fate/another_dream -モウヒトリノユメ-   作:きゃべる

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少し全話より時間が戻ります。


第七夢 「シンジツ」

 

 

 

 

 

fate/another dream

 

第七夢 「シンジツ」

 

 

 

 

 

「ごめん士郎、ちょっと見回りに行ってきてもいいか」

 

 夕食後、どうしても藤村先生の話が忘れられなかった俺は、士郎にそう頼んだ。

 

「見回り? だったら俺もついていくけど」

 

「いや、俺と佐々木さんだけで行きたいんだ」

 

「でも……」

 

 士郎の戸惑いはもっともだ。夜はアヤカシが最も活発になる時間な上、聖杯戦争は夜が本番なのだから。単独で夜に外に出向くというのは危険極まりない。ましてや俺には、アーチャーいわく危険すぎる呪いが掛かっているのだ。

 だが俺にはなによりも優先して、確かめたいことがあった。

 

「佐々木さんだっているし、アヤカシでの魔力供給も兼ねてだから。ここの守りを甘くするわけにはいかないだろ?」

 

「そうだけど……」

 

「じゃあ行ってくるよ」

 

「おい、君尋!?」

 

 半ば強引に見回りに行くことを決定する。

 士郎が慌てて引き戻そうとするが、すでに靴を履いた俺に、さっきまで和室にいた士郎が追いつけるはずもない。そもそも俺は学年でも五本の指に入る程度には足が速い。魔力で強化すれば話は違ってくるのだろうが、自他ともに認める半人前の士郎にそんな機転が利くはずもなく。それが分かっていながら、あえてセイバーさんが近くにいない時を狙って話しかけた俺はずるいやつだと思う。

 

「もうひとりの、俺」

 

 そんなことをしてしまうほどに、いてもたってもいられなかったのだ。

 夢に出てくるもう一人の俺は、藤村先生や慎二が見たもう一人の俺は、何者なのだろうか? それを確かめに行くつもりだった。

 

 

「良かったのか?」

 

「俺自身の勝手に、士郎たちは巻き込めませんから。行きましょう、佐々木さん」

 

「……承知した」

 

 おとなしくしてなさいよ、と言われたのに。きっと遠坂さんには怒られるだろう。だがチャンスはその遠坂さんがいない今夜しかなかった。

 そして、俺と佐々木さんは見回りの名目で冬木の夜を走る。夢の男を、現実で見つけ出すために。

 

 ――もしも。

 もしもこの時俺が一人で行かなかったなら。

 もしもこの時士郎と一緒に行っていたなら。

 もしもこの時言いつけ通りおとなしく待っていたなら。

 

 結末はまた違ったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深夜の冬木はやはり寒くて。ここ数日で慣れてきているとはいえ、カイロでも持ってきたほうが良かったかなと少し後悔した。

 

「やはり、夕食時に虎が話していたことが気になるか」

 

「やっぱりバレてましたか」

 

「もう一人の四月一日の噂だな。ライダーのマスターの話や虎の話への四月一日の反応を見て察せられぬほど、朴念仁ではないさ」

 

「ははは、それもそうですね」

 

 どうやら佐々木さんには筒抜けだったようだ。正直に白状することにした。

 

「どう考えても今この街には'もう一人の俺'がいるんです」

 

 そして、その正体がつかめれば、自然と四次キャスターの使い魔が俺を助けに来た理由も判明するだろうと予測していた。

 

「一人で探ろうとしたのか」

 

「佐々木さんがいるじゃないですか」

 

「まあ、そうだが」

 

 商店街まではまだ少しある。藤村さんの証言と慎二の証言をもとにもうひとりの俺が目撃された場を調査し、自身の超霊媒体質をフル活用して怪しいと感じたところをしらみつぶしに探索し、それでも何も見つからなければおとなしく家に帰る。今夜はそんな予定だった。

 

「して、この獣は連れてくる必要があったのか?」

 

「……不可抗力です」

 

 俺の半歩後ろを歩いている八尾はかわいらしく首をかしげた。

 管狐は確か一般人にも見えるはずだ。目撃されると非常にまずいのだが、どうしても一緒にいると聞かず、置いていくなら士郎に告げ口するぞとでも言わんばかりの勢いだったため、仕方なく連れてきていた。

 

「で、でもまあ! 管狐がいることでわかる痕跡もあるかもしれない、ですし…」

 

「……好きにしろ」

 

 管狐がキャスターとつながっている可能性が大きい以上、どう考えても危険が増すだけなのだが。なぜだかこの子を乱雑に扱うつもりになれなかったのだ。佐々木さんは何も言わなかった。なんだか無性に恥ずかしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 探索を初めて数十分がたった。予兆はなく、黒い煙もアヤカシも見当たらない。

 

「!」

 

「どうした」

 

