ソードアート・オンライン【魔を滅する転生剣】   作:月乃杜

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 何度か手直ししていたら遅れに遅れてしまったり。





第36話:二色の刃

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 彼の殺人(レッド)ギルドの【笑う棺桶】は潰滅し、首領のPoHと二大幹部の赤眼のザザ及びジョニー・ブラックは死亡。

 

 その他の一般ギルド員は三分の二が死亡し、残りは投降して黒鉄宮の奥エリアの監獄に送られている。

 

 こうして、殺人ギルドが消滅をしたのは良いけど、必然的にラフコフが押さえ付けていた他の犯罪ギルドが盛大に暴れていた。

 

 今までの反動だろうが、お陰様で攻略組は攻略にも乗り出せず、犯罪ギルドへの対応に追われている。

 

 最低でも二人組のコンビを組み、決して一人だけで動かない事を全員に徹底、犯罪ギルドのメンバーを見たら仲間に連絡をしつつ、適宜応対をする様に……としている。

 

 ユートは現在、シリカとサチとヨルコと他にも響と未来……六人でパーティを組んで動いていた。

 

 因みに、この中で直接的に手を出していない相手はシリカのみ、というよりは彼女の好感度はこの二年間でMAXだというのに……何しろ二年前の時点でギリギリ、ナーヴギア使用年齢だったシリカ。

 

 現在だとリアルでさえも中学三年生くらいの年齢、そして成長の概念が存在しないこのSAOに於いて、二年前の姿の侭であり見た目が小さいから、シリカは小学生にも見えるのだ。

 

 ユートは合法ロリは好きだけど、真正のロリコンではないから簡単には手を出せなかった。

 

 まあ、十二歳なら一応は守備範囲内だが……

 

 シリカとしては見た目は兎も角、頭の中は確り成長をしているからそろそろ、押し倒して貰いたいと考えていたりする。

 

 自分だって精神的には、食べ頃だと思っていたし。

 

 正確にはシリカ自身は……思っていた。

 

 グリセルダはパーティの限度人数だった事もあり、離婚確定とはいえど一度は結婚もしてた大人として、遠慮をしてくれている。

 

 既に犯罪ギルドを二組、潰滅させて黒鉄宮の牢獄に送っていたが、はっきりと云って頭が痛い。

 

 数人から十数人の規模、数千人からSAOにはプレイヤーが存在しているが、こんなアホ者が何組も──何十組も在るのだから。

 

 お陰で折角、閨を伴にした響や未来とデートをする事も出来やしない。

 

「三組め……か」

 

「うわぁ」

 

「本当に凄いね」

 

 呆れるユート、驚くのは響と未来の二人である。

 

「ったく、ようやっとの事でリアルと此方の厄介事が片付いたと思ったのに!」

 

 SAOでの【笑う棺桶】もそうだが、リアルの側でも問題は起きていた。

 

 とはいえ、そちらに関しては彼方側に残留していたマリア・カデンツァヴナ・イヴと、ユートが過去の為に蘇生をした【天羽 奏】と【セレナ・カデンツァヴナ・イヴ】の三人と共に、本人が解決している。

 

 マリアと緒川を襲撃したノイズ──あれがアルカ・ノイズという人工的な手を加えた新種で、それを造った者が本格的に手を出して来たのを逆襲してやった。

 

 向こうの目論見は装者、だが然し二課が残していた装者はマリア一人のみ。

 

 嘗ての装者は冥闘士として闘った為、向こうは初めから目論見が崩れていた。

 

 最終的に想い出を焼却して闘ったラスボス、そして力尽きたラスボスの写し身たる存在──ユートはその二人に【至高と究極の(アナイアレイションメイカー・)聖魔獣(ハイエンドシフト)】で創った肉体を与え、 生き長らえさせた上で回収をしている。

 

 奪った神器だとはいえ、割と相性が良かったが故に使い熟しは早かった。

 

 ユートはこれでエミュレーションした肉体を創造、相手に与えて生命を繋ぐ事が出来るし、仮面ライダーの装甲を聖魔獣として創造したり、デジタルモンスターを創造している。

 

 といっても、人間の肉体を創造しても普通は蘇生なんて出来はしない。

 

 ユートがそれを可能とするのは、生命を操る積尸気の使い手であり冥王の権能を持つが故に……だ。

 

 それは兎も角、目の前に現れた犯罪ギルドの連中に対して【景光】を抜刀し、疾く駆け出した。

 

