ピロリロリンピロリロリン
伊織「もしもし?」
八幡「あ、水瀬か?今向かっているがどういう状況なのか具体的に説明を頼む。」
伊織「具体的にって…。メールにかいた通りよ。長介くんが今から2時間ぐらい前に怒って家出ていっちゃって、それでまだ見つかってないの。」
八幡「そうか。長介くんの特長というか…情報は?」
伊織「小学校高学年くらいかしら?身長は150㎝くらい。長介くん、お姉ちゃんなんて嫌いだって言って出ていったけど、本当はお姉ちゃん思いのいい子よ。」
八幡「分かった。少し考えてみるから、またあとでれんらくする。」
伊織「分かったわ。」ピッ
伊織「…この伊織ちゃんが頼ってあげたんだから見つけなさいよね。」ボソッ
水瀬からの情報を整理すると長介くんは小5、6くらい…。高槻とのけんかで家出をしたが本当はお姉ちゃん思いのやつ…。高槻と我那覇が探しているがまだ見つからない…。
どこだ?どこにいく?家族との喧嘩の時に家出をして向かう場所は。高槻も予想できる範囲のところは探しているだろう。
それでも見つかっていない。
…。お姉ちゃん思いのいい子…。高槻と喧嘩…。小学5、6年…。
もしかすると、長介くんは…。
ピロリロリンピロリロリン
伊織「もしもし。」
八幡「水瀬、もしかすると長介くんは家出をしていないかもしれない。」
伊織「はぁ?あんたはバカなの?家を出ていったっていったじゃないっ。」
八幡「…言い方が悪かった。長介くんは家の敷地からは出ていないということだ。」
伊織「それはさっきと何が違…。あっ。」
八幡「あぁ、もしかすると長介くんは家の敷地のどこかにいるのかもしれない。どこか隠れられそうな場所はないか?」
伊織「隠れられそうな…。あったわ。物置小屋が。」
八幡「じゃあ、そこを調べてみてくれ。」
伊織「分かったわ。」
ガチャ
長介「あ…。」
伊織「見つけたっ。」
八幡「そうか。良かった。そろそろそっちに着く。響たちには俺が連絡するからそっちは頼む。」
伊織「えぇ。わかったわ。」ピッ
長介「どうして俺がここにいるって分かったの?」
伊織「私達の、普段頼りないプロデューサーが考えついたのよ。それに私もお兄様たちと喧嘩したときはよく物置に隠れたわ。」
長介「そうなんだ。一緒だね。俺だってやよい姉の役にたちたくて頑張ってるのに、どうしてわかってもらえないんだよ…。ねぇ、お姉ちゃんなら俺のこの気持ちわかるよね?」
伊織「全然分からないわ。」
長介「え…。」
伊織「あんた、やよいに自分の事をわかって欲しいんでしょ?だったらこそこそ隠れずにぶつかっていくしかないじゃない。少なくとも私はあなたみたいに自分の気持ちを伝えずに逃げたりなんてしないわ。正々堂々ぶつかって自分の気持ちを伝えて…。だから私はアイドルになったの。お兄様たちに、私だってやれば出来るんだって見せつけてやるのよっ。」
長介「…。」
伊織「やよいはねどんなときでもにこにこ笑って頑張っているの。家の仕事がたいへんだー、なんて一度も漏らしたことないわ。それがやよいのプライドなの。あんたにもプライドがあるのなら正々堂々と自分の気持ちをお姉ちゃんに伝えなさい。そして頼ってもらえるようになるのよ。」
長介「プライドって…。」
伊織「胸はって前を向けってこと。それに……やっぱり男の人、は頼れる人の方がかっこいいしね。」ニコッ
チョースケー
バタバタ
やよい「長介ー。良かったー。グスン良かったー。」グスン
長介「ごめん。…ごめんなさい。やよい姉ちゃん…」グスン
ウワーン
チョースケー ヤヨイネェー
響「やっぱり姉弟っていいなぁー。自分も久しぶりに兄貴たちに連絡でもしようかな。」
伊織「私はしないわよ。トップアイドルになるまで意地でもするもんですか。」
伊織「…ねぇ?プロデューサー。」
八幡「なんだ?」
伊織「その、一応。…ありがと。」
八幡「大したことはしてないけどな。」
伊織「ちょっとは役に立つじゃない…。」
八幡「で、デレただと。」
伊織「ちょっ、何いってんのよ。全然そんなんじゃないわっ。ちょっと役に立ったくらいで調子にのって。あんたは頼りないんだからもっと頑張りなさいっ。そしたら、また、頼ってあげなくも…ないから。」
八幡「…さいですか。」
響「プロデューサーがんばれぇー。あ、そういえばどうしてプロデューサーは長介くんの居場所が分かったんだ?」
八幡「あー。大体小学5、6年が家出で行くところなんて限られてるだろ?高槻にもいくつか候補が思い付いていただろうしな。だが、それでも見つからなかった。となると考えられるのは敷地内だ。特に長介は高槻と喧嘩してから出ていったんだろ?意見のくい違い、伝わらない思い。そういうのがあるときは理解してもらえない苛立ちから逃げるが、それを相手に理解してもらいたいってのもあって誰かに見つけて欲しい。だから見つけてもらえる場所に隠れた。そうじゃないかっておもったんだよ。」
響「ほぇー。プロデューサーは良くそれだけの情報から思い付くなぁ。自分全然わからなかったぞ。」
八幡「まぁ、俺も、そういうのは分からなくもないからな…。」
伊織「ふぅーん。」
八幡「なんだよ、水瀬。」
伊織「別に。それから私のことは水瀬じゃなく、伊織って呼びなさい。」
八幡「は?なんで。」
伊織「水瀬ってお父様やお兄様たちとおなじでしょ?私は私。だから、特別に下の名前で呼ばせてあげるわ。」
響「だったら自分も下の名前がいいぞ!我那覇って呼び慣れてないし。」
八幡「我那覇まで…。おい、水瀬それは…」
伊織「伊織。」ビシッ
八幡「うっ…い、伊織。」
伊織「うん。よろしい。」ニコッ
八幡「何様だよ…。」
響「プロデューサー!自分も自分も!」
八幡「はぁ…。ほれ…響、伊織、帰るぞ。」
伊織 「えぇ。」
響「はーい。」
ったく。女の子の名前を下で呼ぶのって抵抗があるんだがな…。恥ずかしいってのもあるが「なに彼氏面してんの?」とか思われるんじゃないかと心配になる。
というか、下の名前どころか上の名前すら今まであまり呼ぶことなかった俺に下で呼ばせるとか、どこか俺のプロデュースはまちがってるんじゃねーの。
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