LAST DAYS エクシーズ   作:ちょいワルドラゴン

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ユート

扉の前で妙にそわそわしている男がひとりいた。

黒咲隼だ。

ユートと一緒にプレゼントを渡す約束をしたが等のユートがなかなか来ない。彼は別れる前に少し野暮用があると席を外したのだ。隼自身も彼が何かをかくしているとは冊子がついてはいたが無駄に詮索する必要もなく言われた通りに待っていた。

しばらくするとユートは小走りで箱を抱えながらはしってきた。

 

「遅いぞユート。」

「すまないな。そういえばコウライからは何か貰ったのか?」

「あいつはダメだ。」

「コウライはよく面倒見てくれるじゃないか。」

「どうも奴は瑠璃を異性対象として見ているようで好きになれない。」

 

ユートは隼の親バカっぷりに思わず笑ってしまった。

しかし無理もなかった。

 

瑠璃は元々病弱で外に出ることが少ない子であった。

ハートランドが襲われたあの日、彼女は体調を崩した学校を休んでいた。そんな中融合次元の兵士達が現れた。

学校で授業を受けていたユートと隼の元にも刺客が乗り込んできた。校内は逃げ惑う生徒や戦う教師や生徒でパニック状態であった。

 

『隼!!瑠璃はどこにいるんだ!!』

『今日はうちにいる。それより俺は小等部の生徒達を非難させる!!瑠璃を頼んだ!!』

『わかった!!』

 

ユートは混乱で溢れた校内を駆け抜けた。街では火災や爆発、そして暴れまわる《古代の機械騎士》達の行進する不気味な機械音で溢れかえっていた。

彼等の通っている学校から住んでいる住宅地の間には大きな橋がかかっていた。橋に着くとそこにも奴等が待ち構えていた。彼らの繰り出す融合モンスターが次々と無関係の人間のエクシーズモンスターを破壊していく。

急いで駆け抜けようとしたがついに橋の丁度真ん中で囲まれてしまった。

 

『《幻影騎士団ブレイクソード》でダイレクトアタック!!』

 

LP1800→0

 

『ハァッ…ハァッ…。』

『よそ見してるんじゃねえ!!《メテオブラックドラゴン》で攻撃だ!!』

 

《メテオブラックドラゴン》ATK3500

《幻影騎士団ブレイクソード》ATK2000

 

LP2000→500

 

『ぐあああああああ!!

ブ…ブレイクソードの……効果……、

《幻影騎士団ダスティローブ》と……《幻影騎士団サイレントブーツ》をレベル4で……特殊召喚。』

 

2体の幽霊をモチーフにしたモンスターが不気味なオーラを放ちながら復活する。

しかし、ユート体力は限界だった。

5人を一度に相手した彼の身体はもうボロボロだった。

その時

 

『《HーCエクスカリバー》!!

なぎ払え!!』

 

一瞬で融合モンスター達が倒されていく。

『ユート!!』

『父さん無事だったんだね。』

『母さんが心配で帰ってきた。ユートは何故ここに?学校では?』

『瑠璃が学校を休んでいるそうなんだ。だから来た、おじさんは?』

『あいつは……負けてしまった。』

 

隼の父は会社の女性たちをかばってデュエルをし……負けたそうだ。

 

『なんで逃げてきたんだよ父さん!!負けたって生きてるんだろ!!』

『ユート、落ち着いて聞くんだ、負けた人間はな……負けた人間はな……、

 

 

カードにされてしまうんだ。』

 

ユートの思考が止まった。

 

嘘だ。

 

朝学校に行く時

 

おじさんは

 

俺たちに手を振っていた

 

なのに

 

 

 

『うわあああああああああ!!』

 

その声を聞き付けると融合次元の奴らは至る所から集まってくる。

 

パチィィィン!!

 

ユートは頬を引っ叩かれた。

 

『ユート!!しっかするんだ。お前が焦って誰が瑠璃ちゃんを助けるんだ。』

『父さん……。』

『みんなを頼んだぞ。

罠発動……《強制脱出装置》。』

 

ユートの身体が浮かぶと橋の上から住宅地の方向に向かって飛ばされた。

 

『とうさああああああああん!!』

 

 

『雑魚が群がってきおって、

エクスカリバー、

最後にお前と出会えて嬉しかった。

速攻魔法《戦士の有志》発動。

フィールドに存在する戦士族モンスター1体を選択して発動。

お互いのプレイヤーはそのモンスターの現在の攻撃力分のダメージを受ける……そしてエクスカリバーの現在の攻撃力は

 

4000!!』

 

 

 

ユートは頰にかかった雨粒で目を覚ます。

目の前に広がっていた光景は崩れ落ちる橋であった。

轟音と爆発とともに全てを巻き込んで学園都市と住宅地を結ぶ橋が消えていく。

そして風に乗ってユートの手のひらに一つのカードが飛んできた。

 

《HーCエクスカリバー》

父だけが持っている青いエクスカリバーだった。

 

ユートは叫びすら出ない。

だがその目からはまるで壊れた水道のごとく涙が溢れ出ていた。

家が見えた。

急いで駆け込む。

 

目の前にあった光景は……、

 

カード化されている最中の母であった。

 

『《ダークリベリオン・エクシーズドラゴン》……

反逆のライトニングディスオベイ!!!』

 

ユートは我に帰った。

目の前にいたのは左目を潰され右腕を切り落とされ泡を吹いて倒れる融合兵士の姿が。

 

『俺……が……やったのか……。』

 

 

ユートは母の封印されたカードを拾い、隼の家のドアを開けた。

 

中は荒らされそこに一枚のカードが落ちていた。

苦痛の表情で悶えている隼の母のカードが。

 

二階にゆっくりと上がっていく、奥の突き当たりの部屋のドアノブに手をかけた。

開けるとそこには荒らされた形跡がなく綺麗なままであった。

 

クローゼットをあげると絶望の表情をあげて叫びをあげる少女がいた。

『来ないでえええええ、お母さんを返してええええ、イヤアアアアアア!!』

『瑠璃!!俺だ!!

隼の親友のユートだ!!』

『ユート……さん。

ユートさんユートさん!!』

 

瑠璃はそのままユートに飛びつくと腕の中で泣きじゃくった。

そしてなき終えるとそのまま深い眠りにつく。

 

放心状態のユートはその横でただ座っていた。

何も考えずに

 

 

何も求めずに。

 

 

3日後、ユートは自分の家に戻った。

どんよりと曇った空から悲しみを表すかのように雨が降り続けていた。

そこにはもう融合兵士はいないがデュエルディスクと切り落とされた腕だけが残っていた。

腕にはハエと蛆虫がたかって恐ろしいほどの腐臭を放っていた。

ユートはデュエルディスクを拾い上げる。

それはあの日負けたままの同じ状態だった。

 

調べていると一枚のカードが出てきた。

それを自分のデュエルディスクに入れると

《バトルロイヤルセンサー》

と表示される。

 

そして『LOSE』とひょうじされたデュエルディスクを持つ腕片にセンサーを当てるとその腕はカードとなった。

 

『そういうことか……。』

 

その日瑠璃は目を覚ました。

 

『ユートさん……。』

『瑠璃、お前は俺が必ず俺が守る。』

 

 

 

 

 

 

「ユート?どうしたんだ今日は?」

「すまないな、あの日のことを思い出してしまって。」

「ユート、あの時は3週間も瑠璃を守ってくれてありがとう。」

「俺たちは親友だ。

だからお礼は無しだ。」

 

二人は瑠璃の部屋のドアを開いた。

 

 




デュエルシーン少なくてすいません

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