびる、楯無はその光景を見て本当の死神を思い浮かべた。

 

「これは戦争でも何でもない、虐殺だ、用意はいいか? 全員止まれ。迫撃砲の弾薬が尽きるまで飽和攻撃を続けろ、なくなり次第支援型は任意の場所より狙撃を開始しろ、補給型は一機留まっておけ、戦闘開始、消し飛ばせ!」

 

刃を振り上げ前へと振る、土や石、木で出来た、家が数多く建つ小さな集落へと榴弾が殺到した。

 

「もし、もしあの集落が衛星を欺く為のダミーじゃなかったら……どうするの」

「違うんだろう?」

「……えぇ」

 

家が破壊され、地面が吹き飛び、木をなぎ倒す、それでもただの一人も人は出てこない。

 

「両あわせて40発全員撃ちきりました、狙撃へと移行します、信一郎様、お気をつけて」

「あぁ、ポールもな……散開!!」

 

集落から無数の人影が現れる、戦闘の火蓋が切って落とされた。

重装甲アーマーを纏った兵士が両手のガトリングで片っ端から人を赤い霧へと変えて行く、遠距離からの支援狙撃で人が人の形ではなくなる。

戦闘が開始されて30秒、たった30秒で第一波として出てきた敵兵の殆どがただの肉塊へと変わってしまった。

 

「ポイントをロックした、G地点の第一波残党を始末する、行くぞ」

「了解しました、しん…隊長」

 

あらゆる場所から銃声が悲鳴が断末魔の叫びが木霊する、まるで散歩をしているかのような気楽さで発見した敵兵を殺して行く、屋内に逃げ込んだら家屋ごと吹き飛ばし、発狂して突撃して来た者は到達する前に撃ち殺され、運良く先頭に到達しても信一郎が両手に持つ巨大なマチェットで斬り殺される、楯無が目を背けても目を閉じてもハイパーセンサーが360度認識させる、リアルで、しかしどこか現実感の無い人の死を否が応にも感じさせられる。

今人を切り殺した信一郎はその見えないバイザーの下でどんな表情をしているのだろうか、怒りに震えた表情なのだろうか、人を殺している事を悲観する悲しみの表情なのだろうか、それとも恐怖なのだろうか、それとも……笑っているのだろうか。

 

「と…がさ…その……」

「…………」

 

言葉が出ない、言葉が聞こえない、まるで全ての感情を落としてしまったかのように振り向く気配一つなくただ黙々と歩き、殺す後姿。

急にピタリと脚を止める、その場で横の壁にマチェットを突き刺し、縦に裂く。

その後ビチャリと音を立て男の横半分が家屋の入り口からはみ出した。

 

「ッ…!!」

「行くぞ、もう直ぐでポイントだ」

「~♪ 流石にスマートだねェ」

 

4桁対100人、絶望的な数、防衛と侵攻の有利不利、そんな物は関係ない、例え万の軍勢が相手でも億の軍勢が相手でもただの人では数にならない、ISが出てこなければこの絶望的な殺戮は終わることが無い。

 

「ポイント到達だ、皆殺しにしろ、散開」

 

楯無と同系のアーマーを纏った人間が家屋を礫破し、火炎放射器を搭載したアーマーがトーチカごと人を焼き殺し、信一郎が視界内の人間にナイフを全て同時に射出し、殺す。

殺される事は無く、殺し、殺し、殺し、殺し、殺し、殺す。

家屋がトーチカが土嚢が、一切壁の役目をなす事無く、有象無象の区別なく、破壊され、死ぬ。

悲鳴をあげ、絶叫し、発狂し、死んでいく。声を発する事無く、死んだ事にさえ気付かず息絶える。

 

「…戦車か、各自撃破しろ、5両だ」

 

ピクリと顔を上げ一言呟いた、楯無がHUDに表示されたポイントを注視するとデータとしてそれが浮き上がる。

ズームして見るとM1エイブラムズと呼ばれる戦車、ISが開発されるよりも前の主力戦車であり、今では最早古い物とされる戦車、だがそれでも脅威である。

はずの戦車に一機のアーマーが飛び乗り、銃座にいた男の顔面を踏み潰す。

身体を掴み、引きずり出し火炎放射器で中を焼く、主砲の一発どころか50calの一発を撃つ事も無く一機撃破された。

信一郎が姿を消す、直後には最後尾の戦車の向こうに翼のような刃を展開した状態で立っていた。

通ったであろう場所の人が全て立ったまま上半身がズレ、地面へグチャリと落ちる。

 

