コジマ汚染レベルで脳が駄目な男のインフィニット・ストラトス   作:刃狐(旧アーマードこれ)

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※注意※
今回始めて人死にがでます。
あと多々グロイです、サブタイどおり一人だけヘルシングしてます。
心とか砕きます、楽しかったです(クソ野郎)

大体リョナゲーの所為、だけど「アーマードこれは ちからを ためている!」本気を出すのは次だ…
物理ダメージはないからなぁ…

以下本文


ハイスピード学園ハーレムバトルラブコメの中一人だけヘルシングなお話【挿絵追加】

教室の入り口際で教室の中をずっと監視しているのも、まぁ中々に暇である。

割と高頻度で問題を起こしてくる人間も居るが30秒以内に対処されるのが殆どで大体が女性なので俺が手を出す前に蹴り返される(比喩)し男は男で生徒をナンパしようとしては俺に蹴り出される、比喩ではなく。

料理やら紅茶やら緑茶やらと奔走しているホール組やメイドとして男性客の相手やら手の回らないヘルプやらで走り回っているフロア組、最後に女性客の相手を永遠無限と続けているいっちーとシャルりん(執事服)に比べればまぁ楽なもんだ。

こういうので一番抵抗していたのは何を隠そうシャルりんなのだ、かたくなに「可愛い服が良い!」の一点張りだったが流石にいっちー一人では回転率が下がるし何よりいっちーが死んでしまう。の言葉により渋々執事側に回ったのだ。

まぁいっちーがシフトから外れる午後からはメイド服を着れると言う事で今は頑張っている。

 

「暇だなぁ…」

「しゃ、喋った?!」

「置物だと思ってた…監視システムみたいな」

 

次の行列待ち客が驚きの声を上げる、失礼な、確かに殆ど動いていないが置物は無いだろう。

ただずっと黒服を着て立っているだけだ、いっちーと違うのは常に前を開けていることだな。

ちなみに今回義手はオーギルではなくアイアンマンのようなスリムな物となっているので上半身はパッと見普通だ。

 

先ほどの驚いた客を通してなんかスゲェ問題起こすのが目に見えてるパツキンのピアスをつけたチャラい男がその次に入っていった、誰の招待だよ、逆に驚きだわ。

それに続いてなにやら外からザワザワと声がする、何か問題でも起こったのだろうか、教室外のことは管轄外なので基本は無視。

 

「え、えーと、20人の団体様でーす!」

 

20人、阿呆かそこら回ってろ、一体どんな大惨事だよ。

 

「いやぁ、いーよいーよ、5人以外護衛だから」

「え、あ、護衛…? ご、ごめんなさい!」

 

と、外から藤原啓治さんみたいな声がする。はい父さーん!

 

「5名様? 御案内でーす! お帰りなさいませご主人様、お嬢様」

 

そして大人数で入ってきたのはまずレイ、続いて父さんと母さん、んでズラッと大量に、見ればアクアビットのリーダーも混ざっているあたりカオス空間不可避。

レイが俺の前でピタリと止まって綺麗に俺の方を向いた後綺麗に敬礼する。

 

「…………」

「んふーふ、いらっしゃいませ!」

 

無言で敬礼するレイにこちらも敬礼で返しながらとりあえず店としてのテンプレを言う、やや敬語を使われる事に戸惑った様子だが腕を下ろし一歩後ろに下がり護衛の仕事へと戻った。

 

「やっほー! シン君、きちゃったぁー!」

「きちゃったー!」

「いらっしゃいませ、お嬢様、ご主人様?」

「聞いたパパ! シン君がお嬢様だって!」

「職務に忠実なのはいい事だ! んじゃ頑張ってね!」

 

ずらりズラズラと大量の人間が入って行く、勿論全員見知った顔だらけだ。

 

「信一郎君! どうやら執事服ではないようですねぇ!」

「信一郎様、お久しぶりです。リリウムは名ばかりで護衛側となっておりますが扱いは研究員となっております」

「いらっしゃいませ、お嬢様方、リリウムの目当てはせっしーだな? ちょっと待ってろ、せっしー! ご指名だ!」

 

お嬢様といわれて嬉しそうに悦に浸った表情でクネクネと身体を捩るしっかりとメイクをしたアクアビットのリーダーとなにやらモジモジしているリリウム、リリウムの頭を軽く撫で、せっしーを呼ぶ。

 

「わたくしに指名? 一体どな…りり、うむ? リリウムではありませんか!」

「はい、お久しぶりです。セシリアお姉様、リリウムはお会いできてとても嬉しいです」

「ど、どうして貴女がここに…?」

「リリウムは現在カラードに雇われている身で社長や信一郎様のご厚意で護衛と言う形で連れて頂きました」

「と、籐ヶ崎さん?! いったいどういう…?!」

「何か、問題でも? それよりすまないが今日一日リリウムと一緒に過ごしてやってくれないか? 今回せっしーに会えるのを凄く楽しみにしてたんだ」

「セシリアお姉様は…お嫌ですか…?」

「そんな! いいえ、そんな事はありませんわ、喜んでお受けいたします。リリウム、今日はお姉様と一緒に見学致しましょう? 面白いところをたーくさん、教えてあげますわ。ですがもう少し待ってて下さいね? チェルシーも一緒に回りますわ」

「はい、セシリアお姉様! ではリリウムは社長や主任の護衛としてしばらくここにいます!」

 

滅多に見せない笑顔を輝かせながら全員のいるところに混ざって行く、と、やや半ばスルーしていたがオールドキングやナターシャまで護衛で来たのか、過剰戦力過ぎる気もするがまぁ多いに越した事は無いしな。

 

ナターシャがいっちーに話しかけていっちーがすこぶる驚いている、どうやらまさか来るどころかカラードに所属が移ったことも知らなかったようだ。

アメリカの代表候補生も口をあんぐり開けてナターシャを見ていた。

 

「や、やめて下さい、お客様!」

「なぁ、いいじゃんよぉ。俺と一緒に回ろうぜ? 楽しい事教えてやるからよォ」

「籐ヶ崎君!」

「あーいよっと」

 

予想通りさっきのチャラいのが店員の生徒に絡んでいる、一応ボディガードとしてここにいるので対処してくるとしよう、右手でキャラ男の腕を引っ掴み引っ張る。

 

「お客様、店員が嫌がっているので諦めては如何ですか?」

「あ? んだよオッサン、調子乗ってんじゃねぇぞ?」

「そんな細いもやしみたいな腕で何か出来るとでも?」

「てめぇ!」

 

空いた片腕で殴ってこようとするが生憎俺もそっちの腕は空いているので上腕二等筋あたりを引っ掴んだ。

 

「オイ、糞餓鬼」

「あぁ?!」

後ろ(こっち)を見てみろ、ガキ」

 

と、後ろを見たチャラ男がフリーズする。

ショットガンを顔面に突きつけてるオールドキングやらスナイパーライフルの銃口を向けたリリウムやらどこから出したのやらミニガンをキュィィィと回しているヴァオーやら銃口の数だけでも20を越える死の塊が多数の殺気と共に男に向けられている。

まだ向けられているのが普通の銃器な分マシだがそれでも一般人にとってはどうしようもない、漏らしていないだけよくやっているとは思う。

 

「死にたくなけりゃ今すぐに坊ちゃんから離れて失せろ、10秒くれてやる」

「う、ひ」

「10 9 8 7」

「あぇ…」

「6543」

「ぎゃぁぁぁ!!」

 

情けない悲鳴を上げながら転げるように逃げて行くチャラ男、彼の所為で男の価値観が下がって行く。

豚のような悲鳴を上げろ、悲鳴を上げろ…豚のような!

