コジマ汚染レベルで脳が駄目な男のインフィニット・ストラトス 作:刃狐(旧アーマードこれ)
学んだ事は経験値は金で買う物。
あ、ACVD予約完了です。
いいですね、格好いいです。
狂った感じのフライさん(仮)とかも良かったですけど、やっぱ敵はAIじゃないとね!!
あと上官可愛かったれす^q^
ペロペロ! イオンちゃんペロペロ! 間違えた! トントン! トントントン!
二人の女性が日本の山で囲まれた県、奈良県(電波が二本しか立たなかったり最悪圏外になる魔境、土人県)のある場所へとやってきた。
正しくは女性と少女がある企業へとやってきた。
「ようこそいらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でカラードへ?」
「えぇ、少し欲しい物がありまして」
長い黒髪の女性が微笑を浮かべフロントに立つスーツの女性へと返事をした。
その横に立つ少女は無表情を貫いたまま、ただ立つ。
「それはそれは、こんな所まで脚を運んでいただきありがとうございます。インターネットから購入して頂いても構いませんのに」
「そういう訳にもいかないんですよ、だって私達が欲しいものは」
サングラスをゆっくりと女性が外すと口元を大きく歪ませた。
「ここの最新機だからよぉ!」
「…ふん」
一瞬の閃光の後黒髪の女性と少女がその身に世界最強の兵器だと一般に認識されるISを身に纏っていた。
フロントに立っていた女性が何か行動を起こす前に少女が巨大なレーザーライフルを突きつける。
「妙な真似はするな、死にたくなければな」
「……我が社の最新機なら地下最下層で保管されていますよ、欲しければどうぞ、ただし……」
「そこまでたどり着けるなら、の話ですがね」
「てめぇ…」
「撃つなオータム!」
「あぁ?! んだとエム!」
「いい選択です、私の目前にはエネルギーシールドがあります。撃ったところでエネルギーの無駄でしたよ。それに貴女方がISを所持しているのは分かっておりましたから」
クスクスと女性は嘲笑う、オータムはギリと奥歯を噛みエムは一瞬で左手にブレードを持ち空間を切りつける、しかしその刃は見えない何かに接触し動きを止めた。
一つ舌打ちをしてブレードを仕舞う。
「行くぞオータム、防衛システムが展開される前に進めるだけ進む」
「チッ、わぁってる!!」
エレベーターのドアを破壊し二機のISが下へと降りていったのを見つめ女性が通信を起動する。
「社長! すっごく怖かったんですけど!! 足ガックガクなんですけど!! おしっこ漏れちゃうかと………湿ってる……グスン」
『ごめんなさいね、でもいの一番にやるって立候補したのは貴女よ?』
「28歳にもなって! 28歳にもなってぇぇ! ふえぇぇぇぇぇん!!」
『社長、侵入者はいかが致しますか?』
『そうね、遊んであげなさい、IBIS。最下層までは持たせてね』
『了解しました』
床に伏しオイオイと泣く女性を置いてただただ二人の侵入者の迎撃作戦が始まった。
だが緊張感の欠片も無い何人かの人間が扉をパワードスーツで蹴破り大声を張り上げた。
「フロント嬢の!」
「染みパンが!」
「湿パンが!」
「「「食べられると聞いて!!!」」」
だが悲しいかな、いくらカラードの人間でも彼女はフロント嬢になる程のわりかしまともな人間だ。
「もう帰ってよぉぉぉぉぉ!!!」
「ならパンツしゃぶしゃぶさせて下さい!!」
「もぉぉぉぉぉぉ!!!」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
エレベーターの通る空間をISで急降下し行き止まり、地面へと降り立つ。
「クソ、エレベーターはここで終わりかよ」
「もう最下層と言うわけでもないだろう、他の道を探すぞ」
「指図すんじゃねぇ、エム」
オータムの言葉にエムが鼻をフン、と鳴らし閉ざされたエレベーターの前に立ち(冷たく当たられたためか若干悲しげな表情をしていた)ブレードを構え、扉を容易く切り裂いた。
「広い空間だな」
「トラップは………スキャン完了、無さそうだ」
ただドームのように広い空間がそこにある、ISの戦闘訓練をするのには丁度良さそうな広さだ。
二人が部屋に足を踏み入れた直後、3Dホログラムが部屋の中心に展開された。
『地下複層総合アリーナ「BIGBOX」へようこそ、歓迎いたしましょう、盛大に』
「ッ……!」
「気にしてる暇はねぇ、行くぞエム」
「あ、あぁ」
どこまでも無表情で生気を感じない女性がホログラムで突然現れ若干驚いたエムがオータムの後を着いて行く。
余談だが彼女の苦手な物はホラー映画である。
しかし彼女達を先へ行かせまいと唯二箇所だけの扉とドーム全体をエネルギーバリアが覆う。
『レベル1、キサラギ製生体兵器、AMIDA、総数200』
女性型のホログラムが消え、そう声を発した直後、天井がガバリと開き無数の何かが這い出してきた。
「あ、あ、ひぁ……」
「が、い、ぎ……」
とても大きくて蒼い綺麗なお目々をして緑の外殻、紫の細い足が数え切れないほど生えた「ソレ」を見た二人が固まる。
「いやあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」
「ぎゃああああああああああああああああああっ!!!!!!」
珍しい事に二人抱き合って目尻に涙を浮かべながら叫び、それに呼応するかのようにそれ、「AMIDA」が嬉しそうに飛び跳ねた。
メートル規模の巨大なダニに似た蟲が、である。
エネルギーが無駄だとか、弾がもったいないとか、もうどうでもよかった。
完全に錯乱して片っ端から狙いも付けず撃って撃って撃ちまくる、だが唯一発として外す事はしない、それは彼女達の腕が高……たしかに彼女達の腕はいいのだろうがXYZ軸どこを見てもAMIDAだらけなのでは最早外す事の方が至難の業だ。
攻撃が当たりAMIDAが息絶える時も黄色いヤバ気な液体を回りに撒き散らすので精神衛生上にも非常によろしくない、AMIDAもただ飛び跳ねるだけではなく時には彼女達に急♡接♡近したり彼女達に精神衛生上非常によろしくない謎の液体を吐き散らしたり何の前触れもなく爆発したりと彼女達のシールドエネルギーと精神を削っていった。
シールドエネルギーの減少はAMIDAの攻撃頻度と大した事の無い命中率から大した物ではないのだが精神力の削られ方がもう見てられない。
