清洲織田家の野望   作:ムッソリーニ

5 / 11
小説を書き始めてから、いろいろな歴史小説を読むようになりました。
やはりプロの作家の方の歴史小説は面白いですね。
ちなみに今日は国盗り物語を途中まで読みました。
やはり斎藤道三は優秀だなと思い直しました。


第3話 さらば達勝

「お初にお目かかります、河尻秀隆にございます」

 

俺の初陣が終わって数日後、俺は河尻秀隆と広間で面会していた。左馬丞が約束通り、秀隆に俺が会いたいと言っていると伝えてくれ、秀隆の了承もいただいたのでこうして対面できているのだ。

 

「呼び出してすまなかったな。面をあげるがよい」

 

顔をあげた秀隆を俺はよく観察してみた。年齢は12才だと聞いている(ちなみに俺は13才だ) 髪は少し長い黒髪が肩まであり、顔も美少女の部類に入るぐらい美しかった。体は若干細身であった。この体でいったいどうやって合戦であのような活躍ができたのか不思議だ。

 

「信友様が私のような足軽風情に御用とは何でしょう?」

 

「実はこの前の合戦のお前の働きと河尻一族最強という才能を見込んで、お前を俺の家臣に迎えようと思ってな。お前ほどの者が足軽では勿体ない」

 

すると、秀隆の顔が驚きの表情に変わった。それもそうだろう、足軽から清洲織田家次期当主の直臣になるという破格の出世だからだ。

 

「見に余る光栄でございます!この秀隆、信友様に一生ついていきます!」

 

「よろしくな」

 

俺は秀隆の側までいくと、秀隆の頭を撫でてあげた。その時、秀隆の顔が少し赤かったのは気のせいだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何ですか!その程度では信秀軍には勝てませんよ!」

 

秀隆が俺の家臣になってからというもの、秀隆は俺の直属の兵たちを厳しく指導するようになった。

 

「秀隆のやつ、張り切っているな」

 

俺は離れた場所で秀隆が指導している様子を見ていた。

すると、慌てた様子の小姓が俺のもとに走ってきた。

 

「若、一大事でございます!殿が急にお倒れになりました。」

 

「何だと!?」

 

小姓によると、父上が家臣たちと政務の話をしていると急に血を吐き出しながら、倒れたらしい。今は家臣たちに自室に運ばれ、医師の診察が終わったばかりだという。

 

俺は急いで父上の部屋に向かった。

そして、部屋に着き、戸を開けると父上が布団の上で上半身を起こしながら水を飲んでいた。

 

「おおっ、信友、来たか。お前に話したいことがある。座れ」

 

俺は父上の側にそっと座った。

 

「実はわしはお前が元服する前から病にかかっておる。それが最近になって悪化してきたのじゃ。医師によると、もう長くはないそうじゃ」

 

俺は母上が亡くなった時のような悲しみがまた沸き上がってくるのを感じていた。

 

「そんな顔をするな。人というものは遅かれ早かれ、いつかは死ぬ。できれば、お前に家督を譲った後、立派な当主になるまで陰で支えてやりたかったが、仕方ない」

 

父上は涙をこらえている俺の頭をそっと撫でた。

 

「初陣のお前の姿を見れたのがせめてもの救いじゃ。あれほどの活躍ができれば、わしは心配なく、冥土に行ける。お前を今まで世話をしてきたかいもあるというものよ」

 

父上は少し涙を浮かべながら笑った。

 

「父上、今までお世話になりました。母上によろしくお伝えください」

 

「わかった、あやつと共にお前のこれからの人生、冥土から楽しみに見ることにしよう。後のことは頼んだぞ」

 

「父上、もうお休みください。後のことは私にお任せください」

 

俺は父上を横にすると、父上の部屋から退出した。

それが俺と父上との最後の会話となった。

 

 

それから数日後、俺を清洲織田家の光だと言って、大切に育ててくれた父上がこの世を去った。

 

自分が死ぬ姿を見られたくないと言って、父上は自分の死期を悟ると、部屋にいるものたちを追い出し、静かに息を引き取ったそうだ。

 

(父上、見ていてくだされ。必ずや立派な当主になります)

 

俺は父上の葬儀で焼香を上げながら、決意した。

 

父上の葬儀後、俺は家臣たちを清州城の広間に集めた。

 

「今日から俺が清洲織田家の当主である。俺は父上を越えるような当主になりたい。そのためにはお前たち家臣の力も必要だ。頼む、俺を支えてくれ」

 

俺は家臣たちに頭を下げた。

 

「殿、頭をお上げくだされ。我ら家臣一同、そのようなことは当然でございます、のう、皆の衆?」

 

「三位殿の申される通りでございます。殿は清洲織田家の光であると、亡き殿も申されておりました。殿は光となって我らを導いてくだされ、我らは光が消えないように支えるだけでございます」

 

「殿、我らはどこまでもお供致します」

 

三位の発言をきっかけに家臣たちは次々と俺を支えると発言してくれた。俺は家臣たちに心の底から感謝した。

 

「ありがとう。俺は必ず清洲織田家の名を天下に知らしめてみせる、どうか俺を支えてくれ」

 

「「「「はっ」」」」

 

こうして、家臣たちの謀反や離反もなく、俺は無事に清洲織田家当主になった。

 

足軽などの身分の低い者や領民たちも元々俺を慕ってくれていたので、一揆なども起きなかった。

 

若い俺が当主になったことで家中が動揺していると思った織田信秀や織田信安が何度か攻めてきたが、家中の結束は強く、追い払うことができた。

 

さらに織田信清がこれ以上自分の力だけで、家を守ることは不可能だと悟り、前に懇切丁寧な書状を送った俺と同盟が組みたいと言ってきたので、俺も了承した。信秀と組むという考えもあったそうだが、跡継ぎの信奈がうつけだと評判なので、却下になったらしい。

 

礼儀・礼節を重んじる信清にとって、破天荒な行動をする信奈の味方になるのは嫌だったそうだ。

 

何はともあれ、俺は信清と正式な同盟を組んだために、信秀も信安もなかなか手を出せないようになった。

 

 

 

 




次回予告

「殿、織田信秀が亡くなりました。跡継ぎはあのうつけ姫のようでございます」

「そうか、信奈が家督を継ぐのか。これは一波乱ありそうだな」

(やはり、歴史通りに進んでいるな)

第4話 うつけの姫

(誤字がありましたら教えてください。感想もお待ちしています)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。