 

「…マヌケが、話にもならんな」

 

フンと鼻を鳴らしながらショットガンを粒子化させ、続いて全員が次々武器を粒子化させていく、あぁそういう。

 

「うーん、そうね…うん! 社長として護衛の貴方達に指示を出します。もう自由に行動していいわ、好きに見学なさい、そう滅多に来れる場所じゃないんだから」

「社長! 私も自由に見ていいですかぁ?!」

「フレドリカ、貴女は私達と一緒よ、目を放したら危ないし」

「うわぁん! 酷い! 酷いですよぉ!! うぅ、残念でしたねぇジャック、研究員は自由行動無しだそうですよぉ…」

「ジャックも自由にしていいわ、フランと話もしたいだろうし」

「酷くないですかぁ?!」

「いえ、私はフランとレイの仲を邪魔するほど空気が読めないわけではありません、それに今私は研究者として来ていますので、社長や主任と共に色々な技術に触れることはメリットになるでしょう」

「やぁだぁ! 真面目すぎるんですもんねぇ!!」

 

涙目でズルズルと引き摺られていくアクアビットリーダー、そして他のリリウムを残してバラバラに去って行く護衛たち、チャラ男の代金含め母さんが支払っていた、多分そろそろ俺も休憩のはず、だと思うんだ。

なお、何故かオールドキングとナターシャが同じ方向に歩いていった、気にはなる。

 

「午後からの3時間勤務のメンバーが来たから午前メンバーは上がっていいよー、織斑君も籐ヶ崎君もお疲れさまー」

「さっきのトラブルみたいなのとか対処できるか?」

「だいじょーぶだいじょーぶ、織斑先生が3時まで残ってくれるから、それに最悪警備員の人呼べばいいってさー」

「あいよ、相川もおっつー」

「あーつっかれたー、んじゃあ回ってきましょうかねー」

「し、死ぬる」

「いっちーもお疲れ、あとは適当にやってりゃいいさ、あと今日は気をつけろよ、学園外から部外者が腐るほど来てる」

「おー、じゃあなシン」

 

俺の忠告を聞いてるのか聞いてないのか全く分からん、極論で言っちまえば俺一人いない程度ではどうとなる事は無いはずだがどうにももう原作がどうなっているのか皆目見当が付かん、ただほぼ間違いなく何かはあるんだろう、良い方か悪い方かは分からん、まぁ考えていても仕方ない簪とデートをしてくるとしよう。

 

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 

「オッスオッス、4組は…何? お化け屋敷? またベタな…」

「やっていきますかー?」

「そうさな、んじゃお願いします、簪は後で探してみよう」

 

ドアを潜るとそこには真っ暗な道、なるほど、区切って一本道か迷路式にしているんだな、とりあえずは道なりに進ん……

いい事を考え付いたぞ。

 

 

「あぁ、私の…私の足はどこ……あなたのそれ……私の足? 返して…返してぇ……私にょぉぉおおお?!」

 

顔だけリヘナラに作り変えた状態で進んで行くとまずテケテケ(下半身の無い妖怪、人の脚を千切りとって行くらしい)を撃退、その後マハハハハと笑っておくのを忘れない、これで相手は逆に驚かされたのだと分かるのだ、そうしなければただの嫌がらせになるし。

 

そして次々と妖怪やお化けを撃退して進んで行くと井戸がぽんと置いてあり、物凄くベタな妖怪であろう、向こうを向いて立ちながら白装束で皿を数えている。

よくよく見れば髪の毛は水色で内ハネ、愛しの簪ちゃんではないか、顔を元に戻しておくのを忘れない。

 

「6枚……7枚……8枚……9枚……一枚足りない……どこ、どこ……?」

 

ぐるんと下を向いて振り向きながら井戸から這い出してくる。

 

「どこに……ッ?! 隠した、の……ぉ?」

「おぉ、よく最後まで言い切ったな簪、外で待ってるから、後でデートしよう」

「う……うん……」

「じゃあ、頑張ってな?」

「うん……じゃあ、ね?」

 

ちなみに本来は9枚の後何らかの事をして再度1枚から数えなおしたり右手の中指が無かったりと流石に違う所は多々ある。

等と割とどうでもいいことを考えながら普通に歩いて行くと道の端と言うか隅というか、兎に角そこで棒立ちになってIS学園の制服を着た女子がとても恨めしそうにこちらを見ている。

 

「どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてフランにも代表にも彼氏がいるのに私にはいないの何でこの学園で彼氏なんて作れるの羨ましい妬ましい恨めしいリア充が許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない死んでしまえばいいのに死ねばいいのに死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死」

「あーこれアカン奴や!」

 

多分このお化け屋敷で一番怖い、何と言う手の込んだ演技だ、まるで本当に殺気を込めているようだ、ブルッちまう。

これ以上進むのは非常によろしくない、かと言って下がるわけにも行かん、行くのだ、行かねばならぬのだ!

 

「ソーッ……」

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!!」

「おぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

彼女はただのスタッフらしかったです、回収されていきました。

正直しばらく4組には近付かないと思います。

 

「ごめんね……待たせちゃった……?」

「いや、何、問題ないさ」

「ねぇ……その、怖かった……?」

「生きてる人間ほど怖い物ってのはそう無いな、本当に」

 

油断してたぶんなお怖かった、俺が恐怖で叫び声を上げたのって久方ぶりだな。

 

「ねぇ、死ぬって……どうなの……かな?」

「死ぬ、死ぬか…」

「ごめんね、分かるわけ」

「痛いし苦しい、心臓に穴が開いてるってのに頑張って動かんでもいいだろうに」

「あ……」

 

それを聞いた簪が俺の胸に額を当て抱きしめる。

 

「大丈夫だ、俺は生きている、お前を残して行きはしない」

「うん……」

「公衆の面前で随分とお熱いご様子で」

 

と、声のした方向を見ると先ほど大暴走スタッフを取り押さえた内の一人がニヤニヤとこちらを見ていた。

 

「恥ずかしがる必要なんて……ないもん……」

「ここでもし俺が非常に下品な笑みを浮かべると薄い本の一場面の出来上がりだ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「やめてよ、人が不幸になる話とかって大嫌いなのよ」

 

ノーサンキューのポーズで後ろに下がった後簪に手を振りながら去って行った、では俺達はデートに行くとしよう、適当にそこらじゅう回ればいいだろう。

 

「んじゃあどっか行くか、クラスのを見て回るか部活のを見て回るか、どっちがいい?」

「特にない……かな…?」

「それならー…俺の部に少し顔出してくるか」

 

それを聞いた簪が驚いた表情で俺を見る、どうした…ジャック…?

