コジマ汚染レベルで脳が駄目な男のインフィニット・ストラトス 作:刃狐(旧アーマードこれ)
ダレる!!
ところで今回! 気づいたんですけども! シモネタない?!
でも! ちょっとだけ! ほんのちょびっとだけえっちめなのがあります!!
進撃の巨人、人気ですよね!!! 個人的には!! サシャが可愛いです!!!
でも! アルトネの!! さーしゃが!! もぉっと好きです!!!!!
今回!! 挿絵が入るといったな!!
あれは嘘だ。
▂▅▇█▓▒░(’ω’)░▒▓█▇▅▂うわああああ
恐ろしい事にピンポイントで5巻だけ持ってないと言う状況。あ、これは4巻分ですよ、そんなお話
ウェルカム・イン・ザ・サマー編
【W・I・T・S】
「さて、明日から夏休みだ。各自故郷に帰るなりゆっくり羽を伸ばすなり好きにしろ。だが、気を抜きすぎるなよ、私からは以上だ。解散……一夏! 一夏!! 家に帰って一緒にお風呂に入ろう!(提案)」
ちっふーがそう言って1組を締めくくる。
その後に聞こえてくる何かが無ければ良かったんだが、まぁ今に始まった事ではない。
全員ゲンナリしている。
「あいあい、失礼。教卓から失礼する、全員聞いてる?」
「はぁ~い!」
「うーん、いい返事だ、ありがと本音ちゃん」
そして懐から大量の紙束を出す。
「さぁ問題、コレはなんでしょうか」
「お金」
「レシート」
「もう行くことのないお店のカード」
「財布の中身かよ、正解はチケットだ」
ちなみに俺の財布には諭吉が十数枚とブラックカード、あと免許証しか入ってない。
「学園を出て付近にある最近出来た巨大なレジャー施設を知ってるか?」
「うん、凄く人気で前売り券は月初めに完売、当日券は最低2時間は並ばなきゃ駄目って所だよね、知ってる」
「そこの出資な、カラード……正確には有澤重工なんだよ」
するとらうりーとか一部を除いて唖然とした顔になる。
「で、このチケットの話に変わるが、こいつは一日フリーパスのチケットだ」
にやりと笑うと多くの人間がごくりと息を飲む音がする。らうりーはオロオロと周りを見て自分もごくりと息を飲んだ、可愛い。
「全員分ある。欲しいか?」
「「「「欲しい!!」」」」
「よっしゃ持ってけ!!!」
「いやっほぉう!!」「さすが有澤重工!!」「今だけ籐ヶ崎君イケメン!!」
「マハハハハハハ!!! 俺泣いていい?!」
あと残った数枚は簪とフランと鈴音に渡す用、その他数枚、因みに簪と俺の分はペアチケットだったりする。
特に特典は無い、要するに無駄。
「おい、いっちー。コイツを鈴音に渡しといてくれ」
「ん、おう」
「あと本音ちゃんは生徒会の二人に渡してくれないか?」
「かいちょーとおねーちゃんの分もくれるんだぁ~嬉しいなぁ~! おねーちゃんと一緒にいこぉ~っと」
会長ェ……
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
「時は戦国―――」
「いらないいらない……! いらないよ……!」
無精髭を蓄えて海パンを穿いた俺が眼前に広がる膨大な量の水を見る。
ウォーターワールド、管理を個人に任せているだけで実質有澤重工が経営しているような物だ。
幾つものプールがありその他には温泉などもある。まぁ温泉は言わずもがなであるだろうが。
「シンにー!」
「おぉ、来たかね。相変わらず可愛いきぐる水着だ、良く似合ってるよ」
「えへへ~」
ピコピコと(きぐるみの)耳を動かす本音ちゃんの後ろを見ると本音ちゃんの姉の虚さんと嬉しいような悔しいようなと言った微妙な表情をしたたっしー。
「この度は私達にもチケットをご用意してくださりありがとうございます」
「あぁ、いえ。本音ちゃんにはよくお世話になっていますから、恩返しといったような物ですよ、それより即物的な物で申し訳ありません」
「いえいえ、私達には十分すぎるほどですよ。……お嬢様」
「むっすー……」
「お嬢様!」
「つーん」
「はぁ……本当に申し訳ありません」
「いやいや、構いませんよ。簪?」
たっしーが俺に対し不機嫌ですと言う態度を崩そうとしない、まぁ、空気で構わんがな。
そしてたっしーがチラチラと簪を見ると簪が今度は「わたくし不機嫌ですのよ」と言わんばかりに顔を背ける。
そしてショックを受けたのか涙目になって肩を落とす。その後ギリギリと歯を食い縛りながら俺を呪い殺さんが如き眼力で睨む。
「簪、本音ちゃんから聞いた話じゃ生徒会長と全然話をしようとしないそうじゃないか、何か言う事はないのか?」
「……ない……」
「あぅぅ……かんざしちゃん……」
「先輩と話す事なんてありません」
「遂に苗字でさえ呼ばれなくなった?!」
そう叫んで膝から崩れ落ちた、その姿は実に悲惨である。
簪の足元に縋りつき呼んで字の如く一蹴されている彼女を見て誰がロシア代表だと思うだろうか、いやない。
「ごめんなさい簪ちゃん、赦して、許して。簪ちゃん、ごめんなさい……」
「どうして私に謝る必要が……? 先輩……?」
「駄目よぉ…本音ちゃん、こんなに謝ってるのに簪ちゃんが許してくれないのぉ……!」
「まーかんちゃんにしか謝ってないからね~」
「お嬢様は人付き合いがいいくせに人付き合いが絶望的に下手と言う矛盾を突き詰めてますからね」
「まぁ俺は別に構わんのだがね、仕事柄嫌われる事なんて普通だし」
戦争反対と叫ぶ人等には物凄い勢いで嫌われていると思う、あと女性優遇社会が最高だと思ってる方々。
新兵器の公式発表の時非暴力と声を大にして叫ぶ人に石投げられた時はびびった。
外道、殺人鬼、殺し屋、死の商人、虐殺者、オッサンと散々に罵倒されるのは兵器開発者の宿命みたいなもんだ。
まだ首切り判事とか天使の塵とか聖堂騎士とか銃剣とか言われてないだけ多分マシ。
「行こう……、時間の無駄だよ……、虚さん、失礼します……」
「はい、お気をつけて」
「ばいばーい」
「もう…本音、あなた簪お嬢様の付き人でしょう?」
「でもおねーちゃんと一緒がいい……それに、かんちゃんにはシンにーが付いてるもん、だから大丈夫だよ~」
「なんで、何で貴女達はそんなに姉妹仲がいいの…? 分けて、分けてよう! この哀れな私に姉妹仲の良さを分けてよう! うわぁ~ん! かんざしちゃぁぁぁん!!」
地面を太鼓の達人よろしくドンドン叩きながら泣き崩れているたっしー、今更だが割とセクシーな水着である。
ケツ突き出してオイオイ泣いてる、はしたないったらありゃしねぇ。
で、肝心の簪は俺の右腕を掴んでさっさと移動を始めた、水着はいつか(臨海学校)見た水色のワンピースタイプ。
「あ、シン!」
「よう、シャルりん。全員もう来てるか?」
「うむ、もう既に集まってる」
「らうりーももう来てたのか、またタオルお化けにでもなってるのかと思ったが」
「ふん、一夏が褒めてくれたのだ、何も恥ずかしがる必要などあるまい」
らうりーがドヤ顔で全員の集まってる方向を顎で指す。せっかくだからと一組全員で来る事にしたのだ、まぁ集まるだけ集まって後は自由行動なんだがな。
いっちーは鈴音に物凄い勢いで怒鳴られている。何ゆえ……
『ご来場のお客様へ、午後13時より水上ペアタッグ障害物レースが開催されます。優勝商品は沖縄旅行五泊六日のペアでのご招待です! 我こそはと言う方々はご参加下さい! 受付はフロントです! 12時までに受付を終えてくださいね!』
「おー、何かやるらしい―――」
「し、信一郎……! 出よう……!!」
「え? あぁ、いいけど」
この放送を聞いた簪がグイグイと俺の腕を引っ張る。腕が抜ける(物理)
目の前の二人は目を光らせていっちーの方を見るが全員同じ事を考えていたのか物凄い勢いで群がっている。
これは無理だと一瞬で理解した頭の回転の速い二人は1秒後にはガシリと手を組んでいた。
確実に勝つことにしたらしいが、優勝商品はどうするのだろうか、やはり奪い合いに発展か?
やはりキャットファイトか、いや……らうりーがいるからラビットファイトか。
ラビットファイトってなんぞや。
ところでラビットファイトとラピッドファイアって似てない?
