緋弾のアリア 残念な武偵   作:ぽむむ@9

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番外編3です。


…この小説を覚えていてくださる方はいらっしゃるのでしょうか?
というくらい更新できずにいました…。

もし待ってくださっている方がいらっしゃるなら、本当にありがとうございます!



今回の番外編は4つです。
大した内容ではありませんが…読んでくださると嬉しいです。


番外編 ばんがいへんです3

番外編その6   理子と詩穂の出会い

 

 

 

 

 

出会いとは、唐突なものだ。

そう、私…峰・理子・リュパン4世は思う。

 

それと同時に。

出会いとは偶然だが、別れとは必然。

出会うことは、同時に悲しみを背負う事と同義だ。

 

そして…出会いとは、決して喜びだけじゃない。

出会いたくなかった出会いだってあるのだ。

当然、別れる事が喜びにもなりうる。

 

…でも。

一生の苦しみと別れる事ができない私は、どうすればよいのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

…春先、5月。

私はつい先月、ここ『東京武偵高』に入学した。

私の所属する組織『イ・ウー』の命令により。

一体何の意味があるのか、それは上の人間にしかわからない。

教授(プロフェシオン)にしか、わからない。

 

意味もわからず高校生になった私だったが、苦労はしなかった。

陽気な少女の仮面をつけ、何も考えていないバカを装う。

それだけでどいつもこいつも簡単に騙されてくれる。

…私の味方になってくれる。

 

かりそめの友達でも、私には心地よかった。

私は今まで泥を啜って生きてきたのだから。

学校は、嫌いじゃない。

今くらい、報われても罰は当たるまい…。

 

 

 

 

 

それでも私は昼休みには、よく教室の外に赴き1人で食事を取っていた。

ある日は中庭を、ある日は芝生を、ある日は特別教室棟を。

場所を変え、色々なところに赴いていた。

…それは罪悪感からなのか、それともここで暮らす暢気な高校生たちとはやはり生きる世界が違うと思ったからか。

私には、わからなかった。

 

…そんなある日、1人の少女を見つけた。

彼女は空き教室の隅っこで1人、食事を取りつつ。

…ゲームをしていた。

よほど夢中なのか、教室に入ってきた私に気付きもしない。

 

「…ねぇ。」

「わぁぁぁっ!!??」

「ひゃっ!?」

 

少し声をかけると、少女は座ったまま飛び上がった。

彼女の長いポニーテールが、反動で上に逆立っている。

その驚き様に、私までビックリしてしまう。

 

「…え、えっと。」

「い、いえ、すみませんでした!私がこんなところで1人DSで遊んでいたのが悪かったんです、すみませんでしたぁっ!」

 

少女は早口でまくし立てると、即座に鞄に色々と仕舞いこみ出て行こうとしてしまう。

私はほぼ反射的に呼び止めた。

 

「待って!」

「ふぇいっ!」

 

なんとも情けない声を上げながら、少女の動きが止まる。

…そして、呼び止めたあと。

何故呼び止めたかわからなくなってしまった。

 

…なんで、彼女を呼び止めちゃったんだっけ…?

 

「…な、なななんでしょう…?」

 

ほら、目をグルグルさせながら彼女がビビりきっている。

…とにかく、会話をしなきゃ。

 

「えっと、はじめまして。理子は理子って言うんだ!」

「…は、はぁ…。」

 

いつもの明るい感じのキャラで話しかける。

こういう風にすればとりあえず何とかなるはず…。

 

「じゃ、じゃあ私はこれでっ!」

「ちょいちょいちょいストップストップ!」

 

何とかならなかった。

そそくさと立ち去ろうとしてしまう彼女をまたも呼び止める。

…なにやってんだろ、私。

 

「その…さ。一緒に、食べない?」

 

とりあえず、私はそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃー、ごちそうさま。」

「…ごちそうさま、です。」

 

少し経ち、私達は昼食を食べ終える。

食事中は会話など微塵にも無く、正直1人で食べるよりも少しキツかった。

 

「じゃ、じゃあ、私はこれで…。」

 

少女はそそくさと立ち上がり、出て行こうとしてしまう。

 

「待って!」

 

…私は、また。

どうして呼び止めてしまうのだろうか?

彼女の儚いような、脆いような雰囲気を感じ取ったからだろうか?

それとも、ただ単に気まぐれ?

それは…私には、わからなかった。

 

「明日…。明日も、ここに来て。」

 

私は、何故こう言ってしまったのだろうか?

 

「…待ってるよ。」

 

…もしかしたら、運命だったのかも。

 

「……………。」

 

たったった…。

少女はこちらを一瞥すると、恥ずかしそうに駆け足で行ってしまう。

私はしばらく、空き教室から出れないでいた。

 

…名前すら、聞けてないや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日は、私は昼食を食べる場所を探し回ったりはしなかった。

昼休みに入ってすぐ昨日の空き教室へと向かう。

あの少女をいち早く、待っていたかった。

 

空き教室に着くと案の定というか少女は来ていなかった。

私は近くの床に腰を下ろすと、少しだけ窓の外に視線を向ける。

 

…昨日はどうしてあんなことを言っちゃったんだろう?

私には教室にたくさんの友達がいる。

自室に帰ればネットの世界にもたくさん友達がいる。

…それなのに、彼女をやけに気にかけてしまうのは…。

一体、なぜ?

 

ガラララ…。

 

控えめに、教室のドアが開いた。

視線をドアに向けると、昨日の少女が恥ずかしそうに立っていた。

 

「…来て、くれたんだ。」

「……え、えっと…。」

 

少女はその場に立ち尽くし、オロオロと表情を曇らせる。

私は立ち上がり、少女の傍まで歩み寄った。

 

「…一緒に、食べよ?」

「…はい。」

 

少女は少し緊張気味に…それでも、薄く笑って。

私の言葉に頷いた。

 

私はこの時、初めて。

自分の顔が自然に笑顔を作れていることに気が付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさまー。」

「…ごちそうさまです。」

 

昨日と同じように食事中に会話は無かった。

でも…昨日よりも、どこか心地いい。

彼女が律儀に来てくれたから、そのことに安堵していたからかもしれない。

 

「…あの、さ。」

 

昨日と違って少女はすぐに帰らない。

少し緊張した様子で弁当箱を片付けている。

私は思い切って、声をかけた。

 

「キミの名前が、知りたいな。」

 

…本当に、不思議だ。

こんなに緊張したのも、こんなに期待したのも。

私の人生で…初めて。

 

「理子は峰理子、っていうんだ!よろしくっ!」

 

それでも。

怖がりな私は、仮面を外すことを拒んだ。

そのことに…罪悪感を、感じた。

 

「…わ、私は…。」

 

少女は、少しだけ間を置いて…。

 

「…茅間、詩穂…です…。」

 

これが。

私と、私の愛すべき親友との。

 

 

――はじめの一歩。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日から、私の昼休みに過ごす場所は一箇所に定まっていた。

いつも彼女と…『茅間詩穂』と名乗った彼女と会える場所。

 

また、今日も、空き教室に。

 

ガラララ…。

 

1人窓の外を眺めていると、教室のドアが控えめに開く。

そちらに目を向けると、彼女は恥ずかしそうに佇んでいる。

私がニコッ、と笑顔を向けると。

彼女も少し恥ずかしそうに、薄く笑顔を向ける。

 

今日も彼女とお弁当を食べる。

もう何回目だろうか。

でも…はじめとは、少し違っていた。

 

「…ねぇ、キミはどこのクラスなの?」

「あ…えっと、峰さんは…?」

 

会話が出来る。

 

「ねぇねぇ、何のゲームやってるの?」

「ぇ…その、『デジ○ンストーリー』です…。」

「あ!それ、理子も持ってる!今度通信しよ!」

 

共感できる。

 

「うあー!目にケチャップがぁー!!」

「だ、大丈夫ですか…!?」

「うぇぇ…へ、へーき…。」

「…クス、峰さん、目のところドロドロです…。」

「あっ!もう、笑わないでよぅ!…あはは。」

 

笑い合える。

 

そんな日々が、過ぎていく。

幸せな時間。

何もかもを忘れられる時間。

 

いつの間にか、私にとって。

この時間は一日の中で最も大切な時間になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、キミのこと、あだ名で呼んでいいかな?」

「へっ!?え、えっと…。」

「理子は、いつも友達のこと、あだ名で呼んでるんだ!」

「と、ともだ…あぅ…。」

「だからさ、キミのことも…。」

「…もう少し、待ってください、峰さん…。私はまだ、心の準備が…。」

「んもう、しょうがないなぁ。じゃあ…それまで、『詩穂』って呼んでいい?」

「…はいそれなら、すこしだけ…。」

「ん!よろしくね、詩穂!」

「…よろしくお願いします、峰さん。」

「そこは理子って呼んでよぉー!」

「それはちょっと…。」

「え、えぇー…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある、秋の日の朝のこと。

私はついに、動き出さなければいけなくなった。

 

ある武偵を、『イ・ウー』に『勧誘』する。

 

その命が教授から下ったのだ。

狙うべき相手は…『遠山金一』。

ここ最近世界的にも有名になってきた、名高い武偵だ。

なんと、全ての事件を犠牲者なし・報酬なしでクリアしてきた正義のヒーローのような武偵。

 

…でも、私なら倒すことは出来なくても、追い込むことは可能だ。

死に物狂いで努力してきた、私なら。

だから、今回の命はそんなに難しくはない。

 

私は命を受けたその日の昼休み、学校を抜けその武偵を襲うことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方。

自室に向かう、私の重い足。

カラスが遠くで、鳴いている。

…もう、日が暮れそうだった。

 

…爆弾を使ったバイクジャックは、見事突破されてしまった。

流石に有名なだけあって実力は桁違いなものだった。

これは…もっともっと大掛かりな仕掛けじゃないとダメかもしれない。

 

…でも、今日をもって。

私は立派な犯罪者だ。

武偵のフリをした、爆弾魔。

人を攫おうとする、イケナイ人間。

 

 

 

…今日は、もう帰ろうかな…。

…あ、昼休み、空き教室に行けてないや…。

…でも、しょうがないよね…。

 

…私は所詮、穢れた身。

もう、これ以上は…綺麗な彼女に触れてはならない。

…だから。

 

「だから…っ!もう、空き教室には…行かないっ!」

 

どうして。

なみだが、あふれてくるのだろう。

 

夕暮れの帰り道。

雨すら降りそうにない、晴れた夕空だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1日過ぎ、1週間過ぎ、1ヶ月過ぎ。

私は更に明るくなっていった。

…汚い私が、バレないように。

彼女と別れた悲しみを、隠すように。

 