 

「信一郎……部活、入ってたんだね……」

「あぁ、最近入った、と言うより捻じ込まれた」

「どんな部……?」

「そりゃ見てからのお楽しみ、ってな」

 

ちなみに何をやっているのかとかも全く知らない、予測するなら的当てとかじゃ無かろうか。

 

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 

「あらあらまあまあ、こんにちわー! はいこんにちわー!」

「リサ先輩ちわッス」

「こ、こんにちわ……」

「何しにきたんですかあ? もしかして、あなたも死にたがりですかあ?! まあどうでもいいですねえ」

「サバゲー部はどんな出し物してるのか気になりまして、見たところ何もしてないようですね」

「いえいえ、私とサラ(サラ・ウェルキン部長)はここで指示を出している、いわばHQなんですねえ」

 

そういいながら胸ポケットの通信機を取り出すリサ先輩、その胸は豊満だった。

 

「道中出店を見ませんでしたかあ?」

「あぁはい、幾つか」

「IS学園には現在37の出店が出ていますよお」

「はい」

「ちなみにサバゲー部の部員は籐ヶ崎君、リサ、サラを除くと74人います」

「…サバゲー部が出してる出し物って出店ですか…」

「正解ですねえ!」

 

嬉しそうにポムと手を叩くリサ先輩、目ェカッ開いてて怖い。

そうだ、と一言呟いてマガジンが半ばはみ出したバックパック(リサ先輩は何故か軍用バックパックを常用している)からグシャグシャになった紙束を引っ張り出した、一緒にマガジンも引きずり出される。

何事も無かったかのように実弾の詰まったマガジンをバックパックに押し戻し、紙束を突きつけてこう言った「あなたの泣き顔笑えますねえ」呆れたが、なるほど笑えた。

 

「これは部員にのみ配られている出店のサービス券ですねえ、色々回ってみると面白い物があるかもしれませんよお?」

 

隣で簪が「あれ? え……? 実弾……?」とあたふたしている。[R1]可愛いじゃないか!

 

「あら、何をしていらっしゃるのですか? まぁ、こんにちわ、今日はいい学園祭日和ですね、籐ヶ崎くん」

 

フランとはまた違ったふわふわした垂れ目の女性が部室から出てきてふにゃりと笑みを浮かべる。

この女性、名はサラ・ウェルキン、イギリスの代表候補生にしてせっしーの先輩、そして実力至上主義の剛の者だったりする。

 

「貴女は日本の代表候補生の更識簪ちゃんですね? 楯無さんから話は常々伺っています。口を開けば簪ちゃん簪ちゃん、ふふ、愛されていますね?」

「その……いつも姉がご迷惑を……お掛けしております……」

「いえいえ、こちらこそ。あらら、デートのお邪魔でしたか? うふふ。リサさん、お邪魔しちゃ悪いですよ、よく言うじゃありませんか、人の恋路を邪魔する奴は戦車に轢かれてハンバーグって」

「ですねえ」

 

と言いながら部室へと二人して戻って行く。世界一食いたくないハンバーグだ。

手に握らされた紙束を見ると割引券、流石に無料にはならんみたいだ、まぁそんな小さい事でグチグチ言うつもりは毛頭無いが。

 

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と学園祭を回っていると見た事のあるたてにゃんが壁に背を預けて腕を組みながらドヤ顔でこちらを見ていた。

簪が露骨に嫌そうな顔をして俺の腕を引っ張って来た道を戻り始める。

 

「ちょ、ちょっ、ちょっと待って?! 何で?! アイエエエ! 簪=チャン、簪=チャンナンデ?!」

「ドヤ顔が鬱陶しかったなんて……口が裂けても……言えない……」

「も、もっとオブラートに包んだ言い方は無いの…? 簪ちゃん」

「ジロジロ見ないで下さい不快です死にます」

「で、デレるのよね?! 最後は勿論デレてくれるのよね?!」

 

何の話だろうか、鬼気迫ってるたてにゃんが何と言うか笑える。

 

「で、用事は何……? お姉ちゃん……」

「あ、それね、実は簪ちゃんに用があるんじゃなくて籐ヶ崎君のほうにね」

「わーい」

「苦虫を噛み潰したような顔するの止めてくれない…?」

「今のは……口一杯に苦虫を頬張って……アッパーカットを食らった時の顔……だよね?」

 

そんな顔してたのか、俺は……馬鹿な…こんなこと…。

アハッ、アハハッ…とでも言うと思ったのかい?! アハハッ、この程度、想定の範囲内だよ!!

 

「Age quod agis」

「ごめん、ちょっと何言ってるのか分からない」

「Tu fui. ego eris」

「…籐ヶ崎君には黙ってても仕方ないし言っちゃうと一夏君はどうあっても生徒会に引き入れたいのよ、まぁ方法はご存知の通り尤も投票数の多かった部活だけど、それで盛上げる演出として手伝って欲しいのよね、どう?」

「面白そう(小並感)」

「じゃあオッケーって事でいい?」

「でも簪となぁ……」

「デートはまた今度じっくりすればいいわ、邪魔しないし」

「お姉ちゃん……いいの……?」

「正直言っちゃうと簪ちゃんが籐ヶ崎君の事大好きだって言うのはもう完全に分かっちゃったし、籐ヶ崎君も簪ちゃんの事大事にしてるし、泣く泣く、断腸どころか最早断魂の思いで認めることにしたのよ」

「お義姉さん…」

「まだソレは許さん」

「アッハイ」

 

とても冷め切った養豚所どころか屠殺寸前の豚を見るような目で見られつつスッパリと言い放たれる。ンギモッヂイイ!!

 

「簪……いいか…?」

「うっ、ん……いい、よ…? いって、信一郎……♡」

「もし私が男なら簪ちゃん襲ってるわ、籐ヶ崎君本当に簪ちゃんを大事にしてくれてるのね、お姉ちゃん嬉しいわ」

 

鋼の精神で簪の言い回しを耐え簪と分かれてたてにゃんに付いて行く。

 

「ところでたてにゃん、俺の役割は?」

「聞いてるわ、籐ヶ崎君割と片っ端から適当なあだ名付けて呼んでるらしいわね」

「にゃんにゃんたてにゃん」

「ヤダむかつく、貴方の役割はね……」

 

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 

―織斑 一夏―

 

ガキンッ! という小さな鉄を力一杯叩いた音と金属トレーに何かが直撃した音、そして勢いよく飛ばされ、床をガランガランと転がって行く。

さっきまで盾にしようとしていたトレーは無残にも穴が開いて遥か後ろ…って穴ァ?!

見ればトレーのあった場所には細かく揺れる小さな赤い光、俺の記憶が正しければレーザーサイトだ。

 

「そ、そ、狙撃ィ?! ありかよこんな事! じょ、冗談じゃ」

「「「一夏ァ! 覚悟ォォ!!」」」

 

最初に斬りかかって来た鈴を筆頭に遥か遠くでチラリチラリと赤い光が瞬く狙撃主セシリア、日本刀を持って斬りかかって来る箒に弾薬はせめてゴム製だと信じたいショットガンを持ったシャル、ハンドガンとナイフを持って素早く突っ込んでくるラウラ。

シャルのほうから嫌な予感がしてきたから咄嗟に避ける、後ろにあった背景とかのオブジェクトに無数の穴が開いて吹き飛ばされた。

たった今シャルの持ってるショットガンが実弾である事を思い知った、心が折れそうだ。

 

「武器ィィィ!! せめて武器が欲しいよォォォォ!!!」

「一夏ッ! お命…じゃなかった! 王冠頂戴する!!」

「おい箒お前今命って言った?! 言ったよなぁ?!」

 

しかもよくよく見ればセシリアの横に双眼鏡でこちらを見ているモ○ゾーみたいな人もいる。

きっとイギリスのSAS所属で無敵砲台の二つ名を持っていて今は前線から退いて司令官ベースプレートとかしてるんだ。

イギリスの司令官と言う事で偶々IS学園に来たら自分の国の代表候補生が頑張ってるから茶目っ気でセシリアのサポートしてるんだよ。

 

『さぁ、はたして誰が王子様の王冠をその手に掴むのでしょうか!!』

 

呑気に実況なんてしてくれちゃって!