 寒気がして思わず足を止めた。前触れはなく、突然だった。気になるのは、次の十字路の曲がり角だ。

 

「いる……」

 

 曲がり角からは何も見えない。さっきまでと同様に、黒い煙も、アヤカシの声すらも何も見えない。気持ち悪くなりさえしなかった。だが、俺はあの先に必ずいるのだと確信した。

 

「あそこに、もう、一人の」

 

 佐々木さんが剣を抜き構える。

 少しして、足音が聞こえ始める。

 それはだんだんと近づいてきた。

 

「……」

 

 緊張のせいか、額に汗が流れる。鉢合わせるまであと数秒。相手がほんの数歩進めば出会ってしまう。

 逃げるなら、きっとこれが最後のチャンスだ。今からでも背を向けてこの場からされば、間違いなく無事に逃げ切れる。それでも俺は動かなかった。まっすぐと曲がり角を見つめ、会うその瞬間を待ち続けた。

 ――その選択も必然だったのかもしれない。

 

 

 

 

 

「なっ……お、俺!? っていうか管狐まで!?」

 

「……どういうことだ」

 

 

 俺は、黒い制服に身を包んだ二人の青年と出会った。

 

 

 

 

「――え?」

 

 俺とうり二つの男と、見たことのない男だった。

 

「おい、片目でも見えるか?」

 

「管狐と刀を持った男とお前とそっくりな奴が見える」

 

「ってことはこいつらアヤカシじゃないのか!?」

 

「あの制服はたしかこの辺の私立のやつだな」

 

 騒がしい方の男は、確かにうり二つだったが、夢で見た男ではなかった。

 

「誰だ、あんた」

 

「それはこっちのセリフだ。ひまわりちゃんからもう一人の俺がいるって話を聞いたから確かめに来たんだよ」

 

 俺とうり二つの男が俺に言ってくる。

 男の言い方は、被害者のようで。

 

 これじゃあ俺のほうが――

 

 

「誰だ、お前」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 記憶が点滅する。

 

 これはいつの記憶だろう。

 見覚えのない部屋で、俺は見覚えのない女性二人と百目鬼と呼ばれた男性とともに百物語をしていた。

 

 カミソリがない。4人しかいない。これは略式か。

 

 いつ得たのかわからない知識で勝手にそう判断する。

 

 百目鬼と、ひまわりちゃんと――顔がぶれて見えない女性が順番に恐ろしい話をしていった。その度に少しずつ場が乱れていくのを、よからぬものが寄ってきているのを感じる。

 

 これじゃあ結界がもたない。

 

 顔の判別できない女性が話し終わった瞬間、結界が切れた。障子の裏から現れたアヤカシが俺に一気に襲い掛かる。

 百目鬼が、部屋に設置してあった弓を手に取り、構える。矢は持っていない。しかしこいつはこれでいいのだ。なぜなら。

 スパン、と百目鬼の気で編まれた見えない矢がアヤカシに突き刺さり、俺は解放される。

 

 百目鬼静の持つアヤカシを祓う力は、いつも通り絶好調だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ」

 

 意識が現実に引き戻される。

 佐々木さんは剣を構え警戒したままで、もう一人の俺と百目鬼がこちらをにらみつけていた。

 

「あ、あああ、あ……」

 

 わけが、わからない。

 さっきの映像はなんだ?

 俺は、小さいころから冬木に住んでいて、士郎と怪談なんてものもしたこともないし、百目鬼なんて知り合いもいないはずだ。

 

 百目鬼が警戒してこちらを見てくる。

 もう一人の俺がこちらを見てくる。

 まるで偽物は俺のほうだといわんばかりに――!

 

 

「う、あ、ああ、あ、あああああああああああっ!!!」

 

「おい、待て!」

 

 二人の男に背を向けて俺は逃げ出した。

 足がもつれてまともな走り方ではなかったが、火事場の馬鹿力とでもいうのだろうか、普段にまして速く走れた気がした。

 

 だめだ、ここにいてはいけない。頭の中で警鐘が鳴り響く。とにかく、ここから離れなくては。

 

「四月一日!? 落ち着け、呼吸を乱すな」

 

 俺は、誰だ?