でも、廊下ですれ違うたびに私の悲しみが溢れていく。

彼女を見かけるたび、寂しくなる。

 

また話したい。

一緒にご飯を食べたい。

そばに、いたい。

 

私の中でどんどん彼女の存在が大きくなっていく。

罪を重ねるたび、彼女が離れていってしまう。

…二律背反。

いつまでたっても、私は自由になれなかった。

 

…私が板ばさみで潰されそうになってしまう。

 

助けて。

助けて、詩穂。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冬が間近に迫った、11月。

校庭の隅のベンチに座って。

寒空の下、私は1人昼食をとる。

もう空き教室はおろか、校内にすらいたくなかった。

 

詩穂に、会いたくなかった。

でも、詩穂に会いたかった。

 

私はもうほとんど思考をやめていた。

ただその2つの感情だけが、私を支配していた。

お風呂のときも、眠る前も。

遠山金一武偵を襲っているときですら、それしか考えられなかった。

 

1人、黙々と食べる。

私には、それしか行動に移せない。

 

「……峰さん。」

「!!??」

 

心臓が止まるかと思った。

驚きのあまり、ガタッと立ち上がる。

昼食のパンが地面に転がった。

 

「あ、あぅ、ごめんなさい…。」

 

私が立ち上がったことに驚いてしまったのだろう。

詩穂もまた、ビクッと震え縮こまってしまう。

 

「…でも、峰さんと、会いたかった、から…。」

 

途切れ途切れに、彼女は話す。

顔を真っ赤にしながら、それでも…ハッキリと。

 

「…峰さん。もしかしたら、私の自惚れかもしれないです。でも…私は、峰さんともう一度お話したかった…。」

「……う…うぁ…あ…。」

 

情けない。

私はどうしようもなく、ヘタレだった。

何も、言葉を返すことすら出来ない。

 

「…私なんかと話していても、つまらないかもしれません。でも…私なんかに優しくしてくれたのは、峰さんが初めてだったんです。」

「………そ、そんな…ことっ…!」

 

言葉が上手く言えない。

緊張で口の中がカラカラと乾く。

 

「…私なんかじゃ頼りないかもしれませんが…。」

 

詩穂は、ひどく真面目な顔で私に向き合っている。

私は…目を逸らして俯くことしかできない。

 

「…困っている事があったら、相談に乗るくらいなら、してあげたいんです。」

 

…この瞬間。

何かが、崩れてしまった。

大切に守ってきた…でも、いつか崩さなければいけなかった何かが。

 

「…う…うぅ…ぐすっ…!」

「へ…え、ちょ、泣かないでください、峰さん!」

 

泣いた。

心の行くままに、泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、ようやく落ち着いた。

もうすでに昼休みなど終わっていたが、お互い気にしなかった。

 

「…詩穂。ごめん、私…。」

「…いいんですよ、峰さん。でも…ちょっとだけ、安心しました。」

 

詩穂は微笑を浮かべながら、私を見つめる。

その視線が…心地、よかった。

 

「私、嫌われてたわけじゃなかったんですね…。」

「…うん。私が、詩穂のこと嫌いになるわけ…。」

 

そこでようやく、私は気が付いた。

私を守る仮面が、外れてしまっていることに。

…でも、別にいいやと思った。

私はもう、詩穂の前では繕う必要は無いと思った。

 

「…詩穂。私、ね。」

「……はい。」

「ちょっとだけ、悩み事があったの。」

「…はい。」

「…聞いて、くれる?」

「…もちろんです。」

 

でも、洗いざらい話すわけにはいかない。

イ・ウーのことを余計に話して…詩穂の身が危険に晒されることだけは絶対に避けたかった。

 

私は核心だけ言うことにした。

 

「詩穂に嫌われちゃうんじゃないかって、怖かったの…。」

 

結局。

そういうことだった。

穢れた私とか、犯罪者だとか。

そういうのはきっかけでしかない。

私は…生まれて初めて出来た本当の友人に、嫌われるのが怖かっただけなのだ。

 

「…ねぇ、理子ちゃん。」

「…あ…。」

「私も、理子ちゃんのこと、大好きですよ。私も、理子ちゃんに嫌われたくありませんでした。」

 

心に喜びが満ちていった。

本当に、嬉しかった…。

 

「だから…私から、言わせてください。」

 

詩穂は息を軽く吸うと、優しく唄うように言ったのだった。

 

「――私と、友達になってください――」

 

 

 

 

私にとって初めて。

出会ったほうが幸せな、出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…という話だったんだよ。」

「そんな感じでしたね…。」

 

キーくんの部屋、居間にて。

私達はテーブルに座り詩穂との馴れ初めを語っていた。

 

何でかというと…アリアが突然私達の出会いを聞きたがったからだった。

折角だしキーくんも呼び、4人で顔を合わせてこんな話をしていた。

 

「…うぅ、ぐす、いい話ぢゃないの…!」

「そうか…?」

 

アリアは何故か話の途中辺りから涙ぐみ、最後らへんで号泣。

キーくんは逆に…すごい冷めた感じで話を聞いていた。

 

「なんというか…詩穂に一目惚れした、って話にしか聞こえなかったが…。」

「まぁ大体そんなところかな。詩穂可愛いし。仕方ないよね?」

「そ、そうだったんですか理子ちゃん!?」

 

むしろ私もそれしか言ってない感覚があった。

詩穂は詩穂で鈍感だなぁ…。

まぁそこが可愛いところなんだけど。

 

「…じゃあそろそろ俺は寝させてもらうぞ。…ほらアリア、泣いてないで行くぞ。」

「うぅー、り、理子、詩穂、あんた達のためにあたしはこれまで以上に協力するから…!」

 

キーくんにズルズルと引き摺られつつ、泣きながら優しい言葉を残し去っていくアリア。

…今までに協力してもらったことなんてあったっけ…?

 

でも、私のアリアに対する見方はもう過去のそれじゃない。

もう、敵でもなんでもない。

競い合うライバルであり…大切な、友達。

もちろん本人の前では言わないけれど…私にとって、彼女はもはや大切な仲間の1人だった。

 

キーくんだって、ゆきちゃんだって。

これから共に歩んで生きたい、仲間。

 

「…理子ちゃん、私達もそろそろ寝ましょう?」

「そうだね…。一緒に寝よっか?」

「…襲わないでくださいよ?」

「わかってるって♪」

 

そして…。

私の愛する、親友。

詩穂のおかげでここまで来れた。

詩穂は、私の一生で最高の…パートナー。

 

自由を手に入れた私は、永遠に詩穂と歩むことに決めた。

そう、これだけは、永遠に…変わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ねぇ、理子ちゃん。」

「…なぁに?」

「私も実は、理子ちゃんのこと大好きなんです。」

「…うん。私も、詩穂のこと大好き。」

「だから、約束して欲しいんです。」

「…うん。」

「…怖いときは、守ってください。」

「うん。」

「泣いちゃうときは、慰めて欲しいです。」

「うん。」

「負けそうなときは、力になって欲しいです。」

「うん。」

「だから…理子ちゃん。助け合って、生きていけたら…。」

「私は、詩穂にたくさん助けてもらったよ。」

「…はい。」

「だから…これからも、私のこと、助けて欲しいな。」

「…もちろん、です。」

「貸し借りなしで、助け合って…。」

「…はい。」

「生きていける。だって、私達、親友だもん。」

「…はい!」

 

 

「…というわけで私の性欲が暴走しそうなのを助けて欲しいかな…。」

「そ、それはちょっと…みゃーっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

番外編その7   勉強も大事

 

 

 

 

 

 

「詩穂ー、これ教えてー。」

「理子ちゃん、くっつかないでください。暑いんですから…。」

「…わからん。」

「バカねキンジ、ちょっと見せなさい。…これ、古文じゃないの!なんであたしに聞くのよ!ケンカ売ってんの!?」

「お前が覗いてきたんだろ!」

「ねぇキンちゃん、わからないなら私が教えてあげるよ!」

「白雪、あんたは黙ってなさい!こんなバカ、あたし1人で充分だわ!」

「みなさん、落ち着いてください…。」

「しぃほー♪すりすり…。」

 

夏休みが始まる、少し前のこと。

私達はリビングに集まり、お勉強会を開いていました。

しかしまぁ、なんとも…騒がしいです。

勉強会になるんでしょうか、これ?

 

こんなことになったのも、つい先日のこと…。

白雪さんが青森から帰ってきた事がキッカケでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつもどおりの部屋、少しだけ暑い今日この頃。

ブラドとの決戦からだいぶ経ち、特に大きな事件もイ・ウー関連で進展もなく。

私達は相変わらず暇な休日をダラダラしていました。

 

「…あぅー、暑いなぁ…。」

 

理子ちゃんが扇風機の前で嘆きます。

ちなみにエアコンは極力付けないようにしています。

というのも、電気代が…はい。

白雪さんがいない間、家計を預かるものとして危険なことは出来ません。

 

「…キンジー。こいつ倒せないから手伝いなさいー…。」

「お前…まだディアブロ1人で倒せないのかよ…。」

 

アリアさんとキンジ君もリビングでゴロッとしていますが、暑さの所為か覇気が微塵にもありません。

というか、もはや生気すら感じない退廃的な雰囲気を感じます。

かくいう私も…。

 

「…暑い、です…。」

 

フローリングに寝そべってノーパソを弄っています。

だ、だって、フローリング冷たくて気持ちいいんですもの…。

自分のいる場所が温くなったらちょっと移動して冷たい床をまた全身で感じます。

 

…うぁぁ、暑いです…。

 

 

ガチャ。

 

不意に、玄関の音が鳴りました。

何事かと私は立ち上がりますが、他の3人は動こうともしません。

…だ、堕落しきっています…。

 

「ただいまー。」

 

玄関のほうから、少しだけ懐かしい声が聞こえました。

…白雪さんの声です。

 

私はとりあえず、玄関まで白雪さんを迎えに行きます。

 

「…おかえりなさい、白雪さん。」

「うん、ただいま、詩穂。うーん…東京は暑いね。」

 

そうか、白雪さんの実家の星伽神社は青森にあるから…。

 

「…ところで、靴が増えてたんだけど…誰?」

「ああ、理子ちゃんもなんかこの部屋に住むことにしたらしいんです。」

「ふーん…まぁ、あの子なら心配ない、かな?」

 

白雪さんはキンジ君に近づく女の子でなければ、基本的には優しいです。

理子ちゃんは目的がハッキリしているためか白雪さん的にはOKな模様。

 

「さて、キンちゃんにもただいまって言わなくちゃ!」

「…そう、ですね…。」

 

果たしてあの荒廃した世界を見て、白雪さんがどう思うのやら…。

 

 

 

 

 

ガチャ。

白雪さんがリビングのドアを開きます。

するとそこには…。

 

「…ああ、白雪か、おかえり…。」

「…ああ、白雪ね、おかえり…。」

「…ああ、ゆきちゃんかぁ…おかえりー…。」

 

全く同じ反応の3つの声と、どこまでも惰性に満ちた空間が広がっていました。

…白雪さんのほうを見ると、あまりのダラダラムードに固まっています。

 

…そして、数瞬後。

 

「…起きなさぁぁぁぁい!!!!!」

 

我が家のオカンこと、白雪さんのガチ説教が始まるのでした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、説教が終わったあと。

流石にシャキッとしないと怒られる事がわかった私達は、リビングで白雪さんの久しい夕食を食べていました。

 

「…おお、美味しい…!美味しいよ、ゆきちゃん!」

「えへへ、ありがと。」

 

理子ちゃんは今まで白雪さんの料理を食べた事が無かったのか…感動したようにムシャムシャと食事を食べます。

 

「味がしっかりした料理は旨いな。」

「そうね、詩穂のは…ああ、ゴメン詩穂!あたしそんなつもりで言ったんじゃ…!」

「…うぅ、いいんです…。どーせ白雪さんの料理には勝てないんですから…。」

 

アリアさんの鋭い一撃が胸にグッサリ。

…いえ、事実ですから仕方の無いことなんですけど…。

仕方の無いことなんですけど…!

