LAST DAYS エクシーズ   作:ちょいワルドラゴン

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裏切り

ホテル地下の一室、二人の人物が医務室で眠っている。一人は昨晩誘拐された瑠璃。もう一人はやけどを右腕におったセーラであった。

昨日のことだ、セーラは瑠璃の元へ洗濯物を届けに来たそうだ。だが彼女が廊下を歩いている時不審な人影を見て後を追いかけその人物の入った部屋の扉を開けた時設置された爆弾が爆発したそうだ。

幸い火傷で済んだが下手すれば腕を吹っ飛ばされていた。

 

「瑠璃ちゃんはもう平気だ。部屋に戻っていいぜ。」

「英斗さんありがとうございました。」

 

英斗は元々病院で研修医として勤務していた。多少の怪我程度であれば治療は可能であった。

 

「問題はもう一人だ。」

「そうですね。」

 

もう一つ隣の部屋の扉を開け二人の男がゆっくりと入る。部屋の中にはパイプベッドが4つほどありその一番奥の右側のベッドでうなされている少年がいる。

ユートだ。

昨晩の夜、瑠璃を救った後急に意識を失いそれからずっと眠ったままである。心拍数や脈拍が異常なほど数値が上がっておりその横の机の上に置かれた《ダークリベリオン・エクシーズドラゴン》のカードが赤く点滅していた。その光はまるでユートの心臓の鼓動に合わせているようだった。

 

「ハァ………ハァ………ハァ………。」

「ユート!!俺はここにいるぞ。」

「俺もここについていたいが今日はこれから月一の定期会議だ。一番多くを目撃した俺たちが出なくてはなるまい。」

「だがユートはどうする?」

「私が付いています。」

 

二人が目をやるとそこには瑠璃が立っていた。顔には数カ所絆創膏を貼っていた。

 

「瑠璃、でも。」

「二人がいなきゃダメですよ。私なら大丈夫です。」

「なら任せるよ瑠璃ちゃん。行くぞ隼。」

「わかりました。くれぐれも気をつけろ。」

 

二人はいそいそと部屋を出て行った。

瑠璃は眠るユートの隣に座ると額に当てられた手拭いをとった。

 

「熱っ、酷い。高熱が出てる。」

 

机の上の桶の中に手拭いをさらす。そしてひんやりと冷えた手拭いの水気を絞りとり再び彼の額に乗せる。

 

「ハァ……ハァ……ウッッ!!」

「ユートさん!?」

「……み……ず……水。」

 

その言葉を聞くと少女は水を彼に飲ませる。水分を失ったスポンジのように水をゴクゴクと飲み干していく。ある程度飲み終わると再び眠りにつく。だが呼吸は安定し気持ちよさそうに笑いながら眠っている。瑠璃はユートの上半身と首元を濡れたタオルで拭いていく、昨晩からそのままなのでタオルはある程度ふくとすぐに真っ黒になってしまった。そのタオルを水で洗いまた汗を拭き取る。

ある程度拭き終わり一息つくとそのまま眠りについてしまった。

 

ふと目を覚ますと40分ほど時間が経過していた。目の前でユートが靴を履いているのが見えた。

 

「何をしているんですか!?」

「え?いや、腹が減ってしまってな。君も朝食はとってないだろうと思ったから取りに行こうと思って。」

「それなら私が……。」

「それなら一緒に行こう。テラスは今人が少ない時間帯だからそこで食べよう。」

 

二人は食堂で朝食を買うとホテル屋上のテラスに向かった。その日は少し曇っていて少し風が強かった。そのせいもありテラスは彼ら二人だけだった。

 

「やはり朝はパンケーキサンドに限るな。」

「私、甘いパンケーキとソーセージが合うなんて信じられないんですよね。」

「甘い生地がソーセージのスパイスをより一層引き立ててとても美味い。一口どうだ?」

 

そう言って差し出されたパンケーキサンドを一口だけ食べると瑠璃の顔が笑顔に包まれた。

 