こう、CoD4のM249にラピッドファイア付けてダブルタップもつけるとさながらミニガン。
どうでもいいですか、いいですね。
いざ受付の方を見たらもう既に集まってる上に男が肩を落としてトボトボと列を離れて行く。
なるほど、男は参加できないのか。
「簪、どうやら男は出れんらしい」
「そんなぁ……」
「私にいい考えがある」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
『ではではお待たせいたしましたぁ! これより水上ペアタッグ障害物レースの開催です!!』
そして一同入場、スタート地点は流石に陸だ、そこから水の上に浮かぶアスレチックを渡って中心の浮遊島(実際に浮いているわけではない)のフラッグを取った者の勝利だ、なお、二人で取らずとも片方一人が取ればソレで良く、尚且つ可能なら一人だけが先行して取りに行ってもいい。
まぁ二人じゃないと基本的に進めないように障害物が出来てるわけだが。
「あの……し、信一郎……?」
「なーにー、呼んだかなー?」
「あの、それ……女装じゃなくて……、そのまま女だよね……」
「能力でやった、クラスの皆には内緒だよ」
なお今回は義手義足を生身とほぼ同じ見た目にしている、出力は相変わらずだが。
服装はTシャツの袖を思いっきり捲くって腋が見えるほど、そして胸のすぐ下で縛ってるので腹筋が見える。下はチャック全開の尋常じゃねぇローライズ。
『さて、お次のチームは! お?! この二人もIS学園からお越しの二人組みです! 今回はIS学園組が多いですね!! 青い髪に眼鏡の少女! 驚くなかれその実はなんと日本の代表候補生!! 更識簪さん! そして…出身も国籍も年齢も名前さえも不明! 後ろに束ねたロングヘアーが風に靡き腹筋が魅力的、そして今回の出場者一の巨乳!! 見たところ水着は見えませんがやはりシャツの下には付けてるでしょう! 残念でした男の人! 長身・巨乳・顔の傷もアクセント?! 詩天使ミラクルさっきゅんさん!! コレは黒歴史! さてお二方何か一言どうぞ!!』
そして巨大な空中投影モニターに俺達二人が映され、マイクを持った女性が銃の如く突きつけてくる。
「え、えと……その……がっ、頑張りますっ……!」
『可愛い反応ありがとうございます!! さぁ次はさっきゅんさん!』
「実はこのシャツの下、何も付けてません!! しかも穿いてる下の水着はかなり古いタイプの白い水着なので濡れたら透けます!! それはもう全裸と変わらないほどに!! でも残念でした、見ることは叶わないわ! なぜなら誰であろうと私を越える事など不可能だから!! おっぱいもね!!」
『おぉっと?! これは爆弾発言か!!』
沸きに沸く会場内、義手が義手と分からないので簪以外は俺が籐ヶ崎信一郎だとは分かるまい。
よくよく見ればいっちーも腕を振り上げて雄叫びを上げている。流石に性欲が無くなった無欲大魔神ではなかったらしい。
『さぁ最後のペア紹介です! なんとなんと!! 最後の二人もIS学園! 青い髪のナイスバデー! その称号は「最強の証」! IS学園生徒会長!! 更識楯無さん!! しかもしかもロシア国家代表!! 代表候補は数多けれど代表は彼女唯一人! 名前と髪色からして簪さんとは姉妹かな?! そして眼鏡の知的なお姉さん!! 布仏虚さん! おやおや? もしかするとあのポヤポヤした本音さんのお姉さんかな? という事はもしや姉ペア!! ではお二方一言お願いします!』
「私は勝つ!! そして簪ちゃんと一緒に旅行に行って仲直りするのよ!! 残念だけど籐ヶ崎君、客席にいるのは分かってる!! 君の思い通りには行かないわ!! そしてごめんなさいね、さっきゅんちゃん、あなたは勝つことは出来ないわ!!」
『と、強気のお言葉です! しかし残念かな! 妹さんは非常に嫌そうな顔をしております! さぁ次は虚さん!』
「容赦するな、全てをなぎ倒せと言われておりますので、頭が痛い話ですが妹もいますし、本気を出させていただきます」
『なぜでしょう! 正直楯無さんより強そうです!! ではではゲートへどうぞ!!』
簪が心配そうに見上げてくるのでニカリと笑いながら頭を撫でる。
最悪俺が単体で中心まで跳べばいいだけなんだから、なんと言う期待通りの出来レース。
さて、スタート地点へと全員到着、現在の足場は陸で数歩進めばプールに浮く島へと。
『今回予想よりも人が多いので特別ルールを適用させていただきます!! 最初の予定では水に落ちても何度でもリスポンできましたが今回はチームの両方が落ちれば失格となります! ただし片方が生きていればリスポーンは可能です!! では用意はいいですかいいですね!! 開始です!!』
物凄い急な勢いでレースが開始される、それにいち早く反応したのはらうりーとモッピー、モッピーの相方は誰なんだろうか、正直言っちゃあアレだけどコミュ障のモッピーが呼び止めたのは……鈴音かせっしーだろうか…?
まぁまずは……
「失せろ貧乳の敵ィ!!!」
「無乳の敵!!!」
左右からタックルを仕掛けてきたペッタンカーの攻撃をシステマで回して無力化後プールへと押す。
「そんなはず!」
「私が何故! こんな!!」
どぽーん、と始末した所でかなりの人数が乗っている島とスタート地点の間の溝に両手を突っ込み島を持つ。
「よいっしょぉー!!」
掛け声と共に思いっきり持ち上げる、するとその島が斜めになり乗ってる人間の殆どがバランスを崩し転倒、そして島を滑りプールへダイブしてゆく。
『ミラクルさっきゅんさん! 何と言う力技!! 今ので7割近くの参加者を一斉に脱落させました!! コレはひどい!! ブーイングが参加者から寄せられます!! ですが観客の男性からは揺れ動くおっぱいのせいでしょうか! 凄まじい声援が送られます!!』
胸を寄せて観客席にウィンクをすると割れんばかりの大声援がこちらへと飛んでくる、それと同時に少なくない「一度落ちろ」の声も聞こえてくる。
「さぁ行こうか、簪ちゃん」
「う、うん……」
ステージを見渡すとたっしーがトップで次点が「しゃるらう」、その次が……モッピーと、本音ちゃん……だと?!
あ、鈴音とせっしー組んだんだ。遅くはないんだけどね、今一協力し合うと言うのが出来てないから一般チームに負けてる。
ロープを引っ張って浮島を寄せ、相棒を乗せたら陸に残った方が紐を引っ張って向こうに島を押すと言うしょっぱなから力任せのギミック、まずは力任せに向こうにある島を引っ張ってこちらに持ってくる。
「さぁどうぞ、お姫様」
「うん……」
揺れないように普通の速度でロープを引っ張って簪を向こう岸へと輸送する。
「しーちゃんの仇ッ! 落ちろ乳女ァ!」
「フッ!! 手間を掛けさせないでよ、貴女一人に…簪ちゃんが待ってるんだからなぁ…」
後ろから女性がタックルを仕掛けてくる、あわせてその場で跳んで女性の肩に手を置いて空中を跳ぶ、勢いを残したままプールへと落ちていった女性を見つつ着地、浮島が少し揺れた。
直ぐにロープを取り簪を向こう岸へと送り届ける。
「頑張るね……!」
「手を煩わせるまでもないよ、少しどいててね?」
島を真ん中へと停止させ5歩後ろに移動、そのまま3歩助走を付けて次の踏み込みで跳ぶ。
『お、おぉっと?! さっきゅんさん何と、跳んで真ん中の浮島に着地、直ぐに跳んで向こう岸へと着地!! 受身も素晴らしいです!! まるでニンジャ!』
「アイエエエエ!! ニンジャ?! ニンジャナンデ?!」
「コワイ!!」
『あぁ! 救護班の皆さん!! 早く! その人たちを医務室に!!』
「い、いだい…」
「し、信一郎…? 大丈夫……?」
物凄く派手な動きをしたし水着やブラで胸を固定していないからシャツの中で超☆エキサイティングしておっぱいが千切れるかと思った、痛い。
「簪、簪……俺の胸大丈夫…? 千切れてない…?」
「喋り方が素でもちゃんと声は作るんだね……」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
「余裕余裕!」
「地雷原を抜けるのに比べれば大した事はありませんわ!」
「仲間はずれはよくないなぁ、私も入れてくれないと!!」
「「ッ!!」」
「遅すぎる、これは」
二人が振り向くと同時に跳んでそれぞれの肩に手を乗せるように回転。
「貰った!」
「きゃっ!」
「っくぅ!」
両腕を一気に広げて二人を弾き飛ばす。
「まだまだぁ!!」
「この程度!」
鈴音が側転のように跳んで着地、こちらを睨む。せっしーがそのまま滑りバランスを崩すことなく両足と片手のみで止まる。
片方も落とせんかったか、コイツは面倒な事になった。
「ふふ、やるじゃない。でもムカつくわね、その胸……もぎ取ってやりましょうか」
「私達代表候補二人に対して一人だなんて、いい度胸ですわ」
「い、いくら手ごわいと言え、2人がかりでは・・・勝ったところでこれでは卑怯者呼ばわりされます!」
「中々やるようだけどアナタ馬鹿?」
「死んだ人は物を言わないんですわよ?」
すっかり観客の存在を忘れられている件に付いて。
「さて、どう料理――」
「ッ!! 鈴さん!!」
「え? なに―――」
「ごめんなさい……ね…!!」
スイと鈴音の後ろに回っていた簪が生半可ではない速度と精度で鈴音を投げ飛ばしてプールへとダイブさせた。
「ふ、二人がかりでは…勝ったところでコレでは卑怯者呼ばわりされますわよ……?」
「あ、そうなんだー。で? ソレが何か問題?」
「そのセリフ…あなたもしかし―――」
簪を抱き上げ膝を全力で曲げ、跳ぶ。一気に力を掛けられた浮島が一度こちら側に傾きせっしー側へと急激に傾く。
まるで酷い地震の如く揺れた浮島な上表面は濡れている、いくら代表候補とて45度近くの斜面でバランスを崩さず立つ事は出来ずプールへとダイブしていった。
『何と言うことでしょう! 彼女達が過ぎた後はぺんぺん草一つ残りません! ただ一度の例外もなく脱落させられています!! これはもしかするともしかするかもしれません!』
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
「っくぅ!! コレが…これが学園生徒会長の力…!!」
「うふふ、ごめんなさいね篠ノ之さん、私は負けるわけには行かないのよ、だって生徒会長だもの」
「やるようになったわね本音、本当に強くなった。私が劣勢なんてね」
「うふふ~、おねえちゃんに勝とうって頑張ったも~ん」
前方が何か凄い事になってた、てか本音ちゃん強ぇ……打撃も掴みも殆ど見えねぇ、あのきぐる水着もその効果を助長してるのか攻撃範囲が全然見えん。
「ばぁい」
「きゃ…!」
あぁ、モッピーが落ちた!!
「す、すまないのほほんさん…!」
「大丈夫だよ~しののん、私がココを抑えるから、早く帰ってきてね。それまで耐えて見せるから……!」
「あぁ、あぁ! すぐに、直ぐに戻る!! 待っててくれ!!」
か、格好いい…、本音ちゃ…さん。
「ごめんね、本音ちゃ…ッ!!」
「駄目だよ~かいちょ~、ココは通さない、絶対に…しののんとの約束だから」
「二人がかりよ?」
「それでも、だよ~」
「仲間はずれは良くないなー私も入れてくれないと…」
「あら、さっきゅんちゃん? これは大変な事になったわ、三つ巴なんてね」
「大丈夫……?」
『簪、俺に任せろ、刺し違えてでも倒す』
力を抜いて身体を揺らす、構えの無い本気の構え。
「私の相手になるつもり? いいわね、面白い、今そのそっ乳叩き落として 炉にくべて 脂肪燃やして暖をとってやるわ」
「ああぁ、そう それは仕方ない ああぁ、そう それは残念、至極 では仕方ない!! ならば、その会長のそっ乳を落として炉にくべる」
「ありがと~さっきゅー、助かるよ~」
「本音を倒さないと、流石にお嬢様も苦しいかしら」
「どうしたの? 構えた方がいいわ」
「構えてる、アナタと同じように」
すいとたっしーが目を細める、双方移動せずその場で揺ら揺らと身体を揺らしている。
「へぇ、そうなんだ」
「えぇ、そうなの」
「「システマ」」
システマ、ロシアの軍部格闘術、後の先を極めた自己防衛格闘術であり殺す事に長けた攻勢格闘術である。
「私、ロシアの代表よ?」
「ロシア出身の軍人や傭兵に鍛えられたのよ」
嘘は言ってない、アルゼブラ所属やイクバール所属、オールドキングにみっちり鍛えられた、こればっかりはいくらモノホンの軍人や代表とて劣ってはいないと自負している。
「素敵な風穴にしてあげる」
「刺激的にやろうぜ」
直後に凄まじく鋭い蹴りをたっしーが放つ、完全に顎に入れる気だっただろ、冗談じゃ…!!
