今後もかなり不定期になると思いますが、最低でも1ヶ月に1つは更新したいと思います。なかなか更新できずに本当に申し訳ございませんでした。
少し遅れましたが、昨日は第二次世界大戦でドイツが降伏した日ですね。亡くなられたドイツ軍の方々には心からご冥福をお祈りします。
「姫様、清洲方の砦や城は全てこちらが制圧しました。残るは信友殿の居城、清州城のみです」
信友が密談をしようとしていた数日前、那古野城では信奈が長秀と清洲織田家征伐について話し合っていた。岩倉織田家を滅ぼしたことで尾張の大部分を支配することになった信奈は勝家の活躍などで清洲方の城や砦を攻略していった。
また、長秀の調略のおかげで、清洲織田家に味方していた豪族や、城や砦の城主たちも次々と離反したため、清洲織田家の勢力はどんどん弱くなり、抵抗しているのは居城の清州城のみとなってしまっていた。
「順調ね。連戦で兵たちも疲れてるだろうから、1週間ほど、休息をとらすわ。休息の後、一気に清州城を攻めるわよ」
「……清洲織田家を滅ぼしたら、信友殿はどうなさるおつもりですか?」
「……信友は殺さず、尾張から追放するわ……、敵でも昔の友を殺せるわけないじゃない……」
信奈は悲しそうな顔で呟いた。その呟きを聞いた長秀は安心していた。信奈が友を殺すようなことはしてほしくなかったからだ。まあ、謀反を起こした信勝を許したので、信友を殺す可能性も低いと思っていたが……。
会話に集中していた2人は、その会話をこっそりと聞いていたある人物がいたことに最後まで気がつかなかった。
「殿、我らに御用とは何でしょう?」
時は戻り、現在、俺は自室で秀隆と政友と密談をしていた。
「その前に聞きたいことがある。秀隆、我が軍の兵数はどうなっている?」
「はっ、豪族、砦や城の城主たちの離反が相次いだため、1000足らずとなってしまいました。しかも、残った兵の多くが、岩倉織田家の残党や信奈に不満を持ち、こちらに寝返った者たちなので、忠誠心も低く、いつ敵に寝返ってもおかしくありません」
譜代の兵たちの多くを砦や城に送ったので、清州城には忠誠心の低い兵たちが多数いたのだ。
「しかし、何故、砦や城は譜代の兵たちが多数守っていたにも関わらず、寝返りが相次いだのでしょう?」
政友が不思議そうに言った。それもそうだ、砦や城の多くを忠誠心の高い兵たちが守っていたのなら、次々と寝返るはずがないのだ。しかし、実際、寝返った砦や城を守っていた者たちは全員が譜代の兵たちで、逆に攻め落とされた砦や城を守っていた者たちは全員が他家から来た兵たちだった。
「その理由は俺が知っている。その事を含めて、お前たちに話しておかなければならないことがあり、こうして呼び出したんだ」
俺が真剣な表情をしたので、秀隆も政友も重要な話だと感じ、真剣な表情で俺を見つめた。
「2人とも、これから俺の言うことを驚かずに聞いてほしい……、俺は清洲織田家を1度滅亡させるつもりだ」
俺の発言を聞いて、秀隆も政友も驚きの表情を隠せなかった。やはり、驚くなと言っても無理だったようだ。
「説明するぞ。末森城の戦いが原因で反信奈勢力の力は一気に弱まってしまい、今や、抵抗しているのは俺たちだけとなってしまった。ここまではいいか?」
2人は真剣な表情で頷いた。
「そして、そんな状況でこのような書状が斎藤道三から送られてきた」
俺は自室に置いている黒い箱から1通の書状を取り出した。
「簡単にいうと中身は信奈に尾張を譲ってほしいということだった。しかし、最も重要なことは文末に書いてあった。読んでみろ」
俺は2人に見えるように畳の上に書状を広げた。2人は文末の重要な部分を見つけ出そうと、真剣に読んでいた。
「……殿!重要な部分とはここでございますか!」
政友は文末のとある部分を指差し、俺に問いかけてきた。俺は静かに頷いた。
政友が指摘した部分は「尾張を手離した後は、我が斎藤家で手厚く迎え入れたい」と書いているところだった。
おそらく、信奈にできるだけ、親しい人を殺してほしくないという親心からこのような書状を送ってきたのだろう。