 

すると急に鈴やラウラが一斉に後ろに下がる、直後大きな何かが俺の目の前を遮って地面へと叩きつけられた。

グチャリ、と生理的に嫌な音を出して叩きつけられたソレは人の形をしていた。

夥しい量の赤い液体を回りに飛び散らせ、虚ろな目が空を見上げている、顔は整っていてきっちりとしたタキシードを纏っているが胸に剣で刺した様な大きな貫通痕が残っている。

ぞわり、と嫌な記憶が甦る、この手でもう既に親友とも呼べる人間の胸を刀で突き刺した記憶。

刀を血が伝い手を濡らす、刀を通して動く心臓の鼓動、ゆっくりと遅く弱くなっていく動き。

口から血を吐き、まともに喋れないはずなのに必死で喋る声、そして泣き叫ぶ知人の声。

 

「きゃああああああああ!!!」

「ひ、ひと?! 殺人?!」

 

手が震える、呼吸が苦しくなる、嫌な汗が噴出す、足が震える。

 

「大丈夫だ、アイツは…シンは、生きてたじゃないか……落ち着け、落ち着け織斑一夏…!!」

 

一度深く深呼吸して拳を握る。人が落ちてきた上を見ると、黒い影が俺を見下ろしていた。

 

『お前で28人目』

 

黒い影が上から自由落下してくる、十数メートル以上の高さから落ちてきた影は重い鉄の音を響かせて落ちてきた。

 

『恐れるな』

 

黒い影はゆっくりと手に持った剣を杖のようにして立ち上がり俺を見る。

 

『死ぬ時間が来ただけだ』

 

漸く見えた姿は青いボロ布を纏った騎士だった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

『ここでなんと乱入者です! 各国の王子を次々と暗殺する闇の騎士がこの舞踏会に乱入しました!』

 

どうやらこれは演出的な何からしい、全く、本当に驚いた、心臓に悪いったらありゃしな――

「危ないっ!!」

「うおっ?!」

 

鈴に押し飛ばされて床を転がる、一体何をするんだと講義しようと顔を上げるとさっきまで俺のいたところには剣が深く突き刺さっていた。

 

「このっ、貴様ぁ!!」

 

箒が真剣を構え騎士を縦に斬り付けようとする、だけど一瞬で深く突き刺さった剣を右手だけで引き抜いて箒が振り下ろすよりも先に軌道上に剣を移動していた。

箒は見た目より力が強く、剣を振ったときはあり得ないほどに斬撃は重い、それは長く剣道を続けていたからこそだろう、大の大人だって両手で受けて微動だにしないなんて不可能、それも真剣ならなおさら。

しかしあの騎士は右手だけで容易く受けてしまった、微動だにさせず。

左腕は動かないのかダランと下げられたままだ。

 

箒の刀を弾き上げ剣の腹を顔の横へと移動させると銃弾の着弾音がする、まさかセシリアの狙撃を剣で避けたのか?!

 

「邪魔する者は轢殺し、破壊し、磨り潰す、ただの一人として私の邪魔はさせん、死ね」

 

観客の中から風のように躍り出た影が騎士に攻撃をする、その攻撃を咄嗟に防御した騎士はズリと衝撃で下がる。

その影は、声は、聞いた事のある、見た事のある、声と姿だった。

と言うか。

 

 

 

黒いドレスを纏って出席簿(エクスカリバー)を持った千冬姉だった。

 

「一夏と同じ部屋になるのは私だ、千冬お姉ちゃんだ、黒い騎士とて小娘共とて邪魔はさせん」

 

ヒュン、と剣を一度振り何かの構えを取った騎士に黒い影が集まる、何故かは知らないが、途轍もなくヤバイ。

 

「ほう、面白い、いいだろう、真正面から叩き潰してやる」

 

猛禽類だって土下座して泣き叫ぶ笑みを浮かべた千冬姉が浅く構えを取った、千冬姉が構えたの始めて見たかもしれない。

得体の知れない重い音を響かせながら黒い影を全て纏った騎士が消えるような速度で突進して突きを放っていた、何故か凄まじい暴風が千冬姉と騎士の間から発生し、いつの間にか出席簿と剣が細かく振るえながら拮抗を保っている。

 

「ば、馬鹿なっ…こんなことは…!!」

 

千冬姉が狼狽している?!

ギン! と出席簿にあるまじき音を出しながら千冬姉の手から離れ、弾き飛ばされた、嘘だろ?!

騎士は剣を横に構え、首を刈らんが如く全力で振っている。

すると千冬姉はニィ、と身内だとは思いたくないような恐ろしい笑みを浮かべていた。

 

「ハハッ、とでも、言うと思ったのか? この程度、想定の範囲内だ! ハハ、アハハハハッ!!!」

 

懐からすかさず「二つ目」の出席簿を取り出し騎士の即頭部を殴打し、吹き飛ばしていた。

無茶苦茶に地面を転がり壁に叩きつけられた騎士がそのまま、地面に倒れこむ、と言う様な事にはならず辛うじて耐えていた、スゲェ。

 

『ジェネレータ出力再上昇、オペレーション、パターン2』

 

ノイズの混じった声と共に鎧の一部が隆起し、赤熱した内部を晒す、コイツ機械かよ!!

 

『かつて、幾つもの国を破滅させた力、その一つが、この機体』

 

楯無さんもノリノリですね。

 

『黒い鳥、人の中の可能性、そんなものは、ただの妄言に過ぎない』

 

初耳です。

 

『人は、人によって滅びる、それが必然よ』

 

いや機械じゃんという突っ込み待ちなのだろうか。

 

『もういい、言葉など既に意味を成さない』

 

ナレーターと会話すんな。

 

『見せてみろ、貴様の力』

 

周りを見ると周囲の物が赤熱して物によっては溶けている、危ないな!!

こ、こんな所いてられるか! イカレ野郎がこの中にいるんだろ(ただし数の指定はしない事とする)?! 俺はとっとと逃げるぜ!!

そそくさと舞台の激戦から逃れるように人込みに混ざって行く、白いフードを被れば完璧だ。

すると急に右手を掴んで引っ張られる。

 

「こっちです! さぁ早く!」

「た、確か巻紙礼子…さん?」

 

今日俺に名刺を渡してきた女性だった。

礼子さんに促されるまま引っ張られアリーナの更衣室へと連れて行かれた。

 

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 

冗談じゃない!