下からの掌底で蹴りを跳ね上げそのまま後ろから押すように力を掛け軸足を蹴る。
その蹴りをそのまま受けて身体を空中で回転させ踵で蹴りを飛ばしてきた。
頭を逸らすことでギリギリ回避する、頬に掠った。
「へぇ、やる」
「冗談じゃ……」
「みててね簪ちゃん、お姉ちゃんの勇姿を!」
「頑張って……!」
「お姉ちゃん頑張る!」
「先輩じゃありません」
「ズバッと言われた?!」
さて、何としても勝ちたいので、沈んでも打たせて貰う。卑怯とは言わんで欲しい!
「っふ!」
「甘いわ、攻撃はまだまだね」
「しまっ…」
「ほい」
「っつ!!」
右腕を使いフック気味に掌底を放つも容易く絡め取られ捻り上げられる、逆らったら最悪折れる。
そのまま跳び関節に無理のない角度になった瞬間に全力で引く、ソレと同時に体を捻り踵落としを仕掛けるが案の定容易く避けられた。
「すごいわね、常人とはかけ離れた運動能力、残念だわ、そんな芽を摘み取ってしまうなんて!」
「なるほど、噂どおりか」
「右腕、大丈夫?」
「腱が逝った、しばらくは動かない」
「ならあなたに勝ち目はないわ」
「それがどうした生徒会長、まだ右腕が逝っただけじゃない、能書き垂れてないで来なさいよ、掛かってきなさい。 早く! 早くッ!!」
「ふ、ふふふ、あはは! 素晴らしい、素晴らしいわ!」
左腕を大きく引き、突き出す。やはり回避され腕を取られた。
「もう一本頂くわ」
クン、とたっしーが俺の左腕を逆側へ力を向けた直後『ゴキン』と音が鳴って曲がってはいけない方向へと曲がった。
「え、嘘―――」
「貰った」
たっしーが呆けた一瞬の隙を突き右腕を治しワンインチパンチ(極々近距離、ほぼ零距離より体重移動を主に使い打撃を繰り出す技)の応用で弾き飛ばす。
「まだっ!!」
「あ゛……か……ぁ」
空中で身体を回したたっしーが俺の顎を捉え蹴りを直撃させ吹き跳び、プールへと落ちた。
ガクガクと足が震え、力が抜け膝を付く。
脳震盪、思考能力が落ちる、目の前がフラフラする。
受身を取る事もなく身体を地面へと叩きつける。
「しん…ッ!! サキ……!!」
「か、かんざ……かひゅ、かんざひ…?」
「うん、うん……! 私はここだよ……!!」
「ほ、ほんね、ひょんねちゃんは…?」
「勝ったみたい……」
「くひゅ、きひゃ、これで……かいひょうに、か、かち……いく、じょ」
「駄目だよ! 脳震盪になってる……! 後遺症が残るよ…!!」
「なりゃ、ほんねひゃんと……いけ、かて……かんじゃひ、いけ…いくんら」
「……ッ!! ほ、本音!!」
「ひぇう~? かんちゃん~?」
「お願い、私と組んで!」
「うん~……うんー、でも~」
「商品はいらない……! だけど、私は何としても勝つ……勝たなきゃ駄目なの……!」
「うふふ~おっけ~」
「じゃあ……いってくるね」
「あぁ、いっれこい」
あぁ、つかれた……
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
「…………」
「起きた…?」
目を開けると俺の顔を覗き込む簪がいた、あぁ、なんだろうか。スゲェ落ち着くし気持ちいい。
「んっ……」
「あぁ、膝枕ぁ」
スベスベもちもちで柔らかい枕を無意識に撫でると簪が微妙に嬌声を上げたので簪の身体である事が分かった、そこから推測してこれは膝枕である事を理解する。
「ぐぅぅぅぅ……私も簪ちゃんにして貰った事ないのに…」
「先輩、何か謝る事は……?」
「うぐ、その……ごめんなさい、まさかアレほどやれるとは思わなくて……つい」
「他には……?」
「ほ、他…? えと、えと……」
簪が俺の頬を撫でて一度頷いた後プライベートチャネルを起動し『元に戻って』と言うのでゆっくりと立ち上がり相も変わらず何処からともなく巨大な黒いマントを取り出す。
「面倒なので種も仕掛けもーとか無くていいよな、私の正体はー」
「?」
身体を隠して服と身体を元に戻してマントを落とす。それと一緒によっこい、と座る。
「はい、正解は女装した信一郎君でした」
「え、は、え? えぇぇぇ?!」
「で、先輩……他に信一郎に謝る事は……?」
「え、う……でも」
「…………」
「その、家の件で色々と…ご……ごめん、なさい……」
「信一郎は?」
「ええよ!」
すると簪がニッコリと笑って俺の右腕にしがみ付いた。
「うぅ、か、簪ちゃん……」
「なに? お姉ちゃん」
「か、簪ちゃん…簪ちゃん!」
「もう、落ち着いてよ……お姉ちゃん」
「うぇぇぇん!! 簪ちゃああん!!」
うーん、仲良き事は美しき哉。
姉妹仲は無事修復されたようで良かった良かった、そういえば簪は優勝できたんだろうか。
「そういや簪、優勝できたか?」
「え、あ! えと……その……ごめんなさい……」
「どういう?」
「その、本音と組んだ瞬間にね……」
「デュノアちゃんとボーデヴィッヒちゃんがフラッグを取っていたのよ」
「あぁ、そういう」
戦闘に参加せず堅実に進んでたのな、さすがらうりーとシャルりん。
「まぁいいさ、今度カラード所有のプライベートビーチにでも行くか」
「うん……」
「スタァァァァァァァァップ!!!!」
「乱入してくるとは、とんでもない奴だ」
「簪ちゃんとお付き合いしたいなら最低でも私を倒す事よ!!」
「信一郎……学園に戻ったらセラフで……ね」
「酷い事言うねぇ、俺にもたっしーにも」
「生徒会長は学園最強の証、私を越える事は不可能よ」
「ナインボールセラフ、それは最強の証。誰であろうと 私を越えることなど不可能だ」
ただ浮いてたら相手のエネルギー切れで勝利しました。
なお、シャルりんとらうりーは迷いに迷った挙句話し合いで出場ペアで旅行に行くことにしたそうだ。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
トゥ・キティズ・ラプソディ編
【T・K・R】
「坊ちゃん、俺ぁあの新しい小娘が心配だ」
「どうしたんだいきなり」
「何か壊れてきてるぜ」
「そうか? どう思う?」
「……心配無用……」
「大丈夫でしょう、見たところ不自然な所はありません。オールドキングの見間違いでは?」
「だそうだ」
「そうかねぇ……」
今ある意味問題児な数人を連れてショッピングモール、レゾナンスへと来た。
ガチ傭兵上がりのソードオフ二連水平ショットガンの似合うオールドキング、勿論ショットガン所持。
オフなのにピッチリとしたスーツを着こんでいるにも拘らず日本刀を携えたアンジェ。
和風をイメージした普通の服を着てやっぱり帯刀している真改。
そして……
『信一郎様、問題ありません。周囲に危険な物はありません』
「いいからこっちに来いリリウム」
イギリス製スナイパーライフルL96を背負ってワンピースドレスのような可愛らしい服装をしたチョコチョコとこちらに走ってくる小柄な少女リリウム・ウォルコット。
それとなく聞けばオルコット家の分家だと言う。
つまりせっしーの親戚らしい。
全員が全員武器を持っているのに警察官に捕まらない理由は『カラードだから』コレに尽きる、もう何でもあり。
「少し休憩するか、どこがいい?」
「リリウムはそこのカフェがいいです」
「私は何処でも」
「……茶屋」
「ねぇぞ」
「……無念……」
「よし、全員武器を収納しとけ」
強盗やなんやに間違われちゃ適わん、まぁ二人ほど見た目が堅気じゃないんだが。
嬉しそうにスキップをしながらカフェへと入るリリウムを追ってぞろぞろと中に入って行く。
「いらっしゃいませ! お客様、@クルーズへようこそ! 何名様…で……」
「5人です。あ、信一郎様、リリウムあそこがいいです」
「落ち着け、すまねぇな嬢ちゃん、騒がしい娘で」
「どうした真改顔を真っ赤にして、早く行け」
「……しゅ、羞恥……」
「……シャルりんバイト?」
中に入ると執事服を着たシャルりんが笑顔で対応してて俺の顔を見た瞬間シャルりんの時間が静止した。
ソレを気にする事なくリリウムが気に入った席にちょこんと座った、その周りを固めるように全員が座る様を見ているとまるでリリウムの護衛のようだ。
「まぁ、アレだ。頑張ってくれ」
「……うん」
全員の席に座って上着を脱いで椅子に掛ける、するとスイーと流れるようにメイドさんが歩いて来た。
見ると………らうりー、お前もなのか。
「注文は―――籐ヶ崎…?」
「あー…なんだ、いっちーが見たら褒めるだろうな」
「……緑茶……」
「ねぇよ」
「……無念……」
「ロシアンティー」
「……無理……」
「元からあると思ってねぇよ」
「リリウムはブリティッシュティーセットがいいです」
「随分長く居座るつもりなんだな、まぁいい。人数分お願いできるか」
「……籐ヶ崎、何だこの面々は、軍人か?」
「ウチの傭兵だ、全員な。それよりも注文頼んだ」
「…畏まりました、少々お待ち下さい」
楽しみです。と笑顔でパタパタ脚を動かすリリウムを見て歳相応だと考えながら、店内を見渡す。
らうりーに接客…? 罵倒されている客やらシャルりんに接客されてデレデレの女性やら、概ね平和だ。
「タバコ吸っていいか」
「駄目です」
「……不許可……」
「場を弁えろ」
「聞いてみただけじゃねぇか…」
「お待たせしました、こちらブリティッシュティーセットでございます。ごゆっくりどうぞ」
「すまねぇ、ジャムを貰えるか」
「畏まりました」
「何としてもロシアンティーを飲みたいのな」
「一番口にあってるだけだ」
そう言いながら自分のところにあるスコーンや菓子やケーキなどをヒョイヒョイとリリウムの場所へと移して行く。
何だかんだ言って実は凄く面倒見が良くて優しい、ただし身内に限る。
「お待たせしました」
「すまねぇなぁ」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
「そろそろ出るか?」
「あと1時間……」
「しかたねぇな」
「……甘すぎワロタ……」
「オイ真改テメェ」
そろそろ店員が「何時まで居座るんだこいつら」見たいな顔で見てきている。いや、イギリスのティータイムってこんなもんよ?