「この絶体絶命の状況では、斎藤家で再起を図るという方法が一番いいと俺は思うが、2人はどう思う?」
「……確かに正しいと思いますが、無抵抗で清州を明け渡すのは少し……」
秀隆は悔しそうな表情で呟いた。
「無論、ただで清州を明け渡すわけではない。少し細工をしておいた。これを見ろ」
俺は再び黒い箱から少し分厚い書状を取り出し、畳の上に広げた。
「殿!これは血判状ではありませんか!しかも、ここに書かれている者たちは……」
秀隆が言葉を詰まらせたのも無理はない。初めに「以下の者は清洲織田家に忠誠を誓う」と書かれている血判状なのに、そこに書かれている名前は全員、敵に寝返った者たちだったからだ。
「政友、お前は最初、何故、譜代の兵たちが敵に寝返るのかと聞いたな。簡単なことだ、俺が寝返るように指示を出したからだ」
「殿、何故、そのようなご命令をしたのですか?」
政友が困惑した表情をしながら問いかけてきた。
「俺がいつか、清州に戻ってくる時に出迎えてもらうためだ。内部から裏切り者が出れば、清州を再び手に入れることも楽になるからな。しかも、譜代の兵なら、本当に敵方に寝返る可能性も他家の兵より低いからな。血判状はあいつらが勝手に俺に送ってきたんだ。全く、つまらないことを……」
俺は少し涙を浮かべながら言った。
「なるほど、我らには思いもつかないことでした。殿の知謀には恐れ入ります」
秀隆と政友は深々と俺に頭を下げた。
「そこで、2人は先に美濃に行き、道三に内密にこの返事の書状を届けてほしい。その後は、俺が美濃に来るまでに迎えの準備をしておいてほしい。俺は残った兵で信奈と戦をしてからすぐに向かう」
「わかりました、お任せください。しかし、殿、これらの計画は信奈が殿を処刑してしまったら、意味がありません。その点は大丈夫なのですか?」
2人とも、心配そうに俺の顔を見てきた。
「心配するな。忍の報告で信奈は俺を殺さないということが判明した。俺が子供の頃、信奈と仲良くしていたのは万が一、こういうことになってしまった時に生存率を上げるためでもあったんだ」
そう、信奈と長秀の会話を聞いていた人物とは俺の忍のことだったのだ。子供の頃、清洲織田家が将来負ける確率がかなりあることはわかっていたので、信奈と仲良くしておいた方がいろいろと便利だと思っていたのだ。さらに、信奈が信勝を許したと聞いたときに、俺を殺す可能性はかなり低いとも思っていた。
「さすが、殿!お見事でございます!」
政友は膝を軽く叩いて言った。
「では、我らは早速、美濃に向かいます。最後の戦に参加できないのは残念ですが、美濃でしっかりと役目を果たして、お待ちしております」
2人は俺に頭を下げると、部屋を出ていった。そして、その日の夜、2人は残っていた僅かの譜代の兵たちを全て引き連れて、出発した。
そして、日は過ぎて、信奈が清州に総攻撃をしてくる日の朝になった。信奈軍が攻めてくることは、数日前から城下で噂になっていたので、残った者たち全てが知っていた。俺は広間に家臣たちを集めて、評定を開いた。
「ここは籠城しかない。籠城して、今川軍の援軍を待つのがいいだろう」
「いや、今川軍は領内の一揆のせいで、すぐには動けないだろう。ここは野戦で信奈軍を蹴散らすしかない」
「バカな!敵は我らの倍以上の兵数だ!野戦などすれば、ひとたまりもないわ!」
「籠城すれば、斎藤軍が来る時間を与えてしまい、余計に敵が増えるだけだ!それなら、野戦で一か八か信奈の首を狙う方がいいはずだ!」
評定では、籠城派と野戦派に家臣たちが真っ二つに割れてしまい、両方の意見が飛び交っていた。
「皆さん、落ち着いてください!ここは殿の意見を聞いてみましょう!」
籠城派と野戦派がいがみ合っているのを抑えようとしている、この少女の名前は山内一豊、元々は岩倉織田家の家臣であり、同じ岩倉織田家の家臣であった少女の堀尾吉晴という少女と共に、岩倉織田家の柱として働いていた優秀な家臣であった。信賢謀反の時には、吉晴と共に、信賢に味方し、信安軍との戦いで活躍した。岩倉城が信奈軍に占拠され、岩倉織田家が滅亡した後、信友の誘いで吉晴と共に、清洲織田家に仕えるようになった。清洲織田家では主に内政で活躍し、戦でも信友の馬廻衆として出陣し、武功をあげていた。そして、今は秀隆の代役として、評定を仕切っていた。