 俺は四月一日君尋のはずだ。

 アヤカシなんてファンタジーなものが見えて引き寄せてしまう体質だが、まぎれもない人間だ。

 10年間も冬木に住んでいる記憶がある。

 士郎と過ごした記憶はまぎれもなく本物だと確信できるし、聖杯戦争で何度も死にかけた経験も、見方を変えれば生きている証拠だ。

 そうだ、俺は確かに生きている。

 

「聞こえていないのか? しっかりしろっ」

 

 もはや目的地などないが、俺は走り続けた。

 もしも追いつかれてしまったらと考えると、恐ろしくて止まることができない。もう一度もう一人の俺と出会ってしまったが最後、何かが壊れてしまう気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあっ、はあっ、はあっ」

 

 ずいぶん疲労がたまってきたが、まだ走れる。

 ここは、公園だ。

 

 500人もの死者をだした10年前の大火災の跡地であり――前回の聖杯戦争の決着の地。

 ここで、士郎は切嗣さんに救われたのだ。

 何もない公園は、信じられないほどの黒い靄でよどんでいた。

 

 どうして殺された。どうして私たちなのだ。いやだいやだ死にたくなかった。苦しい熱い助けてどうしてなぜこんな目に――

 

 怨念たちは成仏することなく渦巻いている。

 ここで大火災が起きた原因は、聖杯戦争の被害のためらしい。

 この公園の土にはまぎれもなく聖杯の泥が混ざっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 記憶が点滅する。

 

 無月は少し離れた場所にいるセイバーを相手にしていた。しかしほとんど幻獣クラスだとはいえ、最優の英霊を相手どるには相性が悪すぎた。

 

「そこを……通せ……ッ!」

 

 セイバーはひどく焦燥していて、見ていられないほど痛々しかった。

 

「騎士王、あなたはそれでも願いを叶えるのか」

 

 セイバーは湖の騎士を倒してきたばかりだった。宝具もあと一度使えるかどうかも怪しい状況で、心的疲労も考えれば、その消耗は計り知れない。

 

「それでも私は聖杯を取る……! 邪魔をするなら……倒す……!」

 

「それは困る。彼は俺に対価を支払っている」

 

 彼女は強すぎる相手だった。

 ここは俺の陣地ではないし、それを補う勝算もなかった。いくら消耗しているとはいえ、相手は最優のサーヴァントなのだ。

 

「ならば力ずくでも通させてもらう……!」

 

 セイバーが《約束された勝利の剣》を構える。俺に《風王結界》は効果はないが、どちらにしろ俺のステータスでは対抗できない。

 

「ごめんな、無月。もう少しだけ頼むよ」

 

「グルルルルルル……!!!」

 

 しかしマスターは願ったのだ。だから対価に見合った働きをしなくてはいけない。

 俺は無謀にも白兵戦最強のサーヴァントに直接対決を挑もうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 意識が再び現実に引き戻される。

 

「今のは、セイバー、さん?」

 

 さっき対峙していたのは間違いなくセイバーさんだ。

 しかし、なぜ俺は彼女と戦っていた?

 それに無月と呼んでいた獣は――

 

「ッゥ――!」

 

 心配するように擦り寄ってきた管狐と目があった。

 だめだ、これ以上思考してはならない。

 俺は頭を振りかぶって公園から逃げ去るように再び走り出した。

 

 

 俺は四月一日君尋だ。

 一人暮らしをしていて、片目だけ視力が悪くて、運動神経はいい方だけど帰宅部で、菓子作りが得意で、士郎とは幼馴染であり良き親友である。幼い頃はありとあらゆる場所に冒険に出かけては、大体アヤカシに襲われて、二人して必死に逃げ出して。切嗣さんが亡くなってからは「こんなことは危ないからやめよう」と言われてしまうようになったけれど。それから疎遠になることはなく、いつだって持ちつ持たれつの腐れ縁で。十年かけて積み上げられてきた大切な思い出だ。

 その暖かさはまぎれもなく本物なのだから。

 

 ――では10年よりさらに前の記憶は?

 

「……」

 

 料理を習った記憶がない――初めからつくり方を知っていた?

 親と過ごした記憶がない――大火災で死んだはずの彼らの墓はどこにある?

 自宅のアパートの大家の顔が思いだせない――そもそも何故孤児の一人暮らしが許された?

 

 それより前の記憶がない――俺は'覚えている設定'のはずだろう?

 

 

 あらゆるものが欠けている。/満たされた俺に会ってしまった。

 初めて俺を見た切嗣さんの顔を覚えているか。/その前からお互い既知だった。 

 呪いですべてが塗りつぶされる。/願いを叶えてと望む子が待っている。

 行かなければならない場所がある。/もうあそこには戻れない。 

 

 俺は、何者だ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 記憶が点滅する。

 

 最初にあったのは喪失感。次にあったのは浮遊感だった。

 

「ああ――」

 

 去っていくセイバーが見える。

 

 そうだ、霊核を破壊されて。

 

 どこまでも落ちていく気がしたが、もちろんそんなことがあり得るはずがない。

 

「がっ!」

 

 背中にがれきが当たり、衝撃が走る。

俺は肉体強化の魔術と相性が悪く、生前とほとんど変わらぬ身体能力しか持っていない。サーヴァントとしては異例の貧弱さ。腕相撲でマスターに勝てる自信すらない。

そんなステータスで十メートル近い高さから落下したというのに、これでよく死ななかったものだ。しかしそれも大した差ではない。放っておいてももうすぐ俺は死ぬのだから。

 