仕方ない、リリウムが満足するまで待つかとストレートティーに口を付けた瞬間男三人が物凄い勢いで突っ込んできた。
「全員動くんじゃねぇ!!」
そしてハンドガンの乾いた音に続き女性の叫び声、にも係わらず我がカラードの面々は何事も起きていないかのように紅茶を飲んでいる。
「騒ぐな!! 静かにしろ! 死にてぇのか!!」
「あ、スコーンジャム付けたら美味しいです」
「今までどうやってスコーンを食ってたのか……」
やだこの人たち神経図太い。
「俺達には高い金払って手に入れたコイツがあるし」
「安モンだな」
「お前のは骨董品のプレミア価格だろう」
あぁ、一番最初に反応する所そこなんだ。
何からうりーがただ一人腕を組んで直立不動だ、おおう、銃を突き付けられちゅうけん。
「ちょっとクラスメイトが銃突きつけられてるのはアレだし行ってくらぁ」
「お気をつけて」
「よっこいしょっと」
「おいお前、ふざけてるのか!!」
安物ショットガンを持った男が安物ショットガンを俺に突きつける。
左手で銃口を塞いで掴む、コレでよし。
「な、お前! 気でも狂ってるのか?!」
「ほら、どうした撃てよ」
「な、何?!」
「たかが手の平一枚じゃねぇか、ソレを抜いたら俺の頭を吹っ飛ばせるぜ? 撃って見ろよ、ほらどうした」
「素人かテメェ、いい事教えてやる、テメェの手で塞いだ所で銃身破裂はおこらねぇんだぞ?」
「試してみろ、ほら撃て、撃って見ろ」
「てめ―――」
「撃てッ!!!!」
叫ぶように促すと驚いてトリガーを引いたのか左腕に衝撃が伝わる。が、この程度で駄目になる軟い義手なんざ付けてない、銃身が裂けて膨らんだ銃の稼動部分を左手ですぐに掴み握り潰す。
「え?」
「ほれ、らうりー」
「いいぞ、助かる」
脚部の収納ナイフを右手で取りらうりーへと投げる。
驚く様子も無く飛んできたナイフを掴んで男の持つハンドガンにナイフを突き刺し一瞬で使用不能にまでバラした。
ショットガンを潰されて唖然としている素人の顔面を引っ掴んで入り口近くの窓ガラスへと投げつけ、お帰りいただく。
「なっなっ?!」
サブマシンガンを持った男がこちらに銃を突きつけるより早くサブマシンガンが飛んでいった。
「ショットガンて…」
「ちゃんとスラグ弾だ」
ズザーとハンドガンが地面を滑ってきたので男が咄嗟にソレを取ろうとした、リーダーやショットガンを持っていた男よりは出来る。
しかしそのハンドガンも凄まじい勢いで飛んで行った、見るとリリウムがL96を構えている。
直後その男に二本の刀が突きつけられていた。
「……終止……」
「いやに満足そうだな」
「ち、ち、畜生がぁぁぁぁぁぁっ!!! こうなったら構いやしねぇ! 野郎ぶっ殺してやぁぁぁぁる!!!」
何か見るからに爆弾のスイッチ的な物を持って威嚇してくる、偶々男の近くにシャルりんがいたのでもう片足に収納してあったナイフをパスする。やはり綺麗に取ってくれた。
らうりーとシャルりんが凄まじいナイフ捌きで銅線やらなんやらを切断し、最後に起爆装置を握る手を蹴り起爆装置が宙に舞う。
「フンッ!!」
右足の展開型ブレードを展開し空飛ぶ起爆装置をぶった切って安全を確保、これで事件は一件落着ってな。
「「チェックメイト」」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
代金と店の修繕費に色を付けてレジカウンターにおいて出たりとか、まぁ色々あってその日の出来事を終えた。
ちなみにシャルラウは事件終了後のゴタゴタ時には既にいなかった、逃げたな。
カラードメンバーはその後の個人の買い物後本社へと帰っていった。
「お、よういっちー」
「おぉシン、なんか今日面倒事に巻き込まれたらしいな」
「知ってんのかよ」
「あぁ、強盗だろ? クラスの学校に残ってる勢が離してるのを聞いた、カラードがどうとかって言ってたからシンじゃないかと思ってな」
「その言い方だったら俺が強盗したみたいじゃねぇか」
「まぁ違和感ねぇけど」
「今度セラフと耐久訓練な」
「やめてください、しんでしまいます」
「で、何処行くつもりだったんだ?」
「あぁ、シャルとラウラの所にな、電話の用件はなんだったのかって聞こうと思って」
さよか、俺はあと部屋に戻って寝るだけだよ。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
真夏の夜の○夢
【風評被害】
いっちーに誘われて祭りへと繰り出した俺は今人ごみを避けるための虫除けスプレーみたいな使われ方をしている。
「やっぱシンがいたら楽だな」
「あぁ…?」
「まぁそう怒るなよ」
「お前ちっちゃい子に顔見られただけでマジ泣きされる気持ち分かるか?」
「まぁ見た目がそのままヤクザだもんな」
男性用着物(派手)を着て左腕を隠すために着物に突っ込んでいる。
「シン、はいコレ」
「シガーチョコをどうしろと」
「勿論銜えるに決まってるだろ」
「…………」
「く、ふふふ…!」
「あぁ? 何やワレ、どつかれたいんか?」
凄んでみてももう慣れてるからかいっちーはケラケラと笑い続けている。対照的に周りの一般人は物凄い勢いで離れて行くが。
「シン君! シンくーん!!」
と何やら聞き覚えのある声が近付いてきている。まぁ反応的に言うと十中八九母さんなんですけども。
ひょっこりと人込みから顔を出してきたのは案の定母さん、と父さん。
オレンジ色の浴衣を着て父さんの腕に掴まりながら実にご満悦な表情である。
「シン君が祭りに行ったって聞いてパパとママもデートに来ちゃいました!」
「来ちゃった!」
「そして折角だからIBISも連れてきちゃいました!」
「き、来ちゃった」
そして社内では常にスーツをきっちりと着こなしている我が姉の貴重な浴衣である。
「すまんないっちー、俺姉さんと祭り見て回るわ」
「おう、あれ? IBISさんって確かカラードのAIで、あれ? 姉さん?」
「うむ、姉さん。じゃあの」
混乱してるいっちーなど知ったことか、
姉さんの手を取り駆け出す、いやはや。姉さんは左手であろうが右手であろうが数百キロ程度の握力ではビクともしないから実に楽だ。気を使うのって本来苦手なんだよね。
「なんぞやりたいことやら食いたい物ある?」
「なら、あの焼きトウモロコシって言うのを食べてみたいなっ」
「あいよ……おっちゃん。二つお願い!」
「まいどぉ!」
姉さん、IBISのボディには電力供給及びコアジェネレーターからのエネルギー供給のほかに有機物を分解してエネルギーにする夢の機関が付いていて尚且つ味も感じる事が出来るのだ。
姉さんにモロコシを渡すと笑顔で礼を言った後一粒ずつ指で捥いで食べ始めた、違う、そうじゃない。
ためしに俺が普通にかぶりついて食べ始めると「あぁ」と納得してトウモロコシに齧り付いた。
「ゴリ」と芯も丸々抉って咀嚼を始める。違う、そうでもない。
でもまぁおいしそうだから別にいいや、どうせ有機物だし。
「たこ焼きって言うのも食べてみよっ」
「まっ、ちょ、待っ…」
何で俺よりも口の小さく作った姉さんが俺よりも早く食い終わってんの、何で芯さえ残ってないの。
姉さんに引っ張られてTakoyakiを買いに店の前に並ぶ、列が消化される前に急いで黄色い粒粒を腹に収めようと奮闘。
「ふぃー、食い終わった…」
「? シン、どうして真ん中を食べてないの?」
「ちゃうねん、これは食べる場所とちがうねん」
「そんな、知らなかった」
「その身体になってからの食事の頻度は?」
「今回の祭りが始めてかな」
そりゃあ食える所と食えない場所の区別が付かない……わけあるか、普通は芯に齧り付いてもその強度に諦める。
ところがどっこい‥‥‥‥夢じゃありません‥‥‥‥! 現実です‥‥‥! これが現実‥!
脚力腕力は当然として顎の力も万力を超えるほどだ、もはや重工業用。
祭りの各所に備え付けられているゴミ箱にモロコシの芯を捨てる。
「はい、たこ焼き」
「あぁ、姉さんありがと」
「うんっ」
次は食べずに俺の顔をじっと見ている、多分何処が食える場所で何処が食えない場所か分からないから様子を見ているんだろう。
なので爪楊枝でたこ焼きを刺して食べる。すると満面の笑みを浮かべた姉さんが同じように爪楊枝でたこ焼きを刺してパクリと口に入れた。
そしてモグモグと咀嚼したまま爪楊枝を口から離した、そしたら見間違えであって欲しいのだが爪楊枝が短くなってた。
「ちゃうねん!! 爪楊枝は食べたらアカンねん! コレただの食器やから! フォークとかスプーンとか箸とかと一緒やから!!」
「んむ?」
言い切る前に残った爪楊枝をぽいと口に放り込んで既に咀嚼していた、やだ天然!!
「……おいしい?」
「おいふぃよ?」
「さよか、そりゃ何よりや…」
でも姉さんたこ焼きを食べる手段が残り手づかみ位しかなくなったよ、どういう事だってばよ。
「仕方あるまいて、あーん。爪楊枝は食べたら駄目だよ」
「あーん」
口にたこ焼きを入れるとハムと口を閉じる、そのままスイッと爪楊枝を引くと…よかった、食われてない。
自分の分も食べて姉さんの口にもたこ焼きを入れて、を繰り返してたこ焼きをそれぞれの腹に収めた。
「あ、カタヌキってなにかな、行ってみよう」
「あぁ待って! まだゴミが捨てれてない!」
再度腕を引っ張られて運ばれていく、俺の体重は義手義足を合わせて100キロを越えるし生身の右腕で80キロのバーベルを持ち上げれる、しかも義手義足は丸が幾つか増えるのに抵抗も許されず運ばれていくのは姉さんのボディスペックが凄まじいからに他ならない。
「おじさん! 二枚お願いします!」
「お、まいど! 父ちゃんとデートかい?」
「いえ、弟とデートです!」
「へぇ、弟……おとうとォ?!」
「うん、何となくそうなると思ってた」
「る、ルールは分かるかい?」
「姉さん、この板に絵が描いてあるだろう? この絵の通りに型をくりぬくんだ」
「お、おう! 見事正解したらお菓子の詰め合わせだ、一回500円!」
「なるほど、この小麦粉63%澱粉21%砂糖――」
「あーいいから早く始めよう」
そして渡された型抜き菓子が俺のほうがヤバイ、何がヤバイってひょうたんなんだけどコレ括れじゃなくて最早棒。
対して姉さんの小槌の難易度の低さがヤバイ。
「あえて難しい方を俺に渡してくるとは……」
「姉ちゃんにいい所見せてやんな、兄ちゃん」
「あぁやってやるよ、やりゃいいんだろう!」
渡された針で一突きすると無残にもそこを起点として真っ二つに割れた。
「こんなのって……」
「まぁ、そう落ち込みなさんな…運が悪かったんだよ、本当に」
「出来ました」
「……嘘だろ?! 早すぎ―――」
針を持った右手が震えた状態で横を見るとなんとも美しく形作られた小槌。
「誤差±0.001μmです」
何と言うドヤ顔、誇らしげに抜いた型周辺の型屑を針で一箇所に纏めている。
「材質、厚さ、気温、湿度、n単位での亀裂その他の要素により尤も効率がよく尤も確実な角度、位置、力を算出して型を抜きました」
「そ、そうかい。まぁ、アレだ、おめでとう、ほら持って行きな、姉ちゃん」
「ありがとうございます。シン、一緒に食べよっか」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
「姉さん、ちょっち見たい物があるんだけどいいかな」
「うん、大丈夫だよ」
「オッケ、いっちーから聞いてな、神楽舞ってのがあるらしい」
なんでももしかしたらモッピーが舞うかもしれないとの事だ、いっちー曰く「今までは箒が居なかったけど今年は居るからもしかしたら」らしい、だったらからかうネタとしても純粋に見物としても見に行くしかないだろう。
いつ見るかって? 今でしょ!