オータムは叫びながら怒り狂って鉛弾を撒き散らし、クールぶってたエムに至っては鼻水やら涙やら女の子にあるまじき醜態を晒しながら顔をグシャグシャに歪めて泣き叫んでいる、ご自慢のフレキシブルなんてなかった。
だがそれでもビットを展開して手に持つライフルと併用して攻撃を行えるあたり素晴らしい才能の持ち主だ。
「エムぅぅぅぅッ!!! テメェはエネルギー兵器だろうがぁぁぁぁッ!! ちったぁ節約しろぉぉぉぉ!!!」
「いや、いや、いやぁぁぁぁ!! いやだぁぁぁぁぁ!! 帰るぅぅぅぅ!! おにいちゃぁぁぁぁん!!! たすけてぇぇぇ!!! おにいちゃあああああん!! うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」
ブレードなんて使わない、得意でもだ。
だってブレードは近付かなきゃダメじゃないか、とは彼女の考えだ。
まぁごく最近洗脳された件の彼女ならば恍惚とした笑みを浮かべてAMIDAを全力で受け止めるどころか自分からハグしに行きそうなものだが。
「くたばれクソ虫がぁぁぁぁぁぁッ!!!」
最後の八匹を同数の装甲脚で貫いたオータムが息を荒げ方を大きく上下させる、彼女の息切れは運動による物ではなく叫びに叫んだためである。
『お疲れ様でした、第一層、キサラギエリアクリア、エネルギーの回復、及び弾薬補充を行います………完了、シールド解除、先へお進み下さい』
レーザーの膜が二人のISを撫でオータムのISを照明のような光が一瞬包む。
その後ドームを覆っていたシールドがブゥン、と音を立て消えた。
「な、んだコレ…エネルギーと弾薬が全快になってやがる。クソ、完全に遊ばれてるって事か、ああいいぜ、じゃあそのお遊びに乗ってやんよ」
「えぐっ、えぐっ…ぐすっ」
「泣くんじゃねぇよ」
「だっ、てぇ…!」
「あーもう、ほら行くぞ、付いて来い」
右腕を部分解除したオータムがエムの頭を乱暴に撫で、来るように促す。エムが「うゆうゆ」と声を出してふわりのろのろと付いて飛び下へ向かうエレベーター通路へと入っていった。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
「大丈夫か?」
「あ、あぁ……すまなかった」
「まぁ、無理もねぇよ。行くぞ」
オータムが装甲脚で扉を破壊しこじ開ける、眼前に広がるは先ほどのようなアリーナだ。
「またか…」
「ひ、ひぅ……」
「いいぜ、来いよクソ野郎」
「あ、あ…」
ズカズカとアリーナに脚を踏み入れるオータムに対して今一歩踏み出せないエムが手を伸ばすがその手は空を切る、単純に届かないだけだが。
しかしその逡巡を無駄にするようにエレベーター通路からシールドエネルギーを減少させない謎の衝撃波でエムが押し出された、驚く間も無く一瞬でアリーナをシールドが覆う。
「?! ?!」
『レベル2、アスピナ製高機動兵器、無人量産型Z-SOBRERO、総数6』
「今度はなんだァ!」
地面が6箇所ゆっくりとせり上がり6~8メートルサイズのコンテナが6現れる。
オータムが装甲脚をガチリガチリと指のように動かし両手にマシンガンを持つ、エムは自分の回りを守るようにビットを展開し左手と背をシールドに付け震える右手でライフルを構える。
ゆっくりゴウンゴウンと重い音を立てコンテナが開き、中身が明らかになる。
その姿が明らかになるにつれエムは嬉しそうな安堵したような表情になっていく、現れたのは板が幾つも固まったような見た目をした兵器だった。
似た形は「穴」である、見る人が見ればフラジール! と言うかも知れないがよくよく見ればソレよりも簡素に出来ている。
また、頭部は完全にボディと一体化されており360度旋回するモノアイが紫の光を湛えていた。
ただ見た目が非常に不細工である。
両手に皆マシンピストルのような物を持っているまではいい、うち一機が背に武器と思しき板を複数枚重ねたような恐らくチェインガンだと思われるものを背負っているのもまぁいいだろう。
だがその他が非常に酷い、どう見ても過積載だと言いたくなるようなグレネードキャノンを背負っていたりデカ過ぎる、修正が必要だ、と言いたくなるガトリングキャノンだったり、酷い物は二対の半円のような馬鹿でかい何かを背負っている。
オータムはただ一つ「あぁ、考えたやつ馬鹿なんだろうな」と怒りが一瞬で白け、一週回って可哀想にさえなってきたのだった。
「はっ、そんな骨っこで戦えるってのか?」
「「「「「「はい、そのつもりです」」」」」」
オータムが悪態をつくと全ての無人機がスピードも音も大きさもタイミングも寸分違わぬ言葉を返す、それを聞いたエムが微妙に顔を引きつらせた。
コンテナから全ての無人機が出ると中身のないコンテナが地面へと潜って行った、オータムはただ一つとして準備動作もなく引き金を引き大量の鉛弾を吐き出す。
だが無人機に着弾する寸前無人機の姿が一斉に掻き消え、部屋の中を高速で動く影が飛び回る。
それは銃弾を認識してから銃弾よりも速い速度で回避できる事の証左だった。
「クソッ! こいつら、なんて早さだ!!」
「あれはお化けじゃない、お化けじゃない、虫じゃない、虫じゃない、大丈夫大丈夫……」
「エム! 援護しろ!!」
「大丈夫、怖くない……だから、行けるッ!!」
そう言うや否やエムの姿が青い尾を引いて高速移動を開始し、ビットを縦横無尽に走らせレーザーを放ち、個別に屈折させ飛び回る影を追う。
だが銃弾以上の速度で飛ぶ影を追うのは容易い事ではない、しかしそれ以上にエムは纏うISを使いこなしている。
個別に屈折したレーザーが散り散りに散開し移動位置を予測し、前後上下左右等八方を塞ぎ囲み着弾させ、それだけに終わらず手に持つ大型レーザーライフルを即座に撃ち、命中させた。
一瞬動きが遅くなる無人機に肉薄し、いつ手に持っていたのかブレードで横一閃、上下に切り裂いた。
「まず一機!」
「くっは! やるじゃねぇか! やっぱお前はそうじゃねぇとなぁ!」
オータムがニィと笑って賞賛を送る。
ただ、爆発した無人機が妙な事をしたせいでまた少し微妙な空気になるのだが。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
無人機が断末魔の叫びを上げたのだ、二人は揃ってゲンナリする、まさか無人機が断末魔の叫びを上げるとは思わなかったのだから。