ACの思考サポートを全力で使用してちっふーと打ち合う、正直人間じゃないと思う、腕力だって作り代えで通常の10倍近く強化されてるのに、認めない、こんなのが人間だなんて、認めない。

一度出席簿を弾き大きく後ろに下がる。

 

『潮時か』

「どうした、かかってこい、こんなに楽しいのは久しぶりだ、お前が機械であろうとそうでなかろうと構わない、もっと楽しませろ」

『……役目は果たした、そういう事だ、機会があればまたいずれ…さらばだ』

 

セラフに搭載されているタイプのステルスを起動する、足音を消し、ゆっくりと外に移動―――今俺の間違いで無ければ顔の直ぐ横を出席簿が通り抜けて行ったのだが。

 

「……消えたか、あのあたりだと思ったのだが、まぁいい。さーて一夏! お姉ちゃんに王冠を……な、んだと…」

 

わなわな震えたちっふー、急いで周囲を確認する。

 

「小娘どもは全員いる…なら、逃げたのか……ふふ、ふふふ! アハハハ! アーッハッハッハ!!! いぃぃちぃぃぃかぁぁぁぁぁ!!! 何としても見つけるぞぉぉぉぉ!!」

 

恐怖だ。

 

さてさて、それは置きたてにゃんから何も言われていないから、いっちーを追いかけるとしよう、嫌な予感がする。

 

「IBIS、いっちーの場所の特定及び現状報告を」

『3秒お待ち下さい………発見いたしました、場所は第9アリーナ更衣室、IS起動反応が一つ、白式ではありません、織斑一夏様よりIS反応ありません、恐らく強奪されたものかと、お急ぎ下さい』

「分かった、ありがとう姉さん」

 

どうやら思った以上に厄介らしい、第9アリーナ更衣室、全力疾走で23秒か、PA起動、ブースター起動。

 

「今行くぞ、たまには正義の味方ってのも悪くない」

 

15秒、まぁこんなもんか、熱源確認しながら更衣室の扉を破壊して飛び込む。

 

「あぁ? なんだテメェは」

「し、シン…?」

「よういっちー、元気かよ」

「おい、無視してんじゃねぇぞ!」

五月蝿い(やかましい)!! 亡霊(しにん)が喋るな!!」

 

そう言いながらゆっくり振り向くと半切れの女性が眼前にいた、あぁ知っているとも亡霊ども、亡国機業ども!

 

「この俺の眼前で亡霊(デッド)が歩き不死者(ファントム)が軍団を成し、戦列を組み行進する。唯一の理法を外れ外道の法理をもって通過を企てるものを、兵器開発者(われわれ)が、カラード(われわれ)が、この俺が許しておけるものか!! 貴様は震えながらではなく、藁のように死ぬのだ!!」

 

そう叫びながら徒手空拳の構えを取る、一度言ってみたかった。

目の前の女性はニィと笑みを浮かべる、が先ほどもっと凄まじいヤバイ笑みを浮かべる女性とやり合っていたので怖いもんじゃない。

 

「あぁ、知ってるぜテメェ、カラードの籐ヶ崎信一郎だな、私はオータム、亡国機業のエージェントだ」

「チェンジアーマー」

「おっと、展開はするなよ、した瞬間後ろのご友人に穴が開くぜ?」

「……なら素手で行っとくか」

「あ?」

 

ブーストを起動しながら踏み込み左手で殴りかかる。

シールドに干渉、即座に脚部ブレードを展開しミドルキックを力任せに叩き込む。

多少の衝撃とシールドエネルギーにダメージは入ったはずだ。

 

「正気かコイツ?!」

「いいや? ただのイカレ野郎さ」

「クソッ! っらぁ!!」

 

再度殴りかかった左手が弾き上げられる、その勢いを残したまま脚部ブーストを起動し膝を顔面に直撃させ翻った。

しかしお世辞にも打撃技に優れているわけでもない俺はバランスを崩し地面に叩きつけられる。

 

「義手かぁ! なら、コイツでどうだ!!」

 

立ち上がろうと地面についた左手を蜘蛛の脚みたいなので突き刺され砕かれる。

 

「畜生!」

「どうだよ、もう抵抗はできねぇぞ、素手で殴りかかる勇気があるなら別だがな?」

 

能力使用、痛覚神経を変化させる、と言うか消す。

 

「フンッ!!」

 

オータムにゃんの顔面を右手で殴る、案の定シールドに防御された上にたぶん拳が砕けた。

 

「なんだよ、こいつ、ぶっ壊れてる!」

 

狼狽するオータムにゃんに構わず再度砕けた右手で殴る、もう一度、殴る殴る殴る。

流石に返り血はシールドも攻撃と認識しないのか点々とオータムにゃんに赤いお化粧が追加される。

OH、俺の右腕が非常によろしくない見た目になっているよ。

 

「クソが!!」

 

ブレードで右腕が斬り飛ばされ、地面へと倒される。

 

「化け物が、ついでだ、テメェのISも頂いて行くぞ」

 

何かヘンなやつを突きつけられる、なんぞそれ。

右手から夥しい量の血が流れてるけど失った端から創っているので無限に垂れ流せる。アンリミテッドブラッドワークス、なんちて。

 

「なに…? 奪えないだと?」

「なら殺して奪ってみろ」

「あぁ、じゃあそうする」

「シンッ!! 止めろぉぉぉぉぉ!!!!」

 

一切の躊躇無く蜘蛛の脚が俺の心臓を貫いた、マジかよ。

 

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

 

―織斑 一夏―

 

ISが奪われた、ありえねぇ、畜生、俺はこんなにも無力だって言うのか、何の為に楯無さんに鍛えられていたって言うんだ、俺はまた、何も出来ないのか!!

なんとしても状況を打開する、その方法を見つけないと、そう思っていると扉が破壊され人が飛び込んできた。

 

「あぁ? なんだテメェは」

 

オータムと名乗った女が声を出す、こちらに顔を向けた人はIS学園で出来た俺の親友のシンだった、俺を見るとシンはにやりと笑う。

 

「し、シン…?」

「よういっちー、元気かよ」

 

悪ガキの様な笑みを浮かべたまま楽しそうに笑っているシンが後ろから話しかけたオータムに顔を向ける。

 

五月蝿い(やかましい)!! 亡霊(しにん)が喋るな!!」

 

次々と叫ぶように言葉を放つ、オータムはシンの顔を見て驚いたような表情をした後狂ったような笑みを浮かべた。

 

「あぁ、知ってるぜテメェ、カラードの籐ヶ崎信一郎だな、私はオータム、亡国機業のエージェントだ」

 

俺に向けていたライフルを俺から外し両手を広げるようにして自分の素性を明かす、俺の時と同じように。

 

「チェンジアーマー」

「おっと、展開はするなよ、した瞬間後ろのご友人に穴が開くぜ?」

 

再度ライフルを向けられる、俺は理解した、今の俺は邪魔でしかない、シンの枷にしかなっていない、なんでだよ、俺は何の為に…!!

 

「なら素手で行っとくか」

 

そう呟いた直後シンがオータムに拳と蹴りを叩き込んでいた、どう考えても自殺行為だ、オータムの顔が驚愕に染まり数歩後ろに下がる。

 

「正気かコイツ?!」

「いいや? ただのイカレ野郎さ」

 

少し笑いながらシンはもう一歩踏み込んで殴りかかるが、容易く左手を弾き上げられる、それも想定していたかのように勢いを残したままオータムを蹴りながら跳んだ、だけど無茶な体制で攻撃した所為かバランスを崩し、地面に叩きつけられる。

すぐに立とうとしたシンの左腕が二本の装甲脚によって砕かれた。

 

「どうだよ、もう抵抗はできねぇぞ、素手で殴りかかる勇気があるなら別だがな?」

 

笑うオータムを相手にシンは右手で直ぐに起き上がり「生身の」右手でオータムを殴った。

骨の折れる音と肉の潰れる音がしっかりと俺の耳にも入る、間違いなくシンの拳はたった今潰れた。

 

「なんだよ、こいつ、ぶっ壊れてる!」

 

狼狽するオータムを一切気にしないかのように潰れた右手で殴り続ける、嘘だろ、止めろよ、シン!!