 

「…ところでみんな、そろそろ期末試験だよね?」

 

ビクッ!

白雪さんの言葉に、アリアさんとキンジ君と理子ちゃんの動きが止まります。

 

「…あ、ああ、そう、そうよね白雪…そうだったわね…。」

「…しまった、忘れてたよ…どうしよ詩穂ー…。」

「…俺は、どうすればいいんだ…っ!」

 

三者三様に焦った声が上がります。

というかキンジ君、追い詰められすぎです。

どんだけテストヤバいんですか…。

 

「…え、えーっと…キンちゃん、大丈夫?」

「…いや、俺はもうダメだ…皆を…頼んだ、ぞ…。」

「き…キンちゃぁぁぁん!」

 

テストへの恐怖のあまりキンジ君が白い灰と化してしまいました!

しかし、キンジ君だけではなくアリアさんと理子ちゃんも少しだけ不安がある様子。

一体、どうすれば…。

 

「うーん…白雪さん、どうしましょう?」

「そうだね…うーん。」

 

事の発端である白雪さんに助けを求めます。

白雪さんは少しだけ思案したあと、妙案を思いついたように顔を上げました。

 

「…そうだ!みんなで、お勉強会をしよう!」

 

…確かに、いい案でした。

が、しかし…。

 

「えー…なんかダルいなぁ、そういうの…。」

「そうね、あんまりやる気は出ないわ…。」

「…そんなの、出来るわけがない…っ!」

 

批判の声が3つほど上がります。

そしてキンジ君はなんでさっきから追い詰められてるんですか…。

 

「そうだねぇ…勉強してる間はクーラー付けてもいいよ。」

「やるわ。あたし、勉強会やる。」

「いいねぇ!ゆきちゃん、そういうのを待ってたんだよ!」

「…やるのかよ…。」

 

キンジ君以外は白雪さんの一言で一致団結。

キンジ君は…まぁ、多数決的に強制参加でしょうねぇ…。

 

そういうわけで。

次の休日に、勉強会が決まったわけでした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在。

エアコンの効いた良い環境の中、私達はリビングに集まって各々教科書を開き、勉強に勤しんでいました。

…といっても、私はあまりやる意味はありませんが…。

 

「詩穂って確かすごい頭良かったわよね?普段から勉強してるの?」

 

ひと段落付いたのか、アリアさんが話しかけてきます。

 

「…いえ、特に勉強はしてないですよ?普段からゲームばっかです。」

「ええ!?じゃああの点数はなんなのよ!」

 

アリアさんはものすごく驚いた顔で私に迫りました。

ち、近いです…。

 

「え、えっと、落ち着いてください、アリアさん…。」

「あ、うん…。そういや皆は途中だものね。」

 

確かに皆さんは今も勉強中ですが…。

アリアさんと私が喋り始めたことで、休憩ムードになったのか皆さんも筆を止めて会話に混ざり始めました。

 

「俺も気になるぞ、詩穂。どうしてそんなに頭が良いんだ?」

「理子も気になるぅー!」

 

キンジ君と理子ちゃんも私達の話が気になるのか、、会話に乗っかっていきます。

白雪さんは諦めたようにふぅ、と息を吐くと。

 

「…そうだね、少しだけ休憩にしよっか。」

 

そういって皆の分のお茶を汲みにキッチンへ。

というわけで、自然と話題は私の頭脳になっていきます。

 

「…で、結局どうしたらそんなに頭良くなれるの?」

 

アリアさんが改めて私に尋ねました。

…正直、あまり他人にオススメするようなやり方ではないのですが…。

 

「…えっと、参考書を、読みます。」

「うんうん。」

「それだけです。」

「「「……は?」」」

 

アリアさん、理子ちゃん、キンジ君が揃って声を上げました。

だからあんまりオススメできないのですよ…。

 

「…いやいや、納得できないよ詩穂。私の今までの努力はどうなっちゃうの?」

 

理子ちゃんが少し困った顔で私に詰め寄ります。

いえ、理子ちゃん特に今まであんまり努力していたようには見えないんですが…。

 

「いえ、参考書を読むとは言ってもただ読むんじゃないんです。」

「どういうことだ?」

 

キンジ君は聞こえだけなら簡単な勉強法に興味がある様子。

…あんまり期待させると悪いですし、早いとこ真実を言うべきかもしれません。

 

「何度も何度も、読むんです。参考書の内容を完璧に暗記できるまで。」

「…へぇ。面白いやり方だけど…確かに理に適ってるわね。」

 

アリアさんはなにやら納得した様子でウンウンと頷いています。

 

「時間効率もいいですし、ペンも紙も使わない方法ですから確かに見かけは楽ですけど…結構キツイですよ?」

「でもでも!私は詩穂と同じやり方やってみるよー!」

 

理子ちゃんが食いつきました。

多分私と同じ事やりたいだけです。

 

「…まぁ、人には人の勉強方があるわけですし。自分にあった勉強法を見つけるのがいいと思うんですよ。」

 

とりあえずそう言って締めておきます。

…と同時に白雪さんがお茶を持ってきてくれました。

 

「はい皆、緑茶だよ。」

「サンキュ、白雪。」

「ありがとうございます白雪さん。」

「ねぇ聞きなさいよ白雪!この子、参考書眺めるだけで点数取ってるんですって!」

 

アリアさんがなにやらドヤ顔で白雪さんに今の話を伝えます。

…いえ、眺めてるわけじゃないんですが…。

 

「詩穂の勉強方って気になってたけど…それだけなの?」

 

ほら、案の定白雪さんが不思議そうな顔で席に着きつつ聞いてきました。

…そういえば白雪さんも定期テストの点数は上位でしたね。

 

「張り出された成績ランキングの1位がいつも『茅間詩穂』って書いてあったから、実は私ちょっと悔しかったんだよ?」

 

白雪さんはぷくっと頬を膨らませて少し不機嫌そうに言います。

…やばい、可愛い…。

 

「…と言われても、私はそういうやり方しか知らないので…。ごめんなさい。」

「し、詩穂が謝ることじゃないんだよ。でも…私、結構頑張ってお勉強もしてるんだけどなぁ…。」

 

白雪さんは少しだけ思案顔。

やっぱり…どことなく、私の方法は一般的ではないようです。

 

「…でも本当に詩穂って頭良いの?」

 

アリアさんが、ポツリと呟きました。

…確かに、彼女と知り合ったのは地味にここ数ヶ月のことですし…。

知らないほうが普通かもしれません。

 

「詩穂はヤバいよ。それはもうヤバい。」

 

理子ちゃんがしみじみと言いました。

ヤバいしか伝わってきませんが。

 

「じゃあ詩穂、あたしと勝負しなさい!」

「はあ…いいですけど。」

「そう、英語でね!」

 

アリアさん、それって…。

 

「いや、アリアはイギリス出身だからずるくないか、それ。」

「うるさい!勝負ったら勝負!!」

 

キンジ君の呟きも見事掻き消され、私はアリアさんと英語で勝負することになりました…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、今から30分ね。…はじめっ!」

 

白雪さんの掛け声と共に、英語の小テスト勝負が始まりました。

勝負内容は、単純に点数勝負。

問題は…白雪さんが用意した、どこかの国立大学の過去問題の一部。

確かにこれなら、勝負が着きやすいです。

 

…get entangled that…。

 

…彼の考え方としては…。

 

…選択肢としては、これはまず削除されるべきで…。

 

 

 

 

 

 

「…はい、そこまでー。」

 

白雪さんの声が試験終了を告げました。

手作り感溢れる解答用紙を白雪さんに渡します。

 

「……ああ、うん。難しかった、わね…。」

 

アリアさんがなにやらビックリした顔でペンをテーブルに放りました。

…そりゃ、国公立の入試ですし…。

 

「なんだ、出来なかったのか?アリア。」

「で、出来なかったわけじゃないわよ?よ、余裕よ?」

 

キンジ君はしょんぼりしているアリアさんが珍しいのか、とにかくアリアさんを煽っています。

 

「詩穂、どうだった?」

「まぁまぁ…ですかね?」

 

理子ちゃんは私達の試験中私をずっと眺めていたようですが…。

一体何が楽しいんでしょうか?

それとも顔に何か付いていたでしょうか?

気になって顔を手でペタペタ触ってみますが、特に違和感はありません。

 

「……はい、採点おしまい。記号だけのを選んでよかったよ、採点が簡単。」

 

と、ここで白雪さんの採点が終わったらしくこちらに向き直ります。

 

「じゃあ、結果発表だね。100点満点だよ。」

 

部屋に若干の緊張が走ります。

…ご、ゴクリ。

誰かが息を呑む音が聞こえました。

 

「…アリア、26点。詩穂、89点。詩穂の勝ちー!」

「おおおおおお!!おめでとう、詩穂ー!!」

「わ、わぶっ!」

 

結果を聞いてとりあえず私に突っ込んできたのは理子ちゃんでした。

いちいち私に抱きついてくるのは、暑いのでやめて欲しいのですが…。

アリアさんはというと。

 

「に…26、てん…。」

 

どちらかと言うと点数に唖然としていました。

…いえ、ですから国公立の入試ですから…。

まだ高2ですから、この点数は妥当と言えます。

 

「流石に詩穂だねー。私もこれやったことあるけど6割くらいだったもの。」

「白雪は白雪で恐ろしいな…。」

 

白雪さんは白雪さんですごいこと言っていました。

そういえば彼女、偏差値75ですものね…。

 

「…く、悔しい…。」

 

ぼそり。

アリアさんが呟きました。

 

「悔しいぞッ!未だかつて此れほどの屈辱を受けた事があろうかッッ!!」

 

口調!