両腕のアンカーを戦車の後部に打ち込み戦車が宙に浮き、凄まじい速度で後方、信一郎の方向へと飛んで行った、信一郎が横に移動し、巨大な砲弾を回避、ブースターの光を纏いその場で戦車を振り回し始めた。

周囲の家屋や人を軒並み破壊し、飛び散らせ、上に飛び空中で回転を始めた、最早銃弾ほどの速度となった戦車の中に人は無く、ただの肉塊となっているだろう。

回転の角度を変更し斜めから縦へと角度を変える、そのまま他の戦車にその巨大な砲弾を叩き付けた。

容易くグシャリと潰れ叩き付けられた反動で浮く、それが再度信一郎へと引っ張られいつの間にか左腕に装着していた鋏で両断される。

 

ただ榴弾一発を前面装甲に撃たれただけで木っ端微塵に爆散する、いくら古い戦車とはいえこれほど容易く撃破されるはずなど無い、楯無は無意識のうちに歯を食い縛っていた、すこしでも力を抜けばガチガチと音を立ててしまいそうになる。

 

最後に残った1両の戦車の主砲が楯無の視線と合った、咄嗟にISを展開しようとした瞬間主砲が光る、間に合わない。

しかし衝撃はいつまで立っても来ず、ISの展開した感覚も無い、薄っすらと目を開けると緑に光る球体が波紋を打ちながら周囲を覆っていた、恐る恐るアーマーのステータスを見て声も無く驚愕した。

一切のダメージが入っていない、戦車の主砲が直撃したのは確実なはずにも係わらず。

 

「敵反応ISです、こちらに一機、それとポイントA、オールドキング部隊に一機近付いています、10秒で接敵します」

「固まれ、榴弾装着型はコジマグレネードを入れておけ」

 

一機のISが可視範囲内へと飛んで来た、そのISは上空で止まり周りを見渡した後フンと鼻で笑ってつまらなそうな楽しそうな声で話し始めた。

 

「この程度の人数にやられるなんて、男ってホントグズねぇ!」

 

女が乗るISは現状最新クラスのコストを考えず作ったと言われる第二世代最終型とも言われる軍用機、恐怖の名を冠した「クァウフ」未だ試作機ではあるが試作機であるゆえの火力、防御力、機動力に偏った単機決戦型IS、コスト面でラファールやテンペスタに劣るが性能だけを見るなら充分な脅威。

並みの操縦者でも凄まじい強さを得ることの出来るこのISは楯無にとって相手にしたくない第二世代ISでかなり上位の存在だった。

 

「さぁてぇ? この最新型軍用ISクァウフの的になってくれる哀れな貴方達には精々逃げ回ってもらいましょうかしら?」

 

楯無が場合によっては自分が応戦する必要があるかもしれないと覚悟を決め一歩前に出た瞬間信一郎が手でそれを制する。

 

「まぁ流石にISの一機ぐらい控えてるわよね? 待っててあげるわ、出てきなさい」

 

数秒両者とも静止していると女が驚いたような顔をした、その後クスクスと笑い始める。

 

「IS二機に対してただの歩兵部隊だなんてね! これだから男はダメなのよ! アッハハ! 残念だけど他はもう駄目よ、死んでる、だってもう一人は容赦なんて無いもの!!」

 

愉しそうにクスクスと笑う女は手に持ったIS用のマシンガンを部隊へと突きつける、典型的な女尊男卑しこうでISに敵う物はありはしないと信じて。

 

「コジマグレネード、やれ」

「Feuern!」「発射!」

 

号令と共に砲撃とも言える弾速でISへと榴弾が射出される、女は男達の絶望や絶叫、恐怖の声を一目見よう、聞こうとその爆発をワザと受けた、ニヤリと笑みを浮かべた表情が次の瞬間に絶望に染まる。

ISのバリア機能が消され、強制的に絶対防御が発生する状態に陥った、いくら軍用と言えどこの状態ではISのアドバンテージは少ない。

 

「あ、あ、うそ、そんな」

「掃射、墜とせ」

 

短い指示の後榴弾が、ミサイルが、ガトリングが、無数の銃弾がISへと殺到、回避も逃走もパワードアーマーに搭載された高性能FCSがそれを一切許さず一発と外す事無く全弾命中させる。

10秒と立たずエネルギーが枯渇、飛行に回すエネルギーも無く、地面へとゆっくり落ちた。

エネルギーの無いISは露出の高さから鎧にもならず、動く事も無いためただの凄まじいデッドウェイトとなる。

生きている機能は環境から最低限搭乗者の命を守る機能のみ、逃げる事も攻撃する事も叶わなくなった女はISの重さを支える事も出来ず地面へと身体を落す。

 