「まぁいい、行くぞオラァ!」
そう言って装甲脚を様々な方向へと向けその先端より一発ずつレーザーを撃った、だがその内の一撃たりとも影に当たる事はなかった、が…オータムはそれでも笑みを崩さない。
すると急に影が二つ何かに絡め取られたかのように動きを止める。
「そぉら、巣に掛かった!」
すぐさま両手のマシンガンを動きの止まった無人機を蜂の巣にするべくマシンガンを放った、が、無人機を緑の粒子が球形に包み、その銃撃を和らげる。
動きを止められた無人機もただ無抵抗なわけではない、両手に持つマシンピストルのような物と背に乗せた変な物で攻撃を行う。
「こいつ、スナイパーキャノ……! ……当たらねぇ…どんなFCS積んでるんだよ……エム!」
「わかった!」
エムの操るビットが抵抗する無人機の背部スラスターに攻撃を与える、緑のバリアと思しき球体が再度無人機を包むが元々大した性能ではなかったのか減衰しきれずスラスターを破壊する。
装甲脚を振り回し、無人機を一緒にドーム内で振り回す、壁に天井に地面にと何度も叩きつけ、場合によっては跳び回る無人機にも直撃させる。
「妙な気分にさせてくれた礼だ! お返しに”穴空きチーズ”にしてやるぜ!」
自分の完全で振り回した二機同士をクラッシュさせ他の装甲脚で一斉に突き刺す。
「「ギャアアア「黙ってろ」」」
叫び声を上げた瞬間に突き刺した装甲脚を一斉に広げ無人機をバラバラに引き裂いた。
「これで3、あと半分だな」
「いや、あと2だ」
その言葉と同時にブレードを横に突き出し身体を回転させ、刃を躍らせるように薙いだ、鉄を鉄で殴りつけるような重い金属音がしてエヌがくるりと先ほどと同じように浮かぶとドームの壁に向かって鉄塊が二つ叩きつけられ木っ端微塵に自壊した。
「流石だ、ムカつくぐらいいい腕だな、エ厶!」
「口よりも手を動かせ」
「これで二人とも二機ずつだなぁ! どっちが先にぶっ壊せるか勝負と行こうぜ!」
「ふん」
オータムが口角を吊り上げるとエムが鬱陶しそうに顔を背ける。
二人が武器を再度構えるとやや前方10mほど上に無人機が姿を現し、その背に背負う輪がスライドして無人機の上部へと移動し、緑の粒子を纏い始め次々と稼動部位が動き始めた。
その粒子が高速で動き始め粒と認識できないほどに、もはや線とも認識できないほど加速し無人機を包む。
エムの背中をぞわりと冷たい何かが走り全身の毛が逆立つ、直感的に「アレ」に当たってはいけない。そう感じた。
「避けろオータムッ!!!」
「ッ!!」
二人が瞬時加速をするのと緑光の球体が爆発的に巨大になり撃ち出されたのは同時だった。
決して早いわけではない緑光の砲弾から逃れる事は不可能ではない、並み居る操縦者から頭一つ二つどころではない跳び抜けた強さを持つ二人にはその砲弾を避ける事が出来た。
だが着弾後の爆発を回避する事は叶わなかったが。
衝撃を持ってこそいたが大した物ではない、一瞬で体制を立て直した二人が受けたダメージをチェックする。
すると二人同時に目を見開いた。
「な、なんだ、なんだよこれ?!」
「シールドが、剥がされた…!!」
視界内のヘッドアップディスプレイの隅には「シールド展開不可」と表示されている。
流すようにステータスを見ると皮膜装甲や絶対防御はオンラインであったのがせめてもの救いか。
二人が同時に先ほどの緑光を放った無人機に銃口を向け銃弾を放った。
何としても次を撃たせてはならない、次を撃たれる前に破壊する、逃がしはしない。
そう考える二人を嘲笑うかのように、役目は終わったといわんばかりに銃弾の嵐に打たれ装甲片を撒き散らし叫ぶことも無く散っていった。
残るは一体、一瞬の停止後逆方向へ移動し、消えていったかのような無人機は背にチェーンガンを背負っていた、恐らく最もバランスの良い機体だろう。
速度を落とさず影のような存在でありながらソレを追うようにマズルフラッシュが輝き、凄まじい数の弾丸が二人へと殺到する。
自分でさえどう動いているのか分からないほどに銃弾の嵐を無茶苦茶に回避、だがその全てを避けきる事は叶わない。
「くっ…!! この弾丸…“狙いが甘い”…!」
「無茶苦茶に広がる散弾を避けてる気分だ!!」
.50 calよりも小口径の弾丸、ブローニングM2に劣る威力、ISのシールドの前にはほぼ無意味と言っていいほどの攻撃力、だがそれはシールドが作動していればの話に過ぎない。
操縦者の命を守るために発動する絶対防御、それがこの一発一発で発動してしまう。
ISを装備している今は致命打になっていない。が、それはISのエネルギーが生きているからこその話に過ぎない。
生身の人間にとってはこの銃弾の嵐に一秒と耐える事は出来ない、有無をも言わさずミンチ肉の完成だ。
「クソがぁ!! 当たれ! 当たれよ畜生!! 畜生畜生チクショウ!!」
「何だコイツ、本当に無人機か…!!」
シールドエネルギーが見る見る削られてゆく、8割以上あったエネルギーも既に2割を切った、このままだと危ない、だがただの一撃も当たらない。
「待て、まて……待て…! ……コレか!!」
「どうしたオータム!」
「エム! 30秒、いや20秒でいい! 私を守れ!!」
「…わかった、20秒だけだ!」
「一発も通すんじゃねぇぞ!」
「ふん、そんな口を聞いていいのか、お前に当たるかも知れんぞ」
「ハッ、お前がその程度の腕ならこんな仕事スコールに直談判してる所だ!」
ふたりが目も合わせずニィと笑みを浮かべる。オータムが装甲脚で身体を包み防御体制に移る、エムが防御しきれない場所を守るようにビットを複数配置し、シールドを展開した。
「……これが、違う…なら……あった、こいつか! あぁクソ! なんて対電子戦性能してやがんだ! なら…FCS停止、フルマニュアル化…」
「もう20秒だ! 終わったか!」
「あぁ、たった今終わったところだ!!」
エムのシールドビットが離れて行くのと同時、オータムが装甲脚を本当の蜘蛛の脚のように使い、跳んだ。
装甲脚の先端をガチリと合わせ、一度に広げ脚の間にレーザーを張り巡らせ自分自体を一つの動く蜘蛛の巣とした。
だがそれ自体に意味は無い、その機能は空気の振動、温度の変化、音の方向を細かく探る精密なレーダーだ。
ピクリと感知した瞬間両手にショットガンを持ち感知した場所周辺を広く乱射する。
「オラオラオラァ!!!」
