ここはハーメルンの町のとあるss食堂。
この店はFate料理の店だ。Fate料理の店はそれなりの数あるのだが、この店ではやや珍しい食材と味付けで料理している。理由は自分がそういう料理を食べたいからだ。
ISやD×Dとか人気の食材をつかって流行のチートハーレムな味付けの料理を出している店は人気だなあ。オリ主やアンチヘイトの赤い
人気の店にはお客がたくさん出入りしているし、お気に入りにする常連客もどんどん増えるみたいだ。
さてこの町で一番の人気番組といえば「日間ランキング」。ハーメルンの町で今話題の店のランキングが発表される番組だ。ランキングは朝、昼、晩の一日3回発表される。
この町のお客さんたちはその日チェックする店を選ぶのにこれをみて参考にしている。「日間ランキング」に載れば多勢のお客さんが来てくれて、その結果お気に入りにしてくれる人が増えて、よい評価を貰えたりもするのだ。
そんなわけでこの町のss食堂の店主たちの多くは「日間ランキング」に載れるように、と日々自慢のssに工夫を凝らしているのだ。今日もランキングには人気ジャンルのss食堂たちがずらりと並んでいる。
ウチはそんなところに載るガラの店じゃないけれども、たまには「日間ランキング」に載ってみたいなあ。
「やあ店主さん」
おっと、常連のお客さんだ。
「毎度ありがとうございます!」
このお客さんは最近よく来てくれて毎回感想をくれるのだ。
「今回はこれこれのネタでしたね」
「さすが○○さん。あのネタがわかるとは通ですねぇ」
「あのネタですが実はこういう設定もあるんですがそれは出るんでしょうかね」
「お、おっと、そんな設定があるとは。そこまでは知りませんでした」
などと、お客と細かい食材談義をかわす。感想のやりとり一つにも気を抜けない。Fateはもう歴史が長いジャンルなのでこのようにとても詳しいお客が珍しくないのだ。
油断ならないが、こういう濃いお客とのやりとりがFate料理の醍醐味の一つである。
「ところで、今度これこれのネタで料理してほしいんですが」
おっとリクエストだ。常連さんの頼みとあらば応えてみたいところではあるが、
「うーん、ネタがみつかったら考えますね」
とりあえず適当な返事をしておこう。料理に向いた良いネタが見つかるかどうかは正直言って気分次第、運次第なのである。
さて、この店で出しているssは珍しめのメニューなのでそのままでは人気が出ないだろう。そのままではお客がなかなか増えてくれないため、あれこれ工夫もしている。
まず材料が変わっているから慣れていない人が多いだろう。慣れない材料だからこそできるだけとっつきやすく、ささっと楽しめる味付けにしている。ウチの味付けはハーメルン町の人にとっては濃いのかな、それとも薄いのかな?
あと、お客さんから量が少ないという感想をもらったので、試しに大盛りにしてみたり。
5000字はないと食べ応えがないというのが町のウワサである。
このように試行錯誤は尽きない。
前回はいつもの倍くらいの大盛りにしてみたけどそんなに反応がなかったな。
今度は軽い料理にしよう。それと今までやってなかった味付けに挑戦してみるか。ssの中にぱらぱらと自己言及ネタを散らしてみる。
普段メタ風味の味付けはしないのだけど、今回はちょっとお遊びで。メタやパロというものは味付けのバランスが難しい。
うーむ、もしかしたらいつものお客さんから「まじめにやれ!」って苦情がくるかもな。
翌日。
あれ? UAのカウントがいつもよりたくさん…。お気に入りもずいぶんと増えてるし。どうしたんだろう?
まさか……と思いながら「日間ランキング」を覗いた。
「ひいいいいいい!」
載ってる……。「日間ランキング」に載ってる!
しかも一番上に載ってる!!!
店に始めて来てくれたお客さんが感想を残してくれる。
「読みづらい」
「
そ、そうですか?
ssの文章のレイアウトは自分の好みではあるが、お客さんが読みやすいように工夫した結果でもある。しかし、読みにくいという感想をもらってしまった。
しかたない、ランキングに載っている他の店のssを参考にレイアウトを変えてみる。
行間を増やしてみた。ハーメルンで人気があるssは総じて行間が多めだ。長い地の文は5行程度を目安に改行を入れる。パソコンでは改行が多く見えるけれど、スマートフォンでssを読む人も増えているのだ。そういったお客さんには細かく区切ったssの方が読みやすいだろうし。
台詞と地の文の間にも改行を挟むようにした。これで台詞の部分がわかりやすくなるかな。
さて、これでハーメルン町風になっただろうか? 個人的には行間が詰まっている方が好みなのだけど、これも営業努力である。
ハーメルンは行間多めが好まれやすいようだけれど、町によって人気のある盛りつけ方はかわる。そこの雰囲気にあった
例えば理想郷町はハーメルン町よりも歴史があるためか、奇抜なものよりもオーソドックスな味付けのssが人気に見える。また街全体が古風な作りなこともあって、紙の本の伝統的な文章作法をきちんと守ったものが好まれやすいようだ。
pixiv市はもともとイラスト中心の場所だからか、長編のssを提供するのには向いていない。そういうこともあってかさっと楽しめる短編が比較的多めだ。そしてpixivの標準レイアウトが行間広めであるからか、ssの中ではあまり行間を開けない傾向がある。
さて、新しいお客さんの好みを考えてssの盛りつけを変えてみたけれど、ウチの常連さんたちはどっちが好みなんだろう? 味や盛りつけが変わってしまって不安にならないといいけどな。
「日間ランキング」に載ったのをきっかけに味付けが変わったり、料理を出すペースが早くなったけど雑になってしまう店もあるのだ。
ランキングに載ってから数日が経った。来客ペースは結局いつも通り。来てくれるお客さんの数は以前より増えたけれど、お気に入りが増えるペースは元に戻った。
ふう、落ち着いた。やっぱりウチの店はこのくらいのんびりとやっているほうがいいね。
あっそういえば、この前常連さんが言っていたネタが都合良く見つかったなあ。
じゃあ作るか。
よしできた。
できたての最新話を投稿する。
間もなくお客さんたちがやってきて感想をくれた。
「今度のもおいしいですねー!」
「ありがとうございます!」
よしよし、なかなか好評だ。機嫌良く感想がえしをする。
あれ、でもいつもの常連さんがなかなか来ない。
ちょっとさみしいなあ……。
そして、店主はまたいつも通りのss料理を作りつづけるのだった。