LAST DAYS エクシーズ   作:ちょいワルドラゴン

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最終話 スタンダードへ

傷ついた青年と少年を囲むように青服の兵士たちが周りを囲んで行く。そしてその後ろからも黒い服の男たちが集まってくる。

 

「くそ……ここまでか。」

 

するとその後ろの兵士たちが次々と薙ぎ払われていく。

そこにいたのはマルスの部隊であった。

 

「あなた達無事だったのですね?」

「我々だってオベリスクフォースです。」

「みなさんには負けられません。」

 

すると2人の兵士が黒咲達の元に走ってくる。

 

「ホテルの一般人の保護が完了しました。

半数は北地区、もう半数は東地区にいます。

そして七皇も集結していました。」

「なんだと!?」

「北地区に3人。東地区に2人です。」

「そうか…。」

 

 

英斗は震える足を無理やり押さえつけて立ち上がった。そしてゆっくりとアカデミア兵の方へ歩き出す。

 

「結局揃わなかったな。」

「ちょっと待ったああああああ!!」

 

大きな声とともにめのまえに青いバイクが走り込んでくる。そのバイクは以前ユートを助けた物と同じものであった。

 

「まにあった……、ユート君!!久しぶり。」

「あんたは……、前に助けてくれた。」

「とりあえずここは一旦ひこう、Bー25地区で落ち合おう。」

 

そう言ってバイクの男は大量の融合兵相手に戦い出す。

ユート達はそれぞれ分かれて合流地点に向かった。

日はすでに傾きかけもうすぐで夜になろうかという頃である。オレンジ色の日差しが瓦礫となった街を照らしていく。ユートと黒咲は自分たちの通っていた学校へつながるメインストリート跡を走っていた。

かつては人々が賑わっていた明るいあの日の光景はすでに記憶の中に消えた。あるのはデュエルディスクの残骸と瓦礫だけである。

 

「どうしてこうなってしまったんだ……。」

「隼……。」

「俺はどうでもいい、いたずらをして、テストで悪い点を取ってたくさんみんなに迷惑をかけた。でも、妹は……瑠璃は何もしていない……。

どうして、どうして瑠璃ばかりいつも……。」

「今は彼を頼ろう。必ず道は開ける。」

 

二人はひたすら走り抜けた。

立ち止まれば思い出に飲まれて今にも泣き出してしまいそうだった。

 

 

午後7:00 Bー25地区

 

ハートランド中央区より少し離れた場所にある工場跡地に彼らは再び集まった。

 

「全員いるか?」

「いいえ。」

 

すると幼い子供を3人連れたマルスが歩いてくる。

 

「この子たちを守って私の部下たちは散りました。」

「クソッ!!」

 

隼は思い切り近くにある岩に蹴りを入れた。

しばらくするとバイクの男がやってきた。

 

「すまない、遅れてしまった。」

「貴様何者だ!!」

 

 

隼は男に食ってかかる。

その時ユートと英斗が止めに入った。

男は落ち着きを取り戻すとゆっくりと口を開いた。

 

「僕はシンクロ次元から来た。」

「シンクロ次元!?」

「なんだそれは!!」

「この世界はデュエルモンスターズの異なる召喚方法を主流とした幾つかの平行次元が存在するらしい。」

「そんなこと有り得るわけないだろ。」

 

すると隼に向かって2枚のカードが投げつけられる。

一方は一見普通の効果モンスター、もう一方は白いカード。

 

「チューナー……、シンクロ……?」

「この世界では黒いカード。

エクシーズ召喚が主流になっている。

だが僕たちの世界では白いカード、シンクロ召喚が主流なんだ。

そしてアカデミア達の次元では……。」

「紫の融合召喚が主流になっています。」

「マルス、君たちの目的はなんなんだ?」

「特異点を探すことです。」

「特異点?」

「プロフェッサーは4つの世界を融合しようとしているのです。

それには特異点と呼ばれる4人の特別な人間が必要だと言っていました。

それ以外はわかりません。」

「僕の仲間の凛は特異点だった。

けどシンクロ次元に潜入していたスパイにさらわれてしまった……。」

「俺たちの世界にもコウライというスパイがいた。

そして……。」

「セーラか。」

 

するとマルスが小さな端末上の機械を英斗に渡す。そこにはセーラの情報がのっていた。

 

「セーラさんはエクシーズ次元から拉致されたデュエリストです。」

「何!?」

「プロフェッサーはスタンダードと呼ばれる平行次元の基盤に当たる世界で様々な召喚法を教育させるためにあらゆる次元からデュエリストを拉致しているようです。」

「何てやつだ!!」

「シンクロ次元の今や4分の1はアカデミアのスパイになった。だがそれによっていい情報も手に入れた。

スタンダードの特異点はまだ無事らしいんだ。」

「本当か!?」

 

だがその時爆発音とともに空中に巨大な三つ首の竜が数体現れた。

 

「《青眼の究極龍(ブルーアイズアルティメットドラゴン)》!!

もう追っ手が!!。」

「時間がない。ユート君、隼君これを!!」

 

そう言ってバイクの男はと彼らにカードを手渡した。

 

「彼らから奪ったスタンダードへの片道切符だ。

使ったら簡単には戻ってこれない。」

「何故俺たちに?」

「君の使ってるドラゴンが僕の一番大事な友達のドラゴンに似ているんだ。

きっと君達ならやれる。」

 

ユートと隼を守るかのように全員がデュエルを始める。

 

「《タキオン》やれえええええええ!!」

「アルティメットパウンド!!」

「うおおおお!!オベリスクフォースをなめるな!!」

「行くんだ。

プロフェッサーの

赤馬 零王の野望を止めてくれ!!」

 

ユートと隼はカードをセットした。

その瞬間光の中に包まれる。

二人が気がつくとそこは見たこともない場所だった。

暗闇の中を歩くとそこは港の倉庫街のようである。

心地よい海風が彼らの汗ばんだ身体を吹き抜けていく。すると風に運ばれてチラシが吹き飛ばされてくる。

 

「君もプロデュエリストになろう……

L・D・S(レオデュエルスクール)は君を待っている……。」

「提供 レオコーポレーション、

社長……赤馬 零王……!?」

 

 

 

 

『赤馬 零王の野望を止めてくれ』

 

 

 

青年の言葉が二人の脳裏をよぎった。

隼の身体はブルブルと震えだしそのままチラシを破り捨てた。

 

「俺たちの戦場はここだ。」

「隼、早まるな!!

まずは情報を集めなければ。」

「俺は優しさも人情も同情も全て……

全て捨ててやる。」

「隼!!」

「そうしなければ残された皆に申し訳が立たない!!」

 

隼の目には涙が溢れんばかりにたまっていた。少しでも気を許せばこぼれてしまうそれを必死に隼は耐えていた。

自分にはその覚悟があるだろうか……、

敵を再起不能まで叩きのめす無慈悲な兵士の心はあるだろうか……、

ユートにはそれを捨てることはできなかった。

 

「お前がいくら感情を捨てようと俺はお前の親友だということは絶対に変わらないからな。」

「………。」

 

隼は答えることができなかった。

ユートの言葉は今の自分には優しすぎて辛かったからだ。

 

 

 

 


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