「勝てない……ISじゃ……勝てない…!!」

 

仮に敵にした時の恐ろしさ、その爪が、牙がこちらに向いたときの恐ろしさ、何よりも仲間に付いている今でさえ抗えないほどの恐怖。

ISはISでしか倒せない、そう約10年も言われ、信じ続けられ、また信じ続けていた神話が崩壊する。

部隊ではあるが量産可能な通常兵器がISを凌駕する、信じるしかない、だが信じたくない、それはロシア国家代表だからなのか、それとも女性だからなのかは分からない。

 

地面で手足の重さに耐えれず四つん這いになった女が先頭に立つ信一郎を体を震わせながら見上げる。

専用機であったなら即収納し逃走も出来ただろう、逃走した所で逃げる切るのは不可能だが。

 

「あ、や、そん…な、たす、助けっ…」

 

対人用ハンドガンを右手に持った信一郎が恐怖を顔に貼り付けた女にそれを突きつける。

 

「ま、待って!! いくら何でも無抵抗の人間を殺す事は!」

 

防御特化のパワードスーツを纏う楯無が銃を握る信一郎の右腕を掴む。

女が顔の見えない楯無へと縋りつくような目で見た、だが女はそれでも考えていた、もう一人が他を皆殺しにすればきっとこちらに来てくれる、そうすれば助かるし目の前の人間を皆殺しにしてくれると。

唐突に信一郎の無線機が通信要請を受けた、ただ無言で許可しオープンモードで受ける。

 

『こちらオールドキング、ISを一機仕留めて操縦者を捕獲した、どうする?』

「うそ、うそ、そんな…そんな」

『誰か! 嫌だっ! 嫌! 助けて、助けて!!』

 

通信機の向こうで女が命乞いをする声が聞こえる、信一郎はそれに対しただ無感情な声で一つ命令した。

 

「殺せ」

『嫌! いやぁぁぁ!! 何でも、なんでもします!! だから、死にたくない! なんでもします! 何をしてもいいです! だから命だけは!!』

 

通信機越しに絶叫として聞こえる命乞いに指一本動かす事無くただ聞き続ける。

右腕を楯無に押さえられ、それも振り解こうとする素振り一つ見せず、ただ立っていた。

 

火薬の破裂音、液体が飛び散る音。

 

『いぎゃああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!』

『チッ、弾を間違えたか』

 

悲痛な叫び声、舌打ちと小さな呟き、ガチャガチャと弾を込める音。

 

『ア゛ァァ、ギ…お゛お願いじまず…っ!! だ…ずけでぇ…! しにだくない……!! いのぢだげはァ…! い゛、ヒッ?!

 お゛ねがい゛しまずッ!! だすけで! いや、い゛やぁ!! おねがいじます! お゛ねがい゛しま゛す!! おねがッ――』

 

再度聞こえる火薬の破裂音、何か重く柔らかい物が水溜りに落ちる音、そして聞こえる物は何もない。

 

『片付いた』

 

それを聞き届けると信一郎が女の方を向き、一歩近付いた、女は声さえ出せずただ首を横に振って涙を流し、楯無に縋りつくような目を向ける。

右腕を掴む楯無を邪魔だと言わんが如く左手で押し退け、また一歩女に近付いた、カヒュ、カヒュ、と出せない声を無理やり出そうと息をする。

身体を震わせ失禁し、地面を濡らす、その濡れた地面を踏み、遂にすぐ目の前に立った信一郎は女の顎を左手で掴みハンドガンを口に捻じ込んだ。

女が出そうと必死になった声は漸く出すに至る、ただ望んだ物ではなく。

 

「ン゛―――――ッ!!!」

 

死の間際の恐怖による叫び声として。

無感情にハンドガンの引き金を引き、乾いた音が周囲に響く、白目を向いた女「だった物」の口から銃を引き抜き腰のホルスターへと収める。

楯無が信一郎の肩を掴み前後へと揺らしながら叫ぶように言葉を発した。

 

「おかしい、おかしいわ!! こんなの私が知ってるあなたじゃない!! あなたは簪ちゃんを愛してるどこか抜けた優しい人じゃない!! こんなのあなたじゃないっ!!!」

 

ただ抵抗もせず信一郎のアーマーのバイザーに赤い光が数本走る。

何もしない待機状態で発する何の行動も操作も行わない無気力な証拠。

信一郎は楯無の叫びにただ一言だけ言葉を発した。

 