狙いも一切付けない攻撃、先ほども二人が同じ事をしたが今は途轍もなく荒い。
だがその散弾は確かに無人機に直撃し、動作を鈍らせた。
その一瞬を逃すことなく瞬時加速で近付いたオータムは巣となった装甲脚で無人機を捕らえ、その力で捻り、抉り、裂き、破壊した。
「なるほど、私の負けですか。まだまだ、改良の…余地が、ありま……す…」
断末魔の叫びではなくただ普通に言葉を残し光を失ったモノアイが地面へと落下し、高い音を出して跳ね、転がった。
『お疲れ様でした、第二層、アスピナエリアクリア、エネルギーの回復、及び弾薬補充を行います………完了、シールド解除、先へお進み下さい』
「……常にってわけじゃねぇのか」
「どうした、オータム」
「さっき全然弾があたらなかっただろ」
「…あぁ、まさかビットもフレキシブルもダメだとは思わなかったがな」
「ハッキングだよ」
「…なに?」
「銃口の向き、思考射撃、こいつらをFCSをハッキングして読み取ってやがったんだ、だから銃口が向けられても発射と同時に反対に飛べば避けられたと言うわけだ、だからFCSを切ってフルマニュアルにした後撃った」
「ッ!!」
「もう解除されてる、ムカつくぜ」
ふと考えてみればハッキングは戦闘中に行われた物ではない、そもそも弾薬補充はともかくとしてエネルギーの補充は底を付いてさえいなければIS側の許可が無ければ補充は出来ないはずなのだから、つまりもっと早い段階でハッキングを受けていたことが分かる。
「……もう、何としても引くことはできないと言う事か」
「あぁ、最悪でもここのコンピューターを破壊しねぇと帰れもしねえって事だ」
「……行くぞ」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
エムがエレベーターの扉を切り裂こうとブレードを構えた瞬間エレベーターの扉が開く、それに対して微妙に遣る瀬無い気持ちになりながらも前へと足を踏み入れる。
「さて、お次は……な、んだ?」
「あの頭部は……拙い…」
眼前に広がるドームには10m級のACが三機佇んでいる。
そのボディは美しく輝くような水色でレースカーを模したかのようなボディ、手足は細くしなやかでかなりの速さを持っている事をイメージさせる。
そして頭部は球形で横に一本ラインが入っている。そしてその上には円盤が二つ存在感を示していた。
影にすれば版権的に超危険な頭部。
全機の両腕には巨大なドラムがあり、その間に一本細長いバレルが付いている形容し難いライフルを持っている。
背にはキノコのような機械を背負っており肩にはЭの形をした物が付いていて如何にもまともじゃない印象だ。
『レベル3、アクアビット製特殊兵器、無人型アクアビットマン、総数3』
「動き出す前に潰すぞ」
「わぁってらぁ!!」
アラクネがアサルトライフルを一機のビットマンへと連射する。
しかし着弾するかしないかと言った位置で緑の粒子に巻き込まれ弾丸が動きを止め、下に落ちた。
「AIC?!」
「違う…! これは強力なバリアか!」
エムが正体を掴んだ直後3機の無人機が地面を滑るように移動を始めた。
だが銃口を向けはするものの攻撃をしてくる様子は無い、何が来るのかと警戒をした時二人がその目を見開いた。
計六つの銃口に緑の粒子が集まり始めたのだから、それは正に先ほどの階層で見た輝きだった。
「なっ! くそ! ふざけんな!! あんなのが6つも来るってのか?!」
「変態技術者め!!」
「何とかできねぇのか?!」
「ダメだ! レーザーも通らん!」
「ミサイルも効きやしねぇ!!」
「ならば斬る! 斬って捨てる!!」
手に大型ナイフを持ち、瞬時加速で一機へと肉薄する、が、狙っていた無人機が瞬時加速と同等かそれ以上の速度で横へと回避した。
「しまっ………」
撃たれる! そう焦ったエヌが絶句する。まだチャージが終了していないのはまぁいい、色々あるのだろう。
だがなぜ先ほどのように滑るような移動ではなくゆっくりと歩行しているのか。
「フン!」
再度瞬時加速で肉薄しバリアに刃を立てる。
「っぐ…重い…!」
押し返される力に逆らい再度瞬時加速を重ねボディに刃の根元まで突き刺した。
突き刺された一機の銃口に集まっていた粒子が霧散、だがそれは衝撃によって一時的にチャージが中断されただけに過ぎない、ブレードが突き刺さったまま再度チャージを始めた。
1mに満たない小さな刃が10m級無人機への決定打になるはずは無い。
「おい! どうすんだ!」
「ならば! 来い、
エムがその手に呼び出した刀は長大で黒く鈍い輝きを放つ無骨な大型ブレードだった。
その長大な刀を居合い斬りの如く腰に構え深く姿勢を落とす。
「…ふー……
ザン、と何かを切り裂いた鈍い音を響かせエムが刀を振り切る。
エムが納刀するかのようにゆっくりと刀を腰へと戻し、刃の側面に添えたマニピュレーターが刀の鍔に当たりキン、と甲高い音を立てた。
それが合図だったかのように3機の無人機が縦に、横に、斜めにズレて落ちる。
「エム、お前一体何を…」
「寄って斬れないなら、寄らずに斬ればいい、それだけだ」
あらやだこの子作品間違ってますわよ。
『アクアビットマン撃破確認、再稼動プログラム起動、No.1コア損傷軽微、No.2及びNo.3より使用可能パーツを接続、シークエンス1終了、シークエンス2に移行します』
撃破した筈の無人機が電撃を纏い“集まり”複雑に組み合わさった。
『シークエンス2終了、シークエンス3、システムチェック完了、シークエンス3終了』
集まった無人機が形を成し、人型として……いや、人型とは大きくかけ離れた状態で立ち上がる。
脚が二本体が一つ、腕が6本頭が3つの異形として。
『阿修羅ビットマン、起動。ムーンライトソード展開、EC-O307AB連結展開』
6本の紫光を纏ったブレード、羽と言うことさえもはや不可能な26門の砲口、その姿は禍々しく、また神々しい。
「こ、こんなものどうやって相手にすればいい?!」
「変態技術者め、よくよく好きと見える…!」
3つの頭部がエムを見る、一歩も動くことなく、腕を一切動かすことなく、背の砲門が全てエムへと向いた。
同時に6本の腕から紫の光が伸び大きく広げられる。
オータム、エ厶、両方のISが捉えた総合出力は数字ではなく「Error」と言う単語だった。
ISでさえ数値化できない出力の攻撃、もし受ければどうなるのかは火を見るより明らかである。