 所詮、相手は中層で暴れるだけの連中でしかなく、レベルも低いからか大した損害も受けず、僅かな時間で制圧して黒鉄宮の牢獄へと送り込んだ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ユート達が余裕を持ってオレンジを叩いている中、調と切歌のコンビがやはりオレンジギルドの連中との遭遇をはたしていた。

 

 本来は【レリック】四人で動いていたが、バラバラになって逃走してしまった相手を追うべく、最低限のエレメントで二手に分かれて動いたのである。

 

 だけどこれは慌てていたとはいえ、ギルドマスターであるアメノハバキリ──風鳴 翼のミスだ。

 

 つい、やり易かったという理由でシュル・シャガナ──月読 調とイガリマ──暁 切歌をコンビにして追わせてしまった。

 

 本来なら近接戦闘要員の翼と中距離戦闘要員である調が組み、同じくクリスと切歌が組んで然るべきだったのだが……

 

 翼とてリーダーを務めてはいるが、所詮は二一歳の小娘に過ぎない。

 

 SAOでそれなりに戦闘の経験を積んだが、叔父の風鳴司令に比べて纏め役には少々、そちら側の経験値は不足気味だ。

 

 まあ、彼は彼で自分が飛び出す方が御好みみたいであり、フィーネ襲撃の際にも自らが拳を揮った。

 

 フィーネ──桜井了子の魂を塗り潰し、現世に甦った古の巫女だった女。

 

 仮令、肉体が滅びたとしてもアウフヴァッフェン波形を受ければ、DNAへと保存された意識が浮上して受容体の魂を、意識を塗り潰して復活を遂げる。

 

 今生では風鳴 翼が放った波形により、桜井了子の魂を塗り潰しての復活で、謂わばずっと獅子身中の虫として活動していたのだ。

 

 月の欠片を落とそうとしたが、響の余りにも余りな──放ってはおけない性格に毒気を抜かれ、桜井了子の表情で困った様な顔をして──『胸の歌を信じなさい』──そう言い遺すと、肉体が滅びて消滅した。

 

 尚、ユートは知らなかったがフィーネは月読 調を受容体としていたのだが、もう誰かの魂を塗り潰して復活をする意志は無くて、静かに調の中で見守っていたのだけど、調の危機に力を使ったり自らの魂を盾にイガリマの刃から守ったりして、最期に響への伝言を頼んで滅びの刻を迎えた。

 

 結構、爽やかに逝ったのはどうなんだろう?

 

 因みに、上司(なのは)様に頼んでDVDを入手し、【戦姫絶唱シンフォギアG】を現在はユートも内容を識っている。

 

 それで切歌を弄ったら、真っ赤になってあわあわとし始め、調からは可成りのジト目で視られた。

 

 何しろ──『手紙はどうなった?』と訊いたなら、それで──『デ〜ス!?』と叫んでいたし。

 

 意味不明な謎ポエム──よっぽどのトラウマとなっていたらしい。

 

 まあ、自分がフィーネの魂を受け容れた受容体であると勘違をいして、暴走した挙げ句の果ての【手紙】なんて、黒歴史以外の何物でもないのだろう。

 

 しかも本当にフィーネを受け容れたのは調であり、結局はやる事成す事が全て裏目裏目に出てしまった。

 

 これは確かに恥ずかしさに身悶える。

 

 

「相手は数人だし征くよ、切ちゃん!」

 

「征くっ、デース!」

 

 調は戦輪チャクラムという円盤が輪の状態になった武器を手に、切歌は両手鎌という普通は武器とするにはちょっと使い熟すのが難しい物を、切歌が前衛をして突っ込んで行って、調が中衛で援護を行うといった形でいつも通りに動く。

 

 接敵から数分間の戦闘、突っ込みがちな切歌は兎も角として、サポートをする調は違和感を感じていた。

 

「おかしい、まるでやる気が感じられないくらい逃げに徹している?」

 

 向こうからの攻撃などは殆んど無く、よくても牽制レベルのものばかり。

 

「切ちゃん、少し様子が変だから……一旦下がろう」

 

「調? 判っ……っ!? 調、後ろデース!」

 

「──え?」

 

 振り向いたが故に切歌は調の背後を突く敵に気が付けたが、調本人は不意討ちを受けて前のめりに倒れ、その隙に攻撃をされた。

 

「くっ!」

 

 ゴロリと横に転がっての回避が成功、立ち上がって切歌に合流しようと彼女の方を見遣れば、何と切歌は後ろから絞められて身動ぎが出来ない状態に。

 

「切ちゃん!」

 