「結局会えなかったな……」

 

 無月の魔力すら回収して霊核の修理を試みたが、俺の実力では延命が限界だったようだ。

 かりそめの体が緩やかな死を迎えていく。

 

 そして最期の瞬間。

 

「なっ!?」

 

 罪が、この世の悪性が、流転し増幅し連鎖し変転し渦を巻いている悪意の塊が――俺を飲み込んだ。

 

 対価に見合う願いをよこせ、と呪いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 意識が現実に引き戻される。

 

「あ……」

 

 夢見た記憶に呼びさまされたように、俺の体のうちに潜む泥が脈打つ。

 

「あ……がはっ……うえっ……」

 

 口元を抑えるが零れ落ちていく泥を抑えることができない。

 なぜこれほどまでの呪いを無意識に抑えられていたのかがわからない。

 

 泥を受け止めた手が焼け付く。今にも存在を塗りつぶされそうで、そうならないのは俺が同じ穴の狢だからか。

 怨嗟の声が、何の理由もなくすべての責任を押し付けられてしまった悪が、なぜ自分が祭り上げられたのかを問うことすら飽きてしまった悪が、理不尽な対価に対する見合った願いを要求している――!

 

「この世、すべての」

 

 

 

「――こんな時間に何の用かね?」

 

 

 

「!」

 

 声がした方に振り向くと、背の高い神父がいた。どうやらここは教会のようだ。いつの間にやらこんな遠くまで走ってきてしまっていたらしい。

 

「あの、別に用事はなくて、その」

 

「そんなはずはあるまい」

 

 神父は語りかけてくる。その体を震わす低い声が、重圧が、ものすごく危険なものだと本能的に気づいた。

 

「あいにくここは懺悔室ではないが、この場も教会だということには変わりない。話してみたまえ」

 

 だというのに、告解せねばならない気がしてくる。やはりこの男は神父に向いている。他人の傷を開くことに長けているのだ。

 

「もう一人の、自分に、会ったんです。そしたら、まるで俺じゃなくて、そいつのほうが本物の「俺」なんじゃないかって、気がしてきて……」

 

「なるほど」

 

 神父は面白いものを見つけたかのように笑った。

 気に食わない。俺が真剣に悩んでいるというのに、その態度は神父としてどうなのだ。

 

「あ、思い出した…あなたの声は、あの時の。俺が、士郎たちに記憶を消されそうになった時に、ランサーを差し向けて守ってくれた」

 

「まったく恐れ入る。ここまでの術者が、神代の者どころか過去の存在ですらはなかったとは。現代の英雄など、何があったならそうなるのか……」

 

「どういう、ことですか」

 

 現代の英雄と男は言った。それが何を指しているのかがわからない。

 

「すでにお前自身も感づいているのだろう? 理解できないふりをしているだけにすぎん。本当に何も思い出していないのなら、未だその身は泥に侵食されていない。そういう術だと説明したのは貴様自身だ」

 

「……」

 

 神父はそう言いながら俺の心を切開していく。

 

 突然金属音がした。

 

「いきなり切りかかってくるとはどういうつもりだ?」

 

「よう、また会ったなアサシン。これもマスターの命令ってやつだよ」

 

 紫の陣羽織を来た男と、青い槍兵がお互いの獲物で打ち合っている。

 

「佐々木さ」

 

「そろそろ茶番も飽きたころだろう」

 

 

 

 ランサーが俺を助けた理由も。

 

 キャスターが「今のうちに」と言っていた理由も。

 

 キャスターから令呪が盗めた理由も。

 

 夢の中の俺が対価なしで俺に助力していた理由も。

 

 イリヤの母親と俺が会っている理由も。

 

 俺が死ぬ危険にさらされたまさにその瞬間に管狐が現れた理由も。

 

 泥を吐いた理由も。

 

 ついさっき会ったもう一人の俺の正体も。

 

 ここに来るまでに見てしまった記憶も。

 

 俺の正体も。

 

 

―― 全てを知ってしまう。

 

 

 この神父の言葉を聞くべきではない。

 きっと、今までの俺ではいられなくなる。

 戻れなくなってしまう。

 

 ついさっき別れた士郎の顔が脳裏に浮かぶ。

 あの時士郎は俺を信じてくれてた。ひとりぼっちの俺に手を差し伸べてくれた。彼は俺にとっての正義の味方だ。裏切れるはずがないのに――俺は聞いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ思い出せ。出番だ――キャスター」

 

 

 

 

「あ――」

 

 

 

 

 

 気付かなかった頃にはもう戻れない。

 

 

 ――俺は、10年前の第四次聖杯戦争で、言峰綺礼に召喚されたサーヴァントだ。

 

 

 

 


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