無人機の背に光が集まり、3つ顔が二人を捕らえた。
「ッ…!!!」
「う、お…!!」
二人が瞬時加速を二重に重ね凄まじい加速で横へと回避、一瞬遅れ凄まじい数の青い閃光が二人がいた場所に突き刺さり、紫の光の刃がその場所を切り裂いた。
先ほどいた場所の地面は赤く融解し周囲の空間は溶岩のような温度を持つ、そして避けたはずのIS二機も余波により少なくないダメージを負う。
視界にはノイズが走り、熱により内部でエラーが発生し、実弾兵器は火薬への誤発火の危険性から強制パージされる。
「なんだよ、これ…!」
「ありえん、こんな物が、こんな物があっていいはずが無い!」
オータムが一筋汗を流し頬を伝い顎から落ちた、その汗さえも地面に到達することなく皮膜装甲から出た直後に蒸発した。
『アリーナ内の温度が危険領域に到達、強制冷却を開始します』
そのスピーカー音と共にシールド内に白い煙が撒かれた、それにより周囲の温度が見る見るうちに下がって行く。
『平均30度以下に到達、冷却終了』
二人の視界の先には例の無人機が地面を斬り付けた体勢で静止していた。
二人は息を飲み警戒する、いつまたこちらを攻撃してくるかわからない、オータムは手にライフルを持ち、エヌは長刀を握る。
だがその二人を焦らせるように無人機は微動だにしない。
『阿修羅ビットマン、メインエネルギー枯渇、サブタンク内のエネルギー枯渇、ジェネレーター起動不可、撃破判定とします。お疲れ様でした、第三層、アクアビットエリアクリア、エネルギーの回復、及び弾薬補充を行います………完了、シールド解除、先へお進み下さい』
そして二人の警戒を裏切るかのように唐突に機械音声が結果を告げた。
「「へ?」」
流石に二人は呆気に取られた様子だ、無人機を見て二人で顔を合わせ、再度無人機を見る。
『ほら! だから言ったんですよリーダー! 流石にあのエネルギーを賄うのは無理だって!』
『だから上限解放したんじゃぁないですかぁ!!』
『ほんっとリーダーは頭のいい馬鹿ですね! アスピナのEN出力特化なら知れずうちのKP特化でやるからそんなんになるんですよ! ただのビットマンだってQB一回で殆どジェネレーターエネルギー枯渇する位なんですから!』
『血の涙を流して歯を食い縛って泣く泣くローゼンタールの回して貰ったのにぃ、こんなのあんまりですよぉぉぉぉ!!!』
『ローゼンタールに謝るのはやっときますから! 信一郎さんに阿修羅ビットマン用のコア都合して貰って下さいね!』
『信一郎君の作ったアーマードコアなら出来るのにぃ!!』
スピーカーがブツンと切れ、アリーナが静かになる、ただ二人は武器を収め一つ深く長い溜息を吐いた。
「……行くか」
「あぁ」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
『レベル4、トーラス製コジマ兵器、ソルディオスオービット、総数4』
二人が部屋に入ると再度シールドが展開され地面から巨大な球体が4つ姿を現した。
それと同時に何処からかは分からないが緑光を纏った薄い色の煙がシールド内を包む、その煙でオータムは一つ舌打ちした。
エネルギーが通常以上の速度で減少し始めたのだ。
「クソッ! ここでもか!」
「素早く破壊する!」
二人が一斉に尤も近くにある球体をグレネードとレーザーで攻撃を仕掛ける。防御力は殆ど無いのだろう、早々に一機火を噴き爆発しバラバラになった。
「次っ!」
リロード、射撃、リロード、射撃
チャージ、射撃、チャージ、射撃
ビット、ライフルからレーザーを連続で射撃するエムとマシンガンとグレネードランチャーでトリガーを引きっ放しにするオータム。
エムのレーザーが球体を貫き、その穴にグレネードランチャーが入り込み、内部で爆発、木っ端微塵に球体を吹き飛ばした。
流れるように残りへ攻撃しようとした刹那、球体の「目」が緑の光を放ち、弾丸から逃げるように凄まじい速度で飛び上がった。
「起動したか」
「だが上出来だ、半分潰した、防御力もそう高くは無い、あの光を見るに前のと同じだろう、なら長いチャージが入るはずだ、ソレまでに潰せばいい」
「だな」
その直後二人の間を緑光が過ぎ去る、光が地面を抉り液体にして周囲に撒き散らせた。
「ふぅ……」
「はぁ……」
二人が顔を合わせ大きく溜息を吐く。
「「嘘だろぉぉぉぉぉぉ?!」」
凄まじい速度で移動を始めた二人を笑うように極々短い「キュゥン」とワンテンポのチャージ後緑光を撃ち出した。
ISが二人に知らせる情報はギリギリ数値化可能な値、つまり一撃でISを葬りかねない馬鹿げた火力。
「ふっざけ…ッ! ふっざけんじゃねぇぞ!!」
「おにいちゃん、会ってお話、したかったな……」
「あっきらめんじゃねぇよ!!」
だが撃てども撃てども何処からブースト光が出てどうやって移動しているのかもわからないが的確に高火力のグレネードランチャーだけは凄まじい瞬間加速により避ける。
エムは最早遠い目をして一人の兄のことを思う、その隙だらけのエムを何故か球体は攻撃しない、その煽りを一点に引き受けたオータムにはいい迷惑だ。
「あぁらっしゃぁぁぁオラァァァァッ!! いやっほぁあああぃったぁぁぁぁ!!!」
目を充血させ最早言葉ともならない雄叫びを上げながら球体に銃弾を浴びせかける、飛んでくる緑光はギリギリで避け、エネルギーをガリガリと減らしながらも致命傷だけは避けていた、今の彼女はブリュンヒルデに並ぶだろう。
「野郎オブックラッシャァァァァァァァァッ!!!」
球体の一つに急接近したオータムはISの装甲脚で球体を突き刺し破壊しようとした、確かに装甲脚は球体に突き刺さったし、いい場所を狙ったので今球体がオータムに緑光のレーザーを当てることは出来ない。
だがその代わりに「ボウ」と薄い緑の光の膜を周囲に纏い始めた、それは二つ前の階層で見た物に似ている。
「これアカン奴やァァァァ!!!」
それが広がり始める前に装甲脚を抜き、離れようと瞬時加速を起動するも今一出力が足りない、残りエネルギーは200を下回っていた、軍仕様なのにもかかわらず残り200を切ったのだ。
ふ、と悟りを拓いたかのような綺麗な微笑を浮かべゆっくりと目を閉じようとした瞬間、目の前を緑光が通り過ぎ、丁度膜で覆われていた球体を貫いた。
「助かった…? …エム! エムッ! 残り一機だ! もうエネルギーがねぇ! 手伝え!」