「ごめん、調……しくじったのデス!」

 

 切歌が調の方へと振り向いた一瞬の隙を突かれて、追われていたオレンジギルドのメンバーの一人が逆に切歌を捕らえたのだ。

 

 それに数人というのも、向こうのブラフだったらしくて、今や連中は十数人にまで数を増やしている。

 

 見れば全員が下卑た笑みを浮かべており、捕まえていた切歌に武器を突き付けながら調に叫ぶ。

 

「さぁて、お仲間を殺されたくはないよな〜?」

 

「ぐっ!」

 

 調としては、『大好きな切ちゃん』を害されるのは我慢ならない話。

 

 だから動きを停めざるを得なかった。

 

「ようし、よく解っているじゃねーかよ。次はアレを解除して貰おうか」

 

「? アレって何?」

 

 本気で解らないといった表情を見せる調、オレンジギルドのメンバーが大喜びで野次る野次る。

 

「うっひょー、マジかよ」

 

「やっぱ見た目からして、処女だとは思ったぜ」

 

 尚、見た目からしてとは小さい──中学生くらいの容姿という意味であって、醜女という意味ではない。

 

 成長をしないゲーム内、だから本来は今より成長はしているだろうが、現段階では二年前の侭である。

 

 これは特殊な性癖がある連中には堪らないもので、美少女ではあっても切歌に比べて成長の度合いが低い調は、だからこそその一部特殊性癖者を目の前にして身震いをした。

 

「ハァハァ、何も識らないロリっ子ちゃんだぁ」

 

 気持ちが悪い。

 

 調からすれば『誰がロリだ!』と言いたいのだが、如何せんシンフォギア装者の中でも最も背が低くて、おっぱいも小さい。

 

 とはいえ、雪音クリスと比べて背は一センチ低いに過ぎないのだが……

 

 胸? ソコは比べ物にはなりませぬ。

 

「アレだよ、ア・レ!」

 

「だから、アレって何? 意味が解らない……」

 

 本当に理解が不可能だと謂わんばかり、男はニヤリと気色の悪い笑みを満面と浮かべる。

 

 男は決してロリコンではないが、SAOに閉じ込められてから約二年間は女とヤっていない。

 

 そこへきて、サイズ不足とはいえ女──少女を捕らえたのだから、ヤる事など一つしかないだろう。

 

 つまり男が要求をしているのは……

 

「オプションメニューを開いてみな」

 

「……」

 

 切歌の生命が掛かっているとなれば、嫌な連中からの命令とはいえ聞き入れるしかない調は、言われるが侭にオプションメニューを展開する。

 

「一番奥底にまでメニューを動かせ」

 

 逐一の命令に眉を顰めながらも、人差し指でメニューをスクロールしていく。

 

 奥へ奥へと。

 

「倫理コード解除設定?」

 

「そーだ、そいつを解除するんだ」

 

 言われたが躊躇う調。

 

 倫理コード解除設定──それは本当に奥底に存在するコマンドで、普段から目にする機会など無い。

 

 ユートならば、夜になる度に目にする処か使ってすらいるコマンド。

 

 だから調もこの解除設定を識りはしなかっけれど、【倫理コード】そのものはきちんと理解していた。

 

 例えば、プレイヤーなりNPCなりに過度な接触を何秒も続けると、警告音がピーピーと鳴り響く。

 

 更に続けるとセクハラと取られ、相手側に黒鉄宮の牢獄送りをするコマンドが出てきて、それを行ったら触れたプレイヤーはあっという間に牢獄に送られる。

 

 これが【倫理コード】によるものだ。

 

 SAOは健全──デスゲームの時点で健全とは云い難いが──なRPG。

 

 よって、この【倫理コード】は他プレイヤーに対する不適切な接触、NPCに対する卑猥な接触を禁止するシステムとなる。

 

 とはいえ、結婚システムが存在したりする訳だし、ゲーム内でもそんな行為に耽る事も可能なコマンドも用意されていた。

 

 それが、相手に接触を赦す【倫理コード解除設定】と云う訳である。

 

 【倫理コード】を識るならば、それを解除する為のコマンドの意味だって理解する事は出来た。

 

 同時に奴らの狙いが何なのか、血の気が引いて青褪めた表情となって気付く。

 

「ほら、どうしたよ?」

 

「……うっ」

 

 指をタップさせればすぐに解除がされる。

 

 だけど押せずに引っ込めてしまった。

 

 当然だ、次に連中が何を要求してくるかは火を見るより明らか。

 

 躊躇わない理由は無い。

 