「あ、あの…その…すみません」
「ん?」
「その、歩きタバコはご遠慮頂けますか……?」
「あぁ、すんません。でもコレ、シガーチョコなんで」
何やら祭りの運営の方が注意を行ってきたので素直に謝っていっちーに貰ってたシガーチョコを口の中に放り込んでモグモグ、紙? ヤツは死んだ! 俺が食った、もう居ない!
「そ、それは申し訳ありません」
「あぁ、いえいえ、こちらこそ紛らわしくて申し訳ない」
そこで謝罪大合戦になるかと思いきや「シャン」と鈴の音が周囲に響いた、ほほぉ、もう時間か。
舞台に目を向けると祭りの運営の人がペコペコ頭を下げて離れて行く、舞台の上には化粧を施した見覚えのある美人さんが刀と扇を持っていた。
「ほぉ、綺麗だな」
「簪様に報告を―――」
「じょ、冗談じゃ」
「冗談だから、落ち着いて」
心臓に悪い、心臓に悪い。
「…戦闘には向きませんね」
「まぁ舞だからね」
「これならば真改の方が」
「あれは違う、摂津出身の癖に薩摩の刀法とか言って盾やら防御に使った刀ごとぶった切るから」
「避けられたらどうするつもりでしょうね」
「さっぱと死せい、黄泉路の先陣ぞ、誉れぞ。とか言うんじゃね?」
「そうでしょうか」
個人的な会話だと普通に喋るんだけど社の事が絡むと敬語に変わる姉さんkawaii。
「足裁きは凄く綺麗だね」
「どっしり構える俺とは相性が悪いよ、双方攻め辛い」
「最悪地面にパイルバンカー打ち込んで固定するもんね」
「安定性高いよー」
そうこうしている内にモッピーが舞を終えた、歓声と言うほど煩くはないが少なくない賞賛の声が送られる、それに対しばつが悪いような恥ずかしいような表情で一礼した後舞台を降りて行った、てかかなりの重要人物なのにこんな衆目の前に出ていいのだろうか、心配だ。
まぁそれ言ったら俺もいっちーもそうなんだけども。
「終わったね」
「うん、あと残るイベントは打ち上げ花火だけかな」
いい場所確保しないと周りが人だらけになっちまう、どこか探そう。
何処がいいだろう、高い場所で上が開けてて回りに人が来ない、うーむ……
「そうだ、屋根、行こう」
「どうしたの?」
「そうと決まればまずは食べ物の確保だ、お好み焼きとか焼きそばとか、蓋できる物を持っていこう(提案」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
うん、姉さんの食欲のせいで思いのほかもって行く量が増えたけど問題はなかろう、さて、かなり罰当たりだが屋根の上に跳ぶとするか。
「よし、姉さん上に行こう、付いてきて」
「わかったわ」
屋根ギリギリの高さに飛んで余計な重さをかけないように屋根に着地する。
そして姉さんが跳ばずに飛んできた、まぁいいか。別に何が変わるわけでもなし。
二人で屋根の上に座りながら周りを見渡す。
「お、あれは………噂の五反田兄妹か、始めて見たな」
没個性で一般的な髪の色に紛れて赤い髪の二人組みが目に映った、バンダナもしているのを見ると間違い無さそうだ。
「ま、今はスルーかな…おやおやおやぁ? いっちー?」
「どこ?」
「あそこ、ほらあそこの木が空いてる所」
「バレットM82―――」
「待とう、ちょっとだけ待とう、なぜ50calを選択したとか言いたいが何をしようとした」
「勿論、織斑一夏を狙撃しようと」
「待て、待て、何ゆえか」
「シンに刀を突き刺しといて謝ったから、はいそうですかと許す訳には行かないの」
「落ち着くんだ、俺は、死んでない」
そうこうしばらく討論を続けやっとこ銃を仕舞った姉さんに一息吐く。
ひょいと上を見ると丁度一発目の打ち上げ花火が空へ上っている時だった。
「たーまやー」
「……ねぇ、シン」
「なんぞ?」
「今日はありがとう」
「別に礼を言う必要なんてないよ、俺も楽しかったし」
「うん、そう、そうだね、今日は楽しかった」
「花火が終わったら、一旦社に戻ろう、んで姉さんと父さんと母さんと一緒に並んで寝るんだ、きっと今日はいい思い出になる、いや、絶対いい思い出になるさ」
「うん、ねぇシン、私の大事な弟、あのね………大好きだよ」
「あぁ、俺も大好きだよIBIS、俺の大事な姉さん」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
唐突にもらった“拳”、予想外の“蹴”
【特に理由のない暴力が信一郎を襲う――!】
―Third Person―
ある一軒の家の前で金髪の少女は跳ね踊る胸の鼓動を抑えようと両手で胸を押さえる、決して小さくない胸がムニュ、と音を立て……ないで形を変えた。
「ふぅ、落ち着け、落ち着くんだボク」
なんとボクっ娘である、これは嬉しい。
「Sois tranquille」
そわとらんきる? 何言ってんだこいつ、などと思ってはいけない。ボクっ娘のあざとい彼女はフランス人なのだから、ちなみに翻訳すると「落ち着いて」である。
調べるなよ、絶対調べるなよ? 絶対だぞ! フランス語が出来ないのがバレるから絶対調べるんじゃないぞ!
じりじりとインターホンに人差し指を突きつけて突きを放つか否かでゆっくりと離して行く、なんと彼女のインターホンへの焦らしプレイは11分目を迎えていた、そろそろご褒美をあげてもいい頃だと考えもするが肝心の彼女はそんな事は微塵も考えていない。
「つ、次こそは必ず…!!」
ドイツもコイツも! 貴様等に次などあるものか、この役立たずの屑どもが!! と、言ってあげないのが優しさである。
彼女は難しい顔をしつつ考える、「恥じらいにはもう用はねぇ! へへへへっ…… ISも必要ないや、へへへへっ……誰がお前なんか、お前なんか怖くない! ……野朗、ぶっ殺してやる!!」
ここで家主が出てきておもむろに太目のパイプなんかを手に持ったら漏れなく彼女のグロ画像が見れるかもしれない、勘弁して欲しい、そういうのは苦手なんだ。
「ん? シャルだったのか、どうした?」
「うぇ?!」
シャルが後ろを振り向くとホームセンターの買い物袋を手に持った少年が不思議そうに見ていた、その袋の中には細くはあるが塩化ビニルのパイプが入っているブッダシット!
しかしこの少年は袋に入った塩ビパイプで蒸気抜きをするつもりはないらしい、心の底から安心である。
だがこのシャルという少女、友人間で一番しっかりしているくせに肝心な所でやらかしちゃう天然記念物さんだ、何をトチ狂ったのか目をぐるぐる回してこう言ったのだ。
「や、や、野郎、ぶっ殺s……ちっ、違う! そうじゃなくって、えとえと!」
ここで彼女の正体をバラそう、彼女の名はシャルロット・デュノア、フランスのデュノア社社長の一人娘だ、ある時期まで親子仲は非常に悪いと思われていたがある事件をきっかけに父親との仲を修復した、5日前までフランスに一週間帰って父親と共に過ごしたのは余談だ。
フランスの代表候補生であり第二世代専用機らふぁーる・りぶぁいぶ(意図してひらがなである)のパイロットだ、なお彼女の会社だが第3世代機を開発できず経営難に陥っていたがある人物の「俺のは第二世代最終型だ、第3世代第4世代の不安定技術なんぞよりよっぽど有用だぞ、え?何お前まだ第3世代機に金費やしてんの?ご愁傷様^^」の言葉により世界で尤も安定した第2世代機を作れる会社として経営難を脱する事が出来た。
ちなみにその人物の協力により既に第3世代機は開発を終えている。
スリーサイズと体重h――【ミンチより酷ぇや】――
若干引き気味の少年にあたふたとするシャル、本当に代表候補なのか心配になるほど急な状況に弱い。
駄菓子菓子ちょっと待って欲しい、彼女が天然を発揮するのは決まって目の前の少年が居る時に限る、なぜか、彼女は目の前の少年にホの字なのだ、なお、少年は他にも選り取り見取りな美人さんに好意を向けられている、もげろ、捩れて捥げて腐れ、だから時代遅れだってんだよ雑魚が、死に腐れ。
シャルの脳内でちっちゃな可愛くデフォルメされたシャルが忙しそうに走り回っている、一人頂けないだろうか。
い、いや、しかし私にはのほほんさんという心に決めた眺めて愛でる対象がだな。
所狭しと走り回るちっちゃなシャルの中で何故か昼寝をしていたシャルが眠たそうにまぶたを擦って手を挙げた、シャルたちが一斉にその手を挙げたシャルに目を向ける、彼女の出した答えは。
「来ちゃった☆(テヘペロ」
あざとい、実にあざとい、ちなみに今までのあざとい行動を結果として導き出したのは先ほどのちっちゃいシャルである。侮りがたし。
ペロ、と舌を出した状態で見る見るうちに顔が紅く染まって行く、よくよく見れば目尻に涙も浮かんでいる、相当恥ずかしかったのか。
「そっか、じゃあ上がっていけよ、盛大なもてなしは出来ないけど。歓迎しよう、盛大にな! とか言えたらいいんだけどな」
「シンに影響受けてるよね、一夏」
「まぁ、少なからずな」
一夏が笑うのと共にシャルがクスクスと笑う、どうやら恥ずかしいのは過ぎ去ったらしい、もし彼女の前で「来wwwちゃっwwwたwwww(暗黒微笑」などとしようものなら本気のパンチが飛んでくるか彼女が涙目で追いかけてくるかの二択だ。
「ほら、今日は暑いし麦茶か何か出すよ、リビングで待っててくれ、この部屋な」
促された通りにリビングに入りソファに小さくちょこんと座ったシャルがモジモジと手を膝の上で擦り合わせコミックチックな表情をしながら「うわー、うわー」と言っていた、よほど嬉しかったのだろう一夏もげろ。
周りを見渡して何か嬉しい事でもあったのか表情を緩ませながら頬を押さえている、何を考えているのかは想像に難くないので一夏もげろ。
あまりに一夏にもげて欲しいので謳ってしまいそうになる。私はヘルメスの鳥とか。
「待たせたな、ほら麦茶、今朝作ったからちょっと薄いだろうけど許してくれ」
「あ、ありがと一夏っ!」
しかしあまりの事に舞い上がり味なんて分からない、今イギリス料理を食べた所でマズイとは感じないだろう、なに、セシリアの手料理?
