ソードアート・オンライン【魔を滅する転生剣】   作:月乃杜

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第19話:第二層ボス攻略準備

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「くふ、くふふ!」

 

 ニヤニヤしながらキリトが宿屋に置かれた姿見に、自身の着た服を伸ばしたり触ったりして映していた。

 

 そんな彼を見るアスナは怪訝な表情だ。

 

「ねぇ、彼はどうしたの? スッゴく不気味なんですけど……」

 

「ああ、上げた【コート・オブ・ミッドナイト】が嬉しいんだろ? 生暖かい目で見てあげると良いよ」

 

「っていうか、此方は此方でシリカちゃんが不気味なんだけど?」

 

 ふと見れば、地味な短剣に頬擦りするシリカの姿が在った。

 

「シリカも【ルイン・ザ・ダガー】を最大強化したからね、+10は流石に辛かったよ」

 

 苦笑いするユート。

 

 素材はタップリと有った訳だが、確率ブースト最大限とはいかなかった。

 

 +1だけなら割と簡単、だが+10ともかれば素材も多く必要となるし、素材が足りなければ確率ブーストも低くなって失敗する。

 

 確率ブースト最大限で、九十五パーセントまでだから必ず成功する訳でなく、故にネズハの失敗も場合によれば許容されるものだ。

 

 確率が百パーセントではない以上は、システム的に失敗は有り得るのだから。

 

 例えば、スパロボの攻撃が当たる確率が九十九パーセントでも外す時は外してしまうし、二十数パーセントでも当たる時は当たる。

 

 オフラインなゲームであればセーブして、トライ&エラーを繰り返せば良い。

 

 だが然し、SAOみたいなオンラインゲームの場合だと、それが出来ないからなるべく確率ブーストを取るのが成功の元。

 

「素材が殆んど無くなったから、また攻略序でに集めないとなぁ」

 

「大変ね」

 

 アスナも素材集めをしたから解るが、素材の数を揃えるのは大変なのだ。

 

 何しろ、ウインド・ワスプの針のドロップ確率は、僅かに八パーセント。

 

 それで一つ強化する素材を確率ブーストを九十五パーセントにする為だけに、百匹は狩ったのだから。

 

 アスナとキリトとシリカの三人で三十三匹を狩り、ラストの一匹を斃したのがアスナだった。

 

 キリトとアスナは賭けをしており、一番多く狩った方が奢る約束で見事アスナが勝ち取る。

 

「あの【コート・オブ・ミッドナイト】? あれってどれくらい使えるの?」

 

「強化を続ければ十層までは往けるらしいよ」

 

 とはいえ、流石にユートは【コート・オブ・ミッドナイト】を強化出来ない。

 

 この場合に必要なのは、【裁縫】スキルである。

 

「まあ、トリップしている二人は取り敢えず置いておいて、アスナに大事な話があるんだが?」

 

「──話?」

 

「余り周りに吹聴出来ない内容だから、決して洩らさないと約束して欲しい」

 

「……解った」

 

 アスナは頷く。

 

 纏う雰囲気から茶化す事が出来る内容でないと感じたのか、真面目な表情になると椅子に座った。

 

「まず、僕はログアウトをする事が出来る」

 

「は?」

 

「正確にはナーヴギアを外して、アバターをその侭に外と接触が出来るんだ」

 

「ハァァァァァァッ!?」

 

 アスナは目玉が飛び出す程驚愕したものだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ナーヴギアを外してマイクロ波による脳破壊を受け容れ、治療を施す事でその後のログアウトを可能とするというのは驚きだ。

 

 だが、それに普通の人間は絶対に耐え切れず死ぬ。

 

 ユートが生きているのは偏に、普通の人間から外れた者だからだ。

 

「多分、茅場も気付いてはいるんだろうね。小細工はしたけど、向こうは監視をしているだろう。こう頻繁にナーヴギアを外せばすぐに判る筈だ」

 

「じゃあ、何で排除されないの?」

 

 ある意味でルールを破っているにも拘わらず、排除されない理由……

 