「美味しい。」

「そうだろう。」

 

自信満々に笑うユートの笑顔を見ると彼女は恥ずかしくなって顔をそらしてしまった。本当に久しぶりに見たユートの満面の笑みを見たときに思わず胸が締め付けられる感じがした。それは確かに苦しい感覚だったが、辛い感覚ではなく嬉しすぎる苦しみというのが正しかった。

 

「ユート……さん。」

「どうした。」

「もし、戦いが終わったら《幻影騎士団》の使い方教えてくれますか?」

「そんな事いつでも構わない。そうだ、コーヒーを持ってこよう。待っていてくれ。」

 

そう言うとゴミを持って彼は言ってしまう。

寒くないようにとかけてくれた彼のマントには温もりが残っていて暖かかった。

しばらくすると近づいてくる足音が聞こえてくる。

 

「ユートさん、早かったですね。」

 

振り返った先にいたのはユートではなかった。

 

「コウライくん。ごめんなさい間違えちゃって。」

「いや、いいんだ。

それより聞いてもらいたいことがあるんだ。」

「どうしたの?」

 

コウライはテラスの奥の柵に手をかけると口を開く。

 

「初めて会った時から好きだった。この戦いが終わったら結婚を前提に付き合ってほしい。」

「ごめんなさい。

前にも話した通り私には心に決めた人がいるんです。」

「ユートだろ。またあいつか……。」

「ごめんなさい。でも、本当に好きなんです。」

「そうか、君はプロフェッサーからかばってあげようと思ったが、仕方がない。」

「えっ、何言ってるのコウライくん。」

 

コウライがカードを取り出す。

そこから現れた巨大な金属の鳥が瑠璃の体をつかんで飛び立つ。

 

「やめてコウライくん。きゃああああ助けてユートさん!!」

「何をしているコウライ!!」

 

ユートが駆けつけるとすでに瑠璃は空の上にいた。

振り返るとコウライがニタニタと笑っているのが見える。

その手から魔法カードが3枚ディスクにセットされた。

その瞬間ユートの体が炎に包まれる。さらに燃えるユートの身体に隕石が数弾打ち込まれる。

 

「ぐあああああああ!!

あああああああ!!!」

 

悶え苦しむユート。

 

「どうだ《デスメテオ》《昼夜の大火事》《火あぶりの刑》の火炎地獄コンボは?

はっはっは、ユート。瑠璃は僕のものさ。」

「貴様ぁあああ!!」

「《サイバードラゴン》召喚、エヴォリューションバースト!!」

 

光をまとって現れた銀色の龍口から放たれる光球がユートに直撃する。

 

「ウオアアアア!!」

「ユートさん!!」

 

ユートは屋上から2階まで行くほどの攻撃をもろに食らった。2階の床を半分ほど砕いて倒れるユート。その時もう一発のエヴォリューションバーストが再び直撃しユートはそのまま1階まで吹っ飛ばされる。

 

「薄れゆく意識の中で空に飛び立つ二人を見た。」

 

 

 

「……と……ート、ユート!!」

「はっ!? セーラ……さ、グアアアッ!!」

「動かないで背中と頭から出血してるし左腕が折れてるかもしれない?」

「どうしてここに?」

「数十分ほど前に変な様子のコウライが瑠璃を探してて変だと思ってきたの。そしたら案の定あんたがいて。」

 

するとユートは血を流しながら折れた腕を無理やり引き上げる。その度に苦痛の悲鳴をあげる。

 

「セーラ……さんはみんなに……、俺……は奴を……。」

「あんたいい加減に、 ハッ!!」

 

セーラの動きが固まった。

何かに怯えている。

 

ユートの目が真っ白く光り輝いていた。ユートは無理やり折れた骨をつなぎ合わせるとそのまま走りだす。

 

「何が……どうしたんだユート!!」

 

するとユートは振り返りその怒り狂った表情で叫ぶ。

 

「奴はこの俺が必ず殺す。」

 

 

 

 

 


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