口調が乱れてますよ、アリアさん!

アリアさんはテーブルに戻ると、せっせと勉強を開始しました。

 

「ただ参考書を眺めてる詩穂に負けてなんかいられないわ!勉学だって人生に必要なスキルよ!あたしは勉強の鬼になる!」

 

あれ?

この前、勉強なんて必要ない、とか何とか言ってませんでしたっけ?

 

「あたしは!次の成績ランキングで、1位を取るんだーっ!!」

 

その日のお勉強会は。

アリアさんの並々ならぬ熱気に私達は多少押されつつも、無事終える事が出来たのでした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日。

 

『1位 茅間 詩穂』

『2位 星伽 白雪』

『………』

『15位 神崎・H・アリア』

『………』

『185位 遠山 キンジ』

 

「納得いかないわーっっ!!」

「アリアさん、落ち着いてください…。」

「あれ?私は?可愛いりこりんの順位は公表すらされないの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

番外編その8   休日観察部隊

 

 

 

 

 

「起きなさいキンジ!希望の朝よ!」

「ガハッ!!」

 

ある日の休日の朝。

夢も希望もないニードロップでキンジを目覚めさせる。

キンジは相当苦しかったのか…お腹を抱えてベッドの上を転げまわっていた。

 

「あ、アリア、貴様…!俺の休日の平和な朝をどうしてくれるんだ…っ!」

「いいからさっさと起きなさい!出掛けるわよ!」

 

そう、今日は休日。

あたしもゆっくりする予定だったけど、今日は少しだけ事情が違う。

キンジをさっさと起こして、やりたいことをやらなくちゃ!

 

「で、出掛けるだと…?俺にそんな予定は入っていない…!」

「うるさい!40秒で支度しなさい!」

 

こうして。

長い休日が、幕を開けるのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝8時20分。

キンジを叩き起こし、リビングに着いた。

 

すると、朝ご飯を2人で仲良く作る白雪と詩穂…。

そして眠そうにソファでゲームをしている理子の姿があった。

 

「おはよう、理子。」

「んー…おはよー、アリア、キーくん…。」

 

声を掛けてみても元気な声は返ってこない。

…この子、朝弱いのかしら?

 

「あ、おはようございます。アリアさん、キンジ君。」

 

あたし達に気付いた詩穂がとてとてとキッチンから歩いてきた。

そんな彼女はもちろんエプロン姿。

詩穂は派手な可愛さがない分、どんな格好しても結構似合うのよね…。

 

「もうすぐ朝ごはんも出来ますので、テーブルに座って待っててください。」

「ありがと、詩穂。」

「いえいえー。」

 

詩穂はえへへ、と笑うとキッチンに戻っていった。

あたしは言われたとおり、テーブルに着く。

 

「…詩穂には素直に感謝するんだな。」

 

隣に腰掛けたキンジが話しかける。

…さっきの起こし方がまずかったのか、お腹を擦っている。

痛そう。

 

「あたしがいつもお礼を言わないって言いたいの?」

「だってそうだろ、お前…。」

「何よ。」

 

キンジが少し失礼なことを言う。

全く、これだから配慮の出来ない奴隷は…。

 

「あたしだって感謝するときはきちんと感謝するし、頭を下げるときはきちんと下げるわ。貴族だもの。」

 

あたしは英国淑女。

だから、無礼であったり人道の外れた行為はそもそもしない。

…でもキンジは腹立つくらいのジト目でこっちを見ている。

 

「それ以上こっち見たら風穴。」

「…ハイハイ。」

「ハイは1回!」

 

そんなことをしているうちに…。

テーブルには、白雪と詩穂が運んできた料理が5人分並んでいた。

 

「ほら理子ちゃん、朝ごはん食べましょう?」

「うー…あとちょっとー…。」

「…いつまでもぷよ○よやってないで起きてくださいっ!」

「ああー!私のPSPがぁーっ!」

 

いつまでもソファに寝そべっている理子に痺れを切らしたのか、詩穂が理子のゲーム機を取り上げる。

理子は涙目になりながらも詩穂には逆らえないのか、渋々テーブルに着いた。

…白雪もそうだけど、詩穂も時々ママっぽい言動するわよね…。

 

「…じゃあ、いただきます。」

「いただきまーす。」

「いただきます。」

「いっただっきまーす。」

「…いただきます。」

 

白雪の号令に合わせて皆で朝の食卓を囲む。

…あたしの家族は別にいるけど、もしかしたら。

ここにいる仲間達も、家族と呼べる…存在、なのかもしれない。

 

「…ふふっ。」

「どしたのアリア?気持ち悪い笑い方して。」

「気持ち悪くなんか無いわよ!」

 

あたしの口から自然と零れた笑みに、理子が突っかかってくる。

…この子、争ってた頃の名残なのかあたしに対してだけ若干口が悪いのよね…。

ただ、口が少し悪いだけでもう悪意も敵意も感じない。

むしろ…進んで仲良くしようとしてくれているのが良くわかる。

 

…こんな平和で幸せな風景は。

誰のおかげなのかしら…?

キンジ?

白雪?

理子?

あたし?

 

それとも…。

 

「…で、どうして笑ってたんですか?アリアさん。」

 

詩穂の、おかげ?

 

「…え、ええ。ちょっとね。なんだか、家族みたいだなぁ…って。」

「…家族、か…。」

 

キンジが少し思い耽るように呟いた。

…あたしにはまだ良くわからないけど、キンジはキンジで重たい事情…のようなものがあるみたいだから。

何か思うところがあったのかもしれない。

 

「…じゃあ白雪はお母さんだな。」

「ええ!?キンちゃんの奥さんだなんて…て、照れちゃうよ。」

 

キンジの不用意な発言でまた白雪が勘違いする。

…最近薄々感づいてきたけど、キンジって誤解を生みまくってるわよね…。

 

「なっ…!キンジ君が、お父さん…ですか…。」

 

詩穂は詩穂で顔を少し赤らめる。

…でも、キンジがお父さん、かぁ…。

 

「じゃあ理子は詩穂のお嫁さんだね!抱きしめてダーリン!」

「食事中に抱きつかないでくださいーっ!」

 

理子はいつものように詩穂に抱きつく。

1日に最低5回は抱きつくため、この光景も微笑ましく見守れるようになってきた。

 

「…ちょっと待って、あたしはどうなるの?」

「アリアは…詩穂のお姉ちゃんかな?」

 

白雪が小首を傾げながら答えた。

…何、そのどうしようもないからとりあえず姉妹にしてみた、みたいな家族構成…。

 

「ええ!?それだと理子の義理姉もアリアになっちゃうよ!それはヤダ!」

「理子、いい加減にしないと風穴よ!」

 

理子が大概ふざげすぎなので、ここらでガバメントを取り出してみる。

 

「ひゃー、暴力反対!詩穂、ヘルプミー!」

「だから食事中に抱きつくの禁止ですーっ!」

 

また理子が、詩穂に抱きつく。

それを、白雪が苦笑して見守る。

キンジは少しだけ微笑みながら食事を続ける。

 

…そんな、朝の風景。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、いってきまーす!」

「いってきます。」

「うん、いってらっしゃい。」

 

玄関から出て行く理子と詩穂を、白雪が見送った。

どうやら理子と詩穂は今日2人で遊びに行くらしい。

 

「…よし、追うわよ、キンジ。白雪。」

「……は?」

「……え?」

 

2人がマヌケな声を同時に上げた。

…聞こえなかったのかしら?

 

「だから、2人を尾行するわよ。」

「…いや、何でだ。理由を聞かせろ。」

 

キンジが呆れかえった顔でこっちを見下してくる。

…ちょっと背が高いからって、あたしを見下すのやめて欲しいんだけど…。

 

「だって気になるじゃない。あの2人、食事中でもあんなんなのよ?こ、これ以上行ったら…!ぜ、絶対まずいことになるわ!だから監視よ!」

 

自分で言ってて途中から恥ずかしくなった。

でも、これもあたしの親友とライバルが道を踏み外さないため…!

 

「で、でも、私お洗濯しないと…。」

「んなもん知らないわ!詩穂が変態理子に襲われてもいいって言うの!?」

「うーん…流石に理子ちゃんでも、詩穂を襲うようなことはしないと思うけど…。」

 

白雪がまだ抵抗する。

仕方ない…切り札を使うしかないようね。

 

「白雪…言っとくけど、あんた来なかったらあたしとキンジの2人で行くから。」

「いや、俺は行くとは言ってな」

「それは許さないよ!キンちゃん、不肖星伽白雪、どこまでも着いていきます!」

 

よし、何とか白雪を焚き付けることに成功したわ。

なんとなくそう言えばいける気がしてたけど…まさかこんなに上手くいくなんて。

 

「さぁ、とっとと出発よ!詩穂の鞄には既に発信機と小型マイクを付けてあるんだから!」

「用意いいなオイ!ていうか俺を朝ニードロップで起こしやがったのはこれのためかよ!」

「そうよ。どうせほっとけばバカみたいにずっと寝てるでしょ、あんた。」

「キンちゃん、準備できたよ!私はいつでも行けます!」

「お前も用意いいなオイ!」

 

こうして。

あたし達3人の、詩穂と理子の休日を覗く計画がスタートするのであった。

 

…べ、別に暇だったわけじゃないわよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

『…でねー、あの時ジャンヌがさー…。』

『…あはは、でもそれって理子ちゃんにも…。』

 

2人を引き連れ、詩穂と理子を追う。

ようやく追いつき、死角となるような場所から様子を窺う。

あたしと白雪とキンジの片耳にはイヤホン。

そこからは、絶えず理子と詩穂の声が聞こえてくる。

 

「…アリア、本当にやるのか…?」

「もう遅いわ。事件は既に始まってるのよ…!」

「いや、これってプライバシーの…。」

「武偵の癖にプライバシー云々言って逃げようとするんじゃないの。」

 

キンジは未だに罪悪感…というか面倒くさがってるみたい。

あたしの方を抗議したげな目で見ている。

黙って従えばいいものを…。

 

「キンジ、風穴。」

「わかったって…。」

 