「お兄ちゃん、私ね、本当はお兄ちゃんのこと嫌いなんかじゃないの、大好きなの、一緒にお話してご飯食べて……」
「マドカァァァァッ!!!」
「?! え? あれ? お兄ちゃんは?!」
「ここにはいねぇよ!! いいから手伝え!!」
「わ、わかった!」
エムが刀を構え、ブースターにエネルギーを充填させ始める。
「待て! ヤツに近付くな! 仕留め損なったら死ぬぞ!」
「っ! ならば!!」
充填したエネルギーを即座にライフルへと回し、放射率を上げ放つ、レーザーがまるでショットガンのように拡散し、球体へと殺到した。
ヒュボッ、と音を残しその場から急速に離れた球体へと左手を向け、視界内の球体を握り潰すように拳を握る。
拡散したレーザーが集まり、収縮して細い針のように球体へと突き刺さり貫通、指をガチリガチリと動かし針を操作し、何度も何度も球体を貫通させた。
「ふんっ!」
最後に針を球体の内部で拡散させ、収縮率を下げ内側から破壊する。
ごん、がこん、と重い金属の音をシールド内に響かせ、エムとオータムを残し動く物は無くなった。
『お疲れ様でした、第四層、トーラスエリアクリア、以上で部署階層はクリアです、残り二階層、エネルギーの回復、及び弾薬補充を行います………完了、シールド解除、先へお進み下さい』
「残り2か……」
「いくぞ、エム、それとも休憩でもするか?」
「笑えない冗談だ」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
もう別にエレベーター壊す必要も扉を壊す必要も無いなと結論を出した二人が一つ下の階層に到着し、扉が開くのを待った。
扉が開くと視界にはやはり巨大なアリーナ、そしてその向こう、エレベーターの前に立つ二人の女性。
「…ようやく生きた人間のお出迎えだ」
「……あれは」
にこりと優しい微笑を二人に浮かべ軽く一礼する銀髪の女性、オータムに劣らぬ体つきで金色の髪をサラリと伸ばした女性。
カラードの社長、籐ヶ崎麗羅と元アメリカ、現カラードインテリオル所属のナターシャ・ファイルスの二人。
「ようこそカラードへ、歓迎しますわ、盛大にね」
「リーダーの真似ですか、ですが相手はテロリストですよ」
「あら失礼よ、ちゃんと亡国機業って名前があるんだから」
「亡国機業などではない、ただのテロリストどもだ!」
「ポールの真似? 似てないわよ」
「そりゃあ比較対照がリーダーだからでしょう」
エムとオータムをそっちのけで談笑を始めた二人にオータムが銃を向けて一発撃った。
翼が一瞬ふわりと現れ、銃弾を消し飛ばし、消える。
「なんだ、今のは…?」
「まぁいい、次のお相手は社長自らのお出ましか」
「いいえ、私達じゃないわ、ただちょっと驚く顔が見たくて」
くすりと麗羅が笑い、手元のホログラムウィンドウに目を向けて、操作を始めた。
『うー、マスターいじめた、ゴスペうマスターまもう!』
「ゴスペル、私の為に怒ってくれるの? ありがとう、優しい子ね。でも、少し待っててね、私達はこれの次だから、ね?」
『むー、うー……ゴスペう、我慢すりゅ』
「ナターシャ・ファイルス、そういやアメリカからカラード所属になったって噂があったな、本当だったって事か」
「一体誰と話しているんだ……?」
「さて、侵入者さん、貴女達がこの階層で相手になるのは…貴女達よ」
両手を広げ、フワリと髪を揺らし微笑んでホログラムを増やし、広げた。
「あ? 何言って……」
「えーっと……やだ、分からないわ」
「片方はアラクネ、アメリカで開発されていた第2世代機です。どうやら奪ったのは彼女達だったみたいです」
「はいはい、アラクネと……うーん、IBIS?」
『イギリス製第3世代機、サイレント・ゼフィルスです』
「ありがと、あらやだ、整理しなきゃ、一旦半分ほど出してから二機出して、再度押し込めばいいわね」
タンッ、と大げさにホログラムをタッチするとエムとオータムにとっての異常事態が発生した。
視界内に映るレーダーに膨大な数の光点、そして表示される486と言う数字。
それは間違いなくISコア反応だった。
「これ…は…ダミー反応か…?」
「間違いなくISコアの反応だ…!!」
『起動IS全機操作開始』
アリーナの壁がガゴン、と音を立て、何箇所か開く、そこから現れたのは凡そ2~3メートルの人型。
間を空ける事無く何十何百とアリーナの宙に整然と並ぶ、赤や青、白や黒、黄や緑、芸術品のような美しさのもの、無骨な物、数多くのそれは間違いなくISだった。
まるでただの人形のように並べられたISに搭乗しているのは黒い人形、影も作らず反射もせず、ただ純粋な黒、それは「無人型のIS」であると言う事を嫌でも理解させた。
「な、あいつは…あれは…!!」
「白騎士?!」
行方知れずとなっていた筈の白騎士がただ並んでいるだけの絵のように特別な事もなくそこに並んでいた。
「違う、それだけじゃねぇ…! あれはドイツのシュヴァルツェア・ツヴァイク、あれは暮桜…!」
「ツヴァイクと暮桜だけならまだ説明も付く、まだ、もしくはもう公に実地使用されていないISだ、だが…!」
「アイツはイギリスのブルー・ティアーズ、あれは白式じゃねぇか!!」
いま現在、現行で使用されている筈のISさえも眼前に並んでいた、その中には紅椿さえも当たり前のように並んでいる。
数多く並ぶISから二機前に出て、他のISが巻き戻しのように壁へと帰って行く、その前に出た二機を見て二人は絶句した。
黄色と黒の毒々しい色、八本の装甲脚が生えたIS。青と白のカラーリング、頭部をバイザーで覆い人の顔なれば口元のみが見える特徴的なIS。
それは正にオータムのアラクネとエムのサイレント・ゼフィルスだった。
「言ったでしょう? 貴女達の相手は、貴女達だって」
「行きましょう、社長。あの二人がここを越えれば私が相手ですから」
「そうね、成績によってはIBISも出て貰いましょう」
いたって普通、当たり前のことを当たり前のようにするような自然さで後ろのエレベーターへと乗り込み、去って行った、直後アリーナにバリアが発生し、今までと同じように戦うための場が作られる。
『レベル5、カラード型IS、アラクネ、サイレント・ゼフィルス。AIタイプ…IS学園へのハッキング完了、モンドグロッソ上位レベル改変型です』
『『ターゲット了解、オペレーションを開始します』』
「同機体と戦えと言う事か」
「クソッたれ! 当たり前のようにIS学園をハッキングしやがった!!」
