隼とユートは静かに扉を開ける。
部屋は暗くベッドの横のスタンド以外明かりはついていなかった。ゆっくり歩いて行くと部屋の奥のベッドの上で静かに本を読んでいる少女がいた。
真っ白な肌に黒くて長いストレートの髪をした少女がいた。
その腕にはなんとも幻想的な色をした宝玉のはめられたブレスレットをしていた。
「瑠璃、暗い部屋で読んでいては目を悪くするぞ。」
「兄さん、ユートさん。おかえりなさい。」
「ただいま瑠璃。」
そう言うとユートは手に持っていた小箱を少女に手渡した。少女は開けてもいいのか?というような目を二人に見せると二人の少年は優しく了承の笑みを見せた。
少女が静かに箱を開けるとそこには手作りと思われるプリンが4つほど入っていた。
「食事係のみんなからだ。本当はケーキを作る予定だったそうだが瑠璃が風邪を引いたので流し込めるようにとプリンにしてくれたらしい。」
「だから少し遅れたのか。」
「そうだ。隼と俺たちからもプレゼントがある。」
すると隼はカードを入れるロケットを備えたペンダントを瑠璃の首にゆっくりとかけた。
「これは、カード?」
「俺とユート、そして英斗さんからの気持ちだ。
ペンダントはセーラさんからだ。」
「ありがとう、みんな。」
その優しい微笑みはユートの心に付けられた傷をいつも癒してくれた。そして、弱みを見せずにいつも助けてくれるユートの事を瑠璃も気にかけていた。
皆でプリンを食べるとユートはデッキの調整をしたいということで先に部屋を出た。
本当は兄妹水入らずの空間を作ってあげたいという気遣いだった。
部屋を出て自分の部屋に戻る途中自動販売機設置の休憩所の前を通った。その時、コウライとすれ違う。
「いい気なもんだよな!!」
ユートは静かに振り返り睨み返す。
「何が言いたい。」
「たかだか3週間守っただけで部屋に行く関係。俺はあの子とクラスも部活も一緒だった。」
「残念だが俺と隼とあの娘は幼い頃からの中だ。」
「幼馴染みとか長さとかは関係無えどっちが強いかだ。」
するとコウライはデュエルディスクを構えた。
「デュエルだ!!勝った方があの娘の前から消える。」
「つまらない奴だ。」
「何だと!!」
「俺は瑠璃を守るだけだ。そして俺はあの娘を賭けの対象にする気はない。」
「チッ。」
ユートは目を一切合わせずにその場を立ち去る。
その後ろでドンドンと壁を蹴る音が鳴り響いていた。
瑠璃の部屋
「それじゃあ、ここで《ライズファルコン》の効果を使えばいいのね。」
「瑠璃は覚えが早いな。」
体が弱くあまりデュエルをできる体質でない瑠璃は少ない時間ではあったが兄の隼からデュエルを教わっていた。
「
「じゃあ、
一瞬だが彼女の顔が赤くなった気がした。
「あれは使いやすいと思う。すぐに復活するし場にも1ターンで揃いやすい。でも、それならユートに聞けばいい。」
「……うん。」
モジモジとしている瑠璃を見た隼は少しニヤニヤと不気味な笑みを浮かべてしまった。
「何よ兄さん。」
「俺はてっきりお前が好きなのはコウライかと思ってな。」
「コウライくんは好きよ、お友達として。でも……。」
「ユートといる方が全てをさらけ出せる。」
「うん。」
「やはり兄弟は似るな。俺も、コウライの事を友人と思っている。だがユートはそれ以上の親友というか兄弟というか……。」
兄弟の心の支えであるユート。
彼がいたからこそこの兄弟の再会があった。
感謝だけでは言い表せない。
そんな感情があった。
一方その頃ハートランド郊外
公園の遊具の残骸の上に月を見上げる男の姿がいた。赤い制服に黒い仮面をかぶった不気味な男。
そこに近づく一つの影があった。
「待たせたな。」
「君がユートだね?ごらん、今宵の月は綺麗だ。」
「そうだな。」