「僕が何をやっているのか知ってるんだろう」

 

「それは?」

 

「SAOのクリアなんて、簡単にはいかない。第一層攻略に一ヶ月。単純計算で三年以上掛かる。早くても二年以上だからね、学生は留年、社会人ならクビだ」

 

「あ゛……」

 

 ユートが何を言いたいのか理解出来た。

 

 まあ、良心的な会社なら置いてくれるだろうけど、やはり二年以上も居なかった人間では、すぐには元の生活へと戻れまい。

 

 ユートはそれを支援するアフターケアが行える様、色々と菊岡を通して根回しをしていた。

 

「でだ、先日のログアウトの時に【レクト】の最高経営責任者に会った」

 

「え? 【レクト】のって真逆……」

 

「結城彰三氏。君のお父さんだよ、結城明日奈」

 

「──っ!」

 

 再び驚愕に目を見開き、信じられない表情となる。

 

「目的は医療用ポッド」

 

「医療用ポッド? 聞いた事も無いわ」

 

「僕が造った──正確にはユートとユーキ──カプセル型のメディカルケア・システムでね、正式名称にはラテン語を使っているし、面倒だから単にポッドと呼んでる。主な用途は治療だけど、ハイバネーション機能も付いていて、人工冬眠が可能なんだよ」

 

「人工冬眠……」

 

「因みにキリトとシリカは初めからこれを使ってる。キリトは家に居候させて貰っいてる御礼に、シリカの場合は相方だからね」

 

「は、はぁ……」

 

「でだ、二人以外は百基、政府からのエージェントに貸し出した。つまり百人の人間がクリア後のキッツいリハビリをしなくて済む」

 

「へ? リハビリ?」

 

 考えた事もなかったか、敢えて考えない様にしていたのか、アスナは間抜けた表情で首を傾げた。

 

「攻略に年単位。それなら現実での肉体は点滴を打たれて病院に収容される訳だけど、二年以上も寝た切りの肉体は痩せこけ、さぞや衰えてるだろうね」

 

「ああ、成程。それじゃ、キリト君とシリカちゃんはそれが無いの?」

 

「まあね。それと無作為に選ばれた百人のプレイヤーがそうなる。残念ながら、アスナは選ばれなかった。だから結城彰三氏が僕へと接触を図ったんだ。是非、レンタルしたいってね」

 

「お父さんが……」

 

 胸が温かい。

 

 アスナの母親は厳しい人だが、父親はある程度だが明日奈に心を砕いてくれていたのを思い出す。

 

「お兄さんの浩一郎だったっけ? 彼とは会ってないけど、ナーヴギアとSAOを貸すんじゃなかったって悔いてるそうだ」

 

「兄さん……」

 

 どうしてあの時に我侭を言ってしまったのだろう、どうしてSAOをやりたいと思ったのだろう。

 

 ずっと後悔していたが、兄も後悔していたと聞いて涙が零れる。

 

「死ねないな、君が死ねばお兄さんが一生の傷を心に負ってしまう」

 

「……うん!」

 

 この世界は精神だけで居るみたいなもので、アスナは肉体の軛から解き放たれているが故に、涙を止める事が出来なかった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 迷宮区での攻略は順調に進んでおり、ディアベルもユートから一足早く受け取ったマッピングデータで、五階から十階までを踏破してしまい、最終的に二十階まで十日間程度でコンプリートしてしまう。

 

 アスナが初めて迷宮区に入った際、レ○プ魔にでも襲われている女性も掻くやの悲鳴──半裸の大男は視覚的にツラかったとか──を上げていたりもしたが、何とか慣れて貰いユートはディアベルのチームと交代で迷宮区の攻略を行って、先日で遂にディアベル達がボス部屋の前に辿り着く。

 

 本日は迷宮区に程近い、タランの村に於いてボス攻略会議が開かれた。

 

 主宰はディアベル。

 

 キバオウやコボルド王の撃破時に文句を言ってきた男も居り、他にもシミター使いや片手剣使い達が隣に立っている。

 