少しガバメントをチラつかせつつ脅す。

キンジはスーパーキンジじゃなければ、ただのキンジ。

あたしには勝てない。

 

『…そういえば、今日はどこに行くんですか?』

『そーだねー…とりまアキバ行こっか。』

『わかりました。…あ、電車来ましたよ。』

『残念、モノレールだ。』

『…ちょ、ちょっと間違えただけです…。』

 

モノレールの駅…武偵高駅にて。

駅内に入った理子と詩穂の他愛の無い会話を耳に、あたし達はこそこそと死角にいた。

 

「…この2人、ほんと仲良いよね。」

 

白雪がしみじみと呟いた。

確かにこの2人は…その辺の友達同士、では収まらない何かを感じる。

 

「…俺達もモノレールに乗るのか?」

「もちろん。」

「マジかよ…。」

 

キンジが財布の中を覗きながら溜息をついた。

金欠キンジはどうやら厳しい財布事情みたい。

確かに、この2人を付けて回るたびに出費が嵩むけど…背に腹は代えられない。

これは必要経費なのだ。

 

 

 

 

 

モノレールに乗る際も、詩穂達にバレるわけにはいかない。

ちゃんと別の車輌に乗り込み、死角となるような位置に陣取る。

 

『ああ、そういえば理子ちゃん。向こうに着いたらアニ○イト寄っていいですか?』

『うん、いいよー。というか今日はあんまり目的ないしね。詩穂の行きたいところ優先でいいんだよ?』

『そ、そんな悪いですよ!理子ちゃんにも行きたいところ、あるでしょう?』

『理子の行きたいところは、詩穂の行きたいところだよっ!』

『あ、あぅ、理子ちゃん…恥ずかしいですから、そういうことストレートに言うのやめてくださいよ…。』

 

モノレールの中でも2人の会話は続く。

…なんというか。

 

「甘ったるいわね…。」

「うん、聞いてて恥ずかしいとかを通り越すよね…。」

 

白雪と共にハァ、と息を吐く。

なにこの会話。

腹立ってきた…。

 

「キンジッ!暇よ、なんかしなさい!」

「んな理不尽な…っ!」

 

そんなこんなで、秋葉原まで電車を乗り継ぎながら、キンジを嬲って遊んでいた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おおー!理子ちゃん、新作のフィギュア出てますよ!』

『ほんとだーっ!買いたい、お金足りるかな…。』

『私も買いたいです…衝動とは恐ろしいものです…。』

 

秋葉原の、とあるお店の中。

あたし達は2人を追ってここまで来ていた。

そして、ここまで来てわかった事が1つ。

 

「…全く気付かないわね、2人…。」

「そうだな…本当に武偵なのか?」

 

そう、全くと言っていいほど2人ともあたし達の尾行に気付かないのだ。

Dランクの詩穂はともかく、Aランク、それも探偵科(インケスタ)である理子が気付かないのはとにかく不自然だ。

 

「まさか理子、わかっててほっといてるんじゃないでしょうね…?」

「うーん、それは無いと思うなぁ。」

 

白雪が少しだけ首を傾げる。

 

「どうして言い切れるのよ。」

「うーん、断定じゃないけど…理子ちゃん昨日の夜、言ってたよ。『明日は詩穂とデートッ!誰にも邪魔されずに詩穂を独占だよー!』って。」

 

…確かに。

その発言を踏まえると、バレた瞬間にこっちに文句を言うなり上手く撒くなりしそうね…。

となると。

 

『あは…フィギュアに夢中な詩穂、可愛い…♪』

 

理子の囁くような声が聞こえる。

…まさか。

 

「あの子、詩穂に夢中で気付いてない…!?」

 

結論。

理子は詩穂がいると弱体化説、濃厚。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…ふぅ、沢山買っちゃったよ。』

『ですねぇ…私としては目的の本だけ買う予定だったのですが…。』

 

秋葉原の道を、2人が並んで歩く。

それを後ろから…あたし達が尾行、しているけど…。

 

「ひ、人が多い…!」

「これは、すごいよ…!星伽にはあんまり人の多いところに行くなって言われてるんだけどね…!」

 

人の波がすごく、あたし達はもみくちゃにされる。

それなのに詩穂と理子はスイスイと難なく進んでいく。

 

「あそこにいる女の子2人、偏差値高くね?」

「マジだ、ロリツインテと黒髪ロングか…でも隣にいる野郎が邪魔だぜ…。」

「くそ、両手に花かよ忌々しい。」

「爆発しろあんにゃろう…。」

 

すれ違う人から色々な声が聞こえてくる。

…なんだかよくわからないけど、少しあたし達を見る目が怖い。

 

「…き、キンジ…。」

「なんだ?」

「…離れないように、掴んでていい?」

「…好きに、しろ。」

 

はぐれないように、キンジの服の裾を握る。

…そう、はぐれないように。

それ以外の理由なんて、無いんだから…!

 

『あ、詩穂!カラオケ行こう!』

『いいですね、行きましょう!今日声出るかな…?』

 

あたし達が四苦八苦している間に、2人は行き先を決めてしまったらしい。

 

「キンちゃぁぁん!置いてかないでぇぇ!」

 

白雪が人の波に飲まれていた。

…とりあえず、白雪を救出してから2人の入っていったお店に行きましょうか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『時間はフリー、ドリンクバーで。』

『うーん…少し広めのお部屋は空いてますか?』

『…空いてるって!じゃあ、いこっか詩穂!』

『はい!』

 

とあるカラオケにて。

詩穂と理子がさっさと入っていくのを見届けてから、あたし達もお店に向かった。

 

「おいおい、入るのかよ…。」

「もちろんよ。なにビビってるの。」

「わ、私こういうお店入ったことないよ…!いいのかな、キンちゃん…。」

 

カラオケに入るのを躊躇うキンジと白雪を引っ張り、お店に入っていく。

…実はあたしもこういう店は初めてだけど、何とかなるわよね!

 

「…キンジ。お金が無いならあたしが奢ってあげるから、お会計やっといてくれる?」

「…何だお前。もしかして、カラオケに来るの初めてとか…。」

「うるさいっ!早くテキトーに時間取りなさい!」

 

キンジは渋々、といった感じでカウンターのお姉さんのところに行った。

 

「…おい、お前ら。ドリンクは…。」

「さっきの詩穂たちの真似でいいわよ。さっさとお願い。」

 

…というわけで、何がなにやらわからないまま個室に行く。

もちろん、詩穂たちの盗聴器は繋がったままだ。

 

『…じゃあ私先に歌うよ。』

『はい、どうぞ。私は少しドリンクバーを汲みに行ってきますね。』

 

とりあえず部屋の中は適温だから暑い外とは違って快適ね。

白雪とキンジの荷物をあたしの荷物と一緒に隅に寄せる。

…さて。

 

「あたし達はこういう時どうすればいいの?」

「歌えば、いいんじゃないかな。」

 

白雪に凄く含みのある感じで言われた。

なんか腹立つわね…。

 

『理子ちゃん、何飲みます?』

『メロンソーダ!』

『はーい。』

 

…あたし達も、ドリンクバー頼んでたらしいわね。

キンジに後で汲んできてもらおうかしら。

 

「あたし達も何か歌いましょ。暇だし。」

「うーん、でも私演歌しか歌えないんだよね…。」

「俺も大して歌えんぞ。」

「…あたしも、大して歌うこと無いわね…。」

 

……………。

静寂が訪れる。

…そして、結論として。

 

「…詩穂たちの会話でも聞いてましょうか。」

「一体何のためにカラオケに入ったんだよ…。」

 

あたし達は、こういう場に慣れて無さすぎだった…。

 

 

 

 

 

 

『~~~~♪』

 

理子の歌声が聞こえる。

アニメ声でなにやら歌っているけど…曲を一ミリも知らないから何も理解できない。

 

「…やっぱり暇ね。キンジ、童謡でも歌いなさい。」

「なんでだよ、バカバカしい。」

 

…キンジには期待できなさそうね。

そりゃそうか。

キンジだもんね。

 

「…じゃあ、白雪。なんかお願い。」

「演歌でも良い?」

「もうなんでもいいわ…。」

 

白雪はおずおず、といった感じでカラオケの機械に曲を入れようとする。

…しかし。

 

「き、キンちゃん…どうやって曲入れるの?」

「あのなぁ…。」

 

キンジが呆れたように白雪から機械を受け取った。

そして、白雪に子供に説明するかのごとく教え始めた。

 

「いいか?ここを押して、曲名をだな…。」

「うーん…こう?…あ、あれ?いっぱい出てきたよ?」

「同じ曲名とかがあると候補が出るんだよ。だからこの中から…。」

 

…暇だわ…。

仕方ないのでイヤホンのほうに耳を傾けてみる。

…すると。

 

『――~~~~~♪』

 

詩穂の声が聞こえてきた。

いつもの少し高くて柔らかい声とは違って…透き通って、丁寧な感じの歌声。

…まるで、いつもの詩穂とは思えないくらい…。

 

「…で、できたっ!曲が入ったよキンちゃん!」

「わかった。わかったから飛び跳ねないでくれ…。」

 

どうやらこっちのほうでも進展があったみたい。

…どれ、白雪の歌声は…。

 

「……~~…~~~…♪」

 

ゆったりした演歌によく似合う、ゆったりとした…でも芯の通った歌声。

何よ…普通に上手いじゃない…。

 

「~~~~~………♪」

 

そしてそのまま、聞き惚れているうちに白雪は歌い終えてしまう。

 

「う…上手かったわ、白雪…。」

「へっ!?そ、そう…?ありがと、アリア。」

 

なにやらお互い照れながら、白雪に賞賛を送った。

そしてそれを…少しだけニヤけながら見つめる男が1人。

 

「キンジ、こっち見ないで気持ち悪い。」

「…いや。アリアも白雪も、ずいぶん丸くなったな…ってな。」

 

…そう、かしら?