声が出ない、あまりの事に動く事すら出来ない、何度も何度も殴るうちにボトリと何かが落ちた、目を向けるとそれはグチャグチャに拉げ千切れたシンの右手だった、今シンの手首より向こうには何もない、それでもシンは全力でオータムを殴り続ける。

 

「クソが!!」

 

瞬時にブレードを展開したオータムがシンの右腕を斬り飛ばす、直後にシンを蹴り、地面に倒した。

 

「化け物が、ついでだ、テメェのISも頂いて行くぞ」

 

腕の付け根から血を噴水のように噴出しているシンにオータムが機械を突きつける、俺の白式を強制的に剥がして奪い取った機械を。

しばらくそうしていたオータムが不思議そうな顔をする。

 

「なに…? 奪えないだと?」

「なら殺して奪ってみろ」

 

一切痛みに表情をゆがめる事もなく、冷静にシンがオータムに言い放った、オータムは一瞬動きが止まり笑みを浮かべながら装甲脚の一本を振り上げた。

止めろ、止めろ、やめろ! やめろッ!!

 

「あぁ、じゃあそうする」

「シンッ!! 止めろぉぉぉぉぉ!!!!」

 

地面ごとシンの身体を突き刺した。

 

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

 

―Third Person―

 

「ぎゃははははははははは!!!! ひー、さってっと、んじゃじっくりバラしてISを頂いて行くとするかぁ、死体には過ぎたおもちゃだよなぁ? ギャハハ!」

 

 

 

 

「白式ィィィィィィィッ!!!!!」

 

 

 

 

一夏が叫ぶと同時オータムの手から光が飛び出し一夏へと吸い込まれた、オータムが声を上げる間も無く一夏が白式を展開する。

 

「なっ?! どうし――」

 

オータムが驚きの声を上げる最中「ゴン」と音が聞こえシールドに微々たるダメージが入ったことをISが知らせる。

目を向けると心臓を貫かれた筈の信一郎が狂ったような笑みを浮かべ紫電を纏った皮膚の無い右腕でオータムの顔面を殴っていた。

否、正確には「まだ皮膚の再生していない」右腕でオータムを殴ったのだ。

最後の抵抗などではなくさも当たり前のように人間の限界に近い力でISを殴り続けている、その都度ゴキリ、グチャリと骨が折れ、肉の潰れる音が聞こえるが再度殴りかかるよりも先に修正されて行く。

 

「ひ、こ…の、このっ…! 化け物めッ!!!」

 

信一郎を突き刺した装甲脚を振り回し装甲脚が体から離れ信一郎が壁に叩きつけられる、ISの力を殺す気で行使された身体は壁を陥没させ再度骨と肉が潰れる音を周囲に響かせ塗料の入ったバケツをぶちまけたかの如く壁を赤く染める。

ぐちゃりと重く濡れた音を立て信一郎が地面に落ちたとき、既に右腕は元あった通りに戻っていた。

信じられないほどの量の血を穴の空いた胸からぶちまけながらゆっくりと立ち上がる。

しかし胸に空いた穴さえも紫電を走らせ凄まじい速度で塞がって行く。

 

「なんだよ、なんだよ……なんだよお前ぇ!!!」

 

答える事無く一直線にオータムへと走り拳をオータムの顔面に叩き込む、オータムが表情を歪め数歩後ろに下がる。

 

「来るなぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

幼子が泣き叫ぶような声を上げ装甲脚で信一郎の顔をなぎ払う、あまりの威力に身体を一切揺らす事無く下顎より上が消し飛んだ。

一瞬動きが止まり、ぐらりと身体を揺らし地面へと倒れ、漸くピクリとも動かなくなった。

 

「はっ、はっ……ち、畜生が、畜生が…!! くそっ、もう…もういい! 織斑一夏、お前を殺してでもISを奪って、ここから離れ」

「あ、そん…まだ…?!」

 

オータムが白式を纏い、驚愕の表情を浮かべたままの一夏の前に立ち震える手を握り拳を作った、しかし一夏はオータムの「後ろ」を見ていた。

意識を回し後ろを確認すると左腕も新たに装着され、皮膚のみ残し修復された信一郎がただ悠然と立っている。

 

「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

我武者羅に信一郎を破壊しようと振り返りながら装甲脚を叩きつけるが左腕で一瞬捕まれ、回すように「生身で」投げ飛ばされた。

先ほど信一郎が叩きつけられた場所にぶつかり壁が崩れる。

 

「なんで、なんでだよ!! 心臓を突き刺しただろうが! 脳を消し飛ばしたじゃねぇか!! なんで生きてるんだよ! なんで死なねぇんだよ!!」

再生者(リジェネーター)我々カラードが貴様等IS乗りと戦うために生み出した技術だ」

 

楽しそうに、愉しそうに、たのしそうに、そう笑った。

 

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

 

ジリジリと横に移動する震えたオータムにゃんをニヤニヤ笑いつつ追い詰める。

 

「どうだ? 死なない化け物と対峙した気分は、最高だろう? 隠さなくていい、俺は今最高の気分だ」

「くそ、なんて無茶苦茶な科学技術だよ、畜生! こうなりゃしかたねぇ」

「逃がさん」

 

追いかけ手を触れてパチン、と指パッチンしつつ能力で概念を弄ればそれ、オータムにゃんから「ISが空を飛ぶ」と言う概念が消失、これでオータムにゃんにとってISは「空を飛べない世界最強の兵器」になった。

 

「…何をした? いったい、私に何をしたんだ!?」

「なにも?」

「そんな筈はねぇ、ナニカした筈だ、畜生、わかんねぇ!」

 

さて次だゆっくりと心を壊してやる。

 

「クソォッ!」

「それ」

 

攻撃に繰り出してきた装甲脚のうち一本を「消す」他は直撃だが何一つとして問題は無い。

 

「やっぱり効きやしねぇ、化け物が…!」

「な、え…?」

 

後ろでいっちーがあたふたしている、大方「脚が一本なくなったのに全く気にしていないのは何故か」とか考えているんだろう。

 

「さて、ではここで質問だ、確かそのIS、名前はアラクネといったな? アラクネは蜘蛛の名を冠するISだ、蜘蛛の脚は何本ある? 8本だ、昆虫類とは違うらしいな、それはさておき……」

 

 

「蜘蛛の名を冠したそのアラクネに何か足りないものは…ないか?」

「足りない…? ッ!!」

「そうだ、脚が一本足りないな? いつからだ? それはお前にとっておかしかったか?」

「いや、まて…! おかしい、おかしいのに、当たり前だった…? なんでだ、気づくだろう普通!」

 

オータムにゃんにとってアラクネの脚が一本無いのは強奪した時からでそれが当たり前だと考えていた、とまぁ概念消失による記憶の改変とかややこしい事になってるんだよね。

 

「さて、これから尋問を始める!」

「なに…?」

「思い出せ」

 

指パッチン、実は指パッチン必要ないんだけど触れて一応指パッチン。

物理的に無くなっちゃったもんは仕方ないがアラクネの脚は8本だった事を思い出させる。

 

「あっ、くっ…テメェ…!!」

「お前は死を恐れるか?」

「何言ってんだ、ぶっ壊れたクソ野郎め」

「怪我を恐れるか? 恐怖を恐れるか?