「集まってくれた諸君! 第一層が攻略されて早十日が経とうとしている!」

 

 相変わらずである勇者王ボイスによる熱い語りは、前線組を惹き付けていた。

 

「そして昨日、早くもボス部屋を発見した!」

 

 会議に出席した前線組が『おー!』とざわめく。

 

「これも偏に、SAO攻略を旨とする皆の協力の賜物だと俺は思う! ガイドブックに載っている情報で、ボスは【バラン・ザ・ジェネラルトーラス】。取り巻きは【ナト・ザ・カーネルトーラス】が一匹、再湧出(リポップ)はしないとあるのだが、第一層の例を鑑みれば何かしら変更が加えられている可能性も高い! 否、確実に加えられていると見るべきだろう!」

 

 全員が頷く。

 

 第一層でのコボルド王、曲刀カテゴリーのタルワールと刀カテゴリーの野太刀では、使うソードスキルも違う為対応が間に合わず、危うくディアベルが死ぬ処だった。

 

「さて、判っているだろうけどガイドブックの情報は飽く迄もβ時代のものでしかない。故にボスに何らかの変更が加えられているのだとすれば、どんな可能性があるか意見があったなら言って貰いたい!」

 

 ユートとしては偵察し、情報を得てから挑んだ方が無難だと思うが、危険でもあるからどうしたものかと考えていると……

 

「ユートさん、貴方は色々と考えているみたいだが、何かあるだろうか?」

 

「僕? そうだな……」

 

 交代で迷宮区を攻略していた関係上、ユートはこのディアベルとフレンド登録をしており、意見など交わし合っている。

 

 故にか、自然とユートの意見を訊きにきた。

 

「可能性としては第一層の時と同様に武器の変更……若しくはボスのステータスの強化。この程度はみんなも考えてると思う。他に在るなら【ナト・ザ・カーネルトーラス】の数が増えているとか……」

 

「成程、中ボスクラスである【ナト・ザ・カーネルトーラス】が増えていたら、被害は甚大だろうな」

 

 第二層の唯一の取り巻きの【ナト・ザ・カーネルトーラス】は、第一層に於ける取り巻き【ルインコボルド・センチネル】に比べ、遥かに強力なのだ。

 

 それが一匹でも増えていたなら、一パーティで相対するのは拙いだろう。

 

「後、気になったのは名前だろうか」

 

「名前?」

 

「【ナト・ザ・カーネルトーラス】に【バラン・ザ・ジェネラルトーラス】……第一層のコボルド王(ロード)と比べると、名前的に迫力不足じゃないかな? 大佐(カーネル)と将軍(ジェネラル)じゃあねぇ」

 

「どういう意味だい?」

 

 顎に手を添え、ディアベルが問うてきた。

 

「例えば『あと一回、あと一回俺は弟より多く変身出来るのだ』と言わんばかりに、【バラン・ザ・ジェネラルトーラス】が変身して王になったり……とか?」

 

「ブフッ!」

 

 何かが琴線に触れたか、ディアベルが噴き出す。

 

 というより、『弟って誰だよ?』と皆が一様に思っていた。

 

「まあ、そんなのが在るかも判らないけど、戦略戦術を考えるなら常に最悪ってのを想定した方が良い」

 

「確かに……ね」

 

 真面目な表情に戻ると、ディアベルも同意する。

 

「その場合のトリガーは、やっぱりコボルド王が武器を野太刀へと替えた時みたいに、HPバーが一定以上に減少の可能性が高い」

 

「ああ、そこら辺は注意が必要になるな」

 

「だとすれば、【バラン・ザ・ジェネラルトーラス】

よりも、【ナト・ザ・カーネルトーラス】を先に斃してしまわないと、三体ものボス級のモンスターと戦う羽目に陥るな。変身ならば兎も角、新たに湧出(ポップ)してきたら」

 

 ユートの言葉を聞いて、一同が息を呑んだ。

 

 確かに言う通り、HPが減少して湧出(ポップ)するならば、ボス級モンスターが増える事になるが、そのトリガーは【バラン・ザ・ジェネラルトーラス】の方だと考えるべきである。