「早くしろよな」

 

「デスゥ!?」

 

 武器が切歌に突き立てられて悲鳴を上げ、その瞬間にイガリマとして持っているHPバーが減る。

 

「切ちゃん!? やめて、すぐにやるから!」

 

 涙を流し膝を屈した。

 

 震える指を【倫理コード解除設定】へタップする。

 

「この侭じゃ何も変わらない──変えられない!」

 

 解除された調──シュル・シャガナの【倫理コード】と共に、目を固く閉じながら叫んだ。

 

 自分が捕まった所為で、調が苦しんでいるのを見せ付けられ、切歌もまたイヤイヤと首を横に振る。

 

「こんなに頑張っているのにどうしてデスかっっ! こんなの嫌デスよ、変わりたいデス!」

 

 嘲笑する男共。

 

「今度は……解るよな? 全装備を解除して貰う」

 

 そう……〝全装備〟だ。

 

 鎧兜に武器だけでなく、インナーや下着も全て。

 

 調は男連中を睨み付け、そして目を逸らして諦念の瞳でタップした。

 

 装備品がポリゴンの残滓を撒き散らしながら消え、本来ならMobが湧出するフィールドで裸身を晒す。

 

 只のアバターに過ぎないとはいえ、今は自らの肉体と同義なれば羞恥心に頬を赤らめ、大事な部位は手で隠して頬には涙が伝った。

 

「よう、リーダー。初めに良いだろう? そろそろ、我慢の限界だってのにアレを見せられちゃ堪らねぇ」

 

 小柄でミニムネな調を見て興奮する太めな男。

 

 現実ならば醜く腫れ上がったであろう下半身だが、仮想体(アバター)の身なれば特に変化は無い。

 

「ま、好きにしろ」

 

 ゲーム内だから幾ら射精()しても汚れないから、リーダー的にも問題無い。

 

「ヒャッホー!」

 

 ロリ夫(仮)は汚ならしい笑いで自らの醜く裸身を晒すと、『ヒッ!』と息を呑んだ調の方へと歩み進む。

 

 周囲の男共はニヤニヤと下種の笑い。

 

「に、逃げるデス調!」

 

「切ちゃんを置いて逃げられない……」

 

 確かに、拘束を受けてはいない調なら単独での逃走は可能だったが、切歌を置いて逃げる選択肢なんて、彼女には初めから無い。

 

 切歌の拘束そのものが、調の心を縛っていた。

 

 だからといって、切歌も調が目の前で陵辱される事など望みやしない。

 

「誰か……助けて欲しいデス! 私の友達、大好きな調を……」

 

 お互いがお互いの為に、相棒が救われる事を望む。

 

 穢らわしい手が無遠慮に調の肩に触れる。

 

「い、いや……」

 

 調が感じたであろうそれは恐怖心と嫌悪感。

 

「誰か調を……」

 

 切歌は動きを封じられて泣いて叫ぶしか出来ない。

 

 だから切歌は……

 

 だから調は……

 

「「ユートォォォッ!」」

 

 出逢って、一緒に冒険をして、初めて互いの半身とは別の──笑い合えた異性の名前を叫んでいた。

 

 そしてそれは一瞬か──或いは刹那の出来事。

 

「誰かとかユートだなんて……連れねー事を言ってくれるなよ」

 

 声が響く。

 

「つるぎ……?」

 

 刃が煌めく。

 

「ああ、振り抜けば風が鳴る(つるぎ)だ!」

 

「「嗚呼!」」

 

 希み望んだ援軍。

 

 其処には魔弓と絶刀を身に纏った二人、雪音クリスと風鳴 翼が立っていた。

 

 声も無く倒れたオレンジギルドのリーダー、身体には矢が数本刺さっている。

 

 ロリ夫(仮)には斬撃の痕が残っていた。

 

「あれ? 二人が彼処に居るなら私を抱えているのは……誰?」

 

 攻撃をしたのは確かに、彼処に居る二人なのだろうけど、ならば同時にロリ夫(仮)から掻っ浚ったのは、果たして誰なのか?