 何が恐怖だ? 死か、破滅か、痛みか、それとも信じる人に棄てられる事か?」

「くだらねぇ、怖いもんなんざもう、ねぇよ、テメェの種明かしもわかっちまったしなぁ…?」

「BINGO、お前の恐れるものは、愛する人に忘れられる事だな…?」

 

生前と一緒だ、テロリストやら狂信者ってのはどうも信じる人や物が全てである事が多い、いつでも殺せる状態にして死ぬのが怖いか聞くと迷いなくNOと言っても瞳孔が揺れる、これは死ぬのが実は怖い人。

んであとは揺れなかったら物に縋るか人に縋るかを問うといい、信じた人に棄てられる事か聞いた時一瞬瞳孔が揺れた、恐らく棄てられてもいいが忘れられる事だけは嫌なんだろうと当たりをつける。

もしかしたら自分がいた証を消されるのが怖いのかもしれない。

 

次々とアラクネの脚を消して行く、一本、二本、三本、何かが起こっているが何が起こっているのかわからない、そんな状態で心を揺らす。

 

「さっきの話は覚えているな? さぁ問題だ、アラクネの足は何本ある? 1,2,3,4…4本だな?」

「やめろ……やめろ!!」

 

腹を半分ほど削られてバランスを崩しそうになる、支えるのも含めて右手でオータムにゃんの首を絞めるように掴む。

 

「俺は消せる、お前を消せる、記憶を消せる、存在を消せる、記録を消せる、全てを消せる。お前は誰の記憶にも残らない、お前はこの世に存在しなかった、お前は愛する人の記憶の端にさえ残らない、そして誰の記憶にもいなくなるか?」

「あ、あ…やめ…やめろ…」

「さぁ最後の質問だ」

 

 

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

左手の義手で指を鳴らす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前は……誰だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしやったことは全ての概念を戻す事、消しやせんよ、後味の悪い。

 

『いっちー、聞こえるな? 一言「アンタ誰だよ」って言ってくれ』

『え? あ、なん……わかった…』

 

「私、わたしは…わたしはぁ…」

「アンタ…誰だよ…」

 

 

 

「あ」

 

 

 

ISを解除してその場で崩れる、たった今心が割れた、だがまだ砕けるには一歩足りない、今一歩踏み込んだ方がいいだろう。

ゲスい笑みを浮かべてしまう、イカンイカン。

と、ここで壁を破壊してISが一機突入してくる、増援か、面倒な!

 

「一夏君、大丈夫? 遅くなってごめんね! 生徒会長が助けに……籐ヶ崎…くん?」

「…遅かったじゃないか、目的は既に果たしたよ」

「どうしてここに?」

「嫌な予感が大的中ってな」

 

「私は、私はオータム…私は…私は……?」

「彼女は…?」

「う、あぁ、アァあああああぁぁぁぁあぁあぁぁあああ!!!!」

 

脚をもつらせながら幽霊から逃げるように、と言うか逃げるオータムにゃん。

 

「ねぇ、何が―――」

「まぁ、丁度いいか、なぁいっちー?」

 

血だらけでボロボロになった服を修繕する。

 

「な、なんだ…?」

「お前は襲撃を受け白式を一旦奪われた、それを助けたのはたてにゃんだ、俺とは教室で別れて以降会ってない、いいな?」

「何言って…」

 

いっちーの記憶を作り変える、指パッチンはしない。

 

「え? あれ? シン、何でここに?」

「なんかISの戦闘音みたいなもんがしたから急いで来たんだが、もう終わってたか、事後処理は教員方がやってくれるだろ。じゃあの」

「待ちなさい籐ヶ崎君!」

「あと頼むわ、義姉さん!」

 

今はいっちー優先だろうし俺が去って行けば追いかけてこないし大丈夫だろう。

さってっと、んじゃいっちょ行きますか!

 

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 

みつけた、マハハハハ! どこへ行こうというのかね!

 

「ひっ、ひっ、はっ、ひっ」

 

おやおやおやぁ? やっべ、ちっふーじゃん、どうしよう。

 

「! どうしました、大丈夫ですか?」

「あ、あぁ…わた、私…」

 

そりゃ半ば絶望した顔で必死で走ってたら教員であり意外とお人よしなちっふーは気にするだろうなぁ。

オータムにゃんがちっふーの服を必死で掴みながら縋りつく。

 

「私は、誰…?」

「い、いえ、存じませんが」

「あ、は…あは、あはははは」

「大丈夫ですか?!」

「ちっふー! 第9アリーナ更衣室で襲撃があったらしい! その人はその際に巻き込まれて混乱してるんだろう、いっちーが襲われた! たてにゃんが撃退したが、いっちーも少し混乱しているとの事だ、その人は俺に任せて行ってくれ!」

「何?! わかった、頼んだぞ籐ヶ崎!!」

 

全力で走って行くちっふーを眺め非常によろしくない笑みをついつい浮かべてしまう、俺が砕く前にちっふーが最後の砦を砕いちまった。

あとは俺に依存させるだけだ。

 

「そら、見ろ…誰もお前の事なんか覚えちゃいない、誰もお前のことなんて知らない」

「あは、アハハハ、アハハハハハ!」

「でもな“オータム”俺は、俺だけはお前の事を知ってる、大丈夫だ、俺はお前のことを忘れない、お前はまだ一人じゃない」

「ひとり……じゃない……?」

「そうだ、どうだ? 俺のところに来ないか?」

「でも、私は……亡国機業の……」

「そうか、ならば無理強いはしない、だがそこにお前を覚えている人間は居るのか? おっと、ただの独り言だ気にしないでくれ、じゃあな、もしかしたら二度と会うことは…無いかもな?」

「あ、あぁ…まっ…て、まっ…」

 

俺の勝ち―――

「ッ!!」

 

エネルギー反応があった方向に左手を向け手動PAを発動させる、直後エネルギーマシンガンがPAに着弾、スモークミサイルもぶち込まれる。

 

「ッチィッ!!!」

 

簡易AAでスモークを散らすと既に空高くにオータムにゃんと青いISが一機いた、逃げられたか。

 

「あー、クソ、惜しかったなぁ」

『信一郎様、緊急事態です。簪様が襲撃を受けております、PAの起動を3秒前に確認いたしました、簡易式なので長くは持ちません、ポイントを表示します、お急ぎ下さい』

「なっ、クソ!!」

 

簪が襲撃を受けている?!

ポイントは…遠い!! クソ、クソ、クソ!!

 

「フラジール!! ACB-O710!」

 

OBレディ!

 

『襲撃者と距離が近すぎる為レーザーキャノンの援護が出来ません、着弾まで1.0037秒のラグがあります、PA減少しています、残り防御可能回数3回…2回です、お急ぎください』

「分かってる!!」

 

『PA切れました、簪様右腕負傷、ポイントまで12.5キロ』

 

『簪様が戦闘困難な状態になりました、ポイントまで1.1キロ』

 

『100メートル、接敵しました』

「シュープリスッ!!!」

 

サーマルを確認しながら壁をぶち破る、見れば10人以上の武装した人間が倒れ伏した簪の周囲にいた、床には簪以外で7~8人倒れている。

ISによる破壊の痕跡は無い、ISを展開しなかったのか…!