 

 【ナト・ザ・カーネルトーラス】を斃す前に【バラン・ザ・ジェネラルトーラス】のHPバーを減らしてしまうと、下手をしたなら更に強力な真のボスを含め三体が一同に会する事態となるのだから、戦略的には【ナト・ザ・カーネルトーラス】を優先して斃しておかねばなるまい。

 

 とはいえ、だからと言って【バラン・ザ・ジェネラルトーラス】を御座なりにしても置けず、レイドパーティをどの様に動かすか、確りと考えねばレイド壊滅(ワイプ)すら有り得る。

 

 若しも最前線組が此処で壊滅したら、アインクラッドの攻略は遠退く処の話ではなく、下手を打てば完全に夢物語となりかねない。

 

「何なら、偵察戦を挟んだ方が安全かもね」

 

「ふむ、そうだな……」

 

 ディアベルもそれの必要性を思案していると……

 

「ちょい、待ってぇな!」

 

 サボテン頭の男が口を挟んできた。

 

「何だい、キバオウさん」

 

「ディアベルはん! そん偵察戦とやらは誰がやるゆーうんや?」

 

「む、危険な役回りだし、立候補を募るかな」

 

「僕が行くよ。提案したのは僕だし、他人にやらせる程に外道じゃないさ」

 

 この場に居る中でも最も高いレベルを保持しているユートは、確かに危険窮まる偵察戦には打って付け。

 

「それでバラン将軍とナト大佐を、アンタが斃さんゆー保証は無いやろ! ブルバス・バウん時みたいに」

 

「斃せるならそれで構わないって気もするけど?」

 

「アホ言いなや! んな事したら、膨大なボスから獲られるモンを、一切合切がアンタに奪られるやろ!」

 

 捲し立てるキバオウに、ユートは呆れた声で言う。

 

「第一層ならまだしもね、第二層のボスまで僕が単体で斃すのは難しいと思うんだけどな。心配ならカバ夫も偵察戦に加われば?」

 

「せやから誰がカバ夫や! ワイはキバオウやで!」

 

 難しい……決して無理とは言わない辺り、可能であると見ているのが窺えた。

 

「取り敢えず、真のボスが湧出(ポップ)するのを前提で戦略を組んだなら危険も減るけど、ディアベルならどうしたい?」

 

 この攻略会議のリーダーはディアベルで、ユートはオブザーバーな立場だ。

 

 発言権こそあるにせよ、本来であれば議決権は疎か発議権すら無い。

 

「そうだな、危険を伴うであろう偵察戦を行うか否かだけど、決戦の危険度を減らすには必要だろうな」

 

「そうだね」

 

「やはり先の話の通りに、立候補を募るべきだろう。だから皆に問いたい!」

 

 大仰に両腕を広げると、周囲のみんなを見回しながらディアベルは言う。

 

「偵察戦を行うか否かと、行うなら誰が行くかだ! 先ずは偵察戦の有無を訊ねたい。必要だと思う者は、挙手してくれ!」

 

 パラパラと手が挙がり、ディアベルがその人数を数えていく。

 

 この場に居るのは合計で四十八人、丁度フルレイドを組めるメンバーだから、二十五人以上の挙手により決定が為される。

 

「二十一人……か。どうやら今回は偵察戦無しだね」

 

「そうみたいだ。未知の怖さを知らないねぇ……」

 

 苦笑いするユート。

 

 だけど、決定が覆る事もない以上はこれ以上ごねてみても仕方がない。

 

「なら行こうか、第二層のボスを攻略しに……さ」

 

「……そうだな」

 

 ディアベルとしても実は偵察戦が必要だと感じていたが、多数決に決議を委ねたからには最早どうしようも無かった。

 

 幾らなんでも自分の考えだけでは決められないし、危険が有るのも事実だ。

 

 とはいえ、夕方であるから取り敢えず攻略は翌朝から出発となる。

 

「よし、それじゃあ今日は解散! 明日は朝の七時に此処へ集合とする!」

 