 

「助けてと言ったのは君じゃないか、調」

 

「……え?」

 

 裸身を晒す調をお姫様の如く抱くのは……

 

「ゆーと……さん?」

 

 たった今、助けて欲しいと願った相手だった。

 

「あうっ!」

 

 とはいえ、自らは謂わばすっぽんぽんであるが故、別の意味で涙目になりつつ僅かに身を捩る。

 

 落ち着いたものなユートはメニューウィンドウを開いて、アイテムストレージからアイテム名をタップ、すると調の方に何やら別にウィンドウが開く。

 

「これ、アイテム交換?」

 

 交換とはいっても調からは何かを差し出す必要性も無くて、単に【YES】をタップすればユートが渡すアイテムを受け取れる。

 

 よく判らないがタップをしてみる調。

 

「これ……はっ!」

 

 力強くメニューを操作、裸体から新たに装備が装着されていく。

 

 この際、聖詠を詠うのは様式美というやつなのか?

 

 前が黒で白いスカート、ピンクを基調とした装甲──鏖鋸・シュルシャガナ。

 

 同時に、切歌の方も碧を基調とした獄鎌・イガリマを装備していた。

 

「「はっ!」」

 

 装備後にはポージング。

 

「古代神話の戦女神ザババが手にした紅の刃、シュル・シャガナと……」

 

「碧の刃イガリマ──デェェスッッ!」

 

 尚、二人が装着しているのは魔法少女事変(アルケミックカルト)後に入手、観賞した【戦姫絶唱シンフォギアGX】のデザイン。

 

 それは絶刀天之羽々斬と魔弓イチイバルも同様。

 

「けっ、リーダーがやられたとはいえ三人が増えたからってどうした!」

 

 数の利を叫ぶのは恐らくサブリーダー。

 

「三人? アメーよ!」

 

 クリスが笑う。

 

 ザッザッと足を踏み鳴らす音が辺りに響き渡って、オレンジギルドのメンバーが見回せば、それこそ数十にも及ぶプレイヤーによって囲まれている。

 

「なっ!? い、いつの間にこんな!」

 

 しかも【黒の剣士】やら【緋の小舞士】など所謂、攻略組と呼ばれるメンバーまで勢揃いしていた。

 

「愚かだったな」

 

「な、なにぃ!?」

 

「我々は常に相互援助をしている。連絡を受ければ、何を置いても救けるさ……いつだって、どんな時であろうとも!」

 

 救援要請は翼とクリスに伝わり、其処からユートへと伝わった瞬間、ステータスの全てを以て加速して、こうやって翼達と共に調と切歌を救出に来たのだ。

 

「さて、オレンジギルドの諸君……今まで抑えられていた反動ではしゃいでいたのだろうが、これで御仕舞いだね。死ぬか、それとも黒鉄宮の牢獄に行くのか、選ぶが良い」

 

「クソッ!」

 

 悠然としたユート声に、オレンジギルドの一つを束ねるサブリーダーは毒吐きながら悔しげな表情をし、ユートを睨み付ける。

 

 

 だが然し流石にこの人数を相手に歯向かう程、この連中とて莫迦ではなかったらしい。

 

 全員が武器を捨てて投降をするしかなかった。

 

 名も知らぬオレンジギルドが潰滅、これによって殆んどの犯罪者プレイヤーが一掃された事になる。

 

 勿論、逃げおおせた者も多数が居たであろう。

 

 然しなからこの時世にて敢えて犯罪を犯す愚など、彼らとて行いはしない。

 

 連中に他者を殺す程度の輩は居ても、自分が殺される覚悟が定まった者なんて居なかったからだ。

 

「取り敢えず、これで連中も大人しくなるだろうね」

 

「そうですね。ユートさんの御決断は英断でしたよ」

 

 赤毛をポニーテールに結わい付けた少女──ギルド【SGs】のリーダーであるエリスが頷く。

 

 彼女は以前のボス戦で、響に救われた経験があったからか、調と切歌の救出にも全力を尽くしてくれた。

 

「いよいよ七〇層も越えた訳ですし、漸く終わりが欠片でも見えてきました」

 

 【閃光】のアスナも感慨深そうだ。

 

「調……」

 

「切ちゃん」

 

 二人は手と手を合わせ、抱き締め合う。

 

「「重ね合わせたこの手、絶対に離さない」デス!」

 

 それはきっと誓いの言葉──誓約。

 

「そして、私と響みたいにするんだろうね」

 

「え、未来……ナニを?」

 

「何だろうね、響!」

 

 此方は此方でラブラブなオーラを醸し出す。

 

 スパカーン!

 

 ハリセンの一撃。

 

「ひゃうっ!? クリスちゃんどうしたの?」

 

「そういうのは家でヤれ」

 

 真っ赤なクリス。

 

 ともあれ、事態は終息。

 

 そして第一の終演へ向かって世界は動く。

 

 

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 これで原作に戻れる……中身は別物だろうけど。



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