「そうだな」

「そうだな…? そうだなですって?!」

「今の俺はただの兵士だ………そういえばお前は『兵士』じゃ無かったな、だがお前は何だ? ここは戦場だ、この戦場でいつまでお前は『更識“刀奈”』でいるつもりなんだ?」

「ッ……!」

「……まぁ、いい、壊れた俺よりも……お前のほうが………」

 

楯無を押しのけ、死体を避け前へと進む。

 

『こちらポイントC、殲滅完了』

『ポイントD、Eと合流、殲滅終了しました』

『狙撃部隊、ざっと見たところ人の姿はありません、抹殺完了です』

『ポイントA、どうやらさっきのISが最後だったみたいだ、終わったぜ』

『ポイントF、殲滅完了、それとご報告があります。どうやら地下施設があるようです、如何いたしますか』

「俺は命令を下したぞ、何も変わらない、我々の身内に手を出したあらゆる敵は叩いて潰せ、全ての障害はただ進み押し潰し粉砕しろ」

『了解しました、流石はリーダー、ポイントを送信します、5分後に落ち合いましょう』

 

信一郎が淡々と部隊員に指示を出す、指定されたポイントへと移動を開始した。

 

 

 

ポイントに全部隊が集結した、その数100人、作戦開始からただの一人も減っていない、千人も万人も戦車の十両二十両、ISの一機や二機でさえもその数を一つとして減らす事は叶わなかった。

 

「スキャン完了、IS反応が1、道は一本になっていて糞長い廊下に部屋が幾つも設けられています、最深部までこれと言った障害もありません、人も少ない、数百人程度です」

「俺が先頭に立つ、最後尾の人間は部屋を一つ一つ確認して人がいれば殺せ、その次の最後尾の人間が次の部屋の確認だ、行くぞ」

 

信一郎が武器を構える事も無く歩き、応戦の為顔を出した人間の額にナイフが突き刺さり、絶命する。

廊下が残り数百メートルとなった時黒白のツートンカラーをしたISが部屋の一つから飛び出してきた。

 

「ここから先は通せないわ、何があっても。例え貴方達と刺し違えてでも通す訳には行かない、死になさいっ!!」

「俺がやる」

 

両手に持つマシンガンを部隊へと連射する、無数の銃弾は緑の球体によって防がれた。

翼を1メートルずつ展開し暴力的な加速を伴ってISへと突撃する。

消えるように加速したISが紙一重で突撃を回避、しかし所持していたマシンガンが翼により切り裂かれハンドマニピュレーターから弾き飛ばされ、IS自体もアーマーの加速に伴うソニックブームでぐらりと姿勢を崩した。

 

「こっの!」

 

女が悪態を吐くのと同時、脚部にアンカーが直撃、刺さらずとも特殊な磁場で捕まえられたように固定される。

天井や床に叩きつけられながら信一郎の下へと引っ張られて行く、女が瞬時にショットガンを展開し身体をそこら中に叩きつけられながらショットガンで信一郎を撃つ、しかし攻撃は一切通らない。

左腕でISを引きながら右手で腰のマチェットを引き抜く、突き刺さんと刺突を繰り出すも女がブーストでその刃を掠らせ回避、アンカーが外れ遥か後方へと投げ出された。

 

床を破壊し、抉りながら動きを止め視線を上げると既に信一郎が真横に移動しその腕で女の首を掴んでいた。

そのまま壁に叩きつけ巨大なクレーターを発生させる、衝撃は相当なものだろう、信一郎が右手のマチェットで斬りかかろうと腕を振り上げると女がその腕をマニピュレーターで掴み、止める。

 

「負ける…わけには…ッ!! いかないのよ……ッ!」

 

アーマーの背部ブースターが青白い光を纏い、女を壁に押し付けたまま加速を始める。

壁を抉りながら凄まじい速度で移動する。だがそれでも女は掴む手を離さない、女には傷一つ無いが砂や埃だらけでISは傷だらけになっている。

一定距離進むと女をその場で回転するように振り回し投げ飛ばした。

壁や天井、床へ無茶苦茶にバウンドし、一面を砂煙だらけにする、信一郎が左手でマチェットを引き抜くとISがグレネードを持ったまま煙を突き破ってミサイルのように突撃してくる。

 

左手に持ったマチェットを右へ薙ぎISを斬り、真っ二つにした。

かのように見えたがISの姿がそのまま煙のように掻き消え、その後ろから二本のブレードを振り上げたISが目の前へと躍り出た。

 