二機揃って顔と思われる部位を上げ、二人を見据える、両手に武器を展開し二人にサイティングしながら移動を開始した。
「クソ、面倒臭ェ!」
「なに、一機程度二人で掛かれば直ぐに破壊できる」
「あぁ? 何言ってんだ、相手は二機だろうが」
エムがにやりと笑いライフルを構えた、バイザー越しの鋭い視線は確実に敵のゼフィルスを捕らえている。
「サイレントゼフィルスは第三世代機だ、なら無人機、AIに何が出来る」
「なるほど…イメージインターフェイスか…」
サイレントゼフィルスに搭載された第三世代兵器、ビットとフレキシブル、それは人の思考が前提で運用される。ならば無人機にそれを操作することは出来ない。
筈だった。
無人機が放ったレーザーを最低限の操作で回避、したはずがシールドエネルギーが減少、その減りようは直撃した時と違わない。
あろう事か直後、ビットを全て展開し波状攻撃を行ってきたのだ、無駄を全て削ぎ落とし、究極まで効率を突き詰めた教本通りの、洗練された教本通りの動きで。
「なっ?! っく!」
唯一カバーしきれない上方へと回避、すると回避したはずのレーザーがエムを追ってきた。
「
シールドビットを展開し、ヒットする可能性のあるレーザーだけを消し、レーザービットでAIゼフィルスを射撃。
焦った様子も無く淡々とシールドビットで打ち消し弾幕戦を開始した。
「カッ……ハ、私の相手はアラクネか、いいじゃねぇか、たかがAIが人を超えることはねぇって教えてやるよ!!」
ギチリギチリと装甲脚を動かし、刃を研ぐように擦り合わせ不快な音を周りへと散らす。
対するAIアラクネは無駄な事はしないと言う様に淡々と両手に持つアサルトライフルを連射した。
「潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰すツブスゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」
地面を抉り、爪で引き裂きながら地を這うように、正しく蜘蛛の如く移動しながら高火力のヘヴィマシンガンを乱射、AIアラクネは理に適った動きで回避しながら装甲脚を場合によっては盾として扱いながら応戦した。
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
「ねぇ、どう見る?」
「そうですね、片方は実に冷静、無人機がISを扱う事実を素早く受け止めきっちりと対処しています。 …3人目、次を」
「はい、どうぞ。あなたも最初は驚いていたわね」
「えぇ、ですがことカラードでありえないという事はありえない、私はそう学びましたので」
「毒されてきたのか適応してきたのか、わからないわね」
「適応ですよ。……もう一人は多少狂ってはいますが優れた技術と応用力ですね、ISであんな動きをしようだなんて普通は思いません。4人目、次、お願いします」
「多少狂ってる、ねぇ? なら織斑千冬の戦闘データを忠実に再現した暮桜を会話の片手間に撃破出来る貴女は何かしら?」
1対の羽を羽ばたかし機体を翻らせ、暮桜を身に包む黒い人形の光の斬撃を容易く回避したナターシャと銀の福音。
回避した直後暮桜の背に光弾が突き刺さり炸裂した。
「私だけの力じゃないですよ、何より
「稼働数は?」
「まだ二つだけです。どうしても勝てない、なんて思ってた相手が片手間に撃破出来るなんて、ISを信じるって大事ですね、ちょっと前の私とこの子なら3つ稼動させても勝てなかったと思います」
「まだ余裕ね、増やしてみる?」
「5人目っと、お願いします」
思うところも無いような動きで羽を刃に変化させクルリ、と身を翻すと暮桜が幾つにも引き裂かれ破壊された。
「じゃあリベンジ、行っときましょうか」
「リーダーのセラフですか?!」
「まさか、シン君が個人で作ったものだけは私でも作れないのよ? だから、これ」
カシュ、と開いた壁から白式、紅椿、ブルー・ティアーズ、甲龍、ラファール・リヴァイヴCⅡ、シュヴァルツェア・レーゲンが姿を現した。
白式、紅椿以外は特殊パッケージバージョンも用意されている。
「……なぜ日本代表候補の打鉄弐式が無いのですか?」
「あれ、シン君も手を加えてて私にも分からない所が多々あったのよ、内装の殆どがそうね」
はい、スタート、と言いながら手をパンと叩き、それと同時に全てのISが動き始めた。
「リベンジ、リベンジですか……今の私達にとって、なんてイージーなリベンジでしょう。ね? 福音?」
『がんばう!』
「良い子ね、そう、頑張りましょう、一緒に、ね!」
言い終わると同時、羽が2対へと増えた。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
「こいつ、反応速度が速い…!!」
空を切る音と共に強い電撃音が周囲に響く、エムの剣戟がシールドビットで軌道を逸らされ身体を反らせる事で尽く回避されているのだ。
シールドビットは4つ、うち2つを剣戟の防御に、残り2つはビットの防御に、最後の二つはエムへの攻撃に全て、十全に完全に使い切っている。その上無造作に手に持つレーザーライフルから常時レーザーが発射され、起動を捻じ曲げ、エムへと襲い掛かる。
人の脳では処理しきれない情報量をAIはいとも容易く処理し、行動していた。
AIに扱えないはずの第三世代兵器を十全に扱うAI、それにより人間だけが扱えるはずの第三世代兵器を使う人間は処理能力からAIを容易く越える事が出来ない。
もっと洗練し、磨き上げ、玄人を越えるほどになり漸く越える目処が立つ、しかし、だが、ISはそうなるには余りにも新しすぎた、どれだけ少なく見積もってもあと五年は必要だった。
ならば、その差を埋めるのに今必要な物は、何か。
科学者にとって皮肉な事にそれは…………
「裂けろォォォォオオオオオオオオッ!!!!」
『天賦の才能』だった。
右手で刃を振り、回避された直後左手でその刃を取り、逆に振り切る。
一瞬でそれを行う、傍から見れば一瞬で二閃斬撃を繰り出す人を超えた業。
AIでさえ処理の追いつかない速度で行われたそれにより、横一閃、真っ二つに裂け、爆発した。
「っぐ、は……ぁ!」
ガタガタと震える腕をギチリとマニピュレーターで押さえ今だ戦っているであろう仲間へと視線を向けた。