でも確かに…白雪とは、以前ほど争いあうようなことは無くなった。

これももしかしたら…間に詩穂が入ってくれているからかも。

 

「そう、かな…。でも、私とアリアが仲良く出来るのは、多分…詩穂のおかげなんだと思うよ。」

 

…驚くべきことに白雪も同じ事を考えていた。

それぐらい、詩穂は…大事な存在、なのかも…。

 

「…ねぇ白雪。あたし達、詩穂がいなかったら…どうなってたと思う?」

「へ?うーん…どうだろ。想像できないや。」

「…そうね。」

 

白雪はあは、といった感じで微笑む。

あたしも釣られて、微笑んだ。

 

白雪は話題を変えるように、声の調子を変えて言った。

 

「じゃあ私飲み物汲んでくるよ!キンちゃん、アリア。何がいい?」

「コーヒーってあるかしら?」

「俺はコーラだ。」

 

白雪は心得たように頷くと、飲み物を汲みに部屋を出て行ってしまった。

…そうすると、キンジと部屋に2人きり…。

 

「…ね、ねぇ、キンジ…。」

「なんだよ。」

 

キンジに話しかけてみるけど、予想以上に声が出ない。

…どうしちゃったんだろ、あたし…。

 

「そ、その…キンジは、詩穂がいてよかったと思う?」

「なんだそれは。」

 

あたしは、一体。

何を聞いてるんだろう…。

どんな答えを、期待しているというのだろう…。

 

「…そうだな。俺も白雪と同じように、想像できない。」

「………そうよね。ごめんなさい、変なこと聞いて…。」

「でも。」

 

キンジはあたしの言葉を遮るように、言葉を続けた。

 

「もし今の世界でも満足なら…それで、いいんじゃないのか?」

「…キンジ…。」

 

キンジは、そういうだけ言って。

あたしから目を逸らした。

 

「……ありがと……。」

 

あたしはキンジに…もしかしたら、キンジじゃない誰かに向かって。

小さく、呟いた。

 

 

 

ガチャっ!

 

「飲み物持って来たよー。」

 

ここで白雪が帰ってきた。

ちょうどいい、しんみりした話はあんまり得意じゃないから助かったわ。

…そのしんみりした話を始めたのはあたしだけど…。

 

「はいキンちゃん、コーラ。」

 

白雪はキンジにコーラを手渡した。

ストロー付きで。

 

「それと…ごめんアリア、コーヒー無いみたいで…緑茶汲んできちゃった。」

「緑茶!?」

 

白雪からは本当にカップに注がれた熱々のお茶が渡された。

…いえ、無いなら仕方ないし緑茶も嫌いじゃないんだけど…。

他の選択肢は無かったのかしら?

 

 

 

 

 

 

そして、しばらく経つと。

 

「うーん…もう私は歌える曲大体歌っちゃったかな。」

 

白雪の演歌大会が終わってしまった。

時間にして約1時間。

演歌だけで1時間はある意味尊敬に値するわね…。

 

『~~~~♪』

『あはは!理子ちゃん、その曲はズルいですよっ!』

 

詩穂と理子の方は相変わらず盛り上がっている。

…あっちは2人、こっちは3人なのに…どうしてこんなにもテンションに差があるのかしら…?

 

「うーん…アリアも何か歌いなよ?」

「いや、あたしは…いいわ。」

 

少なくともキンジの前で歌いたくない。

…だって、なんか恥ずかしいし…。

そして、その当の本人であるキンジは。

 

「……ZZzzz…。」

「コイツ、頭カチ割ってやろうかしら…?」

「アリア、落ち着いて!テーブルは投げるものじゃないんだよ!」

 

白雪に諭され、何とか落ち着く。

全く、キンジってやつは…!

 

「…でも、そうだね…私もちょっと眠いかも…。」

 

白雪の瞼が少しだけ下がる。

比較的良識があってマトモな白雪にしては珍しく…本当に眠そうだ。

 

「何よ、ちゃんと寝てなかったの?」

「ううん…そうじゃないけど、なんかこう…ここの気温がちょうどよくって…。」

 

白雪はそのままぽふっ、とソファに横になった。

…え、マジで?

 

「ゴメンアリア…もう私、ここまでみたい…。」

「白雪!寝ちゃダメよ、あたしを置いていかないで!」

 

しかし白雪の瞼はほぼ完全に塞がってしまう。

白雪は声を振り絞るように、声を発した。

 

「アリア…次に会うときは、また笑顔を見せてね…。」

「し…白雪ぃぃぃーー!!」

 

その言葉を最後に、白雪はスゥスゥと寝息を立て始めてしまった。

…取り残される、神崎・H・アリア。

 

「…た、確かにこの部屋といい柔らかいソファといい…眠気を誘うわね…。」

 

あたしも釣られて、なんだか眠くなってきてしまう。

…だ、ダメよアリア!

ここであたしまで眠ってしまったら、おしまいじゃない…!

 

『……~~~…~~…♪』

 

ちょうどイヤホンから、詩穂が歌うスローバラードのような曲が聞こえてくる。

な、なんでこのタイミングでゆったりした曲なのよ…!

 

『~~~~…~~~♪』

 

詩穂の歌声が、遠のいていく…。

ああ…キンジ、白雪…。

 

あたしもすぐにそっちに…行くわ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…っは!!」

 

唐突にあたしの目が覚めた。

慌てて周囲を確認すると…未だ眠りこける白雪とキンジの姿が。

そして、眠っている間に外れてしまったイヤホンを改めて耳に装着する。

 

『…ふぃー、歌った歌った。もうそろ出よっか?』

『ですね。あー、もう喉カラカラです…。』

 

ちょうど聞こえてきたのは、2人の会話だった。

…あたし達も、出なきゃ!

 

「ほらアンタ達、いつまで寝てんのよ!起きなさい!」

「ぐはっ!!」

 

とりあえずキンジにボディプレスをかます。

…よし、あとは白雪だけど…。

 

「白雪ー、早く起きないと置いてくわよー。」

「…ん…んぅ…。」

 

揺さぶって起こした。

 

「あ…アリア…起こし方に明らかな差異を感じるぞ…!」

「うるさいわね、貢献度の違いよ。」

 

お腹を押さえながらよろよろと立ち上がり、弱々しく抗議するキンジ。

今日はお腹へのダメージがヤバそうね。

大体あたしの所為だけど。

後悔はしてないわ。

 

「さ、とっとと支度しなさい。詩穂と理子を追跡するわよ!」

「まだやるのかよ…。」

「キンちゃん、行こう?お腹大丈夫?」

 

キンジの抗議の目をガバメントで黙らせつつ、あたし達はカラオケを急いで出るのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、次に辿り着いたのは。

 

「…またゲームセンターじゃないの…。」

 

ゲームセンターの前だった。

好きすぎでしょ、ゲーセン…。

 

「…どうする、アリア。流石に中に入ったらバレるぞ。」

 

そう。

ゲームセンターは比較的狭く、入り組み人も多いため追跡にはあまり向かない。

その上詩穂や理子は重度のゲーマー。

きっと店内をグルグルと徘徊しているから、更に尾行の難易度が上がるのだ。

 

「そうね…でも敢えて入りましょ。」

「何でだよ!」

「そうしないといけないからよ。」

 

だってそうしないと物語にならないじゃないの!

番外編でここまでグダグダやっておいて、入らないなんてバカみたいだわ。

 

「ね、ねぇキンちゃん…私、この前やったあのゲーム…またやりたいな?」

「ほら、白雪もあの…ユーフォーキャッチ?やりたがってるじゃないの!さっさと入るわよ!」

 

こうして。

ぶっちゃけただ遊びに来たとも見紛うあたし達は、ゲームセンターに入っていくのだった…。

 

 

 

 

 

 

『うーん…詩穂、アレのアームの強度どう思う?』

『700円入れれば取れそう…ですかねぇ…。』

『どうしよ。あのフィギュア欲しいなぁ…。』

『…仕方ありません。この茅間詩穂、推して参ります!』

『いよっ!そう来なくっちゃ、詩穂サンカッケー!』

 

イヤホンから詩穂と理子の賑やかな会話が聞こえる中。

あたし達は…ユーフォーキャッチ?みたいな名前のヤツをやっていた。

 

「そこ…そこだよキンちゃん。あん、もうちょっと後ろ…。」

「違う、違うわキンジ…。もうちょい左…そう、そこよ…。」

 

キンジが慎重にアームを操作するので、あたしと白雪も一緒になって慎重にキンジに指示を飛ばす。

あたしが台の右に、白雪が台の左に張り付いている形だ。

 

キンジの操作するアームは寸分違わず獲物(ぬいぐるみ)に食らい付き…。

しっかりと捕まえ、上に上に上がっていく…。

 

「おお!」

「いいよ!」

 

白雪と一緒になってあたしも声を上げる。

…そして。

何もかも上手くいっていた…。

ように、見えた。

 

持ち上がったとき、アームが大きく揺れた。

がっしゃん!!

そして、その衝撃で…。

 

「ああっ…!」

 

白雪が悲痛な叫びを上げる中…。

獲物は宙を舞い…。

元いた位置と大して変わらない場所に、転がり落ちた。

 

「…そ、そんな…。」

「こんなのって…こんなのってないよ…!」

 

白雪と2人その場に崩れ落ちる。

これが…絶望ってヤツなの…。

 

「…だから言ったろ、こんなデカイぬいぐるみ取れるわけ無いって。」

 

キンジが呆れかえったようにあたし達に言った。

…いや。

まだ諦めるわけにはいかない。

ここで諦めてなるものですか!

 

「キンジ!次よ、早くやりなさい!」

「これ24回目だ!俺の財布を食い物にして面白いか!」

 

でも、こんなところで諦めるわけには…!

 

 

 

「…あれ?アリアさん、キンジ君、白雪さんまで…。」

 

 

 

そして、唐突に。

あたし達のすぐ傍に…よく知る声が響いた。

…ま、まさか…。

 

「あ…ああ、し、詩穂、奇遇ね…!」

 

あたし達が全員で驚きの顔を向ける先には…。

絶対に見つかっちゃいけない相手、茅間詩穂その人だった。

 

「…およよ?キーくんにゆきちゃん、アリアー。皆もゲーセン?」

 

そして詩穂の後ろからひょこっ、と理子も出てくる。

…ご、誤魔化さなきゃ!

 

「あ、あはは、うん、そうね、偶然ねー…。」

「……………。」

「……………。」

「……………。」

「……………。」

 

その場を、静寂が支配した。

…こういう時、自分の演技力の低さが嫌になるわ…。

 

「アリアさん。後で事情…聞かせてくださいね?」

「…ハイ…。」

 

そして、それ以上はこの時はお咎め無しだった。

…後が怖いわ…。

 

「…さて。アリアさん、そのぬいぐるみ…欲しいですか?」

「…へ?」

 

詩穂は気を取り直すようにユーフォーキャッチの台を指した。

…そう、キンジ…というかあたしが欲しがっていた、あのぬいぐるみが入っている台だ。

 

「そ、そうよ。アレをさっきから狙ってるんだけど…アホキンジ、ヘタクソで全然取れないの。」

「おい、いちいち指示飛ばしてきたのはお前だろ。」

 

キンジの抗議は無視。

使えないやつに興味は無い。

 

「そうですか…理子ちゃん、この台のアームの強さ覚えてます?」

「うん?うーん…見てなかったからわかんない。」

「うーん、1回無駄にやってみますかね…?」

「それでハズレ台だったら元も子もないしなぁ…。」

 

なにやら詩穂と理子が話し合い始めた。

…よくわかんないけど。

 

「キンジ。もっかいやって。」

「マジかよ…!」

 

キンジに1回やらせたほうがいいと、あたしのカンが告げている。

そう、キンジを生贄に捧げるべきだと…!