コジマは……不味い……。
何か話題を、話題を、兎に角会話を前に進めなければ、前へ、前へ! 前へ前へ前へ前へ!!
『ピンポーン』
「ん? 宅配便か? ちょっと待っててくれ」
「アッ、ハイ」
呆気に取られてヘッズみたいな返しをしたシャルはリビングを出て行く一夏を見送って考えた「そういえば一夏の趣味ってなんだろう、あとで聞いてみよっと」と、どうせ炊事洗濯じゃね?
場所は外に変わり時間は数分前に戻る。
またもパツキンのねーちゃんが織斑宅前で携帯電話をコレでもかと振り回している。
このねーちゃん、別に電話の回線が悪いとか雨乞いの儀式をしているとかではない、電話本人(本体?)からしてみれば何時でも空へと舞い上がり束の間の浮遊旅行を楽しんだ後、蝋で固めた翼が太陽の日で溶かされ地上へと落されるイカロスと同じ運命を辿るかも知れないので気が気ではないだろうが。
携帯電話をブンブン振り回したままパツキンのねーちゃんが織斑家のインターホンへと近付いて行く、先ほどこれでもかと焦らしプレイをされ続けた挙句最終的に放置プレイをかまされたインターホンに何が起こるのだろう。
今だ振り回されている電話を見たところ最悪の可能性としてその携帯電話がインターホンへと遠心力も加えられた力で叩きつけられる可能性がある。
それは電話にしてみてもインターホンにしてみても勘弁願いたいところだろう。
特にインターホンにしてみれば散々である。
「こほん、こほん」
携帯電話を振り回していた手をピタリと止めて二度、ねーちゃんが咳をする。
その後スイッと髪を掻き揚げるが長い髪はさして掻き揚げる前と見た目は変わっていない。
シャルと違い焦らしプレイを始める事もなく、さして震えるわけでもなく細く綺麗な指がインターホンへと伸びた。
正解は!
「ピンポーン」
越○製菓!!
等とチャイムを鳴らしてから十数秒後、ガチャリとドアが開いた。
静かな物だ、もう少し急いでいますよとアピールしてもいいだろう、佐○だとチャイムの直後に大声で返事をしないと出た時には何もない事があるのだから。
「はいはーい、お? セシリアじゃん、どうした?」
パツキンのねーちゃんことセシリア・チョロコットさん、巷ではちょろいさんと名高い名スナイパーである。
どんな的だって撃ち抜きますわ! と豪語しているが肝心のあの人のハートを撃ち抜けないスナイパー(物理)だ。
逆に視界に入ったからと言う無茶苦茶な理由で無感情にハートをカウンタースナイプされてしまう始末、なんで感度10であんな動きできるんだよ、おかしいだろとは私の弁である。
「おはようございます。ご機嫌如何かしら、偶々近くを通りかかったので、少し寄らせて頂きましたわ」
嘘付け、偶々ならその手に持つ美味しいと話題のデザート専門店のパッケージはなんだ。
どうせアレだろ、数時間並ばないと買えないとかそんな感じだろ。
そして涼しそうに得意げな顔をしているが彼女の心臓はもう凄まじい鼓動をセシリア本人に伝えている、理由は言わずもがな一夏もげろ、この際首でもいい。
「そうか、じゃあ上がっていけよ」
「えぇ、あ、コレをどうぞ、おいしいと話題のデザート専門店のケーキですわ」
「お、ありがとな、お茶でも淹れようか」
「はい!」
実に嬉しそうだ、ほんの数秒後にその笑顔が消えるとも知らずに。
出されたスリッパを履きリビングへと案内される。そこで一夏はこういったのだ。
「シャル、セシリアも来たぞ」
と……。
シャルとセシリアが同時に表情を驚愕の色に染める、何故だ、おかしい、私の予定では一夏と二人きりだった筈だ、とかどうせ思ってるんだろうけどそうは問屋が卸さない。
なお、この後ケーキを「あーん」すると言うイベントがあるのだがそれをやってしまうと我が家の壁を改修工事しなければならなくなるので勘弁していただきたい。
流石に180オーバーのパンチを壁に放ち続けたら十度も耐えれない、拳も壁も。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
紆余曲折あり一夏の自室へ侵入を果たしたシャルとセシリアは束の間の幸せを味わっていた、やれ男の臭いがするとか、一夏がこんな本を読んでいるとか、そんな事でしかないが。
幸いなのは彼の部屋は栗の花の臭いがしないと言う事だろう、控え気味に言ってるがぶっちゃけると精液の臭いである。
彼は三大欲求のうち重大な一つが失われているのではないかと心配になるがそれは置いておこう。
「この部屋椅子が一つしかないからなぁ、悪いけどベッドに座っててくれ」
一夏がそう言い放つと同時に頬を染めて嬉しそうな顔をした二人が本当にいいのかと目で一夏へ合図する。
まぁ当の本人は気にする事なく部屋のドアを閉めようとしているのだが。
「ピンポーン」
越後○菓!!
彼女達がホウとするのも束の間、チャイムの音が屋内に響いた、それに気づいた一夏が部屋の扉を開けながら振り向く。
「ちょっと出てくる、誰か来たみたいだ」
そう言って出て行った一夏に比べ当の二人はカチコチに固まってしまっている、本棚を見るなりベッドの下を覗くなりしそうなものだが生憎彼女達は何をするでもない、強いて言うなら両手でポフポフとベッドを軽く叩き続ける程度の事しか出来なかった。
それから十数秒、いざシャルが勇気を出してベッドにゴロンと寝転ぼうとした瞬間階段がリズム良く音を立て人が近付いている事を知らせた。
体重の支点を横にずらしたシャルが支点を戻そうと焦って珍妙な体勢となった、それをみるセシリアの目もどこか冷たい。
「わるい、下に降りて来てくれ」
当の一夏はひょっこりと顔を出すとシャルの体勢を気に留める様子もなく指示を出す。
セシリアは少々不満な声を出したがシャルはそれ所ではない、彼女の頭の中身は現在の光魔法かっこいいポーズの言い訳を探そうと必死だ、案の定ちっちゃいシャルが駆け回るが良さそうな答えは出ない、それに一夏が気にしてないんだから別にいいんじゃね? のちっちゃいシャルの一声により考えは沈静化した。
努めて何もしていない、何も起こらなかったと表情を変えるが残念、顔は真っ赤だった。
「一夏、なにしてんのー? はーやーくー!」
一夏を押しのけてピョンコと部屋に突入してきたのは中学生、下手すれば小学生にまで見えてしまいそうな小さな少女、元気が体から溢れてご機嫌オーラとなって撒き散らされている。
しかし少女が部屋の中に目を向けるとご機嫌オーラが瞬く間に消えうせてしまった、その後には雨に打たれて震える子猫のような眼差しをした少女が一夏の服の端を掴む。
「なんで…? どうして……?」
ともすれば泣いてしまいそうなほど目を潤わせて少女は一夏に尋ねる、その思いは「なぜ女を二人も連れ込んでいるのか分からない」の言葉に尽きる。
「ん? 何がだ?」
悲しきかな一夏は色々と文章として足りない言葉の裏を見ることが全く出来ない、対する少女は一夏の言葉に目尻からボロボロと大粒の涙を零してその場にへたり込んでしまった。
「ふ、ふにゃ……ふにゃぁあああああああああん!!!」
「ど、ど、ど、どうした?! おい、おい鈴、大丈夫か?! どっか痛いのか?!」
そりゃもうテンパりますとも、一夏本人にとって何故かいきなり少女、鈴が大声で泣き始めたのだから。
「なんだ?!」
「なんだー?」
ドタドタと階段を駆け上がって顔を出した二人は黒髪ボインでポニテの少女、銀髪眼帯の小柄な少女の二人だ、この時シャルとセシリアの二人はトライポータブルなニャンニャンを諦めた、が残念がるよりも先にまずは泣き始めた鈴を落ち着かせることが先決だとベッドから立ち上がった。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
「ぅゅ…」
一夏に抱きつく事で漸く泣き止んだ鈴はもう何度目か、一夏の服に顔をこすり付けて涙を拭う、一夏のシャツは最早汗を吸う機能を失い、一部がしっとりと濡れていた。
普段はこの状況で他の面々が黙っている事などないのだが今回ばかりは鈴が世界の終わりだと錯覚させるほどの泣き様だった為仕方が無いと認めている。
黒髪の少女、箒はぐぬぬとしているが他の面々はそうでもない、シャルは仕方がないなぁと言った表情でソファに座りしきりに手を動かしている。銀髪の少女、ラウラはシャルの股の間にちょこんと座りシャルに頭を撫でられながらこれぞ夫の余裕と言わんばかりにふんぞり返っている。
セシリアは一夏の隣に座り今だぐずってる鈴の頭を優しく撫でていたりする、見た目だけならぐずついている娘(鈴)を優しく世話する夫婦(一夏、セシリア)にも見えるある意味一番オイシイ役だったりする。
『かーぜーよりもー早く、はーやしよりも静ーかに、炎よりもー熱く、山よりもたーかくにー♪』
「ん、電話だ。鈴、少しどいてくれ」
「ほら、鈴さん、一夏さんはお電話ですので少し離れましょう?」
「ぇう……えうぅぅ……やぁ、いちかぁ……」
セシリアに抱きかかえられ鈴が一夏から離される、すると表情をふにゃりと崩してポロポロと涙を零し始める。泣き叫ぶ事はないがグズグズと赤子のように泣き出してしまう、セシリアが抱きしめ背や頭を撫でるも今ひとつ効果はないようだ。
「はい、もしもし」
『よぉ、首輪付きィ…』
「シンか、どうした?」
電話から低い男の声が聞こえる、呼び名はシン、かの適当に、かつ自由に殺せるキャラが欲しいな、との理由で不死の化け物とされてしまった不運な男である。
『今暇か?』
「なんでだ?」
『あぁ、俺が暇なんでな、お前の家に突撃しようと思ってた、学校に残った面々の話では今日お前家に居るって聞いたからな』