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「くっは、カッハハ!! 見えてきたぜ! テメェのパターンがよぉ!! そらぁ、腕一本いただきだァ!」
AIの装甲脚による刺突を装甲脚でそらし、銃撃を行う腕を他の装甲脚で弾き上げ、ショットガンで千切り飛ばした。
AIのアラクネは多くの被弾から最早防御に回すエネルギーを棄て、移動と攻撃に全て回していた、故に絶対防御も無いISにショットガンを防ぎきる事は出来ず、容易く隻腕となった。
「コイツで止めだ! 首ィ、置いてきなァ!!!」
片腕を失くした事により手数の減ったAIの装甲脚を同じ数の脚で押さえつけ、新たに両手で持った武器で斬りかかる。
大型のアサルトライフルでハンドガード下部を大きく覆うようにチェーンソウが取り付けられたアメリカ産バトルドライフル、グランド・オブ・ウォーマシン社通称GoWで製作されたランサーアサルトライフル。
そのチェーンソウの刃が人形の首に食い込み、オイルと火花を撒き散らし不快な音を響かせながら深く抉り、遂には斬り飛ばした。
「クヒャハハハ! いーオブジェだ! これでお終いってな ッア゛?!」
片腕が無い、首が無い、その人形が異常が無いかのごとく襲い掛かり、油断していたオータムを押し倒し装甲脚をすべて押さえつけた、両足で両腕を踏みつけ抵抗は出来ない。
残る片腕に同じくランサーアサルトライフルを持ちオータムへと突きつける。
「く、そ…! クソ! クソがァ!! テメェ!! ぶっ壊れた人形がァ! 私が、貴様ごときに!!!」
装甲脚の出力は同じ、PICにより押さえつけられた腕は微動だにしない、持つ武器を相手に向ける事もできない、完全に詰んでいた。
チェーンソウが回転を始めた瞬間人形の胸を光が貫き拳大の穴を開け動きを停止させた。
「だい…じょうぶ、か…?」
「あぁ、クソ、助かった……クソが!!」
装甲脚で人形を弾き飛ばし、ゆっくりと立ち上がったオータムが身体を欠損させた人形を蹴り飛ばし何発かライフルを撃つ。
『お疲れ様でした、第五層、カラード型IS二機クリア、エネルギーの回復、及び弾薬補充を行います………完了、シールド解除、最終階層へお進み下さい』
「行けるか?」
「腕ガタガタの癖によく言う、最悪逃げるしかねぇな」
「だが、今は進むしかないだろう」
「そうだな……行くか」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
エレベーターの扉が開いた瞬間付近の壁に紅い大きな物が叩きつけられグシャグシャに潰れた。
「な…?!」
「一体何が起こって!」
飛んできた方向を見ると二対の生物的な羽を羽ばたかせた銀の福音が浮かんでいた。
「ふむ、この程度で第4世代機、それも十全に能力を発揮して、ねぇ」
顔を覆うシールドを外し、素顔を晒し、目を閉じた状態でやや飽きた様子で言う。
「な、なに…第4世代機…?!」
「これが、か?」
銀の福音、ナターシャが目をゆっくりと開き二人に対してニコリと微笑んだ。
「あら、いらっしゃい、遅かったわね、そっちが2機の間にこっちは26機よ」
「何を言って…」
空間が歪むように、あるはずの無い物を生み出すように福音の背後が歪み、羽が3対となった。
データが示す出力は異常以外の何者でもない。
「貴女達で28機目……恐れないで。“死ぬ時間”が来ただけよ」
周りを見れば至る所にスパークを放つ残骸が転がっていた、数は26、中には暮桜や白騎士も転がっている。
優しく笑みを浮かべるナターシャは福音の神々しさやその笑みとは全く逆の「死神」を思い起こさせた。
エムがライフルを両手で保持し、オータムがマシンガンを構えたのと同時、プライベートチャネルによる通信が二人に届いた。
『私よ、今作戦は口を挟むつもりは無かったけど、そういう訳にも行かなくなったわ』
「スコール?」
『逃げなさい、今すぐに、ハッキングやデータなんてどうでもいいから、今すぐ帰ってきて、今ココで貴女達を失いたく……失うわけには行かないの……組織と、しては』
「だけどよ…」
『お願い、お願いよ、オータム、エム……』
「……わかった、今回はその言葉に甘えさせて貰う、正直、私は限界だ」
「あぁ、わかったよ…」
トン、と地に足をつけた福音の羽が二枚捻り合わされ巨大な刃になる、それを眼前で弄ぶように振りながらナターシャがゆっくりと口を開いた。
「あら、逃がすと思ってるの? 私とこの子が」
「…傍受されてたか」
「薄々そうだろうと思ってたけどよ」
『いいわ、行かせてあげなさい、データは取れたし、別に倒す必要は無いでしょう?』
「と、言う事よ、ほら行きなさい、社長の考えが変わらないうちに」
「テメェ」
一歩踏み出すオータムの腕をエムが引く。
「勝ち目は殆ど無いぞ、引け、命令…いや、お願いだろう」
「わかってる、わかってるさ、クソ」
身を翻しエレベーターを破壊して上へと姿を消した二人を見送って福音の羽が刃から羽へと戻り、二対、一対、機械的な翼へと変化していった。
ただ音も無く福音の姿があるだけの広いアリーナにIBISからの通信が入る。
『信一郎様より質問です』
「シン君? なになにー? IBIS、なーにー?」
管制室でやり取りを見ていた麗羅が嬉しそうに音声をオープンにしたまま反応する。
『女性が喜ぶプレゼントとは、との事です』
「女の子が喜ぶプレゼントかぁ…」
「ネックレスやイヤリング、あとは指輪でしょうか?」
『検索結果では「高い物・及び現金」とされております』
「リアルね、夢も希望も無いわ」
奇跡と魔法はあるのだろう、だが救いは無い。
なお、凄まじい速度で通り過ぎていったIS二機に驚いた受付嬢が本格的に失禁してマジ泣きしてしまったのは秘密だぞ。
パトラッシュ、僕もう疲れたよ、大学が夏季休講に入ったしバイトもそんなに組まれてないから時間は出来たんだけど、なんか疲れたんだ。
描くのも書くのもいいんだ、好きだから、でも最近PS3の起動も週1で某動画サイト見るだけなんだ。それも1時間以内。
もう一日中寝てるんだけど最近寝るもの面倒だし食べるのも面倒だし、究極的に言っちゃうと生きるのも面倒なんだ。
あー脳みそを培養液に浮かべて脳波コントロールで永遠と電子の海を漂っていたい……
まぁACVDとかBF4とか発売されたら生きる気力湧くんでしょうがね!
ちなみに今回ピッタリ2万文字だったりします。