男はユートの前方に飛び降りるとデュエルディスクを構えた。その仮面は満月の光を背に受けより一層不気味さを際立てていた。
「今宵奏でるはきみへ捧げるレクイエムさ。」
「終わるのは貴様の方だ。」
「「デュエル!!」」
【先行】ユート LP4000 H5
【後攻】??? LP4000 H5
「俺のターン、モンスターをセット。伏せカードを2枚セットしてターンエンド。」
保守的なスタートであった。
普段ならば
だがユートのもつエクシーズは相手依存の物が多い。この場合伏せで相手の動きを見るのも手だ。
「美しくないねえ。僕のターンドロー。
手札から《ダーク・フュージョン》発動。
手札から《
手札から翼を生やした超人とも言える姿の男と炎を纏ったスタイリッシュな女性が空中に現れた黒い渦の中に吸い込まれていく。その中から翼を広げた不気味な笑みを浮かべた悪魔のような女性が降り立つ。
「我が下僕《
(《ダーク・フュージョン》で融合召喚されたモンスターは効果の対象にできない、ならば。)
「俺は永続罠《
「関係ない。《インフェルノ・ウィング》セットモンスターに攻撃、貫通ダメージを喰らえ。」
セットモンスターがフィールドに現れる。
《
闇属性 戦士族 レベル3
ATK100 DEF1900
2100ー1900=200
《幻影結界》の効果で半分になるので100。
LP4000→3900
「さらに《インフェルノ・ウィング》の効果発動。破壊したモンスターの攻撃力と守備力高い方の数値分のダメージを与える。」
《幻影結界》の効果で半分に。
LP3900ー950=2950
「ぐああああああっ!!
《デントシールド》の効果発動、このモンスターが墓地に送られた時デッキからレベル3以下の《幻影騎士団》モンスターを効果を無効にして特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターのレベルは1つ上がる。
俺は《
「ほぉ、ターンエンド。」
「俺のターンドロー!!
俺は《
月夜に曲がった短剣を持った不気味な幽霊のような戦士が現れる。
「《
闇属性 戦士族 レベル3
ATK1600 DEF400
「俺は永続魔法《幻影結界》のもう一つの効果を発動。1ターンに一度自分フィールドの《幻影騎士団》モンスター1体のレベルを4にする。
俺は《クロックドダガー》をレベル4にし、こいつと《ダスティローブ》でオーバーレイネットワークを構築。」
フィールドに存在する2体のモンスターが光となり巨大な螺旋を描きながら大きな光球になった。
「英雄の血潮よ、正義の心をその身に宿しそびえる敵をなぎ払う戦士の勇姿をここに表せ。
エクシーズ召喚!!
現れよ、ランク4《
光球を突き破り巨大な剣を携えた巨大な巨人が降り立つ。
だがその《エクスカリバー》は違った。
その体は紅蓮ではなく闇夜に輝く青い身体をしていた。
そう、
そのエクスカリバーこそ消えた父の最後の形見の青い《エクスカリバー》だった。
オリカ紹介コーナー
永続罠
①②の効果は1ターンに一度しか使うことはできない。
①自分に受ける戦闘ダメージと効果ダメージをそれぞれ1回ずつ半分にする。②自分フィールドに存在する『幻影騎士団』モンスター1体のレベルを4にする。
幻影騎士団 デントシールド
闇属性 戦士族 レベル3
ATK100 DEF1900
このモンスターが破壊された時デッキからレベル3以下の『幻影騎士団』モンスター1体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化されレベルが1つ上がる。
幻影騎士団 クロックドダガー
闇属性 戦士族 レベル3
ATK1600 DEF400
このモンスターを素材としてエクシーズ召喚されたモンスターの元々の攻撃力は500ポイントアップする。