 ディアベルの言葉を受けて皆が銘々に散った。

 

 よもや勝手に偵察戦をする訳にもいかないし、宿屋に戻ってログアウトしたら夕食を摂ろうと考える。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「はい、珈琲」

 

「ありがと、直葉ちゃん」

 

「あの、御仕事は?」

 

 夕食前に一仕事、病院に行って結城彰三氏との契約に従い、ユートはアスナ──結城明日奈の動かぬ身体をポッドへと容れた。

 

 最も効果的に運用したいなら裸が一番な為、明日奈は全裸でポッド内だ。

 

 勿論、大事な部位は見えない仕様だし、見えるのはそもそも首から上だけという事も手伝って、ユートは決して明日奈の肢体は見ていない。

 

 ポッドに明日奈を容れたのも、掛かり付けの看護師の仕事だった。

 

「終わったよ。まあ、例のポッドを病院に運ぶだけの簡単な仕事だからね」

 

 しかもナーヴギアの電力も賄える為、仮に事故などで停電になっても問題無く稼働し続ける。

 

 和人と綾野珪子のポッドは少し旧型で、電力自体は内部で賄えるものの、残念ながらナーヴギアを接続する事は出来ない。

 

 まあ、好意で提供したのと高額のレンタル料金を取った場合の差異、その様に考えれば良いだろう。

 

 コトリとカップを置き、現在の状況を話す。

 

 これは居候させて貰っている対価みたいなもので、現在の攻略状況やキリト──此方では和人と呼んでいる──のレベルや装備品、それに今の様子を直葉に教えていた。

 

 単純な攻略情報ならば、菊岡にも伝えている。

 

「そうなんだ、第二層でのボス戦。一ヶ月も掛かった第一層に比べると早いね」

 

「レベルを1から始めて、全体の九割がVRMMOの未経験者。これじゃ仕方がないよ」

 

「うん……」

 

 元βテスターが千人で、SAO正式サービスでログインしたのが、元βテスターを含めて一万人。

 

 その内の九千人が初めてフルダイブを経験した素人の集まりだし、元βテスターとてMMO経験者でなければ苦戦も免れない。

 

 逆にユートは前々世でもMMO−RPGはプレイをしていたし、VRMMOも幾度と無く経験した謂わば玄人の域に在る。

 

 ユートがステータスの低さにも拘わらず、あれだけの──それでも弱体化は免れないが──動きが可能だったのも、言ってしまえば慣れていたからだ。

 

 VRMMOの総体験時間が一万時間を越え、どの様に動けばどういう結果となるかなど、経験則から理解しているユートは、キリトすら及ばない領域に居た。

 

 後は、SAOのシステムへと擦り合わせを行えば、普通以上の動きを再現してしまえるのだから。

 

 まあ、その擦り合わせが割と大変な作業だったが、今のユートは少しではあるものの、本来の肉体で行使する剣技を扱える。

 

 筋力値と俊敏値を最大限にまで引き出し、抜刀術を扱う事すら可能だ。

 

 システムアシストの無いそれを、正に神速必刀にまで扱うのは骨が……というより頭が疲れる。

 

 VRMMOに於いては、肉体を使う行為の殆んどを脳内での思考力に依存し、残りをパラメーターが担当していると云って良い。

 

 システムを越えるとなれば当然、脳のリソース全てを肉体行動に割かねばならなくなり、そんな事をすれば必然的に精神が疲れる。

 

 故にボス戦はユートにとって非常に神経を使う。

 

「和人も攻略に参加する。だけど問題は無い。どんな事情であれ、和人はMMO−RPGに慣れ親しんでいるから、簡単にはやられたりはしないよ」

 

「そう……だよね。ユート君も死なないで、ボス戦、頑張って!」

 

「ああ、勿論だ!」

 

 そして仮眠を数時間だけ取り、夜中のフィールドでMob狩りをするべく再びSAOへとダイブした。

 

 

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 ボス戦まで書いてたら、ちょっと長くなりそうだったので、途中でバッサリと切りました。



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