ちなみに同じく、清洲織田家に仕えた吉晴は主に堺の津田宗及との商いや畿内の情報収集を担当しているため、たまにしか城には帰って来ず、堺にいることの方が多かった。今も、城内にはいず、堺にいる。
「殿、何か仰ってください」
「我ら、殿のご命令に従います」
家臣たちが一斉に上座に座っている俺を見つめてきた。
「……全軍で打って出て、信奈軍に攻撃する。斎藤軍が来る時間を与えては、我らの負けは決まってしまうからな。皆の者、出陣だ!」
「「「おおっー!」」」
家臣たちは、雄叫びをあげながら、広間から出ていった。
「ところで、一豊、三位の姿がなかったが、あいつは何処に行ったんだ?」
俺は広間に残っていた一豊に尋ねた。いつも評定に参加し、積極的に発言していた三位が珍しくいなかったので、不思議に思っていたのだ。
「三位殿は朝早くから足軽たちの訓練の指導をしているそうです。今日、戦があると知っているので、余計に張り切っておられるようです」
「……そうか、若くもないのに熱心だなぁ……」
俺は少し苦笑いをしながら、言った。
しばらくして全軍の出陣の支度が整ったので、俺は清州城に残っていた兵700を率いて、信奈軍を迎え撃つために国境付近に軍を進めた。
「なぁ、俺たちに勝ち目があると思うか?」
「まあ無理だろうな。しかし、元々の主君じゃない人のために死ぬのは嫌だなぁ」
「そうだな、俺たちは岩倉織田家の兵だったし、清洲織田家に命を懸けてまで忠誠を誓うことはないよな。いっそ、信奈軍に寝返るか、戦中に逃げ出すのもありだな……」
「おい、そこの足軽たち、さっきから何を言っているんだ?」
「い、いえ、何でもありません。少し、世間話をしていただけでございます」
国境付近に到着すると、陣を張る準備をしていた足軽たちが、かなりやる気のなさそうな顔でこそこそ話をしていたので、不審に思った一豊が声をかけると、少し驚いた様子で愛想笑いをしながら、別のところへ移動していった。
「申し訳ございません、殿、近頃、どうも兵たちの士気が落ちるばかりでして、しかも残った兵のほとんどが他家からこちらへ逃げてきた兵ばかりなので、余計に士気が落ちているのです……、あっ、私は岩倉織田家の家臣でしたが、やる気はありますよ!」
「ああ、一豊は頑張ってるよ、これからも期待してるよ」
(譜代の兵たちは後々のために信奈軍に寝返らせたからな、他家の兵ばかりでは士気が落ちるのも仕方ない)
俺は一豊に労いの言葉をかけながら、戦況が圧倒的不利な状況であることを頭の中で考えて、改めて思い知った。
「申し上げます、信奈軍が前方から現れました!数は約2500でございます!」
準備が整い、少し休息をしていると、大慌てで伝令が本陣に飛び込んできた。
「殿、戦は数ではないということを敵に思い知らせてやりましょう!」
さすがは、評定を欠席してまで足軽の訓練の指導をしていた三位だ。このような圧倒的不利な状況でも、全く不安そうな顔をせずに、堂々と発言した。
三位の発言に陣中にいた、信清や一豊も大きく頷いた。
「……よし、全軍、突撃!信奈軍をやってしまえ!」
「「「おおっー!」」」
兵たちの掛け声と同時に先鋒隊が信奈軍の先鋒隊に突撃していった。
かくして、信友軍700VS信奈軍2500、尾張の覇権を争った2人の最終決戦(仮)がついに始まった。
次回予告
「明智十兵衛光秀と申します。信友殿、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
(この女の子が、あの明智光秀か、なかなか可愛いなぁ……って、俺は何を考えてるんだ……)
(この方が、あの織田信友殿ですか、顔もかっこいい……って、私は何を考えていやがるですか……)
第10話 運命の出会い
(病み上がりで書いたので、グダグダな文章になっていたり、誤字が多数あるかもしれません、おかしいと思ったらお知らせください)