 

「貴様は?!」

「戦闘用意!」

 

「遅い、死ね…!」

 

クイックブーストで接近しながら両手のライフルでミンチ肉にして行く、1秒に満たない速度で片っ端から殺し、最後の一人を左腕武装の04-MARVEで串刺しにし、そのまま引き裂く。

 

「…簪っ…!!」

 

倒れている簪を抱き上げ息を確認する。息はしているようだ、怪我も命に係わるものは無さそうでほんの少し安心する。

 

破壊した壁から屋外に出て下に降り、リサ先輩の携帯電話に連絡する、学園の医療関係で知っている連絡先なんてリサ先輩以外知らない。

 

『どうしましたあ?』

「簪が怪我をして、学園の医療関係で知ってる連絡先なんて先輩しか知らなくて」

『落ち着いてくださいねえ、簪ちゃんの怪我の具合は見た感じでいいです。教えてください』

「右腕の上腕に裂傷、傷が少し焼けている事から恐らく銃創だと思います、他には…」

『銃創ですか、もう結構ですよお、わかりました応急処置は出来ますよねえ? 場所を教えてください、緊急医療車両を使います』

「ポイントを送信します、他には」

『簪ちゃんが気絶していたならもし起きた時支えてあげてください』

「わかりました、ありがとうございます」

『では直ぐ向かいますねえ』

 

連絡を切った後急いで応急処置を施していきながら再度通信を起動する。相手は霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)

 

『籐ヶ崎君? 丁度聞きたい事が―――』

「簪が襲撃を受け負傷した、今応急処置をしている、もう少しで緊急医療車両が来るはずだ」

『そんな、うそ?! ど、どうして?! なんで簪ちゃんが!!』

「知らん! 俺だって知りたい!!」

『ッ! ふ、っー、ふー……襲撃者は?』

「殆ど殺した」

『殺し…! ……そう、生きているのは、ちゃんといるのね』

「簪が、殺していなければ…」

『ISを無力化するなんて……ISを運用していたの?』

「ISの、打鉄弐式の起動履歴が無い」

『なんで…?!』

「相手がISを使わなかったからだろう…!」

『簪ちゃんのばか…! 死んじゃったら意味無いのに…!!』

「応急処置が完了した、ポイントを送信する、死体の処理と尋問を頼んで良いか? 俺がしたら、殺してしまう」

『死体との見分けは付く?』

「人の形を保っているのが簪が倒した襲撃者、そうでないのが死体だ」

『わかったわ…今、行くわ』

 

通信を切断、簪を抱き支えながら頭を撫でる。

 

「……ん」

「簪?」

「しん…? 痛……」

「無理するな、何があったか、出来たら教えてくれ」

「信一郎と、わかれて……そしたら、つけられてるなって……周りに、被害が……ないよう、に、人気の無い所まで……移動して……そしたら、襲われて……ごめんね……」

「なんでISを使わなかったんだ…」

「私も……更識だから……打鉄弐式(このこ)を……使わなくても、出来るって……思っちゃって……それで、こんなになって………ばかだよね…」

「あぁ、バカだよ、大馬鹿だ、お前が死んだら俺は、どうすりゃいいんだよ」

「ごめんね、ごめんね……」

「俺も、とんでもない大馬鹿野郎だ、俺が簪か離れなきゃこんな事にはならなかったってぇのに…」

「ごめんね、信一郎……」

「すまん、お前の怪我を治してやりたいが、物理的な他人の作り変えなんてやったことがない、どうなるか、わからん」

「うん、いいよ……大丈夫……」

「音が聞こえてきた、もう大丈夫だ、簪…ゆっくり休め…」

「う、ん………」

 

簪がゆっくりと目を瞑った後緊急車両が到着し、白衣を着た教員数人とリサ先輩が降りてくる。

 

「簪ちゃんの容体はどうですか?」

「今は意識がありませんがさっきまで呼吸も安定して意識もしっかりしていました、致命傷はありません、応急処置も完了しました」

「……一年生の専用機を所持した代表候補生ですからねえ、強奪するなら一番よかったんでしょうねえ、もしくはもっと別の思惑があったか」

「………簪」

「これからどうしますか?」

「ここに残ります、会長がじきに来る筈ですので」

「わかりました、自棄にだけはならないで下さいねえ、見た所籐ヶ崎君がいなければ最悪の状況も考えられた訳ですからねえ、簪ちゃんが助かったのは貴方のお陰ですよお」

「…はい」

「では、もう行きますねえ、ではでは」

 

簪を乗せた緊急車両が去って行くのを眺めながら拳を握り締める。

 

『籐ヶ崎君、もう到着するわ』

「簪は運ばれていきました」

『下で通過したのを確認したわ……見えた』

 

ISを展開した会長が俺の横に着地する。

 

「待たせたわね、襲撃された場所は?」

「そこに見えるぶっ壊れた壁の中だ」

「……籐ヶ崎君、凄い目をしてるわよ」

「だろうな、行くぞ。キルドーザー」

 

崩壊した壁の穴を潜りさっきの廊下へと入る、中の光景を見た会長が口元を手で覆った。

 

「ひどい……」

「死体を見たのが初めてと言うわけではないだろう」

「そうだけど、ここまで人の形をしていないのなんて見たことないわ、逆に死体だって実感が無い位よ」

「そこに何人か転がってるのが生きてるのだ、こいつらから情報を吐き出させてくれ、亡国機業じゃない、無名すぎてIBISでも探せん」

「わかったわ…任せて」

 

ACを解除し赤色に染まった壁や床を見る、確かに現実味がない、手榴弾で吹っ飛ばされたってまだマシだろう。

 

「…初めてなのよね? にしては冷静すぎないかしら」

「初めて? あぁ、そういえば、初めてだったな、人を殺したのは……兵器か、確かに兵器だ、間違いなく……一秒も掛からなかった、流石はカラードの最強戦力だ、競技用の制限なんてあってないような物だな」

「きっと、まだ混乱してるのよ、後々辛くなるわ……ごめんなさい」

「謝る必要は無いだろう、それよりも頼んだぞ、本拠地だけは何としても見つけてくれ」

「え、えぇ……」




「あ、あぁ…まっ…て、まっ…」

その言葉はオータムにとって救いであり、恐怖だった。
この世界で唯一自分を知る人間が手を差し伸べている、だがそれは愛する人を裏切る最悪の行為。
それでも考えてしまう、最愛の人は自分を覚えていないのだ、否、知らないのだ。
ならば裏切らなかったとして何になるのか、裏切ったとしてそれは裏切りなのか。

最後の最後、心が欠片一つ残さず砕け散る寸前に信一郎が左手を宙に突き出し直後、無数のレーザーが着弾した。
間を一切おかずミサイルが着弾し、周囲を一瞬で煙が包む。

『助けに来たぞ』
「あ…あ…!」

オータムの手をISのマニピュレーターが掴み、引っ張る。
マニピュレーターの先にはオータムのよく知る人間がいた、バイザーで顔は見えず、煙で口元も視認が難しい、青いISを纏った少女。

「まど…か…?」
『名を呼ぶな』
「私は、私は誰だ…?」
『何をヘンな事を言っている』

ビットで攻撃を続けながら少女、マドカは呆れたように口元を歪めた。

『掴まれ、行くぞ“オータム”』
「あ、あぁ…ああああぁぁぁぁぁぁぁ…!!」

オータムはボロボロと涙を流し始め、救われたような表情でマドカの手を必死で掴む、縋りつくように。
マドカはギョッとして右手で撃っていたレーザーライフルを格納し両手でオータムを抱きしめるように掴んだ、ビットに連続射撃を続けさせ、オータムを抱いたまま上空へと離脱する。
ある程度の高度になった後ビットを退かせ離脱する、後ろを見ると煙が一瞬で消し飛ばされる。
どうやら追いかけてくる様子は無い、マドカは助かった、と心の内で呟きオータムの為速度を少しだけ落とした。





何だったか、他に何か書こうとしたんだ、何だったか、うーむ。
そうだ、私のフレンドリーな生い立ちでも書いておこう。冗談です。

次回! コジマ汚染(ry 考えてみればクソ長いタイトルです。
「唐突にニンジャが出て殺すラノベ」お楽しみに!

あ、あと後々挿絵追加します。
しました。

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