「あー、んー……別にいいっちゃあいいんだけどな」
『煮え切らないな、いいって事でいいんだな? ところで飯はもう作り始めてたりするか?』
「いや、でも何ゆえ?」
『あぁ、まだだったら手土産を何か持っていこうと思ってな』
「あー…そうか…――ん?」
何と返答しようか思案している最中にぎゅむ、と服の裾が掴まれる、鈴だ。
「いちかー、いちかー……ふぇぇぇ、いちかぁぁぁ……」
子猫が親猫を呼ぶにゃーにゃーと言う声の如く鈴が一夏を呼ぶ、少なくとも電話先の相手には鈴が居る事は理解できた。
『あぁ、猫が居るのな、じゃあ1・2・3・4・5…5人分ぐらいでいいかな』
「あー…悪いんだけどさ、今、俺含み6人だ」
『専用機メンバー全員か、分かった任せろ、正午頃に行く』
「いや、悪いって、土産ったってタダじゃないだろ」
『全く…ハァ、はい、たった今専用機持ちの年収分稼ぎました、で?』
「あぁ、うん、悪いな。じゃあお言葉に甘えさせて貰う」
『おう、じゃあ簪、寿司屋に寄ってくぞー。 うん……分かったよ……じゃ【ドルルルル!!!! ドッドッドッドッ】』
最後の巨大な音に顔を顰めた一夏が電話を切って溜息を一つ吐く。
「はぁ、なんだよあの音」
「いちか、いちかぁ」
「あー、はいはい」
しがみ付く鈴の頭を撫でる事で漸く泣き止み、静かになる。
そして「あー、簪も来るのかなー、家に入りきるかなー」等と考えていた。
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時は11:47頃、頃って言うかもはやピンポイント11:47。
全員で他愛のない会話をしていたがそろそろ一夏の足が痺れてやばい頃だ。
理由は胡坐を掻いた一夏の太股に鈴が頭を乗せ気持ち良さそうに眠っている為だ、一度そろそろ鈴を退けようかな、と呟いた瞬間に鈴を携帯電話で撮影していたシャルが「こんなに可愛く眠ってる鈴を起こすなんてとんでもない!」と猛反対したため今だこの状況だ。
【ドドドドドドドドドッドッドッドッ】
一瞬だけ凄まじい音が近付き、家の前で停止し、音が消えた。
眠る鈴がむにゃむにゃと口を動かし音が消えるとまた幸せそうな顔に戻る、シャルは携帯電話での撮影を動画撮影に切り替え可愛い可愛いと呟いていた。
「何だ今の音は」
「戦車の音に似ている」
「迷惑ですわね」
「あー…多分シンだ、悪い箒、出てくれ」
「わ、私か?」
何で私が、とブツブツ言いながらも一夏が自分を頼ってくれた事にほんの少し優越感を感じる。まぁ本当は箒が一番扉に近かったからなだけだが。
箒がドアに手をかけ、押し開くと同時に扉の向こうの人間が声を掛けてくる。
「おぉ、いっちー、バイク何処置けば……モッピーか、いっちーは?」
「一夏は今手が離せん、そもそもバイクとは……なんだこれ?!」
箒が視界を横にずらすと巨大な鉄塊が置いてあった、男の言った事からバイクなのだろうと予想が付くがそう言う物に疎い箒にはそれがバイクとは分からなかった。
マニアが見たら涎が出るなどと言うレベルではない、まぁ場合によってはどうしてこんな事になった。と嘆くかもしれないが。
排気量は1,800ccを超え全長二メートル半を上回る。横幅でさえ一メートルを超えているのに更にサイドカーが付いている。
ハーレーダビッドソン FLHTCUSE8 CVOウルトラクラシック・エレクトラグライド 長ったらしい名前だ、覚える必要は無い。
値段にして440万円を超える。金持ちの道楽だともっぱらの評判である。
一夏の家前の道は決して狭いわけではない、狭いわけではないがバイク一台が占領していい幅ではない、いや…普通のバイクなら問題はないのだろうが最早普通車両の大きさが占領していい広さではないのだ。
「信一郎……やっぱり収納したほうがいいよ……?」
「やっぱりそうかー、しかたねぇかー」
ヘルメットを胸に抱えた水色の髪をした眼鏡の少女が男、信一郎 シンに進言する。
シンが溜息を吐きながら何やら大きな包みを手に持ちバイクに手を置いた、するとバイクが光の粒子となり消える。
一瞬箒が驚いた表情をするが「そういえばコイツはこういう奴だった」と思い出し無表情に戻る、目付きの悪い娘である。
「で、入っていいのか?」
「いいんじゃないか?」
「凄く……投げやりだね……」
「知らん、私は出てくれ、と言われただけだ」
「さいですか、じゃあ入るぞなもし」
シンと眼鏡の少女、簪が遠慮無しに家に入る、リビングと思しきドアを開いて左手を上げて「よう」と挨拶するや否や一夏やらセシリアやらシャルやらラウラやらが口元に人指し指をあて「シーッ」と言う静かにしろのジェスチャーを行う。
全員の視線の先を見ると気持ち良さそうにスピスピ眠る鈴が一夏の膝の上に頭を乗せていた。
「なんだ? 今週は鈴音愛護週間か?」
「んにゅ……」
「あー、はいはい、そっとして置けばいいんだな」
シンが苦笑いしながら後ろ手にドアを閉める、そして手に持つ大きな包みをテーブルの上において一息付いた。
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「ん、美味いな」
「ホントだね、コレがお寿司かぁ」
「お刺身は臨海学校で頂きましたものね」
「これは…上等だな」
「はくはく、日本に居た時もそう滅多に食べれる物じゃなかったのよね」
「もぐもぐ、米と生魚がこれほど合うとは思わなかった、部隊の者にも食べさせてやりたいな」
「あー、サーモンうめぇ…やっぱ寿司はいいな」
「値段を知ってるだけに……少し抵抗が……」
カラフルな髪の色と目の色が寄り集まって談笑しながらシンの持ってきた寿司を食べる。
簪がボソリと呟いたがシンのポケットマネーより捻出されたこの寿司は知る人ぞ知る超高級鮨屋(カラードの行きつけ)に真昼間から突撃して「おっちゃん! 悪いんだけど10人前お勧めでお願い!」と頼んだ物だ。営業時間外だった事やらなんやらで+αどころの話ではない追加料金が発生している。
しかし年収200億ドルを超えるそうは見えないいいとこの坊ちゃんにはケツを拭く程度の出費だ、暇だからとバイクを買い漁ってるのに比べたら対した物ではない。
実は簪、交際相手の外見を捨て置くなら世界一の勝ち組である。尤もそんな打算は無しで交際しているため彼女にとって金の有無は割とどうでもいいのだが。
「てかアレだよ、来るなら来るで連絡くれればいいのに、連絡してきたのがシンだけってどういう事だよ」
「まぁ、どうせ急に来て驚かせてやろうとか思ってたんだろ」
「私はそうだ、どうだ一夏驚いただろう、嬉しいだろう」
ふんすと無い胸をラウラが張る、ちなみに着ている服はいつぞやのシャルに連れられた時に購入した物だ。
他の面々はあーだこーだと言い訳やらなんやらを並べて行く。
やれケーキを買うのに忙しかっただ、やれ今朝になって急に暇になっただ、やれ新型の銃器をよこせーとかヘリコプターよこせーとか、まったくあいつーッ。
さてさて現在ここに居る人数は8名、対して購入した寿司は10人前、2人前の余りはどうするのか?
育ち盛りの高校生がコレだけ集まっているのだ、たかが2人前の余りなど無いのと同義である。
モリッとマルッと平らげられた寿司の桶を一切躊躇することなく量子変換で収納する。普通は少しぐらい物怖じしたほうが良さそうだが基本的に家族が異常なので釣られて彼も異常だ。
あぁ食った食ったと両足を投げ出してくつろぐのは意外! それはラウラッ!
シャルにもっと女の子らしくしなきゃダメ! と叱られて若干しょんぼり、ここまでテンプレ。
いつの間にかテーブルから離れていた一夏が人数分の湯飲みを盆に載せて持ってくる、何が怖いってそりゃ決まってる。熱いお茶が一杯怖い!
最近知っているものが急に少なくなった落語、特に若いモンは聞きたがらない、そこらの漫才よりも遥かに洗練された物なのに、実に遺憾である。
「ふぅ、やっぱり食後は熱いお茶だな」
「特に寿司の後となれば尚更だ」
「あー、おいし」
「も、持ち手は無いのですか? こんなに熱いのに?」
「ふー、ふー、ずず」
「この程度の熱さなど私には…ズズzあちゅいっ!」
「あー、あっつい、体温上がるわー《体温の上昇を確認、機関部より廃熱を行います》」
「あ、あ、暑い……! 生暖かい風が……!!」
一部地域で夏に行われれば人が離れて行く大惨事が起き交際相手からさえも距離を取られると言う悲惨な事態が起きていること意外は何もない至って平和なひと時だった。
ちなみに今文字数がやばいのでかなり巻いている。
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「それはビルより大きいか」
「そうだ」
「それは食べ物?」
「違います」
「生き物か?」
「否」
粘土で捏ねた物体を当てるゲーム、簡単に言えばそういうゲームをしている。
確かにそうとも見えない事も無い井戸やら納得の分かりやすさの馬、何やら良く分からないが人型だと言う事は理解できた程度で何故か正解した仮面ライダーブラックRX。
そして現在場に残る物が三つ。
兎に角雑としか言いようが無い円錐の物体、作:ラウラ
何か良く分からないぐにゃぐにゃとした不定形体、作:セシリア
精巧で物を知ってれば質問せずとも分かるのに肝心のモノが分からない円盤の乗った6本足、作:シン
ラウラの物で分かるヒントが「巨大である」「都市にある事もある、だが無い事もある」「人口ではない」
セシリアは「食べ物ではない」「巨大である」「有名」
シンが「生き物ではない」「巨大である」「人工物である」
ここで全員がギブアップ、タオルが投げ入れられました!