 

「くそ…っ!くそ…っ!」

 

キンジは悔しそうに25枚目の100円玉を入れた。

…流石にちょっと可哀想になってきたわね…。

あとでももまんでも分けてあげましょう。

 

ウィーン…とアームが動く。

 

「…キンジ君、もうちょい前でお願いします。」

 

詩穂が台を冷静な目で見つめる。

理子も信じられないくらい真面目な顔で台に張り付いている。

…この2人は、どうしてこう遊びのときだけ真面目になるのかしら…。

 

「…はい。もう少し左…ああ、もうちょい右です。ハイ。そこで大丈夫です。」

 

詩穂のGOサインが出たので、キンジがアームを下ろす。

 

ウィーン…。

 

ぬいぐるみを掴むまでは、さっきと同じ。

でも…持ち上がるときに、強い衝撃が…!

 

がしゅん!

 

…おち、ない…!

アームはそのまま、ウィーンと穴に向かって動き出す…。

…よ、よし!

このまま…!

 

…しかし。

現実は、悲惨なものだった。

 

…スルッ。

 

割と勢いよく移動するアームから…。

ぬいぐるみがすっぽ抜けてしまったのだ。

 

「あ…!」

 

思わず声が漏れた。

ぬいぐるみは無慈悲にも…。

穴に到達する前に、落ちてしまった。

しかも、不運なことにコロコロと転がり…最初にいた位置の辺りに戻ってきてしまった。

 

「そ、そんな!もうちょっとだったのに!もっと頑張りなさいよ!」

 

思わず声を荒げる。

だって、こんなえげつないことって…!

期待させといて落とすなんて、こんな…!

 

でも、詩穂は至って冷静に。

 

「…すみませーん、ちょっといいですか?」

 

店員さんを、呼んでいた。

…は?

 

「あの、これいくら入れても落ちないんです…。位置を調整してもらってもいいですか…?」

「……!!…う、うす…。」

 

いそいそと来た店員さんは、詩穂の顔を見た途端急にビビったように顔を強張らせた。

そして台の扉を開くと、ぬいぐるみの位置を調整し…。

そしてまたそそくさと立ち去っていった。

 

…なんだったのかしら?

 

「…さて、ここからだと6ってとこですかね…。」

 

詩穂は徐に財布を取り出すと、中から100円玉をたくさん取り出し…。

アームを操作するボタンの隣にタワーのように積んで置いた。

 

…何アレ?

 

「理子ちゃん、横お願いします。」

「りょーかい。5以下で取れたらどうする?」

「お祝いに音ゲーもう一周しましょう。」

「へっへ、意地でも5以下に収めたくなっちゃうね…!」

 

2人の謎の会話を皮切りに、詩穂は100円を台にいれユーフォーキャッチを開始した…。

 

そこからは何がなんやら、だった。

理子が横を見ながら呪文めいた早口で詩穂に情報を伝えて…。

詩穂が正面を見ながら微調整してアームを下げる。

するとどういうわけか、持ち上がったぬいぐるみが落下した地点が…少しずつ、穴に近づいていく。

 

そして…4回目辺りで。

 

ぬいぐるみが穴に隣接した。

…いや、どういうことよこれ…。

 

「あとは引っ掛けりゃ落ちますね。5で収まりました…!」

「だね!いやー、さすが詩穂!私だったら8は行っちゃうわー。」

 

詩穂はぬいぐるみのすぐ横にアームを下ろした。

アームはぬいぐるみの足だけを捉え、上に持ち上がり…。

そしてその勢いで穴に落ちた。

 

台の下から、ぬいぐるみがコロンと落ちてくる。

詩穂はぬいぐるみを手に取ると、あたしに差し出した。

 

「はい、アリアさん。どうぞ。」

「…くれるの?」

「はい。そのために取ったんですから。」

 

詩穂はえへへ、と顔を綻ばせるとあたしの腕にぬいぐるみを抱かせた。

あたしの腕に、デフォルメされた熊のぬいぐるみがすっぽり収まる。

 

「じゃ、私達はもう一周してくるので。少し待っててくださいね。」

「おし、行こう詩穂!まずは寺だ!」

「はいっ!」

 

2人は仲良くうるさい音のする方に行ってしまった。

…そして、取り残されるあたし達3人。

 

「…よ、よかったね、アリア。取ってもらえて…。」

「うん…家に帰ったら、飾るわ…。」

 

白雪が微妙なテンションで話しかける。

対するあたしもすごい微妙なテンションで答えた。

 

…いや、だって詩穂と理子が思いのほか…何というか、こう…。

ちょっと引いたわ…。

 

するとさっきの店員さんが他の店員さんと一緒にあたし達の傍を通りかかった。

 

「…マジかよ、あの台だぞ…。取れんのかよ…。」

「いや、あのポニテの子はヤバいって…。よくアキバを金髪の子と荒らしまわってるって噂だぜ。」

「マジかよ、よくここらへんのゲーセン潰れねぇな。」

「代わりに死ぬほど音ゲーとアーケードゲーに金入れてくから、収益的には平気らしいぜ…。」

 

2人はなにやらすさまじい会話をしながら、通り過ぎていった。

…詩穂達って一体…。

 

 

 

 

 

 

それから2時間後。

ツヤツヤした顔で戻ってきた詩穂と理子と共に、家に帰るのだった…。

 

もちろん尾行してたことは話した。

怒られた。

特に理子に。

 

そんなこんなで、どこか退屈で、でもどこか珍しい休日は終わりを迎えたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

番外編その9   フリートーク

 

 

 

 

 

キンジ「またか。またなのか。」

 

アリア「相変わらずしつこいわね、この企画。」

 

詩穂「いえ、もう恒例なので諦めてください…。というわけで、フリートークも第3回目です。」

 

アリア「とはいえ…今回は初めから白雪いないのね。」

 

詩穂「そうですね。流石に回を重ねるごとに人が増えていったら収拾付きませんから。」

 

キンジ「じゃあ…毎回毎回、俺達3人ともう1人を召喚、って形になるのか?」

 

詩穂「ですね。というわけで早速行ってみましょう!」

 

アリア「なんか予想付くけどね…。」

 

詩穂「召喚(サモン)!」

 

理子「呼ばれて飛び出てりこりんだよーっ!」

 

アリア「知ってた。」

 

キンジ「知ってた。」

 

詩穂「知ってました。」

 

理子「あれ!?どうしてそんなに当たり強いの!?ジト目でこっち見ないで!」

 

アリア「まぁ、正直超予想通りね。というわけで今回のゲストは理子よ。」

 

キンジ「まぁ3巻内容自体が理子主体の物語だったしな。」

 

詩穂「しかも私という存在の所為で余計に理子ちゃんオンステージ感ありましたよね。」

 

理子「そりゃあもう。だって詩穂の事愛してるし。」

 

詩穂「…ていうかどうして理子ちゃんは私のこと大好き設定なんですか?おかしいと思いませんか?」

 

キンジ「確かにな…。この作品の理子は正直ぶっ壊れてるな。」

 

アリア「しかも詩穂に感化されたのか性格すごい丸いし。つーかあたしと完全に敵対関係なくなってるわよね?」

 

詩穂「原作のお互いを高め合う素晴らしい設定が無くなってますね。ただのほのぼの遠山一家の一員になってます。」

 

理子「いやー、なんでなんだろうね…。事の発端は1巻内容の時の私と詩穂の約束のシーンだね。」

 

詩穂「えっと…必ず助けるから必ずまた会おうね、みたいなヤツでしたっけ?」

 

キンジ「…寒いな。」

 

アリア「寒いわね。作者のゴミクズのような文才の所為で余計に寒く見えるシーンだったわね。」

 

理子「そして3巻内容冒頭で感動の再会、そして今に至ると。」

 

詩穂「なんなんですかこれ…。2巻内容辺りまでは私も普通にキンジ君のハーレム構成要因の1人だったはずなのに、いつの間にかキンジ君と理子ちゃんの間で揺れ動く系女子になってますし。」

 

理子「ええやん。百合ええやん。」

 

キンジ「いいのか、これ。実際作者は百合大好きだからな…。このままガチ百合エンドもありうるぞ。」

 

アリア「しかも厄介なことに詩穂は作中ではまだ恋心を理解していない設定なのよね…。」

 

理子「うんうん。その所為で私生殺し。放置イクナイ。」

 

詩穂「仕方ないじゃないですか!あの場をいい感じにまとめるにはアレしかなかったんです!」

 

アリア「…まぁ、そこらへんの事情はここまでにしておきましょう。ちゃんとタグにもガールズラブ入ってるし、もしミスっても作者のミスであってあたし達は悪くない。」

 

キンジ「ところで理子の話で思い出したが…理子の十字架と詩穂の銃の関係性ってまだ謎なのか?」

 

詩穂「流石にそれは物語の根底…というか作者の無い知恵絞って書いた大切な伏線なのでそっとしておいて上げてください。」

 

アリア「まぁ伏線も何もって感じだけどね。カンのいい人なら叶と明音の目的くらいは察しが付いてるんじゃないかしら?」

 

理子「叶と明音ねぇ…。そういえば、私と叶&明音コンビの関係性についてだけど。」

 

詩穂「うーん…作中では、明音さんが一度だけ理子ちゃんの名前を言っていたくらいで、それ以外関係性はないですよね?」

 

アリア「同じイ・ウーなのに不自然よね。」

 

キンジ「これは…まぁ、作者の不備なのか?」

 

詩穂「多分そうですね…。でも、イ・ウー内では結構お互いの事を言及するシーンは原作にも無いですし。その程度の関係性、って所でしょう。」

 

理子「顔見知り、って程度かぁー。まぁ確かに私もジャンヌ以外のイ・ウーメンバーとは特に仲良い描写ないしね。」

 

アリア「そういえばイ・ウーで思い出したけど…。ちょっとあたし文句があるの。いいかしら?」

 

詩穂「どうぞどうぞ。」

 

アリア「…あたしの出番削りすぎじゃない!?そもそも『紅鳴館』侵入の時点であたしのいいところほぼ無いじゃない!あたしが小夜鳴先生を引き付けるシーンでもあたしの役割勝手に割り振られたし!」

 

キンジ「そもそも『紅鳴館』のシーンってテキトーに書いた感すさまじかったけどな。」

 