「デコイよ! 死ねぇぇぇぇぇぇッ!!!」

 

女が両腕を振り下ろすと右へと左腕を振り下ろしていた信一郎が何故か左へと手を振り切っている、その左腕には緑の光を灯した巨大なマチェットが二本所持されていた。

そして女の両肘の先には

 

 

 

何もなかった。

 

 

 

ブレードを持ったまま女の両腕は宙に浮いていた、シールドごと斬り飛ばされたのだ。

 

「が、あぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!! まだ!! まぁだぁぁあああああああああ!!!!」

 

女は叫びながら右脚を引き、ブーストと共に信一郎へと叩きつけた、脚部装甲はそれにより砕け散る、ISの四肢はその構造上格闘戦には向かない、腕部は武器を掴む為のマニピュレータでしか無く、脚部は加速用ブースターの役割をおっている為だ、だがそれでもたかが一度蹴りを放っただけで壊れるような作りではない、にも拘らず脚部装甲が砕けるほどの蹴りを信一郎に叩きつけた。

それによりついに信一郎を覆っていた緑の膜が粒子となって霧散する。

しかし装甲が砕けるほどの蹴りを放った脚も無事なはずは無い、その反動で右脚は千切れ、後方へと破片や血を撒き散らし飛んだ。

だがそれでも女の瞳に宿る意思は揺らがない。

 

「約束したのよ…ッ! 外の世界を見せるって……!! だから、負けるわけには行かないのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!!」

 

今だ宙に浮くブレードの一本に喰らい付き、そのまま刃を信一郎へと突き立てた。

 

しかし傷一つつけることさえ叶わず装甲に弾かれ女の口を離れて地面へとブレードが落ち、ガランガランと音を立てる。

左腕のマチェットを鋏のように女の首を挟むが刃は首に触れていない、この状態であってもまだシールドは生きていた。

 

「あの子の……為にも……、あの子…だけは……」

 

やがて刃に緑の光が走り、紙を切るかのようにその刃が閉じる。

ゴトリ、と首が落ちる、命を失った目がまだ強い意志を宿したまま信一郎を見上げていた。

 

「……クリア、行くぞ」

 

 

 

 

突き当りの部屋、それを残し全ての部屋は今全部隊員が殲滅している、楯無はシャミアと行動させ、遂に最後となった。

研究所の一室、生体反応のあるこの部屋のドアを蹴破り、中へと歩を進めた。

 

「アアアアアアアアァァァァァ!!!!」

 

絶叫と共に銃声が響き、銃弾が壁や天井、床へと着弾し、PAにより無力化される。

跳ぶ様に銃声のした方向へ跳び左手の貫手で銃を撃った人間を貫く。

 

「ガヒュッ!! ―――……? ……?」

 

人が胸を貫く腕を見て、信一郎を見た。パクパクと息さえ出ない口を動かし驚愕の表情を浮かべ、信一郎をその目で見ながら「心臓を貫かれた少女が」絶命した。

イクバール、アルゼブラ関係でアラビラ語を齧る程度に学んだ信一郎はその声にならない言葉を理解してしまった。

「どうして?」と言ったのを。

ずるり、と腕を引き抜き子供が床に叩きつけられる、その顔はまだ信じられないと言った表情をしていた。

 

『生体反応全て消失、信一郎様、初陣お疲れ様でした。我々の勝利です』

 

通信機から声が響き、通信が切断された。

信一郎は頭部装甲を外し拳をギリと握った。

 

「ッ…!!! どうして…? 「どうして」だと?! ふざけるな!! 貴様等がやったことだろうが!!! 

何故何も知らないような表情をする!! 何故「どうして」だと言う!! ふざけるな、ふざけるな!! ふざけるなッ!!!」

 

吐き散らすように泣き散らすようにに、信一郎が叫ぶ、その声は誰にも聞こえる事無く消えていった。




今回の話の総纏めは怒りに任せて女子供さえも皆殺し、小さな女の子を守る為に命を懸けたISの操縦者も守られていた女の子も主人公が殺してしまい急激なストレスによりPTSDになるお話です。

以後しばらく主人公が壊れます、どうしよっかな、このまま心も壊しちゃおうかな。
あとこんな事言ったら暗い趣味だと思われるかもしれないんですけど外でISの操縦者を殺すシーン、凄く楽しかったです。
大体リョナゲーの所為です。

あとBF4買いました。あ、どうでもいいですね。ごめんなさい。

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