「なんだったんだ、ソレ」
「山だ、まったく、無知はいかんぞ!」
プンスコとご立腹のご様子なラウラ、それは 山と言うには あまりにも尖りすぎた 大きく ぶ厚く 重く そして 大雑把すぎた それは 正に 円錐だった。
「いや、いやいや、山ってそんなに尖ってないだろ?」
「失礼な、エベレストなどはこんな感じだろう」
じゃあエベレストと限定すればいいだろうなどと思ってみても言い訳をちゃんと考えてあるのだ、彼女はあくまで自分は正しいと言い切る。お前がそう思うんならそうなんだろうな、お前の中ではな。
ちなみにビルより大きいと言うが一概にそうとも言い切れない、世界には標高50メートル以下の山だって存在するのだから。
「あら、誰もわからないんですの?」
実に心外だと言いたそうな顔で驚く、そして勿体付けるだけ勿体付けて言い放った言葉は。
「我が祖国! グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国ですわ!」
クソ長ったらしいが要するにイギリスだ。ちなみに挿絵とイギリスの地図を見比べてみると簡略化されているが確かにイギリスだった。北アイルランドが無いが確かにソレはイギリスだったのだ。
ちなみにイギリスはおっぱいを気にする少女に見えるとのもっぱらの評判である。
「で、シンのそれマジでなんだよ」
「あぁ、これな、かなり精巧に作ったんだがな…わからんかったか」
少々残念そうに肩を落とす、馬も分かりやすかったが形状だけで言うならこちらも相当なものだ、ただ物が分からないのだからそんなに残念そうにされても困ると言うのが全員の総意だった。
「まぁ、気を取り直して……こいつはL.L.Lだ!」
「知らねぇ…」
「……あっ!! 聞いた覚えがあるぞ、確か…確かカラードの最新兵器で拠点防衛型の巨大兵器!」
「正解だ! 正解したらうりー、もといドイツにL.L.Lを無償で貸し出そう!」
「いいのか?!」
いいわけないだろうが、何を考えているのだろうか。
しかしラウラもシンも割と本気である、なお、この後ラウラの軍から支給される給料が急増したのだがそれは今語るべき事ではないだろう。
そうわいのわいのと騒ぎ散らしていると部屋のドアが唐突に全力で開かれた。
「ただいま! いっくんいっくん! ちーちゃんとハグハグしよー! ハグハグー!! あとただいまのちゅ………なんだ、嫌に騒がしいと思ったら貴様等だったか」
「あ、ども、お邪魔してます」
「ふんっ!!」
気さくに挨拶をしたシンの顔面に拳がめり込む。唐突に貰った“拳”
「う、ぶ…?! ぇ?」
「フッ!」
「おごぁ?!」
顔面を押さえるシンの背に鋭い蹴りが叩きつけられる。予想外の“蹴り”
「な、何故……!」
「そこにお前が居たからだ」
「理不尽!!」
特に理由のない暴力が信一郎を襲う――!
などと言う事は無かった。
「帰れ! ここはちーちゃんといっくんの愛の巣だ!」
「まぁ千冬姉、落ち着いて」
「だってだって!」
「はいはい、おかえり、千冬姉」
駄々をこねる千冬をあやすかのように一夏が千冬を抱きしめて頭を撫でる。
「あぁ、ただいま……ふひ」
ふにゃりと顔を綻ばせて笑顔になり一夏に見えない角度で他の女性勢に黒い笑みを浮かべる。
ほうきに47ダメージ
セシリアに39ダメージ
りんに83ダメージ
シャルに43ダメージ
ラウラに19ダメージ
かんざしにダメージをあたえられなかった
シンはねんどをいじっている
銘菓ひよこのパチモンみたいな何かを夢中で作っている、こやつの名はオボンヌ、銘菓ひよこより長く深い歴史のある銘菓ひよこのパチモンである。
「いっくんはちーちゃんのものだ、ちーちゃんだけのものだ! 誰にもやらん、誰にもだ! 貴様等にも束にも!! いっくんはちーちゃんの息を吸って生きるんだ! いっくん、ちゅーっ!」
「あー、もう。まだ日が高いのに酒飲んできたな? まったく、酒臭いよ千冬姉、ほら今日はもう寝ような?」
「えへへー、いっくんと寝るー!」
「はいはい、それは夜俺が寝るときな?」
表情には出ないがあぁ確かにベロンベロンに酔っ払ってるようだ。一夏に連れられ去って行く千冬を口を開けて見送る。
彼女達、織斑千冬が酒を飲むのは知っていたが休日でも真昼間から酒をかっ喰らうとは微塵も思っていなかったのだろう、イメージが崩れ去り唖然としている。
その中で対してショックを受けていないのは夢中で粘土を弄っているシンと別に他クラスだし日本代表、及び候補としての関係しかない簪、そしてもはや何であろうと尊敬する教官なのには変わりないとある意味悟りを開いているラウラだった。
箒は「千冬さんが姉に似てしまったのか、姉が千冬さんに似てしまったのか」と考え、前者だったら何が何でも一夏に対して姉を土下座させよう、後者なら…少なからず姉の影響は受けてるだろうし私が土下座しよう、と決断した。
「出来た、なんでしょうか」
「む、オボンヌか、クラリッサが好きでな」
「マジかよ、良かったな母さん。じゃあコレ」
「オボンタですわね、チェルシーがたまに食べてますわ」
「コレは」
「オボンスだね、父さんが執拗に勧めてきたよ」
「This」
「オボン又ね、一時期机の中に忍ばせておくイタズラが甲龍を作ったラボで流行ってたわ」
「オボン夕」
「生徒会室に……備え付けられてるって……本音が言ってた……」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
「このジャガイモ切りにくい!」
「写真に比べて赤色が足りませんわ、ケチャップ追加ですわね」
「おでんを作っている、ところで串は何処だ」
まともに作られる料理やら酷くもったいない材料の調理やら大惨事世界大戦やら季節を盛大に間違っている料理やらが台所で精製されているのをソファで座りながら眺める男二人、下唇を噛んで苦しそうな表情の一夏と比べて全く心配する様子のないシン。
「なぁ、なんでシンはそんなに落ち着いていられるんだ」
「俺が食うのは簪の料理だけだからな、やらんぞ」
「セシリアの……料理か……」
「簪、どうだ?」
「うん、いい感じ……楽しみに待っててね……」
「おーう」
軽い調子で口笛を吹くシンと祈るように手を組みガタガタと震える一夏、オチ? そんな物はない。
「どうぞ、自信作ですわよ!」
一夏は努めて笑顔でその
「いや、コレはタバスコの臭いじゃないな、タバスコはどちらかと言うと酸味のほうが強い、デスソースか?」
「赤色を足すためですわ!」
シンの冷静な推理によりより絶望が深まる。今ならソウルジェム真っ黒で魔女が生まれそうな勢いだ。
「ではどうぞ、あーんですわ」
「あ、あーん……」
とても羨ましい状況なのに誰一人として嫉妬などしない、むしろ顔を逸らして惨劇を見まいと努力するほどだ、一夏の顔色が美しいレインボーに染まる。
「おいしいですか?」
「お゛い゛し゛い゛ッ!!」
「あぁお前男だよ、いっちー、お前のことは忘れない」
「信一郎……あーん……」
「あーん、むぐ」
一瞬シリアスな顔をしたかと思えばすぐに簪の手料理を食べる。
ロールキャベツだ、食べやすいように一口サイズで作っている、匠の嬉しい心遣いです。
「おいしい……?」
「あぁ、美味い、最高だ」
「良かった……」
「……一夏! 私のも食べろ! ほら!」
「ちょっ、待っ! 熱い! おでんは、おでんは無理やり食べさせちゃだめぇぇぇぇぇ!!」
「ぼ、ボクのも!」
「待って! 待って落ち着いてくれ!」
「一夏! あーん!」
「なんでそんな熱いのに限ってごり押しなの?!」
「後でいいからしっかり味わって食べてくれ」
「やだ箒優しい……」
わいのわいのと騒ぎ散らす面々と明るく楽しい食卓、他人の家であろうが相も変わらずイチャイチャし続けたりと好き勝手な事ばかりする少年少女たちであった。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
?????????????
【???????】
妖艶な金髪の女性が裸でフワリとしたロングヘアーの裸の女性を胸に抱き額に唇を落とす。
肌にはうっすらと汗が浮き長い髪が張り付き、ロングヘアーの女性が息を荒くして金髪の女性を掻き抱く。
「ね、オータム?」
金髪の女性がオータムと呼ばれた女性に話し掛ける、その言葉にゾクリと身を震わせて荒い息に混じって嬌声を上げた。
「ぁ、は…あ。スコール…? んぁあ!」
「カラードって、知ってる?」
金髪の女性、スコールがオータムの耳元で囁き、左手で彼女の身体を撫で右手を下腹部へと滑らせて行く。
「知って、る…ぅぁあ! あっ、あっん」
「そう、いい子ね。あそこはね、私達にとって凄く有用で、凄く邪魔なの」
彼女の右腕が動く度、彼女の声が囁かれる度、彼女の左手がその胸を撫でる度、ビクリと体を震わせ隠そうともせず声を上げた。
「だからオータム、愛しいオータム、可愛い可愛い私のオータム、貴女に行って欲しいの」
「いく、いくぅ! すこーるぅ…いく…ぅ!」
腹に、胸に、首に、頬に、目元に、唇に、ゆっくりと這うように吸血鬼が血を吸うように唇を落とす。
「ふふ、ねぇオータム? いきたい?」
「いきたい、いきたいぃ!! いかせてぇ、すこーるぅ! いかせてぇぇぇ!!」
オータムの涙と涎がぐしゃぐしゃのシーツを染め、泣き叫ぶように懇願した。
「いい子ね、可愛いわ……いきなさい、ならばいきなさい、全身全霊、全力で、いきなさい!」
「あ、あ、あぁ! いく、いくぅぅぅぅぅ!! あ、っはぁ!! んぁあああああああ!!!」
右手を一度一際大きく動かすとオータムが身体を大きく仰け反らせ舌を垂らしながらガクガクと体を痙攣させベッドへと倒れこんだ。
「可愛い、本当に可愛いわ、オータム、好きよ、愛してる」
「すこーるぅ、私も、ぉ……あいしてるぅ……」
その言葉を最後に気絶するように眠ったオータムの唇へとキスをして毛布を掛ける。
コートのような上着を羽織り、携帯電話を手に取り、電話を始める。
『…なんだ』
「エム、仕事よ、オータムと二人でカラードを襲撃しなさい、可能なら最新機を確保、それか施設の破壊、無理そうなら直ぐに撤退しなさい」
『オータムか、犬猿の仲なんだぞ、何を考えている』
「いえ、別に? ただ最高戦力を考えたら貴女達二人なのよ」
『ふん、お前が行けばいいだろうに』
「指揮官はただ沈黙して座すのみよ」
『……まぁいい』
「ま、貴女の役目はオータムのストッパーよ、出来るだけ殺しはさせないでね」
『………ふん、愛されているようで羨ましい限りだ』
「大丈夫よ、貴女を愛してくれる人もきっといるわ、オータムには私しかいないの、私もオータムを愛しているしね」
『…………皮肉だ』
以下後書き
運営さん「限度を超えてしまったな、死刑」
私「▂▅▇█▓▒░(’ω’)░▒▓█▇▅▂うわああああ」
私2「心配するな!! 最近の少女漫画はもっと過激だ! よってセーフ!!」
運営さん「だがこれは少女漫画じゃない」
私1・2「▂▅▇█▓▒░(’ω’)░▒▓█▇▅▂うわああああ」
て事にならなければいいのですが……
そういえば、総入歯。
次回の更新ですが新しい話を投稿するのではなくキャラクター設定の更新となります。
ですが一から書き直しますし新話扱いで投稿するのでお気に入りに入れて下さっている方は目障りな事この上ないと思われますが更新時私の話が上に上がってきます。
どうかお許し下さい。
ところで後書きとか前書きとかっていざ書こうとすると何書きたかったか忘れる事って多々ありますよね。
私の書く前書きと後書きのほぼ全てがそうです。
忘れなかったのは二進数の後編の後書きぐらいです。
次回の最新話は5巻ではなく何処ぞの組織の襲撃編となります。
編とは言ってますが一話で片付くのでご心配なく。