アリア「ブラドとの最終決戦の時も!原作ではちゃんと2発残しておいて見事ブラドの魔臓撃ち抜くのに貢献してたのに!こっちなんて見事に弾切れ、しかも用済みの如く『ワラキアの魔笛』でワンパンよ!?これは異議を申し立てるしかないわ!」

 

詩穂「あぁ…アリアさん、覚えていますか?」

 

アリア「何よ?」

 

詩穂「原作ではブラドの付き添いのオオカミは、ヒスキンジ君が処理していましたよね?」

 

アリア「そうね…。って、まさか…。」

 

詩穂「そう。今回の決戦開始時点で、理子ちゃんがアリアさんと戦う意志を見せなかった都合上キンジ君がヒステリアモードに入っていないんです。」

 

キンジ「確かに、原作では理子に強制的にヒスらされたな。」

 

詩穂「そして…オオカミを処理したのは、アリアさん。アリアさんが銃弾を一発ずつオオカミの足に撃ち込んで無力化しています。」

 

アリア「…つまり、原作の残ってた分の銃弾って…。」

 

詩穂「はい。オオカミの時点で2発無駄に使っていたので、差し引きの結果弾切れとなりました。」

 

アリア「あんたのせいじゃないのよキンジィィィィ!!」

 

キンジ「違う!俺は決して悪くない!だからそのガバメントをしまえ!」

 

理子「…にしたって、ブラドが原作よりも強化されてたのはビックリしたねぇ。」

 

詩穂「ですね。原作では魔臓を撃ち抜いて終わりでしたが、今回は何故か復活しました。」

 

キンジ「これも原作を5巻辺りまで読み進めている人はわかるかもしれないな。ヒステリアモードの派生系の1つを、ブラドが発動させたわけだ。」

 

詩穂「原作ではブラドがヒステリアモードをどこまでコピーしていたのか謎だったので…思い切って強化してみた次第です。」

 

アリア「そして颯爽と見せ場を奪っていく叶と明音…。」

 

理子「しかも詩穂以外『ワラキアの魔笛』で全滅。まぁ、確かに叶と明音が出てくる関係上キンジと私がその場にいたら更にややこしいことになってただろうしね。」

 

キンジ「しかしまぁ…振り返ってみると、3巻内容ひどいな…。」

 

詩穂「こじ付けやら唐突な原作乖離やらがすさまじいですね。正直読者様に呆れられても文句は言えないです。」

 

アリア「…そして、3巻内容はもう1つの大きな問題を抱えているわ。」

 

理子「ほほう?」

 

キンジ「まだあるのかよ…。」

 

アリア「そう…文字数よ!」

 

詩穂「またですか。また文字数問題ですか。」

 

理子「うーんと…確かに、3巻内容だけ見たら平均文字数が20000文字くらいあるね…。」

 

アリア「そうよ!そもそも文字数多いって何の自慢にもメリットにもならないわ!」

 

キンジ「読むの飽きるし、文章の質は下がるし、更新速度下がるし…。特に良い事は無いな。」

 

詩穂「いえ、文字数が多いこと自体はいいんですよ。他の作者様の中でも平均文字数が多いにもかかわらず圧倒的文章力とものすごい読みやすさ、しかも更新スピードも速いという素晴らしい方もたくさんいますから。」

 

理子「つまり…このダメ作者に長い文章を書かせちゃダメってことだね!」

 

アリア「そういうことになるわね。何にも懲りてないわ、アホ作者。」

 

キンジ「もっと短く書けよ。読者様の貴重な視力を蝕んでいるのはお前だ。」

 

詩穂「全くです。せめて他の作者様のレベルまで文章力を上げてから出直すんですね。」

 

理子「…さて、作者なんて弄っても何にも面白くないし。他の話題に移ろうか。」

 

詩穂「うーん、あとは…。」

 

キンジ「白雪の帰宅問題だな。」

 

アリア「どういうこと?」

 

キンジ「原作では白雪が帰ってくるのは4巻の途中なんだが…なんと何故かこの番外編中に帰ってきてしまっている。」

 

理子「あ、ホントだ。ゆきちゃん地味に帰宅してるね。」

 

詩穂「どうするんですかこれ。原作とは違った展開になってますけど。しかも番外編とか言う自己満足ワールドで…。」

 

キンジ「…まぁ、原作4巻での帰宅のタイミングもあまり重要な感じじゃないし、この件は騒ぎ立てるようなことじゃないだろ多分。」

 

アリア「となると、後は…うーん…。」

 

キンジ「もう話す事が…ないな。」

 

詩穂「といってもあの鐘が鳴る気配ないですし…。後何文字ですかー!」

 

天の声『あと2000文字くらいやで』

 

アリア「多い!多すぎるわ!2000文字って400文字綴り原稿用紙5枚分よ!?」

 

キンジ「そういえばどうでもいいんだが…一般的なラノベの文字数ってどのくらいなんだ?」

 

詩穂「うーん…聞いた話によれば、大体120000文字くらいらしいですよ。」

 

理子「多いね。ラノベ作家さんって大変なんだなぁ…。」

 

アリア「原稿用紙300枚分ね。とんでもない量だわ。」

 

詩穂「さっきからやけに原稿用紙で例えますねアリアさん…。でも、とんでもない量というのは同意です。」

 

キンジ「実際120000文字はとんでもないな。とてもじゃないが厳しい。」

 

詩穂「…でも、この作品の合計文字数もなんだかんだ言って結構ありますよね。」

 

アリア「うーんと…この番外編を含めない3巻内容までの合計文字数は280000文字ね。」

 

理子「ラノベ2冊分ちょっとかぁ…。結構頑張ったね、作者。」

 

キンジ「内容無いみたいなもんだけどな。」

 

詩穂「でも3巻内容終了時点でラノベ2冊分なので、実際のラノベはもっとボリュームがあるってことですね。」

 

理子「…まあ…ガチのプロ作家さんには勝てないよねぇ…。」

 

アリア「今回メタ発言自重しないわね…。下手したら消されるわよ?」

 

詩穂「文句は言えないです。実際メタ発言どころか結構グレーでアウトな話題多いですからね。ただでさえ今回の番外編は全体的にやりたいことやっちゃってる感じですし…。」

 

キンジ「だな。しかしまぁ、よくもビビらずここまで怪しい話題を書けるもんだ。」

 

アリア「ある意味すごいわね。何も褒められたことじゃないけど。」

 

理子「うーん…結構喋った気がするけど、あと何文字くらいなの?」

 

天の声『あと1000文字くらいやで。』

 

アリア「…まだあるのね…。」

 

キンジ「そりゃ、地の文が無しだからな。会話だけだったら沢山喋ったように見えてもこんなもんだろう。」

 

詩穂「さて…あと1000文字、何して潰しましょうか…。」

 

理子「あれだよ、アレ。詩穂の豆知識披露してよ。」

 

詩穂「とうとうやる事が無くて無茶振りですか…。流石にそんな内容があるとも無いとも取れないことやっていいんですかね?」

 

アリア「今までの内容も無かった同然だし良いんじゃない?もう何やっても平気よ。」

 

キンジ「そんな無責任な…。」

 

詩穂「まぁいいです。豆知識、行きます!」

 

 

 

 

 

 

 

詩穂「薄めた水酸化ナトリウム水溶液に指を突っ込み、指の腹同士を擦り合わせていると指の表面が溶けます。結果指紋を消す事が出来ます。」

 

 

 

 

 

 

理子「その豆知識を活用する方法がまずくない!?」

 

アリア「へぇ…たまに犯罪者に指紋消してるやつがいるけど、そうやってたのね。」

 

詩穂「まぁすぐに皮膚が再生するので一時的ですけどね。それに指紋を消しても垢が残ったり掌紋で判別が付いたりするので、あんまり実用的ではないです。まぁ暇なときに実験としてやってみてください。割と楽しいですよ。」

 

キンジ「…なんか、想像しただけでも嫌な実験だな…。」

 

詩穂「アルカリ性の液体はヌルヌルしているので、実際にやってみると指がヌルヌルになります。あと、薄めないとヌルヌルしている間に骨までイッちゃうので注意してくださいねー。」

 

理子「果たしてこんな事言われてやろうと思う人はいるのやら…。」

 

アリア「でもすぐに再生するって辺り、人間ってやっぱりすごいわよね。」

 

詩穂「ですねぇ。人体にはまだまだ神秘がいっぱいです。」

 

理子「夢と脳とか、色々解明し切れていないことはあるしね。」

 

詩穂「そうですねぇ…。特に夢は本当に謎の分野です。夢を見るということは記憶の整理の具現化とも言われていますが…記憶の整理であった場合、夢の内容は今まで体験してきたことじゃないといけないですよね。でも、実際に見てきたものとは思えない不気味なものを見たり、予知夢なんてものもありますし。そう考えると、夢というものは一体なんなのか不思議です。例えば漢詩でも有名な『胡蝶の夢』という話がありますが…。」

 

キンジ「詩穂、落ち着いてくれ。話が長い。」

 

アリア「そういえば3巻内容にもこんな暴走あったわね。えっと…遺伝子のところだっけ?」

 

理子「うーん…アレ完全に作者の趣味だよね。何故入れたのか…。」

 

詩穂「まぁ、私のこの論理暴走設定も多分作者の趣味を反映するために作ったものでしょう。なんとも勝手な作者です。」

 

ピンポーン♪

 

キンジ「…ああ、終わりか。さっさと帰るぞ。」

 

アリア「そうね。全く謎企画だわ…。」

 

理子「そうだねぇ。詩穂、先行ってるよー。」

 

詩穂「了解ですー。…さて、ここまでダラダラと長い文章を読んでいただきありがとうございました。次回からは4巻内容に入っていきますので、是非読んでいただけると嬉しいです。では、またいつか…。」




読了、ありがとうございました。


まず、こんなにも長ったらしい文章を読んでくださってありがとうございました。
本当に、感謝です。


白雪→理子の呼び方がわかりません。
一応今回は『理子ちゃん』と呼ばせましたが…本編であまり絡まないので、詳しい方は教えてくださると嬉しいです。


あと今回の勉強会での具体的な点数はあくまでフィクションです。
あまり参考にしないでください。
ちなみに詩穂の勉強方は私の友人が実践していた方法です。
その人はとんでもなく頭が良かったですが…勉強方法は人それぞれです故、自分にあった勉強方が一番であることを心に留めておいてください。
流石に『この方法でやったけど点数が上がらなかった、どうしてくれる』と言われても私は謝る事位しか出来ませんので…。



感想・評価・誤字脱字の指摘等を心よりお待ちしております。

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